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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1320924
審判番号 不服2016-5718  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2016-11-15 
事件の表示 特願2013-219854号「赤色ランプ及び車両用灯火装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日出願公開、特開2015- 88220号、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月23日(国内優先権主張日:平成25年3月4日及び平成25年9月26日)の出願であって、平成27年8月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において同年28年7月12日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成28年9月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「光源として青色光を発光する青色LEDと、青色光が照射される赤色発光部材とを含み、該赤色発光部材が、ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含み、該複フッ化物蛍光体が、下記式(2)
K_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6) (2)
(式中、xは0.001以上0.3以下である。)
で表されるマンガンで賦活された複フッ化物塩であることを特徴とする赤色ランプ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物等
引用文献1: 特開2009-206064号公報
引用文献2: 特開2009-212508号公報

引用文献1(【0023】?【0037】、図1及び2)には、透光性樹脂に青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16を混入した赤色蛍光樹脂17を、テール&ストップランプ機能領域に用いた事項が記載されており、また、引用文献2(【0102】等)に記載された赤色蛍光体は、本願発明の複フッ化物蛍光体に相当する。
そして、引用文献1に記載された発明の赤色蛍光体16を、引用文献2に記載された発明の赤色蛍光体に置き換えることは、当業者にとって容易である。

2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物等の記載事項
ア 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【0023】
本発明は、赤色光を出射するテール&ストップランプ機能領域、橙色光を出射するターンシグナルランプ機能領域、及び白色光を出射するバックランプ機能領域の3つの機能領域を有するリアコンビネーションランプにおいて、各機能領域から出射される夫々異なる色調の光の光源を何れもLEDとし、且つLED光源をすべて同色のLEDで構成したものである。
【実施例1】
【0024】
図1は実施例1の構成を示す説明図である。本実施例は主に、光源となるLED1とLED1から出射された光を導入し、光源から出射した光とは異なる色調の光を出射する導光レンズ2を備えている。
【0025】
LED1は、青色光を出射する青色LED(例えば、InGaN系)である。
【0026】
導光レンズ2は、透光性部材からなる透光部3と遮光性部材からなる遮光部4を備えている。

【0029】
つまり、透光部3の底部6を共有の底面とし、透光部3の第1の壁部7、遮光部4の第4の壁部10、第5の壁部11、及び桟部12で囲まれた第1の凹部13と、透光部3の第2の壁部8、遮光部4の第4の壁部10、及び桟部12で囲まれた第2の凹部14と、透光部3の第3の壁部9、遮光部4の第5の壁部11、及び桟部12で囲まれた第3の凹部15が形成されている。

【0032】
第1の凹部13内には、透光性樹脂に青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16を混入した赤色蛍光樹脂17が充填されていると共に、透光性樹脂に対する赤色蛍光体16の濃度を第1の壁部7側から対向する桟部12側に向かって徐々に高くしている。

【0036】
上記構成の導光レンズ2に対し、第1の壁部7、第2の壁部8、及び第3の壁部9の外側に、光出射方向が夫々第1の凹部13、第2の凹部14、及び第3の凹部15となるように複数の青色LED1が配設されている。
【0037】
そこで、図2(実施例1の光学作用を示す説明図)に示すように、青色LED1から出射して第1の壁部7を透って第1の凹部13内に入射した青色光Lbは、主に直接赤色蛍光体16を励起する光と光反射膜22で反射されて反射光が赤色蛍光体16を励起する光とに分かれ、夫々赤色蛍光体16で励起されて波長変換された赤色光Lrが混合されて光出射面23から外部に出射される。赤色光Lrを出射するこの光出射面23がテール&ストップランプ機能領域26となる。」

(1b) 引用文献1の図1及び図2には、以下の図が示されている。


イ 引用文献2
引用文献2には、次の記載がある。
(2a) 「【0001】
本発明は、色純度の高い画像を実現するカラー画像表示装置に好適に用いられる半導体発光装置およびそれを用いたバックライトに関する。さらに本発明は、改良されたバックライトの発光波長に対応して、色純度の高い画像を実現するためのカラー画像表示装置に関する。」

(2b) 「【0077】
半導体発光装置が上述の赤領域、緑領域および青領域の各波長領域にそれぞれ1つ以上の発光の主成分を有するためには、緑色帯を発光する蛍光体(緑色蛍光体)、および赤色帯を発光する蛍光体(赤色蛍光体)を含む2種以上の蛍光体を組み合わせることが好ましい。これら各色蛍光体は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、等の透明なバインダに混合され、固体発光素子を覆って塗布されるのが好ましい。…
【0078】
固体発光素子は、封止材によって封止されることが好ましい。固体発光素子を封止材で封止する場合、蛍光体はこの封止材に含有されていてもよく、この封止材が上記のバインダを兼ねていてもよい。
【0079】
封止材の種類は特に限定されず、通常、固体発光素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料を用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。硬化性材料は、固体発光素子から発せられた光を蛍光体へ導く役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。

【0081】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0082】
これら硬化性材料の中では、特に、発光素子からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系化合物)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱適応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。」

(2c) 「【0102】 [2-1]赤色蛍光体
本発明の半導体発光装置において固体発光素子と組み合わせられる赤色蛍光体は、610?650nmの波長領域に1以上の、半値幅が10nm以下である発光ピークを有し、かつ後述する緑色蛍光体の発光波長領域に励起スペクトルを実質的に有しない、付活元素としてMn^(4+)を含む蛍光体である。また、赤色蛍光体は、610?650nmの波長領域に、半値幅が10nm以下である主発光ピークを有することが好ましい。…
【0106】 かかる特性を有する赤色蛍光体として、本発明では付活元素としてMn^(4+)を含む蛍光体を用いる。好ましくは、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素及びZnから選ばれる少なくとも1種類の元素、Si、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、Ga、及びInから選ばれる少なくとも1種類の元素、並びにハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種類を含有する蛍光体が挙げられる。さらに好ましくは、下記の一般式[r1]?[r8]で示される蛍光体が挙げられる。
【0107】
M^(I)_(2)[M^(IV)_(1-x)R_(x)F_(6)] ・・・[r1]

(前記一般式[r1]?[r8]において、M^(I)はLi、Na、K、Rb、Cs、およびNH_(4)からなる群より選ばれる1種以上の1価の基を表わし、…M^(IV)は周期律表第4族および第14族からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を表し、Rは、少なくともMnを含有する付活元素を表す。xは、0<x<1で表される範囲の数値である。)
【0108】 …xは、好ましくは0.004以上、より好ましくは0.010以上、特に好ましくは0.020以上、上限として好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.08以下、特に好ましくは0.06以下である。
【0109】
上記一般式[r1]?[r8]で表される化合物の好ましい具体例としては、…K_(2)[SiF_(6)]:Mn^(4+)、…を挙げることができる。
【0110】 中でも、赤色蛍光体は、…K_(2)[SiF_(6)]:Mn^(4+)がより好ましい。」

(2d) 「【0228】
半導体発光装置に封止材を用いる場合は、耐劣化性および耐熱性の観点から、封止材には前述したシリコーン系材料を用いることが好ましく、その中でも、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi-O-Si結合を架橋点に有する縮合型シリコーン系材料を用いるのがより好ましい。」

(2e) 「【0348】 [1-2]合成例2:赤色蛍光体 K_(2)SiF_(6):Mn(以下、「KSF」ともいう)
蛍光体の各原料の仕込み組成が、K_(2)Si_(0.9)Mn_(0.1)F_(6)となるように原料化合物として、K_(2)SiF_(6)(1.7783g)とK_(2)MnF_(6)(0.2217g)を大気圧、室温のもとで、フッ化水素酸(47.3重量%)70mlに攪拌しながらゆっくり添加して溶解させた。…」

(2f) 「【0368】
[2]バックライトの製造
本発明のバックライトの製造例を示す。
【0369】
[2-1]製造例1:バックライト1(BL-1)の製造
発光装置を以下の手順で作製する。
【0370】
発光ピーク波長が454nmの青色発光ダイオードをフレームのカップ底面にダイボンディングし、次に発光ダイオードとフレームの電極をワイヤーボンディングによって接続する。
【0371】
緑色帯を発光する蛍光体として、BSONを、赤色帯を発光する蛍光体としてKTFを用いる。これらを東レダウ社製シリコーン樹脂「JCR6101UP」に混練しペースト状としたものを、カップ内の発光ダイオードに塗布し、硬化させる。これにより半導体発光装置を得る。

【0381】
[2-5]製造例5:比較例用従来型バックライト5(BL-5)の製造
発光装置を以下の手順で作製する。
【0382】
発光ピーク波長が460nmの青色発光ダイオードをフレームのカップ底面にダイボンディングし、次に、発光ダイオードとフレームの電極をワイヤーボンディングによって接続する。黄色帯を発光する蛍光体として、特開2006-265542号公報の実施例1に記載の方法に準じて、Y_(2.8)Tb_(0.1)Ce_(0.1)Al_(5)O_(12)を合成し、これを用いる。これらをエポキシ樹脂に混練しペースト状としたものを、カップ内の発光ダイオードに塗布し、硬化させる。以降は製造例1と同様の方法を用いて比較例用従来型バックライト5を得る。

【0385】
一方、合成例8で得られた青色蛍光体(SCA)0.053gと、合成例6で得られた緑色蛍光体(GBAM)0.088gと、合成例2で得られた赤色蛍光体(KSF)0.304gと、バインダー樹脂として信越化学工業社製シリコーン樹脂(SCR1011)と、日本アエロジル社製アエロジル(RX200)とを表6に記載の配合量で秤量し、シンキー社製攪拌脱泡装置AR-100にて混合し、蛍光体含有組成物を得た。

【0387】
[2-7]製造例7:バックライト7(BL-7)の製造
蛍光体含有組成物が含有する蛍光体、シリコーン樹脂および乾式シリカの量を表6のように変更した以外は製造例6と同様にしてバックライト7(BL-7)を得た。
【0388】
[2-8]製造例8:バックライト8(BL-8)の製造
赤色蛍光体として、合成例3で得られた赤色蛍光体(CASN660)を用い、かつ、蛍光体含有組成物が含有する蛍光体、シリコーン樹脂および乾式シリカの量を表6のように変更した以外は製造例6と同様にしてバックライト8(BL-8)を得た。
【0389】
[2-9]製造例9:バックライト9(BL-9)の製造
蛍光体含有組成物が含有する蛍光体、シリコーン樹脂および乾式シリカの量を表6のように変更した以外は製造例8と同様にしてバックライト9(BL-9)を得た。」

3 引用文献に記載された発明
(1) 引用文献1には、
ア 赤色光を出射するテール&ストップランプ機能領域を有するリアコンビネーションランプにおいて(摘示(1a)【0023】)、
イ 光源となるLED1は、青色光を出射する青色LEDであること(摘示(1a)【0024】及び【0025】)、
ウ 導光レンズ2に対し、光出射方向が第1の凹部13となるように複数の青色LED1が配設されていること(摘示(1a)【0036】)、
エ 導光レンズ2の第1の凹部13内には、透光性樹脂に青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16を混入した赤色蛍光樹脂17が充填されていること(摘示(1a)【0026】及び【0032】)、
が記載されている。
オ また、摘示(1a)の【0037】、摘示(1b)の図2及び上記「イ」?「エ」より、赤色蛍光樹脂17は、青色LED1から出射される青色光が照射されるものであること、
が明らかである。

(2) これらのことから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「青色光を出射する青色LED1を光源とし、
導光レンズ2の第1の凹部13内に、青色LED1から出射される青色光が照射される赤色蛍光樹脂17が充填されており、
赤色蛍光樹脂17は、透光性樹脂に青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16を混入したものである、
赤色光を出射するテール&ストップランプ機能領域を有するリアコンビネーションランプ。」

4 対比・判断
(1) 本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「光源」は本願発明の「光源」に相当し、以下同様に、「青色光を出射する青色LED1」は「青色光を発光する青色LED」に、「青色LED1から出射される青色光が照射される赤色蛍光樹脂17」は「青色光が照射される赤色発光部材」に、「赤色光を出射するテール&ストップランプ機能領域を有するリアコンビネーションランプ」は「赤色ランプ」に相当する。

(ア) 引用発明1の「透光性樹脂」は、本願発明の「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」と「樹脂」の限度で一致する。
(イ) 引用発明1の「青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16」は、本願発明の「青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体」と「青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する蛍光体」の限度で一致する。
(ウ) 上記「(ア)」及び「(イ)」より、引用発明1の「赤色蛍光樹脂17は、透光性樹脂に青色光に励起されて赤色光に波長変換する赤色蛍光体16を混入したものである」ことは、本願発明の「赤色発光部材が、ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含」むことと、「赤色発光部材が、樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する蛍光体とを含」む限度で一致する。

(2) 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「光源として青色光を発光する青色LEDと、青色光が照射される赤色発光部材とを含み、該赤色発光部材が、樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する蛍光体とを含む、
赤色ランプ。」

[相違点1]
本願発明においては、赤色発光部材が「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を含むものであるのに対し、引用発明1では「透光性樹脂」の種類が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明においては、蛍光体が、式 「K_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6 )(式中、xは0.001以上0.3以下である。)」で表される「マンガンで賦活された複フッ化物塩」であるのに対し、引用発明1では蛍光体の種類や組成は特定されていない点。

(3) 判断
ア 事案に鑑み、相違点1について検討する。
(ア) 赤色発光部材を構成する樹脂として「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を用いることに関し、引用文献2には、半導体発光装置の固体発光素子の封止材に蛍光体を含有させるもの(摘示(2b)の【0077】?【0079】)において、封止材の材料の具体例の一つに「ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂」が記載されている(摘示(2b)【0081】)ものの、耐劣化性および耐熱性の観点等から、「シリコーン系材料が好ましい」(摘示(2b)【0082】、摘示(2d))と記載されており、その実施例及び比較例においてはシリコーン樹脂及びエポキシ樹脂のみが用いられている(摘示(2f))ことに鑑みれば、引用文献2に接した当業者は、蛍光体を含有させる樹脂として、シリコーン樹脂又はエポキシ樹脂を選択することは想起するかもしれないが、アクリル樹脂を選択する動機付けはないといえる。さらにいえば、引用文献2に記載されているのはカラー画像表示装置に用いる半導体発光装置(摘示(2a))の封止材の樹脂であるから、そこに用いられている樹脂を用途の異なる引用発明のリアコンビネーションランプに適用する動機付けも見当たらない。
(イ) そして、平成28年4月19日付けの物件提出書によって提出された実験成績証明書(以下、「実験成績証明書1」という。)及び平成28年9月6日付けの手続補足書によって提出された実験成績証明書(以下、「実験成績証明書2」という。)を参酌すれば、本願発明においては、「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を用いることによって赤色発光部材が「耐候性にも優れることから、車両用の部材として、特に好適なものとなる」(本願明細書【0019】)という効果を奏するものといえるから、「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を用いることが当業者が適宜なし得る設計変更である、ということもできない。

イ したがって、当該相違点1に係る、赤色発光部材を「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を含むものとすることは、引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。よって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 小括
本願の請求項2?11に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
[理由1]本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
[理由2]本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



(1) 理由1について
ア 請求項1の「該赤色発光部材が、熱可塑性樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含み」との記載に関し、本願において解決しようとする課題は、「車両用灯火装置」に用いるランプが、「光エネルギーの利用効率が低い」ことや「ランプの側方での視認性に劣る」ことであると認められる(【0008】?【0010】)。そして、「車両用灯火装置」はその性質上、風雨に曝される環境にあるために耐候性が要求されるものであるから、本願は、これら課題に加え、「一定程度の耐候性を有する」という課題をも解決しているものといえるところ、「ポリプロピレン」に関しては、本願明細書の【0062】?【0073】に「光エネルギーの利用効率が低い」ことや「ランプの側方での視認性に劣る」ことを解決することが、また、実験成績証明書1の結果によれば一定程度の耐候性を有するものであることが理解できる。一方、熱可塑性樹脂はその材料に応じて様々な性質を有することが技術常識であるところ、ポリプロピレン以外の「熱可塑性樹脂」についても、ポリプロピレンと同様に課題を解決できるものであるかは、発明の詳細な説明や当該実験成績証明書1等によっては不明である。
よって、請求項1に係る発明は、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない。

イ 請求項2の「ポリプロピレン」以外の熱可塑性樹脂については、上記「ア」と同様の理由で、請求項2に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない。

(2) 理由2について
刊行物等
引用文献A: 特開2011-204406号公報
引用文献B: 特開2008-21578号公報
引用文献C: 特開2009-212508号公報
(引用文献2と同じ文献)
引用文献D: 特開2009-238886号公報
引用文献E: 特開2009-206064号公報
(引用文献1と同じ文献)

引用文献A(【請求項9】?【請求項11】、【0007】、【0010】?【0011】、図1)には、「光源として青色発光ダイオードを利用し、光源によって励起され蛍光を放出する蛍光体と、蛍光体は蛍光物質を混合した樹脂であり、蛍光物質は青色光励起により赤色に発光するK2SiF6:Mn4+を含む、赤色に発光する自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプ」が記載されており、引用文献B(【0021】等)に記載された、蛍光体が混合されるランプカバー20を熱可塑性樹脂で形成する技術、及び、引用文献C(【0108】等)に記載された、赤色蛍光体としてのマンガンで賦活された複フッ化物塩であるK_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6)について、xを0.004以上0.3以下の値とする技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。

2 当審拒絶理由の判断(理由1について)
(1) 平成28年9月6日付け手続補正書において、本願の請求項1は上記「第2」のとおり補正され、上記「1(1)ア」の当該記載は、「該赤色発光部材が、ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含み」と補正された。そして、実験成績証明書1及び実験成績証明書2を参酌すれば、ポリプロピレン及びアクリル樹脂については上記「1(1)ア」に記載した課題を解決できるものといえるから、請求項1に係る発明は、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができない、とはいえなくなった。
よって、上記「1(1)ア」の拒絶理由は解消した。

(2) 平成28年9月6日付け手続補正書において、補正前の請求項2は削除されたから、上記「1(1)イ」の拒絶理由は解消した。

(3) よって当審拒絶理由における理由1は解消した。

3 当審拒絶理由の判断(理由2について)
(1) 刊行物等の記載事項
引用文献Aには、次の記載がある。
(Aa) 「【特許請求の範囲】
【請求項9】 光源として青色発光ダイオードを利用し、当該光源の光を赤色に変換する蛍光体によって自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプを形成することを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項10】 前記蛍光体は、前記光源によって励起され蛍光を放出する蛍光物質を混合した材料によって形成されるか、当該蛍光物質が塗布されるか、当該蛍光物質を含有するフィルムを貼り付けられるか、いずれか一つの方法によって形成されていることを特徴とする請求項9記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項11】 前記蛍光物質はサイアロン蛍光体またはアルカリケイ酸系化合物またはK2SiF6:Mn4+のいずれかを含むものである請求項10記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。」

(Ab) 「【0007】 …すなわち図1に示すように、基板101上の発光ダイオード102の前面(照明対象側)に蛍光拡散体103を配置するのである。蛍光拡散体103は、発光ダイオード102からの励起光を受けてその補色に発光する。例えば発光ダイオード102が青色であれば、黄色に発光する蛍光体となっている。その製作方法としては、蛍光拡散体103の材料(主に樹脂)に直接蛍光物質を混合させる他、蛍光拡散板103の内面(光源側)に蛍光物質を塗布する、蛍光物質を混合させたフィルムを蛍光拡散板103に貼り付ける、といった方法を選択することができる。…青色発光ダイオードにより励起される緑色蛍光体、赤色蛍光体としては、…、MnおよびKを含有する物質(K2SiF6:Mn4+が一例)等を挙げることができる。」

(Ac) 「【0010】 本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明は、図1を用いて説明したように、青色発光ダイオードと黄色の蛍光拡散体を組み合わせることで、高効率かつ高均一な白色照明を実現することが第一の特徴となっているが、照明色や構造をさまざまに変えることにより、さらに多くの用途を生み出すことができる。
【実施例1】
【0011】 最近の発光ダイオードの普及により、自動車のテイルランプやブレーキランプも発光ダイオード化が進行している。しかしながら現在のところ、白色発光ダイオードに赤色の樹脂カバーを被せることで赤色を実現しており、赤色変換効率が低いだけでなく指向性が解消されないため、後方のドライバーにとってはまぶしいという問題がある。本発明では、光源として青色発光ダイオードを利用し、前述したような青色光励起により赤色に発光する蛍光物質を混合させるか、内面に塗布するか、当該蛍光物質を含むフィルムを内面に貼り付けた材料によって、テイルランプおよび/またはブレーキランプを形成させることにより、赤色変換効率が高く、指向性も有さない安全な自動車用ランプを実現させることができる。なお、この場合は発光ダイオードからの青色成分は不要であるため、青色成分を吸収する物質を材料に混合させるか、内面に塗布するか、貼り付けるフィルムに含ませることが好ましい。このように、白色照明用途に限らず、目的に応じて本発明を利用することができるのである。」

(Ad) 「【符号の説明】
【0017】
101 基板
102 発光ダイオード
103 蛍光拡散体
104 照明対象物
…」

(Ae) 引用文献Aの図1には、以下の図が示されている。


(3) 引用文献Aに記載された発明
ア 引用文献Aには、
(ア) 光源として青色発光ダイオードを利用し、当該光源の光を赤色に変換する蛍光体によって自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプを形成することを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明であって(摘示(Aa)【請求項9】)、
(イ)
a 蛍光体は、前記光源によって励起され蛍光を放出するものであって、蛍光物質を混合した材料によって形成されること(摘示(Aa)【請求項10】)、
b 蛍光拡散体103の材料は樹脂であること(摘示(Ab))、
c 蛍光拡散体103は蛍光体をなすものであること(摘示(Ab)の「蛍光拡散体103は、…。…蛍光体となっている。」との記載参照)、
(ウ) 蛍光物質はK2SiF6:Mn4+を含むものであって(摘示(Aa)【請求項11】)、青色光励起により赤色に発光するものであること(摘示(Ac)【0011】)、
(エ) 自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプは、赤色に発光するものであること(摘示(Ac)【0011】)、
が記載されている。

イ これらのことから、引用文献Aには次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「光源として青色発光ダイオードを利用し、
光源によって励起され蛍光を放出する蛍光体と、
蛍光体は蛍光物質を混合した樹脂であり、蛍光物質は青色光励起により赤色に発光するK2SiF6:Mn4+を含む、
赤色に発光する自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプ」

(4) 対比・判断
ア 本願発明と引用発明Aとを対比する。
(ア) 引用発明Aの「青色発光ダイオードを利用」する「光源」は、本願発明の「光源として青色光を発光する青色LED」に相当する。
(イ) 引用発明Aの「蛍光体」は、「青色光励起により赤色に発光するK2SiF6:Mn4+」を「蛍光物質」として「混合」されたものであって、光源からの青色光により赤色に発光する部材であるから、本願発明の「青色光が照射される赤色発光部材」に相当する。
(ウ)
a 引用発明Aの「樹脂」は、本願発明の「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」と「樹脂」の限度で一致する。
b 引用発明Aの「K2SiF6:Mn4+」は、通常の化学式の表記方法における「K_(2)SiF_(6):Mn^(4+)」であって、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物塩の蛍光体であることは技術常識から明らかである。
c そうすると、引用発明Aの「蛍光体は蛍光物質を混合した樹脂であり、蛍光物質は青色光励起により赤色に発光するK2SiF6:Mn4+を含む」ことは、本願発明の「赤色発光部材が、ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含」むことと、「赤色発光部材が、樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含」む限度で一致する。
(エ)
a 引用発明Aの「K2SiF6:Mn4+」に関し、「:Mn4+」との表記が「マンガンで賦活」されていることを意味することは技術常識に照らして明らかである。
b 引用発明Aの「K2SiF6:Mn4+」はマンガンの賦活の割合は不明である。
c 蛍光材料において、賦活の割合を変数の「_(x)」や「_(1-x)」等の記号を用いて表記することは通常行われる表現方法である。
d 上記「a」?「c」及び「(ウ)b」より、引用発明Aの「K2SiF6:Mn4+」は、本願発明の「複フッ化物蛍光体が、下記式(2) K_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6) (2) (式中、xは0.001以上0.3以下である。)で表されるマンガンで賦活された複フッ化物塩」と、「複フッ化物蛍光体が、下記式(2) K_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6) (2) で表されるマンガンで賦活された複フッ化物塩」である限度で一致するといえる。
(オ) 引用発明Aの「赤色に発光する自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプ」は本願発明の「赤色ランプ」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「光源として青色光を発光する青色LEDと、青色光が照射される赤色発光部材とを含み、該赤色発光部材が、樹脂と、青色光を吸収して赤色成分を含む光を発する複フッ化物蛍光体とを含み、該複フッ化物蛍光体が、下記式(2)
K_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6) (2)
で表されるマンガンで賦活された複フッ化物塩である赤色ランプ。」

[相違点A]
本願発明においては、赤色発光部材が「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を含むものであるのに対し、引用発明Aでは「樹脂」の種類が特定されていない点。
[相違点B]
本願発明においては、複フッ化物蛍光体であるK_(2)(Si_(1-x)Mn_(x))F_(6)は、「xは0.001以上0.3以下である」のに対し、引用発明Aにおいてはxの値が特定されていない点。

ウ 事案に鑑み、相違点Aについて検討する。
赤色発光部材を構成する樹脂として「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を用いることは、引用発明A及び引用文献B、D?Eのいずれにも記載されていないものであって、上記「第3 4(3)ア」で述べたのと同様に、引用文献Cに記載のアクリル樹脂を適用することの動機付けもなく、また、当業者が適宜なし得る設計変更である、ということもできない。

エ したがって、当該相違点Aに係る、赤色発光部材を「ポリプロピレン及びアクリル樹脂から選ばれる1種類以上の熱可塑性樹脂」を含むものとすることは、引用発明A及び引用文献B?Eの記載事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。よって、相違点Bについて判断するまでもなく、本願発明は、当業者が引用発明A及び引用文献B?Eの記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明A及び引用文献B?Eの記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2?11に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明A及び引用文献B?Eの記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2013-219854(P2013-219854)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F21S)
P 1 8・ 121- WY (F21S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 平田 信勝
小原 一郎
発明の名称 赤色ランプ及び車両用灯火装置  
代理人 重松 沙織  
代理人 石川 武史  
代理人 正木 克彦  
代理人 小林 克成  
代理人 小島 隆司  
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