• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1321191
審判番号 不服2016-2412  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-17 
確定日 2016-11-22 
事件の表示 特願2011-247529「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月30日出願公開、特開2013-104957、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年11月11日の出願であって、平成27年7月17日付けで手続補正書が提出され、同年11月6日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成28年2月17日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成28年2月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)から下記(2)へと補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
入力画像データに基づいて、露光装置により感光体に静電潜像を形成させ、現像装置により前記感光体にトナーを付着させることにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成し、前記感光体に形成された前記トナー像を像担持体に転写させる画像形成部と、
前記像担持体上に形成されたトナーパターンを構成するパッチの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部による検出結果に基づいて階調補正データを生成し、この階調補正データを用いて階調補正を行う階調補正部と、を備える画像形成装置であって、
前記トナーパターンは、前記像担持体の走行方向に沿って濃度が段階的に変化する複数の階調パッチと、前記複数の階調パッチの少なくとも一つを挟んで配置される同一濃度の複数の基準パッチと、を含んで構成され、
前記階調補正部は、前記濃度検出部による前記複数の基準パッチ同士の検出濃度を比較することにより、当該トナーパターンに全体的にゴーストが生じているか否かを判定し、ゴーストが生じていると判定した場合に、前記階調パッチの検出濃度を補正し、補正後の検出濃度に基づいて前記階調補正データを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準パッチが、前記トナーパターンの先端及び後端に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基準パッチが、前記トナーパターンの中間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準パッチが、前記階調パッチの一部を兼用することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基準パッチが、最高濃度の黒ベタ画像であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
入力画像データに基づいて、露光装置により感光体に静電潜像を形成させ、現像装置により前記感光体にトナーを付着させることにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成し、前記感光体に形成された前記トナー像を像担持体に転写させる画像形成部と、
前記像担持体上に形成されたトナーパターンを構成するパッチの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部による検出結果に基づいて階調補正データを生成し、この階調補正データを用いて階調補正を行う階調補正部と、を備える画像形成装置であって、
前記トナーパターンは、前記像担持体の走行方向に沿って濃度が段階的に変化する複数の階調パッチと、前記複数の階調パッチの少なくとも一つを挟んで配置される同一濃度の複数の基準パッチと、を含んで構成され、
前記階調補正部は、前記濃度検出部による前記複数の基準パッチ同士の検出濃度を比較することにより、副走査方向の下流から上流に向かって濃度が低下するゴーストが当該トナーパターンに全体的に生じているか否かを判定し、ゴーストが生じていると判定した場合に、前記複数の基準パッチの検出濃度に基づいて前記階調パッチのパッチ位置と補正量の関係を算出し、前記関係から得られる補正量によって前記階調パッチの検出濃度を補正し、補正後の検出濃度に基づいて前記階調補正データを生成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準パッチが、前記トナーパターンの先端及び後端に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基準パッチが、前記トナーパターンの中間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記基準パッチが、前記階調パッチの一部を兼用することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記基準パッチが、最高濃度の黒ベタ画像であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の画像形成装置。」(下線は平成28年2月17日付けの手続補正書のとおり。)

2 補正の適否
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の「階調パッチの検出濃度を補正し」に関して、「副走査方向の下流から上流に向かって濃度が低下するゴーストが当該トナーパターンに全体的に生じているか否かを判定し、ゴーストが生じていると判定した場合に、前記複数の基準パッチの検出濃度に基づいて前記階調パッチのパッチ位置と補正量の関係を算出し、前記関係から得られる補正量によって」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1乃至5に係る発明(以下、本件補正後の前記請求項1に係る発明を「本件補正発明1」といい、同様に、本件補正後の前記請求項2に係る発明乃至本件補正後の前記請求項5に係る発明をそれぞれ「本件補正発明2」乃至「本件補正発明5」といい、これらを総称して「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1) 刊行物の記載事項
ア 刊行物1
本願の出願日前の平成21年9月24日に頒布された特開2009-219070号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーの色毎に、濃度を変化させて所定の方向に配列した測定パッチと、一定の濃度で各々の前記測定パッチの近傍に配置した基準パッチと、を作成するデータに基づいて作成されるパッチシートを用いてキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムであって、
前記基準パッチの測色値に基づいて、当該基準パッチの近傍に配置された前記測定パッチの測色値を補正する補正部を備えることを特徴とするキャリブレーションシステム。

【請求項5】
前記キャリブレーションシステムは、前記パッチシートを出力する画像形成装置を含み、
前記画像形成装置は、前記パッチシートの前記測定パッチ及び前記基準パッチを測色する画像読取部と、前記補正部と、補正後の前記測定パッチの測色値に基づいて色補正テーブルを生成するキャリブレータと、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリブレーションシステム。」
(イ)「【背景技術】

【0004】
しかしながら、画像形成装置では、感光体や中間転写体の回転ムラなどによる周期的な濃度ムラや、偶発的な濃度ムラが発生することがあり、測定パッチを所定の方向に配列した用紙(以下、パッチシートと呼ぶ。)の印刷時に濃度ムラが発生すると、キャリブレーションの精度が悪化するという問題が生じる。

【発明が解決しようとする課題】

【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、濃度ムラの影響を抑制し、キャリブレーションの精度を向上させることができるキャリブレーションシステム及びキャリブレーション方法並びに補正処理プログラムを提供することにある。」
(ウ)「【0030】
[画像形成装置]
図4に示すように、画像形成装置30は、制御部31と、記憶部32と、ネットワークI/F部33と、表示操作部34と、画像読取部35と、画像処理部36と、印刷処理部37などで構成され、これらはバスを介して接続されている。

【0037】
印刷処理部37は、画像処理部36で作成された画像データに基づき電子写真プロセスに従って形成された画像を用紙に転写してパッチシート50を作成する。具体的には、一様に帯電された感光体ドラム上に画像データに応じた光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電したトナーを付着させてトナー像として顕像化し、そのトナー像を一次転写ローラ、二次転写ベルトなどの中間転写体を介して用紙に転写し、その後にトナー像を加熱加圧することにより用紙上に定着させる処理を行う。」
(エ)「【0043】
[パッチシート]
図9に示すように、パッチシート50は、Yellow、Magenta、Cyan、Blackのトナーの色毎(ここではハッチングの種類を変えて色の違いを表現している。)に、測定パッチ51(実線の枠)と基準パッチ52(破線の枠)とを備える。各々の色の測定パッチ51は、理想的にはその色の濃度が所定の方向(例えば、紙送り方向又はそれに直交する方向)に沿って徐々に変化するように配列されている。また、基準パッチ52は、各々の色の測定パッチ51の近傍に配置され、その測定パッチ51と同じ色、かつ、理想的には一定の濃度(例えば、50%の濃度)で印刷されている。ここで「理想的には」と記載したのは、測定パッチ51も基準パッチ52も、実際に印刷される際には画像形成装置の機構上、環境上の影響を受けて想定した濃度とは異なる濃度で印刷されることがあるためである。

【0045】
なお、測定パッチ51と基準パッチ52とは必ずしも1対1の関係になっていなくてもよく、例えば、図10に示すように、測定パッチ51の間に基準パッチ52を配置してもよい。…」
(オ)「【0052】
以下、上記構成のキャリブレーションシステム10を用いたキャリブレーション方法について、図5の概略動作図及び図6のフローチャート図を参照して概説する。なお、以下では、図1の構成を前提にして説明する。
【0053】
まず、ホストコンピュータ20の操作部23を操作してパッチシート50の出力を指示すると、制御部21(プリンタドライバ)は、記憶部24に予め記憶されたパッチデータを読み出し、画像形成装置30に送信する。
【0054】
次に、ステップS100で、画像形成装置30の画像処理部36は、パッチデータを解析してパッチシート50の画像を形成し、印刷処理部37は、その画像を用紙に転写してパッチシート50を出力する。このパッチシート50は、前述したように測定パッチ51と基準パッチ52とで構成される。測定パッチ51は、濃度を増減させた単色(C、M、Y、K)のグラデーションパッチであり、基準パッチ52は、単色(C、M、Y、K)のハーフトーンパッチである。
【0055】
次に、ステップS200で、出力されたパッチシート50を測色器40にセットすると、測色器40はパッチシート50をスキャンし、各色の測定パッチ51及び基準パッチ52を測色する。そして、取得した測色値をホストコンピュータ20に送信する。なお、パッチの配置パターンと各パッチの測色値のデータサイズやデータの並び順が分かっていれば、ホストコンピュータ20は、各測定パッチ51の測色値、各基準パッチ52の測色値、及び両者の位置関係を認識することができる。
【0056】
次に、ステップS300で、ホストコンピュータ20の濃度ムラ補正部22は、基準パッチ52の測色値に基づいてパッチシート50内の濃度ムラを検出する(詳細は後述する)。この濃度ムラの検出は、濃度ムラが発生した基準パッチ52の位置と濃度ムラの程度(濃度ずれ量)とを取得することが目的である。
【0057】
次に、ステップS400で、濃度ムラ補正部22は、パッチの配置パターンと測色値の
データサイズや並び順等から、濃度ムラが発生した基準パッチ52の近傍にある測定パッチ51を特定し、その測定パッチ51の測色値を補正する(詳細は後述する)。
【0058】
次に、ステップS500で、キャリブレータ23は、補正後の測定パッチ51の測色値と標準データとを比較し、公知の手法を用いて色補正テーブルを生成し、生成した色補正テーブルを記憶部24に保存する。
【0059】
その後、ホストコンピュータ20の制御部21(プリンタドライバ)は、文書等の印刷を指示する際に、記憶部24に保存された色補正テーブルを参照して色補正を行った後、印刷データに変換して画像形成装置30に送信する。」

そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「トナーの色毎に、濃度を変化させて所定の方向に配列した測定パッチと、一定の濃度で各々の前記測定パッチの近傍に配置した基準パッチと、を作成するデータに基づいて作成されるパッチシートを用いてキャリブレーションを行うキャリブレーションシステムであって、前記基準パッチの測色値に基づいて、当該基準パッチの近傍に配置された前記測定パッチの測色値を補正する補正部を備え、
前記キャリブレーションシステムは、前記パッチシートを出力する画像形成装置を含み、画像形成装置は、印刷処理部などで構成され、印刷処理部は、画像処理部で作成された画像データに基づき電子写真プロセスに従って形成された画像を用紙に転写してパッチシートを作成し、具体的には、一様に帯電された感光体ドラム上に画像データに応じた光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電したトナーを付着させてトナー像として顕像化し、そのトナー像を一次転写ローラ、二次転写ベルトなどの中間転写体を介して用紙に転写し、その後にトナー像を加熱加圧することにより用紙上に定着させる処理を行い、
パッチシートは、Yellow、Magenta、Cyan、Blackのトナーの色毎に、測定パッチと基準パッチとを備え、各々の色の測定パッチは、理想的にはその色の濃度が所定の方向(例えば、紙送り方向又はそれに直交する方向)に沿って徐々に変化するように配列され、また、基準パッチは、各々の色の測定パッチの近傍に配置され、その測定パッチと同じ色、かつ、理想的には一定の濃度(例えば、50%の濃度)で印刷されており、測定パッチの間に基準パッチが配置されており、
前記画像形成装置は、前記パッチシートの前記測定パッチ及び前記基準パッチを測色する画像読取部と、前記補正部と、補正後の前記測定パッチの測色値に基づいて色補正テーブルを生成するキャリブレータと、を備え、色補正テーブルを参照して色補正を行う、キャリブレーションシステム。」

イ 刊行物2
本願の出願日前の平成22年2月12日に頒布された特開2010-33037号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0009】
テストパターンは補正をする上での指標となるため、画像形成装置内の変動に起因する変動や、感光体やトナーの変化に起因する変動の影響を受けてしまうと、階調補正等の画像処理条件の調整に影響してしまう。つまり1枚の転写材に複数の階調表現方法のテストパターンを印刷した場合、ある階調表現方法を用いたテストパターンの形成で発生するメモリの影響を、別の階調表現方法を用いたテストパターンの形成に影響を及ぼしやすくなる。尚、感光体の回転軸の方向を主走査方向とした場合、この主走査方向と直行する方向を副走査方向とし、また転写ローラの回転軸と直行する方向とする。
【0010】
ここで図16を用いて現像部のメモリについて簡単に説明する。ここではわかりやすくするため1枚の記録媒体Pに図16のようなパターンを形成したとする。ここで記録媒体の長手方向は感光体4の回転方向であり記録媒体の搬送方向(矢印方向)に相当し、短手方向は感光体4および現像器3の備える現像シリンダの軸方向でありレーザによる主走査方向に相当する。感光体4および現像シリンダの軸方向の軸方向の左側半分にべた黒画像(一様に黒の画像)に白抜きの○のパターンと右側半分に○パターンを形成し、それ以降に階調表現方法を切り替えた中間調のべた画像(一様の画像)を形成した例である。
【0011】
電子写真技術を用いた現像装置は、トナーと呼ばれる粉末状の現像材を現像装置内のトナー容器に収納しておき、現像シリンダにそのトナーを一様にコートし、現像シリンダの回転によりトナーを感光体とのニップ部まで搬送している。この現像シリンダにおける搬送中にトナーは、現像シリンダとの摩擦やトナー同士の摩擦によって帯電された後、感光体上に形成された電潜像がトナー像として現像される。
【0012】
しかしながら、現像シリンダによってトナーが搬送されても画像のないところにはトナーで現像されない。この為、現像シリンダが更に1回転した時には、現像シリンダにおける現像シリンダ上の1回転目に現像された部分とそうでない部分とでは、トナーの帯電量に差が発生する場合がある。その時には、図16のような現像シリンダの回転周期のメモリ画像が発生してしまう。図からわかるように○パターンを形成した後に、階調表現方法を切り替えて中間調のべた画像を一様に形成した領域に、先に形成した画像の影響でべた黒画像、白抜きの○のパターン、○パターンのメモリ画像が生じているのがわかる。このメモリ画像(異常画像)は、現像シリンダの回転の1周後だけでなく、図16ではその後の2周にまで影響しているように、ひどい時には、3周も4周も発生する場合もある。
【0013】
つまり、キャリブレーション時に、テストパターンにもしこの異常画像が発生した場合には、他の階調表現方法で発生した影響でテストパターンに周期的なむらが発生する為、画像調整が上手くいかないこととなってしまう。
【0014】
また、感光体メモリとは、感光体の状態により画像露光した感光体の回転の1周前の画像が薄っすらと残ってしまうというものである。この発生する画像は感光体周期であるという違いでほぼ図16と同様のものとなり、形成されたテストパターンに感光体周期の影響が生じて、画像調整が上手く行われないこととなる。」

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「先に形成した画像の影響で生じる現像部のメモリ及び感光体の状態により画像露光した感光体の回転の1周前の画像が薄っすらと残ってしまう感光体メモリ。」

ウ 刊行物3
本願の出願日前の平成7年11月10日に頒布された特開平7-295306号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 現像装置内に現像剤担持体と平行に導線を設け、現像剤担持体に印加した交流信号を前記導線で検出し、前記検出信号の変化から現像装置内の現像剤量を検出し、前記検出した現像剤量に基づいて補給量を制御しながら、現像装置内に現像剤を補給する画像形成装置において、前記画像形成装置の初期設置時に、前記現像装置内への現像剤の補給の開始指令後、予め設定された時間Sの期間、現像剤担持体を回転する手段と、その現像剤担持体の回転を前記Sの期間内において所定の間隔で期間Qずつ休止する手段と、その期間Q内に前記交流信号を現像スリーブに供給する手段とを備え、その交流信号が現像スリーブに供給されている期間に、前記現像装置内の現像剤量を検出するようにしたことを特徴とする画像形成装置。」
(イ)「【0005】例えば現像剤の摩擦帯電電荷量によってスリーブゴーストの生じ方が異なって来る。図9にスリーブゴーストの現れ方を示す。図9(a)は、上部の白地に”A”の黒文字があり、下部が一様なハーフトーン部である原稿画像をコピーした場合である。従来のコート処理されていない金属スリーブを用いたときに起こり易く、上部のAの文字が下部のハーフトーン部にスリーブの回転ピッチの間隔で濃く現像される(ポジゴースト)。図9(b)は、適当に処方されたコートスリーブを用いた場合で、下部のハーフトーン部のゴーストが減少している。しかし帯電能力の小さい、低い現像剤、或いはこれと同じ特性の現像剤でも高温高湿下で摩擦帯電電荷量が十分上昇しない場合には、図9(c)に示すように、下部のハーフトーンに白く抜けたゴーストが生じる(ネガゴースト)。このネガゴーストはしばらくコピーを繰り返すことによって低減するが、この現象は、特に画像形成装置を組立て後、初めて現像装置に現像剤を入れて運転する初期設置時に顕著であり、何らかの改善が望まれる。」
(ウ)「【0012】本発明の目的は、初期設置時、現像装置に現像剤を補給するに際し、アンテナ式残検により現像装置内現像剤量を検出して、適正な現像剤量に制御し、又現像剤担持体による撹拌で現像剤に十分な摩擦帯電電荷量を付与すると共に、現像剤の飛散を極力抑制して、初期設置直後でもゴーストのない高品位な画像を得ることを可能とした画像形成装置を提供することである。」

そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「現像装置内に現像剤担持体と平行に導線を設け、現像剤担持体に印加した交流信号を前記導線で検出し、前記検出信号の変化から現像装置内の現像剤量を検出し、前記検出した現像剤量に基づいて補給量を制御しながら、現像装置内に現像剤を補給する画像形成装置において、前記画像形成装置の初期設置時に、前記現像装置内への現像剤の補給の開始指令後、予め設定された時間Sの期間、現像剤担持体を回転する手段と、その現像剤担持体の回転を前記Sの期間内において所定の間隔で期間Qずつ休止する手段と、その期間Q内に前記交流信号を現像スリーブに供給する手段とを備え、その交流信号が現像スリーブに供給されている期間に、前記現像装置内の現像剤量を検出するようにした画像形成装置。」

(2)対比
そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、
ア.後者の「画像データ」、「感光体ドラム」、「静電潜像」、「トナー」、「トナー像」、「二次転写ベルトなどの中間転写体」、「転写」、「印刷処理部」、「パッチ」及び「画像読取部」は、それぞれ、前者の「入力画像データ」、「感光体」、「静電潜像」、「トナー」、「トナー像」、「像担持体」、「転写」、「画像形成部」、「パッチ」及び「濃度検出部」に相当する。
イ 後者の「キャリブレーションシステム」における「印刷処理部」は、「一様に帯電された感光体ドラム上に画像データに応じた光を照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に帯電したトナーを付着させてトナー像として顕像化」するものであるから、「露光装置」及び「現像装置」を有するのは明らかである。
ウ 後者の「色補正テーブル」は、「測定パッチの測色値に基づいて」生成されるものであるから、前者の「階調補正データ」に相当し、後者の「補正部」は、「色補正テーブルを参照して色補正を行う」ものであるから、前者の「階調補正部」に相当する。
エ 後者の「測定パッチ」は、「理想的にはその色の濃度が所定の方向(例えば、紙送り方向又はそれに直交する方向)に沿って徐々に変化するように配列され」るものであるから、前者の「階調パッチ」に相当し、また、後者の「基準パッチ」は、「各々の色の測定パッチの近傍に配置され、その測定パッチと同じ色、かつ、理想的には一定の濃度(例えば、50%の濃度)で印刷されて」いるものであるから、前者の「基準パッチ」に相当し、後者の「パッチシート」には、「測定パッチの間に基準パッチが配置されて」いるから、「像担持体の走行方向に沿って濃度が段階的に変化する複数の階調パッチと、複数の階調パッチの少なくとも一つを挟んで配置される同一濃度の複数の基準パッチと、を含んで構成され」る「トナーパターン」を有するといえる。
オ 後者の「キャリブレーションシステム」は、「印刷処理部」、「画像読取部」及び「補正部」を有するものであるから、前者の「画像形成装置」に相当する。

したがって、両者は、
「入力画像データに基づいて、露光装置により感光体に静電潜像を形成させ、現像装置により前記感光体にトナーを付着させることにより前記静電潜像を現像してトナー像を形成し、前記感光体に形成された前記トナー像を像担持体に転写させる画像形成部と、
前記像担持体上に形成されたトナーパターンを構成するパッチの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部による検出結果に基づいて階調補正データを生成し、この階調補正データを用いて階調補正を行う階調補正部と、を備える画像形成装置であって、
前記トナーパターンは、前記像担持体の走行方向に沿って濃度が段階的に変化する複数の階調パッチと、前記複数の階調パッチの少なくとも一つを挟んで配置される同一濃度の複数の基準パッチと、を含んで構成される画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明1では、「階調補正部は、濃度検出部による複数の基準パッチ同士の検出濃度を比較することにより、副走査方向の下流から上流に向かって濃度が低下するゴーストが当該トナーパターンに全体的に生じているか否かを判定し、ゴーストが生じていると判定した場合に、複数の基準パッチの検出濃度に基づいて階調パッチのパッチ位置と補正量の関係を算出し、関係から得られる補正量によって階調パッチの検出濃度を補正し、補正後の検出濃度に基づいて階調補正データを生成する」ものであるのに対し、引用発明1では、その点が明らかでない点。

(3)判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明2には、階調の補正に関しては何ら記載されていないから、相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項を備えていない。
そして、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。
しかも、本願補正発明1は、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「画像安定化制御におけるトナー消費量を低減できるとともに、画像安定化制御時にゴーストが発生する場合でも適切な画像安定化制御を行うことができる画像形成装置が実現される。」(段落【0011】)という作用効果を奏するものである。

また、原審で提示された引用文献3を見ても、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項は記載されていない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(4)本願補正発明2乃至5について
本願補正発明2乃至5は、本願補正発明1の発明特定事項に加えて、更なる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記(4)と同様の理由により、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1乃至請求項5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願補正発明1乃至本願補正発明5は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-09 
出願番号 特願2011-247529(P2011-247529)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置  
代理人 鷲田 公一  
代理人 木曽 孝  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ