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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1321736 |
審判番号 | 不服2015-11016 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-10 |
確定日 | 2016-11-16 |
事件の表示 | 特願2013-264356「無線通信システムにおける多元接続互換性のためのデータ送信の受信成功を通知する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112847〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2010年2月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月12日、米国、2009年8月4日、米国)を国際出願日とする特願2011-550236号の一部を2013年12月20日に分割した出願であって、平成26年1月17日付けで手続補正がなされ、平成26年10月6日付けで手続補正がなされ、平成26年10月20日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月26日付けで手続補正がなされ、平成27年2月13日付けで拒絶査定がされ、平成27年6月10日に拒絶査定不服審判が請求され、平成28年1月19日付けで当審が拒絶理由を通知し、平成28年4月20日付けで手続補正がなされたものである。 2.当審が通知した拒絶理由通知の内容 平成28年1月19日付けで当審が通知した拒絶理由の内容は下記のとおりである。 理由1.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由2.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由3.本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由4.平成27年1月26日付けでした手続補正は、下記の点で外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 ・理由1について ・請求項1-38 請求項1には、「前記送信機に前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信することと、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの第2のデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記第1のデバイスおよび前記少なくとも1つの第2のデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する」との記載がある。 上記記載は、第1のデバイス及び第2のデバイスがそれぞれACKメッセージを送信する時刻が何らかの方法によって同時刻にスケジュールされ、そのスケジュールされた時刻に両デバイスが同時にACKメッセージを送信することを意味していると解釈できる。 一方で、上記記載に対応するであろうと推測される実施例は図8及び図9に示されるものであるが、図8及び図9に対応する発明の詳細な説明第0049段落から第0051段落には、複数のデバイスがACKを送信する時刻を同時刻にスケジュールすることについては記載されておらず、単に複数のデバイスがACKを同時刻に送信することのみが記載されている。図8に関しては、アクセスポイントから各局へのダウンリンクのデータがAPPDUとしてまとめて送信されているため、各局はAPPDUの終わりまでACKメッセージを送信できずに待っており、APPDUが終了したタイミングで、一斉にACKメッセージの送信を開始しただけのように思われる(正確にはAPPDUが終了した後、SIFS期間を置いて一斉送信が開始されているが、SIFS期間は受信局がパケットを復号し、フレームが復号局に向けられたものであるか否かをチェックし、CRCを計算することによって誤りの有無をチェックするための時間が十分となるように設けられたシステム規定の時間であるから、実質的にはAPPDUの終了後直ちにACKメッセージを送信していると認められる)。そして、図9に関しては、第0049段落に「これらの図の各々には、232バイトの長さの典型的なG711 VoIP(Voice over IP)パケットを8つの局に同時に送信するために必要なトータル送信時間が示されている。」と記載されており、8つの局に送信されるパケットの長さが全て232バイトであるから、各局に多重化して同時に送信されたSTA-1 930-1からSTA-8 930-8のパケットの終了時間が同時刻となり、その直後に(SIFS期間の後に)各局が一斉にACKメッセージを送信し始めたに過ぎないように思われる。つまり、図8及び図9に示される実施例は、各局へのデータ送信の終了時点が同時刻になることに起因して、各局からのACKメッセージの送信時刻が同時刻になっているに過ぎないのではないかと思われる。 他方、図8及び図9についての説明である第0049段落の直前にある第0048段落には、「そのような状況において、これらのACKが同時に送信されるようにスケジュールするために、SDMAまたはOFDMAのような多元接続方法を使用することは非常に効率的である。」との記載があるが、この記載からは、何がスケジュールされているのかが不明であるため(最終的な効果としてACKが同時に送信されることは理解できるが、ACKの送信時刻をスケジュールしているとは明記されておらず、各局宛のデータフレームの終了時刻が同時刻になるようにデータ送信をスケジュールした結果、その応答であるACKの送信時刻が同一時刻となったのではないかと推測される)、「ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信する」ことが記載されているとは認められない。 したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 請求項1の上記記載に類した記載を持つ請求項12、23、34、36及び38についても同様であり、前記請求項を引用する請求項2-11、13-22、24-33、35及び37についても同様である。 ・理由2について ・請求項1-38 請求項1には「スケジュール」との語があるが、当該語の意味が以下の(1)から(3)のいずれに該当するのかが不明確である。請求項2-38についても同様である。 (1)スケジュールの直接の対象となるメッセージ(本件の場合、ACKメッセージ)の送信時間そのもの自体を決定すること。 (2)スケジュールの直接の対象となるメッセージ以外の何かの動作時間(例えば、各局宛のデータメッセージであるところのSTA-1930-1などの送信終了時間)を決定することによって、それに起因して生じるメッセージの送信時間(本件の場合、ACKメッセージの送信時間)を間接的に定めること。 (3)それ以外。 〈付記〉 上記(1)に該当する場合は、上記理由1、下記理由3及び4についても留意すること。 上記(2)に該当する場合は、拒絶査定で示した特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項に関する拒絶理由が維持されることに留意すること。 上記(3)に該当する場合は、該「スケジュール」という語が何を意味しているのかを明確にする必要があることに留意すること。 ・理由2について ・請求項1-38 請求項1には「第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子」との記載がある。 当該記載を文言どおりに解釈すれば、当該記載は、デバイスの識別が可能となるようなMAC層で用いられる識別子のことを指しているに過ぎず、具体的にどのような識別子であるかまでは規定していないと解釈できる。 しかしながら、審判請求書においては、当該記載を引用した上で、当該記載が「MACアドレス」であることを前提とした反駁意見が記載されている。 してみると、当該記載は、MACアドレスのことのみを指し示しているものであるのか、それとも、MACアドレスに限られない、MAC層において用いられるデバイスの識別子一般のことを指し示しているのかが不明である。 請求項1の上記記載に類した記載を持つ請求項12、23、34、36及び38についても同様であり、前記請求項を引用する請求項2-11、13-22、24-33、35及び37についても同様である。 ・理由3について ・請求項1-38 請求項1には、「前記送信機に前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信することと、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの第2のデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記第1のデバイスおよび前記少なくとも1つの第2のデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する」との記載がある。 上記記載は、第1のデバイス及び第2のデバイスがそれぞれACKメッセージを送信する時刻が何らかの方法によって同時刻にスケジュールされ、そのスケジュールされた時刻に両デバイスが同時にACKメッセージを送信することを意味していると解釈できる。 一方で、発明の詳細な説明には、第1のデバイス及び第2のデバイスがACKメッセージを送信すべき時刻を、第1のデバイス及び第2のデバイスに伝達する手段についての記載がない。 本願発明の背景技術であるIEEE802.11では、データメッセージを受信した局は、そのデータメッセージを正しく受信できた場合には、ACKメッセージをSIFS期間の後直ちに送信するよう規定されているため、ACKメッセージをスケジューリングによって定められた時刻に送信するよう指示する手段を持たない。 したがって、本願発明が「ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信」できるようにするためには、ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信することを指示するための具体的な手段を必要となるが、このような手段については具体的な記載が発明の詳細に存在しない。 よって、本願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 請求項2-38についても同様である。 ・理由4について 平成27年1月26日付け手続補正書によって補正された請求項1には、「前記送信機に前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信することと、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの第2のデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記第1のデバイスおよび前記少なくとも1つの第2のデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する」との記載がある。 しかしながら、上記理由1で述べたのと同様の理由で、上記記載は、外国語書面の翻訳文の当初の発明の詳細な説明及び図面に記載されたものではない。 加えて、上記記載は、外国語書面の翻訳文の当初の特許請求の範囲に記載されたものでもない。 したがって、平成27年1月26日付けでした手続補正は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 上記は、請求項1の上記記載に類した記載を持つ請求項12、23、34、36及び38についても同様であり、前記請求項を引用する請求項2-11、13-22、24-33、35及び37についても同様である。 3.平成28年4月20日付けの手続補正について 平成28年4月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 方法であって、 無線通信パケットを第1のデバイスで受信することと、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという前記第1のデバイスによる決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを前記第1のデバイスで生成することと、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記送信機に前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信することと、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの第2のデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記第1のデバイスおよび前記少なくとも1つの第2のデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する、 を備える、方法。 【請求項2】 前記無線通信ACKメッセージは、空間分割多元接続(SDMA)送信または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機に送信される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記第1のデバイスのトランシーバを介して前記無線通信ACKメッセージを送信することをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという決定を受けて前記第1のデバイスのアプリケーション層に前記無線通信パケットのペイロードを提供することをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記MAC層識別子は、前記第1のデバイスのネットワークアドレスを備える、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記MAC層識別子は、アクセスポイントによって前記第1のデバイスに割り当てられた局識別子を備える、請求項1に記載方法。 【請求項7】 前記第1のデバイスを前記アクセスポイントに登録することと、 前記第1のデバイスを前記アクセスポイントに登録した後に、前記第1のデバイスで前記アクセスポイントから前記局識別子を受信することと、 をさらに備える、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという前記決定は、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出することを備える、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記スケジュールされた時間は、前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記第1のデバイスは、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項1に記載の方法。 【請求項12】 装置であって、 無線通信パケットが前記装置で成功裏に受信されたことを決定するための手段と、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記装置および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段による決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成するための手段と、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記装置を識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で前記送信機に送信するための手段と、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つのデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記装置および前記少なくとも1つのデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する、 を備える、装置。 【請求項13】 前記無線通信パケットは、時分割多元接続(TDMA)送信、空間分割多元接続(SDMA)送信、または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機によって送信される、請求項12に記載の装置。 【請求項14】 前記無線通信ACKメッセージを送信するための前記手段は、トランシーバを備える、請求項12に記載の装置。 【請求項15】 前記無線通信ACKメッセージを生成するための前記手段は、前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段が、前記無線通信パケットが成功裏に受信されていないと決定した後に、前記無線通信パケットを廃棄する、請求項12に記載の装置。 【請求項16】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項14に記載の装置。 【請求項17】 前記MAC層識別子は、前記装置のネットワークアドレスを備える、請求項12に記載の装置。 【請求項18】 前記MAC層識別子は、アクセスポイントによって前記装置に割り当てられた局識別子を備える、請求項12に記載の装置。 【請求項19】 前記アクセスポイントに登録するための手段と、 前記アクセスポイントに登録するための前記手段による登録後に、前記アクセスポイントから前記局識別子を受信するための手段と、 をさらに備える、請求項18に記載の装置。 【請求項20】 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段は、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出するための手段を備える、請求項12に記載の装置。 【請求項21】 前記スケジュールされた時間は、無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段が、前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項12に記載の装置。 【請求項22】 無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段は、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項21に記載の装置。 【請求項23】 装置であって、 無線通信パケットを受信し、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記装置および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成し、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記装置を識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で前記送信機に送信する、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの装置によって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記装置および前記少なくとも1つのデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する、 ように構成された処理システムを備える、装置。 【請求項24】 前記無線通信ACKメッセージは、空間分割多元接続(SDMA)送信または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機に送信される、請求項23に記載の装置。 【請求項25】 前記無線通信ACKメッセージを送信するように構成されたトランシーバをさらに備える、請求項23に記載の装置。 【請求項26】 前記無線通信ACKメッセージは、前記送信機を識別する第2のMAC層識別子を含む、請求項23に記載の装置。 【請求項27】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項25に記載の装置。 【請求項28】 前記MAC層識別子は、前記装置のネットワークアドレスを備える、請求項23に記載の装置。 【請求項29】 前記MAC層識別子は、アクセスポイントによって割り当てられた前記装置の局識別子を備える、請求項23に記載の装置。 【請求項30】 前記処理システムは、前記アクセスポイントに登録するようにさらに構成され、 前記装置は、前記処理システムを前記アクセスポイントに登録した後に、前記アクセスポイントから前記局識別子を受信するようにさらに構成される、請求項29に記載の装置。 【請求項31】 前記処理システムは、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出するようにさらに構成される、請求項23に記載の装置。 【請求項32】 前記スケジュールされた時間は、前記装置が前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項23に記載の装置。 【請求項33】 前記装置は、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項32に記載の装置。 【請求項34】 プロセッサに、 第1のデバイスで無線通信パケットを受信させ、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成させ、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で前記送信機に送信させる、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つの第2のデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記第1のデバイスおよび前記少なくとも1つの第2のデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する、 ために、前記プロセッサよって実行可能な命令により符号化される、コンピュータ可読記憶デバイス。 【請求項35】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項34に記載のコンピュータ可読記憶デバイス。 【請求項36】 アクセス端末であって、 無線通信パケットを受信し、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記アクセス端末および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成し、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記アクセス端末を識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で前記送信機に送信する、ここにおいて、前記スケジュールされた時間は、前記少なくとも1つのデバイスによって生成された第2の無線通信ACKメッセージおよび前記無線通信ACKメッセージが前記アクセス端末および前記少なくとも1つのデバイスから前記送信機に同時に送信されるべき時間に相当する、 ように構成された処理システムを備える、アクセス端末。 【請求項37】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項36に記載のアクセス端末。 【請求項38】 アクセスポイントであって、 無線通信パケットを複数のアクセス端末に送信する送信機と、 前記複数のアクセス端末から複数の同時に送信された無線通信肯定応答(ACK)メッセージを受信するように構成された無線ネットワークアダプタと、ここにおいて、前記複数のアクセス端末は、特定の時間で前記無線通信ACKメッセージを同時に送信するように構成され、各無線通信ACKメッセージは、前記無線通信ACKメッセージを送信したアクセス端末を識別する媒体アクセス制御(MAC)層識別子を含む、 前記無線通信パケットの送信に応答して受信された各受信された無線通信ACKメッセージを復号し、前記無線通信パケットの送信に応答して受信された各受信された無線通信ACKメッセージにおける前記MAC層識別子に基づいて、どのアクセス端末が前記無線通信パケットを成功裏に受信したかを決定するように構成された処理システムと、ここにおいて、各受信されたACKメッセージは、前記無線通信パケットに応答して前記特定の時間で他の無線通信ACKメッセージと同時に送信されるようスケジュールされる、 を備える、アクセスポイント。」 から 「【請求項1】 方法であって、 無線通信パケットを第1のデバイスで受信することと、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという前記第1のデバイスによる決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを前記第1のデバイスで生成することと、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記送信機に前記無線通信ACKメッセージを同時に送信することと を備える、方法。 【請求項2】 前記無線通信ACKメッセージは、空間分割多元接続(SDMA)送信または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機に送信される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記第1のデバイスのトランシーバを介して前記無線通信ACKメッセージを送信することをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという決定を受けて前記第1のデバイスのアプリケーション層に前記無線通信パケットのペイロードを提供することをさらに備える、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記MACアドレスは、前記第1のデバイスのネットワークアドレスを備える、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記MACアドレスは、アクセスポイントによって前記第1のデバイスに割り当てられた局識別子を備える、請求項1に記載方法。 【請求項7】 前記第1のデバイスを前記アクセスポイントに登録することと、 前記第1のデバイスを前記アクセスポイントに登録した後に、前記第1のデバイスで前記アクセスポイントから前記局識別子を受信することと、 をさらに備える、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという前記決定は、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出することを備える、請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記同時の時間は、前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記第1のデバイスは、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項1に記載の方法。 【請求項12】 装置であって、 無線通信パケットが前記装置で成功裏に受信されたことを決定するための手段と、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記装置および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段による決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成するための手段と、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記装置を識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記無線通信ACKメッセージを同時に前記送信機に送信するための手段と を備える、装置。 【請求項13】 前記無線通信パケットは、時分割多元接続(TDMA)送信、空間分割多元接続(SDMA)送信、または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機によって送信される、請求項12に記載の装置。 【請求項14】 前記無線通信ACKメッセージを送信するための前記手段は、トランシーバを備える、請求項12に記載の装置。 【請求項15】 前記無線通信ACKメッセージを生成するための前記手段は、前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段が、前記無線通信パケットが成功裏に受信されていないと決定した後に、前記無線通信パケットを廃棄する、請求項12に記載の装置。 【請求項16】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項14に記載の装置。 【請求項17】 前記MACアドレスは、前記装置のネットワークアドレスを備える、請求項12に記載の装置。 【請求項18】 前記MACアドレスは、アクセスポイントによって前記装置に割り当てられた局識別子を備える、請求項12に記載の装置。 【請求項19】 前記アクセスポイントに登録するための手段と、 前記アクセスポイントに登録するための前記手段による登録後に、前記アクセスポイントから前記局識別子を受信するための手段と、 をさらに備える、請求項18に記載の装置。 【請求項20】 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段は、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出するための手段を備える、請求項12に記載の装置。 【請求項21】 前記同時の時間は、無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段が、前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項12に記載の装置。 【請求項22】 無線通信パケットが成功裏に受信されたことを決定するための前記手段は、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項21に記載の装置。 【請求項23】 装置であって、 無線通信パケットを受信し、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記装置および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成し、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記装置を識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記無線通信ACKメッセージを同時に前記送信機に送信する ように構成された処理システムを備える、装置。 【請求項24】 前記無線通信ACKメッセージは、空間分割多元接続(SDMA)送信または直交周波数分割多元接続(OFDMA)送信を介して前記送信機に送信される、請求項23に記載の装置。 【請求項25】 前記無線通信ACKメッセージを送信するように構成されたトランシーバをさらに備える、請求項23に記載の装置。 【請求項26】 前記無線通信ACKメッセージは、前記送信機を識別する第2のMACアドレスを含む、請求項23に記載の装置。 【請求項27】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項25に記載の装置。 【請求項28】 前記MACアドレスは、前記装置のネットワークアドレスを備える、請求項23に記載の装置。 【請求項29】 前記MACアドレスは、アクセスポイントによって割り当てられた前記装置の局識別子を備える、請求項23に記載の装置。 【請求項30】 前記処理システムは、前記アクセスポイントに登録するようにさらに構成され、 前記装置は、前記処理システムを前記アクセスポイントに登録した後に、前記アクセスポイントから前記局識別子を受信するようにさらに構成される、請求項29に記載の装置。 【請求項31】 前記処理システムは、修正不可能な誤りが前記無線通信パケットの受信中に生じなかったことを検出するようにさらに構成される、請求項23に記載の装置。 【請求項32】 前記同時の時間は、前記装置が前記無線通信パケットを復号し、前記無線通信パケットの誤りをチェックするに十分に長い時間期間に相当する、請求項23に記載の装置。 【請求項33】 前記装置は、巡回冗長検査を計算することによって誤りをチェックする、請求項32に記載の装置。 【請求項34】 プロセッサに、 第1のデバイスで無線通信パケットを受信させ、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成させ、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記無線通信ACKメッセージを同時に前記送信機に送信させる ために、前記プロセッサよって実行可能な命令により符号化される、コンピュータ可読記憶デバイス。 【請求項35】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項34に記載のコンピュータ可読記憶デバイス。 【請求項36】 アクセス端末であって、 無線通信パケットを受信し、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記アクセス端末および少なくとも1つのデバイスに送信される、 前記無線通信パケットが成功裏に受信されたという決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを生成し、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記アクセス端末を識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記無線通信ACKメッセージを同時に前記送信機に送信する ように構成された処理システムを備える、アクセス端末。 【請求項37】 前記無線通信パケットは、アグリゲートパケットである、請求項36に記載のアクセス端末。 【請求項38】 アクセスポイントであって、 無線通信パケットを複数のアクセス端末に送信する送信機と、 前記複数のアクセス端末から複数の同時に送信された無線通信肯定応答(ACK)メッセージを受信するように構成された無線ネットワークアダプタと、ここにおいて、前記複数のアクセス端末は、特定の時間で前記無線通信ACKメッセージを同時に送信するように構成され、各無線通信ACKメッセージは、前記無線通信ACKメッセージを送信したアクセス端末を識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記無線通信パケットの送信に応答して受信された各受信された無線通信ACKメッセージを復号し、前記無線通信パケットの送信に応答して受信された各受信された無線通信ACKメッセージにおける前記MACアドレスに基づいて、どのアクセス端末が前記無線通信パケットを成功裏に受信したかを決定するように構成された処理システムと、ここにおいて、各受信されたACKメッセージは、前記無線通信パケットに応答して前記特定の時間で他の無線通信ACKメッセージと同時に送信される、 を備える、アクセスポイント。」 に補正された。 この補正は、平成28年1月19日付けの拒絶理由通知において指摘された「無線通信ACKメッセージをスケジュールされた時間で送信すること」を「無線通信ACKメッセージを同時に送信すること」に補正すると共に、同じく平成28年1月19日付けの拒絶理由通知において指摘された「MAC層識別子」を「MACアドレス」と補正するものである。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項について行った明りょうでない記載の釈明に該当する。 また、本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項の規定にも適合する。 上記によれば、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本件補正を認める。 4.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年4月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。 「方法であって、 無線通信パケットを第1のデバイスで受信することと、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記第1のデバイスが前記無線通信パケットを成功裏に受信したという前記第1のデバイスによる決定を受けて無線通信肯定応答(ACK)メッセージを前記第1のデバイスで生成することと、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別する媒体アクセス制御(MAC)アドレスを含む、 前記送信機に前記無線通信ACKメッセージを同時に送信することと を備える、方法。」 5.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成16年11月18日に公表された特開2004-328570号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複数の通信局間でデータ通信を行う通信システム及び通信方法、並びに、これら通信システム及び通信方法にて用いられる通信装置に関し、特に、いわゆる無線LAN(Local Area Network)に適用して好適な通信システム及び通信方法、並びに通信装置に関する。」 「【0046】 まず、第1の実施の形態について説明する。 【0047】 この第1の実施の形態として示す通信システムは、アクセスポイントから送信されたRTS信号を受信した複数の端末が、それぞれ、時分割でCTS信号を返信するものである。また、この通信システムは、アクセスポイントが、搭載されるアダプティブアレイアンテナの重みを学習して指向性を形成していく際に、最初の学習については、時分割された複数のCTS信号に基づいて、各端末が備えるアンテナ素子のそれぞれと、自己が備えるアダプティブアレイアンテナ対応の複数のアンテナ素子との間の伝達関数を取得することによってアダプティブアレイアンテナの重みを求め、2回目以降の学習については、空間分割多重された複数のACK信号に基づいて直接アダプティブアレイアンテナの重みを求めるものである。 【0048】 通信システムは、例えば図1に示すように、例えばイーサネット(登録商標)等の所定の有線ネットワークケーブルNTに接続された少なくとも1つ以上のアクセスポイントAP1,AP2と、複数の端末STA11,STA12,STA13,STA14,STA21との間でネットワークが形成されて構成される。端末STA11,STA12,STA13,STA14,STA21は、それぞれ、IEEE802.11方式に準拠した手順に則り、自己が属するアクセスポイントを1つ決定しており、1つのアクセスポイントに属している。この例では、端末STA11,STA12,STA13,STA14は、それぞれ、アクセスポイントAP1に属し、端末STA21は、アクセスポイントAP2に属しているものとする。 【0049】 アクセスポイントAP1,AP2は、それぞれ、図2に示すように、通信手段である複数のアンテナ素子101,102,103,・・・と、これらアンテナ素子101,102,103,・・・に接続されるデータ処理手段であるデータ処理部15とを備え、アレイアンテナの処理を行うことが可能に構成される。 【0050】 アンテナ素子101,102,103,・・・は、それぞれ、アンテナ11が共用器12を介して送信処理部13と受信処理部14とに接続されて構成される。送信処理部13は、データ処理部15から供給されたベースバンド信号に対してA/D変換や変調等の各種処理を施し、さらに例えばRF(Radio Frequency)信号に変換した上で、このRF信号を共用器12へと供給する。なお、ここでは、IEEE802.11方式に規定されるMAC(Media Access Control)レイヤで動作する物理レイヤとして、IEEE802.11aに準拠するものを採用し、これにともない、変調方式としては、いわゆる直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;OFDM)変調方式を行うものとする。一方、受信処理部14は、受信した信号をRF信号に変換し、さらにD/A変換や復調等の各種処理を施して得られたベースバンド信号をデータ処理部15へと供給する。 【0051】 データ処理部15は、例えば後述する各種情報が記述されたRTS信号を作成するといったように、この通信システムに実装されるメディアアクセス制御方式における各層での処理を実行する。このとき、データ処理部15は、アダプティブアレイアンテナとして機能させるために、複数のアンテナ素子101,102,103,・・・のそれぞれから供給される受信信号に基づいて、アダプティブアレイアンテナの重みを学習して指向性パターンを形成するとともに、受信時の重みパターンと同一のパターンに基づいて、複数のアンテナ素子101,102,103,・・・のそれぞれを介して送信すべきデータに対して重み付けを行う。 【0052】 一方、端末STA11,STA12,STA13,STA14,STA21は、それぞれ、図3に示すように、通信手段である単一のアンテナ素子20のみを備えるとともに、このアンテナ素子20に接続されるデータ処理手段であるデータ処理部25とを備える。 【0053】 アンテナ素子20は、上述したアンテナ素子101,102,103,・・・のそれぞれと同様に構成され、アンテナ21が共用器22を介して送信処理部23と受信処理部24とに接続されて構成される。また、データ処理部25は、例えば後述する各種情報が記述されたCTS信号やACK信号を作成するといったように、この通信システムに実装されるメディアアクセス制御方式における各層での処理を実行する。 【0054】 さて、このような通信システムにて授受されるRTS信号、CTS信号、及びACK信号についてのフレームフォーマットとして、以下に示すものを新たに提案する。 【0055】 まず、比較のため、従来のRTS信号、CTS信号、及びACK信号について説明する。 【0056】 従来のRTS信号のフォーマットを図4に示す。すなわち、従来のRTS信号は、2オクテットからなるフレームコントロール(Frame Control)と、2オクテットからなるデュレーション(Duration)と、6オクテットからなるレシーバ・アドレス(Receiver Address;RA)及びトランスミッタ・アドレス(Transmitter Address;TA)と、4オクテットからなるフレーム・チェック・シーケンス(Frame Check Sequence;FCS)とから構成される。 【0057】 フレームコントロールは、さらに細分化されたフォーマットを有するものであり、例えば、パケットの種別やプロトコルのバージョン、再送の有無、データの経路情報といった各種情報が記述される。このフレームコントロールは、RTS信号のみならず、CTS信号、ACK信号、及び通常の一般的なデータフレームにも格納され、全てのフレームに共通に用いられる。 【0058】 デュレーションは、時間の指定を行うために設けられる。アクセスポイントや各端末を含む各通信局は、レシーバ・アドレス(RA)にアドレスが記述されていない場合には、このデュレーションに記述された時間に基づいて、通信動作を控えるべき時間を把握することができる。具体的には、このデュレーションには、NAV(Network Allocation Vector)と称されるカウンタ値が設定される。このデュレーションは、RTS信号のみならず、CTS信号、ACK信号、及び通常のデータフレームにも共通に用いられる。 【0059】 レシーバ・アドレス(RA)は、データを受信させたい通信局のアドレスが記述される。また、トランスミッタ・アドレス(TA)は、データを送信する通信局のアドレスが記述される。 【0060】 フレーム・チェック・シーケンス(FCS)は、32ビットのCRC(Cyclic Redundancy Check)チェックである。データを受信した通信局は、このフレーム・チェック・シーケンスを再計算し、送られてきたフレーム・チェック・シーケンスと一致しなかった場合には、そのフレームは破壊されたものとして廃棄することにより、正しいMACパケットのみを認識し、処理を行うことになる。」 「【0079】 つぎに、新たに提案するACK信号は、図8に示すように、2オクテットからなるフレームコントロールと、2オクテットからなるデュレーションと、6オクテットからなるレシーバ・アドレスと、4オクテットからなるフレーム・チェック・シーケンスとに対して、同図中斜線部で示す新たな部分を付加した構成とされる。 【0080】 具体的には、ACK信号は、新たに付加されたフォーマットとして、トランスミッタ・アドレス(TA)と、フレーム・チェック・シーケンス(FCS2)と、RANDPATとを備える。このように、ACK信号は、基本的にはCTS信号と同様に構成されるが、RANDPATの部分が異なる。 【0081】 すなわち、ACK信号におけるRANDPATは、例えば、RTS信号におけるレシーバ・アドレス(RA)で指定された端末は、RANDPATとしてRAND1シーケンスを記述し、レシーバ・アドレス(RA2)で指定された端末は、RANDPATとしてRAND2シーケンスを記述する、といったように、RTS信号におけるレシーバ・アドレス(RA,RA2,RA3,RA4,・・・)で指定された各端末について、それぞれ異なる固有のランダムシーケンスが記述される。また、このRANDPATは、CTS信号におけるRANDPATとはランダムシーケンスの長さが異なる。具体的には、ACK信号を用いたアダプティブアレイアンテナの重みの学習は、環境変化に適応的に追従するという意味合いが強いものであることから、ACK信号におけるRANDPATは、CTS信号におけるRANDPATよりもランダムシーケンスの長さが短くて済み、OFDMシンボルで約4個分の情報で足りる。ACK信号は、複数のデータ(Fragment)の間に挟まれて授受されることから、多数回の授受が行われ、CTS信号のように長大なランダムシーケンスを用いたアダプティブアレイアンテナの重みの学習を行うのは困難であり、また、環境変化に適応的に追従することが目的であるため、ランダムシーケンスが長大である必要もない。」 「【0089】 アクセスポイントAP1は、アダプティブアレイアンテナの重みを学習することによってアダプティブアレイアンテナとして機能し、最後のCTS信号(CTS2)を受信してから所定の時間SIFS後に、複数のアンテナ素子101,102,103を用いて、各端末STA11,STA12,STA13に対して空間分割多重によるデータ(Fragment0-0,Fragment1-0,Fragment2-0)の送信を開始する。 【0090】 これに応じて、各端末STA11,STA12,STA13は、それぞれ、アクセスポイントAP1からのデータの送信が完了してから所定の時間SIFS後に、ACK信号(ACK0-0,ACK1-0,ACK2-0)を同時に返信する。ACK信号は、それぞれ、先に図8に示したようなフォーマットからなり、トランスミッタ・アドレス(TA)に、送信元の端末STA11,STA12,STA13のアドレスが記述されていることから、アクセスポイントAP1は、受信したACK信号がどの端末から送信されたものであるのかを把握することができる。 【0091】 そして、アクセスポイントAP1は、受信した複数のACK信号におけるRANDPATに基づいて、いわゆるRLS(Recursive Least Square)アルゴリズム等の所定の適応アルゴリズムを用いて直接アダプティブアレイアンテナの重みの学習を行うことになる。 【0092】 一方、従来の端末STA14は、アクセスポイントAP1からデータが送信されたのに応じて、データにおけるデュレーションに記述された時間を、NAVのカウンタ値(NAV(Fragment0))に待ち時間として設定し、通信動作を控えるとともに、各端末STA11,STA12,STA13からACK信号が送信されたのに応じて、ACK信号におけるデュレーションに記述された時間を、NAVのカウンタ値(NAV(ACK0)に待ち時間として設定し、通信動作を控える。」 また、図1及び図8及び図9は下記のとおりである。 [図1] [図8] [図9] 上記によれば、引用例1には、 「無線LANに適用して好適な通信方法に関し、 通信システムは、イーサネット(登録商標)等の所定の有線ネットワークケーブルNTに接続された少なくとも1つ以上のアクセスポイントAP1,AP2と、複数の端末STA11,STA12,STA13,STA14,STA21との間でネットワークが形成されて構成され、端末STA11,STA12,STA13,STA14,STA21は、それぞれ、IEEE802.11方式に準拠した手順に則り、自己が属するアクセスポイントを1つ決定しており、1つのアクセスポイントに属し、端末STA11,STA12,STA13,STA14は、それぞれ、アクセスポイントAP1に属し、 IEEE802.11方式に規定されるMACレイヤで動作する物理レイヤとして、IEEE802.11aに準拠するものを採用し、これにともない、変調方式としては、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式を行うものとし、 フレームコントロールは、パケットの種別やプロトコルのバージョン、再送の有無、データの経路情報といった各種情報が記述され、RTS信号のみならず、CTS信号、ACK信号、及び通常の一般的なデータフレームにも格納され、全てのフレームに共通に用いられ、 デュレーションは、時間の指定を行うために設けられ、アクセスポイントや各端末を含む各通信局は、レシーバ・アドレス(RA)にアドレスが記述されていない場合には、このデュレーションに記述された時間に基づいて、通信動作を控えるべき時間を把握することができ、 レシーバ・アドレス(RA)は、データを受信させたい通信局のアドレスが記述され、トランスミッタ・アドレス(TA)は、データを送信する通信局のアドレスが記述され、 フレーム・チェック・シーケンス(FCS)は、32ビットのCRCチェックであって、データを受信した通信局は、このフレーム・チェック・シーケンスを再計算し、送られてきたフレーム・チェック・シーケンスと一致しなかった場合には、そのフレームは破壊されたものとして廃棄することにより、正しいMACパケットのみを認識し、処理を行い、 提案するACK信号は、2オクテットからなるフレームコントロールと、2オクテットからなるデュレーションと、6オクテットからなるレシーバ・アドレスと、4オクテットからなるフレーム・チェック・シーケンスとに対して、新たな部分を付加した構成とされ、具体的には、ACK信号は、新たに付加されたフォーマットとして、トランスミッタ・アドレス(TA)と、フレーム・チェック・シーケンス(FCS2)と、RANDPATとを備え、 アクセスポイントAP1は、アダプティブアレイアンテナの重みを学習することによってアダプティブアレイアンテナとして機能し、最後のCTS信号(CTS2)を受信してから所定の時間SIFS後に、複数のアンテナ素子101,102,103を用いて、各端末STA11,STA12,STA13に対して空間分割多重によるデータ(Fragment0-0,Fragment1-0,Fragment2-0)の送信を開始し、 これに応じて、各端末STA11,STA12,STA13は、それぞれ、アクセスポイントAP1からのデータの送信が完了してから所定の時間SIFS後に、ACK信号(ACK0-0,ACK1-0,ACK2-0)を同時に返信し、ACK信号は、トランスミッタ・アドレス(TA)に、送信元の端末STA11,STA12,STA13のアドレスが記述されていることから、アクセスポイントAP1は、受信したACK信号がどの端末から送信されたものであるのかを把握することができる、 通信方法。」 が記載されている。(以下「引用発明」という。) 6.本願発明と引用発明の対比 引用発明の「ACK信号」は、本願発明の「無線通信肯定応答(ACK)メッセージ」に相当する。 引用発明の「アクセスポイントAP1」は、本願発明の「送信機」に相当し、 引用発明の「端末STA11」は、本願発明の「第1のデバイス」に相当し、 引用発明の「端末STA12」は、本願発明の「第2のデバイス」に相当する。 引用発明の「空間分割多重によるデータ(Fragment0-0,Fragment1-0,Fragment2-0)」は、無線LANにおけるデータフレームであるから、「無線通信データ」であるといえ、FCSを再計算することにより正しい「MACパケット」のみを認識することが可能である。 上記によれば、無線通信データのFCSにより正しい「MACパケット」を認識することが可能であるから、「無線通信データ」は「無線通信パケット」であるといえる。 引用発明において、空間分割多重によるデータ(Fragment0-0,Fragment1-0,Fragment2-0)を、AP1がSTA11、STA12、STA13に対して送信しているから、「無線通信パケットは、送信機から第1のデバイス及び少なくとも1つの第2のデバイスに送信」しているといえる。 ACK信号を返信するために、ACK信号を生成する必要があることは当然のことであるから、引用発明のSTA11は、「ACKメッセージを生成」しているといえる。 引用発明におけるACK信号には、データを送信する通信局のアドレスであるトランスミッタ・アドレスが含まれており、AP1がACK信号を受信するとトランスミッタ・アドレスにより送信元の端末のアドレスが記載されていることによりどの端末から送信されたものであるのかを把握することができるから、「無線通信ACKメッセージは、第1のデバイスを識別するアドレスを含」んでいるといえる。 引用発明において、アクセスポイントAP1からのFragment0-0の送信に応じて、STA11がACK0-0を、STA12が送信するACK1-0と同時に返信しているから「無線通信ACKメッセージを同時に送信」しているといえる。 また、AP1がACK信号を受信するから、ACK0-0は、AP1すなわち「送信機」に対して送信しているといえる。 上記によれば、引用発明は、「送信機に無線通信ACKメッセージを同時に送信」しているといえる。 ここで、引用発明において、ACK信号は「送信されたデータを正しく受信した旨を周知させるための応答信号」であるから、「無線通信データを正しく受信した」ことが認識した場合の応答信号であって、「正しく受信」とは「成功裏に受信」のことであるから、「無線通信ACKメッセージ」は「無線通信パケットを成功裏に受信したというSTA11による決定を受け」て生成しているといえる。 したがって、本願発明と引用発明は、 「方法であって、 無線通信パケットを第1のデバイスで受信することと、ここにおいて、前記無線通信パケットは、送信機から前記第1のデバイスおよび少なくとも1つの第2のデバイスに送信される、 前記第1のデバイスが無線通信肯定応答(ACK)メッセージを前記第1のデバイスで生成することと、ここにおいて、前記無線通信ACKメッセージは、前記第1のデバイスを識別するアドレスを含む、 前記送信機に前記無線通信ACKメッセージを同時に送信することと を備える、方法。」 で一致し、下記の点で相違する。 相違点 アドレスとして、本願発明は「媒体アクセス制御(MAC)アドレス」であるのに対し、引用発明は、どのようなアドレスであるのか特定されていない点。 7.当審の判断 上記相違点について検討する。 相違点について MACレイヤで動作する通信方法における通信パケットのアドレスとして、MACアドレスは代表的なアドレスに過ぎない。 よって、引用発明におけるアドレスとしてMACアドレスを用いることは、当業者にとって容易に想到しうることである。 8.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-14 |
結審通知日 | 2016-06-21 |
審決日 | 2016-07-05 |
出願番号 | 特願2013-264356(P2013-264356) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 浩兵 |
特許庁審判長 |
加藤 恵一 |
特許庁審判官 |
水野 恵雄 吉田 隆之 |
発明の名称 | 無線通信システムにおける多元接続互換性のためのデータ送信の受信成功を通知する方法および装置 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 奥村 元宏 |