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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 A61B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1321039 |
審判番号 | 不服2015-11949 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-24 |
確定日 | 2016-11-22 |
事件の表示 | 特願2012-194657「有効なセンサ対組織接触を持つ組織特性化プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 31668、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年8月6日(パリ条約による優先権主張 2005年8月4日 米国(US)、2006年2月9日 米国(US))を国際出願日とする出願である特願2008-524676号の一部を平成24年9月5日に新たな特許出願としたものであって、平成26年2月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。 これに対して、同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、当審において平成28年4月14日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して、同年10月6日に意見書及び手続補正書が提出された。 第2 本願発明 本願の請求項1?13に係る発明は、平成28年10月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 構造体と、 組織を実質的に不動化するように組織を構造体に固定するために、第1の力を組織に加えるように構成された、構造体に随伴する第1機構と、 不動化された組織の外面に対してセンサを押圧し、それによって不動化された組織に第2の力を加えるように構成された、構造物に随伴する第2機構と を備え、 第1の力の少なくとも1成分が第2の力の少なくとも1成分に対して逆向きであり、不動化された組織をセンサに押し付け、かつセンサを不動化された組織に押し付けて、センサと不動化された組織との間に有効な接触をもたらすようにした 異常組織の検出のための組織特性化のための装置であって、 第1機構は、組織を吸引によって固定しかつ実質的に不動化するための吸引源であるか、または第1機構は組織を把持するための把持装置であり、 第2機構は、遠位方向および近位方向に摺動するように構成されかつセンサを近位端に含む少なくとも1つのピストンであり、 センサは、光学センサ、超音波センサ、インピーダンスセンサ、温度センサ、および無放射RFセンサから成る群から選択される、装置。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:国際公開第2003/007819号 引用文献1には、分析用センサ4を備えた穿刺装置であること、ポンプ26を駆動し筒状体8内を負圧とし、皮膚Sを隆起させ、センサホルダ7上の分析用センサ4の面43aに密着させること、センサホルダ7が筒状体8内にバネ74を介して吊り下げられており、皮膚Sが隆起する力とバネ74の抵抗力が釣り合う位置で静止すること、が記載されている。ここで、バネ74による力が、ポンプ26による力と逆向きで、皮膚Sに対して押しつける力であることは明らかである。 よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものである。 2 原査定の理由の判断 (1)引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 ア 引用文献1の記載事項 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、参考のために当審が付与した。)。 (ア)「本発明は、血液などの試料を人体の皮膚から採取し、この試料の分析を行なうのに用いられる穿刺装置に関する。」(明細書第1頁第6行?第7行) (イ)「図1?図7は、本発明の一実施形態を表わしている。図1によく表われているように、本実施形態の穿刺装置Aは、ハウジング2、このハウジング2の一部分を取り囲む筐体39、画像表示用の表示部21、および操作用スイッチ22,23を有している。表示部21は、たとえば液晶表示器あるいはLED表示器により構成されている。筐体39内には、後述する制御部9も設けられている。 ハウジング2は、その下端先端部が筒状体20として形成されており、この筒状体20にハウジング2とは別体に形成された筒状体8が嵌合して取り付けられている。本実施形態の穿刺装置Aは、この筒状体8の先端部8aを穿刺対象となる皮膚に押しつけて使用するものである。 図2によく表われているように、この筒状体8は、ハウジング2の内壁のフランジ24に対してバネ83を介して支持されており、バネ83を伸縮させながら筒状体20に対してその軸長方向にスライド可能である。この筒状体8は、その先端部が皮膚に押し当てられていない通常時においては、その先端部8a寄りの一部分がハウジング2の筒状体20よりも下方へ突出している。フランジ24には、バネ83の弾発力の大きさを測定するための圧力センサ25が取り付けられており、この測定値のデータは制御部9に入力されるように構成されている。 この穿刺装置Aは、穿刺体3、分析用部品としての分析用センサ4、この分析用センサ4を保持するホルダ7、ポンプ26、および開放弁28をさらに備えている。 穿刺体3および分析用センサ4は、一回使用されると、他の新しいものと交換されるものであり、穿刺装置Aの所定部位に着脱されるものである。ただし、本発明においては、そのような交換部品も穿刺装置の構成要素としている。 穿刺体3は、合成樹脂製の本体ボディ3bの下面から金属製の針3aが突出した形態を有している。この穿刺体3は、ハウジング2内に設けられた穿刺体ホルダ31に取り外し可能に装着されている。穿刺体ホルダ31は、後述する穿刺体駆動機構93の駆動によって筒状体8の軸長方向(図2の上下方向)に往復動自在であり、ハウジング2内の奥部(図2の上寄り部分)から筒状体8の先端開口部に向けて下降前進と上記奥部への後退復帰とが可能である。筒状体8の上部には、穿刺体3の通過を許容する開口部80が形成されている。 ポンプ26は、電動式のものであり、接続管29を介してハウジング2に接続されている。このポンプ26は、ハウジング2内の空気を外部に排出することにより、ハウジング2の筒状体20内および筒状体8内に負圧を発生可能である。このポンプ26は、後述するように制御部9によって制御される。このポンプ26は、ハウジング2の外部に取り外し可能に取り付けられていてもよいし、筐体3内に設けられていてもよい。接続管29内には、圧力センサ27が設けられており、この圧力センサ27によって測定された圧力値のデータは、制御部9に入力されるようになっている。 開放弁28は、たとえば電磁弁であり、ハウジング2の内部と外部とを連通させる開動作と遮断する閉動作とが可能である。ハウジング2の内部が負圧状態にあるときに上記開動作がなされると、ハウジング2の内部を大気圧に戻すことが可能である。 分析用センサ4は、図4?図7に表わすように、たとえば略半円形のチップ状であり、基板40と、一対のスペーサ41と、カバー板42と、粘着性シート43とが積層された構成を有している。基板40上には、血液中のグルコースと一定の反応(たとえば酸化反応)を生じる酵素を含有する試薬44と、その反応度合いを電気的に検出するための一対の電極45とが設けられている。一対のスペーサ41およびカバー板42は、基板40上に血液の通路となるキャピラリ46を形成するための部材であり、一対のスペーサ41がそれらの間に隙間を形成するようにして基板40上に並べて搭載されているとともに、それらの隙間の上方がカバー板42によって覆われていることにより、キャピラリ46が形成されている。 基板40、粘着性シート43、および一対のスペーサ41には、切り欠きまたは面取りが施されていることにより、凹状の試料導入部47が形成されている。この試料導入部47に血液が付着すると、この血液は毛細管現象によりキャピラリ46内を進行し、試薬44のうちの一対の電極45に挟まれている部分に導かれるようになっている。図6によく表われているように、カバー板42の下向き面のうち、試料導入部47を規定する部分には、吸湿性材料49が塗布または貼り付けされており、親水処理が施されている。吸湿性材料49としては、たとえばビニロンを用いることができる。このような親水処理を施しておけば、試料導入部47に付着した血液を、キャピラリ46内にスムーズに導くのに好適となる。吸湿性材料49は、上記以外の箇所に塗布されていてもかまわない。 一対のスペーサ41およびカバー板42には、一対ずつの孔41a,42aが繋がって形成されている。これらの孔41a,42aは、後述するように、一対の測定プローブ75を挿通させて一対の電極45に接触させるためのものである。試薬44と血液とが接触すると、たとえば血液中のグルコースが酸化反応により酸化され、この反応における電子により試薬44中の電子伝達物質が還元される。還元される電子伝達物質の割合は、血液中におけるグルコースの割合、すなわちグルコース濃度に対応し、このグルコース濃度と一対の電極45間に流れる電流の値とは互いに対応する関係にある。したがって、この電流の値から血液中のグルコース濃度を求めることができる。」(明細書第6頁第17行?第9頁第8行) (ウ)「図3によく表われているように、センサホルダ7は、分析用センサ4を接着させるなどして取り付けるための取付面73を有するものであり、この取付面73は下向きの傾斜状である。このセンサホルダ7は、図2によく表われているように、筒状体8内にバネ74を介して吊り下げ支持されている。したがって、このセンサホルダ7は、バネ74を伸縮させながら筒状体8の軸長方向に往復動可能である。取付面73が傾斜していることにより、分析用センサ4も傾斜しており、この分析用センサ4の皮膚接触用の面43aは、筒状体8の奥部(図2の上方)になるほど筒状体8の中心軸寄りとなるように傾斜している。分析用センサ4は、試料導入部47が筒状体8の中心軸に接近するようにしてセンサホルダ7に取り付けられている。」(第9頁第18行?第28行) (エ)「次いで、ユーザによって筐体2の操作スイッチ22が操作されると(ステップS4:YES)、制御部9はポンプ26を駆動させる(ステップS5)。このことにより、筒状体8内が負圧となる。すると、皮膚Sは、図14に表われているように隆起し、分析用センサ4の皮膚接触用の面43aに接触する。この面43aは、傾斜しているために、皮膚Sの山形状に隆起した部分の傾斜した表面に密着する。また、面43aが粘着性シート43の粘着面であるために、このことによっても皮膚Sに対する密着性が高められる。このように、分析用センサ4が皮膚Sに密着すれば、分析用センサ4と皮膚Sとの間に大きな隙間が生じないようにすることができるために、血液が上記隙間内に不当に導かれないようにすることが可能となる。 制御部9は、圧力センサ27による測定圧力値を監視しており、測定圧力値が予め定められた一定値に達したか否かを判断する(ステップS6)。制御部9は、上記測定圧力値が上記一定値に達していないと判断した場合(ステップS6:NO)には、ポンプ26の駆動を維持し、筒状体8内をさらに減圧させる。これにより、皮膚Sがさらに隆起して分析用センサ4を上方に押圧する。すると、分析用センサ4はバネ74を圧縮させながら上昇する。分析用センサ4は、皮膚Sが隆起する力とバネ74の抵抗力とが釣り合う位置で静止する。」(第11頁第13行?第12頁第2行) (オ) FIG.2には、以下の図面が示されている。 (カ) FIG.14には、以下の図面が示されている。 イ 引用文献1に記載された発明の認定 引用文献1の上記ア(ア)?(カ)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「穿刺装置であって、 ハウジング2、このハウジング2の一部分を取り囲む筐体39、画像表示用の表示部21、および操作用スイッチ22,23を有し、筐体39内には、制御部9も設けられており、ハウジング2は、その下端先端部が筒状体20として形成されており、この筒状体20にハウジング2とは別体に形成された筒状体8が嵌合して取り付けられており、 該穿刺装置は、この筒状体8の先端部8aを穿刺対象となる皮膚に押しつけて使用するものであり、この筒状体8は、ハウジング2の内壁のフランジ24に対してバネ83を介して支持されており、バネ83を伸縮させながら筒状体20に対してその軸長方向にスライド可能であり、 該穿刺装置は、穿刺体3、分析用部品としての分析用センサ4、この分析用センサ4を保持するホルダ7、ポンプ26、および開放弁28をさらに備えており、このポンプ26は、ハウジング2内の空気を外部に排出することにより、ハウジング2の筒状体20内および筒状体8内に負圧を発生可能であり、 上記分析用センサ4は、略半円形のチップ状であり、基板40と、一対のスペーサ41と、カバー板42と、粘着性シート43とが積層された構成を有し、基板40上には、血液中のグルコースと一定の反応を生じる酵素を含有する試薬44と、その反応度合いを電気的に検出するための一対の電極45とが設けられており、電流の値から血液中のグルコース濃度を求めるものであり、また、分析用センサ4は、試料導入部47が筒状体8の中心軸に接近するようにしてセンサホルダ7に取り付けられており、 ユーザによって筐体2の操作スイッチ22が操作されると、制御部9はポンプ26を駆動させ、筒状体8内が負圧となり、皮膚Sは、隆起し、分析用センサ4の皮膚接触用の面43aに接触し、分析用センサ4が皮膚Sに密着し、分析用センサ4はバネ74を圧縮させながら上昇し、分析用センサ4は、皮膚Sが隆起する力とバネ74の抵抗力とが釣り合う位置で静止する、 穿刺装置。」 (2)本願発明と引用発明との対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「筒状体20」及び「筒状体8」からなる構造は、本願発明の「構造体」に相当する。 (イ)引用発明の「皮膚」は、本願発明の「組織」に相当する。そして、引用発明は、「制御部9はポンプ26を駆動させ、筒状体8内が負圧となり、皮膚Sは隆起し、分析用センサ4の皮膚接触用の面43aに接触し、分析用センサ4が皮膚Sに密着」するものであり、この「ポンプ26」による「負圧」で「皮膚」を「隆起」させる力が、本願発明の「第1の力」に相当し、引用発明の筒状体8内に「負圧」を発生させる「ポンプ26」を含む機構が、本願発明の「構造体に随伴する第1機構」に相当する。 したがって、引用発明の、「皮膚」を「隆起」させるように「負圧」を発生させる「ポンプ26」を含む機構と、本願発明の「組織を実質的に不動化するように組織を構造体に固定するために、第1の力を組織に加えるように構成された、構造体に随伴する第1機構」とは、「第1の力を組織に加えるように構成された、構造体に随伴する第1機構」という点で共通する。 (ウ)引用発明の「分析用センサ4」は、本願発明の「センサ」に相当する。そして、引用発明は、「分析用センサ4」が「皮膚Sが隆起する力とバネ74の抵抗力とが釣り合う位置で静止する」ものであって、当該「バネ74」は、上記(1)ア(オ)より、「センサホルダ7」及び「筒状体8」に支持されるものであることが明らかである。そして、引用発明の当該「バネ74」、「センサホルダ7」を含む機構によって、「分析用センサ4」を「皮膚S」に押し付ける力が、本願発明の「第2の力」に相当し、引用発明の「皮膚」に「分析用センサ4」を押し付ける「バネ74」、「センサホルダ7」を含む機構と、本願発明の「不動化された組織の外面に対してセンサを押圧し、それによって不動化された組織に第2の力を加えるように構成された、構造物に随伴する第2機構」とは、「組織の外面に対してセンサを押圧し、それによって組織に第2の力を加えるように構成された、構造物に随伴する第2機構」という点で共通する。 (エ)引用発明の「ポンプ26」による「負圧」で「皮膚」を「隆起」させる力の向きと、「バネ74」による力の向きが逆向きとなることは、引用発明が「皮膚Sが隆起する力とバネ74の抵抗力とが釣り合う」ものであることから、明らかである。 したがって、引用発明の「ポンプ26」による「負圧」で「皮膚」を「隆起」させる力と「バネ74」による力とで、「皮膚」を「分析用センサ4」に「密着」させることと、本願発明の「第1の力の少なくとも1成分が第2の力の少なくとも1成分に対して逆向きであり、不動化された組織をセンサに押し付け、かつセンサを不動化された組織に押し付けて、センサと不動化された組織との間に有効な接触をもたらすように」することとは、「第1の力の少なくとも1成分が第2の力の少なくとも1成分に対して逆向きであり、組織をセンサに押し付け、かつセンサを組織に押し付けて、センサと組織との間に有効な接触をもたらすように」する点で共通する。 (オ)引用発明の「穿刺装置」は、「分析用センサ4」によって「血液中のグルコース濃度」という血液の特性を求めるものであるから、引用発明の当該「穿刺装置」と、本願発明の「異常組織の検出のための組織特性化のための装置」とは、「特性化のための装置」という点で共通する。 (カ)引用発明の「ポンプ26」は、「負圧を発生」させ、「皮膚」を「隆起」させるものであるから、本願発明の「吸引源」に相当する。 したがって、引用発明の当該「ポンプ26」を含む機構と、本願発明の「第1機構は、組織を吸引によって固定しかつ実質的に不動化するための吸引源であるか、または第1機構は組織を把持するための把持装置であ」ることとは、「第1機構は、組織を吸引するための吸引源」である点で共通する。 (キ)上記(1)ア(オ)より、引用発明の「バネ74」と「センサホルダ7」を含む機構は、「筒状体8」内で「皮膚」に対して「センサホルダ7」が遠位方向および近位方向に摺動するものであり、「分析用センサ4」は「センサホルダ7」の近位端に配置されるものであることが明らかであるから、引用発明の当該「バネ74」、「センサホルダ7」を含む機構は、本願発明の「第2機構は、遠位方向および近位方向に摺動するように構成されかつセンサを近位端に含む少なくとも1つのピストン」であることに相当する。 (ク)したがって、本願発明と引用発明とは、 (一致点) 「構造体と、 第1の力を組織に加えるように構成された、構造体に随伴する第1機構と、 組織の外面に対してセンサを押圧し、それによって組織に第2の力を加えるように構成された、構造物に随伴する第2機構と を備え、 第1の力の少なくとも1成分が第2の力の少なくとも1成分に対して逆向きであり、組織をセンサに押し付け、かつセンサを組織に押し付けて、センサと組織との間に有効な接触をもたらすようにした 特性化のための装置であって、 第1機構は、組織を吸引するための吸引源であり、 第2機構は、遠位方向および近位方向に摺動するように構成されかつセンサを近位端に含む少なくとも1つのピストンである、 装置。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「第1機構」について、本願発明は、組織を「固定しかつ実質的に不動化する」ためのものであるか、または「組織を把持するための把持装置」であって、「組織を実質的に不動化するように組織を構造体に固定」するものであるのに対して、引用発明は、「穿刺装置」であるため、組織を固定し実質的に不動化するものではなく、皮膚を「隆起」させるものである点。 (相違点2) 「第2機構」及び「センサを組織に押し付けて、センサと組織との間に有効な接触をもたらす」ことについて、本願発明は、「不動化された組織」の外面に対してセンサを押圧するものであるのに対して、引用発明は、「ポンプ26」(第1機構)により「隆起」させられた「皮膚」が「分析用センサ4」及び「センサホルダ7」を上昇させることにより、「皮膚」に「分析用センサ4」を「密着」させるものである点。 (相違点3) 「特性化のための装置」及び「センサ」について、本願発明は、「異常組織の検出のための組織特性化」のための装置であって、センサは、「光学センサ、超音波センサ、インピーダンスセンサ、温度センサ、および無放射RFセンサから成る群から選択される」ものであるのに対して、引用発明は、「血液中のグルコース濃度」を求めるための装置であって、センサは、「血液中のグルコースと一定の反応を生じる酵素を含有する試薬44」を有し、「反応度合いを電気的に検出する」ものである点。 イ 判断 上記(相違点1)?(相違点3)をまとめて検討する。 引用発明は、穿刺のために皮膚を「隆起」させ、「隆起」した皮膚をセンサに押し付け、穿刺を行い、皮膚下の血液を取り出してグルコース濃度を求めるものであって、皮膚自体に「隆起」という動きを与えるものであるから、引用発明において、皮膚自体を不動化するよう固定し、当該皮膚の異常をセンサで検出するという動機付けがあるとはいえない。 したがって、引用発明において、上記(相違点1)?(相違点3)に関する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 よって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 エ また、本願の請求項6、8、13に係る発明も、本願発明と同様に、組織を「固定しかつ実質的に不動化する」ためのもの、または「組織を把持するための把持装置」によって、「組織を実質的に不動化するように組織を構造体に固定」し、「センサ」を「不動化された組織」に「押し付け」、「異常組織の検出」を行うものであるから、本願の請求項6、8、13に係る発明と引用発明とは、少なくとも上記(相違点1)?(相違点3)と同じ相違点を有する。そして、当該(相違点1)?(相違点3)についての判断は、上記イで検討したとおりである。 したがって、本願の請求項6、8、13に係る発明は、その余の相違点について検討するまでもなく、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本願発明及び本願の請求項6、8、13に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願の請求項2?5、9?11に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、本願の請求項7に係る発明は、本願の請求項6に係る発明をさらに限定したものであり、本願の請求項12に係る発明は、本願の請求項8に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明及び本願の請求項6、8、13に係る発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 (1) 拒絶の理由1について この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1に係る発明は、「吸引源」または「把持装置」を備えた「第1機構」を用いて、組織を実質的に「不動化」する「装置」を、特別な技術的特徴とするものである。 そして、方法発明である請求項10及び11に係る発明は、請求項1に係る発明である装置を使用する方法であるとも、当該装置を取り扱う方法であるとも認められないから、請求項1に係る発明と特定の関係があるとはいえない。 よって、請求項10及び11に係る発明は、上記技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を含むものではない。 したがって、請求項1に係る発明と請求項10及び11に係る発明は、発明の単一性の要件を満たしていない。 (2) 拒絶の理由2について この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1,6,8,16には、「センサは、光学センサ、X線センサ、RFセンサ、MWセンサ、赤外線サーモグラフィセンサ、超音波センサ、MRセンサ、インピーダンスセンサ、温度センサ、放射線放出センサ、無放射RFセンサ、および機械的センサから成る群から選択される」と記載されている。 ここで、「光学センサ」、「超音波センサ」、「インピーダンスセンサ」及び「温度センサ」については、センサが組織表面に密着することで測定精度が高まることが理解できるものの、「X線センサ」、「RFセンサ」、「MWセンサ」、「赤外線サーモグラフィセンサ」、「MRセンサ」、「放射線放出センサ」及び「無放射RFセンサ」は、通常は被検体から離して使用されるものであることが技術常識であるから、これらのセンサを具体的にどのように使用し、どのように組織の測定を行うことになるのか、技術的な点で不明確である。発明の詳細な説明を参酌しても、これらセンサを具体的にどのように組織表面に密着して使用し、どのように組織の測定を行うことになるのかが、十分に開示されていない。 請求項1,6,8,16に従属する他の請求項も同様である。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし9,12ないし16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 (3) 拒絶の理由3について この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1 請求項1,3,8,14において、「近端」との記載が不明瞭である。 2 請求項1において、「MWセンサ」との記載があるが、「MWセンサ」がいかなるセンサを意図しているのか、発明の詳細な説明を参酌しても、なお不明である。 3 請求項1において、「RFセンサ」と「無放射RFセンサ」がどのように異なるセンサを意図しているのか、発明の詳細な説明を参酌しても、なお不明である。 4 請求項9において、「第1方向に湾曲を持つ表面を画定し、8cm未満の有効直径を有する要素と、湾曲に沿って配設され、各々が組織の体積への視野角を画定し、体積の三次元における情報を得るためにそれらの視野角の一部分を共有する少なくとも2つのセンサとを含む、請求項1に記載の装置。」との記載があるが、この記載で特定しようとする技術的事項が、請求項1で特定された装置とどのように関連しているのか、技術的に意味不明である。 5 請求項12において、「…前記第2機構によって押圧される前記センサはピストンセンサである、請求項1または9に記載の装置。」と記載されているが、ピストンがセンサを含むことは、請求項1で既に特定されているから、この記載でどのような技術的事項を限定したいのかが、不明である。 6 請求項14において、「組織に対する近端を画定する筐体と、請求項12に記載の装置であって、筐体内に配置されかつ信号解析器と少なくとも1つのピストンセンサとの間の通信を提供するように構成された信号通信アーキテクチャをさらに含む装置とを備えた異常組織の検出のための組織特性化プローブ。」と記載されているが、「装置」と「プローブ」の構造上の関係性が不明確である。 7 上記1ないし6で指摘した請求項を引用する請求項に係る発明についても、同様に明確でない。 したがって、請求項1?9、12?16に係る発明は明確でない。 2 当審拒絶理由の判断 (1) 上記1(1)の拒絶理由について 平成28年10月6日に提出された手続補正書によって、補正前の請求項10及び11は削除された。 したがって、この出願は、発明の単一性の要件を満たすこととなった。 (2) 上記1(2)の拒絶理由について 平成28年10月6日に提出された手続補正書によって、「X線センサ」、「RFセンサ」、「MWセンサ」、「赤外線サーモグラフィセンサ」、「MRセンサ」、「放射線放出センサ」は削除され、「無放射RFセンサ」については、同日付の意見書において、組織表面に密着して使用するものであることの釈明がなされた。 したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?13に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとなった。 (3) 上記1(3)の拒絶理由について 平成28年10月6日に提出された手続補正書によって、請求項1、3、8、11(補正前の請求項1、3、8、14)において、「近端」との記載が「近位端」に補正され、請求項1、6、8、13(補正前の請求項1、6、8、16)において、「MWセンサ」及び「RFセンサ」との記載が削除され、補正前の請求項9が削除され、請求項9(補正前の請求項12)において、「前記第2機構によって押圧される前記センサはピストンセンサである」との記載が削除され、請求項11(補正前の請求項14)において、「装置」と「プローブ」の構造上の関係性が特定された。 したがって、請求項1?13に係る発明は、明確となった。 (4) よって、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-10 |
出願番号 | 特願2012-194657(P2012-194657) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B) P 1 8・ 536- WY (A61B) P 1 8・ 65- WY (A61B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石井 哲 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 田中 洋介 |
発明の名称 | 有効なセンサ対組織接触を持つ組織特性化プローブ |
代理人 | 浅野 典子 |
代理人 | 風早 信昭 |