• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) G02C
管理番号 1321276
判定請求番号 判定2016-600022  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2016-05-31 
確定日 2016-10-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第3955432号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 参考図に示す構造の眼鏡類は、特許第3955432号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特許第3955432号(以下「本件特許」という。)は,特願2000-302262号として平成12年10月2日に出願され,平成19年1月25日に拒絶の理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知され,平成19年3月19日に手続補正(以下「本件補正」という。)がされ,平成19年4月10日に特許すべき旨の査定がされ,平成19年5月11日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許に関して,平成28年5月31日,判定請求人 株式会社 パルス から特許権者を被請求人とする判定が請求された(判定2016-600022号)ところ,被請求人から平成28年8月18日,答弁書が提出された。
答弁書には以下の証拠が添付されている。
乙1:特開2003-261826号公報
乙2:特開平1-295652号公報

2 請求の趣旨
参考図に示す構造(以下「イ号物品」という。)は,特許第3955432号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない,との判定を求める。

第2 本件特許発明
本件特許発明は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ,本件特許の構成を分説すると以下のとおりとなる(以下「構成要件A」などという。)。

「(A)一組のレンズ及び一組の枠を有し,
(B)レンズを各枠に取り付け,
(C)磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に,つるを枠の各外端に,それぞれ取り付け,
(D)つるの後方端間を,形状を保持する堅さと弾力性,曲げることができる可撓性を有するストラップによって連結するようにし,
(E)眼鏡類の装着と取り外しを,前記磁石のみからなる一組の連結器により,枠の内端を連結又は分離することにより行う際,前記形状を保持するストラップを介して,レンズを眼の前に正しく配置することができるようにするとともに,装着しない時,首のまわりにかけることができるようにした
(F)ことを特徴とする眼鏡類。」

第3 イ号物品
イ号物品は,別紙「(4)イ号物品の説明」及び「参考図」の記載のとおりのものである。
なお,「(4)イ号物品の説明」の「(4-2)イ号物品の構成」の記載において,ストラップの「形状を保持する硬さ」とは,「形状を保持する堅さ」と同義であり,当該眼鏡類を装着しない時にかける「クビ」は「首」を意味している。

イ号物品を本件特許発明の構成要件に対応させて分説して記載すると以下のとおりとなる(以下「構成a」などという。)。

「(a)一組のレンズ(1)及び一組の枠(2)を有し,
(b)レンズ(1)を各枠(2)に取り付け,
(c)2つの磁石(3)を,枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に,各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け,つる(5)を枠(2)の各外端(2B)に取り付け,
(c-2)塗布膜(4)で,各凹部(2C)を埋め込むとともに,各磁石(3)の端面および各枠(2)の内端(2A)の端面を被覆し,塗布膜(4)の表面は略平坦となっており,塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面上で1mm程度となっており,
(d)つる(5)の後方端間を,形状を保持する堅さと弾力性,曲げることができる可撓性を有するストラップ(6)によって連結するようにし,
(e)眼鏡類の装着と取り外しを,2つの磁石(3)により,各枠(2)の内端(2A)を連結又は分離することにより行う際,形状を保持するストラップ(6)を介して,レンズ(1)を眼の前に正しく配置することができるようにするとともに,装着しない時,首のまわりにかけることができるようにした
(f)ことを特徴とする眼鏡類。」

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求人は,判定請求書の「(5-1)本件特許発明とイ号物品との一致点」及び「(5-2)本件特許発明とイ号物品との相違点」において,イ号物品の各構成は,本件特許発明の構成要件A,B,D,E及びF並びに構成要件Cの「磁石のみからなる一組の連結器を枠の各内端に,つるを枠の各外端に,それぞれ取り付け」の点を充足するとしている一方で,イ号物品の構成c-2は,塗布膜が設けられていることから,本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点は充足しないと主張している。

(2)請求人は,判定請求書の「(5-3)相違点の解釈」において,イ号物品と本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」について,主に次の3点を主張している。
ア イ号物品では,本件特許発明のような各磁石の端面の露出を避けるために,あえて,各磁石の端面を覆う塗布膜が設けられている。この塗布膜により,くり返し着脱に起因する傷が磁石の端面に付いて,端面が酸化したり腐食したりすることを防止している。そして,塗布膜の厚さは,各磁石の端面の酸化や腐食を防止しつつ,磁石同士の連結力が十分に得られるように,各磁石の端面上で1mm程度となっている。
イ 「磁石」そのものに被膜があらかじめ設けられている場合には,被膜は非常に薄い。しかも,「磁石」の端面が枠の内端の端面と同一面にあるか,または,枠の内端の端面よりも高い位置にある場合には,「磁石」の端面における端縁は外部からの衝撃を受けやすい。したがって,「磁石」そのものにあらかじめ設けられた被膜は,イ号物品の塗布膜によって得られる効果が期待できない。
ウ また,「磁石」そのものに被膜があらかじめ設けられている場合には,「磁石」にだけ設けられており,各枠の内端の端面を,各磁石の端面とともに被覆しておらず,磁石の脱落を防止する効果を有していない。したがって,本件特許発明の構成要件Cの「磁石」そのものにあらかじめ設けられた被膜が,塗布膜に該当することはない。

(3)請求人は,更に判定請求書の「(6)イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの説明」において,イ号物品が本件特許発明に対する均等論の適用の範囲にあたらないとして,以下の3点を主張している。
ア 第1要件
イ号物品の塗布膜が,本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点は充足しないところ,本件特許発明の連結器は,本件特許発明における本質的部分である。
イ 第3要件
磁石を連結させる際には間には何も物を挟まず連結させることが磁石の使い方の常識であり,本件特許発明において露出させるべき磁石の端面に塗布膜を設けることは,当業者が容易に想到できるものではない。
ウ 第5要件
被請求人は,登録実用新案第3019999号公報との相違点を明確にするために手続補正により「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け,」の記載を追加する補正を行っており,「磁石の端面を何らかの部材で覆い,磁石の端面が露出しないようにする」ことについては,被請求人によって意識的に除外された構成である。

2 被請求人の主張
被請求人は,判定請求答弁書において,「イ号各図面並びに本件判定請求書のイ号物品の説明に示されるイ号物品「眼鏡類」は,特許第3955432号技術的範囲に属する,との判定を求める。」として,以下の点を主張している。

(1)請求人が主張する本件特許発明とイ号物品との一致点,相違点について,一致点については認め,イ号物品は,塗布膜が設けられていることから,本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点を充足しないという点は争う。

(2)本件特許発明の眼鏡類に使用される「磁石」は,そのままでは非常に錆びやすく,これを防止するために,磁石の表面に酸化防止を設けることが一般的に行われている。したがって,磁石の表面に酸化防止被膜が設けられていても,本件特許発明の構成要件C中の「磁石の端面が露出」を充足するものであるといえる。イ号物品の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜であっても,磁石の表面に設けられる酸化防止被膜と,形成される工程は異なるものの,酸化防止の目的で設けられる点で共通しており,上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足する。

(3)請求人が主張する「磁石の脱落を防止する効果」について,イ号物品において,本件特許発明の構成要件を充足した上で,付加された構成によって奏せられる作用効果であって,イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの理由にはならない。

(4)塗布膜の厚さについて,「1mm程度」と記載されているが,当該厚さも,イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの理由にはなり得ない。また,「1mm程度」とは,有効数字が不明であり,0.5?1.4mmの範囲の厚みを含むものであり,イ号物品が十分に特定されているとはいえない。

第5 対比・判断
1 各構成要件の充足性について
(1)構成要件A,B,D及びFの充足性について
イ号物品の構成a,b,d及びfは,それぞれ,本件特許発明の構成要件A,B,D及びFを充足する。

(2)構成要件E及びCの「磁石のみからなる一組の連結器を」「枠の各内端に,つるを枠の各外端に,それぞれ取り付け」の部分の充足性について
イ号物品の「2つの磁石(3)」は,「枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内」に取り付けられ,「2つの磁石(3)により,各枠(2)の内端(2A)を連結又は分離」している。したがって,イ号物品の「2つの磁石(3)」は,本件特許発明の「磁石のみからなる一組の連結器」に相当する。
そして,イ号物品の「枠(2)の内端(2A)」が,本件特許発明の「枠の内端」に相当する。したがって,イ号物品の構成eは,本件特許発明の構成要件Eを充足する。
更に,イ号物品の「枠(2)の各外端(2B)」が,本件特許発明の「枠の各外端」に相当する。そして,イ号物品の構成c及びc-2は,本件特許発明の構成要件Cの「磁石のみからなる一組の連結器を」「枠の各内端に,つるを枠の各外端に,それぞれ取り付け」を充足する。

なお,上記(1)及び(2)の充足性について,当事者の間に争いはない。

(3)構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分の充足性について
ア 構成要件Cに関して,本件特許発明は,「磁石の端面が露出」しているのに対し,イ号物品は,「塗布膜(4)で・・・各磁石(3)の端面・・・を被覆し」ている。そこで,特許請求の範囲に記載された「露出」の意義を解釈するために,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮すると,明細書には,「露出」について特段の定義は記載されておらず,また,明細書には,そもそも「露出」なる用語の記載がない(本件補正により特許請求の範囲に記載された用語である。)。ただし,本件特許の図3においては,連結器11が,覆いなくむき出しになっている様子が見て取れる。

【図3】


したがって,磁石の端面の「露出」については,「何の覆いもなくあらわに見えていること」を意味すると解するのが相当である。また,このような解釈は一般的な「露出」の意味である「あらわに,むき出しになること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]とも整合する。

イ イ号物品において,「2つの磁石(3)」は,「枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に,各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け」,「塗布膜(4)で,各磁石(3)の端面および各枠(2)の内端(2A)の端面を被覆し」ている。

ウ ここで,イ号物品においては,「塗布膜(4)」は,「各凹部(2C)を埋め込むとともに,各磁石(3)の端面および各枠(2)の内端(2A)の端面を被覆し」,「表面は略平坦となって」いるのであるから,イ号物品の「磁石」は,「各枠(2)」及び「塗布膜(4)」によって,完全に覆われることとなる。(この点は,参考図の【イ号図1】,【イ号図4】からも見て取れる事項である。)したがって,端面が「露出」とは,端面が何らかの別の部材によって覆われることなく,むき出しになっていると解されるところ,イ号物品の「磁石」は,「枠」及び「塗布膜」によって端面が全面覆われており,「磁石の端面が露出」しているとはいえない。よって,イ号物品の構成c及びc-2は,本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

エ ところで,磁石においては,その表面に酸化防止を目的とした被膜を設けることが,当業者において周知慣用されており,また,表面の被膜を含めて(被膜を磁石の一部とみなして)「磁石」という場合もある。しかしながら,イ号物品における「塗布膜(4)」は,端面を単に被覆するのみならず,各枠の内端の端面をも被覆している。したがって,イ号物品における「塗布膜(4)」は,磁石の製造時に,磁石の表面に設けられる酸化防止の被膜とは異なるものと解するのが妥当であるから,これを「磁石」の一部をなす部材とみることはできない。
よって,仮に,酸化防止の被膜について考慮したとしても,イ号物品の構成c及びc-2は,本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

オ さらに,イ号物品においては,「塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面上で1mm程度となって」いる。この塗布膜は,ユーザによるイ号物品の繰り返し着脱に起因する傷が磁石の端面に付いた結果,磁石の端面が酸化したり腐食したりすることを防止することを目的としており,イ号物品の「塗布膜(4)」は,イ号物品特有の課題に基づいて上記の厚さ及び構造としている。イ号物品の「塗布膜(4)」は,酸化を防止するという観点では,周知の酸化防止の被膜と共通するとしても,イ号物品において果たす機能は異なるため,磁石の一部とみなせる単なる酸化防止の被膜と同一視することはできない。

カ したがって,イ号物品の「塗布膜(4)」の厚さ及び構造を考慮すると,なおさら,イ号物品の構成c及びc-2は,本件特許発明の構成要件Cを充足しないといえる。

キ よって,イ号物品の構成c及びc-2は,構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分を充足しない。

(4)各構成要件の充足性のまとめ
上記(3)のとおり,イ号物品は,「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に,つるを枠の各外端に,それぞれ取り付け,」との本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

2 均等について
請求人は,判定請求書において,イ号物品は,均等の第1要件,第3要件及び第5要件を満たさないから均等論の適用の範囲にあたらない旨を具体的に主張しているのに対し,被請求人は,判定請求答弁書において,均等について,第1?3要件について何ら主張,立証をせず,また,第5要件について何ら反論をしなかった。
よって,イ号物品は,本件特許発明と均等なものとはいえない。

3 被請求人の主張について
(1)被請求人は,磁石の表面に酸化防止被膜を設けることが一般的に行われており,磁石の表面に酸化防止被膜が設けられていても,本件特許発明の構成要件C中の「磁石の端面が露出」を充足するものである。したがって,イ号物品の製造時に磁石の表面に「塗布膜(4)」が設けられても,同じ酸化防止を目的としたものであり,上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものであるといえると主張する。
しかし,上記1(3)のとおり,イ号物品の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜(4)は,磁石の一部を構成するものとはいえず,したがって,磁石の端面が塗布膜(4)によって覆われているイ号物品は,上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものとはいえない。

(2)更に,被請求人は,塗布膜(4)の厚さについて,「1mm程度」と記載されているが,有効数字が不明であり,0.5?1.4mmの範囲の厚さをふくむものであり,イ号物品が十分に特定されているとはいえないと主張する。
しかしながら,イ号物品についての記載は,イ号物品の構成を特定する記載であって,特許請求の範囲の記載のように発明の技術的範囲を特定する記載ではない。したがって,イ号物品の構成における「1mm程度」との記載は,「1mm」という設計値に対する製造誤差を考慮して「1mm程度」と特定したものと解するのが相当であり,有効数字の範囲を記載したものと解することは妥当でない。したがって,被請求人の上記の主張は,前提において失当である。また,請求人は,請求書において「1mm程度」の厚さとすることにより,「2つの磁石同士の連結力が十分に得られる状態で」,繰り返し着脱に起因する傷を防止して「各磁石の端面の酸化や腐食を抑制することができる。」としている(「(4-3)イ号物品の効果」)。イ号物品の構成は,上記第3のとおりであり,イ号物品の構成において厚さが「1mm程度」と記載されているからといって,イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属するか否かを判定するにあたって,十分に特定されていないとはいえない。

4 まとめ
したがって,イ号物品は,本件特許発明の構成要件Cを充足していない。イ号物品は,本件特許発明の均等ともいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,イ号物品は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲 別紙「(4)イ号物品の説明」及び「参考図」

 
判定日 2016-10-19 
出願番号 特願2000-302262(P2000-302262)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (G02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒巻 慎哉越河 勉  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 多田 達也
鉄 豊郎
登録日 2007-05-11 
登録番号 特許第3955432号(P3955432)
発明の名称 スナップ付きブリッジを有する眼鏡類  
代理人 森 治  
代理人 森 治  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ