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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B |
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管理番号 | 1321497 |
審判番号 | 不服2013-25225 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-24 |
確定日 | 2016-12-01 |
事件の表示 | 特願2009-240990号「河川などに堆積した土砂の流下を促進させる方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月 6日出願公開、特開2011- 89250号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年10月20日の出願であって、平成25年5月31日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年12月24日に審判請求がなされものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成25年7月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「水の流れの中に、硬質な資材からなる杭あるいは柱を、流れの方向に沿って連続して列柱状に設置固定することを特徴とする、土砂の流下を促進させる方法。」 3.引用例及び周知例等 A 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特公昭33-3088号公報(以下、「引用例」という。)には図面と共に次の事項が記載されている。 (1a)「図面の略解 図面は本発明に係る河床心堤の実施の状態を例示したものである。第1図は河川に実施した河床心堤の状態を示す河道の平面図、第2図は河川の両岸に設けた築堤の高さ、及び洪水時に於いて大規模に水底土砂の移動を促す低層水流の水位と洪水時に於ける最高水位とを示す河道の断面図、第3図は河心に沿って設けた河床心堤の作用に依って、心堤の両側に沿った河床が、流下する自然の水流に洗掘されて自動的に出現した河川の定水路の状態を示す河道の断面図である。」(第1頁左欄第2行?第12行) (1b)「本発明は河道を流下する水流蛇行を矯正するを以つて目的としたもので、河心に沿って河床に河床心堤を設けて河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下し、流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を均等に洗掘して河心に沿つて河川の定水路を自働的と建設し、之れを保護して蛇行する水流を矯正し、以つて水災を未然に防止せんとするものである。 図面に依って之れを説明するに、1,2は河川の両岸に設けた築堤、3は洪水時に於いて大規模に水底土砂の移動を促す低層水流のみの交流を遮断して、その上層水流は互に自由に交流する程度の天端高を保つて河心に沿つた河床に直立固定し、延長して河床を左右に両分する様に設けた河床心堤、4,5は河床心堤に依つて両分された左右の河床、6,7は河床心堤の作用に依つて心堤の両側に沿つた河床が、流下する自然の水流に洗掘されて自働的に出現した河川の定水路、又第2図に示す線A-Bは洪水時に於いて大規模に水底土砂の移動を促す低層水流の水位を示し、線C-Dは洪水時の最高水位を示したものである。」(第2頁左欄第8行?第29行) (1c)第1図には、河川の中央に河床心堤3が設けられたことが図示されている。第3図には、河川の中央に設けられた河床心堤3の両側に定水路6、7が形成されたことが図示されている。 上記の記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「河川の中央に、河床心堤3が設けられ、河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を洗掘し、定水路6、7を建設し、水流を矯正する方法。」 B 周知例 (1)特開昭57-205626号公報(以下、「周知例1」という。) (1a)「抵抗ブロック4・・・は、隣り合う左右のものの突部4aと凹部4bとを嵌合させて沈下させるもので、左右に並んだ抵抗ブロック4・・・は互いに連結されて全体として浸蝕(洗掘)を防止するとともに波浪を減勢する壁を形成するものである。」(第2頁左下欄第20行?右下欄第5行) (1b)第4図?第6図には、平面視略矩形状の抵抗ブロック4が横方向(水平方向)に連続して列柱的に地中に配置させていることが図示されている。 (2)特開2003-321825号公報(以下、「周知例2」という。) (2a)「【0024】前記側壁構成部材23は、丸太を縦方向に略二等分割した半丸太よりなっている。特に、本実施形態においては、側壁構成部材23として間伐材が利用されている。側壁構成部材23は、丸太の外周面を水路1側に向けた状態で、水路1の高さ方向に延在するようにして地面に垂直に配置されている。側壁構成部材23は、複数が平行でかつ密に配置され、それぞれベースフレーム22の上下辺を構成する鋼管22A,22Dの水路1側の面に対して、ボルト24によって取り付けられている。側壁構成部材23群には、各側壁構成部材23の上端部を覆うようにして笠木25が取り付けられている。笠木25は、間伐材の半丸太よりなっており、丸太の外周面を上に向けた状態で配置されている。 (2b)図1には、半丸太の側壁構成部材23が連続して水路に列柱配置され水路の側壁を形成したことが図示されている。 4.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (a)引用発明の「河床心堤3」は、水流を矯正させるものである以上、「硬質な資材」で形成されていることは明らかである。そして、引用発明の「河床心堤3」は硬質な資材を河川の方向に連続して設置固定したものである。したがって、同「河床心堤3」は「硬質な資材を河川の方向に連続して設けられた河床心堤3」ということができる。また、同「河床心堤3」は「河川の中央」に設けられていることから、本願発明でいう「水の流れの中に」、「流れの方向に沿って」設けられているといえる。 (b)引用発明の「河川の水流の主力を河心に誘導して高速度を以って流下する自然の水流の掃流力を利用して河床心堤の両側に沿った河床を洗掘し、定水路6、7を建設し」は、河川中央付近の定水路は水流が高速になるから、水流の掃流力により土砂等の流下を促進させる作用も有していることは明らかである。 したがって、両者は次の点で一致する。 「水の流れの中に、硬質な資材を、流れの方向に沿って連続して設置固定することで、土砂の流下を促進させる方法。」 そして、両者は次に点で相違する。 (相違点) 本願発明は、杭あるいは柱を、連続的に列柱状に設置固定したのに対し、引用発明はそのような特定について定かでない点。 5.判断 (1)相違点について 引用発明の「河床心堤3」の製造方法は不明であるが、単体を一体的に形成することは規模的に不可能であるから、複数の資材を河川の方向に連続して設置することにより形成したと考えるのが現実的、技術的にみて自然である。 そして、上記3.Bの周知例1には、杭に相当する抵抗ブロックを連続的に列柱設置することが開示され、また、周知例2には、柱に相当する半丸太を連続的に列柱配置して側壁構成部材を形成することが開示されている。したがって、杭あるいは柱を、連続的に列柱状に設置固定し、水流を、誘導したり制御することは、河川等の工事技術において周知技術にすぎないことである。 よって、引用発明において、河川等の周知技術を採用し、上記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果は引用発明及び周知技術からみて格別なものではない。 (2)審判請求人の主張について a.杭あるいは柱の「連続性」又は「連続」について 請求人は審判請求書第8頁において、「本願請求項1に係る発明の杭あるいは柱の「連続性」又は「連続」の意味するところは、引用文献1の河床心堤における「連続性」又は「連続」の意味とは微妙に異なっています。」と主張している。引用例における河床心堤3は「連続的」なものであるが、引用例の目的からみて隙間なく連続して形成される必要がある。 ところで、本願明細書【0032】には「これらの柱は全体として連続している必要がありますが部分的に間隔があっても問題ありません。設置する柱の太さや長さ、連続させる列柱の長さは、その河川における様々な状況を勘案して決定します。」と記載され、また、図1には、隙間なく連続した列柱状の構造物と、間隔を設けて設置された構造物が図示されている。したがって、出願当初の明細書及び図面の記載を見る限り、本願の「連続性」又は「連続」について、「隙間なく連続」という意味に用いられているといえる。 したがって、本願発明も引用例に記載のものも「隙間なく連続」している意味を有するから、請求人のいう「微妙に異なっています」は適切な見解といえない。 b.引用例の目的について 請求人は審判請求書第10頁において、「引用文献1の発明はその目的を土砂流下の促進とはしていません。・・・引用文献1の発明はその目的を水流蛇行の矯正としています。・・・引用文献1の発明の特許請求の範囲においては、その発明である河床心堤の目的が土砂の流下促進であるとの記述は何処にもありません。本願請求項1に係る発明においてはその目的が土砂の流下促進であることを明確にしています。」と主張している。 しかしながら、引用例も、増水時の河川の氾濫を防止することを目的(水災を未然に防止)としており、その意味では本願発明と共通した目的を有している。そして、引用発明において、河川中央の定水路は水流が高速になるから、土砂等の流下を促進させる作用もあることは当業者にとって明らかである。 よって、請求人の主張は採用できない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は引用発明及周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-12-12 |
結審通知日 | 2015-01-06 |
審決日 | 2015-01-20 |
出願番号 | 特願2009-240990(P2009-240990) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 祐介、福島 浩司 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
竹村 真一郎 本郷 徹 |
発明の名称 | 河川などに堆積した土砂の流下を促進させる方法。 |