• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D03D
審判 全部申し立て 2項進歩性  D03D
管理番号 1322257
異議申立番号 異議2016-700142  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-19 
確定日 2016-09-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5770981号発明「遮熱性織編物および衣料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5770981号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第5770981号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 特許第5770981号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5770981号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成22年6月30日に特許出願され、平成27年7月3日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1ないし4に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年5月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年6月15日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求があり、平成28年7月20日(特許庁受付)に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「艶消し剤を1.0重量%以上含み」とあるのを、「艶消し剤を2.5?5.0重量%含み」に訂正し、
「かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上である」とあるのを、「かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2について、引用しない形式に改め、さらに、「艶消し剤を1.0重量%以上含み」とあるのを、「艶消し剤を2.5?5.0重量%含み」とし、「かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上である」とあるのを、「かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」とすることにより、「艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内である、単繊維の断面形状が、2箇所以上のくびれ部を有する断面扁平度2?6の扁平断面であるポリエステルマルチフィラメントを含み、織編物にカレンダー加工および撥水加工が施されており、かつ織編物が、下記式に定義するカバーファクターCFが1200?1692の織物であり、かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)であることを特徴とする遮熱性織編物。
CF=(DWp/1.1)^(1/2)×MWp+(DWf/1.1)^(1/2)×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」に訂正する。
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれかに記載の遮熱性織編物を用いてなる衣料。」とあるのを「請求項1または請求項2に記載の遮熱性織編物を用いてなる衣料。」に訂正する。

(2)一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正前の請求項1及びそれぞれが請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし4は一群の請求項であり、訂正事項1ないし4による訂正は当該一群の請求項1ないし4に対し請求されたものである。
イ.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「艶消し剤」について、本件特許明細書の段落【0026】の「[実施例1]艶消し剤としての二酸化チタンを2.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを4つ山扁平断面(くびれ部3個所)に穿孔された口金より、紡糸温度300℃で紡出し・・・ポリエステルマルチフィラメント44dtex/36filを得て経糸用とした。」との記載、及び、段落【0015】の「・・・該ポリエステルポリマー中には、艶消し剤(二酸化チタン)がポリエステルポリマー重量対比1.0重量%以上(より好ましくは1.0?5.0重量%)含まれることが肝要である。・・・」との記載に基づいて、その含まれる量を「2.5?5.0重量%」に減縮するとともに、訂正前の請求項3の「織編物の目付けが120g/m^(2)以下である」との記載、及び、段落【0017】の「また、目付としては、優れた遮熱性と軽量性とを両立させる上で120g/m^(2)以下(より好ましくは30?80g/m^(2))であることが好ましい。」との記載に基づいて、「織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」ことを特定するものである。
ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2について、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する形式であったものを、請求項1を引用しない形式とするとともに、訂正事項1と同様に、「艶消し剤」の含まれる量を「2.5?5.0重量%」に減縮するとともに、「織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」ことを特定するものである。
ゆえに、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ.訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1または請求項2または請求項3を引用するものであったところ、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正事項1ないし3を踏まえ、その引用関係を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内であるポリエステルマルチフィラメントを含み、織編物にカレンダー加工および撥水加工が施されており、かつ織編物が、下記式に定義するカバーファクターCFが1200?1692の織物であり、かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)であることを特徴とする遮熱性織編物。
CF=(DWp/1.1)^(1/2)×MWp+(DWf/1.1)^(1/2)×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項2】
艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内である、単繊維の断面形状が、2箇所以上のくびれ部を有する断面扁平度2?6の扁平断面であるポリエステルマルチフィラメントを含み、織編物にカレンダー加工および撥水加工が施されており、かつ織編物が、下記式に定義するカバーファクターCFが1200?1692の織物であり、かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)であることを特徴とする遮熱性織編物。
CF=(DWp/1.1)^(1/2)×MWp+(DWf/1.1)^(1/2)×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の遮熱性織編物を用いてなる衣料。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

・請求項 1?4
・刊行物
1.特開2004-149958号公報
・備考
刊行物1は、特許異議申立ての甲第1号証である。
本件特許の請求項1?4にかかる発明(以下、「本件特許発明1?4」という。)は、刊行物1に記載された発明である。

理由2.本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・刊行物
1.特開2004-149958号公報
2.特開2008-101295号公報
3.特開2008-179917号公報
4.特開2004-60064号公報
5.特許第4362765号公報
・備考
刊行物2?5は、それぞれ、特許異議申立ての甲第2号証?甲第5号証である。
本件特許発明1は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1、3?5にも記載されたような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。

・請求項 2?4
・刊行物 1?5
・備考
本件特許発明2?4は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1、3?5にも記載されたような周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。

(3)判断
以下に述べるとおり、上記理由1及び2はいずれも解消された。
ア.理由1について
訂正の認容により、本件発明1、2、4の遮熱性織編物は、「艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内であるポリエステルマルチフィラメントを含」むこと、及び、「織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」ことを発明特定事項に含むものとなった。
一方、理由1で引用された刊行物1には、1)織編物を構成する合成繊維に、紫外線遮蔽性や光沢感を解消するための無機粒子(艶消し剤)を1.0質量%以上含有させること(段落【0007】を参照)、2)総繊度を60デシテックス以下とすることが好ましいこと(段落【0012】を参照)、3)目付けを150g/m^(2)以下とすることが好ましいこと(段落【0015】を参照)が記載されているものの、織編物を構成する合成繊維に含まれる無機粒子(艶消し剤)を2.5?5.0重量%とし、かつ、総繊度を25?55dtexの範囲内とし、かつ、目付けを30?80g/m^(2)とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1、2、4は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。

イ.理由2について
刊行物1ないし5には、本件発明1、2、4における発明特定事項である「艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内であるポリエステルマルチフィラメントを含」むこと、及び、「織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」こと(以下、「特徴的発明特定事項」という。)について、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1、2、4は、上記特徴的発明特定事項を有することにより、本件特許明細書の段落【0004】に記載された「優れた遮熱性だけでなく優れた軽量性をも有する遮熱性織編物および衣料を提供する」という課題を解決したものである。

刊行物2には、単糸繊度が、0.5?1.5dtexであり、総繊度が15?40dtexである合成繊維マルチフィラメントを含み、必要に応じて、カレンダー加工や撥水加工を施し、カバーファクターの総和が1300?2000であり、目付けが15?60g/m^(2)である、軽量、薄地でありながら、引裂き強度に優れた薄地織物、およびそれを用いた、スポーツ用衣料、ふとん側地、または中袋用織物の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているが、艶消し剤を含み得ることや、赤外線反射率については、全く記載されていない。
そして、甲2発明について、「艶消し剤を2.5?5.0重量%含ませ、かつ、総繊度を25?55dtexの範囲内とし、かつ、目付けを30?80g/m^(2)とする」動機付けとなる事項は、刊行物1、3?5にも記載されていない。
したがって、本件発明1、2、4は、甲2発明及び刊行物1、3?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成28年7月20日付け意見書で、訂正により追加された「艶消し剤を2.5?5.0重量%」とする点及び「織編物の目付けが30?80g/m^(2)である」点は、その数値限定に臨界的意義が認められないから、本件発明1、2は依然として新規性進歩性を有しない旨の意見を述べている。
しかしながら、上記(3)で述べたとおり、刊行物1ないし5には、本件発明1、2、4のように「艶消し剤を2.5?5.0重量%とし、かつ、総繊度を25?55dtexの範囲内とし、かつ、目付けを30?80g/m^(2)とする」ことについて、記載も示唆もされていない。
そして、仮に上記数値限定に臨界的意義が認められないとしても、そのことは、「艶消し剤を2.5?5.0重量%とし、かつ、総繊度を25?55dtexの範囲内とし、かつ、目付けを30?80g/m^(2)とする」ことを直接的に意味するものではなく、その動機付けにもなり得るものではない。
したがって、上記意見は失当である。

(5)むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1、2、4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内であるポリエステルマルチフィラメントを含み、織編物にカレンダー加工および撥水加工が施されており、かつ織編物が、下記式に定義するカバーファクターCFが1200?1692の織物であり、かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)であることを特徴とする遮熱性織編物。
CF=(DWp/1.1)^(1/2)×MWp+(DWf/1.1)^(1/2)×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項2】
艶消し剤を2.5?5.0重量%含みかつ単繊維繊度が1.5dtex以下、かつ総繊度が25?55dtexの範囲内である、単繊維の断面形状が、2箇所以上のくびれ部を有する断面扁平度2?6の扁平断面であるポリエステルマルチフィラメントを含み、織編物にカレンダー加工および撥水加工が施されており、かつ織編物が、下記式に定義するカバーファクターCFが1200?1692の織物であり、かつ波長700?1400nmの平均赤外線反射率が48%以上であり、かつ織編物の目付けが30?80g/m^(2)であることを特徴とする遮熱性織編物。
CF=(DWp/1.1)^(1/2)×MWp+(DWf/1.1)^(1/2)×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の遮熱性織編物を用いてなる衣料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-07 
出願番号 特願2010-149887(P2010-149887)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (D03D)
P 1 651・ 121- YAA (D03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 勇介増田 亮子  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 井上 茂夫
渡邊 豊英
登録日 2015-07-03 
登録番号 特許第5770981号(P5770981)
権利者 帝人フロンティア株式会社
発明の名称 遮熱性織編物および衣料  
代理人 為山 太郎  
代理人 為山 太郎  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ