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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D06M
審判 全部申し立て 発明同一  D06M
管理番号 1322256
異議申立番号 異議2016-700050  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-21 
確定日 2016-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5762889号発明「不織布」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5762889号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5762889号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5762889号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成23年9月5日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?3に係る特許について、特許異議申立人伊藤範子、特許異議申立人成田忍により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年4月15日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年6月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、特許異議申立人伊藤範子より、平成28年7月29日付けで本件訂正請求について意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(4)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「セシウムを吸収するために使用する不織布。」とあるのを、
「セシウムを吸収するために使用する不織布(但し、支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く)。」に訂正する(下線は、訂正箇所。以下、同じ。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「接着固定された不織布」とあるのを、
「接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」に訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0007】において
「セシウムを吸収するために使用する不織布。」とあるのを、
「セシウムを吸収するために使用する不織布(但し、支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く)。」に訂正する

(4)訂正事項4
特許明細書の段落【0007】において
「接着固定された不織布」とあるのを、
「接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1は、セシウムを吸収するための不織布の用途について特定されていなかったものを、訂正事項1の訂正は、壁紙用途について除外する旨を明らかにするものであるから、この訂正は、特許請求の範囲を減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1の訂正は、取消理由通知で引用された甲第1号証との重複部分のみを除く訂正であり、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。
そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正前の請求項1は、不織布の繊度について特定されていなかったものを、訂正事項2の訂正は、繊度が1?50dtexの繊維からなることを明らかにするものであるから、この訂正は、特許請求の範囲を減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2の訂正は、特許明細書の段落【0020】に記載されているように、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。
そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3及び訂正事項4について
訂正事項3及び訂正事項4の訂正は、上記訂正事項1及び訂正事項2に係る請求項1の訂正に伴い、記載を整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3及び訂正事項4の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)一群の請求項について
そして、請求項1?3は一群の請求項であるところ、上記訂正事項1?4に係る各訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1?3に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 1m^(2)あたり1g以上の紺青がバインダによって接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布であり、前記紺青の量が不織布の目付の10%以下、前記バインダ(固形分)と紺青との質量比率が70:30?95:5、かつ水中への紺青の溶出率が5%以下であることを特徴とする、セシウムを吸収するために使用する不織布(但し、支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く)。
【請求項2】 不織布構成繊維が、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ノボロイド繊維の群から選ばれる、1種類以上の繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】 バインダが、塩化ビニル成分及び/又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の不織布。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して、特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
[理由1] 本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
[理由2] 本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・特許異議申立人成田忍が提出した甲第1号証:
特願2011-186265号(特開2013-47650号)
・同じく甲第2号証:
特開平10-102385号公報
・同じく甲第3号証:
服部俊雄、”紺青の選択的セシウム吸着効果とその利用”、 工業材料、 日刊工業新聞社、平成23年8月1日、第59巻、第8号、p.88-90

本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許異議申立人成田忍が提出した甲第1号証の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と実質的に同一である。
また、本件特許の請求項1?3に係る発明は、同じく甲第2号証に記載された発明及び技術的事項、並びに、同じく甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。
あるいは、本件特許の請求項1?3に係る発明は、同じく甲第3号証に記載された発明、及び、同じく甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。

3.判断
(1)理由1(特許法第29条の2)について
ア 特許異議申立人成田忍が提出した甲第1号証(特に、段落【0037】の実施例6の記載)には、
「不織布と、紺青顔料とスチレン-アクリル樹脂を含むセシウム除去材層を備えたセシウム除去性壁紙であって、不織布(支持基材層)は、坪量120g/m^(2)のレーヨン素材の不織布であり、セシウム除去材層は、乾燥重量は6g/m^(2)であり、このセシウム除去材層中には、フェロシアン化金属化合物である紺青顔料が36質量%含まれている、セシウム除去性壁紙。」の発明(以下、「甲1発明」)が記載されている。

イ 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、
支持基材層について、本件訂正発明1が「繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」であるのに対し、甲1発明は、坪量120g/m^(2)のレーヨン素材の不織布であり、繊度の特定がない点、
さらに、本件訂正発明1が 「支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く」不織布であるのに対し、甲1発明は、支持基材層としてのレーヨン素材の不織布と、フェロシアン化金属化合物である紺青顔料とを含有するセシウム除去性壁紙である点で、少なくとも相違する。
そして、これらの相違点は、課題解決のための具体化手段における微差ではない。

ウ したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではない。
また、本件訂正発明2、3も、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を有し、少なくとも同じ相違点を有するから、本件訂正発明2、3は甲1発明と同一ではない。

(2)理由2(特許法第29条第2項)について
ア まず、甲第2号証を主引用例とする場合について検討する。
甲第2号証(特に、段落【0030】?【0037】の実施例の記載)には、
「断面不定形であり直径1.26μmの太島成分(極細繊維、ナイロン6)と、断面円形の直径0.26μmの細島成分(超極細繊維、ポリプロピレン)とからなる、面密度80g/m^(2)、厚さ0.7mmである海成分抽出型極細繊維不織布に、水系分散顔料(R.W.Blue GLK)と感熱ゲル化型バインダー(SFP・1210)により着色した着色不織布であって、着色不織布は、水71.5重量%に、水系分散顔料(R.W.Blue GLK)4.5重量%、感熱ゲル化型バインダー(SFP・1210)17.0重量%を含有させた着色液が、保液率100%で不織布に染み込んだ状態で、加熱して形成し、湿摩擦堅牢度が4-5級である、着色不織布。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

イ 本件訂正発明1と甲2発明を対比すると、
不織布について、本件訂正発明1が、「繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」であるのに対し、甲2発明は、断面不定形であり直径1.26μmの太島成分(極細繊維、ナイロン6)と、断面円形の直径0.26μmの細島成分(超極細繊維、ポリプロピレン)とからなる、面密度80g/m^(2)、厚さ0.7mmである海成分抽出型極細繊維不織布である点(以下、「相違点1」という。)、
さらに、本件訂正発明1が、「水中への紺青の溶出率が5%以下であることを特徴とする、セシウムを吸収するために使用する不織布」であるのに対し、甲2発明は、そのような用途に特定されておらず、紺青の溶出率も特定されていない点(以下、「相違点2」という。)で、少なくとも相違する。

ウ 上記相違点について検討する。
《相違点1について》
甲2発明の不織布を構成する繊維のうち、最も太い繊維である太島成分(極細繊維、ナイロン6)であっても直径1.26μmであり、ナイロン6の密度が1.14g/cm^(3)程度であることを考慮すると、太島成分(極細繊維、ナイロン6)の繊度は1dtexよりも遙かに小さい(0.057dtex程度)ことは明らかである。
そして、甲2発明は、甲第2号証(段落【0005】)の記載によれば、「顔料による着色は、被着色物の構成材料に制限を受け難いが、極細不織布を着色する場合、緻密な不織布構造を有するため、液体含浸後の乾燥に大きな熱量を必要とする」との従来技術の課題を解決しようとするものであるから、甲2発明の太島成分(極細繊維、ナイロン6)よりも遙かに太い、「繊度が1?50dtexの繊維」に換えようとする動機付けが見いだせない。

《相違点2について》
甲2発明は、甲第2号証(段落【0005】)の「従来、0.5デニール以下の極細繊維を使用した繊維シートは、風合い(柔軟性)に優れているため、例えば衣料などの用途に好適に使用されている。繊維シートを衣料などの用途に使用する場合、消費者の好みなどに対応するために、繊維シートを着色する必要がある。」との記載からみて、衣料などの用途に用いられる不織布の着色に係る発明であって、甲第2号証には、他に「セシウムを吸収するために使用する」ことを示唆する記載はない。
また、甲第2号証には、「水中への紺青の溶出率」を特定の値以上とすることを示唆する記載もない。
ここで、甲第3号証には、セシウム吸着のため、紺青を含む不織布を用いることの記載があるものの、衣料用の着色不織布をセシウム吸収用に転用することや、水中への紺青の溶出率を特定の値以上とすることについては、記載ないし示唆はない。
ゆえに、衣料などの用途に用いられる不織布に係る発明である甲2発明を、「水中への紺青の溶出率が5%以下であることを特徴とする、セシウムを吸収するために使用する不織布」とする動機付けは存在しないと言わざるを得ない。
そして、本件訂正発明1は、「バインダ(固形分)と紺青との質量比率が70:30?95:5、かつ水中への紺青の溶出率が5%以下である」ことを発明特定事項とすることにより、セシウムを吸収した紺青を溶出させることなしに回収することを容易とする(特許明細書の段落【0011】、【0023】、【0024】、【0050】を参照)ものであり、このような作用効果は、甲第2号証、甲第3号証の記載から予測できるものでもない。

したがって、本件訂正発明1は、甲2発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 甲第3号証を主引用例とする場合について検討する。
甲第3号証には、「紺青を含み、セシウムを吸収するために使用する不織布。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているが、本件訂正発明1と甲3発明を対比すると、
甲3発明において、「1m^(2)あたり1g以上の紺青がバインダによって接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布であり、前記紺青の量が不織布の目付の10%以下、前記バインダ(固形分)と紺青との質量比率が70:30?95:5、かつ水中への紺青の溶出率が5%以下である」との、不織布に紺青を溶出しないように接着固定する具体的な手段が特定されていない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。
この相違点3について、甲第2号証は衣料などの用途に用いられる不織布に係るものであり、甲3発明に、甲第2号証に記載された技術的事項を適用しようとする動機付けが見いだせない。
仮に適用したとしても、相違点3に係る本件訂正発明1の発明特定事項を、容易に想到し得るものではないことは、前記ウで述べたとおりである。
したがって、本件訂正発明1は、甲3発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

オ 本件訂正発明2、3について検討する。
本件訂正発明2、3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を有しているから、請求項2、3に係る発明は、また、甲2発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)特許異議申立人伊藤範子の意見について
特許異議申立人伊藤範子は、本件訂正請求に対する意見書において、本件訂正請求の訂正事項に係る「繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」との事項は、特許異議申立人伊藤範子が提出した甲第3号証(特開2006-63300号公報)に開示されている旨主張する。
しかし、「繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」が、上記甲第3号証に開示されるように、不織布を構成する繊維の繊度として周知の範囲であったとしても、上記(2)ウ、エで述べたように、甲2発明、あるいは甲3発明において、「繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布」に換える動機付けが見いだせるものではない。
そもそも、上記甲第3号証の基材(不織布等)にバインダで固定されるのはシリカであって、紺青ではなく、特許異議申立人伊藤範子が提出した甲第1号証?甲第7号証のいずれにも、紺青を不織布に適切量のバインダで接着固定することにより、紺青の水中への溶出率を5%以下とすることについて、記載も示唆もされていない。
したがって、特許異議申立人伊藤範子の上記意見を採用することができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由によっては、本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
不織布
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布に関する。特には、セシウムを吸収するために使用する不織布に関する。より具体的には、土壌や河川に堆積又は溶出しているセシウムを吸収することのできる不織布であり、液体フィルタとして、水田や池などの水が溜まっている場所を覆うシートとして、土壌を覆うシートとして、土壌に埋設するシートとして、または土埃などの粉じん除去用気体フィルタとして使用することにより、セシウムを吸収することのできる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
紺青はセシウムを吸収する性能があり、また、放射性セシウムも吸収する性能があることが知られている。そのため、紺青を粉末状のまま、或いは水に分散させたサスペンジョンの状態で、所望箇所に散布することによって、セシウム又は放射性セシウムを吸収し、低減することが期待できる。しかしながら、紺青を粉末状又はサスペンジョンの状態で散布すると、セシウムを吸収した紺青を回収することが困難になり、場合によっては、セシウムを吸収した紺青が植物に吸収され、植物を汚染してしまうという懸念があった。
【0003】
【特許文献1】特開2004-269024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、紺青を不織布に担持させれば、セシウムを吸収した紺青を回収するのが容易ではないかと考えた。紺青の量が多ければ多いほど、紺青によるセシウム又は放射性セシウムの吸収作用に優れるため、好適であるように考えていたが、紺青による吸収作用は優れているものの、液体フィルタや不織布を土壌に埋設した場合に、不織布から紺青が溶出してしまい、紺青の回収という、本来の目的を達成できない場合があった。また、気体フィルタとして使用する場合でも、風雨にさらされたり、濃霧時の外気をろ過する際など、気体フィルタが濡れた状態になると、紺青を含んだ水が気体フィルタから垂れ落ちて、回収することが困難になる懸念があった。
【0005】
なお、紺青によるセシウム又は放射性セシウムの吸収作用を狙ったものではないが、含浸剤が含浸処理された不織布と天然粘着剤を使用した保護シートであり、天然粘着剤が顔料を含有することができ、顔料として紺青を開示する保護シートが知られている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1は具体的にどの程度の量の紺青を含有するのか開示するものではないし、紺青の溶出の程度について、開示又は示唆するものではない。
【0006】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、セシウムを吸収した紺青を、溶出させることなく回収することが容易な不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「1m^(2)あたり1g以上の紺青がバインダによって接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布であり、前記紺青の量が不織布の目付の10%以下、前記バインダ(固形分)と紺青との質量比率が70:30?95:5、かつ水中への紺青の溶出率が5%以下であることを特徴とする、セシウムを吸収するために使用する不織布(但し、支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く)。」である。
【0009】
本発明の請求項2にかかる発明は、「不織布構成繊維が、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ノボロイド繊維の群から選ばれる、1種類以上の繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載の不織布。」である。
【0010】
本発明の請求項3にかかる発明は、「バインダが、塩化ビニル成分及び/又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の不織布。」である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1にかかる発明は、1m^(2)あたり1g以上の紺青が接着固定されているため、セシウムの吸収性能に優れるものである。また、紺青がバインダによって接着固定されている結果として、水中への溶出率が5%以下と紺青がしっかりと固定されているため、セシウムを吸収した紺青を溶出させることなく、回収することが容易な不織布である。
【0012】
本発明の請求項2にかかる発明は、紺青量が多く、しかもセシウムを吸収した紺青を溶出させることなく、回収することが容易であるため、セシウムを吸収するために好適に使用できる。
【0013】
本発明の請求項3にかかる発明は、不織布構成繊維が、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ノボロイド繊維の群から選ばれる、1種類以上の繊維からなり、これら繊維は耐候性に優れているため、土壌、河川、水田、池などの屋外において使用しても、劣化することなく、長期間にわたって使用することができる。
【0014】
本発明の請求項4にかかる発明は、塩化ビニル成分及び/又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダからなり、このバインダは耐候性に優れているため、土壌、河川、水田、池などの屋外において使用しても、劣化することなく、長期間にわたって使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の不織布はセシウムの吸収性に優れているように、1m^(2)あたり1g以上の紺青がバインダによって接着固定されている。
【0016】
紺青は一般式MFe[Fe(CN)_(6)](M=NH_(4)、K、Fe)で表され、アンモニウム紺青が一般的で好ましい。この紺青はセシウムイオンとイオン交換するか、アンモニウム紺青結晶の空孔にセシウムイオンを吸着することによって、セシウムを吸収できることが知られている。
【0017】
この紺青はセシウムの吸収性に優れているように、不織布1m^(2)あたり1g以上の量でバインダによって接着固定されている。紺青の量が多い方がセシウムの吸収量が多くなるため、不織布1m^(2)あたり3g以上であるのが好ましく、5g以上であるのがより好ましい。なお、紺青の量に上限はないが、紺青の量が不織布の目付の10%を超えると、バインダによって紺青を強固に接着固定することができず、水中への紺青の溶出量が多くなる傾向があるため、不織布の目付の10%以下であるのが好ましい。本発明における「不織布1m^(2)あたり」というのは、不織布の最も面積の広い面の1m^(2)あたり、という意味である。
【0018】
本発明の不織布はこのような紺青が水中へ溶出しにくく、回収しやすいように、バインダによって接着固定したものであるが、本発明の不織布を、セシウムを吸収するために使用する場合、屋外で使用する場合が多いため、不織布構成繊維は屋外において劣化しにくい、合成繊維から構成されているのが好ましい。より具体的には、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、フッ素繊維、ノボロイド繊維などの合成繊維を例示できる。これらの中でも、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維及び/又はノボロイド繊維は、特に耐候性に優れているため、これら繊維を1種類以上含んでいるのが好ましい。
【0019】
また、2種類以上の合成樹脂成分からなる複合型合成繊維であっても良い。複合型合成繊維の表面を構成する合成樹脂成分が低融点であれば、繊維形態を維持したまま、低融点合成樹脂成分によって融着することができる。この複合型合成繊維の断面形態としては、例えば、芯鞘型(偏芯型を含む)、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、多層積層型を挙げることができる。この複合型合成繊維であっても、耐候性に優れるように、前述のような合成繊維構成樹脂一種類以上から構成されているのが好ましい。
【0020】
本発明の不織布を構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、適度な見掛密度を有し、通水性や土壌などの対象物との接触性に優れているように、1?50dtexであるのが好ましく、1?30dtexであるのがより好ましい。また、繊維長も特に限定するものではないが、1mm以上であるのが好ましく、不織布の製造方法によっては、連続繊維であることもできる。好ましくは、3?100mmである。なお、繊度及び/又は繊維長の点で異なる繊維を2種類以上含んでいても良い。
【0021】
本発明の不織布においては、紺青がバインダによって、接着固定された状態にあるが、本発明の不織布を、セシウムを吸収するために使用する場合、屋外で使用する場合が多いため、屋外において劣化しにくい、合成樹脂からなるバインダで接着固定されているのが好ましい。より具体的には、塩化ビニル成分、塩化ビニリデン成分、酢酸ビニル成分、エチレン成分、アクリル酸エステル成分、ウレタン成分などの合成樹脂成分を含むバインダを挙げることができる。これらの中でも、耐候性に優れ、屋外において劣化しにくい、塩化ビニル成分及び/又は塩化ビニリデン成分を含むバインダを好適に使用することができる。特に、塩化ビニル成分又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダ、或いは塩化ビニル成分と塩化ビニリデン成分とを合計で50mass%以上含むバインダを好適に使用することができる。なお、バインダの状態としては、例えば、エマルジョン、ラテックス、サスペンジョン、溶液などであることができ、特に限定するものではない。
【0022】
なお、不織布からの紺青の溶出を効果的に抑えるために、架橋剤(例えば、メラミン系、オキサゾリン系、イソシアネート系等)をバインダに添加することができる。架橋剤以外にも、水との接触を良好にするため、界面活性剤を添加することもできる。更に、撥油剤、浸透剤、難燃剤等の機能性薬剤をバインダに添加することができる。
【0023】
本発明の不織布はこのようなバインダによって紺青が接着固定されたものであるが、紺青によるセシウムの吸収作用を阻害せず、しかも紺青の水中への溶出量を少なくできるように、バインダ(固形分)と紺青との質量比率は50:50?99:1であるのが好ましく、60:40?97:3であるのがより好ましく、70:30?95:5であるのが更に好ましい。
【0024】
本発明の不織布はこのようなバインダによって紺青が接着固定されたものであるが、水中への紺青の溶出率が5%以下である。本発明の不織布を、セシウムを吸収するために屋外に設置した場合、雨等に晒されることになるが、紺青がセシウムを吸収したとしても、紺青自体が不織布から溶出してしまうと、紺青の回収が困難になるため、本発明においては、不織布における紺青の水中への溶出率が5%以下である。溶出率が低いほうが、紺青の回収性に優れているため、溶出率は3%以下であるのが好ましく、1%以下であるのがより好ましく、0.8%以下であるのが更に好ましく、0.7%以下であるのが更に好ましく、0.6%以下であるのが更に好ましく、0.5%以下であるのが更に好ましい。
【0025】
なお、本発明における「溶出率」は次の手順により得られる値である。
(1)不織布から5cm角の試験片(面積:0.0025m^(2))を採取する。
(2)試験片を200mLの純水(温度:23℃)に浸漬し、1時間放置した後、試験片を純水から取り出す。
(3)試験片を取り出した純水の695nmにおける吸光度を、分光光度計(島津製作所製、UV-1650PC)を用いて測定し、純水中における紺青濃度(=C、単位:mg/L)を算出する。
(4)紺青濃度をもとに、次の式により紺青の純水への溶出量(=Em、単位:mg/m^(2))を算出する。
Em=C/[(1000/200)×0.0025]=80C
(5)溶出量(Em)と1m^(2)あたりの紺青量(=M、単位:g)から、紺青の純水への溶出率(=Er、単位:%)を算出する。
Er=(Em/1000M)×100=Em/10M
【0026】
本発明の不織布の目付は特に限定するものではないが、30?3000g/m^(2)であるのが好ましく、50?1000g/m^(2)であるのがより好ましい。目付が30g/m^(2)未満であると、不織布の強度が低くなり、取り扱い時に引っ張ったりして破断しやすくなる傾向があり、目付が3000g/m^(2)を超えると、重量が重たくなり、取り扱い性が低下し、また、厚みが厚くなりやすく、所望厚さにするのが困難になる傾向があるためである。なお、目付は不織布1m^(2)あたりの質量である。
【0027】
また、不織布の厚さは1?100mmであるのが好ましく、2?50mmがより好ましい。厚さが1mm未満であると、見掛密度が高すぎる不織布となり、通水性や土壌との接触面積の低下が起こりやすくなる傾向があり、厚さが100mmを超えると密度が低くすぎる不織布となり、不織布の強度が低下したり、取り扱い性が低下する傾向があるためである。なお、厚さは0.5g/cm^(2)荷重下で測定した値である。
【0028】
更に、不織布の見掛密度は0.005?0.1g/cm^(3)であるのが好ましく、0.007?0.07g/cm^(3)がより好ましい。見掛密度が0.005g/cm^(3)未満であると、不織布の強度が低下したり、取り扱い性が低下する傾向があり、見掛密度が0.1g/cm^(3)を超えると、通水性や土壌との接触面積の低下が起こりやすくなる傾向があるためである。
【0029】
本発明の不織布は紺青量が多く、しかもセシウムを吸収した紺青を溶出させることなく、回収することが容易であるため、セシウムを吸収するために好適に使用できる。
【0030】
本発明の不織布は、例えば、繊維ウエブを形成した後、繊維同士を結合して結合繊維ウエブを形成し、更に、結合繊維ウエブに対して、紺青をバインダで接着固定することによって製造することができる。
【0031】
より具体的には、繊維ウエブは、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、メルトブロー法、スパンボンド法などの直接法によって形成することができる。本発明の不織布をセシウムの吸収に使用する場合、不織布内部にも紺青が接着固定されていると、紺青量を多くすることができるため好ましいが、不織布内部にも紺青を接着固定させやすいように、比較的粗い構造の繊維ウエブを形成できる、乾式法によって繊維ウエブを形成するのが好ましい。なお、繊維ウエブは1層ではなく、繊維配合が同じ又は異なる繊維ウエブを2層以上積層した積層繊維ウエブとしても良い。更に、繊維配向は一方向であっても、多方向であっても、クリスクロスであっても、ランダムであっても良く、特に限定するものではない。
【0032】
次いで、繊維ウエブの繊維同士を結合して結合繊維ウエブを形成するが、繊維同士の結合方法としては、例えば、ニードルや水流によって絡合させる方法、繊維ウエブに低融点の熱融着繊維を含ませておき、この熱融着繊維を融着させる方法、バインダによって接着する方法、或いはこれらを併用する方法を挙げることができる。
【0033】
なお、熱融着繊維を融着させる場合、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、などを挙げることができるが、比較的粗い構造の結合繊維ウエブを形成できる、熱風乾燥機により加熱するのが好ましい。
【0034】
また、バインダによって接着する場合、バインダとして、紺青を接着固定するためのバインダと同様のバインダを使用することができ、耐候性に優れている、塩化ビニル成分又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダ、或いは塩化ビニル成分と塩化ビニリデン成分とを合計で50mass%以上含むバインダを好適に使用することができる。なお、バインダの状態としては、例えば、エマルジョン、ラテックス、サスペンジョン、溶液などであることができ、特に限定するものではない。また、紺青を接着固定するためのバインダを、繊維同士を接着して結合繊維ウエブとするためのバインダとして作用させることもできる。なお、バインダを繊維ウエブに対して付与する方法としては、例えば、繊維ウエブをバインダ浴中に浸漬する方法、繊維ウエブにバインダを塗布する方法、繊維ウエブにバインダを散布する方法、により繊維ウエブにバインダを付与した後、乾燥する方法を挙げることができる。
【0035】
そして、バインダで結合繊維ウエブに紺青を接着固定して本発明の不織布を製造することができるが、接着固定方法としては、例えば、結合繊維ウエブをバインダ浴中に浸漬する方法、結合繊維ウエブにバインダを塗布する方法、結合繊維ウエブにバインダを散布する方法、により結合繊維ウエブにバインダを付与した後、乾燥する方法を挙げることができる。これらの中でも、結合繊維ウエブの内部においても紺青を接着固定できるように、結合繊維ウエブをバインダ浴中に浸漬する方法により紺青含有バインダを付与するのが好ましい。なお、乾燥する方法は特に限定するものではないが、結合繊維ウエブが比較的粗い構造を有する場合には、その構造を維持できるように、熱風乾燥機により乾燥するのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(繊維ウエブA)
モダアクリル繊維[プロテックス(登録商標)、(株)カネカ、繊度:7.8dtex、繊維長:64mm]50mass%と、ポリエステル繊維(ユニチカエステル H-38F、繊度:14dtex、繊維長:51mm)50mass%とを混合し、カード機により開繊して、一層構造のクロスレイ繊維ウエブA(目付:70g/m^(2))を形成した。
【0038】
(繊維ウエブB)
目付を230g/m^(2)としたこと以外は繊維ウエブAと同様にして、クロスレイ繊維ウエブB(目付:230g/m^(2))を形成した。
【0039】
(繊維ウエブ結合用バインダ)
次の固形分質量比率で混合して、繊維ウエブ結合用バインダを調製した。
(1)ポリ塩化ビニルエマルジョンバインダ(CBC社、VYCAR351、固形分:57%、塩化ビニル成分:100mass%):65mass%
(2)塩化ビニル-エチレン系多元共重合体エマルジョンバインダ[スミカフレックス850HQ(登録商標)、住友化学製、固形分:50%、塩化ビニル成分:60mass%]:35mass%
【0040】
(紺青含有バインダ)
紺青含有バインダa?hを表1に示す質量割合で配合して調合した。
【0041】
【表1】

(1)ポリ塩化ビニルエマルジョンバインダ(CBC社、VYCAR351、固形分:57%、塩化ビニル成分:100mass%)
(2)塩化ビニル-エチレン系多元共重合体エマルジョンバインダ住友化学製、[スミカフレックス850HQ(登録商標)固形分:50%、塩化ビニル成分:60mass%]
(3)紺青粉末(大日精化製、ベレンスブルー)
【0042】
(実施例1?5、比較例1?3)
表2に示す繊維ウエブA又は繊維ウエブBを形成し、繊維ウエブ結合用バインダをスプレーにより繊維ウエブA又は繊維ウエブBに、表2で示す量だけ付与した後、150℃の熱風乾燥機により乾燥し、繊維同士を結合して結合繊維ウエブを形成した。
【0043】
その後、表2に示す紺青含有バインダa?hからなる浴中に、結合繊維ウエブを浸漬し、引き上げ、余剰の紺青含有バインダa?hを除去した後、150℃の熱風乾燥機により乾燥し、紺青を結合繊維ウエブに接着固定して、不織布を作製した。
【0044】
【表2】

【0045】
(溶出率の測定)
実施例1?5及び比較例1?3の不織布の、水中への紺青の溶出率を前述の方法により算出した。なお、分光光度計の定量下限は0.50mg/Lで、定量上限は20mg/Lであった。この結果は表3に示す通りであった。なお、比較例2においては紺青溶出率が8%未満、実施例4においては4%未満と比較的高い値となったが、これは分光光度計の定量下限が0.50mg/Lであったこと、及び比較例2及び実施例4における紺青量が少なかったことに起因して、計算上、高い値になったと考えられ、実際には、実施例1(<0.67)の溶出率よりも低いと考えられた。
【0046】
【表3】

【0047】
(セシウム吸収性の評価)
同じ目付である実施例1、4、5及び比較例2、3の不織布を2×5cmの長方形に切断して試験片を調製した後、濃度100μg/L(=0.1ppm)のセシウム溶液(100mL)中に試験片を浸漬し、1分後、5分後、10分後、30分後、60分後、3時間後、及び10日後における、セシウム濃度をそれぞれ測定した。なお、比較例1の不織布は同じ目付であるが、溶出が著しかったため、評価しなかった。また、セシウム濃度の測定は、原子吸光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 SOLAAR M6 Kk-2、光の波長:852.1nm)を用いて測定した。
【0048】
この各経過時間後のセシウム濃度(Ca)と初期のセシウム濃度(Ci)から、次の式によりセシウム吸収率(Ar)を算出した。これらの結果は表4に示す通りであった。
Ar=[(Ci-Ca)/Ci]×100
【0049】
【表4】

【0050】
表3及び表4の結果から、本発明の不織布は紺青を溶出させることなく、紺青を回収することが容易であり、しかもセシウムの吸収性にも優れる不織布であることがわかった。したがって、本発明の不織布はセシウムを吸収する用途に好適に使用できるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の不織布は液体フィルタ又は気体フィルタの濾過材、水田や池などの水が溜まっている場所を覆うシート、土壌を覆うシート、土壌に埋設するシートとして、または土埃などの粉じん除去用気体フィルタとして使用することにより、セシウムを吸収し、除去することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 1m^(2)あたり1g以上の紺青がバインダによって接着固定された、繊度が1?50dtexの繊維からなる不織布であり、前記紺青の量が不織布の目付の10%以下、前記バインダ(固形分)と紺青との質量比率が70:30?95:5、かつ水中への紺青の溶出率が5%以下であることを特徴とする、セシウムを吸収するために使用する不織布(但し、支持基材層とフェロシアン化金属化合物を含有するセシウム除去材層とを有するセシウム除去性壁紙を除く)。
【請求項2】 不織布構成繊維が、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ノボロイド繊維の群から選ばれる、1種類以上の繊維からなることを特徴とする、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】 バインダが、塩化ビニル成分及び/又は塩化ビニリデン成分を50mass%以上含むバインダからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の不織布。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-08-29 
出願番号 特願2011-192462(P2011-192462)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (D06M)
P 1 651・ 161- YAA (D06M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
見目 省二
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5762889号(P5762889)
権利者 日本バイリーン株式会社
発明の名称 不織布  

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