• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1321217
異議申立番号 異議2015-700208  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-20 
確定日 2016-08-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5722368号発明「シリコーン樹脂基材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5722368号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第5722368号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等

特許第5722368号(設定登録時の請求項の数は12。以下,「本件特許」という。)は,平成19年12月28日を出願日とする特願2007-340718号の一部を平成25年3月7日に新たな特許出願としたものに係るものであって,平成27年4月3日に設定登録された。
特許異議申立人 鈴木敏明(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成27年11月20日,本件特許の請求項1ないし12に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において,平成28年2月25日付けで取消理由を通知したところ,特許権者は,同年4月28日付けで,訂正請求書(以下,当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので,異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ,異議申立人は,同年6月22日付けで意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?オのとおりである。なお,下線については訂正箇所に合議体が付したものである。

訂正事項ア
訂正前の特許請求の範囲の請求項1である
「付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと,シランカップリング剤とが,混合されて含有された組成物で成形がなされたもので,前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記成形がなされているシリコーン樹脂基材であって,
前記シランカップリング剤が,アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており,
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ,
420nm以上の反射率は,前記フィラーが前記酸化チタン粉末を含有するときに少なくとも90%であり,前記フィラーが前記アルミナ粉末を含有するときに少なくとも80%であることを特徴とするシリコーン樹脂基材。」
から
「付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと,シランカップリング剤とを,混合して含有させた組成物で,成形して,前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり,フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており,
前記シランカップリング剤が,アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており,
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされていることを特徴とするシリコーン樹脂基材の製造方法。」
に訂正する。
これは,
(ア) 訂正前の請求項1の第一段落に「シランカップリング剤とが,混合されて含有された組成物で成形がなされたもので」とあるのを,「シランカップリング剤とを,混合して含有させた組成物で,成形して」に訂正。
(イ) 訂正前の請求項1の第四段落にあった「420nm以上の反射率は,前記フィラーが前記酸化チタン粉末を含有するときに少なくとも90%であり,前記フィラーが前記アルミナ粉末を含有するときに少なくとも80%であることを特徴とするシリコーン樹脂基材」を,語順を入れ替えつつ移動し,さらに,「シリコーン樹脂基材を製造する方法であって」の文言を加えて,訂正後の請求項1の第一段落に「前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり,フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,」の文言を追記する訂正。
(ウ) 訂正前の請求項1の第一段落に「シリコーン樹脂基材であって」とあるのを「前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており」に訂正。
(エ) 訂正前の請求項1の第四段落を移動に伴い削除し,訂正前の請求項1の末尾に「シリコーン樹脂基材。」とあるのを「シリコーン樹脂基材の製造方法。」に訂正。
と訂正するものと認められる。

訂正事項イ
特許請求の範囲の請求項1の従属項である請求項2ないし11中,末尾に「シリコーン樹脂基材。」とあるのを「シリコーン樹脂基材の製造方法。」に訂正する。

訂正事項ウ
特許請求の範囲の請求項11中,「記載の記載の」とあるのを,「記載の」に訂正する。

訂正事項エ
特許請求の範囲の請求項12中,「請求項1?11の何れかのシリコーン樹脂基材で形成されている」とあるのを,「請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されている」に訂正し,末尾に「シリコーン樹脂基材含有製品」とあるのを「シリコーン樹脂基材含有製品の製造方法」に訂正する。

訂正事項オ
上記訂正事項アないしエのように特許請求の範囲の請求項1ないし12を訂正するのに合わせ,明細書を同様に,以下のように訂正する。
(ア)発明の名称中「シリコーン樹脂基材」とあるのを,「シリコーン樹脂基材の製造方法」に訂正する。
(イ)明細書の段落番号0001中「シリコーン樹脂基材に関するものである」とあるのを,「シリコーン樹脂基材の製造方法に関するものである」に訂正する。
(ウ)明細書の段落番号0006中「シリコーン樹脂基材を提供することを目的とする」とあるのを,「シリコーン樹脂基材の製造方法を提供することを目的とする」に訂正する。
(エ)明細書の段落番号0007中,訂正前の
「シリコーン樹脂基材は,付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと,シランカップリング剤とが,混合されて含有された組成物で成形がなされたもので,前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記成形がなされているシリコーン樹脂基材であって,前記シランカップリング剤が,アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており,前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ,420nm以上の反射率は,前記フィラーが前記酸化チタン粉末を含有するときに少なくとも90%であり,前記フィラーが前記アルミナ粉末を含有するときに少なくとも80%であることを特徴とする。」から
「シリコーン樹脂基材の製造方法は,付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと,シランカップリング剤とを,混合して含有させた組成物で成形して,前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり,フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており,
前記シランカップリング剤が,アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており,
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされていることを特徴とする。」
に訂正する。
これは,
a 訂正前の「請求項1に記載のシリコーン樹脂基材は」とあるのを,「請求項1に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は」に訂正。
b 訂正前の「シランカップリング剤とが,混合されて含有された組成物で成形がなされたもので」とあるのを,「シランカップリング剤とを,混合して含有させた組成物で成形して」に訂正し,その後ろに,訂正前の「420nm以上の反射率は,前記フイラーが前記酸化チタン粉末を含有するときに少なくとも90%であり,前記フィラーが前記アルミナ粉末を含有するときに少なくとも80%であることを特徴とするシリコーン樹脂基材」を語順を入れ替えつつ移動し,「シリコーン樹脂基材を製造する方法であって」の文言を加えて「前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり,フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,」の文言を追記する訂正。
c 訂正前の「シリコーン樹脂基材であって」とあるのを,「前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており」に訂正し,それらに伴い,「成形がなされて,」とあるのを,「なされていることを特徴とする」に訂正。
と訂正するものと認められる。
(オ)明細書の段落番号0008?0015中,「に記載のシリコーン樹脂基材は」とあるのを,「に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は」に訂正する。
(カ)明細書の段落番号0016中,「シリコーン樹脂基材含有製品は」とあるのを,「シリコーン樹脂基材含有製品の製造方法は」に訂正し,「請求項1?11の何れかのシリコーン樹脂基材で形成されていることを特徴とする」とあるのを「請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されていることを特徴とする」に訂正する。

2 訂正の目的の適否,一群の請求項,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正事項アについて

ア 訂正の目的について

訂正前請求項1の記載は,「成形がなされているシリコーン樹脂基材」であるから,訂正前請求項1発明の対象は,「シリコーン樹脂基材」という「物」であることは明らかである。
そして,訂正前請求項1には,「付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記成形がなされている」及び「前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ」と特定されていることから,「シリコーン樹脂基材」に関し,その「製造方法」が記載されている。
ここで,「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。
そこで,上記判示事項を踏まえて検討すると,訂正前請求項1の「付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記成形がなされている」及び「前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ」との「シリコーン樹脂基材」の製造方法が記載されているから,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。
そして,訂正事項アは,「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項1を,「シリコーン樹脂基材の製造方法」として,「前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており」,「前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ」ていることを特定する訂正後請求項1に訂正するものであって,「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって,当該訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて

本件の願書に添付した明細書の段落【0028】?【0030】には,訂正後請求項1発明に対応する「記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており,前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされていること」が記載されているから,訂正事項アは,本件の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

ウ 訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて

訂正事項アによっては,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものとはいえない。

(2) 訂正事項イについて

訂正事項イは,「シリコーン樹脂基材。」とあるのを「シリコーン樹脂基材の製造方法。」に訂正するものであるから,上記(1)での検討のとおりであって,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(3) 訂正事項ウについて

訂正事項ウは,「記載の記載の」とあるのを,「記載の」に訂正するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(4) 訂正事項エについて

訂正事項エは,「請求項1?11の何れかのシリコーン樹脂基材で形成されている」とあるのを,「請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されている」に訂正し,末尾に「シリコーン樹脂基材含有製品」とあるのを「シリコーン樹脂基材含有製品の製造方法」に訂正するものであるから,上記(1)での検討のとおりであって,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(5) 訂正事項オについて

訂正事項オは,上記訂正事項ア?エである特許請求の範囲の請求項1?12の訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため,明細書の記載を訂正するものであるから,当該訂正事項オは,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして,当該訂正事項オは,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(6) 一群の請求項について

上記訂正事項ア?オの訂正は,一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 むすび

以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので,訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正は認められるので,本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は,平成28年4月28日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「 【請求項1】
付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと,シランカップリング剤とを,混合して含有させた組成物で,成形して,前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり,フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており,
前記シランカップリング剤が,アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており,
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされていることを特徴とするシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項2】
前記フィラーが,マグネシア粉末,チッ化アルミニウム粉末,チッ化ホウ素粉末,チッ化ケイ素粉末,グラファイト粉末,カーボン粉末,シリカ粉末,炭化ケイ素粉末,炭化ホウ素粉末,炭化チタン粉末,ムライト粉末,ダイヤモンド粉末,銅粉末,アルミニウム粉末,銀粉末,鉄粉末,レジンパウダー,チタン酸バリウム粉末,シルク,カオリン粉末,酸化鉄粉末,酸化亜鉛粉末,シリカアルミナ粉末,タルク粉末,ガラスファイバー,カーボンファイバー,及び/又は着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂が,シランカップリング剤,チタネートカップリング剤,又はアルミネートカップリング剤と架橋反応する前記ポリシロキサン化合物により,前記三次元架橋をしていることを特徴とする請求項1?2の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が,前記ポリシロキサン化合物の不飽和基又はヒドロシリル基に付加する不飽和基を有していることを特徴とする請求項3に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項5】
前記ポリシロキサン化合物と,前記フィラーと,前記シランカップリング剤とが混合されつつ含有されて,前記成形がなされていることを特徴とする請求項3?4の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサン化合物と,シランカップリング剤で被覆された前記フィラーとが混合されつつ含有されて,前記成形がなされていることを特徴とする請求項3?5の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項7】
反射膜層で被覆されていることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項8】
前記酸化チタン粉末が,平均粒径を10?100nmとすることを特徴とする請求項1?7の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項9】
前記フィラーが,40?90質量%含有されていることを特徴とする請求項1?8の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項10】
前記ポリシロキサン化合物が,ジフェニルシロキシ基及び/又はジメチルシロキシ基と,加水分解性基含有-,アルキルオキシ含有-,ジアルキルオキシ含有-,ビニル含有-,ジビニル含有-,ヒドロ含有-,及びジヒドロ含有-シリル基から選ばれる少なくとも何れかとを有し前記付加反応又は縮合反応により前記三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物であることを特徴とする請求項1?9の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項11】
金属メッキと金属蒸着とから選ばれる表面加工処理が施されていることを特徴とする請求項1?10の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項12】
発光ダイオード基板,半導体素子基板,集積回路基板,高周波基板,電気回路基板,太陽電池基板,およびそれらのパッケージの何れかの製品であり,その基板,その部材,及び/又はパッケージが,請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されていることを特徴とするシリコーン樹脂基材含有製品の製造方法。」

第4 取消理由の概要

平成28年2月25日付けで通知した取消理由は,本件特許の請求項1ないし6,8ないし10,12に係る発明は,本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,同法第113条第2号に該当し,その発明に係る特許は取り消すべきものである(取消理由1)というものと,本件特許の請求項1ないし12についての特許は,製造方法により特定されている物であって特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消すべきものである(取消理由2)というものである。

刊行物:特開2001-207059号公報(異議申立人の証拠方法である甲第1号証,以下「甲1」という。)

第5 合議体の判断

当合議体は,以下述べるように,上記取消理由1及び2には理由はないと判断する。

1 特許法第29条第2項(進歩性)について

(1) 甲1に記載された発明

本件特許に係る原出願の出願前に頒布された刊行物である甲1には,特にその特許請求の範囲の記載からみて,当該硬化物の製造方法が実質的に記載されているといえるから,次のとおりの発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン,(B)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン,(C)白金族金属系触媒,及び(D)テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で表面処理した酸化チタン粉末;成分(A)100重量部に対して15重量部以上を含有してなる酸化チタン充填付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を硬化して得られる硬化物の製造方法。」

(2) 本件発明1と甲1発明との対比・判断

甲1発明と本件発明1とを対比する。
甲1の【0003】,【0010】の記載,及び「オルガノハイドロジエンポリシロキサンは,後述する(C)成分の白金又は白金化合物(白金系触媒)の存在下に,(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基と,このオルガノハイドロジエンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基(ヒドロシリル基))とが反応して,三次元網目構造(架橋構造)を形成する架橋剤として作用する」(甲2(特開2007-308581号公報)の【0020】)との当業者の技術常識から,甲1発明の「(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン,(B)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」は,本件発明1の「付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物」に相当する。
甲1発明の「硬化物」は,当業者の技術常識から,加熱により三次元架橋されて成形されているといえる。また,甲1発明の「硬化物」は,「新しい用途として・・・フォトカップラー素子の並列型タイプの反射剤や,LEDの下地反射コーティング等が挙げられる」(甲1の段落【0002】),「電気・電子部品の遮光用又は反射用のコーティング剤,ポッティング剤等に利用できる」(甲1の段落【0032】)の記載からみて,フォトカップラーやLED等の電気・電子部品を構成する何らかの形状を有する部材を想定しているといえる。
一方で,本件発明1の「シリコーン樹脂基材」には,請求項12及び明細書の「発光ダイオード基板,半導体素子基板,集積回路基板,高周波基板,電気回路基板,太陽電池基板,およびそれらのパッケージの何れかの製品であり,その基板,その部材,及び/又はパッケージが,請求項1?11の何れかのシリコーン樹脂基材で形成されている」(段落【0016】)の記載から,発光ダイオード基板,半導体素子基板,集積回路基板,高周波基板,電気回路基板,太陽電池基板を構成する何らかの形状を有する部材を包含しているといえる。
そうすると,甲1発明の「硬化物」は,本件発明1の「シリコーン樹脂基材」に相当する。
なお,シランカップリング剤とは「一般に,相互になじみの悪い無機材料(ガラス,シリカ,金属,粘土など)と有機材料(高分子など)の両者と化学結合できる官能基をもつ有機ケイ素化合物。Y?CH_(2)SiX_(3)の一般式をもつ。Xはアルコキシ基やハロゲンなどの加水分解性の置換基で無機質と反応し,Yは有機質と反応しやすいビニル基,エポキシ基,アミノ基などである。」(長倉三郎,外3名「岩波 理化学辞典」第4版第4刷,1999年12月15日,株式会社岩波書店発行)であることから,甲1発明の「テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」は,シランカップリング剤とはいえないものである。

以上のことから,本件発明1と甲1発明は,

「付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物と,酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーとが,混合して含有させた組成物で,成形するシリコーン樹脂基材を製造する方法であって,
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており,
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーとの加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされているシリコーン樹脂基材の製造方法。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は,「アルキルオキシ基,ビニル基,アミノ基,及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有して」いる「シランカップリング剤」を含有するものであるのに対して,甲1発明は,この点を特定しない点。

<相違点2>
付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物に関して,本件発明1は「40℃?130℃に融点を持たない」と特定するのに対して,甲1発明は,この点を特定しない点。

<相違点3>
シリコーン樹脂基材の反射率に関して,本件発明1は「420nm以上の反射率は,前記フィラーが前記酸化チタン粉末を含有するときに少なくとも90%であり,前記フィラーが前記アルミナ粉末を含有するときに少なくとも80%である」と特定するのに対して,甲1発明は,この点を特定しない点。

以下,相違点1について検討する。
ポリシロキサン化合物と酸化チタン等を含有するポリシロキサン組成物にシランカップリング剤を配合することは周知慣用なもの(特開平7-207162号公報,特開2005ー146191号公報,特開2007-231173号公報,平成28年6月22日付け異議申立人の意見書に添付された参考資料1ないし3)といえるが,テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの部分加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で表面処理した酸化チタンを配合することを前提とした甲1発明において,甲1に全く示唆されていない「シランカップリング剤」を利用することには,甲1発明の特定の化合物で表面処理された酸化チタンにシランカップリング剤が何らかの影響を与えてしまうことが当業者に理解できることに加えて,甲1の段落【0025】には,酸化チタンに関して,「反射剤の用途にはアルミニウムや有機物等で表面処理されていないものが好ましい」と記載されていることから,阻害要因がある。
相違点1に係る効果について,甲1発明の酸化チタンは,テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの部分加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で表面処理されたものであるから,シランカップリング剤が当業者の技術常識として「相互になじみの悪い無機材料と有機材料の両者の界面を橋渡しする機能を有する」ものと理解したとしても,甲1発明の特定の化合物で表面処理された酸化チタンと特定のポリシロキサン化合物との関係において両者の界面を橋渡しする機能を有するかどうかは不明であるから,特許明細書に記載の「シリコーン樹脂の強度が顕著に強くなる」,「シリコーン樹脂基材の線膨張係数が小さいものとなる」,「曲げ強度,濡れ性・分散性が向上する」(本件特許明細書の段落【0043】?【0045】,実施例)点は,当業者といえども予測できたものとはいえず,格別なものである。
そうすると,周知慣用技術に照らしても,甲1発明において,特定の化合物で表面処理された酸化チタンの特定の化合物に代えて,あるいはさらに加えて,シランカップリング剤で処理することにより相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易になし得たとはいえない。

以上のことから,相違点2及び3を検討するまでもなく,本件発明1は甲1発明及び周知技術に基いて想到容易ということはできない。

(3) 本件発明2ないし12について

請求項2ないし12の記載は,請求項1を直接又は間接的に引用するものである。そして,請求項1に係る本件発明1が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上述のとおりであるから,請求項2ないし12に係る本件発明2ないし12についても同様に,甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) まとめ

以上のとおりであるから,取消理由1には理由がない。

2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について

本件訂正前の本件発明1は,「シリコーン樹脂基材」という物の発明であって,当該請求項1の「前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して,前記三次元架橋をして,前記成形がなされている」及び「前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて,前記成形がなされ」という記載は,製造に関して技術的な特徴や条件が付された場合に該当するため,当該請求項1にはその物の製造方法が記載されていることとなり,明確でなく,請求項1を引用する請求項2ないし12も同様であった。しかし,本件訂正後の本件発明1ないし12は,製造方法の発明となったことから,前記取消理由はない。

第6 むすび

以上のとおりであるから,取消理由によっては,本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シリコーン樹脂基材の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子や電気素子の基板やパッケージに用いられるもので、通電や発光のロスを生じず、強度が強く、自在に成形できるシリコーン樹脂基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明器具、信号機など様々な発光機器に、発光ダイオード(LED)が用いられている。このような発光ダイオード、特に高輝度発光ダイオードは、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯などの白色系単色照明装置よりも、明るく消費電力が少ない。
【0003】
従来、発光ダイオードは、セラミックス製基板や、熱可塑性樹脂であるエポキシ樹脂製基板又はポリエーテルエーテルケトン製基板に載置され、背面側の基板と反対側で、レンズにより封止され、発光機器内に組み込まれていた。例えば特許文献1には、発光ダイオードを実装するベース体の上部に、反射面を有する開口を形成したアルミナセラミックスのカバー体を貼付した発光ダイオード用パッケージが開示されている。特許文献2に、発光ダイオード素子の保護、接着、波長変更・調整、レンズに使用されるもので、オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒とを主成分とする発光ダイオード素子用シリコーン樹脂組成物が、開示されている。
【0004】
セラミックス製基板は、セラミックスの焼成時の大きな収縮の所為で精密構造にすることができなかったり、発光した光の一部が基板へ向いて出射されセラミックス孔から遺漏したり、表面をメッキしてもメッキ金属がその孔からマイグレーションしたりする。エポキシ樹脂製やポリエーテルエーテルケトン製の基板は、成形時に鉛フリーリフローに耐え得るが、その際に極僅かに収縮した凹み、所謂、ひけを生じたり、転写性が悪いため精密かつ正確な基板を成形できなかったり、発光した高輝度の光の一部の曝露やその光源の熱の曝露により基板を黄変させて劣化させたり、基板での反射効率を低下させたりする。またポリシロキサン組成物から形成した透明シリコーン樹脂製基板は、強度が不十分である所為で、応力や歪がかかると容易く割れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2006-108180号公報
【特許文献2】 特開2004-221308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、発光ダイオードを始めとする光学素子や電気素子の基板やパッケージに用いることができ、鉛フリーリフローに耐え、ひけを生じることなく精密な成形ができ、光や熱で黄変したり劣化したりせず、メッキなどの表面加工を施すことができ、硬くて丈夫なシリコーン樹脂基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた請求項1に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と、酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと、シランカップリング剤とを、混合して含有させた組成物で、成形して、前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり、フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって、
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して、前記三次元架橋をして、前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており、
前記シランカップリング剤が、アルキルオキシ基、ビニル基、アミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており、
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて、前記成形がなされていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記フィラーが、マグネシア粉末、チッ化アルミニウム粉末、チッ化ホウ素粉末、チッ化ケイ素粉末、グラファイト粉末、カーボン粉末、シリカ粉末、炭化ケイ素粉末、炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、ムライト粉末、ダイヤモンド粉末、銅粉末、アルミニウム粉末、銀粉末、鉄粉末、レジンパウダー、チタン酸バリウム粉末、シルク、カオリン粉末、酸化鉄粉末、酸化亜鉛粉末、シリカアルミナ粉末、タルク粉末、ガラスファイバー、カーボンファイバー、及び/又は着色剤を含有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?2の何れかに記載されたもので、前記シリコーン樹脂が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、又はアルミネートカップリング剤と架橋反応する前記ポリシロキサン化合物により、前記三次元架橋をしていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項3に記載されたもので、前記シランカップリング剤が、前記ポリシロキサン化合物の不飽和基又はヒドロシリル基に付加する不飽和基を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項3?4の何れかに記載されたもので、前記ポリシロキサン化合物と、前記フィラーと、前記シランカップリング剤とが混合されつつ含有されて、前記成形がなされていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項3?5の何れかに記載されたもので、前記ポリシロキサン化合物と、シランカップリング剤で被覆された前記フィラーとが混合されつつ含有されて、前記成形がなされていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?6の何れかに記載されたもので、反射膜層で被覆されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?7の何れかに記載されたもので、前記酸化チタン粉末が、平均粒径を10?100nmとすることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?8の何れかに記載されたもので、前記フィラーが、40?90質量%含有されていることを特徴とする。
請求項10に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?9の何れかに記載されたのもので、前記ポリシロキサン化合物が、ジフェニルシロキシ基及び/又はジメチルシロキシ基と、加水分解性基含有-、アルキルオキシ含有-、ジアルキルオキシ含有-、ビニル含有-、ジビニル含有-、ヒドロ含有-、及びジヒドロ含有-シリル基から選ばれる少なくとも何れかとを有し前記付加反応又は縮合反応により前記三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物であることを特徴とする。
請求項11に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法は、請求項1?10の何れかに記載されたのもので、金属メッキと金属蒸着とから選ばれる表面加工処理が施されていることを特徴とする。
【0016】
請求項12に記載のシリコーン樹脂基材含有製品の製造方法は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板、およびそれらのパッケージの何れかの製品であり、その基板、その部材、及び/又はパッケージが、請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコーン樹脂基材は、高い機械的強度を有し、強光で劣化せず、硬くて耐久性に優れたものである。それの製造の際、260℃以上に加熱される鉛フリーリフローに耐え、ひけを生じることなく精密かつ正確に成形でき、生産効率が良いため、安価に大量生産できる。
【0018】
しかも、シリコーン樹脂基材に、金属メッキや金属蒸着のような表面加工処理を施すことができる。シリコーン樹脂基材は、その表面加工処理が施されても、セラミックスのようにその孔からの光漏れや表面処理した金属のマイグレーションを生じないうえ、セラミックス並みの硬度を有する。
【0019】
このシリコーン樹脂基材は、熱伝導率や誘電率や反射強度を調整することができるので、発光ダイオードを始めとする光学素子や電気素子の基板やパッケージとして組み込んでシリコーン基材含有製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材を組み込んだシリコーン樹脂基材含有製品の断面図である。
【図2】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材中のフィラーの充填量と曲げ強度との相関関係を示す図である。
【図3】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材中のフィラーの充填量と熱伝導率との相関関係を示す図である。
【図4】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材中のフィラーの添加部数と線膨張係数との相関関係を示す図である。
【図5】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材中のフィラーの種類及び充填量毎についての波長と、透過率及び反射率との相関関係を示す図である。
【図6】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材及び本発明を適用外のエポキシ樹脂基材についての波長と、加熱下の経時的な透過率との相関関係を示す図である。
【図7】
本発明を適用するシリコーン樹脂基材及び本発明を適用外のエポキシ樹脂基材についての波長と、ブラックライト照射下の経時的な透過率との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明のシリコーン樹脂基材1及びそれが発光ダイオード基板として組み込まれた発光ダイオードパッケージ11であるシリコーン樹脂基材含有製品の実施の態様について、図1を参照しながら説明する。
【0023】
シリコーン樹脂基材1は、シランカップリング剤とそれに架橋反応するシロキサン化合物とにより三次元架橋しているシリコーン樹脂からなるバインダー2、及びフィラー3が含有されており、外形が長方体でその上面が中央で湾曲して窪むように鋼型で成形されたものである。その窪み8の表面に、反射膜層4が形成されている。
【0024】
発光ダイオードパッケージ11は、シリコーン樹脂基材1と、発光ダイオード6と、それらを覆うフィルター5とで、組み立てられている。シリコーン樹脂基材1の底面から上面の窪み8に向けて、発光ダイオード6の導線7が貫通している。発光ダイオード6が、窪み8の底で、接着されて固定されている。フィルター5が、窪み8を覆っており、シリコーン樹脂基材1の上部の縁で封止剤・接着剤により接着されて、シリコーン樹脂基材1を封止している。フィルター5に、レンズ9が被せられて接着されている。
【0025】
このような発光ダイオードパッケージ11は、反射型LEDと言われるもので、発光ダイオード6から放射された光の内、その反射膜層4へ向いて放射された光を反射膜層4で反射して、所望の方向へ出射するというものである。レンズ9又はフィルター5が無くてもよい。レンズ9は平凸レンズであってもよく、凹レンズであってもよく、フレネルレンズであってもよい。
【0026】
発光ダイオードパッケージ11の発光ダイオード6を通電すると、発光する。その光は、窪み8を経て、(a)のように真直ぐにレンズ9から出射し、又は(b)のように反射膜層4で反射されてレンズ9で屈折して出射する。
【0027】
シリコーン樹脂基材1及び発光ダイオードパッケージ11は、以下のようにして作製される。
【0028】
先ず、シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物を調製し、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成形し、中央で窪んだシリコーン樹脂基材である発光ダイオード基板を得る(いわゆる内添法)。その窪みの表面に金属メッキ処理を施して反射膜層を付し、窪みに発光ダイオードの導線を貫通させ、発光ダイオードと発光ダイオード基板とを接着剤で固定する。発光ダイオード基板をフィルターで覆い接着剤で固定して封止すると、発光ダイオードパッケージが得られる。
【0029】
内添法の例を示したが、フィラーにシランカップリング剤をコーティング処理してから、シロキサン化合物に加え、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とを架橋させてバインダーの分子間にフィラーを内包させたシリコーン樹脂を金型内で成形させるいわゆる乾式法で、発光ダイオード基板を得てもよい。
【0030】
発光ダイオード基板は、内添法で作製されるよりも、乾式法で作製された方が、強度を強くすることができるので、好ましい。
【0031】
シロキサン化合物は、三次元架橋してシリコーン樹脂を形成するものであれば特に限定されないが、ポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【0032】
ポリ(ジアルキルシロキサン)やポリ(ジフェニルシロキサン)は直鎖状に高分子量化したものであるから平面被膜を形成するだけであるが、この三次元架橋し得るポリシロキサン化合物はその途中のSi基が、アルキルオキシシリル基やジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基やジビニルシリル基、ヒドロシリル基やジヒドロシリル基であったり、それらの基が複数存在したりすることにより、網目状に三次元的に架橋するというものである。シロキサン化合物同士や、シロキサン化合物とシランカップリング剤とは、夫々のアルキルオキシシリル基又はジアルキルオキシシリル基同士が脱アルコール化反応により縮合して架橋したり、ビニルシリル基やジビニルシリル基とヒドロシリル基やジヒドロシリル基とが白金錯体等の白金触媒存在下で、無溶媒中、加熱や光照射によって付加して架橋したりする。シロキサン化合物はその中でも、付加して架橋するポリシロキサン化合物が好ましい。ジフェニルシロキシ基(-Si(C_(6)H_(5))_(2)-O-)やジメチルシロキシ基(-Si(CH_(3))_(2)-O-)のような繰り返し単位を有するシロキサン化合物であってもよいが、ジフェニルシロキシ基が多くなるほど、架橋して得られるシリコーン樹脂は、その強度が増加する反面、強い光の曝露により黄変し易くなり、反射性が低下したりくすんだりする。シロキサン化合物は、ジメチルシロキシ基の繰り返し単位を有し、アルキルオキシシリル基、ジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基、ジビニルシリル基、ヒドロシリル基、ジヒドロシリル基を有しているポリシロキサン化合物であると、一層好ましい。
【0033】
シロキサン化合物は、具体的にはヒドロシリル含有シリル基、ビニルシリル含有シリル基、アルコシキシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基を有するもので、シリコーン樹脂を形成するものであれば、特に限定されない。
【0034】
より具体的には、ヒドロシリル含有シリル基を有するシロキサン化合物の例として、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)OSi(OCH_(3))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)H、
(i-C_(3)H_(7)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))H_(2)、
(n-C_(3)H_(7)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)Si(CH_(3))_(2)H、
(n-C_(4)H_(9)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(t-C_(4)H_(9)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)Si(CH_(3))_(2)H、
CH_(3)O(CH_(3))_(2)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(n-C_(3)H_(7))_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(i-C_(3)H_(7)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(n-C_(4)H_(9))_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(t-C_(4)H_(9)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(6)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(6)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
CH_(3)O(CH_(3))_(2)SiCH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(6)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(6)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(6)H_(4)OC_(6)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)C_(2)H_(4)Si(CH_(3))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)O[Si(CH_(3))_(2)O]_(p1)Si(CH_(3))_(2)H、
C_(2)H_(5)O(CH_(3))_(2)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)O[Si(CH_(3))_(2)O]_(p2)Si(C_(2)H_(5))_(2)H、
(C_(2)H_(5)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)O[Si(CH_(3))_(2)O]_(p3)Si(CH_(3))_(2)H、
(CH_(3))_(3)SiOSiH(CH_(3))O[SiH(CH_(3))O]_(p4)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CH_(2))SiCH_(3)]O[SiH(CH_(3))O]_(p5)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(C_(2)H_(5)OSiOCH_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2))SiCH_(3)]O[SiH(CH_(3))O]_(p6)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CH_(2))SiCH_(3)]O[SiH(CH_(3))O]_(p7)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(Si(OC_(2)H_(5))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))SiCH_(3)]O[SiH(CH_(3))O]_(p8)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiOSi(OC_(2)H_(5))_(2)O[SiH(CH_(3))O]_(p9)[Si(CH_(3))_(2)O]_(q1)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(C_(2)H_(5)Osi(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][SiH(CH_(3))O]_(p10)[Si(CH_(3))_(2)O]_(q2)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][SiH(CH_(3))O]_(p11)[Si(CH_(3))_(2)O]_(q3)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiOSi(OC_(2)H_(5))_(2)O[SiH(C_(2)H_(5))O]_(p12)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(Si(OC_(2)H_(5))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(C_(2)H_(5))]O[SiH(C_(2)H_(5))O]_(p13)Si(CH_(3))_(3)、
(CH_(3))_(3)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(C_(2)H_(5))]O[SiH(C_(2)H_(5))O]_(p14)Si(CH_(3))_(3)、
C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)(CH_(3))_(2)SiO[HSi(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(p15)Si(CH_(3))_(2)H、
Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)(CH_(3))_(2)SiO[HSi(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(p16)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p17)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p18)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p19)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p20)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p21)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p22)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p23)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p24)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p25)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p26)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p27)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p28)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p29)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p30)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p31)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p32)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p33)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p34)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(Si(OCH_(3))_(3)CH_(2)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2))Si(CH_(3))O][HSiCH_(3)O]_(p35)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[(CH_(3)O)Si(CH_(3))CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(p36)[HSi(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(q4)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[Si(OCH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(p37)[HSi(CH_(3))_(2)OSiC_(6)H_(5)O]_(q5)Si(CH_(3))_(2)H、
C_(2)H_(5)O(CH_(3))_(2)SiO[SiH(CH_(3))O]_(p38)[SiCH_(3)(C_(6)H_(5))O]_(q6)Si(CH_(3))_(2)H、
Si(OC_(2)H_(5))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)(CH_(3))_(2)SiO[SiH(CH_(3))O]_(p39)[SiCH_(3)(C_(6)H_(5))O]_(q7)Si(CH_(3))_(2)H、
C_(2)H_(5)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)(CH_(3))_(2)SiO[SiH(CH_(3))O]_(p40)[SiCH_(3)(C_(6)H_(5))O]_(q8)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO(C_(2)H_(5)O)Si(CH_(3))O[SiH(CH_(3))O]_(p41)[SiCH_(3)(C_(6)H_(5))O]_(q9)Si(CH_(3))_(2)H、
H(CH_(3))_(2)SiO[Si(OC_(2)H_(5))_(3)CH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))]O[SiH(CH_(3))O]_(p42)[SiCH_(3)(C_(6)H_(5))O]_(q10)Si(CH_(3))_(2)H
が挙げられる。これらの基中、p1?p42及びq1?q10は1?100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1?99個有していることが好ましい。
【0035】
ビニルシリル含有シリル基を有するシロキサン化合物として、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)(CH_(2))_(7)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(CH=CH_(2))OSi(OC_(2)H_(5))CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)C_(6)H_(4)CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(2)Si(CH=CH_(2))O[SiOCH_(3)(CH=CH_(2))O]_(t1)Si(OCH_(3))_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(CH=CH_(2))O[SiOC_(2)H_(5)(CH=CH_(2))O]_(t2)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t3)CH=CH_(2)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t4)CH=CH_(2)、
CH_(3)O(CH_(3))_(2)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t5)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t6)CH=CH、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t7)CH=CH、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)(Si(CH_(3))_(3)O)Si(CH_(3))O[SiCH_(3)(-)O]_(u1)Si(CH_(3))_(3)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)CH_(2)Si(CH_(3))_(2)OSi(CH_(3))_(2)CH_(2)CH_(2)(Si(CH_(3))_(3)O)Si(CH_(3))O[SiCH_(3)(-)O]_(u2)[Si(CH_(3))_(2)O]_(t8)Si(CH_(3))_(3)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(CH=CH_(2))O[SiCH_(3)(OC_(2)H_(5))O]_(u3)Si(OC_(2)H_(5))_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(CH=CH_(2))O[Si(OC_(2)H_(5))_(2)O]_(u4)Si(OC_(2)H_(5))_(2)CH=CH_(2)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(CH=CH_(2))O[Si(OC_(2)H_(5))_(2)O]_(u5)Si(OC_(2)H_(5))_(2)CH=CH_(2)
が挙げられる。これらの基中、t1?t8及びu1?u5は1?30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1?30個有していることが好ましい。
【0036】
アルコキシシリル末端含有シリル基を有するシロキサン化合物の例として、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiCH=CHSi(OC_(2)H_(5))_(3)、
(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(3)(CH_(3)O)_(3)SiCH_(2)CH_(2)C_(6)H_(4)CH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(3)、
(CH_(3)O)_(3)Si[CH_(2)CH_(2)]_(3)Si(OCH_(3))_(3)、
(CH_(3)O)_(2)Si[CH_(2)CH_(2)]_(4)Si(OCH_(3))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)Si(OC_(2)H_(5))_(2)、
(CH_(3)O)_(2)CH_(3)SiCH_(2)CH_(2)Si(OCH_(3))_(2)CH_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(2)CH_(3)SiOSi(OC_(2)H_(5))_(2)CH_(3)、
(CH_(3)O)_(3)SiO[Si(OCH_(3))_(2)O]_(v1)Si(OCH_(3))_(3)、
(C_(2)H_(5)O)_(3)SiO[Si(OC_(2)H_(5))_(2)O]_(v2)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、
(C_(3)H_(7)O)_(3)SiO[Si(OC_(3)H_(7))_(2)O]_(v3)Si(OC_(3)H_(7))_(3)
が挙げられる。これらの基中、v1?v3は0?30までの数である。
【0037】
加水分解性基含有シリル基を有するシロキサン化合物の例として、
CH_(3)Si(OCOCH_(3))_(3)、(CH_(3))_(2)Si(OCOCH_(3))_(2)、n-C_(3)H_(7)Si(OCOCH_(3))_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si(OCOCH_(3))_(3)、
C_(6)H_(5)Si(OCOCH_(3))_(3)、CF_(3)CF_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OCOCH_(3))_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si(OCOCH_(3))_(3)、CH_(3)OSi(OCOCH_(3))_(3)、
C_(2)H_(5)OSi(OCOCH_(3))_(3)、CH_(3)Si(OCOC_(3)H_(7))_(3)、CH_(3)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、(CH_(3))_(2)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、
n-C_(3)H_(7)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、C_(6)H_(5)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、
CF_(3)CF_(2)CH_(2)CH_(2)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、CH_(3)OSi[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、
C_(2)H_(5)OSi[OC(CH_(3))=CH_(2)]_(3)、CH_(3)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、(CH_(3))_(2)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(2)、
n-C_(3)H_(7)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、C_(6)H_(5)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、
CF_(3)CF_(2)CH_(2)CH_(2)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、CH_(3)OSi[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、
C_(2)H_(5)OSi[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]]_(3)、CH_(3)Si[ON=C(CH_(3))C_(2)H_(5)]_(3)、CH_(3)Si[N(CH_(3))]_(3)、(CH_(3))_(2)Si[N(CH_(3))]_(2)、
n-C_(3)H_(7)Si[N(CH_(3))]_(3)、CH_(2)=CHCH_(2)Si[N(CH_(3))]_(3)、C_(6)H_(5)Si[N(CH_(3))]_(3)、CF_(3)CF_(2)CH_(2)CH_(2)Si[N(CH_(3))]_(3)、
CH_(2)=CHCH_(2)Si[N(CH_(3))]_(3)、CH_(3)OSi[N(CH_(3))]_(3)、C_(2)H_(5)OSi[N(CH_(3))]_(3)、CH_(3)Si[N(CH_(3))]_(3)などの昜加水分解性オルガノシランが挙げられる。
【0038】
シリコーン樹脂は、付加反応性で、無溶媒下で加熱硬化するものであり、型を用いて、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形される。
【0039】
シランカップリング剤は、反応性官能基として、アルキルオキシ基やビニル基やアミノ基やエポキシ基を有するものが挙げられる。カップリング剤としては、シランカップリング剤の他に、チタネートやアルミネートのカップリング剤でもよい。
【0040】
シランカップリング剤は、より具体的には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名Z-6011)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(同Z-6020)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン(同Z6023)、アミノシランのメタノール溶液(同Z6026)、1,2-エタンジアミン,N-(3-トリメトキシシリル)プロピル-N-((エテニルフェニル)メチル)誘導体・塩酸塩(同z-6032)、アミノシランのイソプロパノール溶液(同Z-6050)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(同Z-6049)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(同Z-6610)、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(同Z-6883)、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドの50%メタノール溶液(同DC5700)のようなアミノ系シランカップリング剤;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(同Z-6040)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(同Z-6041)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(同Z-6042)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(同Z-6044)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(同Z-6043)のようなエポキシ系シランカップリング剤;
ビニルトリアセトキシシラン(同Z-6075)、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン(同Z-6172)、ビニルトリメトキシシラン(同Z-6300)、ビニルトリエトキシシラン(同Z-6519)、ビニルトリイソプロポキシシラン(同Z-6550)、アリルトリメトキシシラン(同Z-6825)、ビニルトリメトキシシラン混合物(同Z-6758又は同Z-6398)のようなビニル系シランカップリング剤が挙げられる。
【0041】
アミノ系シランカップリング剤は、元々着色していたり架橋反応後に着色したりする。ビニル系シランカップリング剤は、着色せず、しかもフィラーと相互作用し易くシロキサン化合物と架橋反応してシリコーン樹脂を形成し易いので、好ましい。
【0042】
シランカップリング剤には、フィラーに付着するタイプと、フィラーに結合するタイプとがある。このようなシランカップリング剤は、分子量が小さいほど、フィラーと相互作用し難く、フィラーに付着しても、シリコーン樹脂のバインダー自体を膨張させない。
【0043】
シロキサン化合物にシランカップリング剤が含まれていると、それが含まれていない場合よりも、フィラーを網目構造の中に確りと取り込むため、シリコーン樹脂の強度が顕著に強くなる。
【0044】
シロキサン化合物とシランカップリング剤とにより三次元架橋したシリコーン樹脂は、シランカップリング剤の分子量が小さいほど、アルミナのようなフィラーと相互作用し難くまたフィラーに付着してもシリコーン樹脂のバインダー自体を膨張させない。その結果、シリコーン樹脂基材の線膨張係数が小さいものとなる。シランカップリング剤は、フィラーが顔料であると、シリコーン樹脂基材の線膨張係数がなお一層小さいものとなる。
【0045】
特に、シランカップリング剤処理してフィラーと、バインダーであるシリコーン樹脂とが架橋しているシリコーン樹脂基材は、フィラーがシランカップリング剤を介してシリコーン樹脂と架橋しているため、曲げ強度、濡れ性・分散性が向上しており、高品質のものとなる。このようなシランカップリング処理は、例えばフィラーに対し1質量%のシランカップリング剤を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌して表面処理を行い、100?130℃で、30?90分間、乾燥させるというものである。
【0046】
本来、透明なシリコーン樹脂をバインダーとし、そこにフィラーを分散させつつ介在させたこのシリコーン樹脂基材は、フィラーにより、着色して不透明になっている。例えば、フィラーが酸化チタンである場合、シリコーン樹脂基材は不透明な白色となっている。
【0047】
フィラーは、シリコーン樹脂基材中に、その全体量に対し、40?90質量%含まれていることが好ましい。この範囲を下回るとシリコーン樹脂基材が透明となり、またフィラーを含むことによる強度の向上が図れなくなってしまう。一方、この範囲を上回ると加工性が低下するため成形できなくなってしまう。60?80質量%含まれていると一層好ましく、75?80質量%含まれているとなお一層好ましい。
【0048】
シリコーン樹脂基材の熱伝導性を向上させるのに用いられるフィラーとして無機フィラー例えば、アルミナ、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素(六方晶・立方晶)、チッ化ケイ素、グラファイト、カーボン粉末、シリカ(結晶性シリカ・溶融シリカ)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ムライト、ダイヤモンドのようなセラミックス系物質;銅、アルミニウム、銀、鉄のような金属フィラー系物質が挙げられる。シリコーン樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダーで例示されるレジンパウダーのような有機フィラーであってもよい。これらは、フレーク状結晶、不定形状粉末、又は球状粉末であることが好ましい。その粉末の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、0.3?8μmであると一層好ましい。とりわけ、フレーク状、不定形状、又は球状のアルミナが好ましい。アルミナは、二次凝集している場合があるので、ボールミルやジェットミルで微粉砕して、0.3?8μmの略球状の一次粒子としていることが好ましい。これらのフィラーの種類や充填量を調節することにより、シリコーン樹脂基材の熱伝導率を調整することができる。
【0049】
シリコーン樹脂基材の誘電率を調整するのに用いられるフィラーとして、誘電率の高いフィラーであるチタン酸バリウム、酸化チタン;誘電率が低いフィラーであるシルクフィラー、カオリンフィラー、酸化鉄フィラー、酸化亜鉛、シリカアルミナ、タルク、フッ素樹脂パウダー、粉末アルミニウムが挙げられる。なかでも、酸化チタンは、屈折率が大きいため、光反射性や隠蔽性が大きく、光漏れ防止に有効である。酸化チタンは、ルチル型結晶構造であってもアナターゼ型結晶構造であってもよく、平均粒子径を10?100nmとすることが好ましい。ルチル型結晶構造は、屈折率が一層高いから、反射効率を向上させることができる。さらに酸化チタンは、酸化還元触媒作用があるので、黄変対策に有効である。
【0050】
シリコーン樹脂基材の物理的強度を向上させるのに用いられるフィラーとして、ガラスファイバー、カーボンファイバーが挙げられる。
【0051】
シリコーン樹脂基材の線膨張係数を調整させるのに用いられるフィラーとして、シリコーン樹脂と異なる線膨張係数を有する有機フィラーや、ガラスファイバー・カーボンファイバーのような無機フィラーが用いられる。適切なフィラーを選択することにより、例えばシリコーン樹脂基材をパッケージに使用した場合、封止剤の材質に合わせて、シリコーン樹脂基材を封止剤で封止しているパッケージと、封止剤との剥離を生じないように、互いの線膨張係数を近づけることができる。
【0052】
このようなフィラーが含有されたシリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板、それらのパッケージやそれの部材として、有用である。また、260℃以上に加熱される鉛フリーリフロー対応基板、及びその半導体パッケージやそれの部材として、有用である。
【0053】
シリコーン樹脂基材を色分けするのに用いられるフィラーとして、着色剤、例えばフタロシアニン系、アゾ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系の顔料や染料、レーキ顔料などの有機顔料、コバルトブルー、群青、酸化鉄などの無機顔料、プラスチックの粉末を蛍光性のある染料で着色した蛍光顔料のような擬似顔料が挙げられる。より具体的には、黄色顔料として、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ;橙色顔料として、赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK;赤色顔料として、縮合アゾ顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B;紫色顔料として、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ;青色顔料として、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、フタロシアニングリーン、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC;緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG;白色顔料として、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトが挙げられる。有機蛍光染料としてはペリレン系、ナフタルイミド系、クマリン系、シアニン系、フラビン系、ローダミン系が挙げられる。有機蛍光染料に、チオベンジルニッケル錯体で例示されるチオベンジル遷移金属錯体、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、マロン酸付加フラーレン、マロン酸ジターシャリーブチル付加フラーレンで例示されるフラーレン化合物を共存させてもよい。りん光を発光するりん光剤として、例えば、イリジウム錯体、プラチナ錯体で例示される公知の金属錯体、五重項のような多重項から発光するテルビウム錯体で例示される希土類金属錯体が挙げられる。
【0054】
反射膜層は、金属メッキや金属蒸着によって形成される被膜である。シリコーン樹脂基材を形成しているシリコーン樹脂に金属メッキ処理や金属蒸着処理を施し易い。反射膜層は、銀メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、金メッキであってもよく、アルミニウム蒸着膜であってもよい。ニッケルメッキは次第に黒ずむようになり、アルミニウム蒸着膜は表面コートする必要があることから、光還元されて光沢が持続する銀メッキが好ましい。シリコーン樹脂は、セラミックスのような孔を有しない緻密な構造であるため、銀等のメッキ金属や蒸着金属の流動やイオン化やマイグレーションを引き起さないうえ、整然と結晶化するため、極めて平滑となる。
【0055】
シリコーン樹脂基材は、強い強度がある。シリコーン樹脂基材は、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレートのようなエンジニアリングプラスチックで成形する場合に生じるひけを発現しない。さらに、シリコーン樹脂基材は、金型で成形したときの転写性に優れ収縮や膨張を生じないので、金型のナノオーダーレベルの凹凸があってもその金型通りの形状に精密かつ正確に成形でき、転写性、寸法安定性に優れる。
【0056】
シリコーン樹脂基材の難燃性を向上させるために無機系難燃剤が含まれていてもよい。無機系難燃剤は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような水和金属化合物類;アンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン化合物、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、ゼオライト、酸化チタンのような無機酸化物;モンモリロナイト、ナノ水和金属化合物、カーボンナノチューブのようなナノフィラー;炭酸カルシウム微粒子、炭酸金属塩、水和金属化合物、銅酸化物、酸化鉄、フェロセン、有機金属化合物が挙げられる。
【0057】
シリコーン樹脂基材は、それの表面反射効率を上げて、光漏れを防止するために、銀蒸着、アルミニウム蒸着のような金属蒸着処理;めっき処理が施されて金属被膜が形成されていてもよい。金属被膜ほどの反射効率でなくてもよい場合には、屈折率の大きな酸化チタンのような白色フィラーや、アルミニウム粉末のような金属フィラーを含有するものであってもよい。それにより、高輝度の発光ダイオード等の光や熱の所為で、黄変してしまうのを、防ぐことができる。
【0058】
シリコーン樹脂基材は、粒系1μm以下の細かなフィラーを用いることにより鏡面状に仕上げることができる。それよりもっと粗いフィラーを用いることにより梨地面状に仕上げることができる。
【0059】
シリコーン樹脂基材含有製品として、シリコーン樹脂基材を発光ダイオードパッケージに用いた例を示したが、反射膜層を有しないシリコーン樹脂基材を発光ダイオード基板に用いたものであってもよく、また半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板に用いたものであってもよく、それらをケースやハウジングとして用いたパッケージであってもよい。
【実施例】
【0060】
以下に示す通り、本発明を適用するシリコーン樹脂基材と、本発明を適用外のシリコーン樹脂基材とを、様々な条件で試作し、それの様々な物性を比較した。
【0061】
(試験1.曲げ強度測定試験(その1)・硬さ測定試験)
フィラーであるアルミナに対するシランカップリング処理の有無による曲げ強度・硬さの物性についての試験を行った。
【0062】
フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;商品名)を80質量部に、ビニルメトキシシランであるシランカップリング剤SZ6300(東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)の1質量部を、撹拌羽根のあるミキサーによる混合する乾式法によりシランカップリング処理し、シランカップリング剤で被覆されたアルミナのフィラーを調製した。それの300質量部を、バインダーであるシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)の100質量部に充填し、コンプレッション成形により、成形して、硬化物であるシリコーン樹脂基材(試験1:試験基材No.1-2)を得た。この基材について、JIS R1601に準じた曲げ強度試験、及びJIS K6253に準じた硬さ試験を行い、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
一方、フィラーとしてシランカップリング剤処理していないアルミナを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂基材(試験1:試験基材No.1-2)を得た。この基材について、同様にして、曲げ強度試験及び硬さ試験により、強度・硬さの物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかな通り、バインダーとシランカップリング剤で被覆されたフィラーとが混合されつつ含有されて成形されているシリコーン樹脂基材No.1-1の方が、シランカップリング剤を有しないシリコーン樹脂基材No.1-2よりも、曲げ強度及び硬さの点で、優れていた。
【0066】
(試験2.曲げ強度測定試験(その2))
フィラーであるアルミナに対するシランカップリング処理の有無とアルミナの充填量とによる曲げ強度物性についての試験を行った。
【0067】
アルミナの量を、全体量に対し、0質量%、60質量%、75質量%としたこと以外は、試験1と同様にして、シランカップリング処理又は未処理のアルミナを用いたシリコーン樹脂基材を作製し、試験1と同様にして曲げ強度試験を行った。その結果を図2に示す。
【0068】
図2から明らかな通り、シリコーン樹脂基材は、シランカップリング処理したアルミナを多く含有するほど、曲げ強度が増強していたが、シランカップリング未処理のアルミナの含有量に関わらず曲げ強度が殆ど変化しなかった。
【0069】
(試験3.熱伝導率測定試験)
フィラーであるアルミナの含有量毎の熱伝導率の物性についての試験を行った。
【0070】
バインダーであるシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)へ、その全体量に対し、フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;製品名)の0質量%、10質量%、30質量%、50質量%、60質量%、80質量%を夫々充填し、170℃で平板に成形し、シリコーン樹脂基材を得た。それらの熱伝導率を、迅速熱伝導率計(京都電子工業株式会社製;商品名)で測定した。その結果を図3に示す。
【0071】
図3から明らかな通り、フィラーの充填量を多くするほど熱伝導率を向上させることができる。なお、フィラーの種類を変更しても熱伝導率を変化させることもできる。
【0072】
(試験4.線膨張係数測定試験)
フィラーであるアルミナの含有量毎の線膨張係数の物性についての試験を行った。
【0073】
試験1と同様にして、フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;製品名)を80質量部に、ビニルメトキシシランであるシランカップリング剤SZ6300(東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)を、乾式法によりシランカップリング処理し、シランカップリング剤で処理したアルミナのフィラー(添加配合数0、150、300phr:phrはパーツハンドレッドラバー:parts hundred rubber)を夫々調製した。それを、バインダーであるシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)に充填し、コンプレッション成形により、成形して、シリコーン樹脂基材(試験基材No.4-1?4-3)を得た。この基材について、JIS K7197のプラスチックの熱機械分析による線膨率試験方法を行い、線膨張係数の物性を測定した。その結果を表2、及び図4に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2及び図4から明らかな通り、フィラーの量が多いほど、またシランカップリング処理したフィラーよりも未処理のフィラーの方が、線膨張係数を低下させることができる。
【0076】
(試験5.透過率測定試験・反射率測定試験)
フィラーであるアルミナ又は酸化チタンの含有量毎の透過率と反射率との物性についての試験を行った。
【0077】
フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;商品名)、又は酸化チタンTTO-51(石原産業株式会社製;商品名)の20質量%、40質量%、60質量%をシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)に夫々充填し、金型を用いたコンプレッション成形により、成形して、硬化物であるシリコーン樹脂基材を得た。夫々の透過率と反射率とを、分光光度計UV-3150(株式会社島津製作所製;商品名)により測定した。その結果を、図5に示す。
【0078】
図5から明らかな通り、フィラーがアルミナであるよりも酸化チタンである方が、シリコーン樹脂基材の透過率が低く、何れも40質量%、60質量%含まれていると、透過率が極めて低く、光の遺漏が殆ど認められない。一方、フィラーがアルミナであるよりも酸化チタンである方が、シリコーン樹脂基材での420nm以上の反射率が高い。フィラーがアルミナである方が酸化チタンであるよりも、低波長での320nm近傍の低波長での反射率が高い。
【0079】
(試験6.表面粗さ測定試験)
フィラーであるアルミナの粒径と表面粗さの物性についての試験を行った。
【0080】
信越化学製シリコーン樹脂KJR632に対して、粒径の異なる1乃至2種のアルミナを、計300phrの割合で充填し、鏡面金型にて成形した成形物(試験6:試験基材No.6-1?6-6)の表面粗さを測定した。表面粗さ測定は、表面粗さ・輪郭複合測定機(ACCRETECH社製)を用い、JIS-94規格に基づき測定を実施した。その結果を、表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
表3から明らかな通り、アルミナの粒径に応じて、表面粗さを調整することができる。
【0083】
(試験7.熱安定性試験)
シリコーン樹脂基材の熱安定性の物性についての試験を行った。
【0084】
試験1で作製したのと同様なシリコーン樹脂基材を作製した。それを、150℃の循環式オーブン内に、クリップで吊るし、100時間、200時間、400時間、700時間、800時間経過後に、全光線透過率を測定した。なお、対照としてエポキシ樹脂製の基材を用いた。その結果を図6に示す。図6から明らかな通り、シリコーン樹脂基材は、長期間加熱しても、黄変も透過率低下も起こっていない。一方、エポキシ樹脂製の基材は、経時的に長波長側の透過率が低下しており、品質の劣化が認められた。
【0085】
(試験8.紫外線安定性試験)
シリコーン樹脂基材の紫外線安定性の物性についての試験を行った。
【0086】
試験1で作製したのと同様なシリコーン樹脂基材を作製した。それを、100mJ/cm^(2)/分のブラックランプで紫外線に曝し、24時間、46時間、117時間、208時間経過後に、全光線透過率を測定した。なお、対照としてエポキシ樹脂製の基材を用いた。その結果を図7に示す。図7から明らかな通り、シリコーン樹脂基材は、長期間紫外線に曝されても、黄変も透過率低下も起こっていない。一方、エポキシ樹脂製の基材は、経時的に長波長側の透過率が低下しており、品質の劣化が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のシリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1はシリコーン樹脂基材、2はシリコーン樹脂のバインダー、3はフィラー、4は反射膜層、5はフィルター、6は発光ダイオード、7は導線、8は窪み、9はレンズ、11はシリコーン樹脂基材含有製品である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加反応又は縮合反応により三次元架橋をし得る40℃?130℃に融点を持たないポリシロキサン化合物と、酸化チタン粉末又はアルミナ粉末を含むフィラーと、シランカップリング剤とを、混合して含有させた組成物で、成形して、前記フィラーとして前記酸化チタン粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも90%であり、フィラーとしてアルミナ粉末を含有するシリコーン樹脂基材での反射率が波長420nm以上で少なくとも80%であるシリコーン樹脂基材を製造する方法であって、
前記付加反応又は縮合反応によって前記ポリシロキサン化合物及び/又は前記シランカップリング剤がシリコーン樹脂へと硬化して、前記三次元架橋をして、前記シリコーン樹脂基材を前記成形で製造しており、
前記シランカップリング剤が、アルキルオキシ基、ビニル基、アミノ基、及びエポキシ基から選ばれる少なくとも何れかの反応性官能基を有しており、
前記ポリシロキサン化合物と前記フィラーと前記シランカップリング剤との加熱又は光照射により前記三次元架橋をした前記シリコーン樹脂となることによって前記シリコーン樹脂に前記フィラーが含まれて、前記成形がなされていることを特徴とするシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項2】
前記フィラーが、マグネシア粉末、チッ化アルミニウム粉末、チッ化ホウ素粉末、チッ化ケイ素粉末、グラファイト粉末、カーボン粉末、シリカ粉末、炭化ケイ素粉末、炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、ムライト粉末、ダイヤモンド粉末、銅粉末、アルミニウム粉末、銀粉末、鉄粉末、レジンパウダー、チタン酸バリウム粉末、シルク、カオリン粉末、酸化鉄粉末、酸化亜鉛粉末、シリカアルミナ粉末、タルク粉末、ガラスファイバー、カーボンファイバー、及び/又は着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、又はアルミネートカップリング剤と架橋反応する前記ポリシロキサン化合物により、前記三次元架橋をしていることを特徴とする請求項1?2の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が、前記ポリシロキサン化合物の不飽和基又はヒドロシリル基に付加する不飽和基を有していることを特徴とする請求項3に記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項5】
前記ポリシロキサン化合物と、前記フィラーと、前記シランカップリング剤とが混合されつつ含有されて、前記成形がなされていることを特徴とする請求項3?4の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサン化合物と、シランカップリング剤で被覆された前記フィラーとが混合されつつ含有されて、前記成形がなされていることを特徴とする請求項3?5の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項7】
反射膜層で被覆されていることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項8】
前記酸化チタン粉末が、平均粒径を10?100nmとすることを特徴とする請求項1?7の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項9】
前記フィラーが、40?90質量%含有されていることを特徴とする請求項1?8の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項10】
前記ポリシロキサン化合物が、ジフェニルシロキシ基及び/又はジメチルシロキシ基と、加水分解性基含有-、アルキルオキシ含有-、ジアルキルオキシ含有-、ビニル含有-、ジビニル含有-、ヒドロ含有-、及びジヒドロ含有-シリル基から選ばれる少なくとも何れかとを有し前記付加反応又は縮合反応により前記三次元架橋をし得るポリシロキサン化合物であることを特徴とする請求項1?9の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項11】
金属メッキと金属蒸着とから選ばれる表面加工処理が施されていることを特徴とする請求項1?10の何れかに記載のシリコーン樹脂基材の製造方法。
【請求項12】
発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板、およびそれらのパッケージの何れかの製品であり、その基板、その部材、及び/又はパッケージが、請求項1?11の何れかの製造方法によるシリコーン樹脂基材で形成されていることを特徴とするシリコーン樹脂基材含有製品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-02 
出願番号 特願2013-45473(P2013-45473)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 大島 祥吾
小柳 健悟
登録日 2015-04-03 
登録番号 特許第5722368号(P5722368)
権利者 株式会社朝日ラバー
発明の名称 シリコーン樹脂基材の製造方法  
代理人 特許業務法人眞久特許事務所  
代理人 特許業務法人眞久特許事務所  
代理人 小宮 良雄  
代理人 大西 浩之  
代理人 大西 浩之  
代理人 小宮 良雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ