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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1321976 |
審判番号 | 不服2016-3082 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-29 |
確定日 | 2016-12-14 |
事件の表示 | 特願2014-551192「両面プリント回路基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔2013年 7月11日国際公開、WO2013/103265、平成27年 3月 2日国内公表、特表2015-506585、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年1月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年1月4日、韓国、2013年1月4日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年10月19日付け(発送日:同年10月28日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成28年2月29日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。 第2 平成28年2月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 (1) 請求項1について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「絶縁層10の上面に回路を構成する導電性の第1回路パターン20を形成する段階と、 前記絶縁層10の下面に回路を構成する導電性の第2回路パターン30を形成する段階と、 前記絶縁層10を上下方向に貫通する直径0.08?1mmの貫通孔40を形成する段階と、 前記第2回路パターン30上に非導電性の保護フィルム60をラミネートする段階と、 前記非導電性の保護フィルム60がラミネートされて一面が閉塞されている前記絶縁層10の前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階と、 前記非導電性の保護フィルム60を剥離する段階と、を含む、両面プリント回路基板の製造方法。」(下線は、審判請求人が付与。以下、同様。) とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。 (2) 請求項2について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項2を、 「絶縁層10の上面に回路を構成する導電性の第1回路パターン20を形成する段階と、 前記絶縁層10の下面に回路を構成する導電性の第2回路パターン30を形成する段階と、 前記導電性の第2回路パターン30上に非導電性の第1保護フィルム61をラミネートし、直径0.08?1mmの貫通孔40を形成する段階と、 前記導電性の第1回路パターン20上に非導電性の第2保護フィルム62をラミネートする段階と、 前記第2保護フィルムがラミネートされて一面が閉塞されている前記絶縁層10の前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階と、 前記第1保護フィルム61および前記第2保護フィルム62を剥離する段階と、を含む、両面プリント回路基板の製造方法。」 とする補正(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。 (3) 明細書について 本件補正は、明細書の段落【0010】 、【0011】、【0024】、【0026】、【0051】、【0052】、【0054】、【0055】、【0057】、【0060】、【0063】?【0066】、【0070】、【0072】、【0074】、【0076】、【0078】?【0080】、【0082】、【0086】及び【0087】を、平成28年2月29日付けの手続補正により補正された明細書の同段落のとおりとする補正(以下「補正事項3」という。)を含んでいる。 2 補正の適否 (1)補正事項1について 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「貫通孔40」について、「直径0.08?1mmの」との限定を付加し、 「前記貫通孔40の内周面に、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを印刷して導電性物質50を形成する段階」とあったものを、「前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階」に限定するものであって、 補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-123320号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「【0011】 上記課題を解決するために、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、少なくとも2つ以上の層の回路パターン及び回路パターン間を接続するスルホール及び/又はバイアホールを持つ配線板の製造方法において、内層及び/又は外層に回路パターンが形成されている基板の両面全体にフィルムを積層する工程と、フィルムを積層した基板に対し、スルホール及び/又はバイアホールを形成するための貫通穴であるスルホール/バイアホール穴を開ける工程と、樹脂ペーストをスルホール/バイアホール穴に充填し樹脂ペーストを硬化させる工程と、フィルムを剥離する工程と、それに続く後工程とからなることを特徴としている。 【0012】 これによって、基板表面を樹脂ペーストで汚染することなくスルホール/バイアホール穴に樹脂ペーストを充填することができる。つまり、基板に積層したフィルムによって、樹脂ペーストが基板を汚染するのを防止し、スルホール/バイアホール穴に樹脂ペーストを充填した後は基板に積層したフィルムを除去するだけでよい。ここで、フィルムは、合成樹脂からなるフィルムを使用することができる。また、樹脂ペーストは、導電性を有するものを使用することができる。」 (イ) 「【0026】 <実施形態1> 図1は、本実施形態1に係るスルホール/バイアホール穴に導電性を有する樹脂ペーストを充填した基板を作製する基本的な工程を示している。 【0027】 まず、合成樹脂製の支持体1に従来法に従って外層パターン2を形成して基板100とする(工程a)。 【0028】 次に、支持体1に外層パターン2が形成された基板100の両面にフィルム3を積層する(工程b)。フィルム3としては、厚さ10μmの弱い粘着性を有する粘着剤が付着されたポリエステルフィルムを例示することができる。ただし、フィルム3の材質は、後工程のスルホール/バイアホール穴開け加工適性があり、加工時に剥離しにくい材料であれば、特に制限は無く、ポリエチレンやサラン、その他の樹脂フィルムを使用することができる。なお、粘着性を有する自着性フィルムを使用してもよく、接着剤を用いてフィルムを積層してもよい。 【0029】 次に、両面にフィルム3を積層した基板101にドリルやレーザー等で、スルホール/バイアホール穴4を開け、基板102とする(工程c)。 【0030】 次に、基板102表面に樹脂ペースト5を流し、スキージ6を使用してスキージングして、スルホール/バイアホール穴4内に樹脂ペースト5を充填する(工程d)。 【0031】 図1(工程d)では、スキージ6を使って樹脂ペースト5の充填を行っているが、ロール等の他の道具を使用してもよい。また、ここでは樹脂ペースト5の充填を片面から行うように示しているが、両面から行ってもよい。フィルム3は後に剥離されるので、このスキージングの際に基板102表面に若干量の樹脂ペースト5が残ったり、樹脂ペースト5によって薄い膜が形成されていたりしていてもかまわない。 【0032】 樹脂ペースト5の乾燥及び予備的な硬化を行った後、フィルム3を剥離し、その後、樹脂ペースト5を本硬化し、スルホール/バイアホール穴4に樹脂ペースト5が充填された基板103となる(工程e)。なお、フィルム3が、樹脂ペースト5の本硬化の際に熱的に耐え得る場合は、本硬化後にフィルムを剥がしてもよい。」 (ウ) 前記「(イ)」の記載及び図1の記載に照らすと、支持体1の上面に外層パターン2(以下「上面の外層パターン2」という。)が形成されるとともに、下面に外層パターン2(以下「下面の外層パターン2」という。)が形成されたものが看取される。 そうすると、引用文献1には、補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、多層プリント配線板の製造方法に関して、実施形態1として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「支持体1の上面に回路パターンを構成する上面の外層パターン2を形成し、 前記支持体1の下面に回路パターンを構成する下面の外層パターン2を形成する工程aと、 前記下面の外層パターン2上にポリエステルフィルム3を積層する工程bと、 次に、前記支持体1を上下方向に貫通するスルーホール/バイアホール穴4を形成する工程cと、 前記ポリエステルフィルム3が積層されている前記支持体1のスルーホール/バイアホール穴4に、スキージ6を利用してスキージングにより、導電性を有する樹脂ペースト5を充填する工程dと、前記スルーホール/バイアホール穴4に乾燥及び予備的な硬化を行った樹脂ペースト5を形成し、 前記ポリエステルフィルム3を剥離すること、を含む、多層プリント配線板の製造方法。」 イ 対比 補正発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「支持体1」は、補正発明1の「絶縁層10」に相当する。 以下同様に、「回路パターン」は、「回路」に、 「上面の外層パターン2」は、「導電性の第1回路パターン20」に、 「下面の外層パターン2」は、「導電性の第2回路パターン30」に、 「スルーホール/バイアホール穴4」は、「貫通孔40」に、 「ポリエステルフィルム3」は非導電性であるから、「非導電性の保護フィルム60」に、 「積層する」ことは、「ラミネートする」ことに、 「導電性を有する樹脂ペースト5」は、「導電性ペースト」に、 「充填」することは、「供給」することに、 「乾燥及び予備的な硬化を行った樹脂ペースト5」は、「導電性物質50」に、それぞれ相当する。 引用発明の「多層プリント配線板」は、上面と下面とに外層パターン2が形成されているから、補正発明1の「両面プリント回路基板」に相当する。 引用発明において各「工程」は、製造方法における事項であるから、「段階」ということができる。同様に、引用発明の各「形成」することは「形成する段階」と、「剥離」することは「剥離する段階」ということができる。 補正発明1では、「前記絶縁層10を上下方向に貫通する直径0.08?1mmの貫通孔40を形成する段階」と、「前記第2回路パターン30上に非導電性の保護フィルム60をラミネートする段階」との前後関係は、直接的には特定されていないから、引用発明の「前記下面の外層パターン2上にポリエステルフィルム3を積層する工程bと、次に、前記支持体1を上下方向に貫通するスルーホール/バイアホール穴4を形成する工程c」と、補正発明1の「前記絶縁層10を上下方向に貫通する直径0.08?1mmの貫通孔40を形成する段階と、前記第2回路パターン30上に非導電性の保護フィルム60をラミネートする段階」とは、「前記絶縁層を上下方向に貫通する貫通孔を形成する段階と、前記第2回路パターン上に非導電性の保護フィルムをラミネートする段階」という点において一致する。 以上のことから、補正発明1と引用発明とは次の点で一致する。 「絶縁層の上面に回路を構成する導電性の第1回路パターンを形成する段階と、 前記絶縁層の下面に回路を構成する導電性の第2回路パターンを形成する段階と、 前記絶縁層を上下方向に貫通する貫通孔を形成する段階と、 前記第2回路パターン上に非導電性の保護フィルムをラミネートする段階と、 前記非導電性の保護フィルムがラミネートされている前記絶縁層の前記貫通孔に、導電性ペーストを供給して前記貫通孔に導電性物質を形成する段階と、 前記非導電性の保護フィルムを剥離する段階と、を含む、両面プリント回路基板の製造方法。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点] 補正発明1では、貫通孔が「直径0.08?1mm」で、「非導電性の保護フィルム60がラミネートされて一面が閉塞されている前記絶縁層10の前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階」との構成を備えているのに対して、 引用発明では、貫通孔の直径は明らかでなく、ポリエステルフィルム3が積層されている前記支持体1のスルーホール/バイアホール穴4に、スキージ6を利用してスキージングにより、導電性を有する樹脂ペースト5を充填する工程dと、前記スルーホール/バイアホール穴4に乾燥及び予備的な硬化を行った樹脂ペースト5を形成するとの構成を備えている点。 ウ 判断 上記相違点について検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-149311号公報(以下「引用文献2」という。)には、電子部品製造装置、パターン配線シート、電子デバイスシートおよびシートに関して、基材の片面にパターン配線を形成した後、基材を反転させて、裏面にもパターン配線を形成することが記載されている(特に、段落【0174】及び【0182】を参照。)(以下「引用文献2記載の事項」という。)。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-249863号公報(以下「引用文献3」という。)には、プリント配線板の製造方法に関して、スルーホール部に差し部品を挿入実装するために、絶縁基板を貫通した貫通孔に導電ペーストを充填して形成された複数のスルーホール部により構成されたプリント配線板において、スルーホール部に上記絶縁基板の両面側からそれぞれ異なるタイミングで熱風を吹き付けて導電ペーストを溶融することで、所要のスルーホール部を貫通させること、及び貫通後にその内壁にさらに導電材料の薄付けめっきを施すことが記載されている(特に、段落【0003】、【0005】、【0010】?【0019】、【0029】及び【0030】を参照。)(以下「引用文献3記載の事項」という。)。 しかし、引用文献2及び3記載の事項は、上記相違点に係る補正発明1の構成を開示するものではなく、引用文献2及び3の他の記載をみても、上記相違点に係る補正発明1の構成を示唆するものは見当らない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特公平7-54872号公報(以下「引用文献4」という。)には、二層印刷回路シートの製造方法に関して、穴12を形成した絶縁シート11の片面に穴底形成のためシリコンゴムシート23を張り付け、絶縁シート11の他面側からスクリーン印刷法により穴12に導電ペースト24を充填し、さらに絶縁シート11の他面側に第一層回路パターン25を導電ペーストで印刷し、その後シリコンゴムシート23を剥離し、絶縁シート11の片面に第二層回路パターン26を導電ペーストで印刷することにより、絶縁シート11の穴12内を導電ペースト24で完全に満たすことができ、両面の回路パターン25、26を確実に導通させることが可能となること、及び穴底用シートを張り付けた後の、穴への導電ペーストの充填と、第一層回路パターンの印刷とは、どちらを先に行ってもよいことが記載されている(3欄19行?41行、4欄31行?5欄6行、及び第2図(a)?(h)を参照。)(以下「引用文献4記載の事項」という。)。 しかし、引用文献4記載の事項では、シリコンゴムシート23(補正発明1の「非導電性の保護フィルム」に相当。)を張り付け、絶縁シート11の片面に穴底形成して、穴12(補正発明1の「貫通孔」に相当。)内を導電ペースト24(補正発明1の「導電性ペースト」に相当。)で完全に満たすものにすぎず、補正発明1のように、回路パターンに使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して貫通孔の内周面に1?3μ厚の導電性物質を形成するものではないから、たとえ引用発明に引用文献4記載の事項を適用したとしても、上記相違点に係る補正発明1の構成に至るものではない。 更に、平成28年4月7日付けで作成された前置報告書において引用された特開平7-99376号公報(以下「引用文献5」という。)には、プリント配線基板に関して、絶縁基板1の両面に銅箔10、11が形成された両面銅張り積層板に、貫通孔5、6(直径=0.5mmと0.6mm)を形成し、両面の銅箔10、11に所定の配線回路パターンを形成し、スクリーン印刷によって導電性ペースト7を貫通孔5、6内に充填し、次に、導電性ペースト7を乾燥硬化して、当該導電性ペースト7からなるスルーホール2を形成することが記載されている(特に、段落【0020】?【0031】及び図3?図10を参照。)(以下「引用文献5記載の事項」という。)。 しかし、引用文献5記載の事項及び引用発明は、いずれも、「非導電性の保護フィルムがラミネートされて一面が閉塞されている前記絶縁層の前記貫通孔」に、回路パターンに使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して貫通孔の内周面に1?3μ厚の導電性物質を形成するものではないから、たとえ引用発明に引用文献5記載の事項を適用したとしても、上記相違点に係る補正発明1の構成に至るものではない。 以上のことから、補正発明1は、引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2) 補正事項2について 本件補正の補正事項2は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「貫通孔40」について、「直径0.08?1mmの」との限定を付加し、 「第1保護フィルム61」及び「第2保護フィルム62」について、それぞれ「非導電性の」との限定を付し、 「前記貫通孔40の内周面に、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを印刷して導電性物質50を形成する段階」とあったものを、「前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階」に限定するものであって、 補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「補正発明2」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 補正発明2は、貫通孔が「直径0.08?1mm」で、「非導電性の第2保護フィルム62」、及び「第2保護フィルムがラミネートされて一面が閉塞されている前記絶縁層10の前記貫通孔40に、グラビアプリント、インクジェットプリント、オフセットプリント、シルクスクリーンプリント、ロータリースクリーンプリント、フレキソプリント、およびインプリント法のいずれか1つを用いて、前記導電性の第1回路パターン20及び前記導電性の第2回路パターン30に使用した導電性ペーストより低い粘度の導電性ペーストを供給して前記貫通孔40の内周面に1?3μ厚の導電性物質50を形成する段階」を特定しており、この特定事項は、「(1)イ[相違点]」で挙げた相違点に係る補正発明1の構成と、実質的に同一の構成である。 すると、補正発明2は、補正発明1と同様に、引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (3) 補正事項3について 本件補正の補正事項3は、請求項1及び2の補正(特許請求の範囲の減縮)に伴って特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明細書を補正するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 なお、補正発明1及び2、並びに明細書では、導電性物質の厚さの単位として「μ」を使用しているものの、1μが1/000mmであることは技術常識であるから、単位として「μ」を使用しているからといって、特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が明確でないとはいえず、更に、明細書の発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないともいえない。 3 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、補正発明1及び補正発明2は、上記「第2の2」のとおり、当業者が引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 また、補正発明1又は補正発明2を直接又は間接的に引用する補正発明3?6は、補正発明1又は補正発明2に係る発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明及び引用文献2?5記載の事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-11-29 |
出願番号 | 特願2014-551192(P2014-551192) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
阿部 利英 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | 両面プリント回路基板の製造方法 |
代理人 | 岡島 伸行 |