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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
管理番号 1321229
異議申立番号 異議2016-700143  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-19 
確定日 2016-09-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5764654号発明「液体洗浄剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5764654号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。 特許第5764654号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5764654号の請求項1ないし6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成24年4月27日(特許法第41条に規定される特許出願等に基づく優先権主張:平成23年4月28日、平成23年5月18日、平成23年5月18日)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年2月19日に、特許異議申立人番場大円により特許異議の申立てがなされ、同年4月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があったものである。

第2 訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア、イのとおりである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「xとyはそれぞれ1?7の整数であり、x+y=8である。」と記載されているのを「xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。」に、「p+qは1?10」と記載されているのを「p+qは3?4である。」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2から6も同様に訂正されることとなる。)

イ 訂正事項2
明細書の段落【0106】【表5】の「実施例33」を「参考例33」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について

ア 訂正事項1
訂正事項1は、「xとyはそれぞれ1?7の整数であり、x+y=8である。」と記載されているのを「xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。」に、「p+qは1?10」と記載されているのを「p+qは3?4である。」のように特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、明細書の段落【0015】の「その中でも、C_(x)H_(2x+1)、C_(y)H_(2y+1)は、プロピル基とペンチル基との組合せ(xとyの一方が3で、他方が5であること)が特に好ましい。」との記載、及び、同段落【0016】の「p+qは、より具体的には、好ましくは1?5であり、特に、好ましくは3?4である。」との記載を根拠とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1?6は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2?6が引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、p=q=0であって、p+q≠3?4でない実施形態が、本件特許の実施例でなく、参考例であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の整合を図るものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項及び第6項のいずれにも適合するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許について

本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下、項番に従い、「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ、下記の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記一般式(a1)で表される化合物(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを含有し、
(a)成分/(b)成分で表される質量比が0.5?6であることを特徴とする液体洗浄剤。
【化1】

[式中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]
【請求項2】
脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c)をさらに含有することを特徴とする、請求項1記載の液体洗浄剤。
【請求項3】
下記一般式(d1)で表される化合物(d)をさらに含有することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の液体洗浄剤。
【化2】

[式(d1)中、iとjはそれぞれ1?6の整数であり、6≦i+j≦12である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。sはPOの平均繰返し数、tはEOの平均繰返し数を表し、s+tは6?12である。]
【請求項4】
[(a)成分+(b)成分]/(d)成分で表される質量比が2?15であることを特徴とする、請求項3記載の液体洗浄剤。
【請求項5】
下記一般式(f1)で表される化合物(f)をさらに含有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の液体洗浄剤。
【化3】

[式中、R^(1)は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。nは平均繰返し数を表し、1?4の数である。]
【請求項6】
[(a)成分+(b)成分]/(f)成分で表される質量比が3?160であることを特徴とする、請求項5記載の液体洗浄剤。」

第4 申立て理由の概要

特許異議申立人番場大円は、下記申立て理由1ないし3により本件特許1ないし6は取り消されるべきものである旨主張している。

(1)申立て理由A
本件発明1、2は、いずれも甲第1号証にその構成のすべてが記載されているので、新規性を欠くものであり、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立て理由B
本件発明1ないし4は、甲第1号証に適宜甲第2号証、甲第3号証等を参照することにより容易に想到しうるものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立て理由C
本件発明1ないし6に対する本件特許は、特許法第36条第6項第1号又は同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第5 申立て理由A及びBについて

1.刊行物
(1)甲第1号証:特開2010-275476号公報(以下、「甲1文献」という。)
(2)甲第2号証:特開昭51-109002号公報(以下、「甲2文献」という。)
(3)甲第3号証:特開2010-13579号公報(以下、「甲3文献」という。)

2.刊行物に記載の事項
(1)甲1文献に記載の事項
(1a)
「【請求項1】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)およびアミンオキシド型界面活性剤を含む界面活性剤30?60質量%と、ハイドロトロープ剤(ただし、水溶性有機溶剤を除く)0.01?10.00質量%と、水溶性有機溶剤0.01?10.00質量%とを含有し、25℃における粘度が50?150mPa・sである液体洗浄剤組成物であって、
25℃における粘度の最大値は、濃度50?70質量%の範囲内に存在し、250mPa・s以下であり、
かつ、濃度40質量%の25℃における粘度が80?150mPa・sであることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の含有量が10?30質量%であり、
前記アミンオキシド型界面活性剤が、モノ長鎖アルキルまたはアルケニル第3級アミンオキシド(B)であり、かつ該モノ長鎖アルキルまたはアルケニル第3級アミンオキシド(B)の含有量が2?10質量%であり、
前記界面活性剤が、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド(C)をさらに含み、かつ該ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド(C)の含有量が3?10質量%であり、
前記ハイドロトロープ剤が、p-トルエンスルホン酸またはその塩(D)を含み、かつ該p-トルエンスルホン酸またはその塩(D)の含有量が0.01?10.00質量%であり、
(A)/(B)で表される質量比が3?5、(C)/[(A)+(B)]で表される質量比が0.2?0.5であることを特徴とする請求項1に記載の液体洗浄剤組成物。」

(1b)
「【0023】
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)(以下、「(A)成分」という。)は、主に液体洗浄剤組成物の初期粘度を調整することを目的として配合される。
(A)成分は下記一般式(1)で表される。
【0024】
【化1】

【0025】
式(1)中、R^(1)はアルキル基またはアルケニル基である。これらアルキル基およびアルケニル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
アルキル基としては、炭素数8?18のアルキル基が好ましい。一方、アルケニル基としては、炭素数8?18のアルケニル基が好ましい。
洗浄力が向上する観点から、R^(1)としては炭素数10?14のアルキル基、または炭素数10?14のアルケニル基が好ましい。
【0026】
M^(1)は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンである。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
洗浄力が向上する観点から、M^(1)としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウムが好ましい。
【0027】
mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?10である。
洗浄力および低温安定性が向上する観点から、mは1?5が好ましい。」

(1c)
「【0045】
陽イオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。 (A)成分以外の陰イオン性界面活性剤としては、例えば第2級アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸石鹸、リン酸エステル塩系界面活性剤、アシルアラニネート、アシルタウレート等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばアルキル酢酸ベタイン、アルカノールアミドプロピル酢酸ベタイン、アルキルイミダゾリン、アルキルアラニン等が挙げられる。
(C)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、例えば(C)成分以外の脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールグルカミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。」

(1d)
「【0062】
[使用原料]
(界面活性剤)
・AES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、上記一般式(1)において、R^(1)=炭素数12?16のアルキル基の混合物、M^(1)=ナトリウム、m=2。
なお、AESは以下のようにして調製した。
原料アルコ-ルとして、アルコール(シェルケミカルズ社製の「ネオドール23」と、P&G社製の「CO1270A」の1:1混合物)を用いた。
4Lのオートクレーブ中に、前記アルコ-ル400gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、撹拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながらエチレンオキシド184gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物(アルコールエトキシレート)を得た。
次に、このようにして得たアルコールエトキシレート280gを、撹拌装置付の500mLフラスコにとり、窒素置換した後、液体無水硫酸(サルファン)78gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりAESを得た。」

(2)甲2文献に記載の事項
(2a)特許請求の範囲
「一般式(I)

〔式中、R_(1)は炭素数が6ないし15でありかつ平均炭素数が8ないし13である炭素数分布を有する直鎖アルキル基であり、nは混合物の平均値として0.5ないし1.5である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムあるいはアルカノールアミンのいずれかである。〕
で表わされる直鎖アルキルエーテルサルフエートの70重量%以下と、一般式(II)

〔式中、R_(2)は炭素数が1ないし12の、R_(3)は炭素数が1ないし4の直鎖アルキル基であり、かつ

は平均炭素数が8ないし13であるような炭素数分布を有する。n及びMは式(I)の記号と同一の意味を表わす。〕
で表わされる分岐鎖アルキルエーテルサルフエートの30重量%以上との混合物を洗浄活性成分の全部または一部として含むことを特徴とする洗浄剤組成物。」

(2b)3頁左上欄19行?右上欄11行
「本発明の洗浄剤では、エーテルサルフエートのこのようなアルキル基の炭素数分布、分岐鎖率およびそれに付加したエチレンオキサイドの付加モル数との微妙なバランスが重要である。即ちアルキル基の炭素数が大きくなりすぎても、分岐鎖率が30%以下になつてもあるいはエチレンオキサイドの付加モル数が1.5を越えるようになつてもいずれの場合でも得られる洗浄剤は泡切れが悪くなる。また、エチレンオキサイドの付加モル数が0.5?1.5という本発明の範囲にあるとき、アルキル基の炭素数が小さい程また分岐鎖率が大きい程すゝぎ性及び耐硬水性が良い。」

(2c)5頁左下欄16行?6頁右上欄14行
「実施例2.
下記の配合組成の衣料用粉末洗剤を用いて、そのうちのアルキルエーテルサルフエートのみをいろいろと種類を変えて洗濯後のすゝぎ性を調べた。すゝぎ性の試験方法は実施例1と同じである。
洗剤配合組成

以上のすゝぎ性試験の結果を表-2に示す。

注):○*印の洗剤番号のものが本発明の洗剤である。
○洗剤1は前記配合組成にてエーテルサルフエートの代りに全部ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダとしたものである。
この結果から明らかなように、本発明の洗剤は1回目のすゝぎでほゞ泡が消え、2回目のすゝぎでは全く泡が消失してしまい、優れたすゝぎ性を有するが、アルキル基の分枝鎖率の小さいもの、平均炭素数の大きいもの、エチレンオキサイドの付加モル数の大きいもの等の従来のエーテルサルフエートを配合した洗剤は2回すゝぎ後でもかなりの泡立ちがありすゝぎ性が極めて悪い。」

(3)甲3文献に記載の事項
(3a)
「【請求項1】
(a)炭素数10?16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔以下、(a)成分という〕、(b)下記一般式(1)で示されるアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、水並びに、(c)ハイドロトロープ剤〔以下、(c)成分という〕及び(d)有機溶剤〔以下、(d)成分という〕から選ばれる1種以上の成分、を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分中の分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10?50質量%であり、(b)/(a)のモル比が0.3?1.2であり、20℃の粘度が250mPa・s以下である液体洗浄剤組成物。
【化1】

〔式中、R^(10)は炭素数10?18の炭化水素基、R^(11)及びR^(12)はそれぞれ炭素数1?3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕」

(3b)
「【0004】
近年、環境負荷の観点から、界面活性剤の濃度を高め、容器の樹脂量を低減させた濃縮タイプの液体洗浄剤が好まれて使用されている。しかしながら、界面活性剤濃度の増加は、洗浄剤の貯蔵安定性、特に低温での貯蔵安定性を低下させる原因となる。また、こうした貯蔵安定性を維持しつつ優れた洗浄力を得ることが望まれる。
【0005】
本発明は、高濃度の界面活性剤系であっても、低温の貯蔵安定性に優れ、且つ優れた洗浄力を有する液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、分岐鎖アルキル基を所定比率で含むポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とアルキルエーテルアミンオキシドを用いることで前記課題を解決できることを見出した。」

(3c)
「【0064】
・ES-I:下記製法(1)によって得られたポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(アルキル基が炭素数12及び13のアルキル基の混合であって、分岐率20質量%、オキシエチレン平均付加モル数が2の化合物)
製法(1):1-ドデセン及び1-トリデセン40/60(質量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールにEOを平均2モル付加させた後、三酸化硫黄により硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した。全ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム中の全ポリオキシエチレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸ナトリウムの割合は20質量%であった。」

3.甲1文献に記載された発明

ア. 上記摘示事項(1a)、(1c)によれば、甲1文献には、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の含有量が10?30質量%であり、モノ長鎖アルキルまたはアルケニル第3級アミンオキシド(B)であるアミンオキシド型界面活性剤の含有量が2?10質量%であり、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド(C)の含有量が3?10質量%である、これらを含む界面活性剤30?60質量%と、ハイドロトロープ剤(ただし、水溶性有機溶剤を除く)0.01?10.00質量%と、水溶性有機溶剤0.01?10.00質量%とを含有し、さらに、任意成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む液体洗浄剤組成物であって、(A)/(B)で表される質量比が3?5である液体洗浄剤組成物」が記載されていると認められる。

イ. 上記摘示事項(1b)によれば、甲1文献に記載の「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)」は、下記一般式(1)で表されるものである場合が含まれる。


[式(1)中、R^(1)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい炭素数10?14のアルキル基であり、M^(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンであり、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?5である。]」

上記ア、イの検討事項より、甲1文献には、
「下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)の含有量が10?30質量%であり、モノ長鎖アルキルまたはアルケニル第3級アミンオキシド(B)であるアミンオキシド型界面活性剤の含有量が2?10質量%であり、ポリオキシアルキレン脂肪酸モノエタノールアミド(C)の含有量が3?10質量%である、これらを含む界面活性剤30?60質量%と、ハイドロトロープ剤(ただし、水溶性有機溶剤を除く)0.01?10.00質量%と、水溶性有機溶剤0.01?10.00質量%とを含有し、さらに、任意成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む液体洗浄剤組成物であって、(A)/(B)で表される質量比が3?5である液体洗浄剤組成物。

[式(1)中、R^(1)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい炭素数10?14のアルキル基であり、M^(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンであり、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?5である。]」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比・検討

(4-1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
○甲1発明の「液体洗浄剤組成物」は、本件発明1の「液体洗浄剤」に相当する。

○甲1発明の「下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)

[式(1)中、R^(1)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい炭素数10?14のアルキル基であり、M^(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンであり、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?5である。]」と本件発明1の「下記一般式(a1)で表される化合物(a)

[式中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」とは、「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩」である点で一致する。

○甲1発明の「モノ長鎖アルキルまたはアルケニル第3級アミンオキシド(B)であるアミンオキシド型界面活性剤」は、本件発明1の「半極性界面活性剤」に相当する。

○甲1発明の「A/Bで表される質量比が3?5」と、本件発明1の「(a)成分/(b)成分で表される質量比が0.5?6」とは、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩/半極性界面活性剤で表される質量比が3?5」である場合を含む点で、重複一致する。

上記より、本件発明1と甲1発明とは、
「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩と、半極性界面活性剤とを含有し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩/半極性界面活性剤で表される質量比が3?5である液体洗浄剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が、本件発明1では、「下記一般式(a1)で表される化合物(a)

[式中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]」であることが特定されているのに対し、甲1発明では、「下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(A)

[式(1)中、R^(1)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい炭素数10?14のアルキル基であり、M^(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンであり、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?5である。]」である点。

<相違点>について
甲1発明の一般式(1)は、『「R^(1)は、」「分岐鎖状であって」「炭素数10」「のアルキル基であり、M^(1)はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンであり、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、1?5である。」』場合があるところ、炭素数10の分岐鎖状には、炭素数3と炭素数5のアルキル基がエチレン基の2位の炭素原子に置換したR^(1)が包含され、また、mが3?4の場合が許容されていると認められるが、この場合に、本件発明1の化合物(a)と一致するから、甲1発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、本件発明1の一般式(a1)で表される化合物(a)の一部の態様をその下位概念として一応包含しているといえる。
そこで、本件発明1において、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いたことによる有利な効果の有無について、以下検討する。

<効果>について
本件特許明細書の実施例を参照すると、一般式(a1)で表される化合物(a)の具体例として、実施例では、x=3、y=5、p+q=3の化合物(a-1)、x=3、y=5、p+q=4の化合物(a-2)、x=3、y=5、p+q=4の化合物(a-3)が用いられる一方、比較例では、x=4、y=6、p+q=2の化合物(a’-1)、x=3、y=5、p+q=0の化合物(a’-2)、炭素数13の分岐アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物(a’-3)、炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物(a’-4)、炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均2モル付加品の硫酸化物(a’-5)が用いられている。そして、化合物(a-1)?(a-3)が用いられた実施例1?13等では、「泡の立ちやすさ」、「洗浄済み実感」、「すすぎ性の評価」、「洗浄力」等の全ての評価項目で良好な結果が得られているのに対し、化合物(a’-1)?(a’-5)が用いられた比較例1?4等では、何らかの評価項目で良好な結果が得られていない。
したがって、アルキルエーテル部分が特定の炭素数のアルキル基であって、エチレンオキシド繰り返し単位が特定の数である本件発明1のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いることによって、他のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩に比して、上記の全ての評価項目で同時に良好な結果を示す点で、優れた作用効果を奏していると認められる。

一方、甲1文献には、上記摘示事項(1b)によれば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩中のアルキル基として分岐鎖状のものを選択しても良いことが記載されているが、分岐鎖状のものを用いた場合の効果については記載されておらず、また、上記摘示事項(1d)によれば、実施例で用いられている ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩のアルキル基は、「炭素数12?16のアルキル基の混合物」であり、分岐鎖状を意図するものでない。
また、甲2文献には、上記摘示事項(2a)によれば、分岐鎖アルキルエーテルサルフエートを一定量配合した洗浄剤組成物が開示されており、これは、上記摘示事項(2b)によれば、「エチレンオキサイドの付加モル数が0.5?1.5という本発明の範囲にあるとき、アルキル基の炭素数が小さい程また分岐鎖率が大きい程すゝぎ性及び耐硬水性が良い」との知見に基づくものであり、上記摘示事項(2c)の表-2によれば、実施例で、洗剤番号4として、アルキル基平均炭素数10.0、EO平均付加モル数3.0のエーテルサルフエートが分岐鎖率25重量%の混合物として用いられているが、当該分岐鎖状のエーテルサルフエートを、本件特許1の一般式(a1)と同様に表すと、x+y=8、p+q=3となり、これを一定量混合した洗剤を用いた場合にすすぎ性が良好になることが理解される。しかし、甲2文献では、洗剤13を参照すると、x+y=10.4であっても、x+y=8と同程度の評価がされているところ、本件特許明細書では、x+y=10である化合物(a’-1)を用いた比較例1では、すすぎ性は実施例と同程度に良好な結果が得られているものの、「泡立ちやすさ」、「洗浄済み実感」が実施例より劣る結果が示されているように、本件特許1は、甲2文献で開示されていない程度に、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を限定することで、甲2文献で開示されていない新たな効果を奏するものといえる。
また、甲3文献には、上記摘示事項(3a)によれば、分岐鎖アルキル基を持つ化合物の割合が10?50質量%である炭素数10?16のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を含有する液体洗浄剤組成物が開示されており、上記摘示事項(3b)によれば、分岐鎖アルキル基を所定比率で含むポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とアルキルエーテルアミンオキシドを用いることで高濃度の界面活性剤系であっても、低温の貯蔵安定性に優れ、且つ優れた洗浄力を有する液体洗浄剤組成物を提供できることを見出したものであり、上記摘示事項(3c)によれば、実施例では、1-ドデセン(C_(10)H_(21)CH=CH_(2))及び1-トリデセン(C_(11)H_(23)CH=CH_(2))40/60(質量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールが用いられているが、この場合、x+y=11?12となる。したがって、x+y=8の場合の効果については検討がされておらず、また、甲3文献より、上記のとおりの本件特許1が有する効果を類推することは困難である。
このように、いずれの文献を参照しても、本件特許1が有する効果を予測することは困難であるから、本件特許1は、従来技術と比して、有利な効果を有するといえる。

したがって、本件特許1は、当業者といえども、甲1発明及び甲1?甲3に記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(4-2)本件発明2?6について
本件特許2?6は、本件特許1をさらに限定するものであるから、本件特許2?6も、本件特許1と同様の理由により、甲1発明及び甲1?甲3に記載の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものでない。

第6 申立て理由Cについて

本件特許明細書の段落【0004】を踏まえると、本件発明が解決しようとする技術課題は、『「起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できる」、「油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡立ち性とすすぎ性のいずれも優れた」、「優れた洗浄性能を有し、かつ、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制された」液体洗浄剤』を提供することにあると認められる。
そして、そのような液体洗浄剤について、同段落【0005】には、「本発明者らは鋭意検討した結果、一般に会合状態を形成しにくく、低起泡性組成物用として好適な成分とされる分岐鎖状の化合物の中から特定の構造を有する陰イオン界面活性剤を選択し、これ以外の洗浄成分と、所定の配合比率で併用することにより、起泡力(泡の立ちやすさ、泡量)を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、スポンジと食器類等との間の摩擦感が変化して、食器類等から汚れが落ちたことを実感できること、を見出し、本発明を完成するに至った」と記載がされており、本件発明は、「分岐鎖状の化合物の中から特定の構造を有する陰イオン界面活性剤」を選択したことにより、上記技術課題の解決を図るものであるといえ、実際、実施例では、化合物(a)として、段落【0072】?【0074】に記載の「a-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=3、M=ナトリウムに相当」、「a-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=4、M=ナトリウムに相当」、「a-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記一般式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=1、q=3、M=ナトリウムに相当」の3種、つまり、x=3、y=5、p+q=3?4(p=0?1、q=3?4)である化合物(a)を用いた場合に、上記技術課題を解決できることが確認されている。
そして、本件発明1?6は、いずれも、x=3、y=5、p+q=3?4である化合物(a)を用いることを発明特定事項の一つとするものであるから、本件発明1?6は、上記技術課題を解決し得るものとして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえる。

第7 まとめ

上記「第5」、「第6」で検討したとおり、特許異議申立人番場大円によりされた特許異議の申し立ての理由1?3及び証拠によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液体洗浄剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤に関する。
本願は、2011年4月28日に、日本に出願された特願2011-102349号、および2011年5月18日に日本に出願された特願2011-111607号、特願2011-111458号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
食器類又は調理用具等の洗浄は、通常、台所用の液体洗浄剤をスポンジに注ぎ足しながら行われる。台所用の液体洗浄剤においては、食器類又は調理用具等に付着した油汚れに対して高い洗浄力、泡立ち、泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)が求められている。
油汚れに対する洗浄力や泡立ち、泡立ち性の向上を図るため、台所用の液体洗浄剤には、従来、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などの洗浄効果を発揮する成分が適宜組み合わされて配合されている。
たとえば、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と、アミンオキシド型界面活性剤とを含有する液体洗浄剤が提案されている(特許文献1、2参照)。
たとえば、特定のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と、アミンオキシド型界面活性剤と、ハイドロトロープ剤と、有機溶剤と、2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとを含有する液体洗浄剤が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-156589号公報
【特許文献2】特開2008-156590号公報
【特許文献3】特開2010-13579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スポンジを使用して食器類等を洗浄している間、食器類等の表面が泡で覆われているため、従来の液体洗浄剤では、洗浄中に汚れ落ちを確認することは難しい。このため、すすぎを終えた後でないと、食器類等から汚れが落ちたことを確認できず、すすぎを終えた後で食器類等に汚れが残存していたことが確認された場合、洗浄をやり直さなければならないという問題がある。単に、低起泡性の洗浄剤を用いると、泡量が充分でない又は泡の立つのが遅い等の理由により、食器類等の汚れ落ちに対する満足感が得られにくい。
加えて、食器類又は調理用具等を洗浄中に泡量が減少してきた場合や、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する場合は、液体洗浄剤をスポンジにあらたに注ぎ足して洗浄が行われる。
しかしながら、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とアミンオキシド型界面活性剤とを含有する従来の液体洗浄剤においては、泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)が不充分である。また、液体洗浄剤がスポンジに多量に注ぎ足されてその使用量が増えると、すすぎ性(ヌルツキのなさ、泡切れ)が悪くなる、という問題がある。特に、スポンジに注ぎ足された液体洗浄剤が食器類等に直接付着した場合には、すすぎにより食器類等からヌルツキが感じられなくなるまでに時間を要し、手間が掛かる。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩とアミンオキシド型界面活性剤とを含有する液体洗浄剤は、優れた洗浄力や泡立ち性を有するものの、すすぎにより手肌から界面活性剤の影響によるヌルつきが感じられなくなるまでに時間を要し、手間が掛かる、水の使用量が多くなる、という問題がある。特に、液体洗浄剤がスポンジに多量に注ぎ足されてその使用量が増えた場合、かかる問題が顕著になる。
特許文献3に記載された発明では、2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテルの配合により、食器類等の洗浄時のヌルつき低減が図られているものの、そのヌルつき低減効果は不充分である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できる液体洗浄剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡立ち性とすすぎ性のいずれも優れた液体洗浄剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、優れた洗浄性能を有し、かつ、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制された液体洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
汎用されている直鎖アルコールエトキシサルフェートと、アミンオキシド型の半極性界面活性剤又は両性界面活性剤との組合せでは、洗浄力や泡立ちの向上を図れるものの、洗浄中に、食器類等の表面が泡に覆われてしまい、汚れの落ち具合がすすいだ後でないと確認できない。これに対して、かかる界面活性剤の組合せにおいて、汚れの除去性を高めるために界面活性剤量を増量すると、すすぎ性(泡切れの良さ、ヌルツキのなさ)が劣るようになり、一方、洗浄中の泡量を抑えるために界面活性剤量を低減すると、泡の立つのが遅くなる等の問題がある。
本発明者らは鋭意検討した結果、一般に会合状態を形成しにくく、低起泡性組成物用として好適な成分とされる分岐鎖状の化合物の中から特定の構造を有する陰イオン界面活性剤を選択し、これ以外の洗浄成分と、所定の配合比率で併用することにより、起泡力(泡の立ちやすさ、泡量)を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、スポンジと食器類等との間の摩擦感が変化して、食器類等から汚れが落ちたことを実感できること、を見出し、本発明を完成するに至った。
また、発明者らは、一般に会合状態を形成しにくく、低起泡性組成物用として好適な成分とされる分岐鎖状の化合物の中から、特定の構造を有する陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との組合せを選択すると共に、これら以外の洗浄成分と当該陰イオン界面活性剤とを所定の配合比率で併用することにより、上述した課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、一般に会合状態を形成しにくく、低起泡性組成物用として好適な成分とされる分岐鎖状の化合物の中から、特定の構造を有する陰イオン界面活性剤を選択し、これ以外の洗浄成分と、特定のアルキルグリセリルエーテルとを併用することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の液体洗浄剤の一態様は、下記一般式(a1)で表される化合物(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを含有し、(a)成分/(b)成分で表される質量比が0.5?6であることを特徴とする。
【0007】
【化1】

[式中、xとyはそれぞれ1?7の整数であり、x+y=8である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは1?10である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]
また、p+qは0?10でもよい。
【0008】
本発明の液体洗浄剤の一態様においては、脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c)、下記一般式(d1)で表される化合物(d)、下記一般式(f1)で表される化合物(f)から選ばれる化合物をさらに含有することが好ましい。
また、脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c)、下記一般式(d1)で表される化合物(d)、下記一般式(f1)で表される化合物(f)から選ばれる化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0009】
【化2】

[式(d1)中、iとjはそれぞれ1?6の整数であり、6≦i+j≦12である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。sはPOの平均繰返し数、tはEOの平均繰返し数を表し、s+tは6?12である。]
【0010】
【化3】

[式中、R^(1)は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。nは平均繰返し数を表し、1?4の数である。]
本発明の液体洗浄剤においては、[(a)成分+(b)成分]/(d)成分で表される質量比が2?15であることが好ましい。
本発明の液体洗浄剤においては、[(a)成分+(b)成分]/(f)成分で表される質量比が3?160であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体洗浄剤によれば、起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できる。
また、本発明によれば、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡立ち性とすすぎ性のいずれも優れた液体洗浄剤を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた洗浄性能を有し、かつ、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制された液体洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液体洗浄剤の一態様は、前記一般式(a1)で表される化合物(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを含有する。
以下、これらの成分をそれぞれ(a)成分、(b)成分ともいう。
また、本発明の液体洗浄剤は、さらに前記一般式(d1)で表される化合物(d)を含有してもよい。
また、本発明の液体洗浄剤は、さらに前記一般式(f1)で表される化合物(f)を含有してもよい。
本発明の液体洗浄剤は、硬表面用の洗浄剤として好適に利用できる。ここで「硬表面」とは、陶器、磁器、ガラス、硬質プラスチック、金属、塗装金属、タイル等の硬質材料からなる表面をいう。その具体例としては、食器類、調理器具、便器、窓ガラス、乗り物のガラス、めがね、透明プラスチック、鏡;浴槽、浴室の壁や床、流し台、洗面台等が挙げられる。なかでも、本発明の液体洗浄剤は、食器類、調理器具等の台所用の洗浄剤として特に好適に利用できる。
【0013】
<化合物(a)>
本発明の液体洗浄剤において、化合物(a)は、下記一般式(a1)で表される、分岐型アルキル基を有する陰イオン界面活性剤である。
(a)成分を含有することにより、主として、優れた泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)とすすぎ性が付与される。
(a)成分と、後述の(b)成分と(d)成分とを組み合わせて用いることにより、主として、油量の多い汚れに対して、優れた泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)とすすぎ性(ヌルツキのなさ、泡切れ)が得られる。また、油汚れに対して高い洗浄効果が得られる。
(a)成分と、後述の(b)成分と(f)成分とを組み合わせて用いることにより、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制される。
【0014】
【化4】

[式中、xとyはそれぞれ1?7の整数であり、x+y=8である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは1?10である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]
【0015】
前記式(a1)中、xとyは、それぞれ1?7の整数であり、x+y=8である。x+y=8であることにより、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できるようになる(洗浄済み実感が付与される)。また、x+y=8であることにより、泡立ち性とすすぎ性が共に良好となる。また、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制されやすくなる。
C_(x)H_(2x+1)、C_(y)H_(2y+1)としては、それぞれ、直鎖状のアルキル基又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、洗浄済み実感、泡の立ちやすさ、泡立ち性の観点から、並びに泡立ち性とすすぎ性とのバランスから直鎖状のアルキル基が好ましい。そのなかでも、C_(x)H_(2x+1)、C_(y)H_(2y+1)は、プロピル基とペンチル基との組合せ(xとyの一方が3で、他方が5であること)が特に好ましい。
【0016】
前記式(a1)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数をそれぞれ表す。
p+qは1?10であり、下限値として好ましくは1以上であり、特に好ましくは3以上である。また、上限値として好ましくは5以下であり、特に好ましくは4以下である。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。p+qは、より具体的には、好ましくは1?5であり、特に好ましくは3?4である。
p+qは0?10でもよい。p+qが0?10であることにより、洗浄力が優れ、泡立ち性が良好となる。また、液体洗浄剤の低温安定性がより向上する。
また、p+qが前記1?10の範囲であることにより、また、後述の(b)成分との併用により、洗浄中であっても、食器類等から汚れが落ちると、スポンジと食器類等との間に摩擦が生じるようになり、洗浄済み実感を得られやすい。加えて、すすぎ性(泡切れの良さ、ヌルツキのなさ)が良好となる。さらに、洗浄力が高まり、泡が立ちやすくなる。
また、p+qが前記1?10の範囲であることにより、手肌のヌルつきが抑制されやすくなる。加えて、洗浄力が優れ、泡立ち性、すすぎ性が良好となる。
(a)成分は動的界面張力低下能が高いため、(a)成分は洗浄液中での拡散スピードが速い。そして、これに伴って(a)成分と(b)成分は、スポンジと食器類等との間に長く留まることがない。このため、液体洗浄剤を含ませたスポンジで食器類等を洗浄中に、油汚れ等が除去されると、スポンジと食器類等との間に「ギュッギュッ」という摩擦感が感じられるようになる。これにより、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できる、と考えられる。
qは1?10であることが好ましく、1?5であることがより好ましい。
pは、洗浄済み実感、泡立ち、泡立ち性の観点から、また、泡立ち性とすすぎ性とのバランスから、0?9であることが好ましく、0?4であることがより好ましい。
POとEOとが混在している場合、POとEOとの配列状態は特に制限されず、ランダム状に混在していてもよく、ブロック状に混在していてもよい。
p、qは、それぞれPO、EOの「平均」繰返し数を示している。すなわち、式(a1)で表される化合物は、PO、EOの繰返し数が異なる分子(PO又はEOを有しない分子を含む)の集合体である。また、C_(x)H_(2x+1)とC_(y)H_(2y+1)との組合せの異なる分子の集合体であってもよい。
【0017】
前記式(a1)中、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンであり、(C_(x)H_(2x+1))(C_(y)H_(2y+1))CH-CH_(2)O-(PO)p-(EO)q-SO_(3)^(-)とともに水溶性の塩を形成し得るものであればよい。
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0018】
(a)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、(a)成分としては、ガーベット反応による2分子縮合で得られた、β位に分岐構造を有するアルコールのアルキレンオキシド付加物の硫酸化物であることが好ましい。
(a)成分は、ガーベットアルコールのアルキレンオキシド付加物を、槽型反応方式、フィルム型反応方式、管型気液混相流反応方式等を用いて、たとえば液体無水硫酸との混合、又はSO_(3)ガスとの接触などにより硫酸化した後、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニウム又はアルカノールアミン等で中和することにより製造できる。
ガーベットアルコールのアルキレンオキシド付加物の具体例としては、BASF社製のルテンゾールXP30(エチレンオキシドの平均付加モル数3)、ルテンゾールXP40(エチレンオキシドの平均付加モル数4)、ルテンゾールXL40(プロピレンオキシドの平均付加モル数1、エチレンオキシドの平均付加モル数3)(以上、商品名)等が挙げられる。
(a)成分として具体的には、エチレンオキシドの平均付加モル数3のアルキレンオキシド付加物を硫酸化して水酸化ナトリウムで中和した化合物、エチレンオキシドの平均付加モル数4のアルキレンオキシド付加物を硫酸化して水酸化ナトリウムで中和した化合物、プロピレンオキシドの平均付加モル数4のアルキレンオキシド付加物を硫酸化して水酸化ナトリウムで中和した化合物などが好適なものとして挙げられる。
【0019】
液体洗浄剤中、(a)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として、5質量%以上であることが好ましく、15質量%質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。上限値として、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(a)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、5?40質量%であることが好ましく、15?35質量%であることがより好ましく、20?35質量%であることがさらに好ましい。
(a)成分の配合量が下限値未満であると、洗浄済み実感が得られにくくなる。また、泡が立ちにくくなったり、すすぎ性が低下したりしやすい。一方、上限値を超えると、すすぎ性が低下しやすい。
(a)成分の配合量が下限値以上であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性がより良好となる。また、洗浄済み実感(摩擦感、ギュッギュッ感)が得られやすくなる。一方、上限値を超えると、すすぎ性が低下するおそれがある。
【0020】
<両性界面活性剤及び半極性界面活性剤(b)>
本発明においては、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)と前記(a)成分とを所定の配合比率で組み合わせて用いることにより、主として、洗浄中に食器類等から汚れが落ちると、スポンジと食器類等との間に摩擦が生じるようになり、洗浄済み実感が付与される。加えて、油汚れに対して高い洗浄力、良好な泡の立ちやすさとすすぎ性が得られる。
【0021】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、アミノ酢酸ベタイン(アルキルベタイン、アルキルアミドベタインなど)、スルホベタイン(アルキルヒドロキシスルホベタインなど)等のベタイン型のもの;グリシン系のもの(イミダゾリニウムベタインなど)、アミノプロピオン酸系のもの等のアミノ酸型のものなどが挙げられる。
両性界面活性剤として具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン;N-ラウリル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホベタイン、N-ラウリル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホベタイン、N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシ-1-スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン等のスルホベタイン;2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のグリシン系のもの;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアミノプロピオン酸系のものが挙げられる。
【0022】
(半極性界面活性剤)
本発明において、「半極性界面活性剤」とは、半極性結合(無極性結合及び極性結合の中間の性質を有する結合)を有する界面活性剤のことであり、半極性界面活性剤が溶解する溶液又は分散する分散系のpHにより、陽イオン性、陰イオン性、又は両極性となるものをいう。
半極性界面活性剤のなかで好適なものとしては、アミンアルキレンオキサイド型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤などが挙げられる。なかでも、油汚れに対する洗浄力及び泡立ち、並びに泡立ち性が良好であることから、アミンオキシド型界面活性剤が好ましい。
アミンオキシド型界面活性剤としては、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられ、なかでも下記一般式(b1)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0023】
【化5】

[式中、R^(2)は炭素数8?18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基であり、R^(3)、R^(4)はそれぞれ独立して炭素数1?3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R^(5)は炭素数1?4のアルキレン基である。Bは-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-又は-O-である。rは0又は1である。]
【0024】
前記式(b1)中、R^(2)は、炭素数8?18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数8?18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基であり、炭素数8?18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
R^(2)のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は8?18であり、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性、油汚れに対する洗浄力、及び洗浄済み実感の付与効果がより向上することから、10?14であることが好ましい。
R^(3)、R^(4)は、それぞれ独立して、炭素数1?3のアルキル基、又は炭素数1?3のヒドロキシアルキル基であり、炭素数1?3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、R^(3)及びR^(4)はいずれもメチル基であることがさらに好ましい。
R^(5)は、炭素数1?4のアルキレン基である。
Bは-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-又は-O-である。 rは、0又は1であり、0が好ましい。
【0025】
アミンオキシド型界面活性剤として具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド系のもの;ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド等のアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド系のもの等が挙げられる。なかでも、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性、油汚れに対する洗浄力、及び洗浄済み実感の付与効果が特に良好であることから、アルキルジメチルアミンオキシド系のものがより好ましい。
【0026】
(b)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、(b)成分としては、(a)成分と併用して、又は前記(a)成分と後述の(d)成分と併用して、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性、油汚れに対する洗浄力、及び洗浄済み実感の付与効果が特に良好であることから、アミノ酢酸ベタイン、スルホベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド系のもの、又はアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド系のものが好ましく、アルキルジメチルアミンオキシド系のものが特に好ましい。
【0027】
液体洗浄剤中、(b)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、上限値として20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(b)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、2?20質量%であることが好ましく、3?15質量%であることがより好ましく、5?15質量%であることがさらに好ましい。
(b)成分の配合量が前記範囲内であると、洗浄力が高まり、泡がより立ちやすくなる。また、(b)成分の配合量が好ましい下限値以上であると、油汚れに対する洗浄力が高まり、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性がより良好となる(泡立ち性がより向上する)。一方、好ましい上限値を超えると、液体洗浄剤の粘度が増加し過ぎる、泡が立ちにくくなる(泡立ち性が低下する)、また、すすぎ性が低下するおそれがある。
【0028】
本発明において「(a)成分/(b)成分で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(b)成分の含有量に対する、(a)成分の含有量の割合(質量比)を表す。
本発明の液体洗浄剤において、(a)成分と(b)成分との配合比率は、(a)成分/(b)成分で表される質量比が、下限値として0.5以上であり、1.5以上であることが好ましい。また、上限値として6以下であり、5以下であることが好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。(a)成分/(b)成分で表される質量比が、より具体的には、0.5?6であり、好ましくは1.5?5である。
前記質量比が下限値以上であると、洗浄中の洗浄済み実感が得られるようになる。加えて、泡が立ちやすくなり、泡立ち量及び泡の持続性がより向上する。また、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性が共に良好となる。一方、上限値以下であると、洗浄中の洗浄済み実感に加えて、油汚れに対する洗浄力がより向上する。
【0029】
<溶媒:水>
本発明の液体洗浄剤は、液体洗浄剤の調製しやすさ、使用する際の水への溶解性等の観点から、溶媒として水を含有することが好ましい。
液体洗浄剤中の水の配合量は、液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値として、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中の水の配合量は、液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、40?90質量%が好ましく、45?85質量%がより好ましく、50?80質量%がさらに好ましい。
水の配合量が下限値以上であると、経時に伴う液体洗浄剤の液安定性がより良好となり、上限値以下であれば、液粘度が適度に低くなり、使用性の観点から良好となる。
【0030】
<その他の成分>
本発明の液体洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分を任意に配合してもよい。
その他の成分としては、特に限定されず、硬表面用又は衣料用等の洗浄剤に用いられている成分を配合することができ、具体的には以下に示すものが好ましい。
【0031】
(脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c))
本発明の液体洗浄剤においては、脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c)(以下「(c)成分」という。)をさらに含有することが好ましい。(c)成分を含有することにより、主として、洗浄時の泡の持続性、油汚れに対する洗浄力が高まる。
(c)成分のなかで好適なものとしては、下記一般式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化6】

[式中、R^(6)は炭素数5?19のアルキル基を表す。mはオキシエチレン基(-C_(2)H_(4)O-)の平均繰返し数を表し、0?9の数である。]
【0033】
前記式(c1)中、R^(6)は、炭素数5?19のアルキル基を表し、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
R^(6)のアルキル基において、炭素数は5?19であり、油汚れに対する洗浄力、泡の持続性が向上することから、炭素数7?13が好ましい。
mは、オキシエチレン基(-C_(2)H_(4)O-)の平均繰返し数を表し、0?9の数であり、0?4の数であることが好ましく、0?2の数であることがより好ましい。
【0034】
(c)成分として具体的には、ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド(前記式(c1)におけるR^(6)=炭素数11の直鎖状のアルキル基、m=2)、ポリオキシエチレン(2)カプリン酸モノエタノールアミド(前記式(c1)におけるR^(6)=炭素数9の直鎖状のアルキル基、m=2)等が挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレン(2)カプリン酸モノエタノールアミドがより好ましい。
【0035】
(c)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
液体洗浄剤中、(c)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、上限値として15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(c)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、1?15質量%であることが好ましく、より好ましくは2?10質量%である。
(c)成分の配合量が好ましい下限値未満であると、泡の持続性向上の効果が得られにくくなる場合があり、一方、好ましい上限値を超えると、泡の持続性は高まるものの、泡立ちにくくなるおそれがある。
【0036】
本発明の液体洗浄剤において、(c)成分/[(a)成分+(b)成分]で表される質量比は、下限値として0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。また、上限値として0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。(c)成分/[(a)成分+(b)成分]で表される質量比は、より具体的には、0.1?0.5であることが好ましく、0.2?0.4であることがより好ましい。
前記質量比が下限値以上であると、泡の持続性がより向上し、一方、上限値以下であると、泡がより立ちやすくなり、泡立ち性、泡立ち量及びすすぎ性もより良好となる。
本発明において「(c)成分/[(a)成分+(b)成分]で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分との合計の含有量に対する、(c)成分の含有量の割合(質量比)を表す。
【0037】
<化合物(d)>
本発明の液体洗浄剤においては、化合物(d)(以下「(d)成分」という。)を含有することが好ましい。
(d)成分は、下記一般式(d1)で表されるものであり、アルコールにオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の少なくとも一方が導入され、疎水部(炭化水素基)がβ位の炭素原子でC_(i)H_(2i+1)とC_(j)H_(2j+1)とに分岐した構造を有する化合物である。
(d)成分を含有することにより、主として、スポンジに多量の油汚れが付着しても泡立ち性が良好に維持され、また、洗浄剤液が食器類等に直接付着した場合でも、良好なすすぎ性が得られる。
加えて、(d)成分配合による特有の効果、すなわち、液体洗浄剤をスポンジに含ませて握った際に弾力感が感じられるようになる。この弾力感が感じられることで、食器や調理器具等を洗浄する際、液体洗浄剤をスポンジに注ぎ足す回数を少なくでき、液体洗浄剤の使用量を減らすことができる。これは、液体洗浄剤をスポンジに含ませて握ると、(a)成分、(b)成分と(d)成分、または(a)?(d)成分が会合してクリーミィな泡が形成されるため、と考えられる。
【0038】
【化7】

[式(d1)中、iとjはそれぞれ1?6の整数であり、6≦i+j≦12である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。sはPOの平均繰返し数、tはEOの平均繰返し数を表し、s+tは6?12である。]
【0039】
前記式(d1)中、iとjはそれぞれ1?6の整数であり、6≦i+j≦12である。なかでも、液体洗浄剤の泡立ち性と泡量の持続性がより向上することから、6≦i+j≦10が好ましく、6≦i+j≦8がより好ましく、i+j=8が特に好ましい。
i+jが6以上であると、表面活性を示し、液面への吸着性が高まり、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性と泡量の持続性が共に良好となる。また、液体洗浄剤をスポンジに含ませて握った際に弾力感が感じられるようになる。i+jが12以下であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性と泡量の持続性に優れる。
C_(i)H_(2i+1)、C_(j)H_(2j+1)としてはそれぞれ、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適なものとして挙げられる。
なかでも、C_(i)H_(2i+1)、C_(j)H_(2j+1)は、エチル基とブチル基との組合せ、プロピル基とペンチル基との組合せ(以上、いずれの組合せも一方がどちらの基であってもよい)が好ましく、プロピル基とペンチル基との組合せ(一方がどちらの基であってもよい)が特に好ましい。
【0040】
前記式(d1)中、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。
(d)成分としては、液体洗浄剤の泡立ちの速さと泡量がより向上し、スポンジに含ませて握った際の弾力感が良好に得られることから、分子内にオキシエチレン基を有するものが好ましく、オキシエチレン基のみを有するもの(オキシプロピレン基を有しない)、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有するものであってオキシエチレン基の方を多く有するものがより好ましく、そのなかでもオキシエチレン基のみを有するものが特に好ましい。
(d)成分がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有するものである場合、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性、及び液体洗浄剤をスポンジに含ませて握った際の弾力感に優れることから、オキシプロピレン基の平均繰返し数(s)は3以下であることが好ましく、1?2であることがより好ましい。
(d)成分がオキシエチレン基とオキシプロピレン基とを有するものである場合、これらのオキシエチレン基とオキシプロピレン基は、ランダム状に混在していてもよく、ブロック状に混在していてもよい。
【0041】
前記式(d1)中、sはPOの平均繰返し数、tはEOの平均繰返し数を表す。s+tは6?12であり、9?10であることが好ましく、9又は10であることがより好ましい。s+tが6以上であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性と泡量の持続性に優れる。s+tが12以下であると、油汚れに対する洗浄力が良好となる。また、液体洗浄剤をスポンジに含ませて握った際に弾力感が感じられるようになる。s+tが9又は10であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性と泡量の持続性により優れると共に、液体洗浄剤をスポンジに含ませて握った際に弾力感がより感じられるようになる。
なお、ここでのs,tは、それぞれPO,EOの「平均」繰返し数を示している。したがって、式(d1)で表される化合物は、PO,EOの繰返し数が異なる分子の集合体である。
【0042】
(d)成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記のなかでも、(d)成分としては、s=0、t=9又は10であり、iとjの一方が3で、他方が5であるものが好ましい。
また、(d)成分としては、ガーベット反応による2分子縮合で得られた、β位に分岐構造を有するアルコールのエチレンオキシド付加物が特に好適なものとして挙げられる。
このような市販品としては、BASF社製のポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテルが挙げられ、具体的には、上記式(d1)におけるi+j=8、s=0、t=6の化合物で商品名「Lutensol XP60」、上記式(d1)におけるi+j=8、s=0、t=9の化合物で商品名「Lutensol XP90」、上記式(c1)におけるi+j=8、s=0、t=10の化合物で商品名「Lutensol XP100」が挙げられる。
また、BASF社製のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテルも挙げられ、具体的には、上記式(d1)におけるi+j=8、s+t=9の化合物(オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在したもの)で商品名「Lutensol XL90」、上記式(d1)におけるi+j=8、s+t=10の化合物(オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在したもの)で商品名「Lutensol XL100」が挙げられる。
【0043】
液体洗浄剤組成物における(d)成分の含有量は、下限値として、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上限値として、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。より具体的には、1?15質量%であることが好ましく、3?10質量%であることがより好ましい。
(d)成分の含有量が下限値以上であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性がより良好となる。一方、上限値以下であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。
【0044】
本発明の液体洗浄剤において、(a)成分と(b)成分と(d)成分との配合比率は、[(a)成分+(b)成分]/(d)成分で表される質量比が、下限値として、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが特に好ましい。上限値として、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。より具体的には、1.5?15であることが好ましく、2?15であることがより好ましく、3?10であることがさらに好ましく、4?7であることが特に好ましい。
前記質量比が下限値以上であると、洗浄中の洗浄済み実感が得られやすくなる。加えて、泡がより速く立ちやすくなる。一方、上限値以下であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際の泡立ち性とすすぎ性がより良好となる。
本発明において「[(a)成分+(b)成分]/(d)成分で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(d)成分の含有量に対する、(a)成分と(b)成分との合計の含有量の割合(質量比)を表す。
【0045】
本発明の液体洗浄剤において、(a)?(d)成分を併用することが好ましく、(c)成分/[(a)成分+(b)成分+(d)成分]で表される質量比は0.6以下であることが好ましく、0.05?0.6であることがより好ましい。
前記質量比が上限値以下であると、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡がより速く立ちやすくなる。加えて、泡量及びすすぎ性もより良好となる。一方、下限値以上であると、泡の持続性がより向上する。 本発明において「(c)成分/[(a)成分+(b)成分+(d)成分]で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分と(d)成分との合計の含有量に対する、(c)成分の含有量の割合(質量比)を表す。
【0046】
(二価金属塩(e))
本発明の液体洗浄剤においては、二価金属塩(e)(以下「(e)成分」という。)をさらに含有することが好ましい。(e)成分を含有することにより、主として洗浄力が高まる。
(e)成分としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、臭化マグネシウム等のマグネシウム塩;塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム等のカルシウム塩;硝酸亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化アンモニウム亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛塩などが挙げられる。
これらのなかでも、洗浄力向上の効果に加えて、除菌効果、抗菌効果も付与できることから、亜鉛塩が好ましく、硫酸亜鉛、酸化亜鉛が特に好ましい。
【0047】
(e)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
液体洗浄剤中、(e)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値として、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(e)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、0.01?2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05?1.5質量%であり、さらに好ましくは0.1?1質量%である。
(e)成分の配合量が好ましい下限値未満であると、洗浄力向上の効果が得られにくい。また、除菌効果、抗菌効果も得られにくい。一方、好ましい上限値を超えても、更なる洗浄力向上や、除菌効果、抗菌効果の向上は期待できない。
【0048】
また、液体洗浄剤中、(e)成分由来の二価金属の好適な濃度としては、液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。上限値として、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(e)成分由来の二価金属の好適な濃度としては、液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、0.001?0.5質量%であることが好ましく、0.01?0.4質量%であることがより好ましい。
前記二価金属の濃度の下限値未満では、洗浄力向上の効果や除菌効果、抗菌効果(特に亜鉛の場合)が得られにくい。一方、上限値を超えても、更なる洗浄力向上や除菌効果、抗菌効果(特に亜鉛の場合)の向上は期待できない。
【0049】
液体洗浄剤の総質量に対する、(e)成分由来の二価金属の濃度は、以下のようにして求めることができる。
たとえば、液体洗浄剤中に、硫酸亜鉛7水和物(分子量287.61)1質量%を含有する場合、液体洗浄剤中の亜鉛の含有量(質量%)は次の通りである。
液体洗浄剤中の亜鉛の含有量
=液体洗浄剤中の硫酸亜鉛7水和物の配合量×(亜鉛の分子量/硫酸亜鉛7水和物の分子量)
=1質量%×(65.39/287.61)
=0.23質量%
【0050】
本発明の液体洗浄剤において、(a)成分/(二価金属)で表される質量比は、150?3000であることが好ましく、200?3000であることがより好ましい。
前記質量比が下限値以上であると、低温での安定性がより向上し、一方、上限値以下であると、洗浄力がより良好となる。
本発明において「(a)成分/(二価金属)で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(e)成分由来の二価金属の含有量に対する、(a)成分の含有量の割合(質量比)を表す。
【0051】
<化合物(f)>
本発明の液体洗浄剤において、化合物(f)(以下「(f)成分」という。)を含有することが好ましい。(f)成分は、下記一般式(f1)で表されるアルキルグリセリルエーテルであり、(a)成分と、(b)成分とを組み合わせて用いることにより、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制される。
【0052】
【化8】

[式中、R^(1)は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。nは平均繰返し数を表し、1?4の数である。]
【0053】
前記式(f1)中、R^(1)は、炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。
R^(1)のアルキル基、アルケニル基において、炭素数は6?14であり、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制されやすいことから、炭素数6?12であることが好ましく、より好ましくは炭素数6?11であり、さらに好ましくは炭素数6?10であり、特に好ましくは炭素数8?10である。
なかでも、R^(1)としては、手肌のヌルつきがより抑制されることから、炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ラウリル基等が挙げられ、2-エチルヘキシル基、イソデシル基が特に好ましい。
前記式(f1)中、nは、(CH_(2)CH(OH)CH_(2)O)の平均繰返し数を表し、1?4の数であり、好ましくは1?2の数であり、より好ましくは1である。
【0054】
(f)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、(f)成分としては、手肌のヌルつきがより抑制されやすい点、及び泡立ち性が良好である点から、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテルが好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルが最も好ましい。
液体洗浄剤中、(f)成分の配合量は、該液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。上限値として、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。より具体的には、0.1?10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3?8質量%であり、さらに好ましくは0.5?7質量%である。
(f)成分の配合量が前記範囲内であると、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきがより抑制され、泡立ち性の良好な組成物が得られやすい。また、(f)成分の配合量が好ましい下限値未満であると、手肌のヌルつき抑制の効果が得られにくい傾向となり、一方、好ましい上限値を超えると、油汚れに対する洗浄力、泡立ち性が低下する傾向となる。
【0055】
本発明において「[(a)成分+(b)成分]/(f)成分で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(f)成分の含有量に対する、(a)成分と(b)成分との合計の含有量の割合(質量比)を表す。
(a)成分と(b)成分と(f)成分との配合比率は、[(a)成分+(b)成分]/(f)成分で表される質量比が、下限値として、3以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。上限値として、160以下であることが好ましく、125以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。より具体的には、3?160であることが好ましく、3?125であることがより好ましく、3?10であることが特に好ましく、6?10であることが最も好ましい。
前記質量比が下限値以上であると、油汚れに対する洗浄力がより向上する。一方、上限値以下であると、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきがより抑制される。
【0056】
(ハイドロトロープ剤(g))
本発明の液体洗浄剤においては、ハイドロトロープ剤(g)(以下「(g)成分」という。)をさらに含有することが好ましい。(g)成分を含有することにより、主として、液体洗浄剤の保存安定性(特に低温安定性)が向上し、透明外観をより安定に確保しやすくなる。
【0057】
(g)成分としては、芳香族スルホン酸又はその塩、芳香族カルボン酸又はその塩、炭素数2?4のアルコール、又はこれら以外の水溶性溶剤が挙げられる。
芳香族スルホン酸としては、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸などが挙げられ、なかでもトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸が好ましい。
トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸は、それぞれo体、m体、p体の3異性体のいずれでもよく、これらのなかでも容易に入手が可能なことからp体が好ましく、そのなかでも、p-トルエンスルホン酸がより好ましい。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸などが挙げられる。
芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸塩における塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
炭素数2?4のアルコールのうち、1価アルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等が挙げられる。炭素数2?4の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
上記以外の水溶性溶剤としては、ポリエチレングリコール、フェニルグリコール等が挙げられる。
【0058】
(g)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(g)成分としては、特に低温条件であっても保存安定性に優れることから、芳香族スルホン酸又はその塩、芳香族カルボン酸又はその塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。なかでも、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩、及び炭素数2?4のアルコールからなる群より選択される少なくとも二種を用いることが好ましく、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩及びエタノールからなる群より選択される少なくとも二種を用いることがより好ましく、そのなかでも、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸及び安息香酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、エタノールとを併用することが特に好ましい。
【0059】
液体洗浄剤中、(g)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、下限値として、5質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましい。上限値として、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。液体洗浄剤中、(g)成分の配合量は、前記液体洗浄剤の総質量に対して、より具体的には、5?30質量%であることが好ましく、より好ましくは5?20質量%であり、さらに好ましくは6?10質量%である。
(g)成分の配合量が好ましい下限値未満であると、(g)成分の配合効果が充分に得られない場合があり、一方、好ましい上限値を超えると、洗浄力が低下する場合がある。
【0060】
本発明の液体洗浄剤において、(g)成分/[(a)成分+(b)成分]で表される質量比は0.15?0.5であることが好ましい。
前記質量比が下限値以上であると、低温での安定性がより向上し、一方、上限値以下であると、洗浄力、泡立ちがより良好となる。
また、本発明の液体洗浄剤組成物において、(g)成分/[(a)成分+(b)成分+(d)成分]で表される質量比は、下限値として、0.15以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。上限値として、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。より具体的には、0.15?0.5であることが好ましく、0.2?0.4であることがより好ましい。
この質量比の範囲内であると、液体洗浄剤の低温安定性がより良好となる。加えて、当該質量比が下限値以上であると、泡の持続性がより向上し、一方、上限値以下であると、泡がより速く立ちやすくなり、泡量もより良好となる。
本発明において「(g)成分/[(a)成分+(b)成分+(d)成分]で表される質量比」とは、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分と(d)成分との合計の含有量に対する、(g)成分の含有量の割合(質量比)を表す。
【0061】
本発明の液体洗浄剤には、上述した成分以外のその他の成分として、前記の(a)成分及び(b)成分を除く界面活性剤、水酸化ナトリウム、硫酸、グリコール酸等のpH調整剤;キレート剤、酸化防止剤、着色剤、酵素、香料なども任意に配合することができる。
【0062】
本発明の液体洗浄剤のpHは、25℃でのpHが5?8であることが好ましく、pHが6.5?7.5であることがより好ましい。
液体洗浄剤のpHが5以上であると、(a)成分と(b)成分との相互作用が強すぎず、適度に抑えられるため、両成分とも良好に溶存し、液体洗浄剤の透明外観をより安定に保ちやすくなる。また、液体洗浄剤のゲル化又は固化がより起きにくくなる。一方、pHが8以下であると、(a)成分と(b)成分との相互作用が弱くなりすぎず、油汚れに対する洗浄力がより向上する。また、液体洗浄剤の泡立ちと泡(泡立ち性と泡量)の持続性がより向上する。
液体洗浄剤(25℃に調温)のpHは、pHメータ(製品名:ホリバF-22、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362-1998に準拠した方法により測定される値を示す。
【0063】
本発明の液体洗浄剤の一態様は、上記のように、一般式(a1)で表される分岐構造を有する硫酸エステル塩の化合物(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを所定の配合比率((a)成分/(b)成分で表される質量比0.5?6)で含有する。この液体洗浄剤によれば、起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できる。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが以下のように推測される。
分岐構造を有する化合物は、一般に会合状態を形成しにくいため、泡立ちを抑えるのに(制泡剤、低起泡性組成物用などとして)用いられることが多い。
しかしながら、(a)成分は、(b)成分と所定の配合比率で混合することにより、安定な会合状態を形成し得ると考えられる。また、β位で分岐した特異的な構造を有する(a)成分は、一般的な直鎖状又は分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて動的界面張力低下能が高い。このため、(a)成分は洗浄液中での拡散スピードが速く、これに伴って(a)成分及び(b)成分は、スポンジと食器類等との間に長く留まることがない。これにより、液体洗浄剤を含ませたスポンジで食器類等を洗浄中に、油汚れ等が除去されると、スポンジと食器類等との間に「ギュッギュッ」という摩擦感が感じられるようになる。以上により、本発明の液体洗浄剤によれば、起泡力を維持しつつ、食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できると推測される。
【0064】
加えて、本発明の液体洗浄剤は、高い洗浄力を有すると共に、泡が立ちやすく、かつ、すすぎ性が良好である。この理由は以下のように推測される。
上述したように、(a)成分の動的表面張力低下能が高いことから、(a)成分が油汚れ等にすばやく吸着し、これに伴って(b)成分の油汚れへの吸着も速くなり、油汚れの分解(分散、溶解)が促進される。また、界面活性剤分子膜が速やかに形成されるため、泡が立ちやすく(泡立ちが速く)なると考えられる。さらに、β位のみの分岐構造は、一般的な分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて、疎水基が嵩高くなりやすい。このため、気液界面に密に配向しにくく、洗浄液が希釈されると破泡しやすいことにより、すすぎ性(泡切れの良さ、ヌルツキのなさ)が良くなると推測される。
【0065】
また、本発明の液体洗浄剤によれば、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)とすすぎ性(ヌルツキのなさ、泡切れ)のいずれも優れる。かかる効果が得られる理由としては、定かではないが以下のように推測される。
本発明の液体洗浄剤の一態様は、特定の分岐構造を有する陰イオン界面活性剤(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを、所定の配合比率((a)成分/(b)成分で表される質量比0.5?6)で含有すると共に、特定の分岐構造を有する非イオン界面活性剤(d)を含有する。
β位で分岐した特異的な構造を有する(a)成分は、一般的な直鎖状又は分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて動的界面張力低下能が高い。これにより、(a)成分は、新しく界面ができると、その界面にすばやく配向し得る。同様に、β位で分岐した特異的な構造を有する(d)成分も、洗浄の際、気液界面に配向するのが速い特性を有する。これに伴い、(b)成分の気液界面への配向も速くなる。また、(b)成分は(a)成分と所定の比率で配合され、(a)?(d)成分が気液界面に配向した後、(a)成分と(b)成分との間の静電的作用、並びに(a)成分及び(d)成分中の適度な繰返し数のオキシアルキレン基と(b)成分における親水性の部分との間の相互作用により、安定な会合状態が形成される。これら作用により、(a)?(d)成分の界面活性剤分子膜の形成が促進される。このため、油量の多い汚れが付着した食器類等を洗浄する際であっても、泡立ちが速く、豊富な量の泡が素早く形成する、と考えられる。
さらに、(a)成分と(d)成分においては、いずれもβ位の分岐構造を有することから、一般的な分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて、疎水基が嵩高くなりやすい。このため、気液界面に密に配向しにくく、洗浄液が希釈されると破泡しやすい。このため、すすぎ性が良好である、と考えられる。
【0066】
また、本発明の液体洗浄剤は、優れた洗浄性能を有し、かつ、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制されたものである。
本発明の液体洗浄剤の一態様は、特定の分岐構造を有する陰イオン界面活性剤(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)と、特定のアルキルグリセリルエーテル(f)とを含有する。
β位で分岐した特異的な構造を有する(a)成分は、一般的な直鎖状又は分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて動的界面張力低下能が高い。これにより、(a)成分は、新しく界面ができると、その界面にすばやく配向し得る。そのため、洗浄時、(a)成分が油汚れ等にすばやく吸着し、これに伴って(b)成分の油汚れへの吸着も速くなり、油汚れの分解(分散、溶解)が促進される。加えて、(a)成分はβ位の分岐構造を有することから、一般的な分岐鎖状の陰イオン界面活性剤に比べて、疎水基が嵩高くなりやすい。このため、界面に密に配向しにくく、すすぎにより洗い流されやすい。
本発明においては、上記のような(a)成分と、(b)成分及び(f)成分との相乗的な作用により、特に液体洗浄剤がスポンジに多量に注ぎ足されてその使用量が増えた場合であっても、すすぎによってこれらの成分が手指から速やかに洗い流されるため、手肌のヌルつきが抑制される、と考えられる。
【0067】
本発明の液体洗浄剤は、スポンジに注ぎ足しながら洗浄が行われる際、界面活性剤濃度が高いため、過剰の界面活性剤によって手肌がヌルつくことがある、濃縮タイプの液体洗浄剤としても好適なものである。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
<液体洗浄剤の調製>
表に示す配合組成に従って、以下に示す製造方法(未配合の成分がある場合、その成分は配合しない。)により、各例の液体洗浄剤をそれぞれ調製した。
表中の配合量の単位は「質量%」であり、いずれの成分も純分換算量を示す。(e)成分については、上段に二価金属塩(e-1及びe-2は含水塩)としての配合量、下段の括弧内に二価金属換算量を示した。e-1及びe-2についての二価金属換算量は亜鉛換算量、e-3についての二価金属換算量はマグネシウム換算量をそれぞれ示す。
各例の液体洗浄剤は、表に記載の各成分の合計が100質量%となるように水でバランスして調製した。各成分は50℃に保温したものを用いた。
【0070】
[液体洗浄剤の製造方法]
まず、200mLビーカーに、(a)成分又は(a’)成分と、(c)成分又は(c’)成分と、(d)成分又は(d’)成分と、(e)成分と、(f)成分と(g)成分とPEG1000とを入れ、マグネチックスターラにより撹拌した。次に、(b)成分を入れて撹拌した。
次いで、全体量(全体量を100質量部とする。)が93質量部になるように水を入れて撹拌した。その後、グリコール酸と水酸化ナトリウム(0.1N水酸化ナトリウム)とを加えてpHを調整し、全体量が100質量部になるように残りの水を加えてバランスし、各例の液体洗浄剤をそれぞれ製造した。
水の配合量を示す「バランス」は、液体洗浄剤に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となるように加えられた残部を意味する。
水酸化ナトリウムの配合量を示す「適量」は、所定量のグリコール酸を配合した後、液体洗浄剤のpH(25℃)を7.0に調整するために配合した水酸化ナトリウムの量を示す。
pH測定は、液体洗浄剤を25℃に調整し、ガラス電極式pHメータ(製品名:ホリバF-22、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。測定方法は、JIS K3362-1998に準拠して行った。
【0071】
表中、(a)/(b)は、液体洗浄剤中の(b)成分の含有量に対する、(a)成分の含有量の割合(質量比)を意味する。
(c)/[(a)+(b)]は、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分との合計の含有量に対する、(c)成分の含有量の割合(質量比)を意味する。
(a)/(二価金属)は、液体洗浄剤中の(e)成分由来の二価金属の含有量に対する、(a)成分の含有量の割合(質量比)を意味する。
[(a)+(b)]/(d)は、液体洗浄剤中の(d)成分の含有量に対する、(a)成分と(b)成分との合計の含有量の割合(質量比)を意味する。
(c)/[(a)+(b)+(d)]は、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分と(d)成分との合計の含有量に対する、(c)成分の含有量の割合(質量比)を意味する。
[(a)+(b)]/(f)は、液体洗浄剤中の(f)成分の含有量に対する、(a)成分と(b)成分との合計の含有量の割合(質量比)を意味する。 (g)/[(a)+(b)+(d)]は、液体洗浄剤中の(a)成分と(b)成分と(d)成分との合計の含有量に対する、(g)成分の含有量の割合(質量比)を意味する。
以下に、表中に示した成分について説明する。
【0072】
・(a)成分
a-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=3、M=ナトリウムに相当。
[a-1の調製例]
BASF社製「Lutensol XP30」290gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa-1を得た。
【0073】
a-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=4、M=ナトリウムに相当。
[a-2の調製例]
BASF社製「Lutensol XP30」の代わりに、BASF社製「Lutensol XP40」334gを用いた以外は、a-1と同様にして調製した。
【0074】
a-3:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記一般式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=1、q=3、M=ナトリウムに相当。
[a-3の調製例]
BASF社製「Lutensol XP30」の代わりに、BASF社製「Lutensol XL40」349gを用いた以外は、a-1と同様にして調製した。
【0075】
a-4:モノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=0、M=ナトリウムに相当。
[a-4の調製例] ヘキシルアルデヒドをアルカリによってゲルベ縮合(二量化)させ、これによって得られた2-プロピルヘプタノール158gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa-4を得た。
【0076】
・(a)成分の比較成分[以下「(a’)成分」と表す。]
a’-1:ポリオキシエチレンモノ(2-ブチルオクチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=ブチル基,C_(y)H_(2y+1)=ヘキシル基、x+y=10、p=0、q=2、M=ナトリウムに相当。
[a’-1の調製例]
4Lのオートクレーブ中に、サソール社製の商品名「ISOFOL12」(上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=ブチル基,C_(y)H_(2y+1)=ヘキシル基)372gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながら、エチレンオキシド181gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物を得た。次に、上記で得られたアルコールエトキシレート274gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa’-1を得た。
【0077】
a’-2:モノ(2-プロピルヘプチル)エーテル硫酸エステルNa、上記式(a1)におけるC_(x)H_(2x+1)=プロピル基,C_(y)H_(2y+1)=ペンチル基、x+y=8、p=0、q=0、M=ナトリウムに相当。
[a’-2の調製例]
ヘキシルアルデヒドをアルカリによってゲルベ縮合(二量化)させ、これによって得られた2-プロピルヘプタノール158gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa’-2を得た。
【0078】
a’-3:炭素数13の分岐アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物。
[a’-3の調製例]
BASF社製「Lutensol TO3」332gを、撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa’-3を得た。
【0079】
a’-4:炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均3モル付加品の硫酸化物。
[a’-4の調製例]
4Lのオートクレーブ中に、サソール社製の商品名「Safol23」400gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながら、エチレンオキシド271gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数3の反応物を得た。次に、上記で得られたアルコールエトキシレート334gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa’-4を得た。
【0080】
a’-5:炭素数12?13の合成アルコールのエチレンオキシド平均2モル付加品の硫酸化物。
[a’-5の調製例]
4Lのオートクレーブ中に、シェル社製の商品名「ネオドール23」400gと、水酸化カリウム触媒0.8gとを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換し、攪拌しながら昇温した。その後、温度180℃、圧力0.3mPaに維持しながら、エチレンオキシド181gを導入し、エチレンオキシドの平均付加モル数2の反応物を得た。次に、上記で得られたアルコールエトキシレート280gを撹拌装置付の500mLフラスコに取り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)81gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を続け、目的とするポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。さらに、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa’-5を得た。
【0081】
・(b)成分
b-1:AX、C12アルキルジメチルアミンオキシド(ライオンアクゾ社製、商品名「アロモックスDM12D-W」)。
b-2:HSB、N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシ-1-スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、略称C12ヒドロキシスルホベタイン(花王株式会社製、商品名「アンヒトール 20HD」)。
【0082】
・(c)成分
c-1:C12MEA(2)、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、上記式(c1)におけるR^(6)=炭素数11の直鎖状のアルキル基、m=2。略称LME(2)。
[c-1の調製例]
ラウリン酸メチル(ライオン株式会社製、商品名「パステルM-12」)214gに、モノエタノールアミン(東京化成工業株式会社製)64.1gと、ソジウムメチラート(株式会社日本触媒製、商品名「SM-28」、28質量%品)7.7g(1.0質量%対脂肪酸メチルエステル)とを加え、副生するメタノールを、減圧下留去しながら加熱攪拌(40Pa?1.3kPa、90℃、1時間)し、反応圧力が1.3kPaに到達した時点で、反応温度90℃で3時間熟成し、ラウリン酸モノエタノールアミド240gを調製した。
得られたラウリン酸モノエタノールアミドを1L容オートクレーブに仕込み、エチレンオキシドをラウリン酸モノエタノールアミドに対して1.0モル分仕込み、90℃で2時間かけて付加反応を行い、C12MEA(2)を得た。
【0083】
c-2:C10MEA(2)、ポリオキシエチレンカプリン酸モノエタノールアミド、上記式(c1)におけるR^(6)=炭素数9の直鎖状のアルキル基、m=2。略称CME(2)。
[c-2の調製例]
C10MEA(2)は、ラウリン酸メチルの代わりにカプリン酸メチル(ライオン株式会社製、商品名「パステルM-10」)を用いた以外は、C12MEA(2)と同様にして調製した。
【0084】
・(d)成分
d-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XP60」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s=0、t=6に相当。
d-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XP90」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s=0、t=9に相当。
d-3:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XP100」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s=0、t=10に相当。
d-4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XL90」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s+t=9(オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在したもの)に相当。
d-5:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XL100」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s+t=10(オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在したもの)に相当。
【0085】
・(d)成分の比較成分[以下「(d’)成分」と表す。]
d’-1:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XP40」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s=0、t=4に相当。
d’-2:ポリオキシエチレンモノ(2-プロピルヘプチル)エーテル、BASF社製、商品名「Lutensol XP140」、上記一般式(d1)におけるC_(i)H_(2i+1)=プロピル基,C_(j)H_(2j+1)=ペンチル基、i+j=8、s=0、t=14に相当。
【0086】
・(e)成分
e-1:硫酸亜鉛7水和物、純正化学(株)製、試薬特級(7水和物の分子量289)。
e-2:酸化亜鉛、三井金属株式会社製(分子量81)。
e-3:硫酸マグネシウム7水和物、馬居化成工業製、精製硫酸マグネシウム(7水和物の分子量247)。
【0087】
・(f)成分
f-1:2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテル、上記式(f1)におけるR^(1)=2-エチルヘキシル基、n=1に相当。
f-2:イソデシルモノグリセリルエーテル、上記式(f1)におけるR^(1)=イソデシル基、n=1に相当。
【0088】
・(f)成分の比較成分[以下「(f’)成分」と表す。]
f’-1:イソデシルモノグリセリルエーテル、上記式(f1)におけるR^(1)=イソデシル基、n=6に相当。
・(g)成分
g-1:p-トルエンスルホン酸、協和発酵ケミカル株式会社製、p-トルエンスルホン酸の略称p-TSH。
g-2:エタノール、純正化学株式会社製、試薬特級。
【0089】
・その他の成分
PEG1000:ポリエチレングリコール1000、ライオン株式会社製、商品名「PEG#1000」(平均分子量1000)。
グリコール酸:デュポン社製、商品名「グリピュア70」。
水酸化Na:水酸化ナトリウム、鶴見曹達(株)製。
水:水道水。
【0090】
<液体洗浄剤の評価>
各例の液体洗浄剤について、以下に示す評価方法によって各評価を行い、その結果を表に併記した。
【0091】
[泡の立ちやすさの評価]
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと各例の液体洗浄剤2gとを採り、5回手で揉んだ後の状態(泡の立ち具合)について、下記の評価基準(a)に従い、10名により評価を行った。
(評価基準(a))
3点:スポンジの表面全体を泡が覆い尽くした。
2点:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の80%以上、100%未満であった。
1点:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の50%以上、80%未満であった。
0点:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の50%未満であった。
その10名の平均値を算出し、下記の評価基準(b)に従って泡の立ちやすさ(泡立ちの速さ)を評価した。
(評価基準(b))
S:10名の平均値が2.8点以上。
A:10名の平均値が2.6点以上、2.8点未満。
B:10名の平均値が2.4点以上、2.6点未満。
C:10名の平均値が2.4点未満。
【0092】
[洗浄済み実感の評価]
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと各例の液体洗浄剤2gとを採り、オリーブ油1gと水5mLとを載せた陶器皿(φ=23cm)を、前記スポンジで擦りながら洗浄した。前記洗浄は、陶器皿(φ=23cm)の一面に5回円を描くように、次いで他方の面に2回円を描くように、最後に前記陶器皿の周囲を1周、それぞれスポンジで擦る方法により行った。下記の評価基準(c)に従い、洗浄中の陶器皿の洗浄済み実感についての評価を行った。
(評価基準(c))
2点:洗浄中に、陶器皿から汚れが落ちたことが、スポンジと陶器皿との間における摩擦の変化によってはっきりと感じられた。
1点:洗浄中に、陶器皿から汚れが落ちたことが、スポンジと陶器皿との間における摩擦の変化によって感じられた。
0点:洗浄中に、スポンジと陶器皿との間における摩擦の変化が感じられなかった。
尚、評価基準(c)の2点及び1点の場合、スポンジと陶器皿との間に摩擦を感じた時点で擦り洗いを中断し、泡が残存する陶器皿を水道水(流速100mL/s、25℃)で5秒間すすぎ、陶器皿から汚れが落ちているかどうかについて確認した。その結果、いずれの場合も、油による皮膜がなく、油の残留による手で触ったときのぬるつきも感じられず、陶器皿から汚れが落ちていた。
かかる洗浄済み実感の評価は、10名により行い、その10名の平均点を算出し、表に示した。
【0093】
[すすぎ性の評価-1]
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと各例の液体洗浄剤2gとを採り、前記スポンジを5回手で揉んで泡立たせた。泡立たせたスポンジで、陶器皿5枚(φ=23cm)を、その陶器皿表面に円を描くように5回擦った。次に、泡が残存する陶器皿を、水道水(流速100mL/s、25℃)ですすいでいる間に、泡がなくなってから、指でヌルツキが感じられなくなるまでの時間を測定した。この操作を5回繰り返し、その平均値を算出し、下記の評価基準に従ってすすぎ性を評価した。A以上をすすぎ性が良好とした。
(評価基準)
S:5回の平均値が30秒以内であった。
A:5回の平均値が31?35秒の範囲内であった。
B:5回の平均値が36?40秒の範囲内であった。
C:5回の平均値が41秒以上であった。
【0094】
[洗浄力の評価]
牛脂1gを、縦10cm×横15cm×高さ5cmのタッパ容器内面の全面に均一になるように塗布して汚垢モデルとした。
次いで、縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、25℃水道水38gと液体洗浄剤2gとを採り、数回手で揉んだ後、上記汚垢モデルを家庭で通常行われる方法と同様にして洗浄した。
次いで、25℃の水道水でよくすすいだ後、タッパ容器内面の牛脂が塗布されていた部位を手で触ったときの触感について評価した。
かかる評価は、下記の評価基準(S?Aが合格範囲)に従って行い、油汚れに対する洗浄力の評価とした。
(評価基準)
SSS:タッパ容器のいずれの部位を触っても、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきはまったく感じられず、指で擦ったときに摩擦力が強く感じられた。
SS:タッパ容器のいずれの部位を触っても、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきはまったく感じられず、指で擦ったときに摩擦力が感じられた。
S:タッパ容器のいずれの部位を触っても、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきが感じられなかった。
A:タッパ容器内側の角の部位には僅かにぬるつきが残っているが、タッパ容器内側の底面及び側面を触ると、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきは感じられず、問題の無いレベルであった。
B:タッパ容器内側の底面を触ると、油による皮膜がなく、油の残留によるぬるつきは感じられないが、タッパ容器内側の側面や角の部位にぬるつきが残っていた。
C:タッパ容器全体にぬるつきが感じられ、明らかに油が残留していることがわかった。
【0095】
[泡の持続性の評価]
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと各例の液体洗浄剤2gとを採り、3回手で揉んだ。その後、前記スポンジと、オリーブ油1gと水5gとを載せた陶器皿(φ=23cm)とを接触させて、汚れとスポンジとを馴染ませた。
その後、スポンジを陶器皿に押さえつけた状態で、その陶器皿表面に円を2周描くように動かして擦り洗いを施した。泡が陶器皿表面全体の5%になった時点を終点とし、前記終点までに洗い終えた陶器皿の枚数を求め、泡の持続性を評価した。
また、下記の評価基準により、泡の持続性を評価した。
(評価基準)
S:陶器皿の枚数が24枚以上であった。
A:陶器皿の枚数が22?23枚であった。
B:陶器皿の枚数が20?21枚であった。
C:陶器皿の枚数が19枚以下であった。
【0096】
[泡立ち性の評価]
本試験方法は油量の多い汚れが共存した場合の、泡の立ちやすさを評価した。
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと、液体洗浄剤2gと、オリーブ油2gとを採り、5回手で揉んだ後の状態(泡の立ち具合)を、下記の評価基準に基づいて評価した。評価結果がS、Aのものを、泡立ち性(泡量、泡立ちの速さ)が良好であるとした。
(評価基準)
S:スポンジの表面全体を泡が覆い尽くしていた。
A:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の80%以上、100%未満であった。
B:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の50%以上、80%未満であった。
C:スポンジ表面を覆う泡の割合が、スポンジの表面積の50%未満であった。
【0097】
[すすぎ性の評価-2]
本試験は液体洗浄剤が直接食器に付着した場合の食器のすすぎ易さを評価した。
陶器皿(φ=23cm)上に液体洗浄剤1.0gを載せ、その液体洗浄剤を前記陶器皿の一面全体に指で軽く伸ばしたもの1枚を用意した。そして、5L/minの流速の水道水(25℃)で、この1枚の前記陶器皿をすすいだ。その際、液体洗浄剤由来のヌルツキがなくなるまでに要したすすぎ時間をストップウォッチにて測定した。
この測定を10名により行い、すすぎ時間の平均値を求め、下記の評価基準に基づいてすすぎ性を評価した。
(評価基準)
S:すすぎ時間が3秒以上、6秒未満であった。
A:すすぎ時間が6秒以上、9秒未満であった。
B:すすぎ時間が9秒以上、12秒未満であった。
C:すすぎ時間が12秒以上であった。
【0098】
[手肌のヌルつき性の評価]
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(住友スリーエム(株)製、商品名:スコッチブライト)に、水38gと各例の液体洗浄剤6gとを採り、当該スポンジを5回手で揉んで泡立たせた。泡立たせたスポンジで、陶器皿5枚(φ=23cm)を、その陶器皿表面に円を描くように5回擦り洗いをした。その後、水道水(流速100mL/s、25℃)で手をすすぎ、手指のヌルつきがなくなるまでのすすぎ時間を測定した。
かかるすすぎ時間の測定は、5名により行い、その5名の平均値を算出し、下記の評価基準に従い、手肌のヌルつき性を評価した。A、Sを、手肌のヌルつきのなさが良好であるとした。
(評価基準)
手指のヌルつきがなくなるまでのすすぎ時間(5名の平均値)が、
SS:4秒以下であった。
S:5?7秒の範囲内であった。
A:8?10秒の範囲内であった。
B:11?20秒の範囲内であった。
C:21秒以上であった。
【0099】
[低温安定性の評価]
各例の液体洗浄剤100mLを、直径50mm、高さ100mmの円筒ガラス瓶に充填し、フタを閉めて密封した。この状態で、-5℃(低温条件)の恒温槽内で1ヶ月間保存した後の液体洗浄剤の外観について、目視により観察し、「均一透明」の状態が保たれていたか否か、析出物の存在が認められた場合は「円筒ガラス瓶の全体積に対する、析出物の存在している量の割合(%)」を求めることにより、液体洗浄剤の低温安定性(外観)を評価した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
表に示す結果から、本発明を適用した実施例1?29の液体洗浄剤は、泡が立ちやすく、洗浄済み実感が高いこと、が確認できる。したがって、実施例1?29の液体洗浄剤によれば、起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できることが分かる。
加えて、実施例1?29の液体洗浄剤は、すすぎ性が良好であり、洗浄力にも優れていることが分かる。
【0105】
表3に示す結果から、(c)成分をさらに含有する実施例15?22の液体洗浄剤は、泡の持続性も良好であることが分かる。
実施例2、14、23?29の液体洗浄剤の評価結果から、(e)成分をさらに含有することにより、洗浄力がさらに高まることが分かる。
【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【0109】
【表8】

【0110】
表に示す結果から、本発明を適用した実施例30?58の液体洗浄剤は、洗浄済み実感に優れ、油量の多い汚れに対しても泡立ち性に優れ、かつ、すすぎ性も良好であることが分かる。
【0111】
【表9】

【0112】
【表10】

【0113】
【表11】

【0114】
表に示す結果から、本発明を適用した実施例59?76の液体洗浄剤は、優れた洗浄性能を有し、かつ、食器類等を洗浄する際の手肌のヌルつきが抑制されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の液体洗浄剤によれば、起泡力を維持しつつ、洗浄中に食器類等が泡に覆われていても、汚れが落ちたことを実感できるため、産業上極めて有用である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a1)で表される化合物(a)と、両性界面活性剤及び半極性界面活性剤の少なくとも一方(b)とを含有し、
(a)成分/(b)成分で表される質量比が0.5?6であることを特徴とする液体洗浄剤。
【化1】

[式中、xとyは、xとyの一方が3で、他方が5である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。pはPOの平均繰返し数、qはEOの平均繰返し数を表し、p+qは3?4である。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアルカノールアミンを表す。]
【請求項2】
脂肪酸モノエタノールアミド化合物(c)をさらに含有することを特徴とする、請求項1記載の液体洗浄剤。
【請求項3】
下記一般式(d1)で表される化合物(d)をさらに含有することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の液体洗浄剤。
【化2】

[式(d1)中、iとjはそれぞれ1?6の整数であり、6≦i+j≦12である。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を表す。sはPOの平均繰返し数、tはEOの平均繰返し数を表し、s+tは6?12である。]
【請求項4】
[(a)成分+(b)成分]/(d)成分で表される質量比が2?15であることを特徴とする、請求項3記載の液体洗浄剤。
【請求項5】
下記一般式(f1)で表される化合物(f)をさらに含有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の液体洗浄剤。
【化3】

[式中、R^(1)は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6?14の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。nは平均繰返し数を表し、1?4の数である。]
【請求項6】
[(a)成分+(b)成分]/(f)成分で表される質量比が3?160であることを特徴とする、請求項5記載の液体洗浄剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-24 
出願番号 特願2013-512463(P2013-512463)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C11D)
P 1 651・ 536- YAA (C11D)
P 1 651・ 537- YAA (C11D)
P 1 651・ 121- YAA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 磯貝 香苗柴田 啓二  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 岩田 行剛
日比野 隆治
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5764654号(P5764654)
権利者 ライオン株式会社
発明の名称 液体洗浄剤  
代理人 鈴木 三義  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高橋 詔男  
代理人 加藤 広之  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 加藤 広之  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  

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