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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) C25D
管理番号 1321278
判定請求番号 判定2016-600031  
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 判定 
判定請求日 2016-07-05 
確定日 2016-11-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4294467号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「電着装置」は、特許第4294467号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨・手続の経緯
1 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に示す電着装置(以下、「イ号装置」という。)は、特許第4294467号(以下、「本件特許」という。)発明の技術的範囲に属するとの判定を求めるというものである。

2 本件判定請求は、本件特許の特許権者である請求人が、被請求人のウェブサイト(甲第2号証)に掲載されたイ号装置が、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属すると主張してなされたものである。

3 本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成15年12月26日 特許出願(特願2003-434705号)
平成21年 4月17日 設定登録
平成28年 7月 5日 判定請求書
平成28年 8月29日 判定請求答弁書

第2 本件特許発明
本件特許発明は、願書に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成要件に符号を付して分説すると、次のとおりである(以下、分説した構成要件を「構成要件A」?「構成要件F」という。)。
「A ワークをコンベアで搬送しながら処理液に浸漬させる処理液槽を備え、
B 当該処理液槽には、液面側にワークの出槽側から入槽側に向かう流れを形成する噴射ノズルと、槽底側に入槽側から出槽側に向う流れを形成する噴射ノズルが配されて、処理液をその液面側と槽底側で互いに反対向きに流して循環させる攪拌流が形成された表面処理装置において、
C 処理液槽のワークの入槽側にオーバーフロー堰が形成されると共に、
D そのオーバーフロー堰は、液面側を流れてきた処理液を槽底側に案内すると共に、槽底側でワークの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板で形成され、
E ワークの出槽側には、槽底側を流れてきた処理液を液面側へ案内すると共に、液面側でワークの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる円弧状のガイド板が設けられたことを特徴とする
F 表面処理装置。」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、判定請求書において、イ号装置が本件特許発明の技術的範囲に属することについて以下のとおり主張している。

(1) イ号装置の説明
イ号装置の構成は以下のとおりである。
「a:乗用車ボデーをオーバーヘッドコンベア1で搬送しながら処理液に浸漬させる処理槽2を備え、
b:当該処理槽2には、処理液の上層部と中層部に乗用車ボデーの進行方向に対向する対向流を形成する側部処理液噴射ノズル7a、7bと、処理液の底層部に乗用車ボデーの進行方向に向かう順行流を形成する底部処理液噴射ノズル8a、8bが配されて、処理液をその上層部・中層部側と底層部側で互いに反対向きに流して循環させる電着装置において、
c:処理槽2の乗用車ボデーの入槽側にオーバーフロー槽3bと処理槽2との間の堰が形成されると共に、
d:その堰は、上層部・中層部側を流れてきた処理液を底層部側に案内すると共に、底層部側で乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように上層部側から底壁に至るまで略円弧状に形成された後端壁2dで形成され、
e:乗用車ボデーの出槽側には、底層部側を流れてきた処理液を上層部・中層部側へ案内すると共に、上層部・中層部側で乗用車ボデーの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる円弧状の湾曲板2fが設けられたことを特徴とする
f:電着装置。」(4頁3?24行)

(2) 本件特許発明とイ号装置との対比・判断
イ号装置の構成a、b、c及びfは、それぞれ本件特許発明の構成要件A、B、C及びFと実質的に同一である。
イ号図面に記載された後端壁2dの全体形状は、略円弧状といい得るものであるから、イ号装置の構成dは、本件特許発明の構成要件Dと実質的に同一である。
イ号図面に記載された前端壁2cの湾曲板2fの形状は、円弧状といい得るものであるから、イ号装置の構成eは、本件特許発明の構成要件Eと実質的に同一である。
したがって、イ号装置の構成は、本件特許発明の構成要件A?Fを全て充足しており、また、イ号装置の作用効果も、本件特許発明の作用効果と実質的に同一である。
よって、イ号装置は、本件特許発明の技術的範囲に属する。

2 被請求人の主張
被請求人は、判定請求答弁書において、イ号装置が本件特許発明の技術的範囲に属さないことについて以下のとおり主張している。

(1) イ号装置と本件特許発明との比較
請求人は、イ号装置の構成dの堰を「上層部側から底壁に至るまで略円弧状に形成された後端壁で形成され」ているとしているが、実際にはイ号装置の構成dの堰は「液面側では斜面に槽底側では湾曲状に形成された後端壁で形成され」ている。
他方、本件特許発明の構成要件Dの堰は「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板で形成され」ている。本件特許明細書には「略円弧状」の明確な定義はなされていないが、本件特許明細書【0021】の記載から、本件特許発明の構成要件Dの堰は「液面側から槽底に至るまで円弧に極めて近似した形状(多角形状の場合には、内接円や外接円を有する多角形のような円弧に極めて近似した多角形状)に形成されたガイド板で形成されている」と解釈するのが妥当であるから、イ号装置の構成dは、本件特許発明の構成要件Dとは異なる。
また、本件特許の審査過程において、出願人(被請求人)は、構成要件Dの略円弧状のガイド板が、斜面を含まないことを明言している。
さらに、イ号装置と本件特許発明には、作用効果上の相違がある。

(2) 本件特許出願時の技術レベルから考察した本件特許の技術的範囲
本件特許出願時の技術レベルからすると、本件特許発明の構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状」は、「液面側から槽底に至るまで単一の円弧又は内接円や外接円を有する多角形のような単一の円弧に極めて近似した形状」に限定解釈すべきであり、「略円弧」に含まれる多角形は、円弧に極めて近似する多角形であると解釈するのが妥当である。

第4 当審の判断
1 イ号装置の構成の特定
(1) 請求人が提出した甲第5号証は、被請求人代理人から請求人代理人に宛てた、2016年3月24日付け書簡の写しであるところ、上記甲第5号証には、「当社ウェブサイトの製品紹介/電着装置/PMT対向流システムのウェブページ(http://www.parker-eng.co.jp/product/1-plant/dencyakusouchi/)に掲載の「電着塗装不具合要因であるゴミ・ブツの消滅に有効なシステム/PMTP 対向循環システム」に関するイメージ図が示す電着塗装装置・・・」(1頁14?17行)、及び、「尚、当社ウェブサイト掲載の前記イメージ図は、当社保有の特許第4849605号の図1(a)に基づくものであり・・・」(2頁3?4行)と記載されている。
そこで、特許第4849605号(甲第3号証)の記載をみてみる。

(2) 特許第4849605号(甲第3号証)の記載事項
特許第4849605号(甲第3号証)には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
ア 「【0012】
本発明の実施例に係る浸漬型表面処理装置を説明する。
図1に示すように、コンベヤレール11と、コンベヤレール11に懸架されたコンベヤトロリー12と、コンベヤトロリー12に懸架されたハンガー13とを備えるオーバーヘッドコンベヤ1が、図示しない塗装建屋の天井部に配設されている。コンベヤトロリー12は図1において右方から左方へ走行する。以後コンベヤトロリー12の進行方向を前方、コンベヤトロリー12の進行方向に逆行する方向を後方と呼ぶ。コンベヤレール11は、上側走行部11aと、下側走行部11bと、両者を繋ぐ後方傾斜部11cと、前方傾斜部11dとにより構成されている。
【0013】
オーバーヘッドコンベヤ1の下方には、処理槽2が配設されている。処理槽2は、後方から前方へ向けて下方へ傾斜した底壁2aと、両側壁2bと、前端壁2cと後端壁2dとを有している。
処理槽2の出槽側端部を形成する前端壁2cの下部は前方へ向けて下方へ傾斜してホッパー2eを形成し、上部は前方へ向けて上方へ傾斜している。前端壁2cの前方へ向けて上方へ傾斜した上部の前端は後方へ折り返された湾曲板2fを形成しており、前端壁2cの前方へ向けて上方へ傾斜した上部の後端が後方へ延長されて斜板2gを形成している。
処理槽2の入槽側端部を形成する後端壁2dは、後方へ向けて下方へ傾斜した斜板2hを形成している。斜板2hは、下部に形成された後方下方へ凸の湾曲部2iを介して底壁2aに滑らかに接続している。
処理槽2の出槽側端部に隣接してオーバーフロー槽3aが配設され、入槽側端部に隣接してオーバーフロー槽3bが配設されている。湾曲板2fがオーバーフロー槽3aと処理槽2との間の堰を形成し、斜板2hの上端部がオーバーフロー槽3bと処理槽2との間の堰を形成している。
処理槽2に、処理液が貯留されている。処理液の水面はオーバーフロー槽3a及びオーバーフロー槽3bと処理槽2との間の堰よりも僅かに上方に在る。
【0014】
ホッパー2eの底部とオーバーフロー槽3aの底部から延びる配管4aが、ポンプ5aとフィルター6aとを経由して、処理槽2の出槽側端部近傍から長手方向中央部に亙って延在する部位の両側部の上部から深さ方向中央部に亙って配設された多数の側部処理液噴射ノズル7aに接続している。図1に矢印で示すように、側部処理液噴射ノズル7aから、水平に且つ処理槽2の入槽側端部方向へ、且つ僅かに処理槽2の幅方向中央部方向へ、処理液が噴射される。配管4aは、処理槽2の出槽側端部近傍から長手方向中央部に亙って延在する部位の底部に、且つ幅方向の全域に亙って配設された多数の底部処理液噴射ノズル8aに接続している。図1に矢印で示すように、底部処理液噴射ノズル8aから、底壁2aに平行に且つ処理槽2の出槽側端部方向へ処理液が噴射される。配管4aは、処理槽2の出槽側端部近傍の両側部の上部に配設された複数の出槽側端部処理液噴射ノズル9aに接続している。図1に矢印で示すように、出槽側端部処理液噴射ノズル9aから、側部処理液噴射ノズル7aから噴射される処理液と同一方向へ、処理液が噴射される。
オーバーフロー槽3bの底部から延びる配管4bが、ポンプ5bとフィルター6bとを経由して、処理槽2の入槽側端部近傍から長手方向中央部に亙って延在する部位の両側部の上部から深さ方向中央部に亙って配設された多数の側部処理液噴射ノズル7bに接続している。配管4aは、処理槽2の入槽側端部近傍から長手方向中央部に亙って延在する部位の底部に、且つ幅方向の全域に亙って配設された多数の底部処理液噴射ノズル8bに接続している。配管4aは、処理槽2の入槽側端部近傍の両側部の上部に配設された複数の出槽側端部処理液噴射ノズル9bに接続している。図1に矢印で示すように、処理液噴射ノズル7b、8b、9bから、処理液噴射ノズル7a、8a、9aから噴射される処理液と同一方向へ、処理液が噴射される。
【0015】
本実施例に係る浸漬型表面処理装置の作動を説明する。
処理槽2内の処理液の上層部と中層部とには、処理液噴射ノズル7a、7b、9a、9bから噴射される処理液により当該部の処理液が付勢されて、図1に白抜き矢印で示すように、乗用車ボデーAの進行方向に対向する対向流が形成されている。側部処理液噴射ノズル7a、7b、9a、9bから噴射される処理液は、前述の如く僅かに処理槽2の幅方向中央部方向へ差し向けられているので、噴射された処理液は幅方向中央部の処理液も付勢する。この結果、処理液の上層部と中層部の全体に、対向流が形成されている。
処理槽2内の処理液の底層部には、処理液噴射ノズル8a、8bから噴射される処理液により当該部の処理液が付勢されて、図1に二重白抜き矢印で示すように、乗用車ボデーAの進行方向に向う順行流が形成されている。処理液噴射ノズル8a、8bは、処理槽2底部の幅方向全域に亙って配設されているので、処理液の底層部の全体に、順行流が形成されている。
【0016】
図1に白抜き矢印で示す上層部と中層部の対向流の終端部は、表面域が堰を越えてオーバーフロー層(当審注:「オーバーフロー層」は、上記【0013】の「オーバーフロー槽」との記載によれば、「オーバーフロー槽」の誤記であるから、以下、「オーバーフロー槽」と表記する。)3bに流入し、残余部が処理槽2の後端壁2dが形成する斜板2hにより、乗用車ボデーAの進行方向に対向させつつ斜め下方へ案内され、更に斜板2hの下部に形成された湾曲部2iにより順行方向へ案内されて、図1に二重白抜き矢印で示す底層部の順行流にスムーズ合流している(当審注:「スムーズ合流している」は、「スムーズに合流している」の誤記であるから、以下、「スムーズに合流している」と表記する。)。この結果、対向流終端部の乱れが抑制されている。
図1に二重白抜き矢印で示す底層部の順行流の終端部は、上部が斜板2gにより斜め上方へ案内され、処理槽2の前端壁2cの上部によって継続して斜め上方へ案内され、湾曲板2fに案内されて対向方向へ案内されて、上層部の対向流にスムーズに合流している。底層部の順行流の終端部は、上部を除いた残余部がホッパー2eへ流入する。順行流の一部が上方へ案内されて、ホッパー2eに流入する順行流の流量が減少することにより、ホッパーの端壁を形成する前端壁2cの下部に衝突する流量が減少して上方へ舞い上がる流量が減少している。またホッパー2eの上方を覆う斜板2gにより、前端壁2cの下部に衝突して舞い上がった流れが塞き止められている。この結果、順行流終端部の乱れが抑制されている。
【0017】
ハンガー13上に、ドア、ボンネット等を開放固定した乗用車ボデーAが固定されている。コンベヤトロリー12の走行に伴い、ハンガー13上に固定された乗用車ボデーAは、図1に太線矢印で示すように、入槽側端部近傍で処理槽2に入槽し、処理槽2内に貯留された処理液内を、処理槽2の出槽側端部へ向けて搬送され、出槽側端部近傍で処理槽2から出槽する。
乗用車ボデーAが通過する上層部と中層部の処理液の流れが乗用車ボデーAの進行方向に対向しており、処理液流と乗用車ボデーAとの相対速度が大きいので、金属粉等の異物の乗用車ボデーAへの付着が効果的に防止される。
対向流の終端部がスムーズに下方へ案内されて順行流に合流しているので、対向流の終端部は乱れず、金属粉等の異物の複雑な流動は発生せず、乗用車ボデーAに付着しない。順行流の終端部の一部がスムーズに斜め上方へ案内されて対向流に合流し、順行流の終端部がホッパーの端壁に衝突して舞い上がる流量が減少し、かつ舞い上がり流が斜板2gにより塞き止められているので、順行流の終端部は乱れず、金属粉等の異物の複雑な流動は発生せず、乗用車ボデーAに付着しない。
従って、本実施例に係る浸漬型表面処理装置においては、乗用車ボデーAは良好に表面処理される。
処理槽2の底部に沈降した金属粉等の異物は、順行流に連行されてホッパー2eへ流入し、ホッパー2eから吸い出され、フィルター6aにより捕獲されて処理液から除去される。」

イ 「【図1】(a)



(3) イ号装置の構成
ア イ号図面は、甲第2号証に掲載された図面であるところ、当該甲第2号証の表題には「電着装置」と記載されていることからすると、イ号図面は、電着装置の図面であるといえるから、イ号装置は、電着装置である。
そして、特許第4849605号(甲第3号証)の図1(a)に関する説明である前記(2)アの記載事項を参照しつつ、前記(2)イに示した同図1(a)とイ号図面とを比較すると、イ号図面は、同図1(a)に基づくものであるといえるから、同図1(a)に関する説明である前記(2)アに記載されている用語を用いてイ号装置の構成を次項イのとおり特定することができる。

イ 甲第3号証の前記(2)アの記載事項を参照して、イ号図面における【イ号装置の全体模式図】の各構成を図示すると以下のとおりとなる。


ウ 甲第3号証の前記(2)アの【0012】、【0017】によれば、オーバーヘッドコンベヤのハンガー上に固定された乗用車ボデーは、処理槽内に貯留された処理液内を搬送されるものであるから、イ号装置は、乗用車ボデーをオーバーヘッドコンベヤで搬送しながら処理液に浸漬させる処理槽を備えているといえる。

エ 甲第3号証の前記(2)アの【0014】、【0015】によれば、処理槽内の処理液の上層部と中層部とには、側部処理液噴射ノズルから噴射される処理液により当該部の処理液が付勢されて、乗用車ボデーの進行方向に対向する対向流が形成されており、また、処理槽内の処理液の底層部には、底部処理液噴射ノズルから噴射される処理液により当該底層部の処理液が付勢されて、乗用車ボデーの進行方向に向かう順行流が形成されている。
ここで、甲第3号証の前記(2)アの【0017】によれば、乗用車ボデーは、入槽側端部近傍で処理槽に入槽し、処理槽内に貯留された処理液内を、処理槽の出槽側端部へ向けて搬送され、出槽側端部近傍で処理槽から出槽するものであるから、上記「乗用車ボデーの進行方向に対向する対向流」は、乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れに他ならず、また、上記「乗用車ボデーの進行方向に向かう順行流」は、乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに他ならない。
したがって、イ号装置において、処理槽には、処理液の上層部と中層部に乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れを形成する側部処理液噴射ノズルと、処理液の底層部に乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れを形成する底部処理液噴射ノズルが配されているといえる。

オ 甲第3号証の前記(2)アの【0013】によれば、処理槽には、当該処理槽の入槽側端部に隣接してオーバーフロー槽が配設されており、斜板の上端部によって、オーバーフロー槽と処理槽との間の堰が形成されているから、イ号装置は、処理槽の乗用車ボデーの入槽側に、オーバーフロー槽と処理槽との間の堰が形成されているといえる。

カ 甲第3号証の前記(2)アの【0016】によれば、上層部と中層部の対向流の終端部は、表面域が堰を越えてオーバーフロー槽に流入し、残余部が処理槽の後端壁が形成する斜板により、乗用車ボデーの進行方向に対向させつつ斜め下方へ案内され、更に斜板の下部に形成された湾曲部により順行方向へ案内されて、底層部の順行流にスムーズに合流している。そして、前記イに示した【イ号装置の全体模式図】によれば、堰は、上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁で形成されていることがみて取れる。
ここで、上記「底層部の順行流」は、前記エの検討事項によれば、底層部の乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに他ならない。
そうすると、イ号装置における堰は、上層部・中層部を流れてきた処理液を底層部に案内するとともに、底層部で乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように、上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁で形成されているといえる。

キ 甲第3号証の前記(2)アの【0016】によれば、底層部の順行流の終端部は、上部が斜板により斜め上方へ案内され、処理槽の前端壁の上部によって継続して斜め上方へ案内され、湾曲板に案内されて対向方向へ案内されて、上層部の対向流にスムーズに合流している。そして、前記イに示した【イ号装置の全体模式図】によれば、湾曲板は、乗用車ボデーの出槽側に設けられていることがみて取れる。
ここで、上記「上層部の対向流」とは、前記エの検討事項によれば、上層部で乗用車ボデーの進行方向、すなわち、搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに他ならない。
そうすると、イ号装置において、乗用車ボデーの出槽側には、底層部を流れてきた処理液を上層部へ案内する斜板とともに、上層部で乗用車ボデーの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる湾曲板が設けられているといえる。

ク 前記カ及びキの検討事項によれば、イ号装置において、上層部・中層部を流れてきた処理液は、底層部に案内されるとともに、底層部で乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに反転され、底層部を流れてきた処理液は、上層部へ案内されるとともに、上層部で乗用車ボデーの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転されるものであるから、イ号装置においては、処理液をその上層部・中層部と底層部とで互いに反対向きに流して循環させているといえる。

ケ イ号装置の構成は、前記ア?クの検討事項を総合して、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように符号を付して構成に分説すると、以下のとおりのものと認める(以下、分説した構成を「構成a」?「構成f」という。)。
「a 乗用車ボデーをオーバーヘッドコンベヤで搬送しながら処理液に浸漬させる処理槽を備え、
b 当該処理槽には、処理液の上層部と中層部に乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れを形成する側部処理液噴射ノズルと、処理液の底層部に乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れを形成する底部処理噴射ノズルが配されて、処理液をその上層部・中層部と底層部とで互いに反対向きに流して循環させる電着装置において、
c 処理槽の乗用車ボデーの入槽側に、オーバーフロー槽と処理槽との間の堰が形成されるとともに、
d その堰は、上層部・中層部を流れてきた処理液を底層部に案内するとともに、底層部で乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように、上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁で形成され、
e 乗用車ボデーの出槽側には、底層部を流れてきた処理液を上層部へ案内する斜板とともに、上層部で乗用車ボデーの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる湾曲板が設けられた
f 電着装置。」

2 構成要件の充足性についての判断
イ号装置の構成が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて、検討する。

(1) 構成要件Aの充足性について
イ号装置の構成aの「乗用車ボデー」、「オーバーヘッドコンベヤ」、「処理槽」は、それぞれ、本件特許発明の構成要件Aの「ワーク」、「コンベア」、「処理液槽」に相当するから、イ号装置の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足する。

(2) 構成要件Bの充足性について
まず、イ号装置の構成bの「処理液の上層部」について検討する。
イ号装置の「処理液」は、前記1(3)イに示した【イ号装置の全体模式図】によれば、液面から底壁に向かって、上層部、中層部、底層部の3つの部分に分かれているものであり、そのうち、上層部と中層部は、「乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れ」が形成された部分であるところ、甲第3号証の前記(2)アの【0017】の「乗用車ボデーAが通過する上層部と中層部の処理液の流れが乗用車ボデーAの進行方向に対向しており、処理液流と乗用車ボデーAとの相対速度が大きいので、金属粉等の異物の乗用車ボデーAへの付着が効果的に防止される。」との記載によれば、乗用車ボデーは、処理液の上層部と中層部に位置しているといえるから、イ号装置の構成bの「処理液の上層部」とは、処理液のうち、液面から乗用車ボデーのほぼ上半分が浸漬される深さまでの部分であって、乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れが形成された部分であると認められる。
一方、本件特許発明の構成要件Bの「処理液」の「液面側」は、「ワークの出槽側から入槽側に向かう流れ」が形成された部分であるところ、本件特許明細書の【0008】の「自動車ボディの上半分が浸漬される液面側」との記載、及び、同【0026】の「液面側の噴射ノズル5T…により出槽側から入槽側に向って流される液面側の攪拌流が電着槽2の入槽側端部に達すると、その液面に浮かぶ気泡やゴミと共にオーバーフロー堰3を越えてサブタンク4に回収される分を除き、攪拌流のほとんどが円弧状のガイド板6に沿って下向きに反転され」との記載によれば、上記「処理液」の「液面側」とは、処理液のうち、液面からワークの上半分が浸漬される深さまでの部分であって、ワークの出槽側から入槽側に向かう流れが形成された部分であるといえる。
したがって、イ号装置の構成bの「処理液の上層部」は、本件特許発明の構成要件Bの「処理液」の「液面側」に相当し、同構成bの「処理液の上層部」「に乗用車ボデーの進行方向に対向する対向流を形成する側部処理液噴射ノズル」は、本件特許発明の構成要件Bの「液面側にワークの出槽側から入槽側に向かう流れを形成する噴射ノズル」に相当する。
次に、イ号装置の構成bの「処理液の底層部」は、「乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れ」が形成された部分であるところ、同じく「ワークの入槽側から出槽側に向かう流れ」が形成された部分である、本件特許発明の構成要件Bの「槽底側」に相当し、同構成bの「処理液の底層部に乗用車ボデーの進行方向に向かう順行流を形成する底部処理噴射ノズル」は、本件特許発明の構成要件Bの「槽底側に入槽側から出槽側に向う流れを形成する噴射ノズル」に相当する。
そして、イ号装置の構成bの「処理液をその上層部」「と底層部とで互いに反対向きに流して循環させる」ことは、本件特許発明の構成要件Bの「処理液をその液面側と槽底側で互いに反対向きに流して循環させる攪拌流が形成され」ることに相当する。
さらに、同構成bの「電着装置」は、本件特許発明の構成要件Bの「表面処理装置」に相当する。
したがって、イ号装置の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足する。

(3) 構成要件Cの充足性について
イ号装置の構成cの「オーバーフロー槽と処理槽との間の堰」は、本件特許発明の構成要件Cの「オーバーフロー堰」に相当するから、同構成cの「処理槽の乗用車ボデーの入槽側に、オーバーフロー槽と処理槽との間の堰が形成される」ことは、本件特許発明の構成要件Cの「処理液槽のワークの入槽側にオーバーフロー堰が形成される」ことに相当する。
したがって、イ号装置の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足する。

(4) 構成要件Dの充足性について
ア 前記(1)?(3)の検討事項によれば、イ号装置の構成dの「堰」、「上層部」「を流れてきた処理液」、「底層部」、「乗用車ボデー」は、それぞれ、本件特許発明の構成要件Dの「オーバーフロー堰」、「液面側を流れてきた処理液」、「槽底側」、「ワーク」に相当するから、イ号装置の構成dの「堰」、及び、本件特許発明の構成要件Dの「オーバーフロー堰」は、いずれも、液面側を流れてきた処理液を槽底側に案内すると共に、槽底側でワークの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるものであるといえるところ、イ号装置の「堰」は、「上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁で形成され」ているのに対し、本件特許発明の「オーバーフロー堰」は、「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板で形成され」ている。

イ そこで、イ号装置の構成dの「上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁」が、本件特許発明の構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」に相当するか否かについて検討する。

イ-1 本件特許発明の構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」について
イ-1-1 本件特許発明の構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」のうち、「液面側から槽底に至るまで」とは、「略円弧状に形成されたガイド板」の形成箇所を特定する事項であるといえ、また、「液面側から槽底に至るまで略円弧状」とは、液面側から槽底に至るまでのガイド板の形状を特定する事項であるといえるから、上記「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」は、液面側から槽底に至るまで、全体として一つの略円弧状に形成されたものであるといえる。
ここで、上記「槽底」とは、本件特許発明の構成要件Dの「処理液槽」の底であることは明らかである。一方、上記「液面側」とは、具体的な位置を特定する表現とはいえないから、以下に、上記「液面側」について検討する。

イ-1-2 本件特許発明の構成要件Dの「オーバーフロー堰」は、「液面側を流れてきた処理液を槽底側に案内すると共に、槽底側でワークの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板で形成され」ているものであるから、「オーバーフロー堰」は、「ガイド板」で形成されたものであるといえるところ、当該「オーバーフロー堰」は、「液面を流れてきた処理液」の表層をオーバーフローさせるものであることは自明の事項である(本件特許明細書の【0026】も参照。)から、「オーバーフロー堰」、すなわち、「ガイド板」の上端縁(本件特許明細書【0021】参照。)は、「液面を流れてきた処理液」の表層をオーバーフローさせるように、処理液面から当該表層分の深さに位置しているといえる。
一方、「処理液」の「液面側」とは、前記(2)で検討したように、処理液のうち、液面からワークの上半分が浸漬される深さまでの部分であって、ワークの出槽側から入槽側に向かう流れが形成された部分である。
そうすると、「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」の「液面側」とは、処理液の、液面からワークの上半分が浸漬される深さまでの部分であって、ワークの出槽側から入槽側に向かう流れが形成された部分のうち、ガイド板の上端縁が存在する位置、すなわち、「液面を流れてきた処理液」の表層をオーバーフローさせるように、処理液面から当該表層分の深さの位置(以下、「液面近傍」という。)であるといえる。

イ-1-3 以上から、本件特許発明の構成要件Dの「ガイド板」は、液面近傍から処理液槽の底に至るまで、全体として一つの略円弧状に形成されたものであると解釈するのが相当である。

イ-2 ところで、本件特許発明の「表面処理装置」は、「ガイド板」につき、構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」の他に、構成要件Eの「円弧状のガイド板」も備えているところ、当該構成要件Eの「円弧状のガイド板」は、「槽底側を流れてきた処理液を液面側へ案内すると共に、液面側でワークの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる」ものであることが特定されているにとどまり、どこからどこまでが円弧状であるのか、つまり、その形成箇所は特定されていない。
一方、本件特許発明の構成要件Dの「略円弧状に形成されたガイド板」は、「液面側から槽底に至るまで」と、その形成箇所が特定されており、その形成箇所が特定されていない構成要件Eの「円弧状のガイド板」とは、書き分けられている。
そうすると、構成要件Dの「略円弧状に形成されたガイド板」は、構成要件Eの「円弧状のガイド板」とは異なり、その形成箇所が明示的に特定されたものと解するべきであり、前記イ-1-3のように解釈することは妥当である。

イ-3 また、本件特許明細書及び図面をみてみると、同【0026】の「出槽側から入槽側に向って流される液面側の攪拌流が電着槽2の入槽側端部に達すると、その液面に浮かぶ気泡やゴミと共にオーバーフロー堰3を越えてサブタンク4に回収される分を除き、攪拌流のほとんどが円弧状のガイド板6に沿って下向きに反転され」との記載、同【0021】の「攪拌流の液面側下流となる電着槽2の入槽側端面は、液面側を流れてきた電着液を下向きに反転させて槽底側に案内する円弧状または略円弧状となる多角形状(以下単に「円弧状」という)のガイド板6で形成され、このガイド板6の上端縁がオーバーフロー堰3となっている。」との記載、及び、同【図1】によれば、ガイド板で形成されているオーバーフロー堰は、液面近傍から処理液槽の底に至るまで、全体として一つの略円弧状に形成されているものであることがみて取れるから(以下に示す、本件特許の【図1】参照。)、本件特許明細書及び図面の記載によっても、前記イ-1-3における「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」の解釈は裏付けられている。

本件特許の【図1】


イ-4 さらに、請求人は、本件特許の出願の審査過程における、平成20年12月15日付け拒絶理由通知(乙第1号証)に対する意見書(乙第2号証)の「3.請求項1について」の「(2)構成の予測困難性」において、「特に、入槽側に設けられたガイド板は、引用発明1の湾曲部(21,2A)とは異なり、傾斜面に替えて液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成するという格別の構成を有していますので引用発明1の湾曲部がこれに相当する筈がなく」と主張しているところ、上記拒絶理由通知における引用発明1とは、実願平2-31704号(実開平3-125074号)のマイクロフィルム(乙第4号証)に記載された発明のことであって、その湾曲部(21,2A)とは、第1図に示されている「21」、及び、第4図に示されている「2A」のこと(以下に示す乙第4号証の第1図及び第4図参照。)であることからすると、当該主張は、本件特許発明の構成要件Dの「ガイド板」について、傾斜面を有するとともに、その一部が円弧状になっているものとは構成が異なる旨の主張であるといえる。
そうすると、構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」を前記イ-1-3のように解釈することは妥当である。

乙第4号証の第1図


乙第4号証の第4図


イ-5 一方、イ号装置の構成dの「堰」は、「上層部・中層部を流れてきた処理液を底層部に案内するとともに、底層部で乗用車ボデーの入槽側から出槽側に向かう流れに反転させるように、上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁で形成され」るものであるから、当該「堰」は、「後端壁」で形成されたものであるといえるところ、前記アで検討したとおり、イ号装置の構成dの「堰」は、本件特許発明の構成要件Dの「オーバーフロー堰」に相当するから、前記イ-1-2で検討したのと同様の理由により、同構成dの「上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁」の「上層部」とは、処理液の、液面から乗用車ボデーのほぼ上半分が浸漬される深さまでの部分であって、乗用車ボデーの出槽側から入槽側に向かう流れが形成された部分のうち、後端壁の上端縁が存在する位置、すなわち、「上層部・・・を流れてきた処理液」の表層をオーバーフローさせるように、処理液面から当該表層分の深さの位置(液面近傍)であるといえる。
なお、このことは、甲第3号証の前記(2)アの【0016】の「上層部と中層部の対向流の終端部は、表面域が堰を越えてオーバーフロー層3bに流入し」との記載とも整合する。
そして、イ号装置の構成dの「後端壁」は、「上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる」ものであるところ、当該「斜板」は、その文言どおり板であって、その断面形状は、直線状であるといえる。
また、上記「底層部から底壁に至る湾曲部」は、前記1(3)イに示した【イ号装置の全体模式図】によれば、その断面形状は、円弧状であることがみて取れる。
そうすると、イ号装置の構成dの「後端壁」は、液面近傍から中層部に至る直線状の斜板と、底層部から底壁に至る円弧状の湾曲部とからなるものであると認められる。

イ-6 前記イ-5で検討したように、イ号装置の構成dの「後端壁」は、液面近傍から中層部に至る直線状の斜板と、底層部から底壁に至る円弧状の湾曲部とからなるものであるのに対し、前記イ-1-3で検討したように、本件特許発明の構成要件Dの「ガイド板」は、液面近傍から処理液槽の底に至るまで、全体として一つの略円弧状に形成されているものであるところ、上記「後端壁」の形状について検討するに、液面近傍から中層部に至る直線状の斜板と、底層部から底壁に至る円弧状の湾曲部とからなる「後端壁」の形状は、液面近傍から底壁に至る部分のうち、底層部から底壁に至る部分が円弧状であるにすぎず、液面近傍から中層部の部分は直線状であるから、上記「後端壁」は、液面近傍から底壁に至るまで、全体として一つの略円弧状に形成されているとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、イ号装置の「上層部から中層部に至る斜板と、底層部から底壁に至る湾曲部とからなる後端壁」は、本件特許発明の構成要件Dの「液面側から槽底に至るまで略円弧状に形成されたガイド板」に相当しない。
したがって、イ号装置の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

(5) 構成要件Eの充足性について
本件特許発明の構成要件Eにおける「ガイド板」は、本件特許明細書の【0027】の「攪拌流のほとんどが傾斜面7に沿って液面側に案内されると共にその先端に形成された円弧状のガイド板8に沿って上向きに反転され」との記載によれば、槽底側を流れてきた処理液を液面側へ案内する傾斜面を有する円弧状のものと解され、一方、イ号装置の構成eの「湾曲板」は、前記1(3)イに示した【イ号装置の全体模式図】によれば、その断面形状は、円弧状であることがみて取れるから、同構成eの「乗用車ボデーの出槽側には、底層部を流れてきた処理液を上層部へ案内する斜板とともに、上層部で乗用車ボデーの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる湾曲板が設けられ」ていることは、本件特許発明の構成要件Eの「ワークの出槽側には、槽底側を流れてきた処理液を液面側へ案内すると共に、液面側でワークの搬送方向に対向して出槽側から入槽側に向かう流れに反転させる円弧状のガイド板が設けられ」ていることに相当する。
したがって、イ号装置の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足する。

(6) 構成要件Fの充足性について
イ号装置の構成fの「電着装置」は、本件特許発明の構成要件Fの「表面処理装置」に相当する。
したがって、イ号装置の構成fは、本件特許発明の構成要件Fを充足する。

3 まとめ
前記(1)?(6)で検討したとおり、イ号装置は、本件特許発明の構成要件A?C、E及びFを充足するものの、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、イ号装置は、本件特許発明の技術的範囲に属するということはできない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2016-10-28 
出願番号 特願2003-434705(P2003-434705)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (C25D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 河本 充雄
鈴木 正紀
登録日 2009-04-17 
登録番号 特許第4294467号(P4294467)
発明の名称 表面処理装置  
代理人 坂口 嘉彦  
代理人 川尻 明  
代理人 澤野 勝文  
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