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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1320687 |
審判番号 | 不服2014-19370 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-09-29 |
確定日 | 2016-10-19 |
事件の表示 | 特願2010-539000「表示インタフェースを通じた立体画像データの輸送」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月25日国際公開、WO2009/077969、平成23年 3月24日国内公表、特表2011-509558〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2008年12月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年12月18日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月31日付けの拒絶理由の通知に対し、平成26年2月4日付けで手続補正がなされたが、平成26年5月23日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成26年9月29日に拒絶査定不服審判が請求され、当審における平成27年10月22日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年4月25日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成26年2月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 なお、A.?I.については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成A」、・・・。「構成I」という。) 「A.非圧縮のピクセル情報を送信するための第1視聴覚装置と第2視聴覚装置との間のデジタル表示インタフェースをサポートするために第1視聴覚装置に用いられるデジタル表示インタフェース部であって、 B.画像データを受け取るための入力部、 C.インタフェースを通じた輸送のためにデータをフォーマットするフォーマッタ、 を有し、 D.前記フォーマッタは、 当該フォーマッタが、二次元画像のピクセルデータを伝達する第1データ要素のストリームを生成する第1モード、及び 当該フォーマッタが、立体画像の成分の多重化された組み合わせを伝達する第2データ要素のストリームを生成する第2モード、 で動作可能であり、 E.前記フォーマッタは、ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素及び補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成し、 F.当該インタフェース部は、前記フォーマッタがどのモードを用いているかを特定する通知情報を前記インタフェース上で送信し、 G.前記通知情報は、第2モードにおいて用いられている立体画像フォーマットを復号するために用いられるべき復号スキームを第2視聴覚装置が決定することを可能にするための第2モードにおいて用いられる多重化スキームに関する情報を有し、 H.前記通知情報は補助データ要素において伝達される、 I.インタフェース部。」 3.引用発明 当審の拒絶理由に引用された、中国特許出願公開第101076130号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、 (通信方法及びシステム、伝送方法及び機器、受信方法及び機器)として、図面とともに以下の事項が記載されている。 翻訳文については、当審で付したものである。 ア. (6頁11行?7頁12行) (背景技術 最近、非圧縮のデジタルビデオデータなどを複数のビデオ装置間に転送させるインタフェース規格としてHDMI規格が、すでに開発されている。HDMI規格によって、ビデオデータはそれぞれピクセルで伝送する個別の原色データが転送される。HDMI規格は、また、ビデオデータのブランク期間にビデオデータに用いた伝送線でオーディオデータを転送する。赤緑青(Rデータ、Gデータ、Bデータ)の3チャンネルの原色データは、転送する原色データとされる。この原色データに代えて、輝度と色差信号、例えばY、Cb、Crを転送することができる。 HDMI規格によって、各色を転送するピクセルデータは、基本的に8ビットで利用される。またそれぞれの同期信号を設置するタイミングで、同期信号、例えば水平同期信号と垂直同期信号を転送する。ピクセルクロックを利用するビデオデータ伝送線と制御データ伝送線を提供する。 図1は、HDMI規格を利用することを示すインタフェースが原色データ(Rデータ、Gデータ、Bデータ)を転送する状況の実例の概略図である。3つのチャンネル0、チャンネル1、チャンネル2はビデオ信号に提供されて、そして単独でRデータ、Gデータ、Bデータを転送する。図1の実例はピクセル0、ピクセル1、ピクセル2、ピクセル3の4個のピクセルによって構成されるデータを転送するのに用いられる期間を示し、そしてそれぞれのチャンネルのピクセルデータは8ビットを含む。 より具体的には、チャンネル0はBデータ(青色データ)に用いられ、8ビットのB0のデータはピクセル0の期間に伝えられて、次に8ビットのB1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロック(未図示)に同期して順に伝えられる。チャンネル1はGデータ(緑色データ)に用いられ、8ビットのG0のデータはピクセル0の期間に伝えられて、次に8ビットのG1のデータ、G2のデータ、G3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられる。チャンネル2はRデータ(赤色データ)に用いられ、8ビットのR0のデータはピクセル0の期間に伝えられて、次に8ビットのR1のデータ、R2のデータ、R3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられる。 図1に図示しないが、HDMI規格によるインタフェースは他のチャンネルで制御データとピクセルクロックを転送する。制御データはビデオデータ伝送装置(ソースデバイス)からビデオデータ受信装置(再送信装置(sink device))に転送されることができ、そして同じく受信装置(再送信装置)から伝送装置(ソースデバイス)に転送されることができる。また、ソースデバイスデータは、8ビットで符号化し、そして再送信装置で符号化データは8ビットで復号される。) イ. (10頁3行?12行) (本発明の実施例は、HDMI規格でビデオデータなどをソースデバイスから再送信装置に転送する通信システムに応用される。図3はこの実施例によるシステム構成例を示し、それはソースデバイスを示すビデオ記録/再生装置10と再送信装置のテレビジョン受像機30をHDMIケーブル1の接続を利用することを含み、これによってビデオデータとオーディオデータをビデオ記録/再生装置10からテレビジョン受像機30に転送する。この実施例によれば、ビデオ記録/再生装置10は、三次元(3D)表示のビデオデータを用いて記録再生し、そして、テレビジョン受像機30は、三次元画像に対する表示処理を実行する。HDMI規格に関して、次に順に必要な構造などを説明するが、基本的に、従来のHDMI規格を変化せずに適用し、そしてHDMIケーブル1の構造は、関連分野の構造と同様である。) ウ. (10頁31行?11頁3行) (ビデオ処理ユニット12とオーディオ処理部14から出力するビデオデータとオーディオデータは、HDMI伝送処理装置20に提供される。HDMI伝送処理装置20はHDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行する回路ユニットであり、例えば集積回路から形成される。多重化回路21で、HDMI伝送処理装置20に提供されるビデオデータとオーディオデータを多重化する。) エ. (13頁8行?16行) (図5は、実施例による転送で伝送される1フレームビデオデータのライン構造とピクセル構造を示した図である。この実施例に伝送されるビデオデータ(主映像データ)は非圧縮のデータ(具体的にピクセルから形成されるビデオデータと言える)であり、垂直ブランキング期間と水平ブランキング期間がその上に加えられる。特に、図5は表示したビデオエリア(アクティブビデオ領域として示される)の480ライン×720ピクセルのピクセルデータの例として配置されることを示し、そして、525ラインと858ピクセルは、それぞれブランキング期間を含むライン数とピクセル数として配置される。ブランキング期間にダブルイメージ線(左と右の対角線を有する)で示した領域はデータアイランド(data island)と呼ばれて、補助データはその上に加えられることができる。) オ. (13頁17行?14頁15行) (次にこの実施例による転送中に、ピクセルデータを転送するチャンネル0とチャンネル1とチャンネル2を用いることを利用して、ビデオデータを転送する状況を説明する。この実施例によれば、伝送構成はHDMI規格に一致し、そして典型的なビデオデータ(具体的には、三次元表示に用いないといえるビデオデータ)を転送する場合、図1と図2に示した伝送構成によってビデオデータを転送する。より具体的には、それぞれの色のピクセルが8ビットである場合、ピクセルデータの8ビットデータとしてピクセルクロックサイクルに同期して、チャンネル0とチャンネル1とチャンネル2に配置されて伝えられる(図1の転送処理)。 また、三次元表示に用いられるビデオデータをビデオ記録/再生装置10からテレビジョン受像機30に転送する場合、伝送構成は図6に示されるようになる。この実例で、左と右のビデオデータは同一データ量を有するものに設定され、B、G,Rのそれぞれの色の左眼のビデオデータは、それぞれのピクセルを8ビットにし、そして、B、G、Rのそれぞれの色の右眼のビデオデータは、同じくそれぞれのピクセルを8ビットにする。ピクセルの左と右のピクセルデータはクロックチャンネルで送られるピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送される。より具体的には、この2ピクセルクロックサイクルの第1の半分(図6に示したフェーズ0と2)の期間を、チャンネル0、1、2で個別に送られるB、G、Rのそれぞれの色の左眼のビデオデータが利用する。また、この2ピクセルクロックサイクルの第2の半分(図6に示したフェーズ1と3)の期間を、チャンネル0、1、2で個別に送られるB、G、Rのそれぞれの色の右眼のビデオデータが利用する。左眼の第1の半分のビデオデータと右眼の第2の半分のビデオデータは同じピクセル位置のデータである。ブランキング期間については、この両ピクセルクロックサイクルの第1の半分と第2の半分で、同一データ構造を有するブランキング期間に用いたデータを転送する。 ここで図6に示した転送状態を詳解する。例えば、ピクセル0に、チャンネル0のBデータのフェーズ0で左眼の8ビットの青色データB0Lを転送し、次にフェーズ1で右眼の8ビットの青色データB0Rを転送する。チャンネル1のGデータのフェーズ0で左眼の8ビットの緑色データG0Lを転送し、次にフェーズ1で右眼の8ビットの緑色データG0Rを転送する。チャンネル2のRデータのフェーズ0で左眼の8ビットの赤色データR0Lを転送し、次にフェーズ1で右眼の8ビットの赤色データR0Rを転送する。(以下略)) カ. (14頁16行?27行) (図7はこのような例を示す:三次元表示に用いるビデオデータは、上記の伝送構成を有し、そして、VSDBと呼ばれる指示送信データの構造のデータを利用して、ソース側から転送側に多重化データの例を指示する。DDCライン(図4参照)でVSDBのデータを転送する。この例のVSDBのデータの場合、第6バイト中のデータで、このデータを構成するピクセルのビットを示す。この例では、このデータが総計24ビットを有することを示し、それぞれ種類の色の1ピクセルごとに8ビットである。また、所定ビット位置を利用し、三次元データを転送するかどうかを示している。 再送信装置(テレビジョン受像機30)にある制御部36(図3参照)は、VSDBのデータを検出し、図6に示す三次元表示に用いるビデオデータを転送、もしくは、図1や2に示す典型的なビデオデータを転送しているかを決定する。(以下略)) 上記ア.?カ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 (a)上記ア.には、非圧縮のデジタルビデオデータをHDMI規格で転送させることが記載され、上記イ.には、ビデオ記録/再生装置10とテレビジョン受像機30との間で、ビデオデータをHDMI規格で転送させることが記載され、上記ウ.には、HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行するHDMI伝送処理装置20が記載されている。また、図3において、HDMI伝送処理装置20は、ビデオ記録/再生装置10に用いられている。さらに、上記エ.には、非圧縮のデータは、ピクセルから形成されることが記載されている。 すなわち、上記ア.?エ.の記載から、引用文献1には、非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータをHDMI規格で転送させるため、ビデオ記録/再生装置10とテレビジョン受像機30との間の、HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行するために、ビデオ記録/再生装置10に用いられているHDMI伝送処理装置20について記載がある。 (b)上記ウ.の記載から、引用文献1のHDMI伝送処理装置20は、 ビデオ処理ユニット12から出力されるビデオデータが提供されるものである。 (c)上記ア.、オ.、図1、図2、図6の記載から、引用文献1のHDMI伝送処理装置20は、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送する場合においては、Bデータ、Gデータ、Rデータは、異なるチャンネルで伝送され、例えば、Bデータは、B1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられ、三次元表示に用いられるビデオデータを転送する場合においては、ピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送され、例えば、Bデータは、左眼のB0Lが転送され、次に右眼のB0Rが転送され、左眼のB1Lが転送され、次に右眼のB1Rが転送されるものである。 (d)上記カ.には、DDCラインでVSDBのデータを転送すること、指示送信データであるVSDBのデータを利用して、三次元データを転送するかどうかを示すこと、VSDBのデータを検出すると、三次元表示に用いるビデオデータを転送、もしくは、図1や2に示す典型的なビデオデータを転送しているかを決定できることが記載され、上記エ.、図1、図2の記載から、図1や2に示す典型的なビデオデータとは、三次元表示に用いないといえるビデオデータである。 すなわち、引用文献1のHDMI伝送処理装置20は、DDCラインで、三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータを転送するものである。 そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が開示されている。 なお、a.?e.については、説明のために当審にて付したものである。 [引用文献1発明] 「a.非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータをHDMI規格で転送させるため、ビデオ記録/再生装置10とテレビジョン受像機30との間の、HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行するために、ビデオ記録/再生装置10に用いられているHDMI伝送処理装置20であって、 b.ビデオ処理ユニット12から出力されるビデオデータが提供され、 c.三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送する場合においては、Bデータ、Gデータ、Rデータは、異なるチャンネルで伝送され、例えば、Bデータは、B1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられ、 三次元表示に用いられるビデオデータを転送する場合においては、ピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送され、例えば、Bデータは、左眼のB0Lが転送され、次に右眼のB0Rが転送され、左眼のB1Lが転送され、次に右眼のB1Rが転送され、 d.DDCラインで、三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータを転送する e.HDMI伝送処理装置20」 4.本願発明と引用文献1発明との対比と一致点・相違点の認定 ア.対比 (ア-1)構成Aについて 引用文献1発明の構成aの「非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータ」は、本願発明の構成Aの「非圧縮のピクセル情報」に相当する。 引用文献1発明の構成aの「HDMI伝送処理装置20」は、「非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータ」を、ビデオ記録/再生装置10からテレビジョン受像機30に送信するために設けられているものであるから、「非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータ」を送信するためのものであるといえる。 引用文献1発明の構成aの「ビデオ記録/再生装置10」、「テレビジョン受像機30」は、それぞれ、本願発明の構成Aの「第1視聴覚装置」、「第2視聴覚装置」に相当する。 引用文献1発明の構成aの「HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行するために、ビデオ記録/再生装置10に用いられているHDMI伝送処理装置20」は、テレビジョン受像機30でデジタル表示をするために、ビデオ記録/再生装置10とテレビジョン受像機30との間で、HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行するものであるから、ビデオ記録/再生装置10とテレビジョン受像機30との間で、デジタル表示インタフェースをサポートしているといえ、本願発明の構成Aの「デジタル表示インタフェースをサポートするために第1視聴覚装置に用いられるデジタル表示インタフェース部」に相当する。 したがって、引用文献1発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。 (ア-2)構成Bについて 引用文献1発明の構成bの「ビデオ処理ユニット12から出力されるビデオデータ」は、本願発明の構成Bの「画像データ」に相当する。 そして、「HDMI伝送処理装置20」に対して、「ビデオ処理ユニット12から出力されるビデオデータが提供され」るものであるから、「HDMI伝送処理装置20」は、ビデオデータを入力するための構成を有しているといえる。 したがって、引用文献1発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。 (ア-3)構成Cについて 引用文献1発明の構成aにおいて、「HDMI伝送処理装置20」は、「HDMI規格によるインタフェースの転送処理を実行する」ものであるから、構成bの「ビデオ処理ユニット12から出力されるビデオデータ」を、HDMI伝送処理装置20において、HDMI規格で転送するためのデータ形式にしているものといえるので、「HDMI伝送処理装置20」は、本願発明の構成Cのように、インタフェースを通じた輸送のためにデータをフォーマットする構成を有しているといえる。 したがって、引用文献1発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を有している。 (ア-4)構成Dについて 上記(ア-3)で検討したように、引用文献1発明は、本願発明の構成Cに相当する構成、すなわち、「フォーマッタ」を有している。 引用文献1発明の構成cにおいて、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」とは、二次元画像のデータである。そして、構成aの「非圧縮のピクセルから形成されるデジタルビデオデータ」、構成cの「ピクセルクロックに同期して順に伝えられ」という記載から、各色は、ピクセルデータで転送しているものである。 また、構成cでは「Bデータ、Gデータ、Rデータは、異なるチャンネルで伝送され、例えば、Bデータは、B1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられ」ているので、二次元画像のピクセルデータからなるストリームを生成して転送されているといえ、そのようなデータ要素のストリームを生成しているといえる。 さらに、構成cは、「三次元表示に用いられるビデオデータを転送する場合においては、ピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送され、例えば、Bデータは、左眼のB0Lが転送され、次に右眼のB0Rが転送され、左眼のB1Lが転送され、次に右眼のB1Rが転送され」ているものであり、左眼のデータと右眼のデータが多重化されているといえ、そのようにして多重化されたものからなるストリームを生成して転送されているといえ、そのようなデータ要素のストリームを生成しているといえる。 ここで、二次元画像の「データ要素」と、三次元表示の「データ要素」は異なるものであるから、それらを区別するために「第1データ要素」、「第2データ要素」ということができる。 したがって、引用文献1発明の構成cの「三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送する場合においては、Bデータ、Gデータ、Rデータは、異なるチャンネルで伝送され、例えば、Bデータは、B1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられ」は、本願発明の構成Dの「二次元画像のピクセルデータを伝達する第1データ要素のストリームを生成する」に相当し、引用文献1発明の構成cの「三次元表示に用いられるビデオデータを転送する場合においては、ピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送され、例えば、Bデータは、左眼のB0Lが転送され、次に右眼のB0Rが転送され、左眼のB1Lが転送され、次に右眼のB1Rが転送され」は、本願発明の構成Dの「立体画像の成分の多重化された組み合わせを伝達する第2データ要素のストリームを生成する」に相当する。 そして、引用文献1の構成cにおいては、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」と「三次元表示に用いられるビデオデータ」は、同時に転送されることはなく、いずれかのストリームを生成して転送するものであるから、いずれかのストリームを生成する2つのモードがあり、いずれかのモードで動作できるものといえる。 したがって、引用文献1発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を有している。 (ア-5)構成Eについて 引用文献1発明の構成cにおいて、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」は、例えば、Bデータの場合、B1のデータ、B2のデータ、B3のデータが、ピクセルクロックに同期して順に伝えられるものであり、「三次元表示に用いられるビデオデータ」は、例えば、Bデータの場合、左眼のB0Lが転送され、次に右眼のB0Rが転送され、左眼のB1Lが転送され、次に右眼のB1Rが転送されていることから、ビデオデータの伝送が周期的であり、周期的なデータ要素を生成しているといえる。 ここで、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」と「三次元表示に用いられるビデオデータ」は、同時に転送されるものではないので、いずれかのデータ要素のストリームを生成しているといえる。 すなわち、引用文献1発明の構成cと本願発明の構成Eは、「ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素を有するデータ要素のストリームを生成し」という点で共通する。 また、引用文献1発明の構成dの「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータを転送する」は、VSDBのデータを転送することから、VSDBのデータを生成しているといえる。そして、VSDBのデータは、「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データ」、すなわち、テレビジョン受像機30に対してビデオデータがどのようなデータであるかを指示するデータであるから、ビデオデータを補助するためのデータであるといえ、本願発明の「補助データを伝えるデータ要素」に相当する。 すなわち、引用文献1発明の構成dと本願発明の構成Eは、「補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成し」という点で共通する。 そうすると、引用文献1発明と本願発明の構成Eは、「前記フォーマッタは、ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素を有するデータ要素のストリーム、及び、補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成し」という点で共通する。 しかし、引用文献1発明の「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータ」の伝送が、周期的であるか否かについては不明であり、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」や「三次元表示に用いられるビデオデータ」とは別個に、DDCラインで転送されているのに対し、本願発明の構成Eの「補助データを伝えるデータ要素」は、「ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素及び補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリーム」、すなわち、周期的であり、第1データ要素又は第2データ要素とともにあるデータ要素のストリームである点で相違する。 (ア-6)構成Fについて 引用文献1発明の構成dの「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータ」は、三次元表示に用いるビデオデータを転送するか、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送するかを相手側に通知する情報であり、上記(ア-4)の検討より、2つのモードのいずれかを通知するものといえるので、本願発明の構成Fの「前記フォーマッタがどのモードを用いているかを特定する通知情報」に相当する。 また、引用文献1発明の構成dの「DDCラインで、」「転送する」は、HDMI規格によるインタフェースで送信することであるから、本願発明の構成Fの「前記インタフェース上で送信」に相当する。 したがって、引用文献1発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を有している。 (ア-7)構成Gについて 引用文献1発明の構成dは、三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを転送するものであるが、三次元表示に用いるビデオデータを転送する場合に、第2モードにおいて用いられている立体画像フォーマットを復号するために用いられるべき復号スキームを第2視聴覚装置が決定することを可能にするための第2モードにおいて用いられる多重化スキームに関する情報を含むものではないので、引用文献1発明は、本願発明の構成Gに対応する構成を有しない点で相違する。 (ア-8)構成Hについて 上記(ア-5)、(ア-6)より、引用文献1発明の構成dの「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータ」は、本願発明の「通知情報」に相当し、「指示送信データであるVSDBのデータ」は、本願発明の「補助データを伝えるデータ要素」に相当する。 そして、引用文献1発明の構成dにおいては、「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータ」は「指示送信データであるVSDBのデータ」において転送されるといえる。 したがって、引用文献1発明の構成dは、本願発明の構成Hに相当する構成を有している。 (ア-9)構成Iについて 上記(ア-1)で検討したように、引用文献1発明の構成aの「HDMI伝送処理装置20」は、本願発明の構成Aの「デジタル表示インタフェースをサポートするために第1視聴覚装置に用いられるデジタル表示インタフェース部」に相当するので、引用文献1発明の構成eは、本願発明の構成Iに相当する。 したがって、本願発明と引用文献1発明は、以下の点で一致ないし相違している。 [一致点] 「非圧縮のピクセル情報を送信するための第1視聴覚装置と第2視聴覚装置との間のデジタル表示インタフェースをサポートするために第1視聴覚装置に用いられるデジタル表示インタフェース部であって、 画像データを受け取るための入力部、 インタフェースを通じた輸送のためにデータをフォーマットするフォーマッタ、 を有し、 前記フォーマッタは、 当該フォーマッタが、二次元画像のピクセルデータを伝達する第1データ要素のストリームを生成する第1モード、及び 当該フォーマッタが、立体画像の成分の多重化された組み合わせを伝達する第2データ要素のストリームを生成する第2モード、 で動作可能であり、 前記フォーマッタは、ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素を有するデータ要素のストリーム、及び、補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成し 当該インタフェース部は、前記フォーマッタがどのモードを用いているかを特定する通知情報を前記インタフェース上で送信し、 前記通知情報は補助データ要素において伝達される、 インタフェース部。」 [相違点] 相違点1 補助データを伝えるデータ要素に関して、本願発明は、「ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素及び補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成」、すなわち、周期的であり、第1データ要素又は第2データ要素とともにあるデータ要素のストリームであるのに対し、引用文献1発明は、周期的であるか否かについては不明であり、「三次元表示に用いないといえるビデオデータ」又は「三次元表示に用いられるビデオデータ」とは別個にDDCラインで転送されている点。 相違点2 通知情報に関して、本願発明は、「第2モードにおいて用いられている立体画像フォーマットを復号するために用いられるべき復号スキームを第2視聴覚装置が決定することを可能にするための第2モードにおいて用いられる多重化スキームに関する情報を有」するものであるのに対し、引用文献1発明は、そのような構成を有しない点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 (5-1)相違点1について 上記3.エ.で摘出したように、引用文献1には、ビデオデータに加えられたブランキング期間のデータアイランド領域に補助データを加える技術も記載されている。 すなわち、補助データをデータアイランド領域で、ビデオデータと共に送信することが開示されており、引用文献1発明における「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータ」についても、補助データである以上、データアイランド領域で送信することは、容易に想到し得るものであるし、データアイランド領域に加えられて送信されるのであれば、ビデオデータと共に送信され、周期的であることといえる。 したがって、引用文献1発明の「三次元表示に用いるビデオデータを転送しているか、もしくは、三次元表示に用いないといえるビデオデータを転送しているかを示すデータを含む指示送信データであるVSDBのデータ」について、ビデオデータに加えられたブランキング期間のデータアイランド領域に補助データを加えるという技術を鑑みることにより、「ストリーム中の周期的な第1データ要素又は第2データ要素及び補助データを伝えるデータ要素を有するデータ要素のストリームを生成」するように構成することは容易に想到し得るものである。 (なお、VSDBのデータに含ませるデータをデータアイランド領域に配置しても良いことは、国際公開第2007/132877号(段落0417等を参照)等にも記載されているように、良く知られている技術である。) (5-2)相違点2について 当審の拒絶理由に引用された、特開2003-111101号公報(特に、段落0010?0012、0038?0052、図8等を参照。以下、「引用文献2」という。)には、立体画像を配信する際には、複数の形式があり、表示側で容易に立体表示を可能とするために、立体画像を表示するための参照すべき情報を通知し、受信側にて、検出した情報を参照して立体画像を表示する構成が記載されている。 また、同様の技術は、引用文献2の他に、国際公開第2003/092303号(特に、要約の項等を参照、以下、「引用文献3」という。)等にも記載されており、当業者にとって周知の技術である。 立体画像を配信する際には、複数のフォーマットが周知である以上、三次元表示に用いられるビデオデータを転送する引用文献1発明においても、上記構成cのような、「ピクセルクロックの2クロック周期を用いて転送され、例えば、Bデータは、左眼のB0Lを転送し、次に右眼のB0Rを転送し、左眼のB1Lを転送し、次に右眼のB1Rを転送され」るフォーマットだけでなく、他のフォーマットでも転送できるようにすることは、当業者が当然に考える事項であり、その際に、上記引用文献2、引用文献3等の周知の技術を適用し、表示側で容易に立体表示を可能とするために、立体画像を表示するための参照すべき情報を通知することにより、通知情報に関して、「第2モードにおいて用いられている立体画像フォーマットを復号するために用いられるべき復号スキームを第2視聴覚装置が決定することを可能にするための第2モードにおいて用いられる多重化スキームに関する情報を有」するようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 よって、各相違点については、格別のものではなく、本願発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2及び引用文献3等に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 6.まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2及び引用文献3等に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-05-25 |
結審通知日 | 2016-05-26 |
審決日 | 2016-06-07 |
出願番号 | 特願2010-539000(P2010-539000) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 益戸 宏 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 藤井 浩 |
発明の名称 | 表示インタフェースを通じた立体画像データの輸送 |
代理人 | 矢ヶ部 喜行 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 津軽 進 |