• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1322170
審判番号 不服2015-18993  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-21 
確定日 2016-12-01 
事件の表示 特願2013-557266「フィルタ回路およびモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日国際公開、WO2013/118240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許出願は、2012年(平成24年)2月6日を国際出願日とする特願2013-557266号であって、平成27年8月21日付けで拒絶査定(謄本送達日平成27年8月25日)がなされ、これに対して平成27年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審において平成28年6月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本件発明
本件特許出願の請求項に係る発明は、平成28年9月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から3までに記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「それぞれ、入力端子および出力端子を有する第1バンドパスフィルタ、第2バンドパスフィルタ、第3バンドパスフィルタ、および第4バンドパスフィルタと、
前記第1バンドパスフィルタの出力端子と、前記第2バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第1端子と、
前記第3バンドパスフィルタの出力端子と、前記第4バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第2端子と、
前記第1バンドパスフィルタの入力端子と、前記第4バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第3端子と、
前記第2バンドパスフィルタの入力端子と、前記第3バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第4端子と、を具備し、
前記第1バンドパスフィルタ、前記第2バンドパスフィルタ、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域はそれぞれ重ならず、
前記第1バンドパスフィルタおよび前記第2バンドパスフィルタの通過帯域は、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域より低く、
前記第1端子は、第1アンプに接続される端子であり、前記第2端子は第2アンプに接続される端子であり、前記第3端子と前記第4端子とは、前記第3端子と前記第4端子とのいずれか一方を選択しアンテナに接続するスイッチが接続される端子であり、
前記第1バンドパスフィルタと前記第4バンドパスフィルタは、第1地域において用いられ、前記第1地域と異なる第2地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタであり、
前記第2バンドパスフィルタと前記第3バンドパスフィルタは、前記第2地域において用いられ、前記第1地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタであり、
前記スイッチは、前記第3端子および前記第4端子のみを選択することを特徴とするフィルタ回路。」

第3 当審の拒絶理由の概要
一方、当審が平成28年6月30日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

本件出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特開2003-87150号公報
2.特開2004-32673号公報
3.特開2009-207168号公報
4.特表2003-517239号公報

第4 当審の判断
1 引用文献
当審の拒絶理由にて引用した、特開2003-87150号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。

(1)「【0003】図11は欧州を中心に世界的に普及が進んでいるGSM(送信880-915MHz、受信925-960MHz)/DCS(送信1710-1785MHz、受信1805-1880MHz)のデュアルバンド携帯電話のアンテナフロントエンド部の回路ブロックを示している。図11において、101はアンテナ端子、102,103は送信端子、104および105は受信端子、106はGSMの送受信信号とDCSの送受信信号を合波分波するダイプレクサ、107,108はそれぞれGSM、DCSでの送受切換用スイッチ、109,110はそれぞれGSM、DCSの送信信号の高調波成分を除去するためのLPF、111,112はそれぞれGSM、DCS受信帯域を通過帯域とするBPF、113および114はそれぞれGSMおよびDCSの送受切換スイッチの制御端子で、例えば弾性表面波フィルタ(SAW)が用いられている。なお、送受切換スイッチ107および108は、図12に示すようなダイオード119,120と電気長がλ/4の伝送線路121で構成されるスイッチ回路が一般的に用いられている。」

(2)「【0011】本発明の請求項2に記載の高周波複合スイッチモジュールは、スイッチ手段がSP3Tスイッチからなり、3つの切替端子のうちの2つに第1および第2のローパスフィルタを接続するとともに、残り1つに第1および第2の移相線路の共通端子を接続したことを特徴とするものである。」

(3)「【0019】本発明の請求項6に記載の高周波複合スイッチモジュールは、スイッチ手段がSP6Tスイッチからなり、6つの切替端子のうちの2つに第1および第2のローパスフィルタを接続するとともに、残りの4つに第1、第2、第5および第6の移相線路を接続し、さらに第5および第6の移相線路に直列にそれぞれ第3および第4のSAWフィルタを接続したことを特徴とするものである。」

(4)「【0044】(実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1における高周波複合スイッチモジュールの回路ブロック図である。図1において、1はアンテナ端子、2および3はそれぞれ異なる周波数を用いたシステムの送信端子、4および5は同じく異なる周波数システムを用いた受信端子、6はアンテナ端子1の直下に接続されたLPF、7はここではSP3Tの機能をもつスイッチ、8および9はLPF、10は移相線路、11はカプラ、12および13はBPFでここではSAWフィルタで構成されたもの、14は本発明の高周波複合スイッチモジュールに接続された検波回路、15および16は本発明の高周波複合スイッチモジュールに接続され、それぞれのシステムにおける送信パワーアンプ、17および18は本発明の高周波複合スイッチモジュールに接続されるLNAである。
【0045】本回路ブロックにおいて、SP3Tスイッチ7によって、送受信の信号が切換えられ、共用器としても機能がなされる。送信パワーアンプ15および16で生成される不要な高調波成分は、それぞれLPF8および9で除去される。またアンテナ端子1から受信された受信信号のうちの不要成分はBPF12および13で除去される。さらに、LPF6は特に送信時、SP3Tスイッチ7などで生成される高調波成分を除去するために設けられたものである。さらにはカプラ11および検波回路14は出力信号のレベルをモニタリングし、必要に応じて送信パワーアンプ15および16の制御をするために設けられたものである。また、BPF12および13とSP3Tスイッチ7の間には移相線路10が接続され、これによってBPF12および13のインピーダンス整合がなされている。
【0046】図2に、図1に示す回路ブロックの詳細を示す。図2において、19から25はコンデンサ、26から28はインダクタ、29は結合線路、30は抵抗である。
【0047】SP3Tスイッチ7はたとえばGaAsFETを用いた構成が考えられ、これの制御端子が7aから7cである。また、移相線路10は、BPF12の通過帯域においてSP3Tスイッチ7との接続点からBPF13側をみたインピーダンスがほぼオープンとなるように、またBPF13の通過帯域においてSP3Tスイッチ7との接続点からBPF12側をみたインピーダンスがほぼオープンとなるように、それぞれ移相線路10aおよび10bの電気長が選択されて接続されている。このようにすることによって、送受切換スイッチとしてデュアルバンドに対応したシステムにおいてもSP3Tの構成ですみ、スイッチ素子そのものが低コストですむだけでなく小型なスイッチ素子とすることが出来る。」

(5)「【0053】(実施の形態2)図5は本発明の実施の形態2における高周波複合スイッチモジュールの回路ブロック図である。図5に示した高周波複合スイッチモジュールは、例えば欧州の携帯電話システムであるGSMとDCSと呼ばれるシステムのアンテナ共用器として用いることが出来るもので、32は受信端子、33および34は伝送線路、35および36は送信用のパワーアンプ、37は受信用のLNAであり、またスイッチ7としてはSP4Tを用いたものを示している。」

(6)「【0056】なお、本実施の形態の変形として、図1に示したようにスイッチ7としてSP3Tスイッチを用いることができ、このときでも同様な効果を得ることができることは明らかである。」

(7)「【0059】さらに本実施の形態の変形として欧州のGSMとDCS、さらには米国のAMPSとPCSの計4つのバンドに対応したものとして、図7に示す構成を示すことが出来る。ただし、図7において、41は受信側のBPF、42および43はBPF12および41と受信端子32aとの間に接続された伝送線路である。すなわちスイッチ7としてSP6Tのスイッチを用い、受信側のBPFの内、比較的通過周波数の近い(たとえばGMSとAMPSならびにDCSとPCSそれぞれについて)各BPFの出力端子を伝送線路42および43ならびに39および40を用いてそれぞれ共通の出力端子32aならびに32bとして一つに纏め、その外部にそれぞれLNA37aおよび37bを接続する構成である。
【0060】ここで、比較的周波数の近いBPFの出力を纏める目的は、LNAの特性が入力信号の周波数特性を持つためこれの影響を低減してより高安定なものとするためであるが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。上記の構成を具備することにより、4バンドで低コスト、小型、高安定化に対応した高周波複合スイッチモジュールとすることが出来る。」(なお、上記段落59の「たとえばGMSとAMPS」とあるのは、「たとえばGSMとAMPS」の誤記と認める。)

(8)「【0062】また、上記の実施の形態において、例えば図9に示すような構成によって高周波複合スイッチモジュールを得ることが出来る。図9において、44はスイッチ素子、45はSAW素子、46はセラミックなどで構成され、内部に電極を持つ誘電体の積層体である。すなわち、誘電体の積層体46の中に電極としてLPFやカプラなどのLC回路を構成し、その表層にスイッチ素子44およびSAW素子45を実装することにより、小型で低コストな高周波複合スイッチを得ることが出来る。また、図10に示すように、誘電体の積層体46の表層に抵抗30を構成することにより、その抵抗値を例えばレーザカットにより調整することが出来るのでより高精度で、生産性に優れた高周波複合スイッチモジュールとすることが出来る。さらに図10としては外部の入出力端子として端面電極48を構成した場合を示しているが、他にLGAなどを用いても一向に構わない。」

図2


図5


図7


図9


そうすると、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりのものである(特に、図7に記載された構成を参照)。

「欧州のGSM(受信925-960MHz)とDCS(受信1805-1880MHz)、さらには米国のAMPSとPCSの計4つのバンドに対応し、
入力側がSP6Tのスイッチ7の切替端子にそれぞれ接続され、アンテナ端子1から受信された受信信号のうちの不要成分を除去する受信側のBPF12、41、13及び38と、
受信側のBPFの内、比較的通過周波数の近い(たとえばGSMとAMPSならびにDCSとPCSそれぞれについて)各BPFの出力端子を伝送線路42および43ならびに39および40を用いてそれぞれ共通の出力端子として一つに纏め、その外部にそれぞれLNA37aおよび37bを接続する出力端子32a及び32bと、を具備する回路。」

2 対比(一致点、相違点の認定)
請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)と引用発明とを対比する。

(1)米国のAMPSは送信824-849MHz、受信869-894MHzであり、PCSは送信1850-1910MHz、受信1930-1990MHzであることは、当業者に自明である(必要ならば、当審の拒絶理由にて引用した特開2004-32673号公報(特に、段落97) 又は特開2009-207168号公報(特に、段落22)参照。)。
そうすると、引用発明のBPF12、41、13及び38は、それぞれ欧州のGSM(受信925-960MHz)に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタ、米国のAMPS(受信869-894MHz)に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタ、欧州のDCS(受信1805-1880MHz)に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタ及び米国のPCS(受信1930-1990MHz)に対応する通過帯域を有するバンドパスフィルタであると解することができ、米国及び欧州は、それぞれ本件発明にいう「第1の地域」及び「第2の地域」に相当し、引用発明のBPF41、12、13及び38は、本件発明の「それぞれ、入力端子および出力端子を有する第1バンドバスフィルタ、第2バンドバスフィルタ、第3バンドバスフィルタ、および第4バンドバスフィルタ」に相当し、「前記第1バンドパスフィルタ、前記第2バンドパスフィルタ、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域はそれぞれ重ならず」、「前記第1バンドパスフィルタおよび前記第2バンドパスフィルタの通過帯域は、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域より低く」、「前記第1バンドパスフィルタと前記第4バンドパスフィルタは、第1地域において用いられ、前記第1地域と異なる第2地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタであり」、「前記第2バンドパスフィルタと前記第3バンドパスフィルタは、前記第2地域において用いられ、前記第1地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタ」であるといえる。

(2)引用発明のBPF12及び41の出力端子は、伝送線路42および43を用いて共通の出力端子32aとして一つに纏められ、LNA37aに接続されており、同様にBPD13及び38の出力端子は、伝送線路39および40を用いて共通の出力端子32bとして一つに纏められ、LNA37bに接続されているから、引用発明の「LNA37a」、「LNA37b」、「出力端子32a」及び「出力端子32b」は、それぞれ本件発明にいう「第1アンプ」、「第2アンプ」、「前記第1バンドパスフィルタの出力端子と、前記第2バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第1端子」及び「前記第3バンドパスフィルタの出力端子と、前記第4バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第2端子」に相当し、引用発明においても、「前記第1端子は、第1アンプに接続される端子であり、前記第2端子は第2アンプに接続される端子」であるといえる。

(3)ここで、SP6Tのスイッチとは、1つの極(Single-Pole)と6つの投(6-Throw)を有し、6つの投のうちのいずれか1つが接続される単極6投スイッチであることは当業者に自明であり(以下、同様に、SPnTスイッチは、単極n投スイッチである。)、引用文献1の図7に記載されたSP6Tのスイッチ7は、上記1つの極がアンテナに接続され、6つの投のうち2つが送信側、4つが受信側に接続された送受切換スイッチを構成している。
そして、引用発明のBPFは、スイッチ7とともにモジュール化されることも想定されているところ(引用文献1の段落62(上記1(8))の記載及び図9参照)、引用発明において、スイッチ7の4つの切替端子に接続されるBPF41、12、13及び38の各入力側は、本件発明にいう「第1バンドパスフィルタの入力端子」、「第2バンドパスフィルタの入力端子」、「第3バンドパスフィルタの入力端子」及び「第4バンドパスフィルタの入力端子」といえ、引用発明も「フィルタ回路」の発明であるといえる。
引用発明には、「前記第1バンドパスフィルタの入力端子と、前記第4バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第3端子」及び「前記第2バンドパスフィルタの入力端子と、前記第3バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第4端子」はないものの、上記4つの入力端子のそれぞれは、アンテナからの信号が選択的に入力される端子であって、本件発明にいう「いずれか一方を選択しアンテナに接続するスイッチが接続される端子」に対応する。

(4)ところで、本件発明は、4つのバンドパスフィルタと4つの端子とを具備する「フィルタ回路」の発明であって、「前記スイッチは、前記第3端子および前記第4端子のみを選択する」との限定により、アンテナからの信号が、スイッチを通じて「フィルタ回路」の「第3端子」又は「第4端子」のいずれかに選択的に入力されることは認められるものの、「スイッチ」自体は本件発明の構成要件ではない。
一方、引用文献1の段落59(上記1(7))の記載及び図7によれば、引用発明のフィルタ回路が接続されるスイッチ7は、送受切換スイッチを構成するものであるから、アンテナからの信号は、スイッチ7を介して、4つの入力端子のいずれかに選択的に入力されることは明らかである。
そうすると、「フィルタ回路」の発明としてみたときには、スイッチが受信側専用のスイッチであるか、送受切換スイッチであるかに関わらず、スイッチを通じて「フィルタ回路」に入力される信号が、アンテナからの信号であることに違いはないから、本件発明と引用発明とは、「アンテナからの信号が、スイッチを通じて入力側の端子のいずれかに選択的に入力される」点で両者は共通しているといえる。

(5)したがって、本件発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「それぞれ、入力端子および出力端子を有する第1バンドパスフィルタ、第2バンドパスフィルタ、第3バンドパスフィルタ、および第4バンドパスフィルタと、
前記第1バンドパスフィルタの出力端子と、前記第2バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第1端子と、
前記第3バンドパスフィルタの出力端子と、前記第4バンドパスフィルタの出力端子と、が共通に接続された第2端子と、
前記第1バンドパスフィルタの入力端子と、前記第4バンドパスフィルタの入力端子と、
前記第2バンドパスフィルタの入力端子と、前記第3バンドパスフィルタの入力端子と、を具備し、
前記第1バンドパスフィルタ、前記第2バンドパスフィルタ、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域はそれぞれ重ならず、
前記第1バンドパスフィルタおよび前記第2バンドパスフィルタの通過帯域は、前記第3バンドパスフィルタおよび前記第4バンドパスフィルタの通過帯域より低く、
前記第1端子は、第1アンプに接続される端子であり、前記第2端子は第2アンプに接続される端子であり、
前記第1バンドパスフィルタと前記第4バンドパスフィルタは、第1地域において用いられ、前記第1地域と異なる第2地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタであり、
前記第2バンドパスフィルタと前記第3バンドパスフィルタは、前記第2地域において用いられ、前記第1地域において用いられない通信方式用のバンドパスフィルタであり、
アンテナからの信号が、前記スイッチを通じて入力側の端子のいずれかに選択的に入力されることを特徴とするフィルタ回路。」

[相違点] アンテナからの信号が、スイッチを通じて入力側の端子のいずれかに選択的に入力される部分の構成に関し、
本件発明では、「前記第1バンドパスフィルタの入力端子と、前記第4バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第3端子」及び「前記第2バンドパスフィルタの入力端子と、前記第3バンドパスフィルタの入力端子と、が共通に接続された第4端子」とを具備し、
「前記第3端子と前記第4端子とは、前記第3端子と前記第4端子とのいずれか一方を選択しアンテナに接続するスイッチが接続される端子」であり、「前記スイッチは、前記第3端子および前記第4端子のみを選択する」ことで、アンテナからの信号が、「第3端子」又は「第4端子」のいずれかに選択的に入力されるのに対し、
引用発明では、「第3端子」及び「第4端子」を具備しておらず、「第1バンドパスフィルタの入力端子」、「第2バンドパスフィルタの入力端子」、「第3バンドパスフィルタの入力端子」及び「第4バンドパスフィルタの入力端子」が、「いずれか一方を選択しアンテナに接続するスイッチに接続される端子」であって、前記スイッチは、アンテナからの信号が、「第1バンドパスフィルタの入力端子」、「第2バンドパスフィルタの入力端子」、「第3バンドパスフィルタの入力端子」又は「第4バンドパスフィルタの入力端子」のいずれかに選択的に入力される点。

3 判断
(1)引用文献1は、高周波複合スイッチモジュールについていくつかの実施の形態を開示したものであるが、その段落11及び段落47(上記1(2)及び(4))の記載並びに図2によれば、欧州のGSM及びDCSのデュアルバンドに対応する高周波複合スイッチモジュールに用いるフィルタ回路において、GSM及びDCSに対応するBPF12及び13をインピーダンス整合を図りつつ接続した共通端子を具備し、該共通端子がアンテナに接続するSP3Tスイッチの切替端子に接続される端子である構成(以下、「構成A」という。)が開示されており、段落47には、「デュアルバンドに対応したシステムにおいてもSP3Tの構成ですみ、スイッチ素子そのものが低コストですむだけでなく小型なスイッチ素子とすることが出来る」という効果(以下、「効果A」という。)が記載されている。
なお、上記効果Aは、スイッチの端子数が削減し得ることによる効果であるが、同時にスイッチに接続されるフィルタ回路の端子数が削減されることも自明である。

(2)また、引用文献1の段落53(上記1(5))の記載及び図5によれば、実施の形態2として、欧州のGSM及びDCSのデュアルバンドに対応する高周波複合スイッチモジュールに用いるフィルタ回路において、GSM及びDCSに対応するBPF12及び13の各入力端子のそれぞれが、アンテナに接続するSP4Tスイッチの切替端子に接続される端子である構成(以下、「構成B」という。)が開示されており、段落56(上記1(6))には、「本実施の形態の変形として、図1に示したようにスイッチ7としてSP3Tスイッチを用いることができ、このときでも同様な効果を得ることができることは明らかである」ことも記載されている。

(3)引用発明は、欧州のGSM及びDCS、米国のAMPS及びPCSの計4つのバンドに対応する高周波複合スイッチモジュールに用いるフィルタ回路であって、上記構成Bと同様に、各バンドに対応する第1?第4のバンドパスフィルタの各入力端子のそれぞれが、アンテナに接続するSP6Tのスイッチ7の切替端子に接続される端子である。
そして、引用文献1の上記段落56の記載によれば、引用発明において、上記効果Aと同様な効果を得るべく、上記第1?第4のバンドパスフィルタの4つの入力端子のうち2つを組にして、それぞれインピーダンス整合を図りつつ接続して2つの共通端子とすることについても示唆があるといえる。
ここで、2つの組となるBPFの選び方としては、
(a)欧州のGSM及びDCSに対応するBPF12及び13、並びに、米国のAMPS及びPCSに対応するBPF41及び38、
(b)欧州のGSM及び米国のAMPSに対応するBPF12及び41、並びに、欧州のDCS及び米国のPCSに対応するBPF13及び38、
(c)欧州のGSM及び米国のPCSに対応するBPF12及び38、並びに、欧州のDCS及び米国のAMPSに対応するBPF13及び41、
の3とおり存在するが、いずれを採用するかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。

なお、引用発明の上記第1?第4のバンドパスフィルタの4つの出力端子については、「LNAの特性が入力信号の周波数特性を持つためこれの影響を低減してより高安定なものとするため」(引用文献1の段落60(上記1(7)))に、比較的周波数の近いBPF(欧州のGSM及び米国のAMPS、並びに、欧州のDCS及び米国のPCS)を組にして纏めているが、入力端子についてはそのような制約はないから、上記(a)の選択を阻害する理由はない。
したがって、平成28年9月2日付け意見書の「仮に、4つのBPFの入力から2つずつ共通にスイッチに接続するとしても、欧州のGSMおよび米国のAMPSのBPFの入力を共通にスイッチに接続し、欧州のDCSおよび米国のPCSのBPFの入力を共通にスイッチに接続することが自然であり、欧州のGSMおよびDCSのBPFの入力を共通にスイッチに接続し、米国のAMPSおよびPCSのBPFの入力を共通にスイッチに接続する動機づけはありません。」との主張は理由がない。

(4)平成28年9月2日付け意見書の「請求項1、2に係る発明は、相違点1により、用いる地域によって、バンドの切り替えを容易に行なうことができます(0031段落参照)。」との主張について検討する。
引用発明も、欧州のGSM及びDCS、米国のAMPS及びPCSの計4つのバンドに対応しており、引用発明を用いた携帯電話を欧州で使用する場合は、欧州のGSM及びDCSに対応するBPF12及び13だけが用いられ、米国で使用する場合は、米国のAMPS及びPCSに対応するBPF41及び38だけが用いられることは自明であるから、上記(a)を選択した場合の効果として、携帯電話を使用する地域が欧州か米国かに応じてスイッチを切り換えればよいことも、当業者が予測し得る範囲のものである。

(5)してみれば、引用発明において、上記効果Aと同様な効果を得るべく、欧州のGSM及びDCSについて上記構成Aを採用し、同様に、米国のAMPS及びPCSについても上記構成Aを採用して(上記(a))、相違点に係る構成とすることは、上記引用文献1に記載された技術事項から、当業者が容易に想到し得ることである。
また、その効果も、「構成B」を「構成A」に置き換えることによって得られる上記効果Aから予測し得る範囲のものである。

したがって、本件発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-30 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2013-557266(P2013-557266)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 山本 章裕
北岡 浩
発明の名称 フィルタ回路およびモジュール  
代理人 片山 修平  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ