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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07K |
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管理番号 | 1320890 |
審判番号 | 不服2013-25515 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-26 |
確定日 | 2016-11-09 |
事件の表示 | 特願2010-501126「環状受容体関連蛋白ペプチド」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日国際公開、WO2008/116171、平成22年 7月22日国内公表、特表2010-524849〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯・本願発明 本願は、平成20年(2008年)3月21日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年3月21日 米国)とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成25年12月26日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】配列番号97に少なくとも70%同一である50個の連続するアミノ酸を含み、そして1x10^(-8)M以下の結合親和性KdでCR含有蛋白に結合する、85アミノ酸長以下である環状RAPペプチドであって、該CR含有蛋白は、LDLR(P01130)、LRP1(P98157)、LRP1B(Q9NZR2)、LRP2(P98164)、LRP3(O75074)、LRP4(O75096)、LRP5(O75197)、LRP6(O75581)、LRP8(Q14114)、ソルチリン関連受容体、SorLA(Q92673)、LRP10(Q7Z4F1)、LRP11(Q86VZ4)、LRP12(Q9Y561)、FDC-8D6(CD320)、VLDLR(P98155)、TADG-15(ST14、Q8WVC1)、TMPS3(P57727)、TMPS4(Q9NRS4)、TMPS6(Q8IU80)、Q6ICC2、Q6PJ72、Q76B61、Q7RTY8、Q7Z7K9、Q86YD5、Q8NAN7、Q8NBJ0、Q8WW88、Q96NT6、Q9BYE1、Q9BYE2、Q9NPF0およびcorin(Q8IZR7)よりなる群から選択される、環状RAPペプチド。」(以下、「本願発明」という。) 2.原査定における拒絶の理由の概要 これに対して、原査定における拒絶の理由は、本願の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 3.当審の判断 (1)本願発明 本願発明は、「配列番号97のアミノ酸配列に少なくとも70%同一である50個の連続するアミノ酸を含み、85アミノ酸長以下である環状ペプチド」という構造を有し、「1x10^(-8)M以下の結合親和性KdでCR含有蛋白に結合し、該CR含有蛋白は列挙された34個の群から選択される」という機能を有する環状RAPペプチドに係るものである。 (2)本願明細書の記載 本願発明に係る環状RAPペプチドについて、本願明細書の段落【0014】には、「補体型リピート(CR)は特徴的な折り畳み構造を採用している保存された蛋白配列の大型のファミリーである。CR含有蛋白はLDL受容体ファミリー、II型膜貫通セリンプロテアーゼ(マトリプターゼ)ファミリー、および他の蛋白、例えばFDC-8D6抗原(CD320)のメンバーを包含する。受容体関連蛋白(RAP)は高い親和性でこれらのCR含有蛋白の多くに結合する。成熟RAPの323アミノ酸配列を配列番号95に示す。123アミノ酸長の成熟RAPのドメイン3のアミノ酸配列(アミノ酸201?323)を配列番号96に示す。アミノ酸243?313は配列番号97に示す。RAPのアミノ酸249?303は配列番号98に示す。」(下線は当審で付与した。以下同じ。)、と記載され、また、段落【0019】には、「本発明の環状RAPペプチドはネイティブのRAP配列を含んでよく、或いはネイティブの配列に対する変異を包含してよい。例示される実施形態においては、本発明の環状RAPペプチドは配列番号97または配列番号98の何れかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、環状RAPペプチドは約85アミノ酸長未満であり、配列番号98に少なくとも70%同一である50隣接アミノ酸を含み、そして約1x10-8M以下の結合親和性KdでCR含有蛋白に結合する。一部の実施形態においては、環状RAPペプチドは成熟RAPのアミノ酸200?319、300?319、または247?257から選択される領域の何れか1つの内部の1、2、3、4、5、または6以上の位置において変異を包含する。例示される実施形態においては、環状RAPペプチドは成熟RAP(配列番号95)の175、205、213、217、226、230、232、239、241、242、246、247、249、250、251、256、257、261、266、267、268、270、273、279、280、287、290、294、296、297、298、305、308、311、312、313、314、または315よりなる群から選択される1、2、3、4、5、または6以上の位置において変異を包含する。他の実施形態において、環状RAPペプチドは以下の位置、即ち:205、217、249、251、256、257、266、270、294、296、297、305の3つ以上において変異を含む。他の実施形態において、環状RAPペプチドは成熟RAPの251、256および270位において少なくとも1つの変異を含有する。」と記載されている。 また、段落【0021】?【0022】には、「別の実施形態においては、環状RAPペプチドはVLDLR蛋白に選択的に結合する。VLDLR特異的なペプチドは成熟RAP(配列番号95)のアミノ酸243?313または249?303を含んでよく、そして更に、RAPの251、256、270または296位の何れか1つにおいて変異を含有することを意図している。更に又、VLDLR特異的なRAPペプチドは成熟RAPの251、256、270および/または296位において少なくとも1、2、3、または4つの変異を含有することを意図している。 別の特徴において、環状RAPペプチドはFDC-8D6(CD320)蛋白に選択的に結合する。FDC-8D6特異的ペプチドは成熟RAP(配列番号95)のアミノ酸243?313または249?303を含んでよく、そして更に、RAPの251、256、270,279または305位の何れか1つにおいて変異を含有することを意図している。更に又、FDC-8D6特異的RAPペプチドは成熟RAPの251、256、270,279および/または305位において少なくとも1、2、3、4または5つの変異を含有することを意図している。」と記載されている。 一方、本願発明に係る環状RAPペプチドの製造に関連する本願明細書の実施例は、実施例1、3、4であり、実施例1ではその結果が、段落【0239】に「VLDLRCR78へのVRAP1d3の結合に関する見かけの解離定数は44±9nMであることが測定された。次に本発明者等はLRP1CR3-5、LRP2CR89、LRP2CR2728、LRP2CR3031、LRP2CR34-36、LRP2CR3536、VLDLRCR78、VLDLRCR6-8、LRP6CR1-3、LRP6CR12、LRP6CR23、MATCR12、MATCR23およびMATCR34を包含する14のCR対またはトリプレットへの、各々80nMの濃度における、RAPd3、MegaRAP1d3、VRAP1d3、MatRAP1d3およびMatRAP2d3の結合を比較した(図7)。前回と同様、RAPd3はLRP1CR3-5に結合するのみであった。MegaRAP1d3はLRP2CR89のみに結合した。VRAP1d3はCR78対を包含するトリプレットであるVLDLRCR78およびVLDLRCR6-8の両方に結合した。MatRAP1およびMatRAP2はMATCR12およびMATCR23の両方に結合したが、他のCR対にはその傾向は小さかった。」と記載されている。ここで、各CR含有蛋白に1x10^(-8)M以下の結合親和性Kdで結合した5つのペプチド、RAPd3、MegaRAP1d3、VRAP1d3、MatRAP1d3、及びMatRAP2dは、環状ではないが、表4及び図8によれば、いずれも249、251、256、257、266、270、280、296の位置に、2?5の変異を有するものであり、1?2個のCR含有蛋白に、1x10^(-8)M以下の結合親和性Kdで結合するものである。 さらに、実施例3では、LRP1又はVLDLRに結合する、実施例1のRAPd3からの2つの環状RAPペプチドを、実施例4では、LRP1に結合する別の2つの環状ペプチドである「E246C、L247G、L311G、S312C」、「F250C、L308G、Q309C」を製造している。 しかしながら、本願明細書にはこれら以外の、本願発明に包含される環状RAPペプチドを製造したことは記載されておらず、34個のCR含有蛋白のうちLRP1、LRP2、VLDLR、MATCR12、又はMATCR23の5つのいずれかに結合する、実施例1では5つ、実施例3、4では4つの、計9個の環状RAPペプチドを製造したことが、記載されているだけである。 (3)判断 本願明細書には、上記(2)に記載したとおり、本願発明に包含される環状RAPペプチドとして、5個までのアミノ酸変異を有する数個のペプチドしか製造しておらず、本願明細書には、「配列番号97のアミノ酸配列に少なくとも70%同一である50個の連続するアミノ酸を含み、85アミノ酸長以下である環状RAPペプチド」であれば、「1x10^(-8)M以下の結合親和性KdでCR含有蛋白に結合し、該CR含有蛋白は列挙された34個の群から選択される」ことの合理的な説明も記載されていない。 一方、受容体等に結合するペプチドは、その結合する領域の1?数個のアミノ酸を変異させただけでも、受容体との結合親和性が変化することが本願出願時の技術常識であり、そのことは、本願明細書の実施例11でも、RAPペプチドの1?5個のアミノ酸を変異させただけで、各CR含有蛋白との結合親和性が変化したことからもうかがえる。 そうすると、「配列番号97のアミノ酸配列に少なくとも70%同一である50個の連続するアミノ酸を含み、85アミノ酸長以下である環状RAPペプチド」であって、「1x10^(-8)M以下の結合親和性KdでCR含有蛋白に結合し、該CR含有蛋白は列挙された34個の群から選択される」という環状RAPペプチドを製造するためには、上記(2)の本願明細書の記載、及び、アミノ酸配列から各CR含有蛋白との結合親和性を予測できないという本願出願時の技術常識を考慮すると、本願明細書の段落【0019】に示唆された「246、247、249、250、251、256、257、261、266、267、268、270、273、279、280、287、290、294、296、297、298、305、308、311、312、313」のいずれかの位置に、1?15個(50個×30%)の変異を行い、列挙された34個のCR含有蛋白との結合親和性を調べるという、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を要することは明らかである。 したがって、本願の発明の詳細な説明には、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 4.むすび したがって、本願請求項1に記載の発明について、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-24 |
結審通知日 | 2015-04-27 |
審決日 | 2015-05-08 |
出願番号 | 特願2010-501126(P2010-501126) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(C07K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 戸来 幸男 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
中島 庸子 小堀 麻子 |
発明の名称 | 環状受容体関連蛋白ペプチド |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 飯田 貴敏 |