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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1321600
審判番号 不服2016-5308  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-11 
確定日 2016-12-02 
事件の表示 特願2013- 81195「防水コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-203774、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成25年4月9日の出願であって、平成27年11月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成28年1月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年1月25日付け(発送日:同年1月29日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成28年4月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「前後方向に延びて前後両面に開口するキャビティを有し、前記キャビティに端子金具が挿入されるハウジングと、
前記ハウジングの前後両面のうちの一方の面に当接して配置され、前記キャビティと連通する位置に前後方向に延びて前後両面に開口するシール孔を有するシール部材と、
前記シール部材の前後両面のうちの一方の面に当接して配置され、前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟み込むホルダとを備える防水コネクタであって、
前記ホルダにおける前記シール部材の前記一方の面に当接する当接面には、面方向に沿って延びるリブが前記当接面の全幅に亘って設けられ、前記リブには、前記当接面から離間した位置にて前記リブの前記当接面からの突出方向と交差する方向に突出する抜け止め突部が設けられ、
前記シール部材の前記一方の面には、前記リブが挿入されるリブ受け部が設けられ、前記リブ受け部には、前記シール部材の前記一方の面から離間した位置にて前記リブの挿入方向と交差する方向に凹んで前記抜け止め突部が抜け止め状態で挿入される抜け止め受け部が設けられており、
前記抜け止め突部が、前記当接面の中央部と対応する位置に設けられ、前記抜け止め受け部が、前記抜け止め突部と対応する位置に設けられていることを特徴とする防水コネクタ。」
と補正し、あわせて明細書を補正するものである。
なお、下線は補正箇所を示し、請求人が付したとおりである。

2.補正の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「抜け止め突部」及び「抜け止め受け部」について、「前記抜け止め突部が、前記当接面の中央部と対応する位置に設けられ、前記抜け止め受け部が、前記抜け止め突部と対応する位置に設けられている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-317385号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「防水型コネクタ用シール部材及び防水型コネクタ」に関し、次の事項が図面(特に図7、8参照)と共に記載されている。
以下、下線は当審で付与したものである。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、防水型コネクタ用シール部材及びそのシール部材を用いた防止型コネクタに関する。」

イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来の図12及び図13に示した防水型コネクタ用シール部材にあっては、以下の問題点があった。
即ち、図12に示した防水型コネクタ用シール部材101の場合、図12(A)に示すように、電線挿通孔103の周囲(特に電線挿通孔103の外側)には圧縮されたシール部材の逃げ場がない。コンタクトを電線挿通孔103に挿入し電線が電線挿通孔103内に位置するときに、電線によりシール突起104及びその周囲のシール材料が外側に広がる方向に圧縮されることになるが、電線挿通孔103の周囲(特に電線挿通孔103の外側)には圧縮されたシール部材の逃げ場がないことから、例えば、太い電線が所定の電線挿通孔103に挿入されると、その電線挿通孔103に隣接する電線挿通孔103にシール材料が逃げ、その電線挿通孔103が縦長に大きく変形することになる。このような場合に、大きく変形した電線挿通孔103に細い電線が挿入されると、電線とシール突起104との間に隙間が生じ、所望のシール性が得られないおそれがある。
【0009】
また、図13に示した防水型コネクタ用シール部材201の場合、電線挿通孔203の周囲にプラグハウジング210の位置決め突起213が挿入される受け穴205が形成されているものの、図13(B)に示すように、全ての電線挿通孔203の周囲に受け穴205が形成されているわけではない。特に、外縁近傍に受け穴205が形成されていない領域が存在する。このため、受け穴205が形成されていない領域近傍の電線挿通孔203はコンタクト受容キャビティ212に対して位置ずれをしていることがある。この位置ずれしている電線挿通孔203に太い電線が挿入されると、この電線挿通孔203に隣接する電線挿通孔203にシール材料が逃げ、その電線挿通孔203が縦長に大きく変形することになる。このような場合に、大きく変形した電線挿通孔203に細い電線が挿入されると、電線と電線挿通孔内のシール突起との間に隙間が生じ、所望のシール性が得られないおそれがある。
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、広い範囲の径の電線を効果的にシールすることができる防水型コネクタ用シール部材及び防水型コネクタを提供することにある。」

ウ.「【0016】
図1乃至図6において、防水型コネクタ1は、コンタクト(図示せず)を収容する第1ハウジング(ハウジング)10と、リテーナ20と、嵌合部シール部材30と、電線シール部材(シール部材)40と、第2ハウジング50とを具備している。
ここで、第1ハウジング10は、絶縁性の樹脂を成形することによって略矩形状に形成され、コンタクトを収容する複数列のコンタクト収容キャビティ11を有している。・・・」

エ.「【0022】
また、電線シール部材40のシール本体41の相手コネクタ受容面側には、図8、図9及び図11(F)に示すように、各電線挿入孔42のすべての四隅に、位置決め突起14が挿入されるシール部材位置決め穴45が形成されている。一方、電線シール部材40のコンタクト挿入面側には、図7、図10及び図11(A)に示すように、各電線挿入孔42のすべての四隅に別個のシール部材位置決め穴46が形成されている。これらシール部材位置決め穴46には、第2ハウジング50に設けられた位置決め突起52が挿入されるようになっている。そして、電線シール部材40のシール本体41の外周面には、複数の突条47が形成されている。電線シール部材40が第1ハウジング10の電線シール部材収容凹部13内に配置されたときには、これら突条47が電線シール部材収容凹部13の内周面に押圧接触することにより、シール本体41の外周面と電線シール部材収容凹部13の内周面との間がシールされる。
【0023】
そして、第2ハウジング50は、第1ハウジング10の電線シール部材収容凹部13内に配置された電線シール部材40をコンタクト挿入面側から保持するものであり、第1ハウジング10、リテーナ20、嵌合部シール部材30及び電線シール部材40を覆うキャップ状に形成されている。第2ハウジング50には、第1ハウジング10のコンタクト収容キャビティ11及び電線シール部材40の電線挿通孔42に対応する位置にコンタクト挿通孔51が形成されている。各コンタクト挿通孔51のすべての四隅には、電線シール部材40のシール部材位置決め穴46に挿入される位置決め突起52が突出形成されている。また、第2ハウジング50の幅方向両端部には支軸53が設けられ、この支軸53にはカムレバー部材54が回動可能に支持されている。・・・」

オ.「【0025】
次いで、図7、図8及び図10に示すように、第1ハウジング10に、第2ハウジング50の相手コネクタ受容面側を第1ハウジング10に向けて第2ハウジング50を取り付ける。この際に、第1ハウジング10の係止突起15が第2ハウジング50の係止孔55に係止される。これにより、図2に示すように、電線シール部材40が電線シール部材収容凹部13内で第2ハウジング50によって抜け止めされる。このとき、第2ハウジング50の位置決め突起52が電線シール部材40のシール部材位置決め穴46に挿入され、電線シール部材40に設けられた電線挿通孔42が第2ハウジング50に設けられたコンタクト挿通孔51に対して整列し、位置決めされる。
【0026】
そして、電線を接続し複数のコンタクトを、コンタクト側を先頭にして第2ハウジング50のコンタクト挿入面側からコンタクト挿通孔51、電線シール部材40の電線挿通孔42を介して第1ハウジング10のコンタクト収容キャビティ11内に挿入する。リテーナ20は仮係止位置にあることから、リテーナ20の開口24を介してコンタクトの挿入を推し進めることができ、コンタクトはハウジングランス12により一次的に係止される。・・・」

カ.「【0030】
また、電線シール部材40のシール本体41のコンタクト挿入面側には、各電線挿通孔42のすべての四隅にシール部材位置決め穴46が形成され、第2ハウジング50にはシール部材位置決め穴46に挿入される位置決め突起52を設けたので、各電線挿通孔42の第2ハウジング50及びコンタクト挿通孔51に対する位置決めを確実に行い、各電線挿通孔42の変形を効果的に防止し、広い範囲の径の電線をより一層効果的にシールする
ことができる。」

上記記載事項、及び、図示内容等を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「前後方向に延びて前後両面に開口するコンタクト収容キャビティ11を有する第1ハウジング10と、
前記第1ハウジング10の後面に当接して配置され、前記コンタクト収容キャビティ11と連通する位置に前後方向に延びて前後両面に開口する電線挿通孔42を有する電線シール部材40と、
前記電線シール部材40の後面に当接して配置され、前記第1ハウジング10との間に前記電線シール部材40を挟み込む第2ハウジング50とを備える防水型コネクタであって、
前記第2ハウジング50における前記電線シール部材40の面に当接する当接面には、位置決め突起52が設けられ、
前記電線シール部材40の前記一方の面には、前記位置決め突起52が挿入されるシール部材位置決め孔46が設けられている防水型コネクタ。」

(2)対比
本願補正発明1の「シール部材」は、「ハウジングの前後両面のうちの一方の面に当接して配置され、…(略)…シール孔を有する」(請求項1)と特定されているから、本願補正発明1は、「シール部材」が、ハウジングの前面に当接する態様と後面に当接する態様との両方を含むものである。
また、本願明細書の段落【0043】には、次の記載がある。
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)フロントホルダでは無く、リアホルダに、リブと抜け止め突部とが設けられ、一括ゴム栓に、リブ受け部と抜け止め受け部とが設けられるものであってもよい。」
以上の点からみて、本願補正発明1は、「ハウジングとの間にシール部材を挟み込むホルダとを備える防水コネクタ」として、ハウジング10とシール部材60とフロントホルダ40とを備える防水コネクタの態様だけではなく、ハウジング10と一括ゴム栓24とリアホルダ25とからなる防水コネクタの態様を含んでおり、上記段落【0043】の記載も参酌すれば、後者の態様に係る「リアホルダ25」には、一括ゴム栓24と当接する側の面に「リブ」及び「抜け止め突部」が設けられ、同じく「一括ゴム栓24」には、リアホルダ25と当接する側の面に「リブ受け部」及び「抜け止め受け部」が設けられることになる。
また、一括ゴム栓24の貫通孔26には電線70が液密に挿入される(本願明細書の段落【0019】参照)から、本願補正発明の一括ゴム栓24は、シール部材60と同様の機能を奏するものと認められる。

そこで、本願補正発明1を、ハウジング10と一括ゴム栓24とリアホルダ25とを備える防水コネクタの態様として、引用発明と対比する。
a.引用発明の「第1ハウジング10」は、コンタクトを収容する複数列のコンタクト収容キャビティ11を有し、該コンタクト収容キャビティ11にコンタクトが挿入されるものであるものであるから、本願補正発明1の「ハウジング」に相当する。
b.引用発明の「第2ハウジング50」は、第1ハウジング10の電線シール部材収容凹部13内に配置される電線シール部材40をコンタクト挿入面側から保持するものであり、また、コンタクトは、第2ハウジング50の電線シール部材40の配置面の裏の面(刊行物1の図7の番号50が指示する面)側から挿入されるから、本願補正発明1の「ホルダ(リアホルダ)」に相当する。
c.引用発明の「電線シール部材40」は、電線が挿通されるシール材であって、第1ハウジング10(本願補正発明1の「ハウジング」に相当)と第2ハウジング50(本願補正発明1の「ホルダ(リアホルダ)」に相当)とにより挟み込まれているから、本願補正発明1の「シール部材(一括ゴム栓)」に相当し、引用発明の「電線挿通孔42」は、本願補正発明1の「シール孔」に相当する。
d.引用発明における「防水型コネクタ」は、本願補正発明1における「防水コネクタ」に相当する。

以上の点からみて、本願補正発明1と引用発明とは、
「前後方向に延びて前後両面に開口するキャビティを有するハウジングと、
前記ハウジングの前後両面のうちの一方の面に当接して配置され、前記キャビティと連通する位置に前後方向に延びて前後両面に開口するシール孔を有するシール部材と、
前記シール部材の前後両面のうちの一方の面に当接して配置され、前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟み込むホルダとを備える防水コネクタ。」
の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願補正発明1が、「前記キャビティに端子金具が挿入され」、「前記ホルダにおける前記シール部材の前記一方の面に当接する当接面には、面方向に沿って延びるリブが前記当接面の全幅に亘って設けられ、前記リブには、前記当接面から離間した位置にて前記リブの前記当接面からの突出方向と交差する方向に突出する抜け止め突部が設けられ、前記シール部材の前記一方の面には、前記リブが挿入されるリブ受け部が設けられ、前記リブ受け部には、前記シール部材の前記一方の面から離間した位置にて前記リブの挿入方向と交差する方向に凹んで前記抜け止め突部が抜け止め状態で挿入される抜け止め受け部が設けられており、前記抜け止め突部が、前記当接面の中央部と対応する位置に設けられ、前記抜け止め受け部が、前記抜け止め突部と対応する位置に設けられている」ものであるのに対して、
引用発明は、コンタクト収容キャビティ11に端子金具を有するものでなく、電線シール部材40のコンタクト挿入面側には、位置決め穴46が形成され、第2ハウジング50には、位置決め穴46に挿入される位置決め突起52が設けられたものである点。

(3)判断
本願明細書には、「さて、図7に示すように、前面板41の後面は、収容空間47に収容されたシール部材60の前面に密着状態で当接する当接面52とされている。そして、前面板41の当接面52には、その面方向に沿って延びるリブ53が設けられている。リブ53は、図4に示すように、前面板41の当接面52における上段の各挿通孔43と中段の各挿通孔43との間及び中段の各挿通孔43と下段の各挿通孔43との間に、幅方向に延びて当接面52の両側縁に至る2条の突起とされている。各リブ53が幅方向に長い前面板41の当接面52において全幅に亘って設けられることで、前面板41が充分に補強されることになる。」(段落【0032】)、「フロントホルダ40の収容空間47にシール部材60が挿入されると、図7に示すように、フロントホルダ40の各リブ53がシール部材60の各リブ受け部63に嵌合状態で弾性的に挿入され、且つ、フロントホルダ40の各抜け止め突部54がシール部材60の各抜け止め受け部64に嵌合状態で弾性的に挿入される。各抜け止め突部54が各抜け止め受け部64に挿入されて、各抜け止め突部54の前面が各抜け止め受け部64に引っ掛け係止されることにより、シール部材60のフロントホルダ40からの抜け出しが規制される。・・・」(段落【0035】)、「・・・フロントホルダ40のリブ53がシール部材60のリブ受け部63に挿入され、抜け止め突部54が抜け止め受け部64に抜け止め状態で挿入されることにより、インサート成形を行わずに、シール部材60がフロントホルダ40に組み付けられる。この場合に、抜け止め突部54がリブ53に設けられ、リブ53がフロントホルダ40の当接面52に沿って延びる形態とされるため、フロントホルダ40がリブ53によって補強される。したがって、シール部材60がフロントホルダ40に抜け止め保持される抜け止め構造と、フロントホルダ40の補強構造とが、リブ53を介して共用化されることになり、両構造が別々に分かれて設けられる場合に比べ、全体の構成が簡素化される。」(段落【0039】)と記載されている。
これらの記載から見て、本願補正発明1の「前記ホルダにおける前記シール部材の前記一方の面に当接する当接面には、面方向に沿って延びるリブが前記当接面の全幅に亘って設けられ、」における「リブ」は、フロントホルダ40の前面板41の当接面52において全幅に亘って設けられることで、前面板41を補強する役割を担うものであると認められる。また、これを前記ハウジング10と一括ゴム栓24とリアホルダ25とを備える防水コネクタの態様として理解すれば、「リブ」は、リアホルダ25を補強するものとなる。
さらに、フロントホルダ40の各リブ53がシール部材60の各リブ受け部63に嵌合状態で弾性的に挿入され、フロントホルダ40の各抜け止め突部54がシール部材60の各抜け止め受け部64に嵌合状態で弾性的に挿入されることで、シール部材60のフロントホルダ40からの抜け出しが規制されること、抜け止め突部54がリブ53に設けられ、リブ53がフロントホルダ40の当接面52に沿って延びる形態とされ、フロントホルダ40がリブ53によって補強されるため、シール部材60がフロントホルダ40に抜け止め保持される抜け止め構造と、フロントホルダ40の補強構造とが、リブ53を介して共用化されることになり、両構造が別々に分かれて設けられる場合に比べて、全体の構成が簡素化されることが理解できる。
また、これを前記ハウジング10と一括ゴム栓24とリアホルダ25とを備える防水コネクタの態様として理解すれば、一括ゴム栓24がリアホルダ25に抜け止め保持される抜け止め構造と、リアホルダ25の補強構造とが、「リブ」を介して共用化されるものとなる。

これに対して、刊行物1の前記(1)エ、オ、及びカの記載を踏まえると、引用発明は、第2ハウジング50の位置決め突起52が電線シール部材40のシール部材位置決め穴46に挿入され、電線シール部材40に設けられた電線挿通孔42が第2ハウジング50に設けられたコンタクト挿通孔51に対して整列し、位置決めされるものである。
この引用発明の「位置決め突起52」は、第2ハウジング50における電線シール部材40が接する面から突出するものではあるが、刊行物1の図8に記載されるとおり、点状に並ぶ複数の突起であって、各電線挿通孔42の第2ハウジング50及びコンタクト挿通孔51に対する位置決めを確実に行うためのものであり、第2ハウジング50の補強を行うためのものではなく、そもそも本願補正発明1における「面方向に沿って延び、当接面の全幅に亘って設けられ」た「リブ」に相当するものではないと認められる。
さらに、引用発明における「位置決め突起52」は、あくまで「各電線挿通孔42の第2ハウジング50及びコンタクト挿通孔51に対する位置決めを確実に行い、各電線挿通孔42の変形を効果的に防止」するためのものであり、本願補正発明1のように、シール部材がホルダに抜け止め保持される抜け止め構造を構成するものでもないことから、本願補正発明1に係る「シール部材がホルダに抜け止め保持される抜け止め構造」と「ホルダの補強構造」をリブを介して共用化されるものでもない。
そして、拒絶査定において、拒絶の理由として示された刊行物2(特開平11-233202号公報)、刊行物3(特開2012-59652号公報)、刊行物4(特開2003-297479号公報)、刊行物5(実願平2-82727号(実開平4-58975号)のマイクロフィルム)にも、前記相違点に係る「リブ」、「リブ受け部」、「抜け止め突部」、及び「抜け止め受け部」に関する構成は記載されていない。
したがって、前記相違点に係る本願補正発明1の構成は、引用発明、及び、刊行物2?5に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものと言えない。

以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用発明、及び、刊行物2?5に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとは言えない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3.本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本願補正発明1?5」という。)

そして、本願補正発明1は、上記第2.の2.のとおり、当業者が引用発明、及び、刊行物2?5に記載の技術事項に基いて容易に想到し得たものではない。
また、本願補正発明1を直接または間接的に引用する本願補正発明2?5は、本願補正発明1をさらに限定したものであるから、当業者が、引用発明、及び、刊行物2?5に記載の技術事項に基いて容易に想到し得たものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-11-22 
出願番号 特願2013-81195(P2013-81195)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 中川 隆司
阿部 利英
発明の名称 防水コネクタ  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  

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