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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F23Q
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F23Q
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F23Q
審判 全部無効 判示事項別分類コード:857  F23Q
審判 全部無効 発明同一  F23Q
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F23Q
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F23Q
管理番号 1320450
審判番号 無効2015-800075  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-27 
確定日 2016-08-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4487853号発明「グロープラグ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 平成27年6月18日付け訂正請求において、訂正事項1に係る訂正(請求項1及び15からなる一群の請求項に係る訂正)を認めない。 平成27年6月18日付け訂正請求において、訂正事項2に係る訂正(請求項2ないし8からなる一群の請求項に係る訂正)を認める。 平成27年6月18日付け訂正請求において、訂正事項3に係る訂正(請求項9ないし14からなる一群の請求項に係る訂正)を認める。 平成27年6月18日付け訂正請求において、訂正事項4に係る訂正(請求項16に係る訂正)を認める。 特許第4487853号の請求項1、9、14及び15に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4487853号の請求項2ないし8、10ないし13及び16に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その16分の12を請求人の負担とし、16分の4を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。

平成17年 5月24日 本件出願
(優先権主張 平成16年5月26日)
平成22年 4月 9日 設定登録(特許第4487853号)
平成27年 3月27日 審判請求書
平成27年 6月18日 答弁書、訂正請求書
平成27年 8月11日 弁駁書
平成27年 9月 8日付 審理事項通知
平成27年 9月14日差出 請求人・口頭審理陳述要領書
平成27年 9月15日 被請求人・口頭審理陳述要領書
平成27年 9月25日 口頭審理
平成27年 9月25日付 審尋
平成27年10月14日差出 請求人・上申書
平成27年10月15日 被請求人・上申書
平成28年 3月11日付 審決の予告
なお、審決の予告に対する応答はなかった。

以下、口頭審理陳述要領書を、「要領書」と略記する。

第2 訂正の請求について

1 訂正請求の内容

被請求人が求めた訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりであって、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために被請求人が付したものである。)

(1)訂正事項1(請求項1及び15からなる一群の請求項に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項1に「弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」とあるのを、「弾性部を備え、ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。」に訂正する。

(2)訂正事項2(請求項2ないし8からなる一群の請求項に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項2に「支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とする請求項1のグロープラグ。」とあるのを、「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、前記ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」に訂正する。

(3)訂正事項3(請求項9ないし14からなる一群の請求項に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項9に「2つの支持部材を備えており、先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有していることを特徴とする請求項1のグロープラグ。」とあるのを、「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する2つの支持部材を備えており、グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有していることを特徴とするグロープラグ。」に訂正する。

(4)訂正事項4(請求項16に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項16に「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸の先端側又はハウジングのいずれか一方に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」とあるのを、「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸の先端側に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」に訂正する。

2 訂正の適否について

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1により訂正される本件特許の請求項1
訂正事項1により訂正される本件特許の請求項1に係る発明(以下「訂正請求項1」という。)は、以下のとおりである。

なお、訂正請求項1の1A等の分説符号は、審判請求書及び弁駁書における請求人により付与された分説符号である。

「【請求項1】
1A.エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
1B.貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
1C.ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
1D.中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
1E.中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
1F.グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
1G.支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
1H.ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。」

イ 当事者の主張

(ア)被請求人の主張の概要

a 訂正請求書における主張の概要
訂正後の請求項1記載の特許発明では、支持部材のハウジング固定部が、ハウジングの燃焼室側の端部に設けられた構成である旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合する。

支持部材に係る説明として、段落【0008】には「・・・ハウジングの燃焼室側の端部よりも燃焼室側に存在する支持部材は・・・」との記載がなされており、図1?4、図6?8、図10および図11にも記載がある。
当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合する。

b 要領書における主張の概要

本件特許図3を拡大した参考図1を用いて訂正発明1の技術的意味を説明する。本図において「ハウジングの燃焼室側の端部」とは、参考図1中央に位置する「丸」のことである。同時に、「丸」はハウジングを支持部材と固定するための「ハウジング固定部」でもある。そして、「端部」が燃焼室内壁に密着していることが図示されている。
[参考図1]

このような力学系として構成されたグロープラグが発揮する機能および効果は、段落0030および段落0031に記載されている。これが訂正発明1の技術的意味となる。

ところで、参考図1は力学系として訂正発明1に係るグロープラグを簡略化し図示したものであるが、実際のグロープラグは当然(線や点ではなく)有限の大きさを有するハウジングおよび支持部材とを組み合わせて実現されるものである。それが本件特許図1に相当する。

本件特許図1を拡大した参考図2および3に基づき、「ハウジングの燃焼室側の端部」、「ハウジング固定部」の位置を説明する。

まず、参考図2に示すとおり、点線矩形で囲まれた箇所が「ハウジングの燃焼室側の端部」に相当する。明細書段落0027は、その燃焼室側の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していることを説明したものである。

[参考図2]

なお、請求人は、段落0027において「突出部36のテーパ面36aがエンジンヘッド12の段付き面12aに密着固定される」との記載に基づき、密着し続けるのは「ハウジング44の燃焼室15側の端部ではなく、支持部材30、30A、30B、30Cの突出部36である」と述べている(弁駁書2ページ23?28行)が、ハウジング44の燃焼室側15側の端部が密着していないことについては明細書中で開示がなく請求人の主張には理由がない。

参考図3は、段落0027において「突出部36は、センサ用ハウジング44の一部と評価することもできる。センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる」との記載を図示したものである。

[参考図3]

そして、「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる(本件明細書段落0027)」とは、仮に本件特許図1のセンサ用ハウジング44の端部が内壁に密着していない場合においても、センサ用ハウジング44の一部とみなせる支持部材の一部が内壁に密着している場合には、参考図1に係る力学系として解釈することが可能であるから、本特許の技術思想の範躊であることを説明した記載と解釈できる。

被請求人は、当該箇所に基づき訂正発明1が不明確であると述べているが、支持部材の一部をハウジングの一部とみなしたときにも参考図1に係る力学系として解釈できるものについては、訂正発明1の機能および効果を奏することを明細書において述べているにすぎず、訂正発明1の技術的意味は明確であり、特定する発明の範囲(外延)は明りょうである。

c 上申書における主張の概要
請求人は9月15日付の陳述要領書において、「センサ用ハウジング44の燃焼室側の端部がエンジンヘッド12の段付き面12aに密着する構造は、記載されていません。このような構造に対して、「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現する」ことは、図1?図4、図6?図8に示される構造と矛盾しています・・・訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく・・・無効にすべきである、と考えます(請求人要領書2ページ4行?19行)」と述べている。

しかし、以下の参考図1(本件明細書図10)および明細書段落0036には「ハウジング142の燃焼室115側の端部には、燃焼室115側に向けてテーパ状に加工されたテーパ面142aが形成されている。テーパ面142aは、対向するエンジンヘッド112の段付き面112aと密着している。」との記載がある。ゆえに、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内である。よって、請求人の主張は成り立たない。
[参考図1]

なお、以上のとおりハウジング142が燃焼室内壁に密着している記載がある以上、訂正事項1に対する請求人の主張は明らかに成り立たないが、図1?図4、図6?図8(実施例1)についても請求人の主張は成り立たない。

なぜなら、参考図2に図示した通り、ハウジング44の側面も端部といえるから、図1をもって「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していない」とする請求人の主張には誤りがあるからである。

[参考図2]

本件明細書段落0027などを参酌しても、図1におけるハウジング44の端部について明示的に言及されている箇所はないが、出願当初請求項1の6行目、段落0005には以下のような記載がある。
『グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、』
そうすると、明細書段落0027の記載は次のように解釈することが自然といえる。
図1?4、図6?8は、突出部36およびハウジング44の端部がともにエンジンヘッド12の内壁に密着していることを図示したものである。

そして、「突出部36は、センサ用ハウジング44の一部と評価することもできる。センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる(本件明細書段落0027)」とは、仮に本件特許図1のセンサ用ハウジング44の端部が内壁に密着していない場合にも、センサ用ハウジング44の一部とみなせる支持部材の一部が内壁に密着しているから、そのような場合も「ハウジングの燃焼室側の端部がエンジンヘッドの内壁に密着し続ける」場合に相当するということを説明したものである。

そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内に相当し、訂正事項1に対する請求人の主張は成り立たない。

[参考図3]

(イ) 請求人の主張の概要

a 弁駁書における主張の概要
請求項1は、以下の事項「1F」を含み、さらに、訂正請求書により、以下の事項「1H」が限定された。
・「1F」グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
・「1H」ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられている

訂正請求書では、この訂正事項1の根拠として、本件特許第4487853号の願書に添付した明細書(以下、本件明細書ともいう)の段落0008と、図1?4、図6?8、図10および図11とが挙げられている。
段落0008には、「ハウジングの燃焼室側の端部よりも燃焼室側に存在する支持部材は、火炎に曝されると燃焼室側に向けて熱膨張を起こす」ことが記載されているが、支持部材がハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることについては、記載されていない。本件明細書の他の段落にも、上記「1H」の根拠となる記載はない。

さらに、図1?図4、図6?図8の実施例と上記事項「1F」との関係について検討する。段落0027に以下の記載がある。
「支持部材30のほぼ中央に、燃焼室15側に向けて先細りのテーパ状の突出部36が形成されている。突出部36は、エンジンヘッド12の内壁に形成されている段付き面12a(図1参照)に対応した形状で形成されている。したがって、この突出部36のテーパ面36aがエンジンヘッド12の段付き面12aに密着固定される。」
このように、図1?図4、図6?図8の実施例では、グロープラグ51を貫通穴13に取り付けるとエンジンヘッド12の段付き面12a(内壁に相当する)に密着し続けるのは、ハウジング44の燃焼室15側の端部ではなく、支持部材30、30A、30B、30Cの突出部36である。すなわち、上記事項「1F」を含む請求項1の上記訂正事項1は、図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

このように、請求項1の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められない。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきである。

なお、本件明細書の段落0027には、「突出部36は、センサ用ハウジング44の一部と評価することもできる。センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる」と記載されている。
仮に、この記載に基づいて上記事項「1F」を含む請求項1の上記訂正事項1が、図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内においてしたものであると認定されると仮定する、すなわち、上記事項「1F」が、図1?図4、図6?図8の実施例の構成を包含するように解釈されると仮定する。
この場合、請求項1の「ハウジングの燃焼室側の端部」は、ハウジングとは異なる部材(例えば、支持部材)をも含むように解釈されなければならず、請求項1の「ハウジングの燃焼室側の端部」の定義は、「ハウジングの一部分」という一般的な解釈とは異なることになる。
しかし、その定義は、本件明細書には記載されていないので、請求項1の「ハウジングの燃焼室側の端部」の定義が分からず、「ハウジングの燃焼室側の端部」が具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。
従って、仮に上記訂正事項1が適法な訂正と認められると仮定すると、請求項1と、請求項1に従属する請求項15と、に係る訂正発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

b 要領書における主張の概要
本件明細書の段落0027の記載、特に、「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる」との記載を踏まえると、発明特定事項「1F」を含む請求項1の訂正事項1は、形式的には、本件明細書等の図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内であるかのように見え得ます。
しかし、本件明細書の段落0027には、「この突出部36のテーパ面36aがエンジンヘッド12の段付き面12aに密着固定される」と記載され、図1、図2、図4、図6?図8には、センサ用ハウジング44の燃焼室側の端部ではなく、突出部36が、エンジンヘッド12の段付き面12aに密着する構造のみが示されています
このように、本件明細書等の図1?図4、図6?図8には、突出部36がエンジンヘッド12の段付き面12aに密着する構造のみが記載され、センサ用ハウジング44の燃焼室側の端部がエンジンヘッド12の段付き面12aに密着する構造は、記載されていません。このような構造に対して、「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現する」ことは、図1?図4、図6?図8に示される構造と矛盾しています。
このように、段落0027の記載(特に「センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる」)は、本件明細書等に記載された構造と矛盾するので、そのような記載を踏まえて訂正事項1が図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内であると認定することはできない、と考えます。

このように、請求項1の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められません。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきであると考えます。

c 上申書における主張の概要
被請求人は、被請求人の口頭審理陳述要領書の6頁の最下の4行において、「なお、既に「(1)訂正事項1について」において、参考図1を用いて本件発明の技術的意味を説明したとおり、本件発明はハウジングおよび支持部材を組み合わせて実現される力学系に特徴がある。当該力学系においてはハウジングおよび支持部材は明確に区別されて用いられている。」と主張している。
ところで、本件明細書の図1(ひいては、図2、図4、図6?図8)と段落0027には、ブロープラグ51の要素のうち「ハウジング42とセンサ用ハウジング44」ではなく「支持部材30(ひいては、支持部材30A、30B、30C)」の突出部36のテーパ面36aがエンジンヘッド12の段付き面12aに密着固定されることが明確に示されている。
ここで、上記の被請求人の主張のとおり、ハウジングおよび支持部材を明確に区別すると、突出部36をセンサ用ハウジング44の一部と評価すべきではなく、センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することはできない。
従って、発明特定事項1F「ブロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け」を含む請求項1の訂正事項1は、図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内であると認定することはできず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められない。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきである。

仮に、発明特定事項1Fを含む請求項1の訂正事項1が、図1?図4、図6?図8に記載した事項の範囲内においてしたものであると認定されると仮定する、すなわち、上記事項1Fを含む訂正発明1が、図1?図4、図6?図8の実施例の構成を包含するように解釈されると仮定する。
この場合も、上記の披請求人の主張のとおり、ハウジングおよび支持部材を明確に区別すると、訂正発明1の発明特定事項1Fの「ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け」における「ハウジングの燃焼室側の端部」は、図1、図8の「ハウジング42とセンサ用ハウジング44」のいずれの部分、箇所又は位置を指すのかを特定できない。このように、発明特定事項1Fの「ハウジングの燃焼室側の端部」が具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。
従って、仮に訂正事項1が適法な訂正と認められると仮定すると、請求項1と、請求項1に従属する請求項15と、に係る訂正発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

ウ 当審の判断
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1に係る発明特定事項である「グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」を、「グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。」とすることにより、「ハウジング固定部」が「ハウジングの燃焼室側の端部に設けられている」構成に限定するものであり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。

(イ)新規事項の追加について
訂正請求項1は、発明特定事項1F「グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、」を含んでいる構成に、さらに、発明特定事項1H「ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。」を限定するものである。

そして、発明特定事項1Fに関係する本件明細書中の記載としては、「ハウジング142の燃焼室115側の端部には、燃焼室115側に向けてテーパ状に加工されたテーパ面142aが形成されている。テーパ面142aは、対向するエンジンヘッド112の段付き面112aと密着している。」(段落【0036】)という記載があり、発明特定事項1Fは本件明細書に記載された事項である。

また、発明特定事項1Hに関係する本件明細書中の記載としては、「突出部36のテーパ面36aに対して反対側の面に、センサ用ハウジング44が密着している(図1参照)。」(段落【0027】)という記載があり、1Hも本件明細書中に記載された事項である。

しかしながら、発明特定事項1F及び1Hを同時に実施する、「ハウジングの燃焼室側の端部」に「ハウジング固定部が設けられている」場合、「ハウジングの燃焼室側の端部」が「エンジンヘッドの内壁に密着し続け」る構成は、本件明細書中に記載も示唆もない。

また、本件明細書の段落【0027】には、「突出部36のテーパ面36aに対して反対側の面に、センサ用ハウジング44が密着している(図1参照)。したがって、突出部36は、センサ用ハウジング44の一部と評価することもできる。センサ用ハウジング44の端部がエンジンヘッド12の内壁に密着していると表現することもできる。また、突出部36は、支持部材30をセンサ用ハウジング44に固定するハウジング固定部でもある。」との記載がある。
しかしながら、発明特定事項1G「支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、」の記載から、訂正請求項1において「ハウジング固定部」は「支持部材」の一部である。
一方、発明特定事項1E「中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、」の記載から、訂正請求項1において「支持部材」は「中軸とハウジング間に設けられて」いる。
そうすると、「支持部材」の一部である「ハウジング固定部」は、「中軸とハウジング間に設けられて」いるものであり、「ハウジング固定部」と「ハウジング」とは別の構成であるから、訂正請求項1において「ハウジング固定部」が「ハウジング」の一部と評価することはできない。
また、要領書等の主張も考慮したが、上記判断を覆す根拠は見いだせない。

以上を総合すると、「弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」を、「弾性部を備え、ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。」とする訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲外の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合しない。

エ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正を認めない。

(2)訂正事項2ないし4について

ア 当審の判断

訂正事項2は、請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、かつ、後端側弾性部が、「前記ハウジング固定部と後端側中軸固定部間」に設けられた構成であるとすることで、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
そうすると、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項3は、請求項9が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるといえる。
そうすると、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

訂正事項4は請求項16の「支持部材は、中軸の先端側又はハウジングのいずれか一方に固定されている」を「支持部材は、中軸の先端側に固定されている」とすることで、択一的記載の要素を削除することにより特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項4は特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そうすると、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許査定時の明細書等の範囲内の訂正であるから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

なお、訂正事項2ないし4に係る訂正における、訂正請求の適法性について、争いはない(請求人要領書の2ページ「2 訂正事項2ないし4について」)。

イ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項2ないし4に係る訂正を認める。

3 訂正の請求についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正のうち、訂正事項1に係る訂正は、特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、訂正を認めない。
また、本件訂正のうち、訂正事項2ないし4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正を認める。

第3 本件特許発明

上記第2のとおり訂正事項1に係る訂正は認めず、訂正事項2ないし4に係る訂正は認めるので、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明16」という。)は、それぞれ、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び15に記載された事項並びに訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項2ないし14及び16により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、前記ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項3】
先端側弾性部は、先端側中軸固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項2のグロープラグ。
【請求項4】
先端側弾性部は、ハウジング固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項3のグロープラグ。
【請求項5】
後端側弾性部は、後端側中軸固定部から反燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項2?4のいずれかのグロープラグ。
【請求項6】
先端側弾性部のばね定数は、後端側弾性部のばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項2?5のいずれかのグロープラグ。
【請求項7】
後端側中軸固定部は、中軸の最後端に固定されていることを特徴とする請求項2?6のいずれかのグロープラグ。
【請求項8】
先端側中軸固定部は中軸を一巡しており、ハウジング固定部はハウジングを一巡しており、先端側弾性部は両者間を一巡していることを特徴とする請求項2?7のいずれかのグロープラグ。
【請求項9】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する2つの支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、
後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有していることを特徴とするグロープラグ。
【請求項10】
先端側弾性部は、先端側中軸固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項9のグロープラグ。
【請求項11】
先端側弾性部は、先端側ハウジング固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項10のグロープラグ。
【請求項12】
後端側弾性部は、後端側中軸固定部から反燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項9?11のいずれかのグロープラグ。
【請求項13】
先端側弾性部のばね定数は、後端側弾性部のばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項9?12のいずれかのグロープラグ。
【請求項14】
先端側中軸固定部は中軸を一巡しており、先端側ハウジング固定部はハウジングを一巡しており、先端側弾性部は両者間を一巡していることを特徴とする請求項9?13のいずれかのグロープラグ。
【請求項15】
中軸固定部は、中軸のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されていることを特徴とする請求項1のグロープラグ。
【請求項16】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸の先端側に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」

第4 無効理由についての当事者の主張

1 請求人が主張する無効理由の概要

(1)証拠

請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開昭59-85932号公報
甲第2-1号証:特開2005-90954号公報(特願2004-272743号の公開公報)
甲第2-2号証:甲第2-1号証の出願情報
甲第3-1号証:DE10343521A1(ドイツ国特許出願第10343521.2号の出願公開明細書)
甲第3-2号証:甲第3-1号証の翻訳

(2)無効理由ア及びイ

a 審判請求書における主張の概要
本件特許の請求項1及び15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由ア」という。)。
本件特許の請求項1及び15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由イ」という。)。

本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭59-85932号公報、昭和59年5月18日公開)には、以下に示すように、本件発明1の発明特定事項1A?1Gに相当する構成が記載されている。

(発明特定事項1A)
・(ア)「本発明は、エンジンのシリンダブロックに固定されるボディと、このボディに相対移動可能に設けられるとともに、エンジンの燃焼室内に臨み、この燃焼室内の圧力に応じて変位する筒状部材と、この筒状部材に内蔵されるヒータと、上記筒状部材のボディに対する相対変位に応動して伸縮し、上記圧力に応じた電圧を発生する圧電素子とを備えることを特徴としている。」(第1頁右下欄の第11?19行)
・(イ)第1図には、ターボ付きディーゼルエンジンにグロープラグ1が固定され、グロープラグ1の先端側の一部分が燃焼室13内に臨んでいる様子が示されている。
・(ウ)「上記構成を有するグロープラグ1は、ねじ部21を介してエンジンのシリンダヘッドに取付けられる・・・筒状部材24は燃焼室13内に臨み」(第2頁右下欄第13?17行)

(発明特定事項1B)
・(エ)「ボディ20は略筒状を呈し、その外周にはエンジンのシリンダブロックに螺合するためのねじ部21が形成され」(第2頁右上欄第3?5行)
・(オ)「キャップ22は、上部が断面六角形、下部が断面円形を有し、キャップ22の下端周縁部はボディ20のフランジ部23の外周部に、かしめられて固定される。」(第2頁右下欄第9?12行)
・(カ)第2図には、ボディ20のフランジ部23が、ボディ20の燃焼室側とは反対側である反燃焼室側の端部(具体的には、後述するテーパ面37とは反対側の端部)であることが、示されている。

(発明特定事項1C)
・上記記載(ア)
・(キ)「上記筒状部材24の内部には電極棒31が挿入され、・・・電極棒31は筒状部材24の基部開口から突出し」(第2頁左下欄第15?18行)
・(ク)「筒状部材24は、ボディ20の孔部に摺動自在に嵌合され」
(第2頁右上欄第7?8行)
・(ケ)「電極棒31、ピーク32および筒状部材24の間の空間には、例えばマグネシア等のセラミックの粉末34が充填される」(第2頁右下欄第1?4行)

(発明特定事項1D)
・(コ)「筒状部材24の先端部25は閉塞されるとともにボディ20より突出し、また基部開口の周囲に形成されたフランジ部26は、キャップ22の中に収容される。」(第2頁右上欄第8?11行)
・(サ)「フランジ部26の上側には圧電素子28.29が設けられる」(第2頁右上欄第13?15行)
・(シ)「圧電素子28.29は平板でドーナツ状を呈し、キャップ22内にほとんど隙間なく収容される。」(第2頁左下欄第6?7行)
・(ス)「電極棒31は筒状部材24の基部開口から突出し、さらに圧電素子28、29およびキャップ22を貫通しており」(第2頁左下欄第17?19行)
・上記記載(コ)、第2図によれば、筒状部材24の基部開口は、筒状部材24の閉塞された先端部25とは反対側である反燃焼室側の開口であり、フランジ部26は、筒状部材24の反燃焼室側の開口の周囲に形成されているということができる。

(発明特定事項1E)
・(セ)「フランジ部26とボディ22(正しくは、ボディ20と思われる)のフランジ部23との間には皿ばね27が弾装され」(第2頁右上欄第12?13行)
・(ソ)「筒状部材24は燃焼室13内に臨み、次に述べるように該室13内の圧力の変化に応動して進退動する。すなわち、燃焼室13内の圧力が高くなると、筒状部材24はこの圧力を受け、皿ばね27に抗して変位し、フランジ部26を介して圧電素子28.29を圧縮させる」(第2頁右下欄第17行?第3頁左上欄第3行)
・上記記載(ク)

(発明特定事項1F)
・(タ)「グロープラグ1は、ねじ部21を介してエンジンのシリンダヘッドに取付けられるが、この時、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着する」(第2頁右下欄第13?17行)。

(発明特定事項1G)
・(チ)「皿ばね27は、内周部を筒状部材24に、外周部をボディ20に、それぞれ溶接等により気密を保って接合される」(第2頁右上欄第15?17行)
・(ツ)「皿ばね27の弾発力によりフランジ部26が圧電素子29に密着する」(第3頁左上欄第7?9行)
・上記記載(ア)、(ク)、(ソ)

上記記載事項からみて、甲第1号証には、以下の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。
「エンジンのシリンダブロックに、エンジンの燃焼室13内に一部が臨むように固定されるグロープラグ1であって、
エンジンのシリンダブロックに螺合するためのねじ部21が外周に形成された略筒状を呈するボディ20と、ボディ20の反燃焼室側のフランジ部23の外周部に固定されたキャップ22と、
ボディ20の孔部に摺動自在に嵌合された筒状部材24と、筒状部材24の内部に挿入された電極棒31と、
筒状部材24の反燃焼室側の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26及び電極棒31のうちの筒状部材24の基部開口から突出した部分と、キャップ22と、の間にほとんど隙間なく収容される圧電素子28、29と、
筒状部材24のフランジ部26とボディ20間に弾装された皿ばね27であって、燃焼室13内の圧力の変化に応動して進退動する筒状部材24が皿ばね27に抗して変位するように構成された、皿ばね27と、を備えており、
グロープラグ1が、ねじ部21を介してエンジンのシリンダヘッドに取付けられると、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着し、
皿ばね27は、筒状部材24に接合されている内周部と、ボディ20に接合されている外周部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の距離を変化させる部分を備えていることを特徴とするグロープラグ1」

・上記記載(セ)(チ)によれば、皿ばね27の内周部は、筒状部材24のフランジ部26に接合されている。
・上記記載(コ)、第2図によれば、筒状部材24の基部開口は、筒状部材24の閉塞された先端部25とは反対側である反燃焼室側の開口であり、フランジ部26は、筒状部材24の反燃焼室側の開口の周囲に形成されていることが、読み取れる。

上記記載事項からみて、甲第1号証には、以下の構成が記載されている。「皿ばね27の内周部は、筒状部材24の反燃焼室側の開口の周囲に形成されたフランジ部26に接合されている」

本件発明1と引用発明1とを対比すると、
後者の「エンジンのシリンダブロック」は、前者の「エンジンヘッド」に相当し、以下、同様に、
「ボディ20と、ボディ20に固定されたキャップ22」は、「ハウジング」に、
「筒状部材24と、筒状部材24の内部に挿入された電極棒31」は、「中軸」に、
「圧電素子28、29」は、「圧力センサ」に、
「皿ばね27」は、「支持部材」に、
「ボディ20の先端のテーパ面37」は、「ハウジングの燃焼室側の端部」に、
皿ばね27のうち「筒状部材24に接合されている内周部」は、「中軸固定部」に、
皿ばね27のうち「ボディ20に接合されている外周部」は、「ハウジング固定部」に、
皿ばね27のうち「両者間にあって弾性変形することによって両者間の距離を変化させる部分」は、「弾性部」に、
それぞれ相当する。

具体的には、上記記載(ア)(エ)と第1図とによれば、引用発明1のエンジンのシリンダブロックのうちのボディ20のねじ部21が螺合する部分は、筒状部材24が燃焼室13内に臨むように構成された「貫通穴」である、ということができる。

上記記載(エ)によれば、引用発明1のボディ20のねじ部21は、シリンダブロックに螺合するためのものであるから、「貫通穴を画定する内壁に結合」しているということができる。

本件明細書の段落0005には、「ハウジングは、複数の部材で構成されていても構わない」と記載されている。従って、引用発明1の「ボディ20とキャップ22」は、本件発明1の「ハウジング」に相当するということができる。

上記記載(ケ)によれば、引用発明1の電極棒31と筒状部材24とが互いに固定されているということができる。従って、記載(ク)のように筒状部材24がボディ20に対して摺動自在であれば、電極棒31と筒状部材24とは、ボディ20に対して摺動自在であるから、「ボディ20とキャップ22との内にスライド可能に収容されている」ということができる。

引用発明1の「筒状部材24の反燃焼室側の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26」及び「電極棒31のうちの筒状部材24の基部開口から突出した部分」は、筒状部材24と電極棒31との「反燃焼室側」に相当する(甲第1号証の第2図)。

引用発明1の圧電素子28、29は、フランジ部26と電極棒31との反燃焼室側と、キャップ22と、の間にほとんど隙間なく収容されているので、これらの間に「固定されている」ということができる(甲第1号証の第2図)。

引用発明1の筒状部材24は、略筒状を呈するボディ20の孔部に摺動自在に嵌合されているから、その摺動方向は、ボディ20の「軸線」、ひいては、筒状部材24の「軸線」に沿っているということができる。そして、引用発明1の皿ばね27は、筒状部材24とボディ20との間の「軸方向距離」を変化させるということができる。

引用発明1の皿ばね27は、筒状部材24とボディ20とに接合され、進退動する筒状部材24が皿ばね27に抗して変位するように構成されているから、筒状部材24を「スライド可能に支持している」ということができる。

エンジンが適切に動作するためには、引用発明1のボディ20の先端のテーパ面37とシリンダヘッドとのシール性を保つ密着が継続されるものである。

このように、本件発明1と甲第1号証記載の発明とは全て一致し、相違点は無い。

仮に、本件発明1と甲第1号証記載の発明との間に相違点が見つかった場合であっても、甲第1号証記載の発明の作用・機能(例えば、上記記載(ア)など)は、本件発明1の作用・機能(例えば、本件明細書の段落0006など)と共通である。従って、本件発明1は、甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に成し得たものである。

なお、引用発明1の「電極棒31と筒状部材24」の代わりに「筒状部材24が、本件発明1の「中軸」に相当する、と考えることもできる。この場合も、上述の説明と同様に、本件発明1と甲第1号証記載の発明とは全て一致し、相違点は無く、仮に相違点が見つかった場合であっても、本件発明1は、甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に成し得たものである。

本件発明15と甲第1号証記載の発明とを対比すると、上記の本件発明1について示した事項が相互に相当または共通する。

また、上記の通り(甲第1号証の第2図)、甲第1号証記載の発明の皿ばね27の内周部は、筒状部材24の反燃焼室側の開口の周囲に形成されたフランジ部26に接合されているから、皿ばね27の内周部は、「筒状部材24のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されている」ということができる。

甲第1号証記載の発明の「筒状部材24」が本件発明15の「中軸」に相当すると考えると、本件発明15と甲第1号証記載の発明とは全て一致し、相違点は無い。

また、甲第1号証記載の発明の「電極棒31と筒状部材24」が本件発明15の「中軸」に相当すると考える場合にも、甲第1号証の第2図には、 「皿ばね27の内周部が、中軸(電極棒31と筒状部材24)のほぼ中心よりも反燃焼室側に配置されている」ことが示されているから、本件発明15と甲第1号証記載の発明とは全て一致し、相違点は無い。

また、上記の本件発明1について説明したように、仮に、本件発明15と甲第1号証記載の発明との間に相違点が見つかった場合であっても、本件発明15は、甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に成し得たものである。

以上の通り、本件請求項1、15に係る各特許発明は、甲第1号証記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
また、本件請求項1、15に係る特許発明は、甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
従って、本件請求項1、15に係る各特許発明は、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

b 弁駁書における主張の概要
請求項1の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められない。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきである。

c 要領書における主張の概要
請求項1の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められません。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきであると考えます。

d 上申書における主張の概要
発明特定事項1F「ブロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け」を含む請求項1の訂正事項1は、図1?図4、図6?図8に記載した事痍の範囲内であると認定することはできず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、適法な訂正とは認められない。そして、訂正前の請求項1、15に係る発明の特許は、審判請求書で説明した無効理由ア、イにより、無効にすべきである。

(3)無効理由ウ

a 審判請求書における主張の概要

本件特許の請求項1、2、8、9、14、15、16に係る発明は、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された発明と同一であり、本件特許の発明者がその優先日前の優先日のパリ条約による優先権の主張を伴う特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由ウ」という。)。

甲第2-2号証は、甲第2-1号証(特開2005-90954号公報)の出願情報であり、特許電子図書館の経過情報(番号照会)のウェブページ(http://www1.ipd1.inpit.go.jp/RS1/cgi-bin/RS1P001.cgi)での2015年3月11日の検索結果のプリントアウトである。甲第2-2号証によれば、甲第2-1号証(以下、日本文献2ともいう)に係る特許出願(特願2004-272743号)の手続きの経緯は、以下の通りである。
出願日 平成16年9月21日
パリ条約による優先権主張国 ドイツ
優先日 平成15年9月19日
優先権証明書提出日 平成16年9月22日
公開日 平成17年4月7日
甲第2-1号証に係る特許出願の優先日(平成15年9月19日)は、本件特許の優先日(平成16年5月26日)よりも、前である。
甲第3-1号証(以下、ドイツ文献3ともいう)は、甲第2-1号証に係る特許出願のパリ条約による優先権の主張の基礎となるドイツでの出願(出願番号第10343521.2号)の公報である。甲第3-2号証は、甲第3-1号証のうち、甲第2-1号証からの後述の引用部分に対応する部分の翻訳である。
甲第2-1号証と甲第3-1号証とから分かるように、甲第2-1号証の各図面は、甲第3-1号証の各図面と、それぞれ同一である。そして、甲第2-1号証の当初明細書等からの後述する引用部分に記載の発明は、甲第3-1号証の明細書等にも記載されている。以下、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された発明を「先願発明」ともいう。

請求項1について
詳細については後述するように、甲第2-1号証(日本文献2)の願書の最初に添付した明細書等と、甲第3-1号証(ドイツ文献3)とには、以下の発明(以下「先願発明1」という)が、共通して記載されている。

「ディーゼル・エンジンのシリンダに挿入されるグロープラグであって、
シリンダに挿入されるグロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)と、
前記グロープラグ本体内に軸線方向にスライドするように配置される、加熱ロッド1と、加熱ロッド1のグロー管1.1に固定されている接触管6と、
支持要素9上に配置され、加熱ロッド1と接触管6とのうちの接続側の部分である接触管6と、グロープラグ本体2の上方部分2.2と、の間に固定されるセンサ素子8と、
加熱ロッド1と接触管6と、グロープラグ本体と、の間に設けられており、加熱ロッド1と接触管6とを、軸線方向にスライド可能に支持する膜7と支持要素9とを備えており、
グロープラグ本体の燃焼室側の端部が、シリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成し、
膜7と支持要素9とは、加熱ロッド1または接触管6に固定されている部分と、グロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分と、両者間にあって弾性変形する部分を備えていることを特徴とするグロープラグ。」

具体的には、甲第2-1号証(日本文献2)と甲第3-1号証(ドイツ文献3)とには、以下に示すように、本件請求項1に係る発明の発明特定事項1A?1Gに相当する構成が記載されている。
以下、日本文献2からの引用部分に、日本文献2中の記載箇所(「日:****」で示す)と、ドイツ文献3の対応する部分の記載箇所(「独:****」で示す)とを、併記する。例えば、「日:0001」は、日本文献2の段落0001を示し、「独:0001」は、ドイツ文献3の段落0001を示している。ドイツ文献3の対応する部分の記載内容については、甲第3-2号証(以下、翻訳ともいう)を参照のこと。

(発明特定事項1A)
・(ア)「ディーゼル・エンジンのシリンダに挿入されるグロープラグ本体」(日:請求項1、独:請求項1)
・(イ)「前記加熱ロッドが、軸線方向にスライドするように移動して、前記シリンダの前記燃焼室内の圧力を前記圧力センサに伝達することができるように、前記グロープラグ本体内に配置される」(日:請求項1、独:請求項1)

(発明特定事項1B)
・上記の記載(ア)
・(ウ)「接続側の上方部分2.2および燃焼室側の下方部分2.1から成るグロープラグ本体」(日:0012、独:0019)
・(エ)「図3A・・・は、本発明による圧カグロープラグの第3の実施形態を示している。その基本的な構成は、図1および図2に示す先の2つの実施形態の基本的な構成に対応している。(日:0026、独:0032)」

(発明特定事項1C)
・(オ)「膜7からブロープラグの接続側の方向に接触管6が延びており、前記接触管は、加熱ロッド1のグロー管1.1に固定されている。」(日:0013、独:0020)
・上記記載(イ)(オ)と図3Aとからは、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6とが、図3Aのグロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)の内に、軸線方向にスライド可能に収容されていることが読み取れる。

(発明特定事項1D)
・(カ)「図3Aに示す実施形態において、センサ素子8は、例えば、ボウル型の膜(bowl-type membrane)などのストレイン・ゲージの形態で実現され、支持要素9上に配置される。この支持要素は、軸線方向に所定の可撓性を有するものであり、ここにおいて、センサ素子は、例えば、溶接によって接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に直接固定される。」(日:0027、独:0033)
・(キ)図3Aには、上記記載(オ)のように、接触管6が、加熱ロッド1と加熱ロッド1に固定された接触管6とのうちの、接続側の部分であることが、示されている。
・記載(カ)、図3Aによれば、センサ素子8が、支持要素9上に配置された状態で、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定され得ることが、読み取れる。

(発明特定事項1E)
・(ク)「前記グロープラグ本体が、軸線方向に2つの部分に分割され、半径方向膜が前記2つの部分の間に配置されるとともに前記加熱ロッドに固定されるように接続される」(日:請求項2、独:請求項2)
・(ケ)「ディーゼル・エンジンのシリンダの圧力は、加熱ロッド1に作用し、その結果、加熱ロッド1が軸線方向に移動され、膜7が接触管6を接続側のグロープラグ本体2の部分2.2に対して移動させる。」(日:0020、独:0026)
・(コ)「可撓性支持要素が、接続側において、前記グロープラグ本体に配置され、・・・前記加熱ロッドによって伝達された圧力が前記支持要素の軸線方向の伸長を生じさせる」(日:請求項10、独:請求項10)
・(サ)「グロープラグ本体の上方部分2.2に対する加熱ロッド1、または接触管6の形態の延長部分の動きは、シリンダ圧力の増大によって可撓性支持要素9を伸長させる。」(日:0028、独:0034)

(発明特定事項1F)
・(シ)「図4は、・・・グロープラグ本体2は、1つの部品のみから成り、燃焼室側の端部には、図1に示した実施形態の膜7と同じ機能を有する膜7が設けられている。しかしながら、図4に示した実施形態において、膜7は、グロープラグ本体を密封すると同時に、外部に固定されていることからグロープラグ本体をシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成する。」(日:0030、独:0036)
・記載(エ)(シ)、図1、図3A、図4によれば、図4の圧カグロープラグの代わりに図3Aの圧カグロープラグが用いられる場合には、図3Aのグロープラグ本体の燃焼室側の端部が、図4のシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成することが、読み取れる。

(発明特定事項1G)
・(ス)「加熱ロッド1は、接続側の小径部分を有し、膜7は、この領域で加熱ロッド1に固定されている。膜7は、・・・グロープラグの接続側の方向に対する気密性を保持するように装置をシールする。この目的のために、膜7は、例えば、レーザ溶接によって本体上方部分2.1(正しくは、上方部分2.2、または、下方部分2.1と思われる)の端面に強固に配置される。」(日:0012、独:0019)
・記載(ケ)から、膜7が弾性変形することが、読み取れる。
・記載(コ)(サ)、図3Aによれば、可撓性支持要素9が、グロープラグ本体の上方部分2.2と、接触管6と、に固定されていることが、読み取れる。

上記記載事項からみて、甲第2-1号証と甲第3-1号証とには、上記の先願発明1が共通して記載されている。

請求項2の発明特定事項2A
発明特定事項1Gと甲第2-1号証との関係の上記の説明を総合すれば、甲第2-1号証と甲第3-1号証とには、以下の構成が共通して記載されている。
「膜7と支持要素9とは、グロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分を備え、
膜7は、加熱ロッド1と接触管6のうち燃焼室側の加熱ロッド1に固定されている部分と、その部分とグロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分との間にある弾性変形する部分と、を備え、
支持要素9は、加熱ロッド1と接触管6のうち接続側の接触管6に固定されている部分と、その部分と上方部分2.2に固定されている部分との間にある弾性変形する部分と、を備える。」

請求項8の発明特定事項8A
上記記載(ス)には、「膜7は、・・・グロープラグの接続側の方向に対する気密性を保持するように装置をシールする」と記載されている。

請求項9の発明特定事項9A?9C
・発明特定事項1Gと甲第2-1号証との関係について上述したように、甲第2-1号証と甲第3-1号証とからは、可撓性支持要素9が、接触管6に固定されていることが、読み取れる。
・また、記載(オ)によれば、支持要素9が固定されている接触管6は、膜7よりも接続側に位置していることが、読み取れる。
・以上により、膜7と支持要素9とのうち、膜7が燃焼室側に配置され、支持要素9が接続側に配置されていることが、読み取れる。
・さらに、発明特定事項1Gと甲第2-1号証との関係の上記の説明を総合すれば、甲第2-1号証と甲第3-1号証とには、以下の構成が共通して記載されている。
「膜7と支持要素9とを備えており、
膜7と支持要素9とのうちの燃焼室側の膜7は、加熱ロッド1と接触管6のうち燃焼室側の加熱ロッド1に固定されている部分と、グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)の燃焼室側に固定されている部分と、両者間にある弾性変形する部分と、を備え、
膜7と支持要素9とのうちの接続側の支持要素9は、加熱ロッド1と接触管6のうち接続側の接触管6に固定されている部分と、グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)の接続側に固定されている部分と、両者間にある弾性変形する部分と、を備えている。」

請求項14の発明特定事項14A
・発明特定事項8Aと甲第2-1号証との関係について上述したように、上記記載(ス)には、「膜7は、・・・グロープラグの接続側の方向に対する気密性を保持するように装置をシールする」と記載されている。

請求項15の発明特定事項15A
・発明特定事項1Gと甲第2-1号証との関係について上述したように、甲第2-1号証と甲第3-1号証とからは、可撓性支持要素9が、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2とに固定されている構成が、読み取れる。
・また、発明特定事項1C、1Dと甲第2-1号証との関係について上述したように、甲第2-1号証と甲第3-1号証とからは、接触管6が、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6のうちの接続側の部分であることが、読み取れる。
・以上により、支持要素9のうちの接触管6に固定された部分が、加熱ロッド1と接触管6とのうちの接続側に配置されている構成が、読み取れる。
・そして、図3Aには、支持要素9が、接触管6の接続側の端部に接続されていることが、示されている。
・以上の説明を総合すれば、甲第2-1号証と甲第3-1号証とには、以下の構成が共通して記載されている。
「支持要素9のうちの接触管6に固定された部分は、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6のうちの接続側の部分である接触管6の接続側の端部に、形成されている」

請求項16について
詳細については後述するように、甲第2-1号証(日本文献2)と甲第3-1号証(ドイツ文献3)とには、以下の発明(以下「先願発明2」という)が共通して記載されている。
「ディーゼル・エンジンのシリンダに挿入されるグロープラグであって、
シリンダに挿入されるグロープラグ本体2と、
前記グロープラグ本体内に軸線方向にスライドするように配置される、加熱ロッド1と、加熱ロッド1のグロー管1.1に固定されている接触管6と、
支持要素9上に配置され、加熱ロッド1と接触管6とのうちの接続側の部分である接触管6と、グロープラグ本体2と、の間に固定されるセンサ素子と、
加熱ロッド1と接触管6と、グロープラグ本体2と、の間に設けられており、加熱ロッド1と接触管6とを、軸線方向にスライド可能に支持するスライディング要素12と支持要素9とOリング3とを備えており、
グロープラグ本体2の燃焼室側の端部が、シリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成し、
スライディング要素12は、加熱ロッド1と接触管6とに固定されているとともに、加熱ロッド1を、グロープラグ本体2に対して軸線方向にスライド可能に支持し、
Oリング3は、グロープラグ本体2に固定されているとともに、加熱ロッド1を、グロープラグ本体2に対して軸線方向にスライド可能に支持し、
支持要素9は、加熱ロッド1と接触管6とのうちの接続側の部分である接触管6に固定されている部分と、グロープラグ本体2に固定されている部分と、それらの固定されている部分の間にある弾性変形する部分を備えていることを特徴とするグロープラグ。」

具体的には、甲第2-1号証(日本文献2)と甲第3-1号証(ドイツ文献3)とには、以下に示すように、本件請求項16に係る発明の発明特定事項16A?16Gに相当する構成が記載されている。

(発明特定事項16A)
・発明特定事項1Aと甲第2-1号証との関係の上記の説明と同様である。

(発明特定事項16B)
・上記の記載(ア)
・(セ)「図5に示す実施形態において、グロープラグ本体2は、1つの部品のみから成り」(日:0031、独:0037)

(発明特定事項16C)
・(ソ)「図5Aは、センサ装置が、図1に示されている構成とは反対に、接触管6の肩部にある変形例を示し、・・・図5Cは、図3Aにしたがったセンサ装置による変形例を示している。(日:0033、独:0039)
・(タ)「他の点において、センサ装置およびその機能は、図2および図3に示す実施形態のものと同じである。」(日:0034、独:0040)
・記載(イ)(オ)(ソ)(タ)、図3A、図5A、図5Cによれば、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6とが、図5Aのグロープラグ本体2の内に、軸線方向にスライド可能に収容されていることが、読み取れる。また、記載(キ)のように、接触管6が、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6とのうちの、接続側の部分であることが、読み取れる。

(発明特定事項16D)
・記載(カ)(ソ)、図3A、図5Cによれば、発明特定事項1Dと甲第2-1号証との関係の上記の説明と同様である。具体的には、図5Cの実施形態で、センサ素子8が、支持要素9上に配置された状態で、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定され得ることが、読み取れる。

(発明特定事項16E)
・(チ)「図5Aに示す実施形態において、グロー管1とグロープラグ本体2との間にスライディング要素12が設けられ、このスライディング要素は、グロープラグ本体2と加熱ロッド1との間に配置される。・・・スライディング要素は、加熱ロッド1を案内し、グロープラグ本体2に対する加熱ロッド1の本来の中心を決めるように作用する。」(日:0032、独:0038)
・(ツ)「図5に示す実施形態において、・・・加熱ロッド1および燃焼室に対するグロープラグ本体2の内部シール並びに外部シールがOリング3および4の組み合わせによって実現される。」(日:0031、独:0037)
・記載(イ)(ツ)と、記載(ツ)に対応する部分の翻訳と、図5Aとによれば、「Oリング3は、加熱ロッド1とグロープラグ本体2との間に設けられ、加熱ロッド1を軸線方向に沿ってスライド可能に支持している」ことが、日本文献2とドイツ文献3とから共通して読み取れる。
・また、「発明特定事項1E」の説明と記載(ソ)(タ)と図5Cによれば、図5Cの実施形態にも図3Aの可撓性支持要素9が適用されていることが読み取れる。

(発明特定事項16F)
・「発明特定事項1F」の説明と記載(セ)と図5A、図5Cによれば、図4の圧カグロープラグの代わりに図5A、図5Cのグロープラグが用いられる場合には、図5A、図5Cのグロープラグ本体2の燃焼室側の端部が、図4のシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成することが、読み取れる。

(発明特定事項16G)
・図5Aによれば、スライディング要素12の燃焼室側には、外径が燃焼室側に向かってスライディング要素12の内径よりも大きくなる加熱ロッド1が配置され、スライディング要素12の接続側には、接触管6が配置されている。スライディング要素12は、加熱ロッド1と接触管6とに挟まれており、加熱ロッド1と接触管6とに対して移動することができない。このように、図5Aには、スライディング要素12が、加熱ロッド1と接触管6とに固定された状態で、加熱ロッド1を支持していることが、示されている。
・また、図5Aには、Oリング3がグロープラグ本体2の内周面に設けられた溝に嵌め込まれた状態で、すなわち、Oリング3がグロープラグ本体2に固定された状態で、加熱ロッド1を支持していることが、示されている。
・また、発明特定事項1Gと甲第2-1号証との関係の上記の説明と、記載(セ)(ソ)によれば、図3Aの可撓性支持要素9が、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2とに固定されていることが、読み取れ、このような可撓性支持要素9が、図5Cの実施形態にも適用されていることが、読み取れる。

上記記載事項からみて、甲第2-1号証と甲第3-1号証とには、上記の先願発明2が共通して記載されている。

なお、上記の記載(ア)?(ツ)を引用して説明した構成は、いずれも、翻訳にも示すように、ドイツ文献3にも記載されている。

本件特許発明と先行技術発明との対比
(a)請求項1(本件発明1)について
上記の参考図2にも示すように、本件発明1と先願発明1とを対比すると、
後者の「シリンダヘッド20」は、前者の「エンジンヘッド」に相当し、以下、同様に、
「グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)」は、「ハウジング」に、
「加熱ロッド1と接触管6」は、「中軸」に、
「接続側」は、「反燃焼室側」に、
「センサ素子8」は、「圧力センサ」に、
「膜7と支持要素9」は、「支持部材」に、
膜7と支持要素9とのそれぞれのうち「加熱ロッド1または接触管6に固定されている部分」は「中軸固定部」に、
膜7と支持要素9とのそれぞれのうち「グロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分」は、「ハウジング固定部」に、
膜7と支持要素9とのそれぞれのうち「両者間にあって弾性変形する部分」は、「弾性部」に、
それぞれ相当する。

具体的には、記載(ア)(イ)によれば、加熱ロッドが燃焼室内の圧力を受けること、すなわち、加熱ロッドが燃焼室に臨んでいることが、読み取れる。

また、上記の甲第1号証の説明にもあるように、グロープラグが燃焼室内の熱源として用いられることと、エンジンのシリンダヘッドの貫通穴にグロープラグ本体が螺合されることとは、周知である。例えば、甲第2-1号証の図4には、シリンダヘッド20にグロープラグが取り付けられることが、示されている。従って、先願発明1において、グロープラグが、「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けられる」ということができ、グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)は、「シリンダヘッド20の貫通穴を画定する内壁に結合する」ということができる。

上記記載(イ)と図1、図3Aとによれば、グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)が「略筒状」であるということができる(参考図2)。

また、エンジンが適切に動作するためには、グロープラグ本体の燃焼室側の端部とシリンダヘッド20との密封は、継続される。従って、先願発明1において、「グロープラグを貫通穴に取り付けると、グロープラグ本体の燃焼室側の端部が、シリンダヘッド20に対して密封し続ける」ということができる。

また、記載(イ)(オ)によれば、先願発明1において、加熱ロッド1と接触管6とは、軸線方向にスライドするように移動するので、膜7と支持要素9とのそれぞれの弾性変形する部分は、「中軸固定部とハウジング固定部との間の軸方向距離を変化させる」ということができる。

このように、本件発明1と先願発明1とは全て一致し、相違点は無い。

(b)請求項2(本件発明2)について
本件請求項2では、支持部材を構成する部品の数が限定されていないので、本件発明2は、請求項2の支持部材が、請求項2の支持部材の構成を分担して備える複数の部品によって構成される態様を含む。

ここで、本件発明2と先願発明とを対比すると、上記の本件発明1について示した事項が相互に相当または共通する他、
後者の「燃焼室側」は、前者の「先端側」に相当し、以下、同様に、
「接続側」は、「後端側」に、
膜7と支持要素9とのそれぞれの「グロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分」は、「ハウジング固定部」に、
膜7のうちの「加熱ロッド1に固定されている部分」は、「先端側中軸固定部」に、
膜7のうちの「その部分とグロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分との間にある弾性変形する部分」は、
「先端側弾性部」に、
支持要素9のうちの「接触管6に固定されている部分」は、「後端側中軸固定部」に、
支持要素9のうちの「その部分と上方部分2.2に固定されている部分との間にある弾性変形する部分」は、「後端側弾性部」に、
それぞれ相当する。

このように、本件発明2と先願発明とは、全て一致し、相違点は無い。

(c)請求項8(本件発明8)について
本件発明8と先願発明とを対比すると、上記の本件発明1、2について示した事項が相互に相当または共通する。

さらに、上記記載(ス)によれば、先願発明において「加熱ロッド1とグロープラグ本体との間は、全周に亘って隙間無く、膜7によって塞がれている」ということができ、ひいては、「膜7のうち加熱ロッド1に固定されている部分は、加熱ロッド1を一巡しており、膜7のうちグロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分は、グロープラグ本体を一巡しており、膜7の両者間の部分は、両者間を一巡している」ということができる。

このように、本件発明8と先願発明とは全て一致し、相違点は無い。

(d)請求項9(本件発明9)について
本件発明9と先願発明とを対比すると、上記の本件発明1について示した事項が相互に相当または共通する他、
後者の「膜7と支持要素9」は、前者の「2つの支持部材」に相当し、以下、同様に、
「膜7」は、「先端側支持部材」に、
膜7のうち「加熱ロッド1に固定されている部分」は、「先端側中軸固定部」に、
膜7のうち「グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)の燃焼室側に固定されている部分」は、「先端側ハウジング固定部」に、
膜7のうち「両者間にある弾性変形する部分」は、「先端側弾性部」に、
「支持要素9」は、「後端側支持部材」に、
支持要素9のうち「接触管6に固定されている部分」は、「後端側中軸固定部」に、
支持要素9のうち「グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2)の接続側に固定されている部分」は、「後端側ハウジング固定部」に、
支持要素9のうちの「両者間にある弾性変形する部分」は、「後端側弾性部」に、
それぞれ相当する。
このように、本件発明9と先願発明とは全て一致し、相違点は無い。

(e)請求項14(本件発明14)について
本件発明14と先願発明とを対比すると、上記の本件発明1、9について示した事項が相互に相当または共通する。

さらに、上記記載(ス)によれば、先願発明において「加熱ロッド1とグロープラグ本体との間は、全周に亘って隙間無く、膜7によって塞がれている」ということができ、ひいては、「膜7のうち加熱ロッド1に固定されている部分は、加熱ロッド1を一巡しており、膜7のうちグロープラグ本体(下方部分2.1または上方部分2.2)に固定されている部分は、グロープラグ本体を一巡しており、膜7の両者間の部分は、両者間を一巡している」ということができる。

このように本件発明14と先願発明とは全て一致し、相違点は無い。

(f)請求項15(本件発明15)について

本件発明15と先願発明とを対比すると、上記の本件発明1について示した事項が相互に相当または共通する。

さらに、上記の通り、先願発明では「支持要素9のうちの接触管6に固定された部分は、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6のうちの接続側の部分である接触管6の接続側の端部に、形成されている」ことを考慮すれば、甲第2-1号証の図3Aには、「支持要素9のうちの接触管6に固定された部分は、互いに固定された加熱ロッド1と接触管6のほぼ中心よりも接続側に形成されている」ことが示されている、ということができる。

このように、本件発明15と先願発明とは全て一致し、相違点は無い。

(g)請求項16(本件発明16)について
本件請求項16では、支持部材を構成する部品の数が限定されていないので、本件発明16は、請求項16の支持部材が、請求項16の支持部材の構成を分担して備える複数の部品によって構成される態様を含む。

ここで、本件発明16と先願発明2とを対比すると、
後者の「シリンダヘッド20」は、前者の「エンジンヘッド」に相当し、
以下、同様に、
「グロープラグ本体2」は、「ハウジング」に、
「加熱ロッド1と接触管6」は、「中軸」に、
「接続側」は、「反燃焼室側」および「後端側」に、
「センサ素子8」は、「圧力センサ」に、
「スライディング要素12と支持要素9とOリング3と」は「支持部材」に
「Oリング3」と「スライディング要素12」とは、それぞれ、「先端側中軸支持部」に、
支持要素9のうち「接触管6に固定されている部分」は、「後端側中軸固定部」に、
支持要素9のうち「グロープラグ本体2に固定されている部分」は、「ハウジング固定部」に、
支持要素9のうち「それらの固定されている部分の間にある弾性変形する部分」は、「後端側弾性部」に、
それぞれ相当する。

具体的には、本件特許発明1と先願発明1との対比での説明と同様に、先願発明2では、
グロープラグが、「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けられる」ということができ、
グロープラグ本体2は、「シリンダヘッド20の貫通穴を画定する内壁に結合する」ということができ、
グロープラグ本体2が「略筒状」であるということができ、
「グロープラグを貫通穴に取り付けると、グロープラグ本体2の燃焼室側の端部が、シリンダヘッド20に対して密封し続ける」ということができる。

このように、本件発明16と先願発明2とは全て一致し、相違点は無い。

以上のとおり、本件特許の請求項1、2、8、9、14、15、16に係る特許発明は、いずれも、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された発明と同一であるので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

b 弁駁書における主張の概要

甲第2-1号証には、膜7に関して、以下の記載がある。
・『加熱ロッド1は、接続側の小径部分を有し、膜7は、この領域で加熱ロッド1に固定されている。・・・膜7は、例えば、レーザ溶接によって本体上方部分2.1の端面に強固に配置される。』(段落0012(甲第3-1号証の段落0019))
・『ディーゼル・エンジンのシリンダの圧力は、加熱ロッド1に作用し、その結果、加熱ロッド1が軸線方向に移動され、膜7が接触管6を接続側のグロープラグ本体2の部分2.2に対して移動させる。』(段落0020(甲第3-1号証の段落0026))

このように、「グロープラグ本体2の部分2.1、2.2に対する加熱ロッド1(接触管6)の相対的な働きが、膜7を介している」ことが、甲第2-1号証と甲第3-1号証とから共通して読み取れる。これは、膜7が、加熱ロッド1の支持に多少なりとも寄与していることを示している。
このように、甲第2-1号証の膜7は中軸を支持する機能を備えており、膜7は、本件特許に係る「支持部材」に相当する。

甲第2-1号証の図4の実施形態では、図1の実施形態とは異なり、加熱ロッド(グロー管)及び接触管と、グロープラグ本体と、の間のうち、接続側の部分において、1つのOリング(図1のOリング4に相当する)が配置され、燃焼室側の部分において、Oリング3が省略されて、膜7のみが配置されている。
このような図4の実施形態においても、シリンダ圧力を適切に測定するために、図1の実施形態と同様に、グロープラグ本体に対する加熱ロッド (グロー管)及び接触管の中心が決められているはずである。
仮に膜7が中軸を支持する機能を備えていないと仮定すると、加熱ロッド(グロー管)及び接触管は、接続側のOリングを支点として、グロープラグ本体に対して傾いてしまう。この結果、加熱ロッド(グロー管)や接触管が、直接的に、グロープラグ本体に接触してしまい、シリンダ圧力の適切な測定ができなくなる。
従って、図4の膜7は、加熱ロッド(すなわち、中軸)を支持する機能を備えているというべきである。
そして、甲第2-1号証には、図4の膜7に関して、以下の記載がある。
・『燃焼室側の端部には、図1に示した実施形態の膜7と同じ機能を有する膜7が設けられている』(段落0030(甲第3-1号証の段落0036))
このように、図4の膜7が中軸を支持する機能を備えており、図1の膜7と図4の膜7とが同じ機能を有しているので、図1の膜7も中軸を支持する機能を備えていると解釈するのが自然である。

甲第2-1号証の他の図(例えば、図3A、図3B)の膜7に関しても、段落0026(甲第3-1号証の段落0032)などで説明されているように、基本的な構成は図1及び図2の実施形態の基本的な構成に対応しているので、膜7は、中軸を支持する機能を備えているというべきである。
このように、甲第2-1号証の膜7は中軸を支持する機能を備えており、本件特許に係る「支持部材」に相当する。

甲第2-1号証の膜7は、中軸を支持する機能を備えており、訂正前の請求項1に係る発明の「支持部材」に相当する。
以上により、審判請求書でも説明したように、訂正前の請求項1、15に係る発明は、先願発明と同一であるので、それらの特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

仮に甲第2-1号証の膜7が中軸を支持する機能を備えていないと認定される場合であっても、甲第2-1号証の支持要素9は、訂正前の請求項1に係る発明の「支持部材」に相当する。
以上により、審判請求書でも説明したように、訂正前の請求項1、15に係る発明は、先願発明と同一であるので、それらの特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第2-1号証の膜7は、中軸を支持する機能を備えており、請求項9、14に係る発明の「支持部材」に相当する。
以上により、審判請求書でも説明したように、請求項9、14に係る発明は、先願発明と同一であるので、それらの特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

本件明細書の段落0005には、「また支持部材及び/又はハウジングは、複数の部材で構成されていても構わない」ことが記載されている。そして、訂正後の請求項2では、[支持部材が1個の部材で構成されている」とは限定されていない。従って、訂正発明2の発明特定事項2Aaの「支持部材」は、複数の部材で構成されていてもよい。

特に、仮に上記訂正事項1が適法な訂正と認められるならば、訂正発明2においても、「支持部材」と「ハウジング」とのそれぞれの構成を柔軟 に特定することが許されるべきである。

さらに、上述したように、甲第2-1号証の膜7は、中軸を支持する機能を備えている。

以上の事情を考慮すると、発明特定事項1A?1Gと、甲第2-1号証の図3Aの構成と、の間の審判請求書で説明した対応関係を、以下のように特定し直すことが可能である。

・甲第2-1号証の図3Aのブロープラグ本体2の上方部分2.2は、発明特定事項1Eの支持部材の一部(より具体的には、発明特定事項1Gのハウジング固定部の一部)に相当する。

この場合、膜7と支持要素9とのそれぞれのうち「上方部分2.2」に固定されている部分と、上方部分2.2と、で構成される連続な部分の全体が、1つのハウジング固定部(すなわち、発明特定事項2Aaの「ハウジング固定部」)」に相当する。
発明特定事項2Aaの他の構成と甲第2-1号証の図3Aの構成との対応関係は、審判請求書の20頁で説明した発明特定事項2Aと図3Aとの対応関係と、同じである。

このように、甲第2-1号証の図3Aに記載の先願発明における支持部材(膜7と上方部分2.2と支持要素9)は、訂正発明2における支持部材と同じく、1つのハウジング固定部を挟んで、先端側弾性部(膜7のうち弾性変形する部分)と、後端側弾性部(支持要素9のうち弾性変形する部分)が設けられる構成となっている。

以上のように、訂正発明2は、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された発明と同一である。

訂正発明2は、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された先願発明と同一である。そして、請求項2に従属する請求項8に挙げられた構成は、審判請求書の22頁で発明特定事項8Aについて説明したように、同じ先願発明に記載されている。

答弁書では、被請求人は、甲第2-1号証のスライディング要素12は加熱ロッド1に固定されているものとはいえない、と主張する。

しかし、甲第2-1号証の図5Aには、加熱ロッド1と接触管6とに挟まれたスライディング要素12であって、加熱ロッド1に対して動くことができないスライディング要素12が、示されている。
具体的には、スライディング要素12の燃焼室側には、スライディング要素12の内径よりも大きい外径を有する加熱ロッド1の部分が配置されている。スライディング要素12の接続側には、スライディング要素12の内径よりも大きい外径を有する接触管6が配置されている。甲第2 -1号証の段落0013(独:0020)によれば、接触管6は、加熱ロッド1のグロー管1.1に固定されている。
従って、スライディング要素12は、加熱ロッド1に対して動くことができないので、加熱ロッド1に固定されているといえる。

また、図5Aには、スライディング要素12が、加熱ロッド1の先端側に固定されていることが示されている。
具体的には、図5Aにおいて、スライディング要素12は、加熱ロッド1の燃焼室側の端(先端に相当する)と内極1.2の接続側の端(後端に相当する)との間の比較的に加熱ロッド1の先端に近い位置に配置されている。
甲第2-1号証の段落0013(独:0020)には、内極1.2が「加熱ロッド1の内極1.2」であることが記載されている。従って、内極1.2の後端は、加熱ロッド1の後端に相当する。
そうすると、スライディング要素12は、加熱ロッド1の先端と後端との間の先端側に位置しているといえる。

以上により、スライディング要素12は、中軸に相当する加熱ロッド1の先端側に固定されているといえる。従って、スライディング要素12は、発明特定事項16Gaの先端側中軸支持部に相当する。

訂正発明16は、甲第2-1号証と甲第3-1号証とに共通して記載された発明と同一であるので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

c 要領書における主張の概要

審理事項通知書の「2無効理由ウについて」の「(1)合議体の暫定的な見解」でも説明されているように、「ダイアフラム」は、一般に、「膜板」を意味しており、甲第2-1号証の「膜7」は、本件特許発明の支持部材として想定しているダイアフラム状の先端側支持部材133と技術的な差異は無いと考えます。

さらに、本件明細書の段落0023には、ダイアフラム状の支持部材に代わる支持部材の構造として、「支持部材内に残部より膜厚が薄い起歪部が形成されている構造」が挙げられています。ここで、「起歪部」の特徴は「膜厚が薄い」ことですので、「起歪部」は、薄い膜状の部分であるといえます。また、「起歪部」の特徴を説明する用語として「膜厚」という用語が用いられていることからも、本件明細書においては、「起歪部」は膜状の部分であると理解すべきです。
さらに、本件明細書の段落0023にも説明されているように、起歪部と、ダイアフラム状の支持部材とは、共に弾性部の一例です。そして、段落0005には「ここでいう弾性部とは、中軸をその軸線に沿って平行に変位させるために、その弾性変形が積極的に利用される部分をいう。」と記載されています。
また、審判請求書でも説明したように、甲第2-1号証の「膜7」も弾性変形します。
このように、「起歪部」と「ダイアフラム状の支持部材」と「甲第2-1号証の膜7」との間では、膜(膜状の部分)であることと弾性変形するという機能とが共通しています。
なお、本件明細書には、図1?図4、図6?図8の支持部材30、30A、30B、30Cの起歪部(例えば、先端側起歪部32、32A?32Cや後端側起歪部34、34A?34C)の具体的な形状に関して、説明がされています(例えば、段落0029、0032-0035など)。しかし、訂正前後の少なくとも請求項1、2、8、9、14、15、16では、起歪部のそのような形状は限定されていません
さらに、甲第2-1号証の「膜7」は、審判請求書と弁駁書とで説明したように、本件特許発明の「ハウジング固定部」と「中軸固定部」とにそれぞれ相当する部分を有しています。
従って、本件特許発明の支持部材として、図1?図4、図6?図8の支持部材30、30A、30B、30Cが想定されている場合であっても、甲第2-1号証の「膜7」は、訂正前後の少なくとも請求項1、2、8、9、14、15、16(訂正後の請求項15を除く)に係る発明の「支持部材」に相当すると考えます。

訂正発明15に対しては、無効理由ウを主張いたしません。

d 上申書における主張の概要
本件明細書の段落0023には「弾性部の一例としては、支持部材内に残部より膜厚が薄い起歪部が形成されている構造や、支持部材自体がダイアフラム状に形成されそれ自体が弾性部である構造を挙げることができる。」と記載されている。「膜厚が薄い起歪部」や「ダイアフラム」は、膜状の部分であるので、本件特許発明の「・・・中軸固定部と、・・・ウジング固定部と、両者間にあって弾性変形する・・・弾性部を備え」る支持部材は、中軸固定部とハウジング固定部と両者間にある膜状の部分を備える部材を含んでいる。
例えば、甲第2-1号証の「膜7」は審判請求書と弁駁書と請求人の口頭審理陳述要領書とで説明したように本件特許発明の「ハウジング固定部」と「中軸固定部」と両者間にある「弾性部」とにそれぞれ相当する部分を有しており、「ハウジング固定部」と「中軸固定部」との間の「弾性部」が弾性変形する。例えば、甲第2-1号証の膜7の「中軸固定部」に相当する部分が「ハウジング固定部」に相当する部分から遠ざかろうとする場合に、膜7の「弾性部」に相当する部分が弾性変形する。この場合、「中軸固定部」に相当する部分(ひいては、中軸)が、「ハウジング固定部」に相当する部分(ひいては、ハウジング)から自由に遠ざかることが妨げられる。
このように、甲第2-1号証の「膜7」は、ハウジング(例えば、グロープラグ本体(下方部分2.1と上方部分2.2))に対して中軸(例えば、加熱ロッド1と接触管6)の位置が自由に変化することを妨げている。このことから、「膜7」が、中軸の支持に多少なりとも寄与しているということができる。
以上により、甲第2-1号証の「膜7」は、本件特許発明の「支持部材」に相当する。
なお、被請求人は、被請求人の口頭審理陳述要領書の5頁の最下の5行に記載された命題I?Vの立証が必要であると主張しているが、上記の通り、命題I?Vを立証せずとも、「膜7」は「支持部材」に相当しているといえる。

また、甲第2-1号証の段落0039には、「加熱ロッド1は、例えば、膜・・・によって、グロープラグ本体2内に可動に配置されている」と記載されている。甲第3-1号証の対応する段落0046の対応する部分の訳は「加熱ロッド1は、グロープラグ本体2の中で、例えば膜・・・を介して動くように配置されており」であり、その内容は、甲第2-1号証の対応する段落0039の対応する部分の内容と同じである。
この記載からも、甲第2-1号証の膜7が加熱ロッド1を支持しているということができ、すなわち、「膜7」が「支持部材」に相当しているといえる。

被請求人の口頭審理陳述要領書の6頁の下から6行目には、「ハウジングの一部を支持部材と解釈可能であるとは述べられてない」と記載されているが、本件明細書の段落0005には、「支持部材は、ハウジングの一部を利用して形成されていてもよい」と記載されているので、弁駁書の主張(例えば、第11頁第10行?第12頁第13行)は成立する。

以上により、訂正発明2は、審判請求書で説明した無効理由ウにより、無効にすべきである。

訂正発明1に関して上述したように、甲第2-1号証の「膜7」は本件発明の支持部材に相当するので、訂正発明9は、審判請求書で説明した無効理由ウにより、無効にすべきである。

甲第2-1号証の「膜7」は本件発明の支持部材に相当する。
さらに、弁駁書の第13頁の第14行?第21行の主張は、甲第2-1号証の図5Aに記載された構成から読み取ることができ、仮に、スライディング要素12がゴムのように伸縮可能な材料で構成されていたとしても、スライディング要素12は、加熱ロッド1のうちスライディング要素12の燃焼室側の太い部分とスライディング要素12の接続側の接触管6との間に挟まれているので、エンジンのシリンダの圧力によって加熱ロッド1が移動された程度では、スライディング要素12はその間から外に移動できない。従って、スライディング要素12は、加熱ロッド1に固定されているといえる。
以上により、訂正発明16は、審判請求書で説明した無効理由ウにより、無効にすべきである。

(4)無効理由エ

a 審判請求書における主張の概要

本件特許の請求項1?16に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由エ」という。)。

以下に説明するように、本件請求項1、16の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」によって特定される発明の範囲が不明確である。

本件明細書等には、中軸と圧力センサとの固定部分の構造に関する以下の記載(イ)?(ハ)がある。
(イ)段落0025:圧力センサ50は中軸20の軸線に沿って配置されている。中軸20と圧力センサ50は、中軸20の軸線と直交する面で断面視したときに、その軸が一致して配置されている。また、圧力センサ50は、ハウジング44の中空空間内に収容されており、換言すると、中軸20に置き換わって配置されているとも言える。
(ロ)段落0039:圧力センサ150は中軸の軸線に沿って配置されている。圧力センサ150と中軸は、軸線と直交する面で断面視したときに、その軸が一致して配置されている。
(ハ)本件明細書等の図1、図10には、中軸の反燃焼室側の端面に圧力センサが固定されている構成が、示されている。

本件明細書等には、中軸と圧力センサとの固定部分の具体的な構造については、上記の(イ)?(ハ)以外には、記載は無い。

一方、本件発明の請求項1、16、そして、請求項1を引用する請求項2?15のいずれにも、中軸と圧力センサとの固定部分の構造については、具体的には記載されておらず、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」を、何らかの構造に限定して解釈すべき理由は無い。

そうすると、「中軸の反燃焼室側」は、例えば以下の(I)?(IV)など、具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明である。
(I)中軸のうちの反燃焼室側の一部分
(II)中軸の反燃焼室側の端面
(III)中軸の反燃焼室側の端よりも反燃焼室側であって、中軸の軸線上の位置
(IV) 中軸の反燃焼室側の端よりも反燃焼室側であって、中軸の軸線から離れた位置

このように、「中軸の反燃焼室側」が具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。

そして、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は、例えば以下の(A)、(B)(ひいては、上記の引用発明1、先願発明1、2)など、具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明である。
(A)「圧力センサが、中軸のうちの反燃焼室側の一部分の表面のうち、反燃焼室側の端面ではなく、当該端面よりも燃焼室側の表面に固定されている」
(B)「圧力センサが、中軸の軸線上ではなく、当該軸線から離れた位置に配置されている」
このように、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」が具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。

よって、請求項1?16に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

b 弁駁書における主張の概要

答弁書では、被請求人は、『なお、大辞林第三版によると「間(あいだ)」とは、「ものとものとを隔てる空間,または時間。間隔。へだたり。」という意味を持つ。そうすると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間」とは、「中軸の反燃焼室側」と「ハウジング」とを隔てる空間を意味する。そして、「固定されている圧力センサ」とは、その空間に「圧力センサ」が固定されていることを意味するにすぎない。』と主張する。

このように、請求項の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は、圧力センサが中軸の反燃焼室側やハウジングに固定されていることを意味するものではない。
また、訂正の前後のそれぞれにおいて、請求項1?16のいずれにも、圧力センサと、中軸の反燃焼室側やハウジングとの固定に関する他の記載は無い。

従って、訂正の前後のそれぞれにおいて、請求項1?16に係る各発明は、圧力センサが中軸の反燃焼室側やハウジングに固定されていない態様も含むと解釈されるべきである。
例えば、略筒状のハウジング内にスライド可能に中軸が配置され、中軸の外周面とハウジングの内周面との間に圧力センサが配置され、圧力センサが中軸には固定されずにハウジングのみに固定されている態様が、請求項1?16に係る各発明に含まれ得る。このような態様では、「圧力センサ」は、『「中軸の反燃焼室側」と「ハウジング」とを隔てる空間』、すなわち、「中軸の反燃焼室側とハウジング間」に固定されているというべきである。しかし、圧力センサは中軸には固定されていないので、中軸の変位は圧力センサには伝わらない。

このように、訂正の前後のそれぞれにおいて、請求項1?16では、「圧力センサ」が「中軸の反燃焼室側とハウジング間」、すなわち、『「中軸の反燃焼室側」と「ハウジング」とを隔てる空間』に固定されていることのみが限定されている。従って、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は、「圧力センサ」と「中軸の反燃焼室側」とが固定されていない態様や、「圧力センサ」と「ハウジング」とが固定されていない態様など、具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。

なお、答弁書では、被請求人は、「当然のことながら、圧力センサは中軸またはハウジングに対し直接固定されている必要はないし、中軸の軸線上に固定されている必要もない。中軸の変位を圧力センサに伝えることができれば、本件発明の機能を発揮することは、上記段落0006の記載に基づき出願時点における当業者にとって自明である」と主張する。

しかし、特許法第70条第1項に定められているように、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきである。そして、訂正の前後のそれぞれにおいて、特許請求の範囲には、答弁書の主張のように機能を発揮するように限定して解釈するための記載は無い。

従って、訂正の前後のそれぞれにおいて、請求項1?16に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

c 上申書における主張の概要
被請求人の口頭審理陳述要領書の第9頁の第1行?第9行では、被請求人は、『本件明細書段落0006には以下のような記載がある『圧カセンサは、ハウジングと中軸の間に固定されていることから、・・・』以上の記載を参照すると・・・訂正発明は特許法第36条第6項第2号に違反しているとはいえない。』と主張している。
一方、答弁書の第7頁第13行?第8頁第9行の被請求人の主張を考慮すると、段落0006の記載「ハウジングと中軸の間」は、「ハウジング」と「中軸」とを隔てる空間を意味しており、段落0006の記載は、その空間に「圧力センサ」が固定されていることを意味するにすぎない。そうすると、段落0006の記載を考慮したとしても、弁駁書でも説明したように、請求項の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は、圧力センサが中軸の反燃焼室側やハウジングに固定ざれていない態様も含むと解釈されるべきであり、また、請求項の上記記載を、具体的な構成に限定して解釈すべき理由も無い。
このように、請求項の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は、「圧力センサ」と「中軸の反燃焼室側」とが固定されていない態様や、「圧力センサ」と「ハウジング」とが固定されていない態様など、具体的にどのようなものまでを包含するのかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りょうである。従って、訂正の前後のそれぞれにおいて、請求項1?16に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

また、被請求人の口頭審理陳述要領書の第8頁第11行?第12行には、『被請求人は「前記圧力センサは、中軸のハウジングに対する変位を測定することが可能である」とさらに訂正する用意がある』と記載されている。
しかし、本件明細書には、「変位を測定することが可能」な構成が、具体的にどのようなものまでを包含するのかを特定する記載がなく、そのような訂正後の請求項に係る発明の範囲(外延)は不明りょうである。従って、そのように訂正したとしても、訂正後の請求項に係る発明は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2 被請求人の主張の概要

(1)無効理由ア及びイ

a 答弁書における主張の概要
本件請求項1に係る発明を新たな発明特定事項1Hにより減縮した。
本件発明1は甲第1号証記載の発明とは発明特定事項1Hで異なるから、新規性があるといえる。

本件発明1は甲第1号証記載の発明から当業者が容易に想到した発明とはいえない。ゆえに、本件発明1は特許法第123条第1項第2号には該当しない。

本件発明1は新規性および進歩性があるため、それに従属する請求項15に係る発明も新規性および進歩性を有する。ゆえに、本件発明15は特許法第123条第1項第2号には該当しない。

b 要領書における主張の概要
訂正事項1が認められることから、無効理由アは成り立たない。
無効理由イについても、発明特定事項1Hが相違していることから成り立たない。

c 上申書における主張の概要
請求人は9月15日付の陳述要領書において、「支持部材のハウジングに対する固定位置の変更は、当業者の通常の創作能力の発揮である(請求人要領書3ページ25、26行)」と述べている。

しかし、請求人の主張は以下に述べるとおり成り立たない。

まず、火炎に晒される燃焼室側の端部に皿ばね27を設けることは、以下の理由により甲第1号証の課題である「燃焼室内圧力の正確な測定」と逆行しており通常の当業者であればそのような設計変更を行うとは考えられず阻害要因がある。ゆえに、甲第1号証に接した当業者が本件発明特定事項1Hに容易に想到することはできない。

(I)燃焼室側の端部に皿ばね27を設けると、皿ばね27は、内燃機関の燃焼行程において高温の火炎にさらされ、それにより熱膨張を起こす。よって、燃焼室内の圧力を正確に測定することができなくなる(参考、明細書段落0008等)。

(II)燃焼室側の端部に皿ばね27を設けると、ブロープラグのヒーター32の発熱により皿ばね27が熱膨張を起こす。よって、燃焼室内の圧力を正確に測定することができなくなる(参考、明細書段落0032等)。

甲第1号証における皿ばね27の位置は、筒状部材24についてヒーター32とは反対の場所?すなわちもっとも遠い場所であるハウジングの内側に設置されていることが把握される。そうすると、訂正発明特定事項lH「ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられている」は甲第1号証にかかるブロープラグとは技術思想としては全く正反対の思想といえる。

よって、甲第1号証に接した当業者が訂正発明1に容易に想到することはできない。

(2)無効理由ウ

a 答弁書における主張の概要

請求人は、先願発明に係る「膜7」が、本件特許に係る「支持部材」に相当すると主張しているが、その解釈は誤りである。よって、請求人の主張は成り立たない。
本件特許に係る支持部材は、「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材」を指し、中軸を支持する程度の可撓制を有する部材を意味する。

一方、甲第2-1号証には以下の記載がある。
(ア).膜7について
『膜7は、グロープラグ本体を密封すると同時に、外部に固定されていることからグロープラグ本体をシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成する。〔0030〕』
(イ).Oリングについて
『Oリングは、接触管6によってグロープラグ本体の上方部分2.2内で加熱ロッド1の延長部の中心を決める。〔0013〕』
『加熱ロッド1は、Oリング3および4の補助によってフロ-ティング形態でグロープラグ本体2内に支持されている。〔0035〕』
(ウ).スライディング要素について
『スライディング要素は、加熱ロッド1を案内し、グロープラグ本体2に対する加熱ロッド1の本来の中心を決めるように作用する。〔0032〕』
(エ).支持要素9について
『この支持要素は、軸線方向に所定の可撓性を有するものであり、〔0027〕』
『前記支持要素は、・・・前記加熱ロッドによって伝達された圧力が前記支持要素の軸線方向の伸長を生じさせるようにされていてもよい。』

以上の記載を参酌すると、膜7は、燃焼圧力の変化に伴い中軸のスライドに追従する程度の『柔軟性』を有することは認められるが、中軸を『支持』するための可撓性を有することまでは記載も示唆もない。
そして、Oリングまたはスライディング要素により、中軸が支持されていることを示す記載があることを参酌すると、当業者であれば膜7は中軸を支持する機能が備わっていないものであると解釈するのが自然である。
しかも、先願発明における膜7は支持要素9と異なる言葉で区別して扱われており、そのような事柄を総合しても、膜7を支持部材と解すことは許されない。
そうすると、以下に述べるように先願発明と本件特許は実質同一とはいえないことから、請求人の主張は成り立たない。ゆえに、本件特許は特許法第123条第1項第2号には該当しない。

(2-1)請求項1(本件発明1)について
本件発明1に係る支持部材は、「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持」しかつ、「中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部」を備えている。
一方、先願発明に係る膜7は、中軸を支持する機能を備えていない。つまり、本件発明1に係る支持部材は、膜7に比べて新たな効果(中軸を支持する機能)を奏するといえる。よって、本件発明1に係る支持部材と、膜7との相違点は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
よって、先願発明に係る膜7は、本件発明1に係る支持部材と実質同一とはいえない。ゆえに、本件発明1についての請求人の主張は成り立たない。

同様の理由により、請求項2、8、9、14、15に対する請求人の主張は成り立たない。

(2-2)請求項2(本件発明2)について
既に述べた通り、膜7は支持部材ではないから、本件発明2は先願発明と実質同一とはいえないことは明らかである。但し、仮に、膜7が支持部材と実質同一であるといえたとしても、以下のとおり請求人の主張は成り立たない。

本件発明2における支持部材は1つのハウジング固定部を挟んで、先端側弾性部と、後端側弾性部が設けられる構成となっている。
「支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、前記ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部」
一方、先願発明は、膜7と支持要素9はそれぞれ独立に設けられており本件発明2と異なる。本件発明2は上記構成を備えることにより、「中軸は先端側と後端側の2箇所で支持されているので、平行を維持してスライドすることができる。(本件明細書段落0007)」という効果を奏している。
よって、先願発明の膜7および支持要素9は本件発明2の支持要素と実質同一とはいえない。ゆえに、本件発明2についての請求人の主張は成り立たない。

(2-3)請求項16(本件発明16)について
本件発明16の支持部材は、「中軸の先端側に固定されている」ものである。それにより、「中軸が熱膨張したとしても、圧力センサに予め加えられていた予荷重(あるいは圧力センサの初期状態)が変動してしまう現象が顕著に抑制され、正確な燃焼圧を測定することができる(本件明細書段落0021)」という顕著な効果を奏する。
一方、請求人は、「スライディング要素12と支持要素9とOリング3と」は「支持部材」に相当すると述べている(審判請求書24頁14?15行目)。しかし、以下に述べる通り、Oリング3およびスライディング要素12は、それぞれ上記先端側中軸支持部を有さない。

(ア)スライディング要素12について
甲第2-1号証には「ブロー管1とブロープラグ本体2との間にスライディング要素12が設けられ、このスライディング要素は、グロープラグ本体2と加熱ロッド1との間に配置される。(甲第2-1号証0032段落)」との記載があるのみで、そもそもスライディング要素がグロープラグ本体2または加熱ロッド1のいずれかに固定されているものか、それともいずれにも固定されていないものなのかは先願発明からは明らかではない。

(イ)Oリング3について
甲第2-1号証には「グロープラグハウジングの接続側の部分内にはOリング4が設けられている。(甲第2-1号証0013段落)」等の記載があるように、本体2側にOリングが配置されており、加熱ロッド1または接触管6には固定されていないことは明らかである。

以上、スライディング要素12およびOリング3はいずれも加熱ロッド1に固定されているものとはいえない。
先願発明に係る「スライディング要素12と支持要素9とOリング3と」はいずれも、「中軸の先端側に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部」に相当する構成を有さず、よって本件発明16に係る支持部材と実質同一とはいえない。
本件発明16はそのような構造を採用することにより、「中軸が熱膨張したとしても、圧力センサに予め加えられていた予荷重(あるいは圧力センサの初期状態)が変動してしまう現象が顕著に抑制され、正確な燃焼圧を測定することができる(本件明細書段落0021)」という顕著な効果を奏する。よって、本件発明16の先端側中軸支持部と、先願発明のスライディング要素12およびOリング3は実質同一とはいえない。

よって、本件発明16についての請求人の主張は成り立たない。

b 要領書における主張の概要

(2-1)訂正発明1について
本件特許に係る支持部材は、「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材」を指し、中軸を支持する程度の可攘性を有する部材を意味する。

甲第2-1号証において、いずれの記載を参酌しても膜7が加熱ロッド1を支持?すなわち「ささえもつ」という機械的な役割を果たすものであることについては開示がないと被請求人は考える。

審理事項通知書では、「図解 機械用語辞典」に基づき、甲第2-1号証に係る膜7はダイアフラムの一種であると述べられている。ところで、ダイアフラムとは、「図解 機械用語辞典」に記載されているように「2つの空間を隔離する機能」を有する膜板のことである。また、甲第2-1号証に係る膜7は、「熱を伝達し」、「接地接続を保証し」、「気密性を保持し」、「レーザー溶接が可能なもの」(甲第2-1号証の段落0012)であるから、本件特許発明の支持部材として想定しているダイアフラム状の支持部材133と技術的な差異はないと述べられている。

整理すると、甲第2-1号証には膜7について以下のア)?オ)の開示がある。その点については、請求人との間に争いはない。

ア)膜7は、2つの空間を隔離するダイアフラムである
イ)膜7は、熱を伝達するものである
ウ)膜7は、接地接続を保証するものである
エ)膜7は、気密性を保持できるものである
オ)膜7は、レーザー溶接可能なものである
このうち、ア)はエ)の言い換えに相当する。

ところでア)?オ)の内容は、膜7の以下の性質、属性を規定したものと解釈できる
・ア)およびエ)は膜7の気密性に関する性質を規定したものである
・イ)は膜7を構成する材料の熱伝導性に関する属性を規定したものである
・ウ)は膜7を構成する材料の電気伝導性に関する属性を規定したものである
・オ)は膜を構成する材料の融点に関する属性を規定したものである

しかし、本件特許に係る支持部材が有する機能は、中軸を「ささえもつ」という機械的な機能であるから、上記ア)?オ)のいずれの性質・属性とは本来的に異質なものであり、ア)?オ)のいずれからも物理的に導くことはできない機能であると被請求人は考える。

仮に請求人が、甲第2-1号証に係る膜7が本件特許の支持部材に相当することを主張するならば、以下の命題I?Vのいずれかを科学的証明または当業者の技術常識であることを立証いただきたい。

I)2つの空間を隔離する膜板は、すべてささえる機能を有するものといえる
II)熱を伝達する膜板は、すべてささえる機能を有するものといえる
III)接地接続を保証する膜板は、すべてささえる機能を有するものといえる
IV)気密性を保持できる膜板は、すべてささえる機能を有するものといえる
V)レーザー溶接可能な膜板は、すべてささえる機能を有するものといえる

請求人は上記命題I?Vは当業者の技術常識とはいえないし、科学的にも立証できないことであると考える。ゆえに、膜7が支持部材に相当するという請求人の主張には誤りがある。

よって、発明特定事項が異なることから訂正発明1は甲第2-1号証に係るグロープラグとは実質同一とはいえない。ゆえに、訂正発明1についての無効理由(ウ)は成り立たない。

(2-2)訂正発明2について
既に述べた通り、膜7は支持部材ではないから、訂正発明2は甲第2-1号証に係る発明と実質同一とはいえない。但し、仮に、膜7が支持部材と実質同一であるといえたとしても、以下のとおり請求人の主張は成り立たない。

訂正発明2における支持部材は1つのハウジング固定部を挟んで、先端側弾性部と、後端側弾性部が設けられる構成となっている(参考図1参照)。
上記構成を備えることにより、「中軸は先端側と後端側の2箇所で支持されているので、平行を維持してスライドすることができる。(本件明細書段落0007)」という効果を奏しており、訂正発明2は甲第2-1号証に係る発明と実質同一とはいえない。

請求人は「訂正発明2においても、「支持部材」と「ハウジング」とのそれぞれの構成を柔軟に特定することが許されるべきである・・・甲第2-1号証の図3Aのグロープラグ本体2の上方部分2.2は、発明特定事項1Eの支持部材の一部に相当する。・・・膜7と支持要素9とのそれぞれのうち「上方部分2.2」に固定されている部分と、上方部分2.2と、で構成される連続な部分の全体が、「1つのハウジング固定部」に相当する(弁駁書11ページ10行?12ページ13行)」と述べている。

しかし、本件明細書段落0027においては、「・・・突出部36(すなわち、支持部材の一部)は、センサ用ハウジング44の一部と評価することもできる。」と記載されているにすぎず、ハウジングの一部を支持部材と解釈可能であるとは述べられていない。ゆえに、請求人は発明の要旨認定を誤っており、請求人の主張は成り立たない。

なお、既に「(1)訂正事項1について」において、参考図1を用いて本件発明の技術的意味を説明したとおり、本件発明はハウジングおよび支持部材を組み合わせて実現される力学系に特徴がある。当該力学系においてはハウジングおよび支持部材は明確に区別されて用いられている。

ところで、甲第2-1号証の図4に係るグロープラグは、膜7と支持要素9とがハウジングを介してそれぞれ前後に独立して設けられた構造となっており、訂正発明2に係る力学系とは実質同一とはいえないことが明らかである。

よって、訂正発明2は甲第2-1号証に係る発明とは実質同一とはいえない。ゆえに、訂正発明2についての無効理由(ウ)は成り立たない。

(2-3)訂正発明9について
既に述べた通り、膜7は支持部材ではないから、訂正発明2は甲第2-1号証に係る発明と実質同一とはいえない。ゆえに訂正発明9に対する無効理由(ウ)は成り立たない。

(2-4)訂正発明16について
既に述べた通り、膜7は支持部材ではないから、訂正発明2は甲第2-1号証に係る発明と実質同一とはいえない。但し、仮に、膜7が支持部材と実質同一であるといえたとしても、以下のとおり請求人の主張は成り立たない。

甲第2-1号証の図5Aに係るスライディング要素は、「加熱ロッド1を案内し、グロープラグ本体2に対する加熱ロッド1の本来の中心を決めるように作用する(甲第2-1号段落0032)」との説明があるほか、具体的にどのような態様の構造なのか一切言及がない。

請求人は弁駁書において甲第2-1号証の図5Aに基づき、「スライディング要素12が、加熱ロッド1の先端側に固定されていることが示されている」と述べている(弁駁書13ページ22?23行)が、そもそもスライディング要素という概念が何を指し示しているか明らかでない以上、図5Aのスライディング要素12がグロープラグ本体2または加熱ロッド1のいずれかに固定されているのか、それともいずれにも固定されていないものなのかは明らかであるとはいえない。

なお、請求人は「スライディング要素12の接続側には、スライディング要素12の内径よりも大きい外径を有する接触管6が配置されている・・・従って、スライディング要素12は、加熱ロッド1に対して動くことができないので、加熱ロッド1に固定されているといえる(弁駁書13ページ14?21行)」と述べているが、請求人はスライディング要素12を「剛体」であると根拠のない仮定をおいている。
無論、スライディング要素がゴムのように伸縮可能な材料で構成されていれば、請求人の論理が成り立たないことは明らかである。このようにスライディング要素12がどのような構造で、どこに固定されており、どこに固定されていないかを甲第2-1号証から導くことは不可能である。

請求人は、自身の都合のよい前提を仮定して推論を行っているにすぎない。前提が自由に選べれば、どのような結論も導くことが可能である。しかし、そのような主張には意味がない。請求人の主張には論理的欠陥があり、請求人の主張には誤りがある。

よって、発明特定事項が異なることから訂正発明16は甲第2-1号証に係るグロープラグとは実質同一とはいえない。ゆえに、訂正発明16についての無効理由(ウ)は成り立たない。

(3)無効理由エ

a 答弁書における主張の概要

請求人は、本件請求項1、16の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」によって特定される発明の範囲が不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、と主張しているが、そのような主張は成り立たない。

(3-1)「中軸の反燃焼室側」について
請求項の記載「中軸の反燃焼室側」は、文言をそのまま解釈すると「(I)中軸の反燃焼室側の一部分」という技術的意味として理解されることは明らかである。
なお、当然のことなら、「端面」は「中軸の一部分」であるから、「(II)中軸の反燃焼室側の端面」も「中軸の反燃焼室側」に含まれることは言うまでもない。
発明の外縁は明確である。

(3-2)「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」について
まず、本件明細書段落0006には、以下のような記載がある。

『圧力センサは、ハウジングと中軸の間に固定されていることから、中軸は圧力センサに対してその位置を変位させることになる。これにより、圧力センサの出力から中軸の変位量を測定することができ、その変位量から燃焼圧を測定することができる。(本件明細書段落0006)』

以上の記載を参酌すると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」という文言の技術的意味は当業者にとって明らかである。

なお、大辞林第三版によると「間(あいだ)」とは、「ものとものとを隔てる空間,または時間。間隔。へだたり。」という意味を持つ。

そうすると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間」とは、「中軸の反燃焼室側」と「ハウジング」とを隔てる空間を意味する。そして、「固定されている圧力センサ」とは、その空間に「圧力センサ」が固定されていることを意味するにすぎない。

当然のことながら、圧力センサは中軸またはハウジングに対し直接固定されている必要はないし、中軸の軸線上に固定されている必要もない。中軸の変位を圧力センサに伝えることができれば、本件発明の機能を発揮することは、上記段落0006の記載に基づき出願時点における当業者にとって自明である。

そうすると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」という文言の技術的意味は当業者にとって明確である。

よって、本件請求項1、16の記載「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」は発明の範囲が明確である。よって、本件特許の請求項1?16に係る発明は、明確であり特許法123条第1項第4号に該当しない。

b 要領書における主張の概要

以下に述べるとおり訂正発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、無効理由(エ)は成り立たない。なお、仮に訂正発明が同法第36条第6項第2号に規定する要件に違反するとしても、被請求人は「前記圧力センサは、中軸のハウジングに対する変位を測定することが可能である」とさらに訂正する用意がある。

まず、弁駁書において請求人は訂正発明に係る「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」という文言について「・・・圧力センサは中軸には固定されていないので、中軸の変位は圧力センサに伝わらない(弁駁書14ページ30?32行)」「・・・ 「圧力センサ」と「ハウジング」とが固定されていない態様など、具体的にどのようなものまでを包含するかが不明であり、発明の範囲(外延)が不明りようである(弁駁書15ページ6?8行)」と述べている。

この主張は、「特許審査基準2.2.2.3第36条6項第2号違反の類型」に従って考えると、『(2)2発明を特定するための事項の技術的意味が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである場合。』に相当すると考える。

ところで、同審査基準には加えて次のように記載されている。(当審注:以下、丸囲み数字は、丸1のように置き換えた。)
『発明を特定するための事項の技術的意味とは、発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のことを意味し、これを理解するにあたっては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮する。
発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割は、発明の詳細な説明の記載(3.2.1(2)丸2丸3参照)や出願時の技術常識を考慮すれば理解できる場合が多く、そのような場合には、本類型には該当しない。』

そして、本件明細書段落0006には以下のような記載がある
『圧力センサは、ハウジングと中軸の間に固定されていることから、中軸は圧力センサに対してその位置を変位させることになる。これにより、圧力センサの出力から中軸の変位量を測定することができ、その変位量から燃焼圧を測定することができる。(本件明細書段落0006)』

以上の記載を参照すると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」という文言の技術的意味は、発明の詳細な説明や出願時の技術常識を考慮すれば理解できる場合に相当する。よって、訂正発明は特許法第36条第6項第2号に違反しているとはいえない。

第5 無効理由ア及びイについての当審の判断
1 甲第1号証に記載された発明

(1)甲第1号証の記載事項
本件出願の出願前に頒布された甲第1号証(特開昭59-85932号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a 「本発明は、エンジンのシリンダブロックに固定されるボディと、このボディに相対移動可能に設けられるとともに、エンジンの燃焼室内に臨み、この燃焼室内の圧力に応じて変位する筒状部材と、この筒状部材に内蔵されるヒータと、上記筒状部材のボディに対する相対変位に応動して伸縮し、上記圧力に応じた電圧を発生する圧電素子とを備えることを特徴としている。」(第1ページ右下欄11行ないし19行)

b 「ボディ20は略筒状を呈し、その外周にはエンジンのシリンダブロックに螺合するためのねじ部21が形成され、また基部にはキャップ22を嵌着されるフランジ部23が設けられる。」(第2ページ右上欄3行ないし7行)

c 「筒状部材24は、ボディ20の孔部に摺動自在に嵌合され、この筒状部材24の先端部25は閉塞されるとともにボディ20より突出し、また基部開口の周囲に形成されたフランジ部26は、キャップ22の中に収容される。」(第2ページ右上欄7行ないし11行)

d 「このフランジ部26とボディ22のフランジ部23との間には皿ばね27が弾装され、またフランジ部26の上側には圧電素子28,29が設けられる。」(第2ページ右上欄12行ないし15行)

e 「皿ばね27は、内周部を筒状部材24に、外周部をボディ20に、それぞれ溶接等により気密を保って接合される。」(第2ページ右上欄15行ないし17行)

f 「圧電素子28,29は平板でドーナツ状を呈し、キャップ22内にほとんど隙間なく収容される。」(第2ページ左下欄6及び7行)

g 「上記構成を有するグロープラグ1は、ねじ部21を介してエンジンのシリンダヘッドに取付けられるが、この時、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着する。しかして筒状部材24は燃焼室13内に臨み、次に述べるように該室13内の圧力の変化に応動して進退動する。
すなわち、燃焼室13内の圧力が高くなると、筒状部材24はこの圧力を受け、皿ばね27に抗して変位し、フランジ部26を介して圧電素子28,29を圧縮させる。この結果、圧電効果により圧電素子28,29の電極に電圧が発生し、信号線30を介して制御回路12に入力される。」(第2ページ右下欄13行ないし第3ページ左上欄5行)

h 「この時、筒状部材24とボディ20との間隙に燃焼室13内のガスが流入するが、皿ばね27の弾発力によりフランジ部26が圧電素子29に密着するので、このガスは圧電素子28,29には接触しない。」(第3ページ左上欄6ないし10行)

(2) 上記(1)及び図面の記載から分かること
i 上記(1)のa、b及びg並びに第1及び2図からみて、ボディ20のねじ部21が螺合するグロープラグ1がエンジンのシリンダヘッドを貫通していること及びシリンダヘッドにはボディ20が螺合状態で貫通する貫通穴が設けられていることが理解できる。
したがって、上記(1)のa、b及びg並びに第1及び2図からみて、エンジンのシリンダヘッドを貫通して燃焼室13に臨む貫通穴に取付けられるグロープラグ1があることが分かる。

j 上記(1)のa及びb並びに第1及び2図の記載と上記iをあわせてみると、貫通穴に螺合状態で固定される略筒状のボディ20があることが分かる。

k 上記(1)のa及びc並びに第2図からみて、ボディ20の孔部に相対移動可能に設けられている筒状部材24があることが分かる。

l 上記(1)のc、f及びh並びに第2図からみて、皿ばね27により筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26が圧電素子29に密着し、圧電素子28,29がキャップ22に押し付けられることにより、圧電素子28,29がキャップ22とフランジ26との間に固定されているものと理解できる。
したがって、上記(1)のc、f及びh並びに第2図からみて、筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20にかしめられて固定されたキャップ22との間に固定されている圧電素子28,29があることが分かる。

m 上記(1)のc、d及びg並びに第2図からみて、筒状部材24の進退動の方向は筒状部材24の軸線方向であり、皿ばね27は筒状部材24の進退動に抗して変位することから、皿ばね27は筒状部材24を進退動可能に支持するものと理解できる。
したがって、上記(1)のc、d及びg並びに第2図からみて、筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20間に弾装されており、筒状部材24をその軸線に沿って進退動可能に支持する皿ばね27があることが分かる。

n 上記(1)のg及び第1及び2図の記載と上記iをあわせてみると、グロープラグ1を貫通穴に取付けると、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着することが分かる。

o 上記(1)のe、g及びh並びに第2図の記載と上記mをあわせてみると、皿ばね27は、筒状部材24に溶接等により接合される内周部と、ボディ20に溶接等により接合される外周部とを備えていることが理解できる。
また、皿ばね27が断発力を有していること及び筒状部材24が皿ばね27に抗して変位することから、皿ばね27の内周部と外周部との間は弾性変形する弾性部であり、皿ばね27は筒状部材24の進退動方向に変位することが理解できる。
したがって、上記(1)のe、g及びh並びに第2図の記載と上記mをあわせてみると、皿ばね27は、筒状部材24に溶接等により接合される内周部と、ボディ20に溶接等により接合される外周部と、内周部と外周部との間にあって弾性変形することによって筒状部材24の進退動方向に変位する弾性部を備えていることが分かる。

p 上記(1)のe及びh並びに第2図の記載と上記m及びoをあわせてみると、皿ばね27の筒状部材24に溶接等により接合される内周部は、筒状部材24のほぼ中心よりも燃焼室13の反対側に形成されていることが分かる。

(3) 甲第1号証に記載された発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明15」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「エンジンのシリンダヘッドを貫通して燃焼室13に臨む貫通穴に取付けられるグロープラグ1であって、
貫通穴に螺合状態で固定される略筒状のボディ20と、
ボディ20の孔部に相対移動可能に設けられている筒状部材24と、
筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20にかしめられて固定されたキャップ22との間に固定されている圧電素子28,29と、
筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20間に弾装されており、筒状部材24をその軸線に沿って進退動可能に支持する皿ばね27を備えており、
グロープラグ1を貫通穴に取付けると、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着し、
皿ばね27は、筒状部材24に溶接等により接合される内周部と、ボディ20に溶接等により接合される外周部と、内周部と外周部との間にあって弾性変形することによって筒状部材24の進退動方向に変位する弾性部を備えているグロープラグ1。」

<引用発明15>
「エンジンのシリンダヘッドを貫通して燃焼室13に臨む貫通穴に取付けられるグロープラグ1であって、
貫通穴に螺合状態で固定される略筒状のボディ20と、
ボディ20の孔部に相対移動可能に設けられている筒状部材24と、
筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20にかしめられて固定されたキャップ22との間に固定されている圧電素子28,29と、
筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20間に弾装されており、筒状部材24をその軸線に沿って進退動可能に支持する皿ばね27を備えており、
グロープラグ1を貫通穴に取付けると、ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着し、
皿ばね27は、筒状部材24に溶接等により接合される内周部と、ボディ20に溶接等により接合される外周部と、内周部と外周部との間にあって弾性変形することによって筒状部材24の進退動方向に変位する弾性部を備え、
皿ばね27の筒状部材24に溶接等により接合される内周部は、筒状部材24のほぼ中心よりも燃焼室13の反対側に形成されているグロープラグ1。」

2 対比・判断

(1)本件発明1と引用発明1との対比、判断
本件発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1における「エンジンのシリンダヘッド」、「燃焼室13」、「取付けられる」、「グロープラグ1」、「貫通穴に螺合状態で固定される」、「ボディ20」、「ボディ20の孔部に」、「相対移動可能に設けられている」、「筒状部材24」、「キャップ22」、「との間に」、「圧電素子28,29」、「弾装されており」、「進退動可能に」、「ボディ20の先端のテーパ面37がシリンダヘッドにシール性を保って密着し」、「筒状部材24に溶接等により接合される内周部」、「ボディ20に溶接等により接合される外周部」、「内周部と外周部との間にあって」及び「筒状部材24の進退動方向に変位する」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明1における「エンジンヘッド」、「燃焼室」、「取付ける」、「グロープラグ」、「貫通穴を画定する内壁に結合する」、「ハウジング」、「ハウジング内に」、「スライド可能に収容されている」、「中軸」、「ハウジング」、「間に」、「圧力センサ」、「設けられており」、「スライド可能に」、「ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け」、「中軸に固定されている中軸固定部」、「ハウジングに固定されているハウジング固定部」、「両者間にあって」及び「両者間の軸方向距離を変化させる」に相当する。

また、引用発明1における「筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26」は甲第1号証の図1及び2の記載から、筒状部材24の燃焼室13の反対側に位置する端部に設けられていることが分かるため、本件発明1における「中軸の反燃焼室側」に相当する。
さらに、引用発明1における「皿ばね27」は上記1(2)のmから筒状部材24を進退動可能に支持するものであるから、本件発明1における「支持部材」に相当する。
加えて、引用発明1において、キャップ22はボディ20にかしめられて固定されていることから両者は一体化されたものとみることができ、引用発明1における「筒状部材24の基部開口の周囲に形成されたフランジ部26とボディ20にかしめられて固定されたキャップ22との間に固定されている圧電素子28,29」は、本件発明における「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えているグロープラグ。」である点で一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。

(2)本件発明15と引用発明15との対比、判断
本件発明15と引用発明15とを対比すると、上記(1)に示したものと同様の相当関係があるほか、引用発明15における「皿ばね27の筒状部材24に溶接等により接合される内周部」、「筒状部材24」及び「燃焼室13の反対側」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明15における「中軸固定部」、「中軸」及び「反燃焼室側」に相当する。

したがって、本件発明15と引用発明15は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、
中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えており、
中軸固定部は、中軸のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されているグロープラグ。」である点で一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明である。

(3)小括
本件発明1及び15は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1及び15に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

第6 無効理由ウについての当審の判断

特開2005-90954号公報(以下、「甲第2-1号証」という。)は、特願2004-272743号(以下、「甲2出願」という。)の公開公報であり、特願2004-272743号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「甲2出願の当初明細書等」という。)を掲載したものである。

そして、甲2出願のパリ優先権主張の基礎となったドイツ国特許出願第10343521.2号(甲第3-1号証に係る出願であるから、以下、「甲3出願」という。)の出願日は平成15年9月19日であって、これは、本件に係る特許出願である特願2005-150814号の優先権主張の基礎となった特願2004-155493号の出願の日である平成16年5月26日よりも前の日である。

また、甲第2-1号証の頒布日、すなわち甲2出願の公開日は、平成17年4月7日であって、これは、本件に係る特許出願である特願2005-150814号の優先権主張の基礎となった特願2004-155493号の出願の日よりも後の日である。さらに、本件特許発明の発明者は、甲2出願の発明者と同一ではないし、本件特許発明についての特許出願の時にその出願人と甲2出願の出願人とは同一でもない。

1 甲3出願の出願当初の明細書、請求の範囲又は図面及び甲2出願の当初明細書等に共通して記載された発明
(1)甲3出願の出願当初の明細書、請求の範囲又は図面及び甲2出願の当初明細書等の記載事項
本件出願の優先権主張日前のパリ条約による優先権主張日である他の特許出願であって、本件出願の出願後に公開がされた甲2出願の当初明細書等を掲載した甲2-1号証と、甲3出願の出願当初の明細書、請求の範囲及び図面(以下、「甲3出願の当初明細書等」という。)を掲載した甲3-1号証には、それぞれ対応した次のような事項が記載されている。(なお、以下の摘記箇所の記載において、ドイツ語特有の表記(アー・ウムラウト、ウー・ウムラウト、オー・ウムラウト、エスツェット)は、アルファベットで表記している(アー・ウムラウトは「ae」、ウー・ウムラウトは「ue」、オー・ウムラウトは「oe」、エスツェットは「ss」)。)。

a 「1. Druckmessgluehkerze fur einen Dieselmotor ・・・・・・ auf den Drucksensor uebertraegt.」(甲3出願の当初明細書等請求項1)
「【請求項1】
ディーゼル・エンジンのシリンダに挿入されるグロープラグ本体と、
前記グロープラグ本体内に配置される加熱ロッドと、
前記シリンダの燃焼室内の圧力が作用するように予備圧力が加えられて前記加熱ロッドと前記グロープラグ本体との間に配置される圧力センサとを有するディーゼル・エンジン用の圧力グロープラグであって、
前記加熱ロッドが、軸線方向にスライドするように移動して、前記シリンダの前記燃焼室内の圧力を前記圧力センサに伝達することができるように、前記グロープラグ本体内に配置されることを特徴とするディーゼル・エンジン用の圧力グロープラグ。」(甲2出願の当初明細書等【請求項1】)

b 「Druckmessgluehkerze nach Anspruch 1, ・・・・・・ dem Heizstab verbundenist.」(甲3出願の当初明細書等請求項2)
「【請求項2】
前記グロープラグ本体が、軸線方向に2つの部分に分割され、半径方向膜が前記2つの部分の間に配置されるとともに前記加熱ロッドに固定されるように接続されることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。」(甲2出願の当初明細書等【請求項2】)

c 「10. Druckmessgluehkerze nach Anspruch 1, ・・・・・・ in axialer Richtung fuehrt.」(甲3出願の当初明細書等請求項10)
「【請求項10】
可撓性支持要素が、接続側において、前記グロープラグ本体に配置され、前記支持要素は、ストレイン・センサを支持しており、前記加熱ロッドによって伝達された圧力が前記支持要素の軸線方向の伸長を生じさせることを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。」(甲2出願の当初明細書等【請求項10】)

d 「[0003] Bei dieser bekannten ・・・・・・ ausgewertet wird.」(甲3出願の当初明細書等[0003])
「【0003】
この知られている圧力グロープラグにおいて、グロープラグ本体および加熱ロッドは、燃焼室側で固定されるように互いに接続され、グロープラグ本体は、圧力が加えられたとき弾性的な形で半径方向に変形することができるような安定性を有する。シリンダの燃焼室内の圧力は、グロープラグ本体および加熱ロッドに作用し、その結果、内燃エンジンのシリンダに固定されるように配置されたグロープラグ本体は弾性的に変形する一方、加熱ロッドはグロープラグ本体に対して軸線方向に移動する。グロープラグ本体に対するこの移動は、予備圧力が加えられた圧力センサを解放し、予備圧力が加えられた状態と解放された状態との間の電荷状態の差は、燃焼室内の圧力に関する信号の形態で受信され、評価される。」(甲2出願の当初明細書等段落【0003】)

e 「[0019] Das in Fig. 1 ・・・・・・ Laserschweissen angebracht.」(甲3出願の当初明細書等段落[0019])
「【0012】
2つの部品、すなわち、接続側の上方部分2.2および燃焼室側の下方部分2.1から成るグロープラグ本体内に配置された加熱ロッド1を含む、本発明による圧力グロープラグの第1の実施形態が図1に示されている。加熱ロッド1は、接続側の小径部分を有し、膜7は、この領域で加熱ロッド1に固定されている。膜7は、グロープラグ本体2への加熱ロッド1の熱の伝達を達成するとともに、圧力グロープラグのグロー機能に必要な接地接続を保証し、グロープラグの接続側の方向に対する気密性を保持するように装置をシールする。この目的のために、膜7は、例えば、レーザ溶接によって本体上方部分2.1の端面に強固に配置される。」(甲2出願の当初明細書等段落【0012】)

f 「[0020] Von der Membran 7 ・・・・・・ Membran 7 uebertragen wird.」(甲3出願の当初明細書等段落[0020]及び[0021])
「【0013】
膜7からグロープラグの接続側の方向に接触管6が延びており、前記接触管は、加熱ロッド1のグロー管1.1に固定されている。加熱ロッド1の内極1.2および接触管6は、接続側でグロープラグハウジング2を越えて延びており、グロープラグハウジングの接続側の部分内にはOリング4が設けられている。このOリングは、接触管6によってグロープラグ本体の上方部分2.2内で加熱ロッド1の延長部の中心を決める。
【0014】
また、グロープラグ本体の下方部分2.1には、シリンダ内の燃焼圧力が加熱ロッド1を介して膜7に排他的に伝達されるように、グロープラグ本体の下方部分2.1に対して加熱ロッド1の中心を決め、それを密封するOリング3が設けられている。」(甲2出願の当初明細書等段落【0013】及び【0014】)

g 「[0026] Die oben beschriebene ・・・・・・ Signalaenderung zu erhalten.」(甲3出願の当初明細書等段落[0026])
「【0019】
この機能に関して、上述した圧力グロープラグは後述するように作動する。
【0020】
ディーゼル・エンジンのシリンダの圧力は、加熱ロッド1に作用し、その結果、加熱ロッド1が軸線方向に移動され、膜7が接触管6を接続側のグロープラグ本体2の部分2.2に対して移動させる。この相対運動は、予備圧力装置、すなわち、張力要素10に伝達され、予備圧力が加えられた圧力センサ装置9を解放させる。この結果、電子回路によって検出され、評価されることができる電荷または電圧変化が生じる。センサ装置9の予備圧力は、センサが解放されたとき、評価することができる信号の変化を与えるように作用する。」(甲2出願の当初明細書等段落【0019】及び【0020】)

h 「[0032] Fig. 3A und Fig. 3B ・・・・・・ dargestellt sind.」(甲3出願の当初明細書等段落[0032])
「【0026】
図3Aおよび図3Bは、本発明による圧力グロープラグの第3の実施形態を示している。その基本的な構成は、図1および図2に示す先の2つの実施形態の基本的な構成に対応している。」(甲2出願の当初明細書等段落【0026】)

i 「[0033]Ein Sensorelement 8 , ・・・・・・ durch Schweissung fixiert.」(甲3出願の当初明細書等段落[0033])
「【0027】
図3Aに示す実施形態において、センサ素子8は、例えば、ボウル型の膜(bowl-type membrane)などのストレイン・ゲージの形態で実現され、支持要素9上に配置される。この支持要素は、軸線方向に所定の可撓性を有するものであり、ここにおいて、センサ素子は、例えば、溶接によって接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に直接固定される。」(甲2出願の当初明細書等段落【0027】)

j 「[0034] Bei diesem Ausfuehrungsbeispiel ・・・・・・ und ausgewertet werdenkann.」(甲3出願の当初明細書等段落[0034])
「【0028】
この実施形態において、グロープラグ本体の上方部分2.2に対する加熱ロッド1、または接触管6の形態の延長部分の動きは、シリンダ圧力の増大によって可撓性支持要素9を伸長させる。その結果生じるセンサ素子8の引張応力または伸長は、検出して評価することができる信号の変化を生じる。」(甲2出願の当初明細書等段落【0028】)

k 「[0036] Fig. 4 zeigt ・・・・・・ dem Zylinderkopf 20 .」(甲3出願の当初明細書等段落[0036])
「【0030】
図4は、本発明による圧力グロープラグの1つの実施形態を示し、この実施形態によれば、グロープラグ本体2は、1つの部品のみから成り、燃焼室側の端部には、図1に示した実施形態の膜7と同じ機能を有する膜7が設けられている。しかしながら、図4に示した実施形態において、膜7は、グロープラグ本体を密封すると同時に、外部に固定されていることからグロープラグ本体をシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成する。」(甲2出願の当初明細書等段落【0030】)

l 「[0038] Bei dem in Fig. 5A ・・・・・・ gegenueber dem Kerzenkoerper 2 .」(甲3出願の当初明細書等段落[0038])
「【0032】
図5Aに示す実施形態において、グロー管1とグロープラグ本体2との間にスライディング要素12が設けられ、このスライディング要素は、グロープラグ本体2と加熱ロッド1との間に配置される。スライディング要素は、グロープラグ本体2と接触管6との間に配置されてもよい。スライディング要素は、加熱ロッド1を案内し、グロープラグ本体2に対する加熱ロッド1の本来の中心を決めるように作用する。」(甲2出願の当初明細書等段落【0032】)

(2) 上記(1)及び図面の記載から分かること
m 上記(1)のa、d及びk並びに図3A及び図4からみて、ディーゼル・エンジンのシリンダヘッド20の燃焼室内に挿入され固定される圧力グロープラグがあることが理解できる。
また、図4からみて、圧力グロープラグはシリンダヘッド20に設けられた燃焼室に臨む貫通穴に、シリンダヘッド20を貫通して固定されることが理解できる。
したがって、シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグがあることが分かる。

n 上記(1)のa、d、e、f及びk並びに図3A及び図4の記載と上記mをあわせてみると、グロープラグ本体2の上方部分2.2及び下方部分2.1の内部には、それぞれ接触管6及び加熱ロッド1の中心を決めるOリング4及び3が設けられていることから、グロープラグ本体2は略筒状であることが理解できる。
また、一般にグロープラグの技術分野においては、グロープラグをエンジンヘッドに取り付ける際、ハウジングの外表面に設けたねじ部をエンジンヘッドの貫通穴に螺合して取り付けるものである(例えば、甲第1号証第2ページ右上欄3ないし7行及び第2図を参照。)。
してみると、図4において、グロープラグ本体2の中央部分にありシリンダヘッド20と重複して記載されている箇所は、貫通穴に螺合して取り付けるねじ部であると解するのが相当である。
したがって、シリンダヘッド20の貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2があることが分かる。

o 上記(1)のa、e及びf並びに図3Aからみて、グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び加熱ロッド1に固定されている接触管6があることが分かる。

p 上記(1)のf及びi並びに図3Aからみて、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8があることが分かる。

q 上記(1)のf、i及びj並びに図3Aの記載を上記n及びpとあわせてみると、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6の延長方向の動きによって伸長する可撓性支持要素9があることが理解できる。
また、可撓性支持要素9は接触管6の延長方向の動きによって伸長することから、可撓性支持要素9は接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2とに固定されていることが理解できる。
してみると、可撓性支持要素9は接触管6と固定されている以上、可撓性支持要素9は接触管6を支持する機能も有していると理解できる。
さらに、上記(2)のn及び図3Aからみて、接触管6の延長方向の動きは、接触管6のその軸線に沿ったスライドだと理解できる。
したがって、接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9を備えていることが理解できる。

r 上記(1)のk並びに図3A及び図4の記載を上記mとあわせてみると、圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、膜7はグロープラグ本体をシリンダヘッド20に対して密封する密封面を形成することが理解できる。
ここで、エンジンの燃焼動作中に密封し続けないと燃焼ガスが漏れてしまうことから、密封面により密封し続けることが理解できる。
また、図4においては膜7が密封面を形成しているが、図3Aにおいて密封面に対応する箇所はグロープラグ本体2の下方部分2.1であることが理解できる。
したがって、圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続けることが分かる。

s 上記(1)のc、i及びj並びに図3Aからみて、可撓性支持要素9は接触管6の延長方向の動きによって伸長することから、可撓性支持要素9は接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2とに固定されていることが理解できる。
また、固定された両者間の可撓性支持要素9が伸長すること及び伸長することによって固定された両者間の距離が変化することが理解できる。
さらに、シリンダ圧力の増大によって可撓性支持要素9が伸長する結果生じるセンサ素子8の伸長を検出して評価しており、可撓性支持要素9が伸長した後シリンダ圧力が減少した場合、可撓性支持要素9が元の長さに戻らないとセンサ素子8が伸長し続けセンサとして機能しないことから、可撓性支持要素9はシリンダ圧力に応じて伸縮する部材、すなわち弾性変形する部材であることが理解できる。
したがって、可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち、接触管6との固定部分と、グロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分があることが分かる。

t 上記(1)のa、i及びj並びに図3Aの記載を、上記sとあわせてみると、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分は、加熱ロッド1及び接触管6のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されていることが分かる。

u 上記(1)のb、e、f、g並びに図1及び図3Aの記載を、上記qとあわせてみると、膜7は加熱ロッド1と、グロープラグ本体2の上方部分2.2とに固定されていることが理解できる(上記(1)のeで摘記した、段落【0021】における「上方部分2.1」との記載は「上方部分2.2」の誤記だと認定して判断を行った。)。
また、上記(1)のgからみて、膜7が接触管6を接続側のグロープラグ本体2の部分2.2に対して移動させることが理解でき、上記(2)のqからみて、加熱ロッド1及び接触管6の移動は、その軸線に沿ったスライドだと理解できる。
したがって、加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、加熱ロッド1及び接触管6をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7があることが分かる。

v 上記(1)のe、f及びg並びに図1及び図3Aの記載を上記q及びuとあわせてみると、固定された両者間の膜7が移動することによって固定された両者間の距離が変化することが理解できる。
したがって、膜7は、膜7のうち、加熱ロッド1との固定部分と、グロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分があることが分かる。

w 上記(1)のe並びに図1及び図3Aの記載を上記u及びvとあわせてみると、膜7がグロープラグの接続側の方向に対する気密性を保持するようにシールすることが理解できる。
したがって、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分は加熱ロッド1を一巡しており、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分はグロープラグ本体2を一巡しており、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分は両者間を一巡していることが分かる。

x 上記(1)のl及び図5Aからみて、加熱ロッド1とグロープラグ本体2との間にスライディング要素12が設けられていることが理解できる。
また、スライディング要素12は加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対する本来の中心を決めるように作用することから、加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して支持していることが理解できる。
したがって、加熱ロッド1に設けられているとともに加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して支持するスライディング要素12があることが分かる。

(3) 甲3出願の当初明細書等及び甲2出願の当初明細書等に共通して記載されている発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、甲3出願の当初明細書等及び甲2出願の当初明細書等に共通して次の発明(以下、「先願発明1」、「先願発明15」、「先願発明2」、「先願発明9」、「先願発明14」及び「先願発明16」という。)が記載されていると認められる。

<先願発明1>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」

<先願発明15>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分は、加熱ロッド1及び接触管6のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されている圧力グロープラグ。」

<先願発明2>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9及び加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち加熱ロッド1に固定された接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7及び可撓性支持要素9は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分と、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」

<先願発明9>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9及び加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7及び可撓性支持要素9は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分と、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」

<先願発明14>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9及び加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7及び可撓性支持要素9は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分と、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えており、
膜7のうち加熱ロッド1との固定部分は加熱ロッド1を一巡しており、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分はグロープラグ本体2を一巡しており、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分は両者間を一巡している圧力グロープラグ。」

<先願発明16>
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9及びスライディング要素12は、加熱ロッド1に設けられているとともに加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して支持するスライディング要素12と、可撓性支持要素9のうち加熱ロッド1に固定された接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」

2 対比・判断

(1)本件発明1と先願発明1との対比、判断
本件発明1と先願発明1とを対比すると、先願発明1における「シリンダヘッド20」、「固定される」、「圧力グロープラグ」、「貫通穴に螺合して固定されるように配置された」、「グロープラグ本体2」、「スライドするように」及び「配置されている」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明1における「エンジンヘッド」、「取付ける」、「グロープラグ」、「貫通穴を画定する内壁に結合する」、「ハウジング」、「スライド可能に」及び「収容されている」に相当する。
ここで、上記1(2)のo及び図3Aの記載から、加熱ロッド1と接触管6とは固定されているとともにグロープラグ本体2の内部でスライド移動するものであることが分かるから、先願発明1における「加熱ロッド1及び接触管6」、「加熱ロッド1」及び「接触管6」は、いずれも本件発明1における「中軸」に相当するとともに、上記1(2)のt及び図3Aないし4の記載から、接触管6が加熱ロッド1及び接触管6の燃焼室の反対側に位置する部分に設けられていることが分かるため、先願発明1における「接触管6」は本件発明1における「中軸の反燃焼室側」にも相当する。
また、先願発明1における「グロープラグ本体2の上方部分2.2」、「との間に」、「固定される」、「センサ素子8」、「との間に」、「その軸線に沿ったスライドを支持する」、「可撓性支持要素9」、「固定すると」、「シリンダヘッド20に対して」及び「密封し続け」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明1における「ハウジング」、「間に」、「固定されている」、「圧力センサ」、「間に」、「その軸線に沿ってスライド可能に支持する」、「支持部材」、「取付けると」、「エンジンヘッドの内壁に」及び「密着し続け」に相当する。
そして、先願発明1における「グロープラグ本体2の下方部分2.1は」は、上記1(2)のm及び図3Aの記載からグロープラグ本体2の燃焼室側に位置する端部に設けられていることが分かるため、本件発明1における「ハウジングの燃焼室側の端部は」に相当する。
先願発明1における「可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分」、「可撓性支持要素9のグロープラグ本体2のうち上方部分2.2との固定部分」及び「可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明1における「中軸に固定されている中軸固定部」、「ハウジングに固定されているハウジング固定部」及び「両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部」に相当する。

したがって、本件発明1と先願発明1は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、
中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えているグロープラグ。」である点で一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明1は、先願発明1と同一である。

(2)小括
本件発明1は、先願発明1と同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

(3)本件発明15と先願発明15との対比、判断
本件発明15と先願発明15とを対比すると、上記(1)に示したものと同様の相当関係があるほか、先願発明15における「可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分」及び「加熱ロッド1及び接触管6のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されている」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明15における「中軸固定部」及び「中軸のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されている」に相当する。

したがって、本件発明15と先願発明15は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、
中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備えており、
中軸固定部は、中軸のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されているグロープラグ。」である点で一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明15は、先願発明15と同一である。

(4)小括
本件発明15は、先願発明15と同一であるから特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明15に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

(5)本件発明2と先願発明2との対比
上記(1)での、本件発明1と先願発明1との対比を参考に、本件発明2と先願発明2とを対比すると、先願発明2における
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本件発明2における
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材」に相当する。
さらに、先願発明2における、「加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており」及び「加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本件発明2における「中軸とハウジング間に設けられており」及び「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に」に相当する。
また、先願発明2における、
「圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち加熱ロッド1に固定された接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、」は、本件発明2における、
「グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、」に相当する。
そして、先願発明2における、「膜7のうち加熱ロッド1との固定部分」及び「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」は、本件発明2における「中軸に固定されている中軸固定部」及び「ハウジングに固定されているハウジング固定部」に相当する。
ここで、図3Aの記載から、膜7は加熱ロッド1及び接触管6の先端側にあり、可撓性支持要素9は加熱ロッド1及び接触管6の後端側にあることが分かるから、先願発明2における「膜7のうち加熱ロッド1との固定部分」、「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」、「膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分」及び「可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分」は、本件発明2における「中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部」、「ハウジングに固定されているハウジング固定部」、「両者間にある先端側弾性部」及び「中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部」に相当する。

また、先願発明2における「膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分」は、本件発明2における「両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部」と、「両者間にあって変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる部材」という限りにおいて一致する。
そして、先願発明2における「加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7」及び「膜7」と本件発明2における「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材」及び「支持部材」とは、「中軸をその軸線に沿ってスライド可能にしている固定部材」及び「固定部材」という限りにおいて一致する。
さらに、先願発明2における「可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」は、本件発明2における「前記ハウジング固定部」と、「ハウジング固定部」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明2と先願発明2は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能にすることができる支持部材及び固定部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる部材を備え、
固定部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる部分を備え、
固定部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側部分とを備え、
支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部を備えているグロープラグ。」である点で一致し、次の相違点2-1ないし2-3の3点において相違または一応相違する。

<相違点2-1>
「両者間にあって変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる部材」に関し、本件発明2においては、「両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部」であるのに対して、先願発明2においては、「膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより距離を変化させる部分」であり、膜7の変形が弾性変形であるのか、すなわち膜7が弾性部材であるのか不明な点(以下、「相違点2-1」という。)。

<相違点2-2>
「中軸をその軸線に沿ってスライド可能にしている固定部材」及び「固定部材」に関し、本件発明2においては、「中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材」及び「支持部材」であるのに対して、先願発明2においては、「加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7」及び「膜7」であり、膜7が加熱ロッド1を支持しているのか、すなわち膜7が支持部材であるのか不明な点(以下、「相違点2-2」という。)。

<相違点2-3>
本件発明2においては、「ハウジング固定部」と「先端側中軸固定部」との間に「先端側弾性部」が、同じ「ハウジング固定部」と「後端側中軸固定部」との間に「後端側弾性部」がそれぞれ備えられているのに対して、先願発明2においては、ハウジング固定部に相当する「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」及び「可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」が異なる構成である点(以下、「相違点2-3」という。)。

(6)相違点についての検討

<相違点2-1>について
上記1(1)のe及び図1ないし図4の記載から、膜7はグロープラグ本体2への加熱ロッド1の熱の伝達を達成するものであることが理解できる。
そして、熱の伝達を効率良く行うためには、その熱伝達を行う距離が最短距離であることが望ましいことは技術常識であり、図1ないし図4の記載からも膜7は加熱ロッド1との固定部とグロープラグ本体2との固定部との間で最短距離を保って設けられていると理解できる。
また、シリンダの圧力が加熱ロッド1に作用すると、加熱ロッド1が軸線方向に移動することから、膜7が伸長して変形することが理解できる。
そして、シリンダの圧力が加熱ロッド1に作用しなくなると、加熱ロッド1は元の位置へ軸線方向に移動し、膜7においても加熱ロッド1との固定部が元の位置に戻るものと理解できる。その際、伸長して変形した膜7が元の寸法に戻らないと、熱伝達を行う距離が最短距離では無くなってしまうから、膜7は元の寸法に戻るものと相当するのが自然である。
したがって、膜7はシリンダの圧力が加熱ロッド1に作用すると伸長し、圧力が作用しなくなると元の寸法に戻るものであるから、膜7は弾性変形する弾性部材であることが分かる。
そうすると、相違点2-1については、実質的な相違点とは認められない。

<相違点2-2>について
本件明細書段落【0037】には、「グロープラグ151は、ダイアフラム状の先端側支持部材133を備えている。」との記載があるところ、「ダイアフラム」は、一般に「膜板」を意味すること(例として、工業教育研究会,「図解 機械用語辞典」,第2版,日刊工業新聞社,1983年1月30日,p.319等参照。)、及び、甲第2-1号証の「膜7」は、熱を伝達し、接地接続を保証し、機密性を保持し、レーザー溶接が可能なものを想定していること(甲第2-1号証の段落【0012】)を勘案すると、甲第2-1号証の「膜7」は、本件発明2の支持部材として想定しているダイヤフラム状の先端側支持部材133と技術的な差異はない。
また、上記「<相違点2-1>について」で検討したように、膜7は加熱ロッド1とグロープラグ本体2との間で最短距離を保って固定されている弾性部材であることから、加熱ロッド1が半径方向に移動した場合、膜7には加熱ロッド1に対して元の位置に戻る方向の力、すなわち、加熱ロッド1を支持する方向の力が発生するものと認められる。
したがって、膜7は加熱ロッド1を支持している支持部材である。
そうすると、相違点2-2については、実質的な相違点とは認められない。

<相違点2-3>について
先願発明2において、「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」及び「可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」は、グロープラグ本体2の上方部分2.2に固定する対象となる部材が膜7と可撓性支持要素9とで異なるものである。また、図3Aの記載からも、両者のグロープラグ本体2の上方部分2.2における固定箇所は異なっており、また、両者のグロープラグ本体2の上方部分2.2における固定箇所を同じ箇所とすることは先願明細書及び甲第2-1号証には記載も示唆もされていない。
したがって、「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」と「可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分」とは、異なる構成であるから、本件発明2と先願発明2とは相違点2-3において相違する。

よって、本件発明2は、先願発明2と同一ではない。

(7)小括
本件発明2は先願発明2と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明2に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。

(8)本件発明8について
本件発明8は発明特定事項として本件発明2の構成を全て含むものであり、上記(6)で検討したように、本件発明2は先願明細書及び甲第2-1号証に共通して記載された発明と同一ではないから、本件発明8も先願明細書及び甲第2-1号証に共通して記載された発明と同一ではない。

(9)小括
本件発明8は先願発明8と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明8に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。

(10)本件発明9と先願発明9との対比、判断
上記2(1)での、本件発明1と先願発明1との対比、上記2(5)での、本件発明2と先願発明2との対比及び上記2(6)での相違点についての検討を参考に、本件発明9と先願発明9とを対比すると、先願発明9における
「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9及び加熱ロッド1とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、加熱ロッド1をその軸線に沿ってスライド可能に移動させることができる膜7を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け、
可撓性支持要素9は、可撓性支持要素9のうち加熱ロッド1に固定された接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分を備え、
膜7及び可撓性支持要素9は、膜7のうち加熱ロッド1との固定部分と、膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分と、可撓性支持要素9のうち接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本件発明9における
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する2つの支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、
後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有していることを特徴とするグロープラグ。」に相当する。

したがって、本件発明9と先願発明9は一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明9は、先願発明9と同一である。

(11)小括
本件発明9は先願発明9と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明9に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

(12)本件発明14と先願発明14との対比
本件発明14と先願発明14とを対比すると、上記(10)に示したものと同様の相当関係があるほか、先願発明14における「膜7のうち加熱ロッド1との固定部分は加熱ロッド1を一巡しており」、「膜7のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分はグロープラグ本体2を一巡しており」及び「膜7のうち両固定部分の間にあって変形することにより両固定部分の間の距離を変化させる部分は両者間を一巡している」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明14における「先端側中軸固定部は中軸を一巡しており」、「先端側ハウジング固定部はハウジングを一巡しており」及び「先端側弾性部は両者間を一巡している」に相当する。

したがって、本件発明14と先願発明14は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する2つの支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、
後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有しており、
先端側中軸固定部は中軸を一巡しており、先端側ハウジング固定部はハウジングを一巡しており、先端側弾性部は両者間を一巡しているグロープラグ。」である点で一致し、相違点は存在しない。

よって、本件発明14は、先願発明14と同一である。

(13)小括
本件発明14は先願発明14と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明14に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

(14)本件発明16と先願発明16との対比
上記2(1)での、本件発明1と先願発明1との対比を参考に、本件発明16と先願発明16とを対比すると、先願発明16における「シリンダヘッド20を貫通して燃焼室に臨む貫通穴に固定される圧力グロープラグであって、
貫通穴に螺合して固定されるように配置された略筒状のグロープラグ本体2と、
グロープラグ本体2内にスライドするように配置されている加熱ロッド1及び接触管6と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に固定されるセンサ素子8と、
接触管6とグロープラグ本体2の上方部分2.2との間に設けられており、接触管6をその軸線に沿ったスライドを支持する可撓性支持要素9を備えており、
圧力グロープラグを貫通穴に固定すると、グロープラグ本体2の下方部分2.1はシリンダヘッド20に対して密封し続け」、「可撓性支持要素9及びスライディング要素12は」及び「可撓性支持要素9のうち加熱ロッド1に固定された接触管6との固定部分と、可撓性支持要素9のうちグロープラグ本体2の上方部分2.2との固定部分と、可撓性支持要素9のうち両固定部分の間にあって弾性変形することによって両固定部分の間の距離を変化させる部分を備えている圧力グロープラグ。」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明16における
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け」、「支持部材は」及び「中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。」に相当する。
また、図3Aの記載から「加熱ロッド1」は「加熱ロッド1及び接触管6」のうちの先端側にあることが分かるから、先願発明16における「加熱ロッド1に設けられているとともに加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して支持するスライディング要素12」は、本件発明16における「中軸の先端側に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部」と、「中軸の先端側に設けられているとともに中軸をハウジングに対して支持する先端側中軸支持部」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明16と先願発明16は、
「エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能にすることができる支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
支持部材は、中軸の先端側に設けられているとともに中軸をハウジングに対して支持する先端側中軸支持部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えているグロープラグ。」である点で一致し、次の相違点16-1ないし16-2の2点において相違する。

<相違点16-1>
本件発明16においては、「先端側中軸支持部」が「中軸の先端側に固定されている」のに対して、先願発明16においては、「スライディング要素12」が「加熱ロッド1に設けられている」ものであり、スライディング要素12が加熱ロッド1に固定されているかが不明な点(以下、「相違点16-1」という。)。

<相違点16-2>
本件発明16においては、「中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部」であるのに対して、先願発明16においては、「加熱ロッド1を支持するスライディング要素12」であり、スライディング要素12が加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して摺動可能に支持しているかが不明な点(以下、「相違点16-2」という。)。

(15)相違点についての検討

<相違点16-1>について
先願明細書及び甲第2-1号証の図5Aの記載から、スライディング要素12の燃焼室側には、スライディング要素12の内径よりも大きい外径を有する加熱ロッド1が配置され、スライディング要素12の接続側には、スライディング要素12の内径よりも大きい外径を有する接触管6が配置されている。
しかしながら、先願明細書及び甲第2-1号証には、スライディング要素12の素材や物理的特性は何ら記載されておらず、スライディング要素12の前後に加熱ロッド1及び接触管6が配置されていたとしても、そのことによって、スライディング要素12が加熱ロッド1に固定されているとまではいうことはできない。
また、他にスライディング要素12が加熱ロッド1に固定されていると理解できる記載は、先願明細書及び甲第2-1号証にはない。
そうすると、本件発明16と先願発明16とは相違点16-1において相違する。

<相違点16-2>について
スライディングとは滑ることであるから、スライディング要素12が摺動するものであることは理解できる。
しかしながら、先願明細書及び甲第2-1号証には、スライディング要素12が何に対して摺動するのかは何ら記載されておらず、スライディング要素12が加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して支持するものであったとしても、そのことによって、スライディング要素12が加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して摺動可能に支持しているとまでは言うことはできない。
また、他にスライディング要素12が加熱ロッド1をグロープラグ本体2に対して摺動可能に支持していると理解できる記載は、先願明細書及び甲第2-1号証にはない。
そうすると、本件発明16と先願発明16とは相違点16-2において相違する。

よって、本件発明16は、先願発明16と同一ではない。

(16)小括
本件発明16は先願発明16と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明16に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当するものではない。

第7 無効理由エについての当審の判断

(1)本件発明が明確か否かの判断
本件発明1における「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」によって特定される発明の範囲が明確か否かを検討する。

グロープラグという技術分野において、圧力センサが燃焼室内の圧力に応じて変位する部材からの圧力を検出するものであることは本件の出願時における技術常識(必要であれば、甲第1号証を参照。以下「技術常識」という。)であり、本件明細書における圧力センサに関する記載からも、本件発明1の圧力センサの役割は技術常識の範疇のものであると認められる。

また、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」との記載は、「圧力センサ」が「固定されている位置」を「中軸の反燃焼室側とハウジング間」に特定しているにすぎないから、その位置を特定する限りにおいては本件発明1の記載は明確であると認められる。
そして、本件発明1の「圧力センサ」が「中軸の反燃焼室側とハウジング間」において具体的に何に対してどのように固定されているのかは多様な解釈が含まれるが、あくまで、本件発明1の圧力センサの役割が技術常識の範疇であることを考慮すると、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」によって特定される発明の範囲の外縁は、圧力センサが燃焼室内の圧力に応じて変位する部材からの圧力を検出することが可能な範囲で、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」と理解するのが相当であり、その外縁は明確であるから、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」という事項の内容が不明確であるとはいえない。
また、同様に本件発明2ないし16における、「中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサ」によって特定される発明の範囲は明確である。

(2)小括
本件発明1ないし16は明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものではなく、同法123条1項4号の規定に該当するものではない。

第8 むすび

本件発明1及び15は、いずれも、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。

本件発明1、9、14及び15は、いずれも、本件特許に係る出願の日より前に、パリ優先権主張の基礎となるドイツ国特許出願第10343521.2号がされた特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第2-1号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。

本件発明2、8、16は、いずれも、請求人が主張するように甲第2-1号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一ではない。
また、請求人の本件特許請求の範囲の記載についての主張には理由がない。
したがって、本件発明2ないし8、10ないし13及び16に係る特許は、無効とすべき理由を発見しない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人がその16分の12を、被請求人が16分の4を負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
ハウジング固定部はハウジングの燃焼室側の端部に設けられていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、前記ハウジング固定部と後端側中軸固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。
【請求項3】
先端側弾性部は、先端側中軸固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項2のグロープラグ。
【請求項4】
先端側弾性部は、ハウジング固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項3のグロープラグ。
【請求項5】
後端側弾性部は、後端側中軸固定部から反燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項2?4のいずれかのグロープラグ。
【請求項6】
先端側弾性部のばね定数は、後端側弾性部のばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項2?5のいずれかのグロープラグ。
【請求項7】
後端側中軸固定部は、中軸の最後端に固定されていることを特徴とする請求項2?6のいずれかのグロープラグ。
【請求項8】
先端側中軸固定部は中軸を一巡しており、ハウジング固定部はハウジングを一巡しており、先端側弾性部は両者間を一巡していることを特徴とする請求項2?7のいずれかのグロープラグ。
【請求項9】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する2つの支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸に固定されている中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、両者間にあって弾性変形することによって両者間の軸方向距離を変化させる弾性部を備え、
先端側支持部材は、中軸の先端側に固定されている先端側中軸固定部と、ハウジングの先端側に固定されている先端側ハウジング固定部と、両者間にある先端側弾性部を有し、
後端側支持部材は、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングの後端側に固定されている後端側ハウジング固定部と、両者間にある後端側弾性部を有していることを特徴とするグロープラグ。
【請求項10】
先端側弾性部は、先端側中軸固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項9のグロープラグ。
【請求項11】
先端側弾性部は、先端側ハウジング固定部から燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項10のグロープラグ。
【請求項12】
後端側弾性部は、後端側中軸固定部から反燃焼室側に向けて伸びる部分を備えていることを特徴とする請求項9?11のいずれかのグロープラグ。
【請求項13】
先端側弾性部のばね定数は、後端側弾性部のばね定数よりも小さいことを特徴とする請求項9?12のいずれかのグロープラグ。
【請求項14】
先端側中軸固定部は中軸を一巡しており、先端側ハウジング固定部はハウジングを一巡しており、先端側弾性部は両者間を一巡していることを特徴とする請求項9?13のいずれかのグロープラグ。
【請求項15】
中軸固定部は、中軸のほぼ中心よりも反燃焼室側に形成されていることを特徴とする請求項1のグロープラグ。
【請求項16】
エンジンヘッドを貫通して燃焼室に臨む貫通穴に取付けるグロープラグであって、
貫通穴を画定する内壁に結合する略筒状のハウジングと、
ハウジング内にスライド可能に収容されている中軸と、
中軸の反燃焼室側とハウジング間に固定されている圧力センサと、
中軸とハウジング間に設けられており、中軸をその軸線に沿ってスライド可能に支持する支持部材を備えており、
グロープラグを貫通穴に取付けると、ハウジングの燃焼室側の端部はエンジンヘッドの内壁に密着し続け、
支持部材は、中軸の先端側に固定されているとともに中軸をハウジングに対して摺動可能に支持する先端側中軸支持部と、中軸の後端側に固定されている後端側中軸固定部と、ハウジングに固定されているハウジング固定部と、後端側中軸固定部とハウジング固定部間にある後端側弾性部を備えていることを特徴とするグロープラグ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-06-02 
結審通知日 2016-06-06 
審決日 2016-06-27 
出願番号 特願2005-150814(P2005-150814)
審決分類 P 1 113・ 841- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 113- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 537- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 857- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 121- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 851- ZDB (F23Q)
P 1 113・ 161- ZDB (F23Q)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 梶本 直樹
伊藤 元人
登録日 2010-04-09 
登録番号 特許第4487853号(P4487853)
発明の名称 グロープラグ  
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