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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する F16K
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16K
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16K
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する F16K
管理番号 1322573
審判番号 訂正2016-390104  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-08-12 
確定日 2016-11-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3611969号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3611969号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、3〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第3611969号(以下「本件特許」という。)は、平成10年7月9日の出願であって、平成16年10月29日にその特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成28年8月12日付けで本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第3611969号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 本件訂正内容

本件訂正の内容は、次のとおりである。

訂正事項1
訂正前の請求項1に「相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に収容されるソレノイドであって、前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材と、外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材との間に配置されるシール部材と、を備える」とあるのを、
「相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に収容されるソレノイドであって、
前記ソレノイドは、前記取付孔に入り込まれるケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定され前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置し有底円筒状のスリーブにより囲まれ往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレー卜、該アッパープレー卜の外側で前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材、外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材、及び前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備え、前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設ける」に訂正する。

第4 当審の判断

1.一群の請求項ごとに訂正を請求することについて

訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を訂正しようとするものであるところ、訂正前の請求項2及び3は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用したものであるから、訂正前の請求項1ないし3は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項を構成する。
したがって、本件訂正審判の請求は特許法第126条第3項の規定に適合する。

2.訂正の目的の適否について

訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「ソレノイド」について、「前記取付孔に入り込まれるケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定され前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置し有底円筒状のスリーブにより囲まれ往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレー卜、」及び「前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備え」ること並びに「前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設ける」ことを限定するとともに、訂正前の請求項1に記載された「前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材」について、「該アッパープレー卜の外側で」前記取付孔に密封嵌合することを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正前の請求項2及び3についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて

願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落0023には、「このソレノイド1は、円筒状のケース部材2、ケース部材2の内側に収納されるコイル部材3、ケース部材2の一方の開口端部2aの内側に固定されコイル部材3の内筒部に延出するセンタポスト部材4・・・を備えている。」と記載され、同段落0031には「ソレノイド1が収容される相手側のハウジングHには、ケース部材2・・・が入り込む取付孔Haが備えられている。」と記載されているから、本件特許明細書には、前記ソレノイドが「前記取付孔に入り込まれるケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定され前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材」を備えることが記載されている。
本件特許明細書の段落0023には、「このソレノイド1は、・・・コイル部材3の内筒部に位置するプランジャ室PRを備えている。」と記載され、同段落0024には「プランジャ室PRの中には、軸方向に往復動可能に収容されたプランジャ5が配置され、」と記載され、同段落0025には「プランジャ室PRは、有底円筒状である非磁性ステンレス材によるスリーブ7により囲まれている。」と記載されているから、本件特許明細書には、前記ソレノイドが「前記コイル部材の内筒部に位置し有底円筒状のスリーブにより囲まれ往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室」を備えることが記載されている。
本件特許明細書の段落0024には「アッパープレート6がケース部材2の他方の開口端部2bにおいてプランジャ室PRとの環状間隙を塞ぐ」と記載されているから、本件特許明細書には、前記ソレノイドが「前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレー卜」を備えることが記載されているといえる。
本件特許明細書の段落0029には「プランジャ5は・・・プランジャの軸方向の移動動作を伝達するロッド11が接続されている。」と記載され、同段落0030には「ロッド11はセンタポスト4の内筒部を通過し、不図示のバルブ部Vにおける弁体の開閉動作を可能としている。」と記載されているから、本件特許明細書には、前記ソレノイドが「前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッド」を備えることが記載されている。
本件特許明細書の段落0033には「取付孔Haの底部は、ケース部材2の一方の開口端部2aの外周に設けられた凹溝8dとOリング14によりバルブ部Vからの流体の浸入を防止している。」と記載されている。そして、先に摘記した本件特許明細書の段落0023、0024、0029及び段落0030の記載を併せて参照すれば、前記プランジャ室が前記ケース部材の前記他方の開口端部側に位置し、該プランジャ室の中に収容された前記プランジャに接続されている前記ロッドが、前記ケース部材の前記一方の開口端部の内側に固定された前記センタポスト部材の内筒部を通過して、前記バルブ部Vの前記弁体に前記プランジャの軸方向の移動動作を伝達することが読み取れるから、前記ケース部材の前記一方の開口端部が前記ソレノイドの前記バルブ部側であることは明らかである。そうすると.本件特許明細書には「前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設ける」ことが記載されているといえる。
そして、本件特許明細書の段落0026には「アッパープレート6の外側(コイル部材3の反対側)には、端部部材としてのコイル部材3と一体的に樹脂成形されたヘッド部8が備えられている。」と記載され、同段落0031には「ソレノイド1が収容される相手側のハウジングHには、・・・ヘッド部8が入り込む取付孔Haが備えられている。」と記載され、同段落0032には「取付孔Haの内径寸法とヘッド部8の外径寸法は、両者が嵌合した場合に密封性を発揮し得ると共に、かつ容易に取り外しが行なえるような嵌め合い寸法に設定されている。尚、Oリング13は、ヘッド部8の密封嵌合を補助する目的で設けられている。」と記載されているから、本件特許明細書には、前記端部部材が「該アッパープレー卜の外側で」前記取付孔に密封嵌合することが記載されている。

したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

4.特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について

訂正事項1は、上記「第4 2.」で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

5.独立特許要件について

(1)訂正発明
訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明3」という。)は、それぞれ、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に収容されるソレノイドであって、
前記ソレノイドは、前記取付孔に入り込まれるケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定され前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置し有底円筒状のスリーブにより囲まれ往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレート、該アッパープレートの外側で前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材、外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材、及び前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備え、
前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設けることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記端部部材は、コイル部材と一体化される樹脂成形部材であることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記取付孔の開口部に係止されると共に、前記端部部材の外側端面に当接する抜け止め部材を備えることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のソレノイド。」

(2)引用文献に記載された発明
請求人が審判請求書において提示した実願平3-96794号(実開平5-40679号公報)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 モールド部1と前記モールド部1をその外周側から覆うケース2とを有し、エンジンのシリンダヘッド22に取り付けられ、前記エンジンのヘッドカバー21との間をパッキン10によりシールするソレノイドバルブにおいて、前記モールド部1に前記ケース2から外部へ外周面8を露出させた露出部7を設け、前記露出部7の外周面8に装着溝9を設け、前記装着溝9に前記パッキン10を装着したことを特徴とするソレノイドバルブ。」
(イ)「【0007】
図1に示すように、樹脂製のモールド部1に鋼材製のケース2から外部へ外周面8を露出させた部分7(以下、露出部と称する)が設けられ、露出部7の外周面8に装着溝9が設けられ、装着溝9にパッキン10が嵌着されている。コイル11やコネクタ12等のソレノイド部品を内包したモールド部1はこれをモールド成形後にケース2内に組み込み、ケース2の端部13をカシメてケース2と一体化している。
しかして、上記構成を備えたソレノイドバルブによれば、モールド部1とケース2のうちヘッドカバー21の外側(図上上側)に表われるのが図示するようにモールド部1のみとなり、このモールド部1とヘッドカバー21の間を一個のパッキン10によってシールすることによりヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止することができる。」
(ウ)「【0008】
・・・図2に示すように、先ずケース2の内部にコイル11やプレート14等のソレノイド部品を組み込み、ケース2の端部13をカシメてケース2とソレノイド部品を一体化し、その後、モールド部1をモールド成形する。また図3に示すように、ケース2の内部にコイル11やプレート14等のソレノイド部品を組み込んでカシメること無く直ちにモールド部1をモールド成形する。」

そして、上記(ア)?(ウ)の記載と図面の記載を併せてみると、以下のことが理解できる。
(エ)上記(ア)の記載と図1?3の記載を併せてみると、ソレノイドバルブは、その一部がシリンダヘッド22に備えられた孔に収容され、ケース2は、その一部がシリンダヘッド22に備えられた孔に入り込まれていることが理解できる。
(オ)上記(イ)(ウ)の記載、図1?3の記載及び技術常識を併せてみると、コイル11がケース2の内側に収納され、ソレノイドが、コイル11の内筒部に延出するセンタポスト部材、コイル11の内筒部に位置し往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、及びプランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備え、プレート14がケース2の一方の開口端部とプランジャ室との間に配置されることが理解できる。
(カ)前記(ア)(イ)の記載と図1?3の記載を併せてみると、露出部7が、プレート14の外側でヘッドカバー21に備えられた孔に嵌合し、パッキン10が、ヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止するために前記ヘッドカバー21に設けられた孔と前記露出部7の間に配置されていることが理解できる。

以上のことから、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「シリンダヘッド22に備えられた孔にその一部が収容されるソレノイドバルブであって、
前記シリンダヘッド22に備えられた孔にその一部が入り込まれるケース2、該ケース2の内側に収納されるコイル11、前記コイル11の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル11の内筒部に位置し往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース2の一方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるプレート14、該プレート14の外側でヘッドカバー21に備えられた孔に嵌合する樹脂製の露出部7、前記ヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止するために前記ヘッドカバー21に備えられた孔と前記露出部7の間に配置されているパッキン10、及び前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備えるソレノイドバルブ。」

(3)対比・判断
(3-1)訂正発明1について
訂正発明1と引用発明を比較する。
引用発明の「ソレノイドバルブ」は、当然,ソレノイドをその一部として備えているから、訂正発明1の「ソレノイド」に相当する。
引用発明の「ケース2」、「コイル11」、「プレート」及び「パッキン」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、訂正発明1の「ケース部材」、「コイル部材」、「アッパープレート」及び「シール部材」に相当する。
引用発明において、前記ソレノイドバルブは、シリンダヘッド22に備えられた孔にその一部が収容されて該シリンダヘッドに取り付けられているから、引用発明の「シリンダヘッド」及び「シリンダヘッド22に備えられた孔」は、それぞれ、訂正発明1の「相手側ハウジング部材」及び「相手側ハウジング部材に備えられた取付孔」に相当する。そうすると、引用発明の「シリンダヘッド22に備えられた孔にその一部が収容されるソレノイドバルブ」は、訂正発明1の「相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に取り付けられるソレノイド」である点で一致する。
訂正発明1は、「ケース部材の他方の開口端部」について、これとプランジャ室との間にアッパープレートが配置されること以外は特定されていないから、引用発明の「前記ケース2の一方の開口端部」は、訂正発明1の「ケース部材の他方の開口端部」に相当する。
引用発明において、露出部7は、耐食性材料である樹脂製であり、プレート14の外側でヘッドカバー21に備えられた孔に嵌合しているとともに、パッキン10が、前記ヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止するために前記ヘッドカバー21に備えられた孔と前記露出部7の間に配置されている。そうすると、引用発明の「該プレート14の外側でヘッドカバー21に備えられた孔に嵌合する樹脂製の露出部7」は、訂正発明1の「該アッパープレートの外側で前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材」と,「アッパープレートの外側で孔に嵌合する耐食性材料による端部部材」である点で一致しており、引用発明の「前記ヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止するために前記ヘッドカバー21に備えられた孔と前記露出部7の間に配置されているパッキン10」は、訂正発明1の「外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材」と、「前記端部部材が嵌合する孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材」である点で一致する。
以上のことから、訂正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に取り付けられるソレノイドであって、
前記ソレノイドは、ケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置し往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレート、該アッパープレートの外側で孔に嵌合する耐食性材料による端部部材、前記端部部材が嵌合する孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材、及び前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備えるソレノイド。」

【相違点1】
訂正発明1は、相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に収容されるソレノイドであって、前記ケース部材が前記取付孔に入り込まれ、前記端部部材が前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぎ、前記シール部材が外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材の間に配置されるのに対し、引用発明は、相手側ハウジング部材に備えられた取付孔にその一部が収容されるソレノイドであって、前記ケース部材の一部のみが前記取付孔に入り込まれ、前記端部部材が前記取付孔ではなくヘッドカバー21に備えられた孔に嵌合し、前記シール部材が前記ヘッドカバー21の外側から水が侵入するのを防止するために前記ヘッドカバー21に備えられた孔と前記端部部材の間に配置される点。
【相違点2】
訂正発明1は、前記センタポスト部材が前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定されるのに対し、引用発明は、前記センタポスト部材が前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定されていない点。
【相違点3】
訂正発明1は、前記プランジャ室が有底円筒状のスリーブにより囲まれるのに対し、引用発明は、前記プランジャ室が有底円筒状のスリーブにより囲まれているか否か明らかでない点。
【相違点4】
訂正発明1が、前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設けるのに対し、引用発明は、当該シール部材を設けていない点。

前記相違点について検討する。
相違点1について検討すると、引用発明において当該相違点に係る訂正発明1の発明特定事項を採用することについて、引用文献には記載も示唆もない。
さらに、訂正発明1は、相違点1に係る発明特定事項を採用することにより、ケース部材の内側に収納されるコイル部材、該コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置するプランジャ室を囲む有底円筒状のスリーブ、前記プランジャ室に配置されるプランジャ、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレートは外部に露出されることはなく、外部雰囲気(湿気や水などの流体等をも含む)の進入が端部部材と取付孔との嵌め合い及びシール部材により抑制されるので、ソレノイドの耐食性を向上することできるという効果を奏するものである。
してみれば、引用発明において相違点1に係る訂正発明1の発明特定事項を採用することを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明1は、引用文献に記載された発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3-2)訂正発明2及び3について
訂正発明2及び3は、訂正発明1をさらに限定したものであるので、同様に、引用文献に記載された発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)まとめ
以上のとおり、訂正発明1ないし3は、引用文献に記載された発明ではなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、他に訂正発明1ないし3が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由は見当たらない。
したがって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側ハウジング部材に備えられた取付孔に収容されるソレノイドであって、
前記ソレノイドは、前記取付孔に入り込まれるケース部材、該ケース部材の内側に収納されるコイル部材、前記ケース部材の一方の開口端部の内側に固定され前記コイル部材の内筒部に延出するセンタポスト部材、前記コイル部材の内筒部に位置し有底円筒状のスリーブにより囲まれ往復動可能なプランジャが配置されるプランジャ室、前記ケース部材の他方の開口端部と前記プランジャ室との間に配置されるアッパープレート、該アッパープレートの外側で前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材、外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材の間に配置されるシール部材、及び前記プランジャに接続されバルブ部の弁体の開閉動作を可能とするロッドを備え、
前記ソレノイドの前記バルブ部側の外周に前記バルブ部側からの流体の進入を防止するシール部材を設けることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記端部部材は、コイル部材と一体化される樹脂成形部材であることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記取付孔の開口部に係止されると共に、前記端部部材の外側端面に当接する抜け止め部材を備えることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のソレノイド。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-10-07 
結審通知日 2016-10-12 
審決日 2016-10-25 
出願番号 特願平10-210450
審決分類 P 1 41・ 854- Y (F16K)
P 1 41・ 856- Y (F16K)
P 1 41・ 851- Y (F16K)
P 1 41・ 855- Y (F16K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
久保 竜一
登録日 2004-10-29 
登録番号 特許第3611969号(P3611969)
発明の名称 ソレノイド  
代理人 天坂 康種  
復代理人 小椋 正幸  
代理人 櫻井 義宏  
代理人 天坂 康種  
代理人 櫻井 義宏  
復代理人 小椋 正幸  
復代理人 小椋 正幸  
代理人 櫻井 義宏  
代理人 天坂 康種  

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