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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1321775
審判番号 不服2015-20954  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-25 
確定日 2016-11-17 
事件の表示 特願2014- 49512「カラー表示装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112261〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年6月7日(優先権主張 平成12年6月7日)を国際出願日とする出願である特願2002-502760号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年3月12日に新たな特許出願としたものであって、平成27年1月9日付けの拒絶理由通知に対して平成27年3月23日に意見書が提出されたが、平成27年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年11月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年11月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年11月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に、
(1) 「【請求項1】
赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくすると共に、前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分として前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を点灯し、
前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、動作温度範囲を拡大してもユ-ザがフリッカーを感じ難くすることを特徴とするカラー表示装置。」
とあったところを、

(2) 「【請求項1】
赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色の表示デ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
動作温度範囲を拡大すると前記表示素子の応答が遅くなる特性を持ち、
前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくすると共に、前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間の前半に表示素子が動作温度範囲を拡大しても応答する時間を確保するために前記3色の光源の全てを消灯し、前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯し、
前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、動作温度範囲を拡大してもユ-ザがフリッカーを感じ難くすることを特徴とするカラー表示装置。」
とすることを含むものである(下線は、補正箇所を示す)。

2 補正の適否
本件補正は、
ア 本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「データ」について、「表示データ」と限定し、
イ 本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示素子」について、「動作温度範囲を拡大すると前記表示素子の応答が遅くなる特性を持ち」と限定し、
ウ 本件補正前の請求項1に「前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分として」とあったところを、「前記データ表示期間の半分として」を削除して、「前記3色の光源の1回の点灯時間を」と補正し、
エ 本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「赤、緑、青の3色の光源の点滅」について、「前記データ表示期間の前半に表示素子が動作温度範囲を拡大しても応答する時間を確保するために前記3色の光源の全てを消灯し」と限定し、
オ 本件補正前の請求項1に「前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を点灯し」とあったところを、「前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯し」と限定するものである。

上記ア、イ,エ及びオに係る補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、上記ウに係る補正の適否について検討すると、本件補正前の請求項1では、「3色の光源の1回の点灯時間」の長さを「データ表示期間の半分」とすることが発明を特定するために必要な事項として記載されていたところ、本件補正後の請求項1では、「3色の光源の1回の点灯時間」の長さについて発明を特定するために必要な事項でないものとなっている。この補正により、本件補正前の請求項1では、「3色の光源の1回の点灯時間」が「データ表示期間の半分」であるが、本件補正後の請求項1では、「3色の光源の1回の点灯時間」が「データ表示期間の半分」以外のものも含むように、請求項1の記載が拡張されていることがわかる。
よって、上記ウに係る補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものではない。
また、上記ウに係る補正は、特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とするものでもない。
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の記載に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1(2)」に記載したとおりのものである。

(2)引用例、周知例及びその記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-338423号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0046】従来技術におけるカラー順次方式の液晶ディスプレイは、図2に示すように、赤(R),緑(G),青(B)各色毎に順次標示を行い、少なくとも3色をもって一枚の絵を完結するカラー表示方法であった。例えば、この方式でもって一面緑の単色を標示するものとすると、ほかの色(赤、青)を標示するタイミングにおいては黒を発色しなければならず、緑(G)の単色がフレーム周波数で点滅する状況とほぼ近似した状況となる。直視型で配慮しなければならない現象である。
【0047】図2を例にした場合に、一枚の完結した画面を表示するための、赤(R),緑(G),青(B)の集合としての「最小繰り返し単位」は、「フレーム」と呼ばれる(以下、ここでの用語「フレーム」の意味は、図6に関する説明においても同じである)。ここで、一枚の完結した画面を表示するために要する時間をTfとしたとき、1/Tfは、「フレーム周波数」と呼ばれる。カラー順次方式において、赤(R),緑(G),青(B)各色の表示は、夫々の「フィールド」と呼ばれる。この例において一面緑(G)の単色を標示する場合においては、たまたま、フレーム周波数とフィールド周波数とが等しくなる。」

「【0050】カラーフィールド順次方式表示装置において、R,G,Bを順次表示してちらつきを感じさせないためには、最も被験者にとって感受性の高い緑(G)のCFFをもって駆動する必要があり、実験した明るさ、デューティー比の条件では50Hzで駆動する必要があることになる。しかし、この周波数は赤(R)や青(B)の表示に対しては、必要以上に速く駆動してしまうことになって不利である。この場合の各色の表示時間は1/(50×3)秒≒6.7ミリ秒となる」

「【0080】カラーフィルタ無パネルでの構成例
カラーフィルタ無しのパネル(白黒パネル)を使用してカラーフィールド順次駆動を行なう場合に、フリッカを抑えながらリフレッシュレートを下げるためのパーソナル・コンピュータ(PC)システムの構成例を図15に示す。これは、図7又は図8の(b)示したプロジェクションタイプ(投写型)のLCDやCRTにも適用できる。図15において、210a?210c,220はPCシステム側に用意したビデオラムとビデオ・コントローラである。230?250、270はLCDモジュールの主な構成要素である。
【0081】ここで、これらの構成要素を説明すると、
210a : 緑(G)色ビデオ用のビデオラム(VRAM)である。
210b : 赤(R)色ビデオ用のビデオラム(VRAM)である。
210c : 青(B)色ビデオ用のビデオラム(VRAM)である。
【0082】220 : ビデオ・コントローラであり、LCDモジュールに対して、同期制御信号用の出力チャネル222と、ビデオ・データ信号用の出力チャネル224,226,228としての3チャネル(Video 0, Video 1, Video 2)と、を有する。このチャネルは、従来通りであるが、ビデオデータの転送順序が異なる。
230 : LCDコントローラであり、ソース・ドライバ240とゲート・ドライバ250とを制御するものである。
【0083】240 : ソース・ドライバであり、通常のドライバを使用できるが、1つの画素を兼用してR/G/B用に利用するので、必要な出力数は1/3になる。図1の画素10を3つのサブ画素に分ける必要がないからである。
250 : ゲート・ドライバであり、通常のドライバを使用できる。動作は通常通りのものである。
270 : 白黒用TFTアレイである。図1の画素10を3つのサブ画素に分ける必要がなく、カラーフィルタも無いため、光の透過率が高い構造にすることができる。
【0084】各部の信号
図16にビデオ・コントローラ220の出力信号を示す。図はリフレッシュの1サイクル分(フレーム0?3(Frame?0 Frame 3)の4フレーム)を示す。通常用意されている3チャネルのビデオ・チャネルである Video 0 224、Video1 226、Video 2 228を利用して、色をフレーム単位で切り換えながら転送を行なう。通常の3色同時に転送する場合に比べて、1水平周期は1/3になる。フレーム周波数60Hzで転送できるシステムの場合は、1水平周期が1/3になるために、各色のフレーム周波数は180Hzまで可能となる。
【0085】本発明を適用して、R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると(Gは2倍の60Hzとなり、フリッカは悪化しない)、1フレーム期間は1/(30×4)[秒]となる。このとき、最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行なうと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSになり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる。
【0086】図17にLCDコントローラ230の出力信号、すなわち、ソース・ドライバ240へのデータ出力を示す。ゲート・ドライバ250の制御は通常通りなのでここでは省略する。ソース・ドライバ240へは、ビデオ・コントローラ220からのビデオ信号をそのまま転送する。
【0087】以上、「サブ画素の構成」としては、図1に示すような一単位となる画素10をRGB各色に3つ(R原色サブ画素が11、G原色サブ画素が12、B原色サブ画素が13)に垂直方向に区切るストライプ配列を紹介してきたが、これらを水平方向に区切るストライプ配列に応用することも当業者にとっては容易である。さらには、モザイク配列(ダイアゴナル配列)、デルタ配列(トライアングル配列)に適用することも当業者にとっては容易である。
【0088】また、本実施例においては、アクティブマトリックス駆動が可能なTFT (Thin Film Transistor)アレイ構造について説明してきた。しかし、本発明の技術的思想は、液晶を間に挟んで設定される対向基板の側において、共通(Common)電極を用いる代わりにゲートライン数に相当するだけの数の走査電極を用意するのであれば、他のスイッチング素子であるMIM (Metal Insulator Metal)構造に適用することも当業者にとっては容易である。また同様に、アクティブ素子(スイッチング素子)自体が無い場合の単純(simple)マトリックス駆動(マルチプレックス(multiplexed)駆動又はパッシブマトリックス駆動とも呼ばれる)に適用することも、当業者にとっては容易である。ここでは、液晶を間に挟んでソースライン、ゲートラインが対向して設けられることで、マトリックス駆動が可能にされる。」

「【図15】カラーフィルタ無パネルにおいて、本発明を適用して、緑(G)ビデオのリフレッシュレートを高くしたまま、赤(R)/青(B)ビデオのリフレッシュレートを低下させることができる、LCDモジュール、ビデオ・サブシステムを含むPCシステム全体の構成を示す図である。」

上記記載から、引用例には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(ア) 段落【0080】及び【図面の簡単な説明】【図15】より、
「カラーフィルタ無しのパネル(白黒パネル)を使用してカラーフィールド順次駆動を行ない、緑(G)ビデオのリフレッシュレートを高くしたまま、赤(R)/青(B)ビデオのリフレッシュレートを低下させることができる、LCDモジュール、ビデオ・サブシステムを含むPCシステム。」
との技術事項を読み取ることができる。

(イ) 段落【0080】、【0082】及び【0083】より、
「ビデオラムとビデオ・コントローラがPCシステム側に用意され、LCDコントローラ、ソース・ドライバ、ゲート・ドライバ、及び白黒用TFTアレイがLCDモジュールの主な構成要素である。」
との技術事項を読み取ることができる。

(ウ) 段落【0088】より、
「TFT (Thin Film Transistor)アレイ構造は、アクティブマトリックス駆動が可能である。」
との技術事項を読み取ることができる。

(エ) 段落【0081】より、
「ビデオラム(VRAM)は、緑(G)色ビデオ用、赤(R)色ビデオ用、及び青(B)色ビデオ用のビデオラム(VRAM)である。」
との技術事項を読み取ることができる。

(オ) 段落【0082】より、
「ビデオ・コントローラは、LCDモジュールに対して、同期制御信号用の出力チャネル222と、ビデオ・データ信号用の出力チャネルと、を有する。」
との技術事項を読み取ることができる。

(カ) 段落【0082】及び【0086】より、
「LCDコントローラは、ソース・ドライバ240とゲート・ドライバ250とを制御し、ソース・ドライバ240へは、ビデオ・コントローラ220からのビデオ信号をそのまま転送する。」
との技術事項を読み取ることができる。

(キ) 段落【0083】より、
「ソース・ドライバは、1つの画素を兼用してR/G/B用に利用するので、必要な出力数は1/3になる。」
との技術事項を読み取ることができる。

(ク) 段落【0083】より、
「ゲート・ドライバは、通常のドライバを使用でき、動作は通常通りのものであり、白黒用TFTアレイは、画素10を3つのサブ画素に分ける必要がなく、カラーフィルタも無いため、光の透過率が高い構造にすることができる。」
との技術事項を読み取ることができる。

(ケ) 段落【0084】より、
「ビデオ・コントローラ220の出力信号におけるリフレッシュの1サイクル分は、フレーム0?3の4フレームであり、色をフレーム単位で切り換えながら転送を行ない、各色のフレーム周波数は180Hzまで可能となる。」
との技術事項を読み取ることができる。

(コ) 段落【0085】より、
「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると(Gは2倍の60Hzとなり、フリッカは悪化しない)、1フレーム期間は1/(30×4)[秒]となり、このとき、最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行なうと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSになり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる。」
との技術事項を読み取ることができる。

上記(ア)?(コ)より、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「カラーフィルタ無しのパネル(白黒パネル)を使用してカラーフィールド順次駆動を行ない、緑(G)ビデオのリフレッシュレートを高くしたまま、赤(R)/青(B)ビデオのリフレッシュレートを低下させることができる、LCDモジュール、ビデオ・サブシステムを含むPCシステムであって、
ビデオラムとビデオ・コントローラがPCシステム側に用意され、LCDコントローラ、ソース・ドライバ、ゲート・ドライバ、及び白黒用TFTアレイがLCDモジュールの主な構成要素であり、
TFT (Thin Film Transistor)アレイ構造は、アクティブマトリックス駆動が可能であり、
ビデオラム(VRAM)は、緑(G)色ビデオ用、赤(R)色ビデオ用、及び青(B)色ビデオ用のビデオラム(VRAM)であり、
ビデオ・コントローラは、LCDモジュールに対して、同期制御信号用の出力チャネル222と、ビデオ・データ信号用の出力チャネルと、を有し、
LCDコントローラは、ソース・ドライバ240とゲート・ドライバ250とを制御し、ソース・ドライバ240へは、ビデオ・コントローラ220からのビデオ信号をそのまま転送し、
ソース・ドライバは、1つの画素を兼用してR/G/B用に利用するので、必要な出力数は1/3になり、
ゲート・ドライバは、通常のドライバを使用でき、動作は通常通りのものであり、
白黒用TFTアレイは、画素10を3つのサブ画素に分ける必要がなく、カラーフィルタも無いため、光の透過率が高い構造にすることができ、
ビデオ・コントローラ220の出力信号におけるリフレッシュの1サイクル分は、フレーム0?3の4フレームであり、色をフレーム単位で切り換えながら転送を行ない、各色のフレーム周波数は180Hzまで可能となり、
R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると(Gは2倍の60Hzとなり、フリッカは悪化しない)、1フレーム期間は1/(30×4)[秒]となり、このとき、最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行なうと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSになり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる、
LCDモジュール、ビデオ・サブシステムを含むPCシステム。」

イ 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平8-171084号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような液晶表示装置における液晶の温度に対する応答時間は、例えば図7に示すようになり、温度が低くなる程応答時間が長くすなわち応答速度が遅くなっている。したがって、周囲温度が低い環境で液晶表示装置を使用すると、表示すべき画像の動きに対して液晶の応答速度が遅くなり、周囲温度が高い場合に比較して表示性能が低下するという問題があった。特に、速い応答速度が要求される動画を表示する場合に画質の低下が著しい。この発明の目的は、周囲温度が低い環境で使用する場合であっても、液晶の応答速度を速くすることができる液晶表示装置を提供することである。」

ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平4-366888号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0002】
【従来の技術】例えば英国特許公報GB2172733A、ヨ-ロッパ特許公報0301715、およびヨ-ロッパ特許公報0261896に記載されているような色順次液晶表示装置が公知である。これらの構成では、表示をバックライトするための光源をスイッチオフした状態で、すなわち表示が暗状態にある状態で、その表示のための原色の1つの完全なフィ-ルドが液晶表示装置(LCD)に書込まれる。該当する色の光源が短い時間のあいだ付勢され、表示だ暗状態にあるあいだに光透過状態にセットされたそのLCDのピクセル要素を介して関連の色を表示させるようになされる。この光源が付勢される短い時間の終りに、表示が暗状態に保持されている状態で、すなわち表示をバックライトするための光源がスイッチオフの状態で、上記原色の第2のもののフィ-ルドが表示装置に書込まれる。第2の原色のランプが短い期間のあいだ付勢されて該当する色を表示する。ころプロセスが第3の原色に対しても繰返され、LCDを見ている人間の目が3つの順次表示される色を統合し、それによってカラ-画像情報のフィ-ルドとして感知される。
【0003】従って、1つのカラ-画像を与えるためには、全体の表示に対する画像情報がフレ-ム周期(一般に20ミリ秒)当り3回書込まれなければならず、書込み動作の間の時間的ギャップに、該当する色のランプが付勢される。
【0004】通常は、三原色が表示のためのカラ-画像を構成するために用いられ、そして各フレ-ム周期が3つの時間的セグメントに分割され、その時間的セグメントはそれぞれ各原色に割当てられ、各時間的セグメント内でそれぞれ書込みおよび照明のために利用可能な時間は通常3:1の比で割当てられる。従って、シ-ケンスをなして、フレ-ム周期の最初の4分の1は1つの色、通常は赤の情報を表示装置に書込むために割当てられる、フレ-ム周期の次の12分の1はその色(赤)の光で表示装置を照明するために用いられる。フレ-ム周期の次の4分の1と12分の1は他の2つの原色を通常は緑そして青の順に書込みそして表示するためにそれぞれ用いられる。」

上記記載より、次の事項が記載されているといえる。
「三原色が表示のためのカラ-画像を構成するために用いられ、そして各フレ-ム周期が3つの時間的セグメントに分割され、その時間的セグメントはそれぞれ各原色に割当てられ、各時間的セグメント内でそれぞれ書込みおよび照明のために利用可能な時間は通常3:1の比で割当てられ【0004】、表示をバックライトするための光源をスイッチオフした状態で、原色の1つのフィ-ルドが液晶表示装置(LCD)に書込まれてLCDのピクセル要素が光透過状態にセットされ、該当する色の光源が短い時間のあいだ付勢される、色順次液晶表示装置(【0002】)。」

ウ 本願の優先日前に頒布された刊行物である、沖田 雅也、フィールド・シーケンシャル・フルカラーLCD、月刊ディスプレイ、株式会社テクノタイムズ社、1998年07月01日、第4巻、第7号、p.11-16(以下、「周知例3」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「3.3高速液晶パネル
3色バックライト方式において課題となる高速液晶パネルは,従来に較べて桁違いに速い応答速度を要求される。3色バックライト方式において,赤フィールド,緑フィールド,青フィールドの3フィールドを合わて1フレームとする。ブリッカーを感じないフレーム周波数として60Hzを設定して以下の計算を行う。カラーフィルタ方式における応答速度の測定では,10%-90%の様に,完全に安定した状態での時間を定義していない。しかしながら,3色バックライト方式では,前色フィールドの残像が現色フィールドに残った状態でバックライトが点灯すると,色が濁ってしまう。従って,バックライトの消灯時間の間に,前色フィールドの残像が完全に消えている必要がある。色フィールド周波数は,フレーム周波数の3倍の180Hzであり,1色フィールド期間は約5.6ミリ秒となる。バックライトの点灯時間を色フィールド期間の半分とした場合,液晶パネルは2.8ミリ秒で完全に応答する必要がある。」(第13頁左欄第11-30行)

「3.4高速3色バックライト
3色バックライト方式において課題となるバックライトは,従来に較べて桁違いに速い応答速度を要求される。前述のように1色フィールド期間が5.6ミリ秒で,点灯時間が半分の2.8ミリ秒しかないため,発光の立ち上がりが速いことが要求される。さらに,残光時間に関しては,バックライト消灯後すぐに液晶に次色フィールドのデータの書き込みを開始するため,理想的には残光時間0.1ミリ秒以下が求められる。」(第13頁右欄第20-29行)

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明では、「PCシステム側」の「ビデオコントローラ220」は「色をフレーム単位で切り替えながら転送」を行ない、「LCDコントローラ」は、「ビデオ・コントローラ220からのビデオ信号」を「ソース・ドライバ」に「そのまま転送し」、「ソース・ドライバは、1つの画素を兼用してR/G/B用に利用するので、必要な出力数は1/3」なり、「カラーフィルタ無しのパネル(白黒のパネル)」、つまり「画素10を3つのサブ画素に分ける必要がなく、カラーフィルタも無いため、光の透過率が高い構造」の「白黒用TFT」を用いて、「アクティブマトリックス駆動」による「液晶への書き込み」と、「バックライトの発光」とにより、「カラーフィールド順次駆動を行」なっている。
つまり、引用発明では、「白黒用TFT」を用い、「色をフレーム単位で切り替えながら転送」された「ビデオ信号」で、「R/G/B用」に「兼用」される「1つの画素」に対し、「アクティブマトリックス駆動」によって「液晶への書き込み」をし、「バックライト」を「発光」させて「カラーフィールド順次駆動を行」なっている。
そして、引用例1の段落【0046】に記載されているとおり、「従来技術におけるカラー順次方式の液晶ディスプレイ」とは、「赤(R),緑(G),青(B)各色毎に順次標示を行い、少なくとも3色をもって一枚の絵を完結するカラー表示方法」(当審注:「標示」は「表示」の誤記である。)であって、各「単色」は、「フレーム周波数で点滅する」ものであることを踏まえれば、「R/G/B用」に「兼用」される「1つの画素」に対し、「アクティブマトリックス駆動」によって「液晶への書き込み」をし、「バックライト」を「発光」させて「カラーフィールド順次駆動を行」なっている引用発明において、「バックライト」は、赤(R),緑(G),青(B)の各色ごとの発光が可能である必要のあること、及び、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」(カラーフィールド順次駆動における、1フィールド期間に相当する。以下同じ。)に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることは自明なことであるといえる。
よって、引用発明における「バックライト」が、本願補正発明における「赤、緑、青の3色の光源」に相当するといえる。
また、引用発明における「フレーム単位で切り替えながら転送を行」なわれる、「赤(R)ビデオ用」,「」緑(G)ビデオ用」,「青(B)ビデオ用」の各ビデオ信号が、本願補正発明における「各色の表示デ-タ」に相当するといえる。
さらに、引用発明における「白黒用TFT」(1つの画素を兼用してR/G/B用に利用する)を用いて「アクティブマトリックス駆動」される「液晶」を構成要素とする「LCDモジュール」は、「カラーフィールド順次駆動を行」なうものであって、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることは明らかであるから、本願補正発明における「赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色の表示デ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置」に相当するといえる。

イ 上記「ア」で述べたとおり、引用発明における「アクティブマトリックス駆動」の「LCDモジュール」は、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に「バックライト」が、対応する各色で発光(点滅)し、色毎、つまり、「赤(R)ビデオ用」,「緑(G)ビデオ用」,「青(B)ビデオ用」の各ビデオ信号毎の表示がなされていることは自明なことである。よって、引用発明における「1フレーム期間」が、本願補正発明における「デ-タ表示期間」に相当するといえる。

ウ 引用発明において、「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると、(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)、1フレームは1/(30×4)[秒]とな」るから、上記「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する1フレームが、全て「1/(30×4)[秒]」であることが、本願補正発明における「前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくする」ことに相当する。

エ 上記「ア」で述べたとおり、引用発明における「LCDモジュール」は、「カラーフィールド順次駆動を行」なうものであって、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることが明らかである。よって、
(ア)引用発明における「LCDモジュール」が、上記「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])の間に、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する色で「バックライト」が発光(点滅)することと、本願補正発明における「前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間の前半に表示素子が動作温度範囲を拡大しても応答する時間を確保するために前記3色の光源の全てを消灯し、前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯」することとは、「前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間内とし、前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯」する点で共通する。
(イ)引用発明における「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると、(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)、1フレームは1/(30×4)[秒]とな」ることは、「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なうことを意味し、赤(R)に対応する「1フレーム期間」から、次の赤(R)に対応する「1フレーム期間」までの間に、「緑(G)に対応する「1フレーム期間」「G」を2回設けることになるから、本願補正発明における「前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、動作温度範囲を拡大してもユ-ザがフリッカーを感じ難くする」こととは、「前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、ユ-ザがフリッカーを感じ難くする」点で共通する。

以上から、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色の表示デ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくすると共に、前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間内とし、前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯し、
前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、ユ-ザがフリッカーを感じ難くすることを特徴とするカラー表示装置。」

(相違点1)
本願補正発明では、「動作温度範囲を拡大すると前記表示素子の応答が遅くなる特性を持」っているのに対し、引用発明では、「液晶」を用い、「アクティブマトリックス駆動」により「液晶への書き込みを行なう」こと、及び「液晶」に「応答時間」が存在することが示されているものの、「液晶への書き込み」に対する「液晶」の「応答」が、動作温度範囲を拡大すると遅くなるか否かは示されていない点。

(相違点2)
本願補正発明では、「前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間の前半に表示素子が動作温度範囲を拡大しても応答する時間を確保するために前記3色の光源の全てを消灯し、前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を前記表示データの色に合わせて点灯し」ているのに対し、引用発明では、「LCDモジュール」が、「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])の間に、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する色で「バックライト」が発光(点滅)していることは明らかであって、しかも「1フレーム期間は1/(30×4)[秒]となり、このとき最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行うと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSとなり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる。」ことは示されているものの、「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])のどの範囲でバックライト発光(点滅)しているかは、特定されていない点。

(相違点3)
本願補正発明では、「動作温度範囲を拡大しても」ユ-ザがフリッカーを感じ難くするために、前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設けているのに対し、引用発明では、「(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)」ようにするため、「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なっていることから、赤(R)に対応する「1フレーム期間」から、次の赤(R)に対応する「1フレーム期間」までの間に、「緑(G)に対応する「1フレーム期間」「G」を2回設けていることは明らかであるものの、「フリッカ」が「悪化しない」よう「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なう構成を採用する根拠として、「動作温度範囲を拡大」することは考慮されていない点。

(4) 判断
そこで、上記相違点について検討すると、
ア 相違点1について
液晶表示装置における液晶の温度に対する応答時間が、温度が低くなる程に遅くなることは、周知の事項である(例えば、周知例1、上記「(2)イ」参照)。
そして、引用発明の「LCDモジュール」は液晶表示装置であるから、引用発明における「LCDモジュール」の「液晶」が、本願補正発明と同様に、動作温度範囲を拡大すると、「応答時間」が遅くなる特性をもつと認識すること、つまり、当業者が上記相違点1に係る本願補正発明の認識を持つことは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
「色順次液晶表示装置において、三原色のうち各原色の光源を、時間的セグメントの前部には、LCDのピクセル要素が光透過状態にセットされるまで光源をスイッチオフした状態とし、時間的セグメントの後部に、該当する色の光源を短い時間のあいだ付勢する技術。」は周知技術(例えば、周知例2、周知例3,上記「(2)ウ」、「(2)エ」参照、。)である。
そして、引用発明には、「最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行なうと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSになり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる」こと、つまり、データ転送とバックライトの発光の間に、各フレームにおいて、液晶の応答時間を設ける必要のあることが示唆されているから、引用発明に、カラーフィールド順次駆動を行う液晶表示装置に係る上記周知技術を適用し、引用発明において「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])の前部で「バックライト」をスイッチオフ(消灯)し、「1フレーム期間」の後部で「バックライト発光(点滅)」させるようにすること、及び、これにより、「バックライト発光(点滅)」の行われる前の「1フレーム期間」の前部でデータ転送と、動作温度範囲の拡大に伴う液晶の応答時間の確保を行なうようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、「バックライト」の点灯時間は、使用する液晶の特性や、表示に必要な光量などを考慮して、当業者が適宜設定すればよい事項であるから、引用発明に上記周知技術を適用する際に、前記「前部」、「後部」を、それぞれ「前半」、「後半」として、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
引用例の段落【0050】に記載されているとおり、カラーフィールド順次方式において、フリッカー(ちらつき)は、ユーザがフリッカーを最も感じやすい緑(G)の周波数に支配されるものである。そこで、引用発明では、「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なう構成を採用しているのであるから、引用発明において動作温度範囲の拡大による液晶の応答の遅れを考慮し、各色の「1フレーム期間」を長くしたとしても、ユーザがフリッカーを最も感じやすい「G」(緑)が、「R」(赤)、「B」(青)より高頻度でリフレッシュされることに変わりはなく、ユーザーは、「R,G,Bの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なった場合に比し、フリッカーを感じ難くなっていることは、当業者が容易に予測し得ることである。
よって、引用発明において動作温度範囲の拡大に伴う「液晶」の応答の遅れを考慮しつつ、ユ-ザがフリッカーを感じ難くし、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は、引用発明、引用例に記載された技術、周知の事項及び周知技術から当業者が予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例に記載された技術、周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の記載により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5) 本件補正についてのむすび
以上のとおり、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項を目的とするものではなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に、請求項1に係る本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであったとしても、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、仮に、上記「2 補正の適否」の「ウ」に係る本件補正が明瞭でない記載の釈明を目的としたものであるとしても、「ア」、「イ」、「エ」及び「オ」に係る本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるから、上記判断は変わらない。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年11月25日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)」に記載したとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。
「【請求項1】
赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくすると共に、前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分として前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を点灯し、
前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、動作温度範囲を拡大してもユ-ザがフリッカーを感じ難くすることを特徴とするカラー表示装置。」

2 分割要件
本願は、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)であるとされているから、本願が適法に分割されたものであるか否かを検討する。

(1) 本願特許請求の範囲の記載
本願の請求項1の記載は、上記「1 本願発明」に記載したとおりものである。
上記記載によれば、請求項1記載の「カラー表示装置」は、「赤、緑、青の3色の光源の点滅」について「前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分」とすること含むものである。

(2) 原出願の記載事項
原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原出願の当初明細書等」という。)には「光源」の「点滅」、「光源」の「点灯」及び「データ」の「表示」に関して、以下の記載がある(下線は、当審で付与したものである。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記赤の光源が点灯してから次に前記赤の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源が2回点滅することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項2】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記青の光源が点灯してから次に前記青の光源が点滅する間に、前記緑の光源が2回点滅することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項3】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記赤、緑、青の光源の点滅を赤、緑、青、緑の順に行い、この赤、緑、青、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源の点滅を制御することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項4】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記赤、緑、青の光源の点滅を青、緑、赤、緑の順に行い、この青、緑、赤、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源の点滅を制御することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項5】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記赤、緑、青の光源の点滅を緑、青、緑、赤の順に行い、この緑、青、緑、赤の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源の点滅を制御することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項6】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記赤、緑、青の光源の点滅を緑、赤、緑、青の順に行い、この緑、赤、緑、青の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源の点滅を制御することを特徴とするカラー表示装置。
【請求項7】前記表示素子が、反射型又は透過型のモノクロ表示素子である、請求項1?6のいずれか一項のカラー表示装置。
【請求項8】前記カラー表示装置が、フィールドシーケンシャルカラー方式の表示装置である、請求項1?6のいずれか一項のカラー表示装置。
【請求項9】赤、緑、青の3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行うカラー表示方法において、
前記赤の光源が点灯してから次に赤の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源を2回点滅させることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項10】赤、緑、青の3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、
前記青の光源の点灯してから次に青の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源を2回点滅させることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項11】赤、緑、青の3色の光源を次々に点滅させるのに同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、
前記赤、緑、青の光源を赤、緑、青、緑の順に点滅させ、この赤、緑、青、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源を点滅をさせることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項12】赤、緑、青の3色の光源を次々に点滅させるのに同期して、各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、
前記赤、緑、青の光源を青、緑、赤、緑の順に点滅させ、この青、緑、赤、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源を点滅をさせることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項13】赤、緑、青の3色の光源を次々に点滅させるのに同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、
前記赤、緑、青の光源を緑、青、緑、赤の順に点滅させ、この緑、青、緑、赤の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源を点滅をさせることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項14】赤、緑、青の3色の光源を次々に点滅させるのに同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、
前記赤、緑、青の光源を緑、赤、緑、青の順に点滅させ、この緑、赤、緑、青の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源を点滅をさせることを特徴とするカラー表示方法。
【請求項15】前記カラー表示方法がフィールドシーケンシャル方式の表示方法からなる、請求項9?14のいずれか一項のカラー表示方法。
【請求項16】赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行う方法において、
赤、緑、青の3色の光源の点滅の1周期に、緑の光源を複数回点滅させることを特徴とするカラー表示方法。」

イ 「背景技術
カラーフィルタ無しでカラー表示を行う代表的な方法としてフィールドシーケンシャル方式のカラー表示方法が知られている。このフィールドシーケンシャル方式は、赤、緑、青の3色の光源と、モノクロ表示素子とを備え、3色の光源の点滅を高速に切り替えながら、これに同期して各色のデータをモノクロ表示素子で表示することによりカラー表示を行うものである。モノクロ表示素子としては、反射型及び透過型のいずれであってもよい。
この種のカラーフィルタ無しのカラー表示装置は、液晶ディスプレイに適用され、また、他にも、例えばプロジェクタにおいては単板で3板式と同等の解像度を達成でき、光学系も単純になるなどの利点により製品化されている。また、目に直接装着するようなヘッドマウントディスプレイにおいても、小型で高解像度のカラー表示が可能なことからフィールドシーケンシャル方式を用いたカラー表示装置が発表されている。
従来のフィールドシーケンシャル方式を用いたカラー表示方法にあっては、第2図に示すように、赤、緑、青の光源を一回ずつ順に点滅させて、例えば赤→緑→青を1周期として、これを繰り返すようになっていた。
フィールドシーケンシャル方式のようにカラーフィルタ無しのカラー表示では、非常に高速に切り替え可能な表示素子が必要となるが、素子の解像度を上げたり、動作温度範囲を広げようとすると表示素子の応答が遅くなる傾向にある。このため、表示素子の側からは、その切り替え周期を長くしたいという要請がある。
フィールドシーケンシャル方式を用いたカラー表示装置において、ユーザにフリッカーを感じさせないようにするには、赤、緑、青の各光源の点滅周期を1/60秒よりも短くする必要があると言われている。すなわち、表示素子としては、その表示切り替えを1/180秒よりも速く行うことが必要となるが、このことは、先に説明した切り替え周期を長くしたいという要請に反することになる。
そこで、本発明の目的は、表示素子の表示切り替え周期を長くしてもフリッカーの問題の発生を回避することのできるカラー表示方法及び装置を提供することにある。」

ウ 「発明の開示
上記の課題は、本発明の一つの局面によれば、赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、前記赤の光源が点灯してから次に前記赤の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源が2回点滅することを特徴とするカラー表示装置を提供することにより達成される。
本発明の他の局面によれば、赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、前記青の光源が点灯してから次に前記青の光源が点滅する間に、前記緑の光源が2回点滅することを特徴とする。
また、本発明の別の局面によれば、赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、前記赤、緑、青の光源の点滅を赤、緑、青、緑の順に行い、この赤、緑、青、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源の点滅を制御することを特徴とする。
赤、緑、青の光源の点滅の1周期を、青、緑、赤、緑の順で構成してもよく、或いは、緑、青、緑、赤の順で構成してもよく、或いは、緑、赤、緑、青の順で構成してもよい。
また、上記の課題は、本発明の更に別の局面によれば、赤、緑、青の3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行うカラー表示方法において、前記赤の光源が点灯してから次に赤の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源を2回以上点滅させることを特徴とするカラー表示方法を提供することにより達成される。
本発明の別の局面によれば、赤、緑、青の3色の光源の点滅に同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、前記青の光源の点灯してから次に青の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源を2回以上点滅させることを特徴とする。
本発明の他の局面によれば、赤、緑、青の3色の光源を次々に点滅させるのに同期して各色のデータを表示素子により表示させることによりカラー表示を行う方法において、前記赤、緑、青の光源を赤、緑、青、緑の順に点滅させ、この赤、緑、青、緑の点滅を1周期として、この周期を繰り返すように、前記赤、緑、青の光源を点滅をさせることを特徴とする。
本発明に従うカラー表示方法にあっては、赤、緑、青の光源の点滅の1周期を、青、緑、赤、緑の順で構成してもよく、或いは、緑、青、緑、赤の順で構成してもよく、或いは、緑、赤、緑、青の順で構成してもよい。」

エ 「発明を実施するための最良の形態
第1図は、本発明の好ましい実施の形態について、表示素子の光透過率と赤、緑、青の光源の点滅の時間的な関係を示したものである。
この実施の形態は、本発明をフィールドシーケンシャル方式のカラー表示に適用したものであり、具体的な製品としては、プロジェクタの液晶ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどがある。
フィールドシーケンシャル方式のカラー表示にあっては、既知のように、赤、青、緑の3色の光源と、各光源の点滅に同期して切り替え表示可能なモノクロ表示素子とを含んでいる。
本発明の好ましい実施の形態では、従来の赤、緑、青の光源が1周期にそれぞれ1回ずつ点滅されていたのに対して、緑を1周期内に例えば2回ずつ点滅させて、例えば、赤→緑→青→緑を1周期とし、この周期を反復して、第1図に示す赤→緑→青→緑→赤→緑→青...のように各光源の点滅が行われる。つまり、この実施の形態では、その結果、緑の点滅周期は、赤および青の点滅周期の1/2倍になる。
この好ましい実施の形態に関し、本発明の発明者は、ユーザがフリッカーを感じる周波数は赤、緑、青の色によって大きく異なる点に着目したものである。すなわち、赤および青については、これらの色の各光源の点滅周期が約30ヘルツ以上で、ユーザはフリッカーを感じなくなるのに対し、緑については、約60ヘルツ以上でないと、ユーザはフリッカーを感じてしまう。つまり、人間は、赤及び青に比べて、緑の点滅に対してフリッカーを敏感に感じることが知られており、緑については、赤及び青の約2倍の周波数までフリッカーを感じてしまう。
したがって、本発明の実施の形態では、赤→緑→青→緑又は青→緑→赤→緑で1周期であるため、この1周期を、例えば1/30秒に設定すれば、赤および青の点滅周波数が30ヘルツとなり、緑の点滅周波数が60ヘルツとなる。この数値は、先に説明したように、各色とも人間がフリッカーを感じない値である。これに対して、モノクロ表示素子の表示切り替え周期は1/120秒で足りることになる。
つまり、本発明の好ましい実施の形態によれば、従来フリッカーを感じなくなる限界とされた1/180秒よりも、モノクロ表示素子の表示切り替え周期を長くすることができる。したがって、表示素子の高解像度化や動作温度範囲を拡大してもフリッカーを効果的に防止することができる他に、この表示素子の切り替え周期が長くなることによって消費電力を抑えることも可能となる。」

オ 「【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の表示素子の光透過率と、赤、緑、青の光源の点滅の時間的な関係を示す図である。
第2図は従来の表示索子の光透過率と、赤、緑、青の光源の点滅の時間的な関係を示す図である。」

カ 第1図には、横軸を時間として、光透過率と、赤、緑、青光源の点灯及び消灯の時間的な関係が示されている

(3) 分割の適否の判断
上記「(2)ア?カ」の記載によれば、原出願の当初明細書等には、「表示素子の表示切り替え周期を長くしてもフリッカーの問題の発生を回避することのできるカラー表示方法及び装置を提供する」ために、「前記赤の光源が点灯してから次に前記赤の光源が点灯するまでの間に、前記緑の光源が2回点滅する」ことにより、「モノクロ表示素子の表示切り替え周期を長くすることができる」ことは記載されているものの「3色の光源の1回の点灯時間をデータ表示期間の半分として」は記載されていない。原出願の当初明細書等には、「データ表示期間」との用語は用いられていないが、仮に「モノクロ表示素子の表示切り替え周期」を「データ表示期間」としても、データ表示期間において光源を点灯することは読み取ることができるものの、データ表示期間を同じ時間長さを有する2つの期間に分割して、「データ表示期間の半分」の長さである「後半」に光源を点灯することは読み取ることができない。

また、第1図には、横軸を時間として、光透過率と、赤、緑、青光源の点灯及び消灯の時間的な関係が示されているが、横軸に時間の目盛りが付されているわけではないから、第1図は、発明の詳細な説明における理解を助けるための説明図に過ぎないものと認められる。従って、第1図は、点灯時間及び消灯時間を正確に示したものとは認められない。さらに、第1図には「データ表示期間」が記載されておらず(なお、原出願の願書に最初に添付した明細書にも「データ表示期間」との用語は用いられていない。)、「データ表示期間」と赤、緑、青光源の点灯時間及び消灯時間との関係が不明であるが、仮に、一の光源(例えば、赤光源)の点灯終了から、他の光源(例えば、緑光源)の点灯終了までを「データ表示期間」としても、データ表示期間の後部の期間において光源を点灯することは読み取ることができるものの、データ表示期間を同じ時間長さを有する2つの期間に分割して、「データ表示期間の半分」の長さである「後半」に光源を点灯することは読み取ることができない。

そうすると、原出願の当初明細書等には、本願発明に記載された「前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分」とすることが記載されているとは認められない。

したがって、本願発明は、原出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本願は特許法第44条第1項により適法に分割出願されたものではない。

3 本願出願日
以上のとおり、本願は適法に分割されたものではないから、特許法第44条第2項本文の適用はなく、本願の出願日は現実の出願日である平成26年3月12日である。
また、本願の出願日は、優先権主張の基礎となる出願とされている特願2000-170085号(出願日:平成12年6月7日)の出願日から1年を超えているから、優先権主張を認めることはできない。

4 引用例、周知例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及び周知例、その記載事項は、上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明では、「PCシステム側」の「ビデオコントローラ220」は「色をフレーム単位で切り替えながら転送」を行ない、「LCDコントローラ」は、「ビデオ・コントローラ220からのビデオ信号」を「ソース・ドライバ」に「そのまま転送し」、「ソース・ドライバは、1つの画素を兼用してR/G/B用に利用するので、必要な出力数は1/3」なり、「カラーフィルタ無しのパネル(白黒のパネル)」、つまり「画素10を3つのサブ画素に分ける必要がなく、カラーフィルタも無いため、光の透過率が高い構造」の「白黒用TFT」を用いて、「アクティブマトリックス駆動」による「液晶への書き込み」と、「バックライトの発光」とにより、「カラーフィールド順次駆動を行」なっている。
つまり、引用発明では、「白黒用TFT」を用い、「色をフレーム単位で切り替えながら転送」された「ビデオ信号」で、「R/G/B用」に「兼用」される「1つの画素」に対し、「アクティブマトリックス駆動」によって「液晶への書き込み」をし、「バックライト」を「発光」させて「カラーフィールド順次駆動を行」なっている。
そして、引用例1の段落【0046】に記載されているとおり、「従来技術におけるカラー順次方式の液晶ディスプレイ」とは、「赤(R),緑(G),青(B)各色毎に順次標示を行い、少なくとも3色をもって一枚の絵を完結するカラー表示方法」(当審注:「標示」は「表示」の誤記である。)であって、各「単色」は、「フレーム周波数で点滅する」ものであることを踏まえれば、「R/G/B用」に「兼用」される「1つの画素」に対し、「アクティブマトリックス駆動」によって「液晶への書き込み」をし、「バックライト」を「発光」させて「カラーフィールド順次駆動を行」なっている引用発明において、「バックライト」は、赤(R),緑(G),青(B)の各色ごとの発光が可能である必要のあること、及び、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」(カラーフィールド順次駆動における、1フィールド期間に相当する。以下同じ。)に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることは自明なことであるといえる。
よって、引用発明における「バックライト」が、本願発明における「赤、緑、青の3色の光源」に相当するといえる。
また、引用発明における「フレーム単位で切り替えながら転送を行」なわれる、「赤(R)ビデオ用」,「緑(G)ビデオ用」,「青(B)ビデオ用」の各ビデオ信号が、本願発明における「各色の表示デ-タ」に相当するといえる。
さらに、引用発明における「白黒用TFT」(1つの画素を兼用してR/G/B用に利用する)を用いて「アクティブマトリックス駆動」される「液晶」を構成要素とする「LCDモジュール」は、「カラーフィールド順次駆動を行」なうものであって、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることは明らかであるから、本願発明における「赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色の表示デ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置」に相当するといえる。

イ 上記「ア」で述べたとおり、引用発明における「アクティブマトリックス駆動」の「LCDモジュール」は、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に「バックライト」が、対応する各色で発光(点滅)し、色毎、つまり、「赤(R)ビデオ用」,「緑(G)ビデオ用」,「青(B)ビデオ用」の各ビデオ信号毎の表示がなされていることは自明なことである。よって、引用発明における「1フレーム期間」が、本願発明における「デ-タ表示期間」に相当するといえる。

ウ 引用発明において、「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると、(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)、1フレームは1/(30×4)[秒]とな」るから、上記「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する1フレームが、全て「1/(30×4)[秒]」であることが、本願発明における「前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくする」ことに相当する。

エ 上記「ア」で述べたとおり、引用発明における「LCDモジュール」は、「カラーフィールド順次駆動を行」なうものであって、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する「1フレーム期間」に、「バックライト」が対応する各色で発光(点滅)し、色毎の表示がなされていることが明らかである。よって、
(ア)引用発明における「LCDモジュール」が、上記「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])の間に、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する色で「バックライト」が発光(点滅)することと、本願発明における「前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分として前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を点灯」することとは、「前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間内とし、前記3色の光源を点灯」する点で共通する。
(イ)引用発明における「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合、R,Bのリフレッシュを30Hzに設定すると、(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)、1フレームは1/(30×4)[秒]とな」ることは、「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なうことを意味し、赤(R)に対応する「1フレーム期間」から、次の赤(R)に対応する「1フレーム期間」までの間に、「緑(G)に対応する「1フレーム期間」「G」を2回設けることになるから、本願発明における「前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、動作温度範囲を拡大してもユ-ザがフリッカーを感じ難くする」こととは、「前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、ユ-ザがフリッカーを感じ難くする」点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「赤、緑、青の3色の光源の点滅と、これら3色の光源の点滅に同期して各色の表示デ-タを表示する表示素子との組み合わせによりカラー表示を行うカラー表示装置において、
前記各色の1回のデ-タ表示期間を全て等しくすると共に、前記3色の光源の1回の点灯時間を、前記データ表示期間内とし、前記3色の光源を点灯し、
前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設け、ユ-ザがフリッカーを感じ難くすることを特徴とするカラー表示装置。」

(相違点1)
本願発明では、「前記3色の光源の1回の点灯時間を前記データ表示期間の半分として前記データ表示期間の後半に前記3色の光源を点灯し」ているのに対し、引用発明では、「LCDモジュール」が、「R,G,B,Gの順でリフレッシュを行なう場合」の各色に対応する「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])の間に、赤(R),緑(G),青(B)の各色に対応する色で「バックライト」が発光(点滅)していることは明らかであって、しかも「1フレーム期間は1/(30×4)[秒]となり、このとき最大転送速度(180Hzの場合の転送速度)でデータ転送と液晶への書き込みを行うと、各フレームの垂直ブランキング期間は、1/(30×4)-1/180[秒]、約2.8mSとなり、この期間を液晶の応答時間やバックライトの発光のための余裕時間として利用できる。」ことは示されているものの、「1フレーム期間」(すなわち「1/(30×4)[秒])のどの範囲でバックライト発光(点滅)しているかは、特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では、「動作温度範囲を拡大しても」ユ-ザがフリッカーを感じ難くするために、前記赤のデ-タ表示期間から次の前記赤のデ-タ表示期間までの間に、前記緑のデ-タ表示期間を2回設けているのに対し、引用発明では、「(Gは2倍の60Hzになり、フリッカは悪化しない)」ようにするため、「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なっていることから、赤(R)に対応する「1フレーム期間」から、次の赤(R)に対応する「1フレーム期間」までの間に、「緑(G)に対応する「1フレーム期間」「G」を2回設けていることは明らかであるものの、「フリッカ」が「悪化しない」よう「R,G,B,Gの順」で「LCDモジュール」が「カラーフィールド順次駆動を行」なう構成を採用する根拠として、「動作温度範囲を拡大」することは考慮されていない点。

6 判断
そこで、上記相違点について検討すると、
(1) 相違点1について
「色順次液晶表示装置において、三原色のうち各原色の光源を、時間的セグメントの前部には、LCDのピクセル要素が光透過状態にセットされるまで光源をスイッチオフした状態とし、時間的セグメントの後部に、該当する色の光源を短い時間のあいだ付勢する技術。」は周知技術(例えば、周知例2、周知例3,上記「第2 [理由]2(2)ウ」、「第2 [理由]2(2)エ」参照。)である。
ここで、引用発明と周知技術とは、液晶表示装置においてカラーフィールド順次駆動を行う技術である点で共通するから、引用発明に上記周知技術を適用し、引用発明において、「1フレーム期間」の前部で「バックライト」を消灯し、「1フレーム期間」の後部で「バックライト」を点灯することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「バックライト」の点灯時間は、使用する液晶の特性や、表示に必要な光量などを考慮して、当業者が適宜設定すればよい事項であるから、引用発明に上記周知技術を適用する際に、「バックライト」の1回の点灯時間を「1フレーム期間」の半分とし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2) 相違点2について
本願発明と引用発明との相違点2は、本願補正発明と引用発明との相違点3と同一であるから、上記相違点2については、上記「第2 [理由]2(4) (相違点3)について」で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用発明、引用例に記載された技術、周知の事項及び周知技術から当業者が予測できたものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例に記載された技術、周知の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の記載により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-15 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-03 
出願番号 特願2014-49512(P2014-49512)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 572- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 健二  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 カラー表示装置及び方法  
代理人 神津 堯子  
代理人 平井 正司  

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