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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1321742
審判番号 不服2015-21312  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-01 
確定日 2016-11-16 
事件の表示 特願2012-557081「再構成可能な多層ラミネート及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/112387、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-522071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成23年3月1日(優先権主張2010年3月9日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月28日付けで拒絶の理由が通知され、何ら応答なく、同年10月14日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成27年12月1日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2.本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「再構成可能な多層ラミネートであって:
フィルム層と;
ライナー層と;
前記フィルム層及び前記ライナー層の間に配される接着層と;
前記フィルム層及び前記接着層の間に配される第1剥離層と;
前記ライナー層及び前記接着層の間に配される第2剥離層と;を含み、
前記第1剥離層の剥離力の、前記第2剥離層の剥離力に対する比が、約1:1.5から約1:100の範囲にある、再構成可能な多層ラミネート。」

(2)補正後
「再構成可能な多層ラミネートであって:
フィルム層と;
ライナー層と;
前記フィルム層及び前記ライナー層の間に配される接着層と;
ポリシロキサンを含み、前記フィルム層及び前記接着層の間に配される第1剥離層と;
前記ライナー層及び前記接着層の間に配される第2剥離層と;を含み、
前記第1剥離層の剥離力の、前記第2剥離層の剥離力に対する比が、1:1.5から1:100の範囲にあり、
前記フィルム層及び前記第1剥離層を前記接着層から分離し、前記フィルム層及び前記第1剥離層を方向転換し、前記フィルム層の外表面を前記接着層の露出面と接触させることによって、再構成ラミネートを形成することが可能である、
再構成可能な多層ラミネート。」

2.補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、剥離力について「約」を削除するものであって、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、第1剥離層について、「ポリシロキサンを含み」なる事項を付加するとともに、再構成可能な多層ラミネートについて、「前記フィルム層及び前記第1剥離層を前記接着層から分離し、前記フィルム層及び前記第1剥離層を方向転換し、前記フィルム層の外表面を前記接着層の露出面と接触させることによって、再構成ラミネートを形成することが可能である」なる事項を付加するものであり、かかる補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開平8-248888号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】物体表面に接着される薄いシート状の薄葉体が接着剤層を介して基材に貼られているラベル状接着物において,前記薄葉体の剥離面から前記接着剤層を剥離するために必要な力が,前記基材の剥離面から前記接着剤層を剥離するために必要な力より小さく,この基材の剥離面から前記接着剤層を剥離するために必要な力が,前記薄葉体の印刷面から前記接着剤層を剥離させるに必要な力より小さくなるように,前記薄葉体の剥離面と前記基材の剥離面と前記薄葉体の印刷面と前記接着剤層との接着強度が設定されていることを特徴とするラベル状接着物。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,いわゆるタックラベル状接着物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に,飲料,酒類,化粧品のガラス瓶やプラスチックボトルに貼られるラベル状接着物は,耐摩耗性や耐薬品性に関する要望度が高い。このため,これらのラベル状接着物の印刷面を直接表面に露出させないことでそれらの特性を持たせる必要がある。」

「【0005】本発明は,このような様々な問題に鑑みてなされたものであり,コストを上昇させずに,無色透明なガラスと同程度の表面透過度を確保でき,アルコール,洗剤などへの耐薬品性を有し,オンライン工程で張り合わせることが可能なラベル状接着物を開示することを目的とする。」

「【0015】図1は,本発明のラベル状接着物の実施例としてのラベルロールの断面構成を示したもので,符号1はラベルロールである。
【0016】このラベルロール1は,ラベル2を接着剤層3を介して基材である剥離紙(以下,セパレータという)4に接着したもので,ラベル2の印刷面2bとセパレータ4の剥離面4aとが接着剤層3を介して接着されている。
【0017】ラベル2は,薄いシート状の薄葉体の一例であって,光を透過することができる樹脂製のフィルムで形成されている。・・・。」

「【0019】ラベル2の剥離面2aから接着剤層3を剥離させる力(この力をこの発明では接着力と定義する)は,セパレータ4の剥離面4aから接着剤層を剥離させる力(接着力)より小さく設定されている。この実施例ではラベル2の剥離面2aの単位面積当たりの接着力(接着強さ)を小さくするためには,例えばシリコンを塗布してある。このラベル2の剥離面2aの接着力とセパレータ4の剥離面の接着力の大小を付与するのは,シリコンの単位面積当たりの塗布量を調節して行い,剥離面2aより剥離面4aを強くするために,剥離面4a側の単位面積当たりのシリコン塗布量を少なくする。・・・。」

「【0022】セパレータ4はここでは紙で形成されており,剥離面4aの接着力がラベル2の剥離面2aよりは強く,・・・。・・・。
【0023】次に,このラベルロール1の製法について説明する。先ず,セパレータ4の剥離面4aに接着剤層3をコーティングしつつ,接着剤層3にラベル2を接着する。ラベルロール1は,セパレータ4,接着剤層3,ラベル2の積層状態で保管される(図1の状態)。この積層状態においてラベル2の剥離面2aとセパレータ4の剥離面4aとが接着剤層3を介して対面しており,このときラベル2の印刷面2bは白紙状態である。ラベルの発注があった場合に,ラベル2の形状や印刷内容が決定され,ラベル2の印刷面2bに印刷及び乾燥が行われる。この印刷はラベル2を通して正規の印刷柄5を見るように,境像印刷により行う。
【0024】印刷されたラベルロール1は,図2に示すようにセパレータ4から剥離され,さらに図3に示すように裏返しに反転されて,ラベル2の印刷面2bが接着剤層3に接着される。ラベル2の印刷面2bを接着剤層3に接着するには反転用のロール等を用いて行う。ラベルロール1が印刷面2bがセパレータ4に向いて接着されたら,プレスにより所定の形状に半打ちする。これによって,ラベル2が所定形状に形成され,不要部分をセパレータ4から除去すると,セパレータ4には一定間隔で所定形状のラベル2が配列される。・・・。」

これらを整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「ラベルロール1であって:
樹脂製のフィルムで形成されたラベル2と;
紙で形成されたセパレータ4と;
前記ラベル2及び前記セパレータ4の間に配される接着剤層3と;
前記ラベル2及び前記接着剤層3の間に配される剥離面2aと;
前記セパレータ4及び前記接着剤層3の間に配される剥離面4aと;を含み、
ラベル2の剥離面2aから接着剤層3を剥離させる力は、セパレータ4の剥離面4aから接着剤層を剥離させる力より、シリコンの塗布によって、小さく設定されており、
前記ラベル2及び前記剥離面2aを前記接着剤層3から剥離し、前記ラベル2及び前記剥離面2aを裏返しに反転し、前記ラベル2の印刷面2bを前記接着剤層3に接着させた、ラベルロール1。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「樹脂製のフィルムで形成されたラベル2」は補正発明の「フィルム層」に相当し、同様に「接着剤層3」は「接着層」に、「剥離面2a」は「第1剥離層」に、「剥離面4a」は「第2剥離層」に、「剥離」は「分離」に、「裏返しに反転」は「方向転換」に、「印刷面2b」は「外表面」に、それぞれ相当する。
補正発明の「ライナー層」は、本願明細書の段落0022に「ライナー層10は、単一層の形を取ってもよいし、若しくは、多層アセンブリとして存在してもよい。ライナー層のためには、紙、フォイル、又はフィルム材料を含む、多様な材料の使用が可能である」との記載があることから、刊行物1発明の「紙で形成されたセパレータ4」は、補正発明の「ライナー層」に相当する。
刊行物1発明の「ラベル2の剥離面2aから接着剤層3を剥離させる力は、セパレータ4の剥離面4aから接着剤層を剥離させる力より、シリコンの塗布によって、小さく設定されており」と、補正発明の「前記第1剥離層の剥離力の、前記第2剥離層の剥離力に対する比が、1:1.5から1:100の範囲にあり」とは、「前記第1剥離層の剥離力は、前記第2剥離層の剥離力よりも小さく設定されており」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「ラベルロール1」は、「前記ラベル2及び前記剥離面2aを前記接着剤層3から剥離」するから、接着剤層3には「露出面」が形成される。次いで、「ラベル2及び剥離面2aを裏返しに反転し、前記ラベル2の印刷面2bを前記接着剤層3に接着させ」るから、ラベル2の印刷面2bを接着剤層3の「露出面」に接着させることは明らかである。そうすると、「ラベル2及び剥離面2a」を裏返しに反転し形成可能な「ラベルロール1」は、補正発明の「再構成可能な多層ラミネート」に相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「再構成可能な多層ラミネートであって:
フィルム層と;
ライナー層と;
前記フィルム層及び前記ライナー層の間に配される接着層と;
前記フィルム層及び前記接着層の間に配される第1剥離層と;
前記ライナー層及び前記接着層の間に配される第2剥離層と;を含み、
前記第1剥離層の剥離力は、前記第2剥離層の剥離力よりも小さく設定されており、
前記フィルム層及び前記第1剥離層を前記接着層から分離し、前記フィルム層及び前記第1剥離層を方向転換し、前記フィルム層の外表面を前記接着層の露出面と接触させることによって、再構成ラミネートを形成することが可能である、
再構成可能な多層ラミネート。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
第1剥離層について、補正発明は「ポリシロキサンを含み」、「第1剥離層の剥離力の、第2剥離層の剥離力に対する比が、1:1.5から1:100の範囲」にあるが、刊行物1発明は「ラベル2の剥離面2aから接着剤層3を剥離させる力は、セパレータ4の剥離面4aから接着剤層を剥離させる力より、シリコンの塗布によって、小さく設定」される点。

(4)相違点の検討
相違点について検討する。
本願明細書には、以下の記載がある。

「【0020】
本ラミネートの優れた特色は、第1及び第2剥離層(a)及び(b)が、それぞれ、固有の剥離特性を有することである。具体的には、第1剥離層(a)は、第2剥離層(b)よりも簡単に剥離又は分離される。理想的には、第1剥離層を分離するのに必要な力の量を、第2剥離層(b)と比べた場合の、その比は約1:3である。これらの態様は全てさらに詳細に本明細書において記載される。」

「【0026】
第1及び第2剥離層30及び16は、それぞれ、当該技術分野で公知の広範な剥離材料、例えば、シリコン及びシリコン原料材料から形成することが可能である。剥離層のために使用される主要材料はシリコン処方材料である。ポリシロキサンを原料とする、数多くのシリコン剥離コート材料が知られる。・・・。剥離層(単数又は複数)に、シリコン及び/又はポリシロキサンを含めない場合もあることも考慮できる。本発明は、ほぼ全ての剥離材料の使用を含む。」

「【0029】
前述したように、第1剥離層30の剥離力の、第2剥離層16の剥離力に対する比は約1:3であることが好ましい。一方、本発明は、1:1.5という低い比も含む。ライナー層10が接着層20から分離が可能である限り、この比には上限が無いと考えられる。この比について適切な範囲を定量化するために、1:100の上限を考慮の対象とする。従って、本発明は、第1剥離層の剥離力の、第2剥離層の剥離力に対する比について、約1:1.5から約1:100を含む。」

すなわち、「本発明は、ほぼ全ての剥離材料の使用」が可能であり、「ポリシロキサン」は「数多くのシリコン剥離コート材料」の一例である。
剥離特性については、「第1剥離層(a)は、第2剥離層(b)よりも簡単に剥離又は分離される」ものであり、「第1剥離層を分離するのに必要な力の量を、第2剥離層(b)と比べた場合の」「理想的」又は「好ましい」「比は約1:3である」。

刊行物1発明において、「剥離力」は、第1剥離層(剥離面2a)の剥離力が、第2剥離層(剥離面4a)の剥離力より、「シリコン」の塗布によって、小さく設定されている。
そして、シリコンの一種である「ポリシロキサン」により、剥離力を調整できることは、特表2007-502732号公報の段落0080、特開平7-126532号公報の段落0002、特開2003-55552号公報の段落0002に示されるごとく周知である。
よって、刊行物1発明の「シリコン」を、シリコンの一種であって、剥離力調整機能を有する、周知の「ポリシロキサン」とすることは、適宜選択しうる事項にすぎない。
「剥離力」の比の数値範囲については、実際の使用にあたり、適した比とすることは、当然のことである。また、補正発明における数値範囲の特定については、上記のとおり、適した範囲を特定したにすぎず、格別の臨界的意義があるとは認められない。
また、かかる相違点により、格別の作用効果が生じるとも認められない。

請求人は、刊行物1には、相違点に係る事項が示唆、開示されていない旨、主張する。
しかし、この点は、上記のとおり、容易想到である。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし41に係る発明は、出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし41に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するとともに、数値範囲の特定にあたり「約」を追加するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-15 
結審通知日 2016-06-21 
審決日 2016-07-05 
出願番号 特願2012-557081(P2012-557081)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
P 1 8・ 575- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中尾 奈穂子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 高橋 祐介
千葉 成就
発明の名称 再構成可能な多層ラミネート及び方法  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  

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