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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1320664
審判番号 不服2015-20627  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-18 
確定日 2016-10-20 
事件の表示 特願2013- 30855号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-158601号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月20日の出願であって、平成26年6月26日付け拒絶理由通知に対して、同年8月28日付けで手続補正がなされ、平成27年2月18日付け拒絶理由通知に対して、同年4月20日付けで手続補正がされたところ、同年8月10日付けで補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年4月20日付けの手続補正は、既に補正却下の決定がなされている。そして、本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を補正するものであって、このうち、特許請求の範囲の請求項1については、補正前に

(平成26年8月28日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立に伴い判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報に基づいて、特別遊技に当選したか否かの判定を行う特別遊技判定手段と、
前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて変動表示される図柄に対応した演出を表示可能な画像表示手段と、
前記特別遊技判定手段による判定の権利を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶された保留数を保留画像により表示可能な保留表示手段と、
前記判定情報に基づいて、事前に前記特別遊技の当選の有無を判定する事前判定手段と、
前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記保留表示手段に表示させる保留画像を通常保留表示態様とするか、或いは特定保留表示態様とするかを選択決定する保留表示態様選択決定手段と、
前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを予め説明する説明演出と、該説明演出を行った後に前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出と、を実行する遊技演出実行手段と、
を備えたこと特徴とする遊技機。」

とあったものを、

(本件補正である平成27年11月18日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立に伴い判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報に基づいて、特別遊技に当選したか否かの判定を行う特別遊技判定手段と、
前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて変動表示される図柄に対応した演出を表示可能な画像表示手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶された保留数を保留画像により表示可能な保留表示手段と、
前記判定情報に基づいて、事前に前記特別遊技の当選の有無を判定する事前判定手段と、
前記図柄が変動していることを示す変動保留画像を表示可能な変動保留表示手段と、
前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記保留表示手段に表示させる保留画像を通常保留表示態様とするか、或いは特定保留表示態様とするかを選択決定する保留表示態様選択決定手段と、
前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを予め説明する説明演出と、該説明演出を行った後に前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出と、を実行する遊技演出実行手段と、を備え、
前記遊技演出実行手段は、
前記遊技演出として、前記特定保留表示態様により保留画像を表示すると、前記保留画像に係る前記図柄の変動が開始されることに伴って前記特定保留表示態様を維持したまま前記変動保留画像として表示し、前記画像表示手段に所定演出が表示されたときに前記変動保留画像を消去すること特徴とする遊技機。」

と補正するものである(下線部は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記特別遊技判定手段による判定の権利」を、「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報」と補正することを含むものである。ここで、特別遊技判定手段は、判定情報に基づいて判定を行うものであり、判定情報は判定情報取得手段によって取得されるものであって、「判定情報取得手段により取得された前記判定情報」がなければ判定を行うことができないから、「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報」は、「前記特別遊技判定手段による判定の権利」の具体的な態様に該当するものということができる。そうすると、当該補正部分は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項をより下位概念に限定するものである。
また、本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は、(a)「前記図柄が変動していることを示す変動保留画像を表示可能な変動保留表示手段」との事項を追加するとともに、(b)「前記遊技演出実行手段は、前記遊技演出として、前記特定保留表示態様により保留画像を表示すると、前記保留画像に係る前記図柄の変動が開始されることに伴って前記特定保留表示態様を維持したまま前記変動保留画像として表示し、前記画像表示手段に所定演出が表示されたときに前記変動保留画像を消去する」との事項を追加することを含むものである。このうち、追加事項(b)は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遊技演出実行手段」に限定を付加するものであり、追加事項(a)は、追加事項(b)おいて言及している「変動保留画像」について、「前記図柄が変動していることを示す」ものであり、「変動保留表示手段」により「表示可能な」ものであるとの説明を加えるものであるといえる。そうすると、追加事項(a)及び(b)は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正のうち特許請求に範囲についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献及びその記載事項
(1-1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-22129号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-ア)
「【0001】
本発明は、回胴遊技機(スロットマシン)や弾球遊技機(パチンコ機)に代表される遊技台に関する。」

(1-イ)
「【0067】
次に、図7を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割込処理の流れを示すフローチャートである。主制御部300は、所定の周期(本実施形態では約2msに1回)でタイマ割込信号を発生するカウンタタイマ312を備えており、このタイマ割込信号を契機として主制御部タイマ割込処理を所定の周期で開始する。
・・・・・
【0076】
特図1始動口230へ入賞があった場合且つRAM308に設けた対応する特図1保留数記憶領域が満タン(本例では、保留数4で満タンとなる)でない場合、乱数値生成回路(ハード乱数回路)318の特図1始動口230に対応する内蔵のカウンタ値記憶用レジスタに記憶された値に所定の加工を施して生成した当り判定用乱数値を取得するとともに、RAM308に設けた当り時用特図決定用乱数カウンタから当り時用特図決定用乱数値を取得して特図1乱数値記憶領域に取得順に格納する。特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組(以下、「特図1乱数値の組」または「特図1始動情報」と称する場合がある)は、特図1保留数記憶領域に記憶された特図1保留数と同数分だけ格納される。特図1乱数値記憶領域内では、特図1保留数が1つ減るごとに保留順位が最上位(最先であり最も過去に記憶されている)の特図1乱数値の組のデータが消去されるとともに、残余の特図1乱数値の組のデータの保留順位が1ずつ繰り上がるように処理される。また、特図1保留数が1つ増えるごとに、保留順位が最下位(最後)の特図1乱数値の組のデータの次の保留順位に新たな特図1乱数値の組のデータが書き込まれる。」

(1-ウ)
「【0215】
これらの事前判定結果の情報を含むコマンドを受信した第1副制御部400は、装飾図柄表示装置208の演出表示領域208d内の左下方に設けられた特図1保留表示領域208d1に、円形白丸の表示態様による保留表示画像を表示するための保留コマンドを装飾図柄表示装置208に出力する。これにより、図17(a)に示すように、特図1保留表示領域208d1には、1個目の特図1始動情報に対応する保留表示画像a1と、2個目の特図1始動情報に対応する保留表示画像a2とが表示される。
【0216】
特図1保留表示領域208d1は、特図1乱数値記憶領域に記憶されている特図1乱数値の組の数を特図1保留数(特図1始動情報保留数)として遊技者に報知可能になっている。特図1保留表示領域208d1は、特図1乱数値記憶領域に記憶されている複数の特図1乱数値の組のうちの一の特図1乱数値の組に対して一の特図1変動遊技の保留表示を行うことで特図1保留数を報知可能に構成されている。また、特図1保留表示領域208d1は、事前予告報知の対象となる図柄変動表示に対応する特図1変動遊技の保留表示を変化させることで、先読み予告報知を実行可能なように構成されていてもよい。」

(1-エ)
「【0230】
・・・当該特定の当否判定結果とならない所定の図柄変動表示(例えば、はずれに係る特図変動遊技)で実行される特定の演出(例えば、リーチ演出や通常共通予告演出)に関する説明演出(例えば、図14の上欄に示す説明文と、図15(c)に示す説明演出用キャラクタ画像とを用いて実行される演出)を、当該所定の図柄変動表示の終了後に所定条件が成立したこと(例えば、特図変動遊技の変動時間が8000msであること)に基づいて実行する説明演出実行手段(例えば、第1副制御部400のCPU404や図16に示す特図変動遊技の変動開始時の第1副制御部側予告実行処理)を備えている。・・・」

(1-オ)
「【0277】
次に、本実施の形態の実施例4によるパチンコ機100での特図変動遊技について図20を用いて説明する。図20は、本実施例によるパチンコ機100での特図変動遊技を説明する図である。本実施例では、特図先読み予告に関する保留表示画像の表示態様の変化も説明演出で説明する特定の演出に含まれる例について説明する。図20(a)乃至図20(j)はこの順に、本実施例によるパチンコ機100での特図変動遊技を時系列で示している。
【0278】
図20(a)は、例えば特図1変動遊技が既に開始されており、装飾図柄表示装置208の左中右図柄表示領域208a、208b、208cのそれぞれに図中下向きの太矢印で示すように装飾図柄が上から下に移動(回転)する図柄変動表示が実行されている状態を示している。この図柄変動表示に先立って、以下の処理が実行される。
【0279】
例えば、主制御部300は、当該特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否と、当該特図1変動遊技の変動時間としての特図タイマ番号とを判定し、これらの判定結果を第1副制御部400に送信する。本例では、例えば当否判定結果ははずれ、変動時間は3000msとなる。
・・・・・
【0281】
また、この特図1変動遊技中に特図1始動口230に2個の遊技球が入賞し、当該特図1変動遊技の実行中に以下の処理が実行される。例えば、主制御部300は、導出された2個の特図1始動情報について特図先読み処理を実行する(主制御部タイマ割込み処理のステップS224)。主制御部300は、1個目に導出された特図1始動情報について、例えば図10(b)に示す当否判定用低確率テーブルを参照して事前判定し、事前判定結果がはずれであり、図10(c)に示す特図決定用テーブルを参照して停止図柄を例えば「特図I」と決定し、図11に示す特図1変動表示時間決定テーブルを参照して変動時間を例えば60000msと決定し、2個目に導出された特図1始動情報について、例えば当該当否判定用低確率テーブルを参照して事前判定し、事前判定結果がはずれであり、当該特図決定用テーブルを参照して停止図柄を例えば「特図I」と決定し、当該特図1変動表示時間決定テーブルを参照して変動時間を例えば8000msと決定し、特図先読み処理を終了する。
【0282】
詳細な説明は省略するが、これらの事前判定結果の情報を含むコマンドを受信した第1副制御部400は、特図先読み処理が実行された特図1始動情報毎に保留表示画像の表示態様を変更するか否かの抽選処理を実行する。本例では、例えば1個目に導出された特図1始動情報に対応する保留表示画像は、「姫様の妹」を表した表示態様に変更され、2個目に導出された特図1始動情報に対応する保留表示画像は、円形白丸を表したデフォルト表示であって表示態様が変更されないように決定される。これにより、図20(a)に示すように、装飾図柄表示装置208の演出表示領域208d内の左下方に設けられた特図1保留表示領域208d1には、「姫様の妹」の表示態様による保留表示画像a1と、円形白丸の表示態様による保留表示画像a2とが表示される。
・・・・・
【0284】
左中右図柄表示領域208a、208b、208cにおいて図柄変動表示が開始されてから所定時間(例えば3000ms)経過後に、図20(b)に示すように、「装飾1-装飾4-装飾6」が左中右図柄表示領域208a、208b、208cに停止表示されて、当該特図1変動遊技がはずれであることが報知される。本例では、変動時間が3000msであり通常共通予告演出の抽選に不当選であったため、図柄変動表示はリーチ演出や通常共通予告演出が実行されずに終了する。
・・・・・
【0294】
左中右図柄表示領域208a、208b、208cにおいて図柄変動表示が開始されてから所定時間経過後に、図20(i)に示すように、演出表示領域208dには、説明演出用キャラクタ画像であるパンダの画像と、その右隣の「保留変化は熱い!」の文字画像とが表示され、説明演出が実行される。説明演出は、遊技者が説明演出での報知内容を認識できるように、当該特図1変動遊技の変動時間8000msのうちの数msの間実行され続ける。また、本実施例によるパチンコ機100は、説明演出実行期間中には左中右図柄表示領域208a、208b、208cにおける図柄変動表示を装飾図柄表示装置208の表示領域内に表示しないようになっている。」

(1-カ)
「【0348】
また、パチンコ機100は、はずれとなる図柄変動表示に関連する説明および大当りとなる図柄変動表示に関連する説明演出のいずれも実行できるように構成されている場合、はずれ(はずれリーチ)後に行われる説明演出が出現する確率(出現率)と、大当り遊技後に行われる説明演出とが出現する確率(出現率)とに差を設けるように設定されていてもよい。・・・」

上記記載事項の(1-ア)?(1-カ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「主制御部300は、特図1始動口230へ入賞があった場合、当り判定用乱数値を取得するとともに、当り時用特図決定用乱数値を取得し(段落【0067】、【0076】)、
主制御部300は、特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否を判定し(段落【0279】)、
図柄変動表示が開始されてから所定時間経過後に、『装飾1-装飾4-装飾6』が装飾図柄表示装置208の左中右図柄表示領域208a、208b、208cに停止表示されて、当該特図1変動遊技がはずれであることが報知され(段落【0278】、【0284】)、
特図1保留数記憶領域は保留数4で満タンとなるものであり、特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組は、特図1保留数記憶領域に記憶された特図1保留数と同数分だけ格納され(段落【0076】)、
装飾図柄表示装置208の特図1保留表示領域208d1に保留表示画像を表示し、特図1乱数値記憶領域に記憶されている特図1乱数値の組の数を特図1保留数として遊技者に報知可能になっており(段落【0215】、【0216】)、
主制御部300は、導出された2個の特図1始動情報について特図先読み処理を実行し(段落【0281】)、
これらの事前判定結果の情報を含むコマンドを受信した第1副制御部400は、特図先読み処理が実行された特図1始動情報毎に保留表示画像の表示態様を変更するか否かの抽選処理を実行し、これにより、装飾図柄表示装置208の特図1保留表示領域208d1には、『姫様の妹』の表示態様による保留表示画像a1と、円形白丸の表示態様による保留表示画像a2とが表示され(段落【0282】)、
第1副制御部400により、演出表示領域208dには、『保留変化は熱い!』の文字画像が表示され、説明演出が実行される遊技台(段落【0001】、【0230】、【0294】)。」

(1-2)引用文献2
また、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-321712号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(2-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示手段を備え、あらかじめ定められている可変表示の実行条件が成立した後、可変表示の開始条件の成立にもとづいて識別情報の可変表示を開始し、可変表示の表示結果が特定の表示結果となったときに遊技者にとって有利な遊技状態である特定遊技状態に制御可能なパチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機に関する。」

(2-イ)
「【0023】
また、可変表示装置9には、始動入賞口14に遊技球が入賞したこと、すなわち、可変表示の実行条件が成立したことを示す始動入賞記憶を表示する特別図柄始動記憶表示エリア(始動記憶表示エリア)18が設けられている。始動記憶表示エリア18は、始動入賞口14に入った有効入賞球数すなわち始動入賞記憶数を特定可能に複数の始動入賞記憶を個別に表示する。具体的には、始動記憶表示エリア18は、始動入賞口14への入賞がある毎に左から順番に最大4つの始動入賞記憶を個別に表示する。始動記憶表示エリア18に表示される始動入賞記憶によって特別図柄の可変表示が開始されていない始動入賞記憶数を遊技者に報知する。また、可変表示装置9には、特別図柄の可変表示が開始されて現在可変表示中の始動入賞記憶、すなわち、現在可変表示が行われている可変表示の実行条件としての始動入賞記憶を表示する変動中始動記憶表示エリア19が設けられている。
【0024】
有効始動入賞(始動入賞記憶数が4未満のときの始動入賞)がある毎に、始動記憶表示エリア18に表示される始動入賞記憶数を1増やす。そして、特別図柄の可変表示が開始される毎に、始動記憶表示エリア18に表示される始動入賞記憶数を1減らすとともに、変動中始動記憶表示エリア19に始動入賞記憶を表示させる。そして、特別図柄の可変表示(可変表示の表示結果が大当りとなったときには大当り遊技状態)が終了すると、変動中始動記憶表示エリア19に表示されていた始動入賞記憶を消去する。
【0025】
始動記憶表示エリア18および変動中始動記憶表示エリア19に表示される始動入賞記憶の表示内容を始動入賞表示という。始動入賞表示には、円形の図柄による表示と、星や手榴弾などの特別な図柄による表示とがある(図23参照)。以下、円形の図柄による表示を通常始動入賞表示といい、特別な図柄による表示を特別始動入賞表示という。」

(2-ウ)
「【0150】
図23は、特別始動入賞表示の表示位置の移動を示す説明図である。図23(a)に示すように、3つの始動入賞記憶が表示されている状態(すなわち始動入賞記憶数が3の状態)において、有効始動入賞があり、その始動入賞にもとづく変動パターンが特別演出パタ
ーンであると事前に判定されたときは、特別演出パターンに対応する始動入賞表示である特別始動入賞表示(図の例では表示態様Aの「星」の特別始動入賞表示)が4番目の位置に表示される。なお、始動入賞にもとづく変動パターンが特別演出パターンでないと事前に判定されたときであっても、一定の割合で通常始動入賞表示でなく特別始動入賞表示が表示されることもある(ステップS133,S136,S137参照)。
【0151】
図23(b)に示すように、可変表示の開始条件が成立して始動入賞記憶数が1減らされると、可変表示の実行条件が成立しているものの中で最も古い始動入賞記憶すなわち1番目の位置の始動入賞記憶を示す始動入賞表示(図の例では通常始動入賞表示)は始動記憶表示エリア18から消去されるとともに、変動中始動記憶表示エリア19に表示される。また、2番目?4番目の位置の始動入賞表示は、それぞれ、1番目?3番目の位置に移動(シフト)して表示される。
・・・・・
【0154】
図23(e)に示すように、次回の可変表示の開始条件が成立して始動入賞記憶数が1減らされると、1番目の位置の特別始動入賞表示は始動記憶表示エリア18から消去されるとともに、変動中始動記憶表示エリア19に表示される。また、2番目および3番目の位置の始動入賞表示は、それぞれ、1番目および2番目の位置に移動(シフト)して表示される。特別始動入賞表示が変動中始動記憶表示エリア19に表示されているときは、特別演出パターンにもとづく特別な演出態様が実行される可能性が高い。」

(2-エ)
「【0157】
図25は、特別演出パターンの例を示す説明図である。図25に示すように、特別始動入賞表示(図の例では表示態様Aの「星」)が変動中始動記憶表示エリア19に表示されているときに、高い確率で特別演出パターンが実行される。図25(a)に示すように、可変表示装置9の図柄表示エリアで特別図柄(左中右図柄)の可変表示(変動)が開始される。なお、図柄表示エリア内の矢印は特別図柄が可変表示していることを示している。図25(b)に示すように、特別図柄の可変表示中において所定のタイミング(可変表示が開始されてから所定時間経過した時点)で背景画像に「星」が現れる。図25(c)に示すように、背景画像に「星」が現れると、左右図柄が同一の図柄(図の例では「7」)で揃って停止し、中図柄だけが変動しているリーチ状態に発展する。そして、図25(d)に示すように、リーチ状態に発展すると、変動中始動記憶表示エリア19に表示されている特別始動入賞表示の表示態様が変化する。例えば、特別始動入賞表示の「星」の周りに「炎」が現れる。」

(2-オ)
「【0171】
図28は、リーチ時における特別図柄(中図柄)の変動状態を示す説明図である。可変表示装置9の図柄表示エリアにおいて縦スクロールで左中右図柄の可変表示が行われているときに、左右図柄が同一の図柄(図の例では「7」)で揃って停止し、中図柄(最終停止図柄)だけが変動しているリーチ状態に発展する。リーチ状態に発展すると、図28に示すように、複数種類の中図柄「1」?「12」の全てが、可変表示装置9の表示画面に対して所定の角度で傾いた円周上の位置に番号順に並んで配置される。そして、円周上の位置に配置された全ての中図柄「1」?「12」が、横回転して変動する。このように、表示画面に対して所定の角度で傾いた円周上の位置に全ての中図柄が配置されて横回転変動しているので、変動中の全ての中図柄が図柄表示エリアに現れることになり、遊技者は全ての中図柄の変動状態を視認することができる。
・・・・・
【0174】
以上のようなリーチ演出によれば、大当りの発生への期待を遊技者に抱かせることができ、リーチ時の演出効果を一層向上させることができる。このようなリーチ演出は、例えば、図25?図27に示した特別演出パターンにおけるリーチ演出やスーパーリーチ演出に利用することができる。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「特図1始動口230へ入賞」は、本願補正発明の「始動条件の成立」に相当し、引用発明の「当り判定用乱数値」及び「当り時用特図決定用乱数値」は、本願補正発明の「判定情報」に相当する。
そうすると、引用発明の「特図1始動口230へ入賞があった場合、当り判定用乱数値を取得するとともに、当り時用特図決定用乱数値を取得」する「主制御部300」は、本願補正発明の「始動条件の成立に伴い判定情報を取得する判定情報取得手段」としての機能を有している。

イ 引用発明において、「特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否」の「判定」が、当該「特図第1始動情報」に基づいて行われることは、技術常識から明らかである。
また、上記記載事項の(1-イ)に、「特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組(以下、「特図1乱数値の組」または「特図1始動情報」と称する場合がある)」と記載されていることから、引用発明の「特図1始動情報」は、上記アにおける引用発明の「当り判定用乱数値」及び「当り時用特図決定用乱数値」と同じことを意味しており、本願補正発明の「判定情報」に相当するものである。
さらに、引用発明の「特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否」の「判定」は、本願補正発明の「特別遊技に当選したか否かの判定」に相当する。
そうすると、引用発明の「特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否を判定」する「主制御部300」は、本願補正発明の「前記判定情報に基づいて、特別遊技に当選したか否かの判定を行う特別遊技判定手段」としての機能を有している。

ウ 引用発明において「当該特図1変動遊技がはずれであること」は、「主制御部300」にて「特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否を判定し」た結果に基づくものであることは明らかである。そして、引用発明の「特図1変動遊技に係る特図1始動情報の当否」の「判定」は、本願補正発明の「前記特別遊技判定手段の判定」に相当するものである。
また、引用発明の「図柄変動表示が開始されてから所定時間経過後に、『装飾1-装飾4-装飾6』が装飾図柄表示装置208の左中右図柄表示領域208a、208b、208cに停止表示され」ることは、本願補正発明の「変動表示される図柄に対応した演出を表示」することに相当する。
そうすると、引用発明の「図柄変動表示が開始されてから所定時間経過後に、『装飾1-装飾4-装飾6』が左中右図柄表示領域208a、208b、208cに停止表示されて、当該特図1変動遊技がはずれであることが報知され」る「装飾図柄表示装置208」は、本願補正発明の「前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて変動表示される図柄に対応した演出を表示可能な画像表示手段」としての機能を有している。

エ 引用発明において、「特図1保留数記憶領域は保留数4で満タンとなるもの」であるから、特図1保留数記憶領域は保留数4が上限であり、「特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組は、特図1保留数記憶領域に記憶された特図1保留数と同数分だけ格納され」るものであるから、当該組も同様に保留数4が上限であるといえる。また、引用発明の「特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組」は、本願補正発明の「前記判定情報取得手段により取得された判定情報」に相当する。
そうすると、引用発明は、「特図1保留数記憶領域は保留数4で満タンとなるものであり、特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組は、特図1保留数記憶領域に記憶された特図1保留数と同数分だけ格納され」るものであるから、引用発明の「特図1乱数値記憶領域」は、本願補正発明の「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段」としての機能を有している。

オ 引用発明の「保留表示画像」は、本願補正発明の「保留画像」に相当する。また、上記記載事項の(1-イ)に、「特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組(以下、「特図1乱数値の組」または「特図1始動情報」と称する場合がある)」と記載されていることから、引用発明の「特図1乱数値の組」は、「特図1乱数値記憶領域内の当り判定用乱数値および当り時用特図決定用乱数値の組」であり、よって、引用発明の「特図1乱数値記憶領域に記憶されている特図1乱数値の組の数」は、本願補正発明の「前記保留記憶手段に記憶された保留数」に相当する。
そうすると、引用発明は、「装飾図柄表示装置208の特図1保留表示領域208d1に保留表示画像を表示し、特図1乱数値記憶領域に記憶されている特図1乱数値の組の数を特図1保留数として遊技者に報知可能になって」いるものだから、引用発明の「装飾図柄表示装置208」は、本願補正発明の「前記保留記憶手段に記憶された保留数を保留画像により表示可能な保留表示手段」としての機能を有している。

カ 上記イで述べたとおり、引用発明の「特図1始動情報」は、本願補正発明の「判定情報」に相当する。また、引用発明の「特図先読み処理」は、本願補正発明の「事前に前記特別遊技の当選の有無を判定する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「導出された2個の特図1始動情報について特図先読み処理を実行」する「主制御部300」は、本願補正発明の「前記判定情報に基づいて、事前に前記特別遊技の当選の有無を判定する事前判定手段」としての機能を有している。

キ 引用発明の「これらの事前判定結果」、「保留表示画像」、「『姫様の妹』の表示態様」、「円形白丸の表示態様」は、本願補正発明の「前記事前判定手段の判定結果」、「前記保留表示手段に表示させる保留画像」、「特定保留表示態様」、「通常保留表示態様」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明は、「これらの事前判定結果の情報を含むコマンドを受信した第1副制御部400は、特図先読み処理が実行された特図1始動情報毎に保留表示画像の表示態様を変更するか否かの抽選処理を実行し、これにより、装飾図柄表示装置208の特図1保留表示領域208d1には、『姫様の妹』の表示態様による保留表示画像a1と、円形白丸の表示態様による保留表示画像a2とが表示され」るものであるから、引用発明の「第1副制御部400」は、本願補正発明の「前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記保留表示手段に表示させる保留画像を通常保留表示態様とするか、或いは特定保留表示態様とするかを選択決定する保留表示態様選択決定手段」としての機能を有している。

ク 引用発明の「保留変化」は、本願補正発明の「前記特定保留表示態様となること」に相当し、「保留変化」が「遊技者にとって有利な状態となる」のは技術常識より明らかであるから、引用発明の「第1副制御部400により、演出表示領域208dには、『保留変化は熱い!』の文字画像が表示され、説明演出が実行される」ことと、本願補正発明の「前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを予め説明する説明演出」とは、「前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを説明する説明演出」である点で共通する。
また、引用発明の「『姫様の妹』の表示態様」、「保留表示画像」は、本願補正発明の「特定保留表示態様」、「保留画像」にそれぞれ相当するから、引用発明の「装飾図柄表示装置208の特図1保留表示領域208d1には、『姫様の妹』の表示態様による保留表示画像a1」「が表示され」ることと、本願補正発明の「該説明演出を行った後に前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出」とは、「前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出」である点で共通する。
そして、引用発明において、「・・・説明演出が実行される」ことと、「・・・保留表示画像a1」「が表示され」こととは、ともに「第1副制御部400」により実施されるから、引用発明の「第1副制御部400」は、本願補正発明の「遊技演出実行手段」に相当する。
そうすると、両発明は、「前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを説明する説明演出と、前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出と、を実行する遊技演出実行手段」を有する点で共通する。

ケ 引用発明の「遊技台」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

上記ア?ケにより、両発明は、

(一致点)
「始動条件の成立に伴い判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報に基づいて、特別遊技に当選したか否かの判定を行う特別遊技判定手段と、
前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて変動表示される図柄に対応した演出を表示可能な画像表示手段と、
前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶された保留数を保留画像により表示可能な保留表示手段と、
前記判定情報に基づいて、事前に前記特別遊技の当選の有無を判定する事前判定手段と、
前記事前判定手段の判定結果に基づいて、前記保留表示手段に表示させる保留画像を通常保留表示態様とするか、或いは特定保留表示態様とするかを選択決定する保留表示態様選択決定手段と、
前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを説明する説明演出と、前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出と、を実行する遊技演出実行手段と、を備える遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
「前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを」「説明する説明演出」について、本願補正発明では、「予め」なされるものであるのに対して、引用発明では、そのような構成ではない点。

(相違点2)
「遊技演出」により「前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能」であるのが、本願補正発明では、「該説明演出を行った後」であるのに対して、引用発明では、そのような構成ではない点。

(相違点3)
本願補正発明では、「前記図柄が変動していることを示す変動保留画像を表示可能な変動保留表示手段」を備えるのに対して、引用発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点4)
「遊技演出実行手段」について、本願補正発明では、「前記遊技演出として、前記特定保留表示態様により保留画像を表示すると、前記保留画像に係る前記図柄の変動が開始されることに伴って前記特定保留表示態様を維持したまま前記変動保留画像として表示し、前記画像表示手段に所定演出が表示されたときに前記変動保留画像を消去する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような構成であるか明らかでない点。

(3)判断
相違点1及び2は関連するので、まとめて検討する。
遊技機の技術分野において、説明演出の説明対象となる演出の信頼度等を当該演出の実行時に遊技者が認識できるように、説明演出を当該説明演出の説明対象となる演出の前に予め実施することは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-34860号公報(半蔵リーチの信頼度に対する解説をする解説予告3902を表示し、3変動後の変動において半蔵リーチが発生する点。段落【0407】、図39-1等を参照。)や同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-19910号公報(リーチ予告演出の説明演出が実行された後、リーチ予告演出としてのUFOが出現する演出が実行され、大当たり予告演出の説明演出が実行された後、大当たり予告演出として星が出現する演出が実行される点。段落【0283】、【0392】、図35等を参照。)等にも記載されているように、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
また、上記記載事項の(1-カ)に、「パチンコ機100は、はずれとなる図柄変動表示に関連する説明および大当りとなる図柄変動表示に関連する説明演出のいずれも実行できるように構成されている場合・・・」と記載されていることからも明らかなように、引用発明は、その前提として、図柄変動表示がはずれと大当りの両方に関連して説明演出を実行する構成も考慮されており、はずれの場合だけに関連して説明演出を実行するものに限定されないから、説明演出の実施時期を説明対象となる演出の前後いずれにしても支障のないものである。
そうすると、引用発明において、「前記特定保留表示態様となることで遊技者にとって有利な状態となることを説明する説明演出」の説明対象である「前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能な遊技演出」の信頼度等を当該「遊技演出」の実行時に遊技者が認識できるように、上記の周知技術1に基づき当該「遊技演出」の前に当該「説明演出」を予め実施する、すなわち、当該「説明演出」を行った後に当該「遊技演出」により「前記特定保留表示態様により保留画像を表示可能」とするように構成して、相違点1及び2における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

相違点3及び4は関連するので、まとめて検討する。
上記記載事項の(2-ア)?(2-ウ)によれば、引用文献2の「通常始動入賞表示」、「特別始動入賞表示」は、それぞれ本願補正発明の「通常保留表示態様」、「特別保留表示態様」による表示に相当し、引用文献2の「始動記憶表示エリア18における始動入賞記憶の表示」、「変動中始動記憶表示エリア19における、特別図柄の可変表示が開始されて現在可変表示中の始動入賞記憶の表示」は、それぞれ本願補正発明の「保留画像」、「変動保留画像」に相当するものであるから、引用文献2には、図柄が変動していることを示す変動保留画像を表示可能であり、特定保留表示態様により保留画像を表示すると、前記保留画像に係る前記図柄の変動が開始されることに伴って前記特定保留表示態様を維持したまま前記変動保留画像として表示するとの技術的事項(以下、「技術的事項1」という。)が記載されているといえる。
また、上記記載事項の(2-エ)?(2-オ)によれば、引用文献2には、特別始動入賞表示が変動中始動記憶表示エリア19に表示されているときに実行される特別演出パターンにおけるリーチ演出等に、図28に示された態様のリーチ演出を利用できることが記載されている。そして、引用文献2の図28には、リーチ時における特別図柄(中図柄)の変動状態を示す説明図において、変動中始動記憶表示エリア19における現在可変表示中の始動入賞記憶の表示がなされていないものが開示されているから、引用文献2には、リーチ演出中に図28に開示された態様のリーチ演出が表示されたとき、すなわち、画像表示手段に所定演出が表示されたときに変動保留画像を消去するとの技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されているといえる。
また、遊技機の技術分野において、遊技者の注目をリーチ演出に集めるために、リーチ演出中にリーチ演出を構成しない保留状況等の表示を消去することは、例えば特開2012-217546号公報(段落【0006】、【0088】、図12等を参照。)や特開2012-120892号公報(段落【0187】、【0194】、図14、15等を参照。)等にも記載されているように、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用文献2の変動保留画像は、保留に関連する画像であるとともに、リーチ演出を構成しないものであることは、当業者にとって明らかである。
そうすると、引用発明と引用文献2に記載されたものとは、保留画像を通常保留表示態様と特別保留表示態様とで表示可能な遊技機という点で共通するものであるから、引用発明に対して、引用文献2に記載された上記の技術的事項1及び2を適用することにより、若しくは、上記の技術的事項1を適用するとともに、上記周知技術2に基づいて、画像表示手段に所定演出であるリーチ演出が表示されたときに、保留画像とともに変動保留画像を消去するように設計変更することにより、相違点3及び4における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項1及び2、並びに、周知技術1及び2から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

なお、請求人は審判請求書において、「このように構成すると、保留画像が特定保留表示態様により表示された場合は、画像表示手段に所定演出が表示されるまで特定保留表示態様を維持したまま変動保留画像として表示し続けることが可能になるので、当該図柄の変動が特別遊技に当選している期待度が高いことを、遊技者に対して確実に報知することが可能になるという効果が期待できます。」(第4頁第15?19行)と、本願補正発明の効果について主張している。
しかしながら、請求人の主張する効果は、特定保留表示態様を維持したまま変動保留画像として表示することによるものであり、引用文献2にもそのような構成は記載されており当然に同様な効果が奏されるから、引用文献2の記載事項等から当業者が予測可能なものにすぎない。
そうすると、請求人の上記主張は採用することができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項1及び2、並びに、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年8月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、「第2[理由]3(1)(1-1)引用文献1」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報」を「前記特別遊技判定手段による判定の権利」と上位概念に拡張するとともに、「前記図柄が変動していることを示す変動保留画像を表示可能な変動保留表示手段」、「前記遊技演出実行手段は、前記遊技演出として、前記特定保留表示態様により保留画像を表示すると、前記保留画像に係る前記図柄の変動が開始されることに伴って前記特定保留表示態様を維持したまま前記変動保留画像として表示し、前記画像表示手段に所定演出が表示されたときに前記変動保留画像を消去する」との事項を省いたものである。
本願発明と引用発明とを対比すると、上述のとおり、本願発明の「前記特別遊技判定手段による判定の権利」は、本願補正発明の「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報」から上位概念に拡張した発明特定事項であるから、引用発明の「特図1乱数値記憶領域」は、「第2[理由]3(2)エ」に記載したとおり本願補正発明の「前記判定情報取得手段により取得された前記判定情報を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段」としての機能を有している以上、本願発明の「前記特別遊技判定手段による判定の権利を、所定数を上限として保留して記憶する保留記憶手段」としての機能も有しているといえる。
そして、本願発明のこれ以外の構成要件は、本願補正発明について検討した「第2[理由]3(2)対比」における相違点3及び4に対応する構成が存在しないことを除いて、本願補正発明と同じである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、同相違点1及び2と同等の相違点において相違するほかは、すべて一致している。

そして、上記相違点における本願発明の構成は、「第2[理由]3(3)判断」に上記相違点1及び2に係る判断として記載したのと同じ理由により、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。
さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-22 
結審通知日 2016-08-23 
審決日 2016-09-06 
出願番号 特願2013-30855(P2013-30855)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 加舎 理紅子
小島 寛史
発明の名称 遊技機  
代理人 鈴木 均  

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