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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65D
審判 全部無効 1項2号公然実施  B65D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
管理番号 1320458
審判番号 無効2014-800070  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-04-30 
確定日 2016-08-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5154906号発明「プレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレススルーパック」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第5154906号の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成18年12月18日 出願(特願2006-339786)
平成19年12月14日 本件出願(優先権主張)
平成24年12月14日 設定登録(特許第5154906号)
平成26年 4月30日 審判請求書
平成26年 7月22日 答弁書、訂正請求書(1)
平成26年 9月12日付 審理事項通知(1)
平成26年 9月26日 両者・口頭審理陳述要領書(1)
平成26年10月 1日付 審理事項通知(2)
平成26年10月10日差出 両者・口頭審理陳述要領書(2)
平成26年10月10日 口頭審理(1)
平成26年10月22日付 審理事項通知(3)
平成26年10月23日 証人尋問申出書、尋問事項書
平成26年12月 3日 両者・口頭審理陳述要領書(3)
平成26年12月 8日 請求人・上申書(1)
平成26年12月17日差出 両者・口頭審理陳述要領書(4)
平成26年12月17日 口頭審理(2)、証人尋問
平成27年 2月23日付 審決の予告
平成27年 4月24日 被請求人・上申書、訂正請求書(2)
平成27年 6月 1日 弁駁書
平成27年 6月16日 請求人・上申書(2)
平成27年 6月26日付 審尋
平成27年 7月30日 両者・回答書

以下、口頭審理陳述要領書を、「要領書」と略記する。

第2.訂正請求について
1.訂正請求の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、訂正請求書(2)に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおりであって、以下のとおりである。

ア.訂正事項1-1
請求項1に
「アルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層と、
前記下地層上に設けた白着色層と、
前記白着色層上に位置するバーコード部と、を備えるシートを、プレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シート。」
とあるのを
「調質が硬質材であるアルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層と、
前記下地層上に設けた白着色層と、
前記白着色層上に位置するバーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)と、を備えるシートであって、
前記バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシートを、前記バーコード部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シート。」
と訂正する。

イ.訂正事項1-2
明細書の段落0006を、請求項1の訂正に整合するように訂正する。

ウ.訂正事項2-1
請求項8に
「アルミニウム箔の少なくとも一方の面に透明ないし半透明の下地層を塗布によって設け、さらに該下地層上に白着色層を設け、次いで、該白着色層上に、フレーム処理が施されたグラビア版によるバーコード印刷部を設けることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シートの製造方法。」
とあるのを
「調質が硬質材であるアルミニウム箔の少なくとも一方の面に透明ないし半透明の下地層を塗布によって設け、さらに該下地層上に白着色層を設け、次いで、該白着色層上に、フレーム処理が施されたグラビア版によるバーコード印刷部を設けることを特徴とする、
前記バーコード印刷部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋用包装用シートであって、前記バーコード印刷部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート
の製造方法。」
と訂正する。

エ.訂正事項2-2
明細書の段落0015を、請求項8の訂正に整合するように訂正する。

2.訂正請求についての当審の判断
訂正請求について検討する。
訂正事項1-1は、アルミニウム箔について、「調質が硬質材である」との発明特定事項を付加し、バーコード部について、「ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。」との発明特定事項を付加するとともに、「前記バーコード部を市販のバーコードリーダーにより読み取る」こと、「前記バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
また、本件特許明細書の段落0005、0007、0011?0012、0017、0020、0034、0037、0041?0043の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

訂正事項1-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

訂正事項2-1は、アルミニウム箔について、「調質が硬質材である」との発明特定事項を付加し、バーコード部について、「前記バーコード印刷部を市販のバーコードリーダーにより読み取る」こと、「前記バーコード印刷部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
また、本件特許明細書の段落0005、0007、0012、0017、0020、0034、0037、0041?0043の記載からみて、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

訂正事項2-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

訂正後の請求項1?7は、請求項1の記載を請求項2?7がそれぞれ引用するものであるから、訂正後の請求項1?7は、特許法施行規則46条の2第2号に規定する関係を有する一群の請求項である。また、訂正後の請求項8は、請求項8の記載を引用する請求項はない。
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第9項で準用する特許法第126条第3?6項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。

請求人は、実際に存在するバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールであることを必須要件としない限り、訂正は新規事項の追加であり不適法である旨、主張する(請求人要領書(2)の5.(1-1))。
しかしながら、本件特許明細書の段落0037には「バーコード部5を、・・・グラビア印刷により設けた。」と記載されており、バーコード部が印刷される前の状態のシートが存在しているから、新規事項には当たらない。
よって、請求人の主張は根拠がない。

第3.本件発明
訂正された本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、以下のとおりである。
なお、請求項1のA1等の分説符号は、請求人の弁駁書によるものに準じて付した。

「【請求項1】A1.調質が硬質材であるアルミニウム箔と、
A2.前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層と、
A3.前記下地層上に設けた白着色層と、
A4.前記白着色層上に位置するバーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)と、を備えるシートであって、
A4’.前記バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシートを、
A5.前記バーコード部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項2】前記下地層が、前記バーコード部の読み取りの、少なくともシンボルコントラスト(SC)値を高めるためのものである、ことを特徴とする、請求項1に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項3】前記白着色層は、20重量%?30重量%の白色顔料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項4】前記白着色層が、単位面積当たり1.0g/m2?4.0g/m2で前記アルミニウム箔上に設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項5】前記バーコード部は、フレーム処理されたグラビア版を用いて、印刷されていることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項6】前記バーコード部のインキ層の中心線から公称幅分を越えてはみ出たはみ出し幅ΔWが、その他の印刷部または裏面印刷部のインキ層の上記はみ出し幅ΔWと比較して、10%以上小さいことを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。

【請求項7】前記請求項1?6のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シートを、ポケット部を有する収納シートの蓋に用いたことを特徴とする、プレススルーパック。

【請求項8】調質が硬質材であるアルミニウム箔の少なくとも一方の面に透明ないし半透明の下地層を塗布によって設け、さらに該下地層上に白着色層を設け、次いで、該白着色層上に、フレーム処理が施されたグラビア版によるバーコード印刷部を設けることを特徴とする、
前記バーコード印刷部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋用包装用シートであって、前記バーコード印刷部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート
の製造方法。」

第4.請求人の主張
1.主張の要点
本願は、優先権の主張を伴うものであるが、請求項1、8で特定する「アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層」については、優先権の基礎となる出願の明細書等に記載されていない。
よって、優先権の主張は認められず、以下の無効理由は現実の出願日を基準に判断されるべきである(請求書の10ページ(4-2))。

請求人は、以下の理由により、本件特許は、特許法(以下、特記なきは「特許法」である。)第123条第1項第2号、第4号に該当し、無効とするとの審決を求めている(請求書の2ページ7.(1)、第2回口頭審理調書の「両当事者」、請求人回答書の2ページ(1)ア.)。
以下、「甲第1号証」を「甲1」のように略記する。

無効理由1:29条の2
請求項1?3、7 甲1(請求項3は取下げ。訂正認容なら全て取下げ)
無効理由2:29条2項
(1)請求項1
ア.甲2を主たる証拠とし、さらに甲3又は4
イ.甲12実施品(ババロアチョコレート)を主たる証拠(技術内容、流通状況は甲9?11、13?16も)とし、さらに甲3
(2)請求項2?8
請求項2は、上記ア又はイに、さらに甲5
請求項3は、上記ア又はイに、さらに甲2及び設計事項
請求項4は、上記ア又はイに、さらに甲2
請求項5は、上記ア又はイに、さらに甲2又は8
請求項6は、上記ア又はイに、さらに設計事項
請求項7は、上記ア又はイに、さらに甲2
請求項8は、上記ア又はイに、さらに甲2又は8
無効理由3:36条6項1号、2号
「透明ないし半透明の下地層」の技術的意義不明。課題との関係でサポートなし
無効理由4:36条4項1号(訂正認容なら追加)
総合評価はB以下も生じうるが、Aをいかに作るかが不明

なお、無効理由1(29条の2)については、訂正請求の認容により、取り下げられた(請求人回答書の6ページ イ.)。

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲1?22は審判請求時に、甲23?58はその後、提出されたものである。
また、奥田稔を証人とする証人尋問を申し出ている。

甲1 特願2007-191194(特開2009-23717)
甲2 特開平10-24944号公報
甲3 「月刊 自動認識」日本工業出版株式会社、2007年7月、第40頁?第43頁「医薬品用PTPアルミ箔のバーコード表示」
甲4 「医薬品情報とバーコード」株式会社薬事日報社、平成19年7月31日、第56頁?第80頁
甲5 「創包工学研究会第32回講演会 要旨集」創包工学研究会、2007年1月24日、第23頁?43頁
甲6 「塩化ビニル樹脂」日刊工業新聞社、昭和47年2月20日、第396頁
甲7 「エポキシ樹脂」日刊工業新聞社、昭和44年5月30日、第17頁
甲8 実公平2-13154号公報
甲9 奥田稔氏 報告書、平成26年4月22日
甲10 昭和63年8月19日に日箔において改正された製品仕様書
甲11 平成2年1月25日に日箔において改正された製品仕様書
甲12 昭和63年11月10日に日箔において作製された刷見本
甲13 1989年明治乳業製品カタログ
甲14 甲13の「デザート」の頁の「ババロア(チョコレート)」の外観写真を拡大した写し
甲15 甲13の「デザート」の頁の表の部分の拡大した写し
甲16 富士インキ株式会社による証明書、平成26年3月25日
甲17 実公昭62-12596号公報
甲18 本件特許の優先権の基礎出願(特願2006-339786)の明細書
甲19 本件特許の審査過程において提出された意見書
甲20 本件特許の公開公報(特開2008-174302号公報)
甲21 本件特許出願の分割出願に係る特許の特許公報(特許第5376697号)
甲22 甲12の刷見本におけるSC値等の測定結果報告書、平成26年4月24日
甲23 厚生労働省医薬食品局安全対策課長名の文書、平成18年9月15日
甲24 「医薬品情報とバーコード」株式会社薬事日報社、平成19年7月31日、第19頁?第37頁、第53頁?第55頁、第125頁
甲25 「光物理学の基礎」株式会社朝倉書店、2010年11月25日、第78頁?第81頁
甲26 「PTPアルミ箔の検証と課題についてII」2013年10月21日、医療・医薬品包装シンボル標準化推進協議会 第1回関西講演セミナーでの東洋アルミニウム株式会社による発表資料
甲27 「バーコードの種類と特徴」株式会社エイポック(ホームページ出力資料)
甲28 「食品・医薬品包装ハンドブック」株式会社幸書房、2000年7月15日、第147頁?第161頁
甲29 「三極【日本・FDA・EU】法規制の違いと対応 医薬品・食品包装における設計・表示・材料規格と包装工程の品質確保」株式会社技術情報協会、2005年9月12日、第96頁?第105頁
甲30 アルミニウム箔上に、直接白着色層のみを印刷したサンプル、及びアルミニウム箔上に透明のプライマー層を塗布しその上に白着色層を印刷したサンプルを台紙に貼り付けもの
甲31 株式会社UACJ製箔(旧日箔)滋賀工場内における「刷見本等の保管棚」を示す写真
甲32 甲31に示された「刷見本等の保管棚」に保管された「色見本 資料 No.300 No.499」と表記されたボックスファイルを示す写真
甲33 株式会社UACJ製箔(旧日箔)滋賀工場内における「製品仕様書ファイルの保管棚」を示す写真
甲34 甲33に示された「製品仕様書ファイルの保管棚」に保管されていた「製品製造仕様書 東京TM001?」と表記されたファイルを示す写真
甲35 株式会社UACJ製箔(旧日箔)滋賀工場内における「廃棄仕様書ファイルの保管棚」を示す写真
甲36 甲35に示された「廃棄仕様書ファイルの保管棚」に保管されていた「廃棄分 製品製造仕様書 TM001?120」と表記されたボックスファイルを示す写真
甲37 甲32に示されたボックスファイル内に収容されていた8冊のファイルを示す写真
甲38 甲37に示された上から3番目のファイル内に収容されていたNo.353と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲39 甲37に示された上から4番目のファイル内に収容されていたNo.380と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲40 甲37に示された上から4番目のファイル内に収容されていたNo.389と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲41 甲37に示された上から4番目のファイル内に収容されていたNo.391と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲42 甲37に示された上から5番目のファイル内に収容されていたNo.404と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲43 甲37に示された上から6番目のファイル内に収容されていたNo.443と表示された食品容器の蓋用シートの刷見本
甲44 「印刷インキハンドブック」印刷インキ工業連合会、昭和53年6月、第1頁?第3頁、第50頁
甲45 特開2005-313938号公報
甲46 特開2007-253949号公報
甲47 特開2005-82179号公報
甲48 特開2005-170464号公報
甲49 特開2007-253949号公報
甲50 「新版アルミニウム技術便覧」カロス出版株式会社、1996年11月18日、第608頁?第609頁
甲51 「月刊薬事」薬業時報社、第25巻第7号、昭和58年7月1日、第43頁?第47頁
甲52 甲40及び甲41の刷見本におけるバーコード読み取り性に関する測定結果報告書、平成27年7月14日
甲53 「知っておきたいバーコードの知識」日本工業出版株式会社、平成27年4月30日、第110頁?第117頁
甲54 バーコードリーダーの一種である「ペンスキャナ」の市販時期を示すアイメックス株式会社の会社概要(ホームページ出力資料)
甲55 富士インキ工業株式会社の証明書、平成27年7月17日
甲56 メラミン樹脂が透明であることを示すホームページ出力資料
甲57 「最新・工業塗料ハンドブック」株式会社テクノシステム、2008年2月29日、第255頁
甲58 「塗料と塗装技術」株式会社日本理工出版会、2001年11月25日、第2頁?第3頁

なお、甲47?51については、上申書(2)により訂正後の番号である。

3.主張の概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)優先権主張の効果
本件の優先権基礎出願(特願2006-339786)の出願明細書(甲18)には、本件特許発明の構成要素であるA2「アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層」に関する記載は全くない。
そのため、本件特許の請求項1?8の発明に対しては、優先権基礎出願の出願の時にされたものとみなす規定(第41条第2項)は一切適用されない。
本件特許の請求項1?8に記載の各発明に対する特許要件は、実際の出願日、すなわち平成19年12月14日を基準として判断されるべきである。
(請求書の10ページ(4-2))

(2)無効理由1(第29条の2)
甲1に基づいて再現したシート構造を示す参考図2からも知られるように、甲1のPTP包装用積層体は、本件請求項1における、A1(アルミニウム箔)と、A2(前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層)と、A3(前記下地層上に設けた白着色層)とを備え、さらに、A4(前記白着色層上に位置するバーコード部)と、を備えるA5(プレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シート)である。
請求項2、3、7で特定した点も、甲1に記載されている。
したがって、訂正前の本件請求項1、2、3、7の発明は、本件特許の出願日前に出願され出願後に公開された特許出願に係る甲1に記載された発明と同一である。
(請求書の36ページ(4-4))

(3)無効理由2(第29条第2項)のうち甲2を主とするもの
甲2には、本件請求項1のA1、A2、A3及びA5が記載されている。
一方、甲2には、「マーク及び文字等」がA4の「バーコード」であるか否かについては、明確な記載がない。
甲2と、甲3、4、23は、技術分野が共通し、かつ、「医療事故防止」という課題も共通するため、これら甲号証を組み合わせる動機付けが存在する。
当業者であれば、甲3又は甲4を参照することにより、甲2における「マーク及び文字等」として「バーコード」を採用し、本件請求項1の発明を導くことは容易である。
バーコードサイズの選択は、単なる人為的な選択であり、甲4、24には、スペースの関係から、0.17mm(0.169mmと同義)のバーコードサイズを採用してもよいことが記載されている。
「バーコード」は、人が読み取るものではなく、「バーコードリーダー」によって読み取るものであることは、自明の事項である。
バーコード読み取り作業の利便性を考えると、1回の走査で識別できる目安である総合評価Aを目指すのが、当業者の自然な姿勢である。また、甲3、4、24、53に、総合評価のグレードとして「C以上」あるいは「B以上」という表現がある。
なお、甲2には、「透明又は半透明の樹脂からなるプライマー層」(A2)が、密着性向上の目的のために設けられると記載されているものの、「プライマー層」が、バーコードの読み取り性を向上させることは、記載されていない。
しかしながら、当業者が甲2と甲3に基づいて、A1?A5を具備する構成を容易に導くことができる以上、一部の構成要素による作用の直接的な記載がないことが進歩性を否定する論理付けに影響を及ぼすことはない。
甲28、29から明らかなとおり、アルミニウム箔の表面には、酸化皮膜が形成されていると共に、製造時に付着した圧延油が表面に残存しており、印刷層との密着性に悪影響を与えている。プライマー層(透明層)の存在は、層構造の安定性に有利であるので、そのまま用いることに困難性はなく、そのまま残すだけであるからコストアップや生産性の低下も生じない。
また、プライマー層を設けることで、視認性向上の効果を発揮する(甲30)から、プライマー層を除外することはない。
(請求書38ページ(4-5)の(a)(b)、要領書(1)10ページ(5-1)、要領書(2)6ページ(2-3)、要領書(3)2ページ(1-2)、弁駁書4ページ(2-2)、回答書7ページ(4))

(4)無効理由2(第29条第2項)のうち甲12を主とするもの
甲9?11の記載から、昭和63年8月19日から平成2年1月25日頃まで、甲10の製品仕様書に基づいて作製された刷見本(甲12)と同構造のシート材(以下、「実施品シート」という)が製造されていた。
甲12は、旧日本製箔株式会社の滋賀工場の「刷見本等の保管棚」(甲31)の「色見本資料」等と表記された複数のボックスファイル(甲32)に、同時期に作成された他の容器蓋等の刷見本(甲38?43)とともに保管されていた。
甲9?10の製品仕様書の「得意先」の欄の「明治乳業(株)」という記載から、この仕様書に基づいて日箔が作製した「実施品シート」が、明治乳業に納入されていた。
日箔が作製した甲12の刷見本は、甲13の明治乳業カタログに記載された商品名「ババロア(チョコレート)」の容器の蓋材(甲14)と、図柄及び「JANコード」が同じである。これらから、日箔が作製した刷見本(甲12)と同構造の「実施品シート」が、少なくとも、明治乳業カタログ(甲13)の有効年と認められる1989年に、商品名「ババロア(チョコレート)」として一般消費者に向けて販売されていた容器の蓋材に使用されていたことは明らかである。
刷見本(甲12)と同構造の「実施品シート」は、甲10の製品仕様書における「構成」、「工程名」及び「機械名」の欄の記載、及び甲9、甲16から、アルミニウム箔の上の全面に透明のAC層(アンカーコート層)が配置され、その上に部分的に6C印刷(白色層上のバーコード部を含む6色印刷層)が配置され、その上に全面に透明のOP層(オーバープリント層)が配置された構成を有していることが明らかである。
これら事実から、甲10の製品仕様書に基づいて作製された刷見本(甲12)と同じ構成の「実施品シート」は、本件請求項1のA1(アルミニウム箔)と、A2(前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層)と、A3(前記下地層上に設けた白着色層)と、A4(前記白着色層上に位置するバーコード部)と、を備えるシートであると認定することができる。しかも、「実施品シート」が、本件特許の出願日(平成19年12月14日)より前の甲13の明治乳業カタログの有効年(1989年(昭和64年))頃に公知になっていたことは明らかである。
上記実施品シートは、A5(プレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、プレススルーパックの蓋用包装用シート)ではないが、かかるシートをプレススルーパックの蓋用とすることは、甲3、17から容易である。
実施品シートの構造をPTP蓋材に利用した場合、その用途の変更に伴って機能上必要なアルミニウム箔の強度特性を考慮し、PTP用として周知の硬質のアルミニウム箔を選択することは当業者においては容易である。
バーコードサイズが公称0.169mm/モジュールのバーコードをPTP用蓋材に使用することは、公知事項(甲4、24)であり、印刷スペースの状況によって人為的に選択するべき要件に過ぎない。
SCは、甲5のスライドNo.20等にその定義が明記されているように、個々のバーではなくバーコード全体を測定対象とした場合の最大反射率Rmaxと最小反射率Rminの差(SC=Rmax-Rmin)であって、バーコードシンボルのモジュール幅に左右されるものではない。
総合評価のグレードとして最高位のAを選択することは、甲2を主とする場合と同様に、当業者の自然な姿勢である。
実施品シートは、市場に流通していたものであり、バーコードがバーコードリーダーによって読み取るものであることは、自明なことである。
(請求書40ページ(4-5)の(c)、要領書(1)22ページ(5-2)、要領書(2)5ページ(1-3)、10ページ(2-9)、要領書(3)8ページ(2-2)、弁駁書7ページ(2-3)、回答書7ページ(4))

(5)無効理由2(第29条第2項)のうち請求項2?8
請求項2?8は、甲2又は甲12を主とする請求項1についての理由に加え、以下の理由により、容易想到である。
請求項2で特定した点は、さらに甲5から容易である。(請求書44ページ)
請求項3で特定した点は、甲2に記載されている。甲2の「%」は、甲44?46に示されるように「重量%」と解するのが自然である。30重量%以下という範囲は、製造上の理由であり、光学的な特性とは全く関係がない。(請求書44ページ、要領書(4)2ページ(2-2))
請求項4で特定した点は、甲2に記載されている。(請求書44ページ)
請求項5で特定した点は、甲2又は甲5に記載されている。(請求書45ページ)
請求項6で特定した点は、設計事項にすぎない。(請求書46ページ)
請求項7で特定した点は、甲2に記載されている。(請求書47ページ)
請求項8は、請求項1と実質的に同一であるから、請求項1と同様の理由により、容易想到である。(請求書47ページ)

(6)無効理由3(第36条第6項第1、2号)
本件特許明細書には、透明な下地層2を用いた実施例としては、「本発明例S」が、半透明な下地層2を用いた実施例としては、「本発明例T」が記載されているのみである。
かかる実施例から全ての透明樹脂、半透明樹脂が有効であることまで拡張一般化することは困難である。
明細書の段落0024、図4の記載を見ても、本件発明のA2「下地層2が透明または不透明」であることの技術的意義が不明である。
(請求書48ページ(4-6)、53ページ(4-7))

(7)無効理由4(第36条第4項第1号)
総合評価がAのものを如何にして作ることができるかは、本件特許明細書には実施例2の発明例Sと発明例T以外は記載されていない。実施例2には、上述したごとく、1種類の白着色層と、1種類の透明の下地層と、1種類の半透明の下地層しか開示されていない。そのため、無数にある透明ないし半透明の下地層と、無数にある白着色層との組合せの中から、1つの積層構造を選択し、これに、0.169のバーコードを形成して、バーコード読み取り試験を行い、SC評価がAであれば発明が完成し、そうでなければ、発明が完成していないという多大な試行錯誤を行わなければならない。
「総合評価A」を担保するための印刷品質を確保する要件は、記載も示唆もされていない。
(要領書(1)34ページ(9-2)、回答書2ページ ア.)

第5.被請求人の主張
1.主張の要点
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2.証拠
被請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

乙1 JANシンボルに関する説明資料(流通システム開発センターホームページより)
乙2 実験報告書、東洋アルミニウム株式会社 東直樹、平成26年7月17日
乙3 結果報告書「アルミニウム箔加工品の剥離面観察」株式会社東レリサーチセンター、2013年9月26日
乙4 特開2001-80013号公報
乙5 特開2009-145901号公報
乙6 特開2010-533228号公報
乙7 「PTPアルミ箔の検証と課題についてI」2013年6月17日、医療・医薬品包装シンボル標準化推進協議会での日本製箔株式会社による発表資料
乙8 「PTPシート材質変更のご案内」サンド株式会社、2013年8月
乙9 「アルミ合金の表わし方、質別記号」株式会社UACJホームページより出力
乙10 「バーコードの基礎知識」アヴネット株式会社ホームページより出力
乙11 「医療用医薬品新コード表示ガイドライン」日本製薬団体連合会、平成24年8月1日

3.主張の概要
被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)優先権主張の効果
優先権主張の効果について、被請求人は争わない。
(要領書(1)2ページ5(2))

(2)無効理由1(第29条の2)
訂正された本件発明1?8は、少なくともレーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部が除かれている以上、甲1発明と同一でないことは明らかである。
(答弁書4ページ(2-1))

(3)無効理由2(第29条第2項)のうち甲2を主とするもの
甲2には「プライマー層」との記載があるが、このプライマー層の目的は専ら層間の密着性・接着性を高めることを目的とするものにとどまる。
本件特許出願前における技術水準としては、甲2、甲3等にも示されているとおり、白ベタ層の構成そのものを改良することが主眼とされていたのであって、他の層の形成によってシンボルコントラストがさらに高まるということなど全く考えもよらなかった。
甲3、4のいずれにも、下地層のないPTPシートが開示されているだけであって、アルミニウム箔と白着色層の間に下地層を形成しても良い旨は、記載されていない。
白着色層は、アルミニウム箔からの直接反射を隠蔽する機能を有するほか、アルミニウム箔との密着性を確保するプライマー層としての機能を既に果たしているから、さらなるプライマー層は必要がない。
仮に白着色層とアルミニウム箔との間にプライマー層を形成するにしても、バーコードリーダによる読み取り性を向上させるべく、白着色層による隠蔽性を少しでも高めるためにプライマー層を白色に着色し、2重の白着色層にしようとするのが当業者の普通の考え方と言える。
文字等を肉眼による識別する場合と、バーコードリーダにより識別する場合においては、その読み取り時の検出原理(肉眼に届いた光で識別するのか、あるいは自ら光りを放って拡散反射光を受けて識別するか)に違いがあるだけでなく、その読み取り性の問題が起こる原因(肉眼に反射光が入ることによる見づらさなのか、あるいは鏡面反射により拡散反射光がバーコードリーダに戻ってこなくなることによる検出性の低下なのか)も本質的に異なることから、そもそも両者は前提技術(原理)が異なる。
甲2にはコントラストを高めるという課題は存在しない。甲2は、あくまで単一の塗工層を設けることによりアルミニウム箔の反射光が肉眼に入って文字等が見づらくなることを抑えるための技術、あくまで目視により文字等を識別することを前提とした技術である。
バーコードリーダによる読み取りを前提としていない甲2を基礎技術とする必然性はなく、甲3?甲4と組み合わせる必然性ないしは動機づけも一切存在しない。またこれら甲号証を如何に組み合わせたとしても本件発明1に想到し得ない。
本件発明のように下地層を設けることは、設けない場合に比してシート総厚みが厚くなることに加え、下地層を設ける工程が増える分、時間・コストもかかる。例えば、本件明細書の実施例において下地層を設けない「参考例U」は、SCはB評価であるが、甲4のように[C]評価以上の範囲内にあるから、実用上はB評価でも通用する。このように、A評価をとるためには相応の技術上・経済上の犠牲を払う必要がある一方、実用的にはB評価でも足りるのであるから、常にA評価をとらなければならないという要請はない。
(答弁書6ページ(2-2-1)、要領書(2)3ページ(3)、要領書(3)2ページ(1)、要領書(4)4ページ(2)、上申書2ページ(2-1))

(4)無効理由2(第29条第2項)のうち甲12を主とするもの
甲12は、昭和63年8月19日決まった製品仕様に基づき昭和63年11月10日に作製された刷見本ということであるが、使用決定後約3ヵ月後に刷見本が作製されたこと自体不自然であるうえ、甲12の右下隅に「63.11.10」との記載の日に刷見本が作製されたものと認めることはできないこと、デザインが確定し数次にわたって作製されたシートにもかかわらず、甲12の刷見本が廃棄されず、約25年半も保管されていたことに関する合理的理由や保管状況・発見時の状況等が明らかではなく、甲12が甲10の製品仕様書に基づいて作製されたものと認めることはできない。
仮に、「実施品シート」が「公然実施をされた発明」であったとしても、甲3と組み合わせる動機づけがない。
PTP包装とは、「指で内容物を押して蓋材を突き破る」ことにより内容物を取り出す包装形態であり、硬質材のアルミニウム箔が破断することを前提に設計されている。これに対し、甲12等のババロアの蓋材は、軟質材のアルミニウム箔であり、破断することを想定しておらず、むしろ破断しない強度が要求される包装形態である。
甲12等のババロアの蓋材は、高品質のバーコードが必要とされる医薬品の分野とは異なる飲食品の分野である。飲食品の分野では、小さなバーコードを必要とせず、そもそも検証グレードが要求されていない。「総合評価A」を目指す必要性・蓋然性もない。
(答弁書9ページ(2-2-2)、要領書(2)8ページ(4)、上申書4ページ(2-2)、回答書4ページ(4))

(5)無効理由2(第29条第2項)のうち請求項2?8
本件発明1がこれら甲号証から容易に想到できない以上、本件発明1を引用する本件発明2?7も進歩性を有することは明らかである。同様に、本件発明1に係る包装用シートを製造する方法である本件発明8も進歩性を有することは明らかである。
請求項3に関し、甲2には、白色顔料20?30重量%であることを示唆すらされていないし、バーコードの印刷を前提としていない以上はその白着色層を形成する目的・機能も同じでない。甲2には「酸化チタン40%」としか記載されておらず、その単位が「重量%」を意味するのか、「原子%」を意味するのか、「体積%」を意味するのか、何ら記載がない。
(答弁書12ページ(2-2-3)、要領書(1)3ページ(4))

(6)無効理由3(第36条第6項第1、2号)
本件明細書【0024】に記載されているとおり、透明ないし半透明の下地層は、光を拡散反射させる役割と、アルミニウム箔表面へ光線を届け、反射した光線を白着色層へ再帰させると同時に光線を屈折、散乱させる役割を担っている。
これに対し、下地層が不透明な場合は、光はアルミニウム箔まで到達しないか、仮に到達しても白着色層に戻ってこない(すなわち、光が減衰する)から、本件発明の効果が得られないことは容易に理解できる。
(答弁書13ページ(2-3))

(7)無効理由4(第36条第4項第1号)
請求項1に係る発明は、物性のみで特定される発明ではなく、あくまで特定の層構造を基本とし、さらに特定の物性で限定するものである。当該層構造を構築できれば、あとは物性の有無を測定するだけであり、しかもその測定方法は当業者間で通常採用されている方法であるから、当該発明の再現に過度の負担など存在しない。
甲12が総合評価Bであったことをもって、実施可能要件違反に該当するというのは妥当ではない。
(要領書(2)10ページ(5)、回答書4ページ(5))

第6.優先権主張についての当審の判断
本件発明1?8は、いずれも「アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層」を含むものである。
しかしながら、優先権の基礎となる出願の明細書等(甲18)に、「下地層」は、何ら記載も示唆もない。
よって、優先権の主張の効果は認められない。
なお、この点、当事者間に争いはない(上記第5.の3.(1))

第7.甲2を主とする第29条第2項の無効理由についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1?8は、後記第9.で検討するとおり、第36条第6項第2号に規定する要件を満たすから、上記第3.のとおりと認められる。

2.刊行物記載事項
(1)甲2
甲2には、以下が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレススルーパック(以下「PTP」という)用蓋材に関し、更に詳しくは、医薬品等の錠剤の包装体に使用されるPTP用蓋材に関するものである。」

「【0008】そこで本発明は、蓋材であるアルミニウム箔の表面の光の反射をなくして、アルミニウム箔に施された商品名や内容物の取り出し方法などのマークや文字等の印刷を際立たせて、視認性を高めるPTP用蓋材を提供することである。」

「【0011】
【発明の実施の形態】上記の本発明について、図面等を用いて以下に更に詳しく説明する。まず、上記の本発明において、アルミニウム箔としては、硬質性であって、厚みが15?30μmのものを使用することができる。すなわち、アルミニウム箔としては、軟質性のものと硬質性のものがあるが、軟質性のものは、硬質性のものに比較して、機械的強度が劣るため、PTP用蓋材といった本目的には、内容物を保護する観点から適していない。また、硬質性のものであっても、15μmより薄いものは、ピンホールが内在しており、上記軟質性のものと同様な理由で適していないし、逆に30μmより厚いものは、機械的強度が強くなり過ぎることにより、PTPの本来機能である押圧破断が困難になる一方で、経済性の点でも悪くなる。」

「【0013】また、上記方法は、アルミニウム箔に直接塗工層を設ける方法であるが、アルミニウム箔と塗工層との間に、必要ならば、例えば、各層の密着性等を高めるためにプライマー層等を設けることができる。プライマー層としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エステル系樹脂等の一種ないしそれ以上のビヒクルに所望の添加剤を任意に加えて充分に混練してなる樹脂組成物を用い、上記の印刷法ないしコーティング法で印刷ないし塗工することにより、該樹脂組成物によるプライマー層を得ることができ、そのドライの場合の塗工量としては、1mg?1g/m2位が好ましい。
【0014】しかるのちに、本発明においては、上記の一色の塗工層の上に、商品名・内容物の取り出し方法などのマ-クや文字等の印刷を施す。該印刷は、・・・樹脂組成物を用い、グラビア印刷方式で印刷することで得られる。これに使用する着色顔料は、一般的には有彩色を用い、塗工層に使用する着色顔料は無彩色、基本的には白色を用いる。しかし、この組み合わせは、商品名・内容物の取り出し方法などのマ-クや文字等の印刷が際立ち、視認性が高まる組み合わせであれば、いかなる組み合わせでも良い。
【0015】その後更に、上記の印刷層の上に、・・・樹脂組成物を用い、前記同様の印刷法ないしコーティング法で印刷ないし塗工することにより、該樹脂組成物によるオーバーコート層を得ることができる。・・・。」

「【0018】前記のような視認性の高いPTP用蓋材の層構成について、図面を用いて示すと、図1、図2は本発明のPTP用蓋材の層構成を示す断面図である。まず、本発明にかかるPTP用蓋材は、図1に示すように、アルミニウム箔1の片面に、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷を際立たせ、視認性を高める塗工層2を設け、該塗工層2の上に、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷層3を設け、更に、該印刷層3の上に、該印刷層3を保護するオーバーコート層4を設け、他方、上記アルミニウム箔1の他方の面に、内容物収納用の凹部が賦形されている底材を該蓋材で閉塞するための接着剤層5を形成した構成からなるものである。
【0019】また、本発明にかかるPTP用蓋材は、図2に示すように、アルミニウム箔1の片面に、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷を際立たせ、視認性を高める塗工層2を設け、該塗工層2の上に、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷層3を設け、更に、該印刷層3の上に、該印刷層3を保護するオーバーコート層4を設ける構成は、上記の図1に示す構成と同じであるが、他方、上記アルミニウム箔1の他方の面にも、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷を際立たせ、視認性を高める塗工層2' を設け、該塗工層2' の上に、商品名・内容物の取り出し方法などの印刷層3' を設け、しこうして、該印刷層3' の上に、内容物収納用の凹部が賦形されている底材を該蓋材で閉塞するための接着剤層5を形成し、アルミニウム箔の両面に印刷層を形成した構成からなるものである。」

甲2に記載された事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、本件発明に照らして整理すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
なお、甲2発明について、当事者間に争いはない(請求人回答書6ページ(2)、被請求人回答書2ページ(1))。

「硬質性であるアルミニウム箔1と、
前記アルミニウム箔1と塗工層2との間に設けられる塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂組成物によるプライマー層と、
前記プライマー層上に設けた白色の前記塗工層2と、
前記塗工層2上に位置するグラビア印刷方式による商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等の印刷層3と、
前記印刷層3を保護するオーバーコート層4と、を備える蓋材を、プレススルーパックの蓋に用いる、プレススルーパック用蓋材。」

(2)甲3
甲3には、医薬品のバーコードによる識別が求められている点(40ページ左欄)、PTPアルミ箔の構成(41ページ第1図)、バーコード印刷において、総合グレードC以上を推奨すること(42ページ左欄)、SCのBグレード以上の確保が望ましいこと(42ページ右欄)が、記載されている。

(3)甲4
甲4には、医薬品のバーコードによる識別が求められている点(56?57、69?70、77ページ)、バーコードのモジュール幅を0.17mm以上とすること(71ページ)、バーコードの読み取り性においてレベル「C」以上が求められること(78ページ)、白ベタ印刷の上にバーコードを表示することが望ましいこと(80ページ)が、記載されている。

(4)甲5
甲5には、バーコードの印刷品質はグレードC以上が推奨されること(30ページ)、総合グレード判定の手法(36ページ)が、記載されている。

(5)甲6
甲6には、塩化ビニル塗料が無色透明であること(396ページ)が、記載されている。

(6)甲7
甲7には、通常硬化エポキシ樹脂、可撓性付与硬化エポキシ樹脂、いずれも透明から半透明であること(17ページ)が、記載されている。

(7)甲8
甲8には、グラビア印刷に用いられるグラビア版が記載されている。

(8)甲23
甲23には、厚生労働省医薬食品局安全対策課長名で、医薬品の取り違えによる事故防止及び医薬品のトレーサビリティーの確保の観点から、バーコード表示を行うよう求める旨(最初のページ)が、記載されている。

(9)甲24
甲24には、医薬品の表示シンボルのモジュール幅について、表示スペースがない場合は0.17mmまで縮小可能(55ページ)である旨、コードシンボルの印刷品質について、レベルC以上が推奨されること(125ページ)が、記載されている。

3.本件発明1との対比
本件発明1と、甲2発明とを対比する。
甲2発明の「硬質性である」は、本件発明1の「調質が硬質材である」に相当する。
甲2発明の「プライマー層」は、「アルミニウム箔1と塗工層2との間に設けられる」ことから、本件発明1の「アルミニウム箔の一方の面への塗布層」である「下地層」に相当する。
甲2発明の「白色の塗工層2」は、本件発明1の「白着色層」に相当し、同様に、「プレススルーパック用蓋材」は「プレススルーパックの蓋用包装用シート」に、相当する。
甲2発明の「グラビア印刷方式による商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等の印刷層3」と、本件発明1の「バーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)」とは、「印刷表示(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画される印刷表示を除く。)」である限りにおいて一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「調質が硬質材であるアルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の一方の面への塗布層である、下地層と、
前記下地層上に設けた白着色層と、
前記白着色層上に位置する印刷表示(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画される印刷表示を除く。)と、を備えるシートを、プレススルーパックの蓋に用いる、プレススルーパックの蓋用包装用シート。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:印刷表示について、本件発明1は「市販のバーコードリーダーにより読み取る」「バーコード部」であり、「バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がA」であるが、甲2発明は「商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等」である点。
相違点A:下地層について、本件発明1は「透明の」と特定されているが、甲2発明は明らかでない点。

なお、甲2発明との一致点、相違点について、当事者間に争いはない(請求人回答書6ページ(2)、被請求人回答書2ページ(1))。

4.相違点の判断
(1)相違点1
相違点1について検討する。
医療用医薬品においては、平成18年9月15日の厚生労働省医薬食品局安全対策課長名の「医療用医薬品へのバーコード表示の実施について」なる文書(甲23)により、バーコード表示を実施することとされ、かかる課題は、業界において、当然に対応すべき課題として認識されていた(甲3の40ページ、甲4の56?57ページ)。
また、「0.169mm/モジュール」であるバーコードサイズについては、周知であり(甲4の71ページ、甲24の55ページ)、特に、甲24には「表示スペースがない場合は、0.17mmまで縮小可能」と記載されている。
甲2発明は、「医薬品等の錠剤の包装体に使用される」(2.(1)の【0001】)ものであるから、甲2発明において、上記の当然に対応すべき課題を踏まえ、バーコード表示を試みることは、当然に検討すべき事項である。
その際、バーコード表示は、医薬品等の錠剤の利用者(人)が読み取るものではなく、「市販のバーコードリーダーにより読み取る」ことを想定しているものであるから、バーコード表示の大きさについては、機能を担保しうる限り、場所をとらないように、小さいことが望ましいことは明らかである。
甲2発明は、印刷による「商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等」を有しているところ、「マークや文字等」と、甲3又は甲4記載の「バーコード表示」とは、いずれも「印刷表示」であるから、印刷という同様の手段により形成可能である(甲3の41ページ第2図、甲4の72ページ図15?17、79ページ図2?3、甲5の28ページ、甲51の43ページ右欄1?10行)。
してみると、医薬品における当然に対応すべき課題を踏まえ、甲2発明の「商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等」に代え、又はこれに加えて、小さいバーコードとして周知の「公称0.169mm/モジュール」の「市販のバーコードリーダーにより読み取る」「バーコード表示」を行うようにすることは、自然なことである。
本件発明1の「総合評価がA」なる点は、「バーコードの読み取りやすさ」(本件特許明細書の段落0041、0043)を表し、「A」は「いずれの箇所も1回の走査で読める」程度を意味する(甲24の35ページ、甲53の115ページ、乙10の「バーコード印刷品質規格の概略」の「4.測定結果の判定」)ものである。
甲2発明において、「公称0.169mm/モジュール」の「バーコード表示」を行うようにした際、バーコードを読み取りやすいものとすること、すなわち製品性能の向上は、甲3の42ページ左欄に「総合グレードC以上を推奨する」と、甲4の78ページに「読み取り性において「C」以上が求められる」と、甲5の30ページに「グレードC以上を推奨」と記載されているごとく、当然である。
総合評価「A」は「いずれの箇所も1回の走査で読める」ことであるから、読み取り作業の利便性が向上することは明らかである。
よって、「総合評価がA」とすることは、当業者が当然に検討すべきことである。
しかも、本件発明1が、「総合評価がA」を実現するための、甲2発明にない特別の構成を有しているとも認められない。
したがって、甲2発明を、相違点1に係るものとすることに、困難性は認められない。

被請求人は、バーコードリーダによる読み取りを前提としていない甲2を基礎技術とする必然性はなく、甲3?甲4と組み合わせる必然性ないしは動機づけも一切存在しない旨、主張する。
しかしながら、印刷においては、目視を前提とする「マークや文字等」と、市販のバーコードリーダーにより読み取ることを前提とする「バーコード」とは、「バーコード」の色が、文字に一般に用いられる「黒」等である(甲5の41ページの上欄)ことから、別々の工程とすることなく、同様の工程で印刷することが、一般的である。すなわち、印刷の対象として共通であるから、被請求人の主張は根拠がない。
被請求人は、甲2発明の下地層(プライマー層)は、密着性・接着性を高めるためのものであり、視認性を高める本件発明1とは、前提技術、技術的意義が異なる、仮に甲2発明にバーコード表示を実施するとしても、甲2発明の下地層(プライマー層)を排除することが自然である旨、主張する(第5.3.(3))。
しかし、上記のとおり、本件発明1は、構成自体は当然に容易想到であり、視認性を高めるという効果も当然求められる効果にすぎない。
また、アルミニウム箔は、密着性に課題があることが周知(甲28の153?154ページ、甲29の97ページ)であり、甲2発明の下地層は、密着性・接着性を高めるものであるから、甲3又は甲4記載のバーコード表示の実施にあたり、下地層を当然に排除するとは認められない。
被請求人は、過剰品質となるから、甲2発明を「総合評価がA」とする必然性がない旨、主張する(第5.3.(3))。
しかし、製品性能、利便性の向上は、一般的かつ当然の課題であるし、「総合評価がA」とすることを過剰品質と解するかは主観の問題、あるいは経済的事情にすぎないから、必然性がないとは認められない。
よって、被請求人の主張は根拠がない。

(2)相違点A
相違点Aについて検討する。
甲2発明の下地層(プライマー層)は、「塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂組成物」によるものである。
塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂は、いずれも「透明」であることは技術常識(甲6、甲7)である。
そうすると、甲2発明の下地層である「塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる樹脂組成物」は、「透明」と解することが自然である。
さらに、甲2発明の下地層(プライマー層)は、甲2の段落0013に例示される樹脂から選択される。例示される樹脂のうち、透明である「塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂」以外の、例示される樹脂は「ニトロセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エステル系樹脂」である。
「ニトロセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂」は「透明」であり(甲55)、「メラミン系樹脂」も「透明」である(甲56)。
しかも、これら例示される樹脂は、甲2の段落0013のとおり「ビヒクル」であり、「ビヒクル」は「透明」である(甲57、甲58)。
よって、この点は実質的相違点ではない。

また、両相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。
よって、本件発明1は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

5.本件発明2?8
(1)本件発明2
本件発明2と甲2発明とを対比すると、上記相違点1、相違点Aに加え、以下の点で相違する。
相違点B:本件発明2は、「下地層が、前記バーコード部の読み取りの、少なくともシンボルコントラスト(SC)値を高めるためのものである」が、甲2発明は明らかでない点。

相違点1、相違点Aは、上記4.で検討したとおりである。
相違点Bについて検討する。
本件発明2の下地層は、「バーコード部の読み取りの、少なくともシンボルコントラスト(SC)値を高める」ための、甲2発明にない特別の構成を有するものではない。
製品性能の一つである読み取り性を高めるという課題は、当然求められる課題である。
そして、総合評価Aの一要素であるシンボルコントラスト(SC)値についても、甲3には、SCのBグレード以上の確保が望ましいこと(42ページ右欄)、甲5には、SCがグレードC以上が推奨されること(30ページ)が、記載されている。
下地層の構成自体は、4.(1)で検討したとおり、当然に容易想到であり、結果としてシンボルコントラスト(SC)値が高められることとなる。
また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。
よって、本件発明2は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

なお、以下、同様の相違点については検討したとおりである旨の記載、相違点を総合勘案しても格別の技術的意義が生じるものではない旨の記載を、省略する。

(2)本件発明3
本件発明3と甲2発明とを対比すると、さらに、以下の点で相違する。
相違点C:本件発明3は、「白着色層は、20重量%?30重量%の白色顔料を含む」ものであるが、甲2発明は明らかでない点。

相違点Cについて検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0021】
白色顔料の含有量は固形分基準で白着色層中20重量%?30重量%とするのが好ましい。白着色層3中の白色顔料の含有量が20重量%未満の場合には、発色に乏しくなり、バーコードの読み取り精度が落ちるおそれがある。白着色層3中の白色願料の含有量が30重量%を超えると、白色顔料の分散不良の原因になり、インキの粘度調整がしにくくなり、印刷不良の原因になるおそれがある。」
すなわち、相違点Cの技術的意義は、読み取り精度と印刷不良との観点から、適した範囲を選択したものと解される。

甲2には、以下の記載がある。
「【0023】
・・・
実施例1
20μm厚みのアルミニウム箔の艶面に、酸化チタン40%を含有した塩化ビニル系白インキをヘリオクリショグラフで製造した54線/cmのベタ版で印刷し、180℃で乾燥して塗工層(3g/m2 )を形成する。」

甲2には、「酸化チタン40%」であることの必然性は記載されていない。
甲2記載の「40%」が「重量%」であるか明記はないが、インキや塗料の含有量としては、「原子%」、「体積%」ではなく、「重量%」が一般的である(甲44?46)。
また、酸化チタンは白色顔料として周知なものである。
甲2発明においても、「読み取り精度と印刷不良」は、求められる課題であるから、最適な範囲とすべく、相違点Cの「白着色層は、20重量%?30重量%の白色顔料を含む」ものとすることに、困難性は認められない。

よって、本件発明3は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

(3)本件発明4
本件発明4と甲2発明とを対比すると、さらに、以下の点で相違する。
相違点D:本件発明4は、「白着色層が、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)で前記アルミニウム箔上に設けられている」ものであるが、甲2発明は明らかでない点。

相違点Dについて検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0009】
また、上記の白着色層が、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)でアルミニウム箔上に分布する構成をとることが好ましい。・・・。乾燥状態における白着色層の単位面積当たりの重量が1.0g/m^(2)未満では、バーコードリーダーは小面積化・高密度化したバーコードを精度よく確実に読み取ることができず、一方、4.0g/m^(2)を超えると、白着色インキの乾燥に長時間かかる上、液ダレや乾燥後の偏肉が生じ、コイル巻き取り時のアルミニウム箔(包装用シート)のたるみ、しわの発生等の不具合を生じやすくなる。」
すなわち、相違点Dの技術的意義は、読み取り精度と生産性との観点から、適した範囲を選択したものと解される。

甲2には、以下の記載がある。
「【0012】次にまた、上記の本発明において、アルミニウム箔面に印刷層の下塗りとして設ける一色の塗工層は、全面ベタの塗工層であってもよいし、商品名・内容物の取り出し方法などのマークや文字等の印刷絵柄部分のみのパート塗工層であってもよい。・・・。また、使用する塗工液としては、・・・樹脂組成物を用い、上記の印刷法ないしコーティング法で印刷ないし塗工することにより、該樹脂組成物による塗工層を得ることができる。上記において、樹脂組成物によるドライの場合の塗工量としては、0.1?5g/m^(2) 位の範囲内であることが好ましい。」

「【0023】
・・・
実施例1
20μm厚みのアルミニウム箔の艶面に、酸化チタン40%を含有した塩化ビニル系白インキをヘリオクリショグラフで製造した54線/cmのベタ版で印刷し、180℃で乾燥して塗工層(3g/m^(2) )を形成する。」

甲2における白着色層は、「0.1?5g/m^(2)」であり、実施例として「3g/m^(2)」が記載されており、相違点Dの範囲に含まれている。
甲2発明においても、「読み取り精度と生産性」は、求められる課題であるから、相違点Cは、実質的相違点ではない。

よって、本件発明4は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

(4)本件発明5
本件発明5と甲2発明とを対比すると、さらに、以下の点で相違する。
相違点E:本件発明5は、「バーコード部は、フレーム処理されたグラビア版を用いて、印刷されている」ものであるが、甲2発明は明らかでない点。

相違点Eについて検討する。
印刷手段として、「グラビア版」によるものは、甲2の段落0014、甲8の第2欄第8?14行に示されるごとく周知である。そして、「グラビア版」においては、印刷精度向上のため「フレーム処理」することが、普通に行われている。
甲2発明の印刷手段として、かかる周知技術を適用することは、適宜選択しうる事項にすぎない。
よって、本件発明5は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

(5)本件発明6
本件発明6と甲2発明とを対比すると、さらに、以下の点で相違する。
相違点F:本件発明6は、「バーコード部のインキ層の中心線から公称幅分を越えてはみ出たはみ出し幅ΔWが、その他の印刷部または裏面印刷部のインキ層の上記はみ出し幅ΔWと比較して、10%以上小さい」ものであるが、甲2発明は明らかでない点。

相違点Fについて検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0028】
包装用シート10が作製された後に、バーコード部5がフレーム処理されたグラビア版で印刷されたかどうかは、バーコード部5のインキ層5aと、その他の印刷部9または裏面印刷部16のインキ層とを比較することで、特定することができる。・・・。フレーム処理をしていないグラビア印刷を行った、その他の印刷部9および裏面印刷部のインキ層のΔWに比較して、バーコード部のフレーム処理したグラビア版で印刷したインキ層のそれは、10%以上小さいので、フレーム処理されたグラビア版を用いたかどうかを、特定することができる。」

すなわち、相違点Fの技術的意義は、フレーム処理されたグラビア版を用いたかどうかの特定のためと解される。
相違点Eで検討したとおり、甲2発明においても、フレーム処理されたグラビア版を用いて印刷することは、適宜選択しうる事項にすぎず、かかる印刷手段により得られたものは、結果として、相違点Fの構成を有するものとなる。

よって、本件発明6は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

(6)本件発明7
本件発明7と甲2発明とを対比すると、さらに、以下の点で相違する。
相違点G:本件発明7は、包装用シートを「ポケット部を有する収納シートの蓋に用いた」「プレススルーパック」であるが、甲2発明は明らかでない点。

相違点Gについて検討する。
甲2には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレススルーパック(以下「PTP」という)用蓋材に関し、更に詳しくは、医薬品等の錠剤の包装体に使用されるPTP用蓋材に関するものである。」

ここで、「医薬品等の錠剤」が、「ポケット部を有する収納シート」に収納されることは明らかである。
甲2発明の包装用シートも、「ポケット部を有する収納シートの蓋に用いた」「プレススルーパック」に利用されるものであるから、相違点Gは、単なる用途の特定にすぎない。

よって、本件発明7は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

(7)本件発明8
本件発明8は、「シートの製造方法」であるが、本件発明1を引用する本件発明5の「包装用シート」の層構造を、順次、「製造方法」として特定したにすぎず、「製造方法」として特別の技術的特徴はない。
よって、本件発明8は、甲2発明、甲3又は4記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

第8.甲12を主とする第29条第2項の無効理由についての当審の判断
1.本件発明
本件発明1?8は、上記第3.のとおりと認められる。

2.甲12発明
(1)甲12記載事項
甲12は、上部に「TECHNICAL INFORMATION」、下部に「NIPPON FOIL MFG.CO.,LTD.」なる表記、右上部に「No390」、下右部に「63.11.10」なるスタンプ表記がある紙に、シートがその上部で貼付されたものである。
シートは、それぞれに「明治乳業」、「ババロアチョコレート」、及び「49722123」なるバーコードの記載があり全体が白色である円形状のものが4つ、「明治乳業」、「ババロア」と記載があり全体が白色である上半円形状のものが2つある。

(2)甲10記載事項
甲10には、以下の記載がある。
「製品仕様書(加工品)」(左欄左上)
「制定年月日 改正 63年8月19日」(左欄右上)
「上項目 メイジ、ババロア、チョコレート、6C」(左欄右上)
「質別 O」(左欄右上)
「得意先 12021 明治乳業(株)」(左欄左上)
「明治乳業」、「ババロアチョコレート」、及び「49722123」なるバーコードの記載がある円形状のもの(甲12のものに同じ)(左欄右中)
「構成
OP
6C 印刷
AC
Al(斜線とともに)
PE20μ
HM(#65)」(左欄左中)
表形式で、「工程順」、「工程名」として、順に「1 PE」、「2 AC」、「3 印刷」、「4 OP」、「5 HM」、「6 断裁」(左欄下)
表形式で、「2 AC」に対応し「樹脂名 FAC-3」(左欄下)
「技術課」欄に「奥田」の印(左欄下)

(3)甲9記載事項
甲10は、「奥田」印があるとおり、奥田が確認したものである。
甲12に貼付されたシートは、甲10の「製品仕様書」により製造された、明治乳業向け「ババロアチョコレート」容器の蓋材の刷見本である。
甲10の表形式の部分は、「構成」として記載されるものを製造するため、「構成」の斜線で示される「Al」層に、順次積層していく「工程」を示している。
「OP」は「オーバープリント層」、「6C 印刷」は「印刷層」、「AC」は「アンカーコート層」、「Al」は「アルミニウム箔」を意味する。
「FAC-3」なる樹脂は透明であるから、「AC」は「アンダーラッカーRLによるアンカーコート層」と言える。

(4)証人奥田稔の証言
証人奥田稔は、平成26年12月17日、特許庁審判廷において宣誓の上、以下のとおり述べた。なお、段落番号は、反訳書面による。

請求人復代理人
「0010 甲12号証を示します。甲12号証にある図柄の蓋材を、あなたは日箔の社員として、具体的にその製造にかかわったわけですね。
はい、そうです。
0011 この蓋材の図柄や色調、バーコードの種類やサイズというのは、客先である明治乳業から指定されるのですか。
はい、そうです。
0012 当時、この蓋材の製造は、蓋材の構成やデザインが確定した後、例えば常に少しずつでも製造して在庫として保有しておいて、明治乳業から注文があれば、それを出荷するという態勢なのか、それとも注文があってから製造して納入するという態勢なのか、どちらでしょうか。
これは、明治さんから御注文いただいた都度に製造いたしておりました。」

「0018 今、お手元にある甲12号証を見てください。今ここでお尋ねするに際して、甲12号証のようなアルミシートが台紙に貼られたもの全体を「刷り見本」とこれから言います。台紙に貼られたアルミシートを、「刷り見本用のアルミシート」と言いますけれども、刷り見本用のアルミシートというのは、その製造仕様書に基づいて最初に少量印刷されたものだということですか。
はい、そうです。
0019 刷り見本の台紙の右下には、「63.11.10」という判子が押されていますけれども、これはどういう意味ですか。
これは、この刷り見本を作成して、いわゆるここに、台紙に貼りつけた日付でございまして、下の「63.11.10」というのは、昭和63年11月10日に作成したということでございます。
0020 作成したというか、アルミシートを台紙に貼りつけた日ということですか。
そうです。台紙に貼りつけた日にちが11月10日。
0021 この刷り見本について、客先の承認は受けていますか。
はい、受けております。
0022 それはどうやってわかるのですか。
我々は、お客様から御承認をいただいたもののみを残すようにいたしております。こうして残っておるということは、承認を受けたということでございます。
0023 そうすると、承認を受けたのがいつかということになりますけれども、それは昭和63年の11月10日ということになるのですか、それともそうとはならないのですか。
御承認いただくのは63年11月10日の日、もしくは持参した場合は、これに近い状況の日にちになっていると思います。
0024 この刷り見本というのは、どのような目的で作成されるのですか。
これは次回の製造の見本とするために作成いたしております。
0025 一つの図柄、例えば甲12号証であれば、一つの図柄ですけれども、その一つの図柄について、刷り見本は1枚しかつくらないのですか。それとも複数枚つくるのですか。
これは複数枚、作成いたします。
0026 複数枚存在するのは、なぜですか。
これは各工程に配付するためでございます。
0027 各工程への配付というのは、今お手元にある甲12号証のように、台紙に刷り見本用アルミシートが貼られた状態で配付するのですか。
はい、そうです。
0028 当時は、どの部署で刷り見本が作成されたのですか。
技術課で作成いたしておりました。
0029 そうすると、この日付は、技術課の担当者が押すということになるのですか。
はい、そうです。
0030 そうすると、この甲12号証の刷り見本及びそこに貼られた刷り見本用アルミシートというのは、昭和63年当時に作成されたものだというふうにお聞きしてよろしいですか。
はい、そうです。」

「0033 甲10号証にあわせて甲12号証を示します。そうすると、確認ですけれども、昭和63年11月10日という日付が押されている甲12号証の刷り見本の刷り見本用アルミシートというのは、甲10号証の製品仕様書に基づいて作成されたものだというようにお聞きしてよろしいですか。
はい。
0034 それでは、甲10号証の製品仕様書の改正日付が63年8月19日で、甲12号証の日付印が63年11月10日と、3ヵ月ほど開いていますけれども、そのように日付が離れている原因として、何か考えられますか。
あまり記憶はないんですけれども、こういう日付が離れているというときは、多分、最初に提出させていただいた刷り見本が、お客様の仕様と少し違ったために、再度つくりかえを行って、最終11月10日の日に作成になった、そのために約3ヵ月ぐらいのずれができたのではないかと思っております。
0035 刷り見本の保管期間についての社内規則はありますか。
今現在はございますけれども、当時はそのような規定はございませんでした。
0036 甲10号証を示します。ところで、この製品仕様書の左側半分には構成欄がありますけれども、この構成欄の記載は何を記載しているのですか。
左側の構成は、ここに書かれていますように、ババロアチョコレートという蓋材の全体の構成を示しております。
0037 この構成欄を見ますと、左側には、真ん中に斜線部分があって、その横に小さく「Al」とありますが、この部分がアルミ箔部分を示しているのですか。
はい、そうです。
0038 そうすると、この構成欄の右側のほうに記載されているもので、アルミ箔より上の部分に「ツヤ面」、また下側には「ケシ面」と印刷されていますけれども、ババロアの蓋材の図柄やバーコードなどが印刷されるのは、どちら側ですか。
この図のとおりで、ツヤ面でございます。
0039 この構成欄の斜線の部分、すなわちアルミ箔のすぐ上に「AC」とあり、その上に「6C印刷」、さらにその上に「OP」となっていますけれども、これはどういう意味ですか。
これはアルミ箔のツヤ面のほうに、アルミから順番にAC、アンカーコーティングを行って、6色の印刷をし、さらにその上にOP、オーバープリンティングをしたものだということであります。
0040 バーコードとか、あるいはババロアという文字や図柄というのは、これらの層の、どの層に属するのですか。
この図の中では「6C印刷」のところに該当いたします。
0041 その「6C印刷」と記載された部分の右側に、「ZGタイプ」という記載がされていますけれども、これはどういう意味ですか。
これはインキのグレードを示しております。
0042 AC、すなわちアンカーコート層は、透明の樹脂であると考えていいですか。
はい、ここに書いています「FAC-3」という樹脂を使っていまして、この樹脂自身は透明な樹脂でございます。
0043 このアンカーコートは、アルミ箔の全面に塗布されているのですか。
はい、そうです。
0044 そのことは、この製品仕様書の記載からわかりますか。
はい。右の下の「工程順」という欄の2番目に「AC」と書いてある工程がございます。その下のほうに「版」と書いていまして、「♯150」という記載がされております。これは、この図柄を印刷する指定版ではございませんで、150メッシュの全体を掘った版だということですので、こういう全体の版を使った場合については、アルミ箔全面にACが施されているということがわかります。
0045 このババロアチョコレートの蓋材において、アンカーコートはどのような目的で塗布されるのですか。
アンカーコーティングの目的は二つございまして、一つは、アルミニウム箔とペイントの密着性、接着を向上させるというもの。もう一つは、二つ目は、アルミニウム箔は、その上に印刷をかけた場合、特に薄い、白い色なんかの場合には、アルミ地の色が出てグレーっぽくなります。そのため本来の白い色とか、正しい色を印刷するために、アンカーコーティングを施します。」

被請求人代理人
「0058 あなたは、ババロアの蓋材の製造にかかわっていたということですが、課長さんというポストで、具体的にはどういうかかわり方をするのでしょう。
技術の課長としては、新しい商品が出てきたときの構成の検討であったり、樹脂やフィルムとかの選定、また色のインキの配合等の指示とかを、スタッフと一緒に行っておりました。
0059 具体的に仕様書の原案をつくったり、刷り見本となるようなもの、こういったものをつくる案というのは、あなたですか、それとも部下の方がされるのですか。
そのときによって違いますけれども、お客様が重要なときについては、私が出ていってやっておりました。
0060 明治乳業ですかね、ババロアの。この場合は。
私がやっていました。
0061 あなたが直接やられた。
はい。
0062 刷り見本を保管するという話がありましたけれども、これもあなたがやっておられた。保管するというのは、ファイルに入れて、棚に入れてということですか。
0063 そうです。
多分、人数が少ないから、私がやっていたんじゃないかと思います。
0064 あそこの、ナンバリングしますよね、台紙に。これは誰がやるのですか。
そのときですから、私がやったと思います。
0065 やられた。
はい。
0066 ナンバーというのは通しナンバーで、順番につけていく。
はい、そうです。
0067 刷り見本を作成して、後に残すものごとにつくっていくというお話でしたね。刷り見本をつくって、後でそれを、一度使うということでやったけれども、やはり変更したという場合には、前に保存したものは廃棄されるのでしょうか。
はい、廃棄します。
0068 そうすると、欠番が生じるわけですか。
いえ、その番号を使います。つくりかえた場合は、その番号を使いますので、欠番ではございません。
0069 そうすると、一旦つくった刷り見本と同じ番号で、違う日付のファイルをつくるということですか。
そうです。
0070 そうすると、先ほど、本件の場合、仕様書から刷り見本の作成まで3ヵ月ほどの間があると。おそらく刷り見本についてお客さんのほうが、これでは駄目と言われたので、変えましたということですが、このケースでいうと、本当はもう一つ前に刷り見本があったということでしょうか。
これだけ空いているときというのは、多分、その前に、作成したものがあったと思っております。
0071 そういう刷り見本の変更について、記録は残らないのですか。
特に記録としては、立会とかの記録はありますけれども、ここの色見本のところには記録は残っていません。
0072 ちょっと待ってください、ゆっくり。まず、ここには記録はないけれども、別に記録があるんですね。
製造の記録のところには残っていますけれども、この色見本には残りません。
0073 ですから、製造のところには残っているわけですね。
製造には、はい。
0074 わかりました。それと、刷り見本をつくる目的について、先ほど、後に製造するための、次回の製造の見本として残すんだというお話がありましたね。ということは、刷り見本は一度保存しても、ずっとそのまま誰もあけないんじゃなくて、次のときにまた開いて見るということですか。
これは、御承認いただいたら、複数部つくっておりますので、各工程に配っております。だから、おのおのの部分で、これが見られるような状況になっております。
0075 それもお聞きしたんですけれども、次回の見本でというお話があったので、次回つくるときにですよ、増刷するときですか、それをまた見るんじゃないのですか。
はい、見ます。
0076 その出し入れについては、どういう管理がされているのですか。
これは、現場でクリアファイルに入って保管しておりました。
0077 例えば誰がいつ借り出して、いつ返却したというような記録は残さないのですか。
残っておりません。
0078 残っていないというのは、そもそもつくっていないということなのですか。
そうじゃなくて、配付していますから。各部門、製造部門の印刷部門であったり、次の工程であったり、そういう部門に配付をしていますから、現場で必ず見られるような状況にはなっておりますということです。
0079 現場以外にはどこにあるのですか。
現場以外には、品証が持っております。品質保証。
0080 今回、証拠として出された刷り見本は、どこにあったものですか。
これは、ちょっと私が取りに行ったわけじゃなかったんですけれども、今回のこのものは品質保証のところにあったということです。」

審判官
「0127 それでは合議体のほうから幾つか質問させていただきます。先ほど甲12号証、刷り見本をごらんいただいて、あと甲10号証の製品仕様書というのをごらんいただいたのですが、8月と11月ですか、若干、時期にずれがあると。そのずれについては、多分、刷り見本が1回でOKにならなかったので、つくり直したのではないかという御証言をいただいたのですが、そうしますと、刷り見本として保存されていたものは、当然、承認を受けた、つくり直されたものということになりますよね。
はい。
0128 その場合に、OKの出たものはつくり直されたものですから、仕様書との関係でいうと、仕様をどこか変えたからOKになったということなのか、どういう事情でその変更が生じたのか、そこはいかがですか。
仕様書の構成とかには一切変更はございませんで、図柄の色だけの変更ですから、あくまでもインキの配合の変更になります。
0129 図柄の色の変更。
ココナツが、もっと明るくないといけないよとかいうような御指示をいただいたときに、つくりかえるということ。だから仕様書は、全然、変更はございません。
0130 技術主任、もしくは技術課長として、ずっと御経験されていた中で、そういったケースというのはかなり頻繁に起きていたものなのですか。それとも珍しいケースだったのですか。その辺は。
立会に来ていただいたときは、その日で、OK出るまで、印刷の修正を行いますので、決着がつくんですけれども、立会に来られなくて、持って、提示してくれということのときは、場合によっては、我々が良いと思って提出した色見本がお客様の意向とちょっと合わないということがたまに起こることがございました。」

(5)甲12と同構造の蓋材の構成
刷見本の性格、蓋材の構造、略記号の説明等に関し、甲9の記載と、証人奥田稔の証言とに、矛盾、不自然な点はない。
よって、甲12に貼付されたシートは、甲10の「製品仕様書」により、製造された刷見本であり、刷見本と同構造の蓋材が製造されたものと認められる。
また、甲12のバーコードのサイズは「0.33mm/モジュール」である(乙1、答弁書11ページ)。

甲12の刷見本の円形状部分と同構造の蓋材の構成(以下「甲12蓋材」という。)を、本件発明1に照らし整理すると、以下のとおりである。

「質別Oであるアルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の一方の面への塗布層である、アンダーラッカーRLによるアンカーコート(AC)層と、
前記AC層上に設けた白の印刷層と、
前記印刷層上に位置する6C印刷による商品名、バーコード部等と、
前記印刷層上に設けたオーバープリント(OP)層と、
を備える蓋材であって、
前記バーコード部のバーコードサイズが0.33mm/モジュールである蓋材を、ババロアチョコレート容器の蓋に用いる、ババロアチョコレート容器の蓋材。」

なお、甲12蓋材について、当事者間に争いはない(請求人回答書6ページ(3)、被請求人回答書2ページ(2))。

(6)甲12蓋材の公然実施
甲12蓋材は、甲10の「得意先 12021 明治乳業(株)」なる記載、甲9の15ページの記載、奥田稔の証言からみて、明治乳業に納品されたものと解される。
甲13には、表紙に「‘89・商品のご案内」、最後のページに「明治乳業株式会社」との記載がある。また、「デザート」なるページの中部に「22」という番号の付された写真、下部に表形式で「商品名」「22 ババロア(チョコレート)」、「種類」「一般食品」、「容量」「100ml」、「JANコード」「49722123 短縮」との記載がある。
甲13の「商品名」「22 ババロア(チョコレート)」についてみると、その図柄(甲14)、JANコード「49722123」(甲15)が、甲10のものと同一であるから、甲12蓋材は、明治乳業株式会社の「ババロア(チョコレート)」の蓋材として使用されたものである。
「ババロア(チョコレート)」の容量が100mlであることから、「ババロア(チョコレート)」は、1989年頃、一般消費者に販売されていたものである。
その結果、甲12蓋材は、公然と実施されたと認められる。

被請求人は、仕様決定後3か月後に刷見本が作製されたこと、刷見本が25年半も保管されていたことは、不自然と主張する(第5.3.(4))。
しかし、奥田稔の証言によれば、仕様決定後、インキの配合の変更があり、刷見本作製までに3か月を要した、刷見本は品質保証部署が保管しているとのことであり、甲31?43の保管状況に関する証拠に照らしても、特段不自然なところはない。
よって、被請求人の主張は採用できない。

3.本件発明1との対比
本件発明1と、甲12蓋材とを対比する。
甲12蓋材の「アンダーラッカーRLによるアンカーコート(AC)層」は、用いられる「FAC-3」なる樹脂が透明であるから、本件発明1の「透明の下地層」に相当する。
甲12蓋材の「白の印刷層」は、本件発明1の「白着色層」に相当し、同様に、「6C印刷による商品名、バーコード部等」はレーザ照射によるものではないから「バーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)」に、相当する。
甲12蓋材はシート状であるから、甲12蓋材の「ババロアチョコレート容器の蓋材」と、本件発明1の「プレススルーパックの蓋用包装用シート」とは、「容器の蓋用包装用シート」である限りにおいて一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。
「アルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の一方の面への塗布層である、透明の下地層(AC層)と、
前記下地層上に設けた白着色層(白の印刷層)と、
前記白着色層上に位置するバーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)と、を備えるシートであって、
前記シートを容器の蓋に用いる、容器の蓋用包装用シート。」

そして、以下の点で相違する。
相違点2:バーコード部について、本件発明1は、「市販のバーコードリーダーにより読み取る」「バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がA」であるが、甲12蓋材は「0.33mm/モジュール」である点。
相違点3:シートの用途について、本件発明1は、「プレススルーパックの蓋」であるが、甲12蓋材は「ババロアチョコレート容器の蓋」である点。
相違点4:アルミニウム箔について、本件発明1は、「調質が硬質材」であるが、甲12蓋材は「質別O」である点。

なお、甲12蓋材との一致点、相違点については、「市販のバーコードリーダーにより読み取る」点が一致点か相違点かという点を除き、当事者間に争いはない(請求人回答書6ページ(2)、被請求人回答書2ページ(1))。

4.相違点の判断
(1)相違点2
甲12蓋材の「バーコード部」は、製品の特定のためのものであり、「0.33mm/モジュール」である。このバーコード部をバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価は、測定箇所1?3のいずれも、Bである(甲22)。

かかる「バーコード部」の大きさについては、機能を担保しうる限り、場所をとらないように小さいほうが望ましいことは明らかである。
甲12蓋材の「バーコード部」より小さい「0.169mm/モジュール」であるバーコードサイズは、第7.の4.(1)で検討したとおり、周知である。
用途、目的に応じ、甲12蓋材の「バーコード部」を、周知の「0.169mm/モジュール」とすることを試みることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎず、かかるバーコード部が「市販のバーコードリーダーにより読み取る」ものであることは明らかである。
本件発明1の「総合評価がA」なる点は、「バーコードの読み取りやすさ」(本件特許明細書の段落0041、0043)を表し、「A」は「いずれの箇所も1回の走査で読める」程度を意味する(甲24の35ページ、甲53の115ページ、乙10の「バーコード印刷品質規格の概略」の「4.測定結果の判定」)ものである。
甲12蓋材において、「公称0.169mm/モジュール」の「バーコード表示」を行うようにした際、バーコードを読み取りやすいものとすること、すなわち製品性能の向上は、甲3の42ページ左欄に「総合グレードC以上を推奨する」と、甲4の78ページに「読み取り性において「C」以上が求められる」と、甲5の30ページに「グレードC以上を推奨」と記載されているごとく、当然である。
総合評価「A」は「いずれの箇所も1回の走査で読める」ことであるから、読み取り作業の利便性が向上することは明らかである。
よって、「総合評価がA」とすることは、当業者が当然に検討すべきことである。
しかも、本件発明1が、「総合評価がA」を実現するための、甲12蓋材にない特別の構成を有しているとも認められない。
したがって、甲12蓋材を、相違点2に係るものとすることに、困難性は認められない。

(2)相違点3及び4
甲12蓋材は、取引先の要望に合わせて製造したものであるから、取引先、製品、用途に合わせて、設計変更しうるものである。
甲12蓋材は、アルミニウム箔と他の層からなる複合材であるが、アルミニウム箔複合材は、包装材、蓋材等に広く使用され、薬剤のPTP包装にも使用されている(甲17の第1欄第7行?第2欄第10行、甲3の「1.はじめに」、「4.PTPアルミ箔の構成」、特開昭61-2555号公報の1ページ右下欄4?10行、4ページの「実施例1?11」、5ページの「実施例12?22」)。
すなわち、アルミニウム箔複合材は、蓋材のみならず、PTP(プレススルーパック)包装にも利用しうることは、周知である。
してみると、「ババロアチョコレート容器の蓋」である甲12蓋材のアルミニウム箔複合材の構造を「プレススルーパック包装」に利用することは、単なる用途の変更にすぎない。
甲12蓋材のアルミニウム箔は「質別O」であり、これはアルミニウム箔が「焼きなましたもの(最も軟らかい質別に適用する)」を意味する(乙9)。
プレススルーパック包装に用いられるアルミニウム箔としては、硬質性のものが適していることは周知(甲2の段落0011、甲47の段落0059、甲48の段落0054、甲49の段落0010、甲50の609ページ左欄下)であるから、アルミニウム箔をプレススルーパック包装に用いる際に硬質性とすることは、当然考慮すべき事項である。
したがって、甲12蓋材を、プレススルーパックの蓋に利用し、これに伴いアルミニウム箔を硬質性とし、相違点3及び4に係るものとすることに困難性は認められない。

被請求人は、甲12蓋材は、「軟質材」であり、アルミニウム箔複合材が破断しない強度が求められるが、本件発明1のプレススルーパックの蓋は「硬質材」であり、アルミニウム箔複合材が破断することが前提であるから、用途が異なる旨、主張する(第5.3.(4))。
しかし、上記のとおり、アルミニウム箔複合材は、蓋材、PTP包装、いずれにも利用しうることが周知であるから、適用の動機はあると言うべきである。

また、両相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。
よって、本件発明1は、甲12蓋材、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

5.本件発明2?8
本件発明2?8については、上記第7.の5.と同様の理由により、容易に発明することができたものである。
以下に結論のみ示す。
本件発明2は、甲12蓋材、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明3は、甲12蓋材、甲2記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明4は、甲12蓋材、甲2記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明5は、甲12蓋材、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明6は、甲12蓋材、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明7は、甲12蓋材、甲2記載事項、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。
本件発明8は、甲12蓋材、周知技術に基づいて容易に発明することができたものである。

第9.第36条第6項についての当審の判断
本件発明1?8における「透明ないし半透明の下地層」の技術的意義に関し、特許明細書には、以下の記載がある。
「【0007】
・・・。
上記アルミニウム箔と白着色層との間には、透明または半透明の下地層を、塗布することで設ける。塗布層による下地層を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。これは、白着色層と下地層との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層中の白色顔料(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。」

「【0010】
上記アルミニウム箔と白着色層との間には、透明または半透明の下地層を介在させることができる。下地層を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。これは、白着色層と下地層との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層中の白色顔料(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。」

「【0024】
・・・。図3に示すように、上記アルミニウム箔1と白着色層3との間には、透明または半透明の下地層2を介在させることができる。下地層2を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。その理由は、図4に示すように、白着色層3と下地層2との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層3中の白色顔料20(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層3とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。すなわち、アルミニウム箔1で反射して戻る光が、下地層2から白着色層3に入る際に屈折する光線と、上記の反射光とは方向が異なるので、上記白色顔料20による散乱の効果が大きく促進されると考えられる。言い換えれば、白着色層3における散乱促進効果が、下地層2によって高められたと言える。」

図4には、入射した光の一部が、白着色層3と下地層2との界面で反射し、残部がアルミニウム箔1と下地層2との界面で反射することが示されている。

これら記載によれば、「透明ないし半透明の下地層」は、白着色層と下地層との界面で反射する光と、アルミニウム箔で反射して戻る光との2種類の反射光により、光の散乱を促進し、結果として白着色層とバーコードとのコントラストが大きくするという技術的意義を有することが明らかである。
かかる機能を実現するため、下地層は光を透過する必要があるから、下地層が「透明ないし半透明」であることと整合している。
「透明ないし半透明の下地層」は明確であり、かつ発明の詳細な説明に記載されたものと言える。
よって、本件特許に係る出願は、第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たす。

第10.第36条第4項についての当審の判断
訂正前の本件発明1?8における「評価クラスがAであるシート」は、上記第2.及び第3のとおり、「総合評価がAであるシート」と訂正されたので、これについて検討する。
本件発明シートは、請求項1に特定されるとおり、アルミニウム箔、下地層、白着色層、バーコード部からなる層構造であり、特許明細書の段落0037?0038に、本発明例S、本発明例Tとして、総合評価がAとなるものの作り方が、材料、厚み等を含め、具体的に記載されている。
本件発明1?8は、「・・・シートであって、・・・バーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAである」もの、すなわちスキャンした「結果がA」というものである。
本件発明1?8と同じ層構造であっても、「結果がA」でないものは、本件発明1?8ではない。
そして、「結果がA」であるものとして、少なくとも本発明例S、本発明例Tが、具体的に記載されている。
請求人が主張する、同じ層構造であっても、「結果がA」でないものが存在する可能性をもって、本件発明1?8を容易に実施することができないとは言えない。
よって、本件特許に係る出願は、第36条第4項第1号に規定する要件を満たす。

第11.むすび
以上、本件発明1?8は、甲2発明又は甲12蓋材をもとに、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレススルーパック
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレススルーパックに関し、より具体的には、薬品、食品、化粧品等の包装に用いられるプレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレススルーパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム箔を基材に含むシート状包装体には、被包装物の品名等を表示する印刷表示が形成されるため、その包装体の接着性や機械的特性等とともに、その印刷された表示の視認性を向上させるべく各種の開発がなされてきた(特許文献1、2など)。包装用シート(包装体)に印刷される表示の内容は、被包装物の商品名などであるが、価格、メーカー等の情報も含めてバーコード化して表示されることが多い。上記包装用シートに表示されるバーコードを含めて従来のバーコードは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのレジ(精算場所)で、手動または自動で、バーコードリーダーによりバーコードを読み取り、代金を計算し、あるいは在庫調整のためのデータ集計をするのに用いられてきた。
【0003】
ところが最近、薬品の偽造防止、および薬品の取り違いや有効期間の超過等の医療事故を防止する観点から、PTP(プレススルーパック)等の薬品の包装体に、直接、より詳細な情報に対応するバーコードを印刷することが検討されている。厚生労働省医薬食品安全対策課から発表された実施案では、調剤包装単位(1次包装)ごとに上記情報内容のバーコード標記が必須とされている。このバーコードのデータの内容は、調剤包装単位ごとに変わらない不変情報(品名、価格、効能・効果等)が基本となるが、調剤包装単位ごとに変わる可変情報(製造番号、有効期限、生物由来情報等)も付加される予定である。従って、上記のバーコードには多くの情報が含まれるため、薬品等の包装用シートのバーコードには、バーコード部の小面積化の要求とともに、単位面積当たりの情報量を高める高密度化が求められている。
【特許文献1】実公平5-9339号公報
【特許文献2】特開2006-76594号公報、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような小面積化され、かつ高密度化されたバーコード部は、従来から用いられているアルミニウム箔を基材とする包装用シートに印刷された場合、市販のバーコードリーダーで間違いなく的確に読み取ることは容易ではない。このため、上記包装用シートに印刷された小面積・高密度バーコードを、市販のバーコードリーダーにより精度よく読み取ることができる包装用シートに関する技術開発が要望されている。
【0005】
本発明は、上記のような小面積化・高密度化されたバーコードを市販のバーコードリーダーにより精度よく読み取ることを可能にしたプレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレスルーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプレススルーパックの蓋用包装用シートは、調質が硬質材であるアルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層と、前記下地層上に設けた白着色層と、前記白着色層上に位置するバーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)と、を備えるシートであって、
前記バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシートを、前記バーコード部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする。
【0007】
アルミニウム箔単体に、直接、小面積化・高密度化したバーコードを印刷しても、市販のバーコードリーダーでは精度よく読み取ることはできない。その技術的理由は、アルミニウム箔独特のグレー色、光の反射特性などの影響のために、バーコードの情報(バーの信号)がアルミニウム表面で鏡面反射し交錯・散乱し、バーコードリーダーの受光器で正確に読み取れないためである。アルミニウム箔の少なくとも一方の面に白着色層を設け、その白着色層にバーコードを印刷することにより、アルミニウム箔独特のグレー色と、光反射特性を抑え、小面積化・高密度化したバーコードを市販のバーコードリーダーで確実に読み取ることが可能となる。ここで、バーコードは、1次元バーコードでもよいし、2次元バーコードまたはマトリックス方式もしくはコンポジット方式のQRコード(登録商標)であってもよい。
上記アルミニウム箔と白着色層との間には、透明または半透明の下地層を、塗布することで設ける。塗布層による下地層を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。これは、白着色層と下地層との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層中の白色顔料(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。
【0008】
上記の白着色層は、20重量%?30重量%の白色顔料を含むのが好ましい。この構成により、白着色層の白着色を確実に発色させることができ、白着色層と印刷された黒色のバーコードとのコントラストをはっきりつけることができ、その結果、バーコードリーダーは、バーコードを明確に識別して読み取ることができる。乾燥状態における白着色層の白色顔料の含有率が20重量%未満では、上記コントラストをはっきりつけるのに不十分になるおそれがあり、このため白色顔料の含有率は20重量%以上が好ましい。しかし、白色顔料の含有率が30重量%を超えると、白色顔料の分散不良の原因になり、インキの粘度調整がしにくくなり、印刷不良の原因になるおそれがある。
【0009】
また、上記の白着色層が、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)でアルミニウム箔上に分布する構成をとることが好ましい。これにより、バーコードリーダーでバーコードを読み取る際、アルミニウム箔のグレー色や光反射特性の影響を抑え、白着色層とバーコードとのコントラストをはっきりつけることができる。乾燥状態における白着色層の単位面積当たりの重量が1.0g/m^(2)未満では、バーコードリーダーは小面積化・高密度化したバーコードを精度よく確実に読み取ることができず、一方、4.0g/m^(2)を超えると、白着色インキの乾燥に長時間かかる上、液ダレや乾燥後の偏肉が生じ、コイル巻き取り時のアルミニウム箔(包装用シート)のたるみ、しわの発生等の不具合を生じやすくなる。従って、上記の白着色層が、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)でアルミニウム箔上に設けられた構成をとることが好ましい。
【0010】
上記アルミニウム箔と白着色層との間には、透明または半透明の下地層を介在させることができる。下地層を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。これは、白着色層と下地層との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層中の白色顔料(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。
【0011】
上記のバーコード部は、フレーム処理されたグラビア版を用いて、印刷されている構成とすることができる。これにより、バーコードの個々のバーのインキ層(乾燥状態)の周縁において、はみ出しや凹みなどの凹凸がなく、周縁が滑らかな直線または曲線で画された、意図したとおりの正確なバーコードを得ることができる。このため、市販のバーコードリーダーを用いて、信頼度の高い読み取りを行うことができる。ここで、フレーム処理とは次のものをいう。すなわち、上記バーコード部を印刷する際に用いるグラビアロールは表面にセルと呼ばれる窪みを短ピッチで面状に配列して版孔を形成し、そこにインキを溜めて印刷箇所にインキを転移して印刷を行うのであるが、フレーム処理とは、周縁(エッジ部)の1列または数列のセルの寸法を小さくするか、または上記セル寸法を小さくした上でセルのピッチを短くすること、あるいは周縁(エッジ部)の一列または数列のセルに代えて幅の狭い(5?20μm程度)直線状の溝を設けることをいう。印刷されたインキ層(乾燥状態)が、フレーム処理されたグラビア版で印刷されたものかどうかを特定する方法については、実施の形態で説明する。
【0012】
上記のバーコード部のインキ層の中心線から公称幅分を越えてはみ出たはみ出し幅ΔWを、その他の印刷部または裏面印刷部のインキ層の上記はみ出し幅ΔWと比較して、10%以上小さくすることができる。この構成により、市販のバーコードリーダーによっても、正確な読み取りを行うことが可能となる。上記のはみ出し幅ΔWは、にじみやはみ出しが生じにくいインキの種類を用いた場合において、印刷されたインキ層(乾燥状態)が、フレーム処理されたグラビア版で印刷されたものかどうかを特定する一つの基準例となる。
【0013】
本発明のプレススルーパックは、上記のいずれかのプレススルーパックの蓋用包装用シートを、ポケット部を有する収納シートの蓋に用いたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成により、プレススルーパックの状態で、蓋用シートとして用いられた包装用シートに表示されたバーコードを市販のバーコードリーダーを用いて精度よく読みとることが可能となる。
【0015】
本発明のプレススルーパックの蓋用包装用シートの製造方法は、調質が硬質材であるアルミニウム箔の少なくとも一方の面に透明ないし半透明の下地層を塗布によって設け、さらに該下地層上に白着色層を設け、次いで、該白着色層上に、フレーム処理が施されたグラビア版によるバーコード印刷部を設けることを特徴とする、
前記バーコード印刷部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋用包装用シートであって、前記バーコード印刷部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート
の製造方法である。
【0016】
上記の構成により、バーコードの読み取り時におけるアルミニウム箔の不都合な光学的影響を抑え、バーコードの下地を形成する白着色層/下地層上に、滑らかな直線または曲線で画された高精度の黒着色層等のインキ層により構成されたバーコード部を形成することができる。この結果、下地の白着色層/下地層とバーコード部とのコントラストを高めることができ、市販のバーコードリーダーにより高精度でバーコードを読み取ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、市販のバーコードリーダーを用いて、高い信頼性で小面積化・高密度化したバーコードを読み取ることができるプレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法およびプレスルーパックを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明において下地層を除いた場合における、参考例として示すプレススルーパックの蓋用包装用シート10を示す斜視図である。また、図2は、図1の包装用シート10の断面図である。包装用シート10は、後で説明するプレススルーパックの蓋の役割を果たすが、プレススルーパックを形成した状態で外から見えるように、図1に示すように、バーコード部5と、薬品名、成分含有量、錠剤の取出し方法等を表示するその他の印刷部9とが設けられている。これらバーコード部5およびその他の印刷部9は、下地をなす白着色層3上に印刷され、そしてオーバープリント層13で覆われている。オーバープリント層13の成分としては、ニトロセルロース系、アクリル系、エポキシ系の透明樹脂を挙げることができる。これらの中でも耐熱性、透明性の点でアクリル系の透明樹脂を用いるのが好ましい。オーバープリント層の厚みは特に制限されるものではないが、通常0.5?3.0μm程度が適当である。また、本発明の効果を損なわない範囲で、オーバープリント層13中には、酸化けい素やその他の体質顔料からなるマット剤を通常3?5重量%程度含んでいてもよい。
【0019】
図2において、包装用シート10は、バーコード部5の反対側の面である裏面において、アルミニウム箔1の上に直接、薬品名などを印刷した裏面印刷部16を備えることができる。さらに、その裏面印刷部16を覆うように、熱接着層17が設けられ、プレススルーパックを形成する相手側の収納シートのポケット部を塞ぐように収納シートに熱接着される。熱接着層17には、塩化ビニル(Vinyl Chloride)あるいはポリプロピレン(polypropylene)などの合成樹脂を用いるのがよい。また、裏面印刷部16を覆うように、印刷保護層(キーラッカー層ともいう。図示せず。)を設けた後、熱接着層17を設けてもよい。
【0020】
包装用シート10の基材となるアルミニウム箔1には、公知のアルミニウム箔を用いることができ、特に限定されるものではないが、厚み5μm?50μm、アルミニウム純度98.0?99.9重量%のアルミニウム箔を好ましく用いることができる。JISH4160では、1000系(1N30、1070等)、3000系、8000系(8021、8079等)等のアルミニウム箔を用いることができ、調質(質別)も硬質材(H材(JISH0001))、半硬質材、軟質材(O材(JISH0001))のいずれも使用可能である。特に、プレススルーパックの蓋に用いられる場合には硬質材が好ましい。なお、通常の上記アルミニウム箔は、一方の面が艶面、他方の面が艶ケシ面(単にケシ面ともいう。)と呼ばれ、両面の光沢が異なるが、本発明では艶面あるいはケシ面のどちらに白着色層3を設けてもよい。また、上記の片艶箔以外にも両ケシ箔を使用してもよい。
【0021】
上記アルミニウム箔1の少なくとも片面(好ましくは艶面)に設ける白着色層3は、公知の白インキを使用することが可能であるが、好ましくは酸化チタニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料を含むのがよい。白色顔料の含有量は固形分基準で白着色層中20重量%?30重量%とするのが好ましい。白着色層3中の白色顔料の含有量が20重量%未満の場合には、発色に乏しくなり、バーコードの読み取り精度が落ちるおそれがある。白着色層3中の白色願料の含有量が30重量%を超えると、白色顔料の分散不良の原因になり、インキの粘度調整がしにくくなり、印刷不良の原因になるおそれがある。白着色層3中の白色顔料以外の残部は、主に合成樹脂からなり、通常のインキに使用される樹脂を用いることができ、例えば、変性ポリオレフィン樹脂、石油系炭化水素樹脂、ニトロセルロース、ブチラールなどを使用できる。印刷の際は、適宜、有機溶剤で希釈して粘度調整すればよい。なお、上記の乾燥状態での白着色層における白色顔料の含有率は、印刷し乾燥したバーコード部のインキ層の部分をかき取ったサンプルについて、化学分析等により定量分析することができる。なお、白色顔料としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉等を用いることができる。
【0022】
上記の白色顔料と、合成樹脂とを主成分とする白着色層3は、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)が好ましく、さらに好ましくは1.5g/m^(2)?3.0g/m^(2)で、アルミニウム箔1上に設けられるように、アルミニウム箔1上に塗装する。塗装方法は、通常用いられるどのような方法を用いてもよく、たとえばグラビアロールコーター、カーテンフローコーター、オフセット印刷、UV塗装などを用いることができる。塗料(インキ)は、上記の白色顔料と、合成樹脂と、合成樹脂を溶解して白色顔料を分散させる溶剤などによって構成される。この塗料を塗装して白着色層3を形成するとき、白着色層3の密度の調整は、溶剤成分が、塗装後の乾燥時に蒸発するとして塗装厚みを設定することにより、行う。塗装厚みは、塗装作業の際の塗料供給速度、供給量、インキの粘度、単位面積当たりの塗装速度などにより決められる。上記の乾燥状態の白着色層の単位面積当たりの重量は、コート剤(白着色層)の溶剤ふきとりによる差分重量測定法により、測定することができる。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、白着色層は、複数の白着色層(所謂、2度塗り)で構成されていてもよい。
【0023】
上記の白着色層の単位面積当たりの付着重量により、バーコードリーダーでバーコードを読み取る際、アルミニウム箔のグレー色や光反射特性の影響を抑え、白着色層とバーコードとのコントラストをはっきりつけることができる。白着色層3の単位面積当たりの(乾燥後)付着重量が1.0g/m^(2)未満では、アルミニウム箔のグレー色や光反射特性の影響を抑え、白着色層とバーコードとのコントラストを明瞭につけるには不十分になるおそれがあり、バーコードリーダーに小面積化・高密度化したバーコードを精度よく確実に読み取ることができない。一方、4.0g/m^(2)を超えると、白着色インキの乾燥に長時間かかる上、液ダレや乾燥後の偏肉が生じ、コイル巻き取り時のアルミニウム箔(包装用シート)のたるみ、しわの発生等の不具合を生じやすくなる。
【0024】
図3は、本発明のプレススルーパックの蓋用包装用シートを示す断面図である。図3に示すように、上記アルミニウム箔1と白着色層3との間には、透明または半透明の下地層2を介在させることができる。下地層2を介在させることにより、シンボルコントラスト(SC)値が増加し、バーコードの読み取り精度が向上する。その理由は、図4に示すように、白着色層3と下地層2との界面で、入射光が一部反射し、その反射光が白着色層3中の白色顔料20(酸化チタンなど)に衝突し、光の散乱が促進されるため、結果として白着色層3とバーコードとのコントラストが大きくなるためと考えられる。すなわち、アルミニウム箔1で反射して戻る光が、下地層2から白着色層3に入る際に屈折する光線と、上記の反射光とは方向が異なるので、上記白色顔料20による散乱の効果が大きく促進されると考えられる。言い換えれば、白着色層3における散乱促進効果が、下地層2によって高められたと言える。下地層2の厚みは、特に制限されるものではないが、0.3?5.0μm程度が好ましい。0.3μm未満では均一な層を形成するのが困難になり下地層の効果が得られないおそれがある。一方5.0μmを超えてもさらなる効果の向上は認められず、印刷不良、偏肉などの不都合を生じるおそれがある。下地層2を形成する手段は特に制限されるものではないが、上記同様グラビアロールコーター、カーテンフローコーター、オフセット印刷、UV塗装などでアルミニウム箔1に塗布すればよい。下地層2の成分は透明または半透明であれば特に制限はないが、透明または半透明の樹脂、例えばニトロセルロース系、アクリル系、エポキシ系、塩化ビニル系、ポリプロピレン系の透明樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂には、少量の酸化けい素またはその他の体質顔料を添加しても同様の効果を得ることができる。
【0025】
バーコード部5のバーコード印刷は、通常、グラビア版を用いてグラビア印刷される。すなわち、ロール面に設けたセル(凹部)にインキを溜めて、そのインキをバーコード印刷部5に転移させる。転移は、直接、グラビア版から白着色層に転移させてもよいし(直接式)、間にゴムロールを介在させてグラビア版から一度ゴムロールに移し、それを白着色層3上に転移させてもよい(オフセット式)。図2において、印刷層5aが、グラビア版からインキを転移されて形成されたインキ層(乾燥状態)である。このインキ層は、黒、濃紺、濃茶色、濃緑色等の低明度色の層(以下、単に黒着色層という。)が好ましく、赤、黄色では、白色着色とバーコードとのコントラストを明瞭につけるには不十分になるおそれがある。該インキ層(5a)は、通常、厚み0.5μm?2.0μmで形成され、顔料の含有量は通常固形分基準でインキ層中10?40重量%程度(好ましくは20?40重量%)である。その他の印刷部9、および裏面印刷部16も、必要に応じて任意の色でグラビア印刷される。
【0026】
バーコード部5を印刷する際、印刷の流れ方向と、バーコードの線(バー)とを平行に印刷する場合、印刷で発生する印刷ひげ(印刷部から延び出た数ミリ単位のひげ状の印刷不良)や、ドクターすじ(非印刷部に発生したすじ状の印刷不良)、にじみ等によって、バーコードの線間隔が、埋められることは殆どない。しかし、バーコードの線(バー)を印刷方向と垂直方向に印刷した場合には、上記の印刷不良によってバーコードの線間隔が埋められ、バーコードの正確な読み取りができなくなる等の問題が発生する。この解決のために、グラビア版にフレーム処理を施す。フレーム処理を施すことにより、バーコード部に対応するグラビア版の部分をドクター刃でかきとるとき、エッジ部でドクター刃の切れが良くなり、印刷時のひげ、ドクターすじ、にじみ等の印刷不良をなくし、バーコードの読み取り精度を高めることができる。
【0027】
次に、そのフレーム処理について詳しく説明する。図5は、バーコード部5における印刷部(乾燥状態のインキ層)を示す図であり、また図6および図7は、グラビアロール61(全体は図示せず)の表面における、図5のA部に対応する箇所65を示す図である。グラビア版は、上記のように、ロール表面にセル(凹部)を配列して、そのセルにインキを溜めて、印刷箇所にインキを転移してインキ層5aを形成する。この場合、図6に示すように、セル62の配列を縁取るようにエッジ部に幅の狭い(5?20μm程度)直線状の溝71を設ける。あるいは、図7に示すように、インキ層5aのエッジ部に対応するセル63のサイズを、インキ層5aの内側に対応するセル62のサイズより小さくする。フレーム処理には多くの種類があり、上記の2種の処理はそのうちの一部の例である。フレーム処理をしない場合、インキ層のエッジ部では、印刷時、大きなサイズのセルに溜まった流動状態のインキがエッジ部の意図した範囲からはみ出し、平面的に見てエッジ部に凹凸が発生する。エッジ部のセルのサイズを細かくするか、エッジ部に幅の狭い直線状の溝を設けることにより、そこに溜められるインキ量を加減し、またセルピッチも短いため、意図したとおりのまたは意図したものに近い、滑らかな輪郭を有するエッジ部を形成することができる。
【0028】
包装用シート10が作製された後に、バーコード部5がフレーム処理されたグラビア版で印刷されたかどうかは、バーコード部5のインキ層5aと、その他の印刷部9または裏面印刷部16のインキ層とを比較することで、特定することができる。図8を参照して、上記の印刷部のインキ層の平面での公称幅をWとして、インキ層の中心線から0.5Wを越えてはみ出る部分のはみ出し幅ΔWの平均値を求める。その他の印刷部9または裏面印刷部では、バーコードの線に対応するインキ層はないかもしれないが、それに近い線状部分はあるので、直線状のインキ層がない場合には、そのような線状部分について測定する。このはみ出し幅ΔWは、走査型電子顕微鏡の視野内で、中心線の両側で、各10箇所以上、測定する。そして、ΔWの平均値を求める。フレーム処理をしていないグラビア印刷を行った、その他の印刷部9および裏面印刷部のインキ層のΔWに比較して、バーコード部のフレーム処理したグラビア版で印刷したインキ層のそれは、10%以上小さいので、フレーム処理されたグラビア版を用いたかどうかを、特定することができる。
【0029】
図9は、図1の包装用シート10を用いてプレススルーパック50を形成した状態を示す図である。包装用シート10が蓋用シートとして用いられ、接着される相手の収納シート30は、ポケット部30aと、平坦部30bとからなり、ポケット部30aに錠剤を収納する。図9に示すプレススルーパックの状態で、矢印の方向から見て、図1に示す包装用シートのバーコード部5およびその他の印刷部9を見ることができる。なお、包装用シートと収納シートは適当な接着剤を用いて接着することができ、例えばポリプロピレン系、塩化ビニル系の熱接着剤を用いることができる。
【0030】
上記の包装用シート10によれば、黒着色層のバーを含むバーコード部5の下地に白着色層3を配置するので、バーコードと下地とのコントラストを高めることができる。この結果、小型化・高密度化されたバーコードであっても、市販のバーコードリーダーにより精度よく読み取ることができるようになる。
【実施例1】
【0031】
次に、本発明の参考例とすべき実施例1により、参考例の試験体の作用効果について検証した結果を説明する。本参考例では、アルミニウム箔1(厚み:20μm、材質:8079硬質材)の上に白着色層3を形成し、その白着色層3(固形分基準で酸化チタン顔料22?23重量%含有:乾燥後厚み1.5μm)の上に、バーコードサイズの異なる3種のバーコード部5を、フレーム処理を施したグラビア版を用いてグラビア印刷により設けた。また、バーコードの線(バー)に沿う方向(流れ方向)に印刷した場合と、線に直交する方向(垂直方向)に印刷した場合とを分けた。これらの試験体について、この後で説明するバーコード検証機により読み取り容易性の評価を行った。試験体の包装用シートの具体的な構造は以下のとおりである。
(参考例):オーバープリント層13/バーコード部5/白着色層3/アルミニウム箔1/裏面印刷部16/熱接着層17
また、比較例では、白着色層を設けずにアルミニウム箔1の上に、直接、線の太さの異なるバーコード部5を設けた。比較例の場合も、フレーム処理を施したグラビア版を用いてバーコード部を印刷した。
(比較例):オーバープリント層13/バーコード部5/アルミニウム箔1/裏面印刷部16/熱接着層17
【0032】
バーコード用の黒インキには、市販のカーボンブラック顔料を含んだインキ(カーボンブラック顔料の固形分中含有量(乾燥状態での顔料量):33重量%)を用いて、インキ層(乾燥状態)の厚みは約1μm?2μmに形成した。乾燥後のインキ層の単位面積当たりの重量は、約1g/m^(2)?2g/m^(2)である。オーバープリント層(以下、OP層という。)13は、マット剤を含有しないクリアOP層と、マット剤を含有するマットOP層とを用いた。クリアOP層の主成分は、ニトロセルロース(あるいはアクリルやエポキシなど)の樹脂である。厚みは約1μm?2μmとし、単位面積当たりの塗布重量(乾燥後の重量)は、約1g/m^(2)?2g/m^(2)とした。また、マットOP層は、シリカなどの体質顔料であるマット剤を、OP層中に3重量%?5重量%含有する点を除いて、他はクリアOP層と同じである。熱接着層は、塩化ビニル(又はポリプロピレンなど)の熱接着性樹脂で形成され、単位面積当たりの乾燥後の重量は、約3g/m^(2)?4g/m^(2)とした。
【0033】
バーコードの読み取りやすさを評価するためのバーコード検証機(バーコードの読み取り性評価装置)には、ムナゾウ株式会社製TruCheck 401-RLを用いた。本発明例A?F、比較例G?Rについて、上記評価装置によって評価した読み取りやすさの評価結果を表1に示す。また、表1における評価クラス(段階)の評価点範囲(The American National Standards Institute=ANSI規格に準拠)を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1および表2によれば、比較例G?Rでは、わずかに比較例Lの1回目の測定の評価点が0.6点であるほかは、バーの方向が印刷流れ方向か、垂直方向かを問わず、すべて0.0点であり、評価クラス(段階)は、Aを最高クラス、またFを最低クラスとして、すべて最低のFクラスであった。これに対して、参考例では、バーコードサイズが小さい場合(バーコードサイズが0.169mm/モジュールの場合)、バー方向が印刷流れ方向および垂直方向ともに、評価クラスはBクラスであった。それよりバーコードサイズが大きい場合、AクラスまたはBクラスとなっており、参考例におけるバーコードの読み取りやすさの向上は歴然としている。
【実施例2】
【0037】
次に実施例2により、本発明における下地層2(図3参照)の作用効果について検証した結果を説明する。本発明例Sでは、アルミニウム箔1(厚み:20μm、材質:8079硬質材)の上に下地層2を形成し、さらに下地層の上に白着色層3を形成し、その白着色層3(固形分基準で酸化チタン顔料22?23重量%含有:厚み1.5μm)の上に、バーコードサイズ(公称0.169/モジュール(線の太さ:最小0.1?最大0.81mm、スペース:最小0.2?最大0.53mm)のバーコード部5を、フレーム処理を施したグラビア版を用いてグラビア印刷により設けた。この実施例2では、バーコードの線(バー)に沿う方向(流れ方向)に印刷した場合で評価した。これらの試験体について、この後で説明するバーコード検証機により読み取り容易性の評価を行った。試験体の包装用シートの具体的な構造は以下のとおりである。
(本発明例S):オーバープリント層13/バーコード部5/白着色層3/下地層2/アルミニウム箔1/熱接着層17
白着色層3の形成に用いる白インキは、酸化チタン顔料を含有したインキ(株式会社T&K TOKA製、マトリックス樹脂:ポリプロピレン系樹脂)を用いた。下地層2には、株式会社T&K TOKA製のポリプロピレン系透明樹脂を用いた。バーコード用の黒インキには、市販のカーボンブラック顔料を含んだインキ(大日本インキ化学工業株式会社製:カーボンブラック顔料の固形分中含有量(乾燥状態での顔料量):33重量%、マトリックス樹脂:ニトロセルロース系樹脂)を用いて、インキ層(乾燥状態)の厚みは約1μm?2μmに形成した。乾燥後のインキ層の単位面積当たりの重量は、約1g/m^(2)?2g/m^(2)である。オーバープリント層(以下OP層という)13は、マット剤を含有しないクリアOP層(株式会社T&K TOKA製:アクリル系樹脂)を用いた。厚みは約1μm?2μmとし、単位面積当たりの塗布重量(乾燥後の重量)は、約1g/m^(2)?2g/m^(2)とした。熱接着層は、塩化ビニルの熱接着性樹脂で形成され、単位面積当たりの乾燥後の重量は、約3g/m^(2)?4g/m^(2)とした。なお、各層の成形は全てグラビアロールコート方式によって行った。
【0038】
本発明例Tでは、本発明例Sの下地層2に大日本インキ化学工業株式会社製ニトロセルロース系半透明樹脂(酸化けい素約4重量%含有)を用いた以外は、本発明例Sと同様に試験体を作製した。
【0039】
参考例Uでは、本発明例Sの下地層を設けずにアルミニウム箔上に直接白着色層3を形成した以外は、本発明例Sと同様に試験体を作製した。
【0040】
また、比較例(比較例V)として下地層も白着色層も設けずにアルミニウム箔1の上に、直接、バーコード部5を設けた。下地層および白着色層を形成しない点を除いて本発明例Sと同様に試験体を作製した。
(比較例V):オーバープリント層13/バーコード部5/アルミニウム箔1/熱接着層17
【0041】
バーコードの読み取りやすさを評価するためのバーコード検証機(バーコードの読み取り性評価装置)には、ムナゾウ株式会社製TruCheck 401-RLを用いた。スキャン回数は10回とし、ANSI規格等で定められているEDGE(エッジ判定)、RL/Rd(最大反射率/最小反射率)、SC(シンボルコントラスト、単位%)、MinEC(最小エッジコントラスト、単位%)、MOD(モジュレーション、単位%)、Def(欠陥、単位%)、DCD(デコード)、DEC(デコードの容易性、単位%)、MinQZ(最小クワイエットゾーン)の各評価項目を測定し、同規格に準拠した評価クラス(A、B、C、D、Fの5段階:Aが最高品質)で評価した。Overall ANSI Gradeは総合評価であり、表1および表2は、このOverall ANSI Gradeを表示したものである。実施例2における測定結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3によれば、比較例Vは総合評価Fで最低クラスの品質であり、バーコードの読み取り精度が悪いことを示している。これに対して、本発明例では総合評価Aとなっており、本発明例SおよびTは、バーコードサイズが小さい場合(バーコードサイズが0.169mm/モジュールの場合)においても最高品質のAを示していることが判る。本発明に基づくバーコードの読み取りやすさの向上は歴然としている。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の包装用シートは、小型化・高密度化されたバーコードを、市販のバーコードリーダーを用いて精度よく読み取ることができるので、この分野の品質管理等に貢献することが期待され、特に薬の取り違い防止、有効期限の管理、偽造防止等に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】参考例としての実施の形態における包装用シートの斜視図である。
【図2】図1の包装用シートの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態において、アルミニウム箔と白着色層との間に下地層を設けた場合の包装用シートの断面図である。
【図4】下地層を設けた場合にバーコード読み取り性が向上する理由を説明するための図である。
【図5】図1の包装用シートのバーコード部のインキ層を示す図である。
【図6】図5のインキ層のA部に対応するグラビア版を示す図である。
【図7】グラビア版の別の例を示す図である。
【図8】フレーム処理されたグラビア版を用いて印刷されたインキ層かどうか特定する方法を説明するための図である。
【図9】図1の包装用シートを用いたプレススルーパックを説明する断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 アルミニウム箔、2 下地層、3 白着色層、5 バーコード部、5a バーコード部のインキ層、9 その他の印刷部、10 包装用シート、13 オーバープリント層、16 裏面印刷部、17 熱接着層、20 白色顔料、30 収納シート、30a ポケット部、30b 平坦部、50 プレススルーパック、61 ロール、62 セル、63 インキ層エッジ部に対応するセル、65 A部に対応するグラビア版部分、71 セル配列を縁取る細溝、T 錠剤。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】調質が硬質材であるアルミニウム箔と、
前記アルミニウム箔の少なくとも一方の面への塗布層である、透明ないし半透明の下地層と、
前記下地層上に設けた白着色層と、
前記白着色層上に位置するバーコード部(ただし、レーザ発色層にレーザを照射することにより描画されるバーコード部を除く。)と、を備えるシートであって、前記バーコード部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシートを、前記バーコード部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋に用いることを特徴とする、
プレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項2】前記下地層が、前記バーコード部の読み取りの、少なくともシンボルコントラスト(SC)値を高めるためのものである、ことを特徴とする、請求項1に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項3】前記白着色層は、20重量%?30重量%の白色顔料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項4】前記白着色層が、単位面積当たり1.0g/m^(2)?4.0g/m^(2)で前記アルミニウム箔上に設けられていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項5】前記バーコード部は、フレーム処理されたグラビア版を用いて、印刷されていることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項6】前記バーコード部のインキ層の中心線から公称幅分を越えてはみ出たはみ出し幅ΔWが、その他の印刷部または裏面印刷部のインキ層の上記はみ出し幅ΔWと比較して、10%以上小さいことを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シート。
【請求項7】前記請求項1?6のいずれかに記載のプレススルーパックの蓋用包装用シートを、ポケット部を有する収納シートの蓋に用いたことを特徴とする、プレススルーパック。
【請求項8】調質が硬質材であるアルミニウム箔の少なくとも一方の面に透明ないし半透明の下地層を塗布によって設け、さらに該下地層上に白着色層を設け、次いで、該白着色層上に、フレーム処理が施されたグラビア版によるバーコード印刷部を設けることを特徴とする、
前記バーコード印刷部を市販のバーコードリーダーにより読み取るプレススルーパックの蓋用包装用シートであって、前記バーコード印刷部のバーコードサイズが公称0.169mm/モジュールである場合においてバーコード検証機で10回スキャンしたときのANSI規格で定められている総合評価がAであるシート
の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-08-10 
結審通知日 2015-08-13 
審決日 2015-08-26 
出願番号 特願2007-324047(P2007-324047)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (B65D)
P 1 113・ 537- ZAA (B65D)
P 1 113・ 536- ZAA (B65D)
P 1 113・ 112- ZAA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 千葉 成就
渡邊 真
登録日 2012-12-14 
登録番号 特許第5154906号(P5154906)
発明の名称 プレススルーパックの蓋用包装用シート、その製造方法及びプレススルーパック  
代理人 平野 和宏  
復代理人 湯浅 正彦  
代理人 特許業務法人あいち国際特許事務所  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
復代理人 湯浅 知子  
代理人 平野 和宏  
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