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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D04H |
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管理番号 | 1322332 |
異議申立番号 | 異議2016-700825 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-05 |
確定日 | 2016-12-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5888495号発明「柔軟性および耐摩耗性に優れた長繊維不織布およびその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5888495号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5888495号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成24年1月11日を出願日とする出願であって、平成28年2月26日にその特許権の設定登録がされた。その後、その特許について、特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所により本件特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5888495号の請求項1ないし6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.申立理由の概要 特許異議申立人は、特開2004-24748号公報(以下「甲1」という。)、特開2011-231446号公報(以下「甲2」という。)、特開2000-333815号公報(以下「甲3」という。)、特開平9-273063号公報(以下「甲4」という。)、特開2001-146671号公報(以下「甲5」という。)を提出し、請求項1ないし6に係る特許は甲1に記載された発明並びに甲2ないし甲5に記載された事項に基づき容易想到であるから特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号に該当するので、請求項1ないし6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 4.判断 (1)請求項1に係る発明について 甲1には、段落0009、0018、0019、0022の記載からみて、「ポリエチレンテレフタレート繊維を用いた不織布であって、スパンボンド法による長繊維不織布であり、部分熱圧着法により接合された不織布」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 請求項1に係る発明と甲1に記載された発明とを対比すると、両者は、少なくとも、ポリエチレンテレフタレートからなる不織布において、 「複屈折率が0.07?0.12である長繊維からなる不織布であって、不織布のKES曲げ剛性が0.05?0.30gf・cm^(2)/cmであり、不織布の耐磨耗等級が下式(1)?(3)を満足する部分的熱圧着型スパンボンド不織布。 E1≧3 ・・・ (1) E2≧1 ・・・ (2) E1-E2≧1 ・・・ (3) E1:不織布のエンボス面の耐磨耗等級、E2:不織布の反エンボス面の耐磨耗等級」(以下、「ポリエチレンテレフタレートの不織布の特性に係る特定事項」という。) であるか否かで相違する。 これに対し、甲2ないし甲5のいずれにも、上記のポリエチレンテレフタレートの不織布の特性に係る特定事項が記載されておらず、当該特定事項を備えることが自明のことともいえない。 そして、本件特許の請求項1ないし6に係る発明は当該特定事項を備えることで「柔軟性、耐磨耗性、及び形態保持性、不織布のヒートシール性を全て満足したもの」(本件明細書段落0011)が得られるとの格別な作用効果を奏するものである。 この点に関し、申立人は、甲2ないし甲5をあげ、上記特定事項が記載されている旨主張する。 そこで、甲2ないし甲5をみると、甲2には「ポリブチレンテレフタレートを95重量%以上含有し、複屈折率が0.100?0.125である長繊維からなる不織布・・・」(請求項1)、「本発明の不織布を構成する長繊維の複屈折率は、0.100?0.125である。複屈折率が0.100未満では、力学特性が劣り、耐磨耗性や形態維持性能が劣るので好ましくない。0.125を越えると、剛直性が増加し、ヒートシール性も劣るようになり好ましくない。本発明の複屈折率は、より好ましくは0.110?0.120である。」(段落0019)との記載が、甲3には「熱圧接処理の際、ウエブA層側に当接するロール温度を225℃、ウエブB層側に当接するロール温度を180℃とした以外は実施例1と同様にした。長繊維不織布を構成する繊維の複屈折率は、ウエブA層の構成繊維が0.11、ウエブB層の構成繊維が0.09であった。・・・」(段落0070)との記載が、甲4には「・・・不織布の表層の熱接着強度が、JIS L-1906の摩耗強さ試験のテーバ形法に準じて測定される表層の摩耗強さで表したとき3級以上、より好ましくは3.5級以上、特に好ましくは4級以上で、かつ該不織布の表裏層に熱接着強度差が、JIS L-1906の摩耗強さ試験のテーバ形法に準じて測定される摩耗強さで表したとき表層の摩耗強さが裏層の摩耗強さより少なくとも0.5級以上、より好ましくは1級以上大きいことが好ましい。」(段落0033)との記載が、甲5には不織布は目付の減少によって曲げ合成が大きく減少することが、それぞれ記載されている。 しかし、甲2は、ポリブチレンテレフタレートに係るものであり、ポリエチレンテレフタレートの耐摩耗性や形態維持性能のために「複屈折率が0.07?0.12」を採用することを記載するものではない。また、甲3及び甲4は「不織布のKES曲げ剛性が0.05?0.30gf・cm^(2)/cm」を採用することを直接記載するものではないし、甲1発明のように不織布を使い捨てカイロ用基布に用いることを記載するものではなく、甲3及び甲4の記載事項を甲1発明に適用する動機付けがない。さらに、甲5には、ポリエチレンテレフタレートの不織布の特性に係る特定事項について記載されていない。 したがって、甲2ないし甲5には上記特定事項が記載されておらず、申立人の上記主張には理由がない。 以上により、請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)請求項2ないし6に係る発明について 請求項2ないし6に係る発明は、請求項1を直接あるいは間接的に引用し、請求項1に係る発明の特定事項の全てを含む。 (1)に示したとおり、請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明することができないものであるから、請求項1に係る発明の特定事項の全てを含み、かつ、更に限定するものである請求項2ないし6に係る発明も、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 5.むすび したがって、本件特許異議申立人の申立理由によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-12-06 |
出願番号 | 特願2012-2862(P2012-2862) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D04H)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 斎藤 克也 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 高橋 祐介 |
登録日 | 2016-02-26 |
登録番号 | 特許第5888495号(P5888495) |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | 柔軟性および耐摩耗性に優れた長繊維不織布およびその用途 |