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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1322317
異議申立番号 異議2016-700895  
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-21 
確定日 2016-12-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第5889537号発明「ダイボンダ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5889537号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5889537号(以下、「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年3月23日に特許出願され、平成28年2月26日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人石田祥子により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「ダイをピックアップするピックアップ装置と、
前記ダイを吸着して基板上に実装するためのコレットと、
前記基板上に前記ダイを実装する前に前記基板上の異物を除去するクリーニングノズルと、
を有し、
前記基板はその移動方向に長い矩形状であり、
前記クリーニングノズルの長手方向は前記基板の移動方向と同じ方向に配置され、
前記クリーニングノズルは前記基板の上方に配置され、前記基板の移動方向と直交する方向に前記基板の幅に応じて設定された移動量を移動することを特徴とするダイボンダ。」

第3 申立ての概要
1 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、下記2の証拠方法を提出し、(1)本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第3号証、又は甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、(2)本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張している。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2003-218136号公報
甲第2号証:特開2002-166239号公報
甲第3号証:特開2002-50655号公報
甲第4号証:特開2000-107715号公報

第4 甲号証の記載
1 甲第1号証の記載と甲1発明
(1)甲第1号証
甲第1号証は、本件特許についての出願日前に日本国内において頒布された刊行物であって、次のとおりの記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板に塗布されたボンド上にチップを搭載する電子部品実装装置及び実装方法に関するものである。」
イ「【0015】搬送路100のボンド塗布手段20よりも下流にはチップ搭載手段30が設けられている。チップ搭載手段30は、ヘッド移動機構31やヘッド移動機構31の前面に設けられた移載ヘッド32等から成っている。移載ヘッド32はチップPを真空吸着するノズル33を有している。移載ヘッド32は、ノズル33を上下動させる機能を有している。また移載ヘッド32は、ヘッド移動機構31によりY方向へ移動する。また基板11は、基板搬送手段34により搬送路100上をX方向へピッチ送りされる。図1において実線で示す移載ヘッド32が位置するエリアはチップ搭載ステージ兼観察ステージBとなっている。
【0016】チップ搭載ステージBの側方にはチップ供給部40が設けられている。本実施の形態では、チップ供給部40はテーブル41上に複数のチップを貼着した粘着シート42を保持している。テーブル41は、その下方に設けられた可動テーブル(図示せず)により、X方向、Y方向へ水平移動する。移載ヘッド32はヘッド移動機構31の駆動によりチップ搭載ステージBとチップ供給部40の間をY方向に移動し(点線で示す移載ヘッド32を参照)、粘着シート42上のチップPをノズル33で真空吸着してピックアップし、基板11の上方へ移動する。そこでノズル33は上下動作を行い、チップPを基板11のチップ搭載位置12に塗布されたボンド24上に搭載する。なお、チップ供給部40としては、粘着シート42以外にもトレイやフィーダ等チップを1個づつノズル33に供給できるものであればよい。」
ウ 図1には、基板の長手方向がX方向であることが記載されている。
(2)甲1発明
前記(1)より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。」)が記載されていると認められる。
「テーブル41上に複数のチップを貼着した粘着シート42を保持しているチップ供給部40と、
粘着シート42上のチップPをノズル33で真空吸着してピックアップし、基板11の上方へ移動し、チップPを基板11のチップ搭載位置12に塗布されたボンド24上に搭載する移載ヘッドとを有し、
基板11は長手方向に、基板搬送手段34により搬送路100上をピッチ送りされる、
基板に塗布されたボンド上にチップを搭載する電子部品実装装置。」

2 甲第2号証の記載
(1)甲第2号証
甲第2号証は、本件特許についての出願日前に日本国内において頒布された刊行物であって、次のとおりの記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラスなどの基板表面に付着している異物を超音波振動空気により除去する気体洗浄による基板洗浄方法に関するものである。」
イ「【0011】そのため、本発明は、ガラスなどの被洗浄基板が載置されるテーブルと、同テーブル上の上記被洗浄基板を超音波振動空気により洗浄する洗浄ヘッドとを含み、上記テーブルの位置を固定とし、これに対して上記洗浄ヘッドを往復動させることを特徴としている。
【0012】これによれば、洗浄ヘッドをテーブルの幅範囲内で移動させればよく、洗浄装置の占有スペースを従来装置の約半分とすることができる。」
ウ「【0020】次に、図4を参照して、本発明の洗浄方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、洗浄ヘッド20がテーブル10の例えば左端位置の初期位置にあるとき、ワーク運搬手段(図示省略)により1枚目のガラス基板1aがテーブル10上に載置される。ガラス基板1aはテーブル10に負圧吸着される。
【0021】次に、図4(b)に示すように、洗浄ヘッド20が往路としてテーブル10の右端位置に向けて走行し、超音波振動空気にてガラス基板1aを洗浄する。そして、図4(c)に示すように、洗浄ヘッド20がテーブル10の右端位置に到来すると、ワーク運搬手段により洗浄済みのガラス基板1aがテーブル10から外される。
【0022】しかる後、図4(d)に示すように、ワーク運搬手段により2枚目のガラス基板1bがテーブル10上に載置されると、洗浄ヘッド20が復路としてテーブル10の左端位置(初期位置)に向けて走行し、超音波振動空気にてガラス基板1bを洗浄する。そして、図4(a)の状態に戻り以下これを繰り返す。」
(2)甲2技術事項
前記(1)より、甲第2号証には次の事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「基板表面に付着している異物を除去する基板洗浄方法において、
被洗浄基板が載置されるテーブルと、同テーブル上の上記被洗浄基板を超音波振動空気により洗浄する洗浄ヘッドとを有し、テーブルの位置は固定とし、
洗浄ヘッドがテーブルの左端位置の初期位置にあるとき、ワーク運搬手段により1枚目の基板がテーブル上に載置され、基板はテーブルに負圧吸着され、
洗浄ヘッドが往路としてテーブルの右端位置に向けて走行し、超音波振動空気にて基板を洗浄し、
洗浄ヘッドがテーブルの右端位置に到来すると、ワーク運搬手段により洗浄済みの基板がテーブルから外されること。」

3 甲第3号証の記載
(1)甲第3号証
甲第3号証は、本件特許についての出願日前に日本国内において頒布された刊行物であって、次のとおりの記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チップを基板に実装するチップ実装方法に係り、特に基板に付着したゴミや汚れ等を洗浄してからチップを基板に実装するチップ実装方法及びこれに用いられる基板洗浄装置に関する。」
イ「【0066】図3にエアーブロー洗浄手段13の構成を示す。エアーブロー洗浄手段13は、支持部材12によって超音波エアーブロー部10を固着した形態に配設されている。また、超音波エアーブロー部10の内部は超音波エアー吹出し口33とゴミ吸引口34に分かれており、耐圧ホース11aの先端は超音波エアー吹出し口33、同ホース11aの他端は吹出し用エアーポンプにつながっている。また、耐圧ホース11bの先端はゴミ吸引口34、同ホース11bの他端は吸引用エアーポンプにつながっている。
【0067】基板搬送手段7に保持された基板8が平行移動して超音波エアーブロー部10に差し掛かると耐圧ホース11aによるエアー吹出し及びエアー振動手段29(例えば超音波発生部等)によってエアーを振動させ、振動したエアー吹出し口33から振動波エアー(例えば超音波エアー等)が吹出されると同時に耐圧ホース11bによるエアー吸引を行う。
【0068】基板8は一定の速度で平行移動を続けながら、超音波エアーブロー部10下面を通過するので、吹出し口33から超音波エアー31を吹出すことによって基板8のチップ実装位置に付着したゴミ粉30を剥がし取り、剥がし取られたゴミ粉30をエアー32ごと吸引口34によって吸引する。従って、ゴミ粉30は周囲へ飛び散ることなく除去されて、基板8は拭き取り洗浄手段22方向へ平行移動を続ける。」
(2)甲3技術事項
前記(1)より、甲第3号証には次の事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「基板に付着したゴミや汚れ等を洗浄してからチップを基板に実装するチップ実装方法に用いられる基板洗浄装置であって、
エアーブロー洗浄手段13は、支持部材12によって超音波エアーブロー部10を固着した形態に配設され、
超音波エアーブロー部10の内部は超音波エアー吹出し口33とゴミ吸引口34に分かれ、
基板搬送手段7に保持された基板8が平行移動して超音波エアーブロー部10に差し掛かると、
振動したエアー吹出し口33から振動波エアーが吹出されると同時に耐圧ホース11bによるエアー吸引を行うことによって、
基板8のチップ実装位置に付着したゴミ粉30を剥がし取り、剥がし取られたゴミ粉30をエアー32ごと吸引口34によって吸引すること。」

4 甲第4号証の記載
(1)甲第4号証
甲第4号証は、本件特許についての出願日前に日本国内において頒布された刊行物であって、次のとおりの記載がある。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板表面に付着したゴミや塵等の除去対象物を取り除くための基板クリーニング装置に関するものである。」
イ「【0008】一方、スペーサ散布後の基板からスペーサ凝集体だけを除去する方法も従来から採用されている。この方法は、図11に示したウェーブクリーニング装置を用いるものであり、図11に示すように基板1は吸着ステージ2に吸着保持されており、吸着ステージ2は図面上右上と左下の1軸方向に移動する直線ステージ4の上に搭載されており、クリーニングノズルのスリット21から単体スペーサは残して凝集スペーサだけを除去する方法である。すなわち、基板1とクリーニングノズルの間隔と排気装置20の吸引力とを調整し、スペーサ単粒子を除去しない吸引条件を見い出し、スペーサ凝集だけをクリーニングノズルのスリット21から除去するようにした除去方法である。
【0009】図12は図11のウェーブクリーニング装置のクリーニングノズルの断面図であり、中空の箱体18に開口部の幅1?3mmのスリット21がクリーニング対象物の幅に合せて形成され、中空の箱体18内の空気を排気装置20で排気して、スリット21の開口部に吸引力を発生させて除去対象物を除去するというものである。」
ウ「【0011】また、図11のウェーブクリーニング装置は、もともと織布から糸屑を除去するために考え出されたクリーニング装置であり、クリーニングノズルの先端開口部は長方形状をしているため、クリーニングノズル全幅に対する吸引力は必ずしも同一でなく、排気管19に近い部分は吸引力は強いが、遠い部分は弱くなるという欠陥を有している。さらに、スペーサ凝集体がほぼ100%除去される吸引力と、スペーサ単粒子が除去されない吸引力との差は余り無いため、吸引力の強い場所で単粒子が除去されないように調整すると、吸引力の弱い部分では凝集体が除去できないという不具合が発生した。
【0012】さらに、最近の基板サイズは大型化へと進んできており、すでに650mm×830mmの基板サイズで液晶パネルを製造しているメーカや、さらに1m×1m超基板サイズで液晶パネルの採用を検討しているメーカもある。このような大型基板サイズにおいては、図11に示すようなウェーブクリーニング装置を採用すると、基板サイズの拡大に伴って吸引力のばらつきもますます大きくなるので、スペーサ単粒子を除去することなくスペーサ凝集体のみを除去するというクリーニング方法は一層困難なものとなる。
【0013】また、スペーサ凝集体等の除去対象物の形状は多種多様であり、ある方向に長さをもった除去対象物の場合、クリーニングノズルの吸引流が長方向にあたる場合は除去されやすいが、短方向にあたる場合は除去されにくいという不具合が発生する。
【0014】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、均一な吸引力を有し、大型基板サイズにも対応した、凝集体の形状に左右されない基板クリーニング装置を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載のクリーニング装置は、基板を保持する基板保持ステージと、該基板上の除去対象物を除去するクリーニングノズルとを有する基板クリーニング装置であって、前記クリーニングノズルには、開口部の形状が円形状または環形状の噴射部と吸引部とがそれぞれの同心円上に形成されてなり、該クリーニングノズルと前記基板保持ステージとは、相対的に移動するよう構成されていることを特徴としている。
【0016】これによれば、クリーニングノズルの開口部は、基板に対して所定のギャップを保ちながら平行に対峙させ、噴出部から気体を噴出しながら、吸引部より気体を吸引する。基板表面上に気流を発生させ、クリーニングノズルと基板とを相対的に移動させることにより、基板表面に付着した凝集スペーサ等の除去対象物を吸引する。さらに、クリーニングノズルの開口部の形状が円形状または環形状であるので、吸引力のばらつきもなく、均一な吸引力を発揮することが可能である。」
エ「【0023】(実施の形態1)図1において、基板1が基板吸着ステージ2に吸着保持されており、クリーニングノズル3が開口部を基板1と平行にし、所定のギャップを保って支持されている。また、基板吸着ステージ2は図面上右上と左下方向に移動するX軸直線移動ステージ4と図面上左上と右下方向に移動するY軸直線移動ステージ5の上に搭載されている。
【0024】また、図1ではクリーニングノズル3と基板1との相対的な移動手段として、2軸のX軸直線移動ステージ4、Y軸直線移動ステージ5の上に基板吸着ステージ2を構成しているが、このうち1軸あるいは2軸ともクリーニングノズル3の保持部側に構成しても良く、同様な効果が得られる。」
(2)甲4技術事項
前記(1)より、甲第4号証には次の事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「基板表面に付着したゴミや塵等の除去対象物を取り除くための基板クリーニング装置であって、
従来の、クリーニングノズルは、中空の箱体18に開口部の幅1?3mmのスリット21がクリーニング対象物の幅に合せて形成され、中空の箱体18内の空気を排気装置20で排気して、スリット21の開口部に吸引力を発生させて除去対象物を除去するものであり、
クリーニングノズルの先端開口部は長方形状をしているため、クリーニングノズル全幅に対する吸引力は必ずしも同一でなく、排気管19に近い部分は吸引力は強いが、遠い部分は弱くなるという欠陥を有していたのを、
クリーニングノズルは、吸引力のばらつきもなく、均一な吸引力を発揮するために、開口部の形状が円形状または環形状の噴射部と吸引部とがそれぞれの同心円上に形成されてなり、
基板1が基板吸着ステージ2に吸着保持されており、クリーニングノズル3が開口部を基板1と平行にし、所定のギャップを保って支持され、
基板吸着ステージ2およびクリーニングノズル3は、それぞれ、X軸直線移動ステージ4とY軸直線移動ステージ5の一方に搭載され、
該クリーニングノズル3と前記基板吸着ステージ2とは、相対的に移動するよう構成することにより、
基板表面に付着した凝集スペーサ等の除去対象物を吸引すること。」

第5 申立理由についての判断
1 特許法第29条第2項について
(1)本件特許発明と甲1発明との対比
ア 甲1発明の「テーブル41上に複数のチップを貼着した粘着シート42を保持しているチップ供給部40」は、本件特許発明の「ダイをピックアップするピックアップ装置」に相当する。
イ 甲1発明の「粘着シート42上のチップPをノズル33で真空吸着してピックアップし、基板11の上方へ移動し、チップPを基板11のチップ搭載位置12に塗布されたボンド24上に搭載する移載ヘッド」は、本件特許発明の「前記ダイを吸着して基板上に実装するためのコレット」に相当する。
ウ 甲1発明の「基板11は長手方向に、基板搬送手段34により搬送路100上をピッチ送りされる」ことは、本件特許発明の「前記基板はその移動方向に長い矩形状であ」ることに相当する。
エ 甲1発明の「基板に塗布されたボンド上にチップを搭載する電子部品実装装置」は、本件特許発明の「ダイボンダ」に相当する。
オ そして、本件特許発明と甲1発明とは、下記カの点で一致するが、下記キの点で相違すると認められる。
カ 一致点
「ダイをピックアップするピックアップ装置と、
前記ダイを吸着して基板上に実装するためのコレットと、
を有し、
前記基板はその移動方向に長い矩形状であることを特徴とするダイボンダ。」
キ 相違点
(ア)相違点1
本件特許発明では、「前記基板上に前記ダイを実装する前に前記基板上の異物を除去するクリーニングノズル」を有し、「前記クリーニングノズルの長手方向は前記基板の移動方向と同じ方向に配置され」ており、また、「前記クリーニングノズルは前記基板の上方に配置され、前記基板の移動方向と直交する方向に前記基板の幅に応じて設定された移動量を移動」しているのに対して、甲1発明は対応する構成を有していない点。
(2)判断
ア 本件特許発明の進歩性について
上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、「前記基板上に前記ダイを実装する前に前記基板上の異物を除去するクリーニングノズル」について記載されていないために、上記相違点1について想起することができたとは認められない。
甲第2号証には、甲2技術事項にあるように、被洗浄基板が載置されるテーブルの位置は固定とされているために、洗浄中は基板は移動していない。そのため、本件特許発明の「前記クリーニングノズルの長手方向は前記基板の移動方向と同じ方向に配置され」ること、および、「前記クリーニングノズルの長手方向は前記基板の移動方向と同じ方向に配置され」ること、また、「前記クリーニングノズルは前記基板の上方に配置され、前記基板の移動方向と直交する方向に前記基板の幅に応じて設定された移動量を移動」することは記載されておらず、また、想起することができたとは認められない。
また、甲第3号証には、甲3技術事項にあるように、エアーブロー洗浄手段13は、支持部材12によって超音波エアーブロー部10を固着した形態に配設されているために、「前記クリーニングノズルは前記基板の上方に配置され、前記基板の移動方向と直交する方向に前記基板の幅に応じて設定された移動量を移動」することは記載されておらず、また、想起することができたとは認められない。
さらに、甲第4号証には、甲4技術事項にあるように、従来の、クリーニングノズルは、中空の箱体18に開口部の幅1?3mmのスリット21がクリーニング対象物の幅に合せて形成され、中空の箱体18内の空気を排気装置20で排気して、スリット21の開口部に吸引力を発生させて除去対象物を除去するものであり、クリーニングノズルの先端開口部は長方形状をしているため、クリーニングノズル全幅に対する吸引力は必ずしも同一でなく、排気管19に近い部分は吸引力は強いが、遠い部分は弱くなるという欠陥を有していたのを、クリーニングノズルの、吸引力のばらつきもなく、均一な吸引力を発揮するために、開口部の形状が円形状または環形状の噴射部と吸引部とがそれぞれの同心円上に形成するものであるから、甲第4号証のクリーニングノズルには長手方向がなく、また、甲第4号証のクリーニングノズルに長手方向を有する構成とすることを想起することができたとは認められない。
そして、本件特許発明は相違点1に係る構成を有することにより、「基板の大小にかかわらず短時間で効率よく基板の表面をクリーニングし、異物の再付着を防止することが可能な異物除去装置及びそれを備えたダイボンダを提供することにある。」(【0012】)という、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、相違点1に係る構成は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に相当し得たものであるとはいえない。
イ 特許異議申立人は、本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第3号証、又は甲第1号証及び甲第4号証に基づいて当業者が容易に相当し得るものである旨主張しているが、上記アで述べたように、相違点1に係る構成は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載されておらず、また、甲第1号証ないし甲第4号証の記載から想起することができたとは認められないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)小括
したがって、本件特許発明は甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 特許法第36条第6項第1号について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、「本件特許発明は、「本発明の目的は、基板の大小にかかわらず短時間で効率よく基板の表面をクリーニングし、異物の再付着を防止することが可能な異物除去装置及びそれを備えたダイボンダを提供すること」(【0012】)を課題としている。
しかし、本件特許発明は、「異物の再付着を防止する」構成を有しておらず、「異物の再付着を防止する」という課題を解決するためには、基板に吹き付けた空気を吸い込む構成が必須である。
そのため、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された課題を解決できないものである。
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」(異議申立書20頁17-21頁1行)と主張している。
(2)判断
本件特許発明は「前記基板上の異物を除去するクリーニングノズル」を有しているから、本件特許は、「異物の再付着を防止する」構成を有していないという、特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)小括
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。
3 まとめ
上記1および2のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
 
異議決定日 2016-11-29 
出願番号 特願2011-63592(P2011-63592)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 537- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 工藤 一光井出 和水  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
飯田 清司
登録日 2016-02-26 
登録番号 特許第5889537号(P5889537)
権利者 ファスフォードテクノロジ株式会社
発明の名称 ダイボンダ  
代理人 ポレール特許業務法人  

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