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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
管理番号 1322278
異議申立番号 異議2016-700193  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-07 
確定日 2016-10-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5777812号発明「ヒータおよびこれを備えたグロープラグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5777812号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5について訂正することを認める。 特許第5777812号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5777812号の請求項1ないし5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2013年6月27日(優先権主張 2012年6月29日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月17日に特許権の設定登録がなされたところ、平成28年3月7日に異議申立人平林恭子により特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年5月23日付けで取消理由を通知した。
これに対し、本件特許権者より、平成28年7月19日に訂正請求書(以下、これに係る訂正を「本件訂正」という。)及び意見書が提出された。その後、当審において異議申立人に対し、平成28年7月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法120条の5第5項)をしたが、異議申立人から意見書は提出されなかった。

第2 本件訂正の適否の判断
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、以下の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1に記載のヒータと、前記導体線路に電気的に接続されるとともに前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたグロープラグ。」とあるのを、「請求項1に記載のヒータと、前記リードに電気的に接続されるとともに前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたグロープラグ。」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項5中の「前記導体線路」に相当する記載が請求項1に存在しない。特許明細書には、「ここで、導体線路6(抵抗体2およびリード3)には導電体21,31とセラミック粒子22,32とが含まれている。」(【0020】)、「本実施の形態のヒータ10は、図4に示すように、リード3に電気的に接続されるとともにヒータ10を保持する金属製保持部材4を備えたグロープラグ100として使用することができる。」(【0030】)と記載されており、これらの記載及び第4図の記載からみると、前記訂正事項は、「前記導体線路」の指し示すものが「リード」であることを明確にするものであるから、前記訂正事項は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、特許明細書の【0020】及び【0030】の上記記載から、本件訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正後の請求項1ないし5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。

【請求項1】
セラミックスからなる絶縁基体と、該絶縁基体に埋設された抵抗体と、該抵抗体の端部に接続されたリードとを備えたヒータであって、前記抵抗体および前記リードはともに導電体および該導電体中に分散している絶縁性セラミック粒子を含有しており、前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子よりも前記抵抗体に含まれる前記絶縁性セラミック粒子の方が小さいヒータ。
【請求項2】
前記抵抗体および前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子はともに針状の粒子からなり、前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子の長軸の長さよりも前記抵抗体に含まれる前記絶縁性セラミック粒子の長軸の長さの方が短い請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記絶縁性セラミック粒子は前記絶縁基体を形成する前記セラミックスと同じ材料からなる請求項1または請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記リードは、前記抵抗体の端部を包み込むようにして前記抵抗体の端部に接続されている請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のヒータ。
【請求項5】
請求項1に記載のヒータと、前記リードに電気的に接続されるとともに前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたグロープラグ。

2 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し、当審において、平成28年5月23日付けで通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。

特許請求の範囲の請求項5には「前記導体線路に電気的に接続される」との記載があるが、この記載よりも前に「導体線路」の記載が無く、「前記導体線路」の「前記」が何を指し示しているのかが不明確であるから、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

3 判断
本件訂正により、訂正後の請求項5中の「前記リード」は、請求項5が引用する請求項1の「リード」を指し示すことが明確となった。
そして、訂正後の請求項5には、他に不明瞭なところはない。
よって、取消理由は解消された。

4 むすび
以上のとおりであるから、前記取消理由によっては、本件特許(請求項1ないし5に係る特許)を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

なお、異議申立人は、異議申立書において、本件発明1は、甲第1号証(特開2006-49279号公報)記載事項及び甲第2号証(特開2010-210134号公報)記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべきものである旨を主張している。
しかしながら、甲第1号証には、本件発明1の「前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子よりも前記抵抗体に含まれる前記絶縁性セラミック粒子の方が小さい」という構成を開示していない。また、甲第2号証には、「高抵抗となる発熱部を構成する第1の導電性セラミックは、低抵抗となるリード部を構成する第2の導電性セラミックに比べて、その材料粉末に含まれる窒化珪素が細かく」と記載されているが、「バインダ量が多いため、収縮率が大きい。」(【0020】)と記載されていて、甲第1号証及び甲第2号証には、ヒータ内部に生じる熱応力が特定の部位に偏ることを低減させるという課題の開示がなく、甲第1号証記載事項に甲第2号証記載事項を適用する動機付けがない。
そうすると、本件発明1は、甲第1号証記載事項及び甲第2号証記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、異議申立はされていないが、本件発明1と甲第2号証についても検討すると、甲第2号証記載のものは、「本実施形態では、基体21を構成する絶縁性セラミック材料として、窒化珪素が用いられる。また、抵抗体22を構成する材料として、窒化珪素を主成分とし、タングステンカーバイトを含有した導電性セラミック材料(焼成後に導電性を有する材料)が用いられる。」【0039】と記載されているように、抵抗体は絶縁性セラミックである窒化珪素を主成分としているものであるから、甲第2号証には、本件発明1の「抵抗体」および「リード」において、「絶縁性セラミック粒子」が「導電体中に分散している」という構成を開示していない。
そうすると、本件発明1は、甲第2号証記載事項と同一の発明とはいえなく、甲第2号証記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2ないし5は、本件発明1を更に減縮したものであるから、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる絶縁基体と、該絶縁基体に埋設された抵抗体と、該抵抗体の端部に接続されたリードとを備えたヒータであって、前記抵抗体および前記リードはともに導電体および該導電体中に分散している絶縁性セラミック粒子を含有しており、前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子よりも前記抵抗体に含まれる前記絶縁性セラミック粒子の方が小さいヒータ。
【請求項2】
前記抵抗体および前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子はともに針状の粒子からなり、前記リードに含まれる前記絶縁性セラミック粒子の長軸の長さよりも前記抵抗体に含まれる前記絶縁性セラミック粒子の長軸の長さの方が短い請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記絶縁性セラミック粒子は前記絶縁基体を形成する前記セラミックスと同じ材料からなる請求項1または請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記リードは、前記抵抗体の端部を包み込むようにして前記抵抗体の端部に接続されている請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のヒータ。
【請求項5】
請求項1に記載のヒータと、前記リードに電気的に接続されるとともに前記ヒータを保持する金属製保持部材とを備えたグロープラグ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-27 
出願番号 特願2014-522670(P2014-522670)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H05B)
P 1 651・ 121- YAA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 嶌田 康平土屋 正志  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 大山 広人
山崎 勝司
登録日 2015-07-17 
登録番号 特許第5777812号(P5777812)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 ヒータおよびこれを備えたグロープラグ  

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