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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E02D
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  E02D
管理番号 1322583
審判番号 無効2015-800140  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-06-23 
確定日 2016-10-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3450742号発明「軽量盛土構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3450742号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、8-10〕、〔4-7〕について訂正することを認める。 特許第3450742号の請求項1、8ないし10に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3450742号の請求項2ないし7に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その7分の2を請求人の負担とし、7分の5を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
平成11年 3月29日 出願
平成15年 7月11日 設定登録(特許第3450742号、以下「本件特許」という。)
平成27年 6月22日 審判請求
平成27年 8月10日 手続補正書(方式)(審判請求書を補正)
平成27年 8月10日 証拠説明書(請求人)
平成27年10月16日 審判事件答弁書
平成27年12月21日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成28年 1月12日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成28年 1月25日 上申書(請求人)(同年1月26日差出)
平成28年 1月26日 口頭審理
平成28年 2月 9日 上申書(請求人)
平成28年 2月23日 上申書(被請求人)
平成28年 3月14日 審決の予告
平成28年 5月16日 訂正請求書
平成28年 5月16日 上申書(第2)(被請求人)
平成28年 6月22日 審判事件弁駁書
平成28年 7月26日 補正の許否の決定
平成28年 8月29日 審判事件答弁書(第2)

第2 訂正請求
1 訂正請求の内容
被請求人が平成28年5月16日に提出した訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書について、訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「本件訂正明細書」といい、その特許請求の範囲を「本件訂正特許請求の範囲」という。)のとおりに訂正することを請求するものであって、次の事項をその訂正内容とするものである(下線は、訂正箇所を示す。)。
なお、以下、本件特許の願書に添付した明細書及び図面を「本件特許明細書」という。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」とあるのを、「空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれかに記載の軽量盛土構造。」とあるのを、「請求項2又は3に記載の軽量盛土構造。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれかに記載の軽量盛土構造。」とあるのを、「請求項2?5のいずれかに記載の軽量盛土構造。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに記載の軽量盛土構造。」とあるのを、「請求項2?6のいずれかに記載の軽量盛土構造。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8として、「前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の軽量盛土構造。」を追加する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9として、「前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項8に記載の軽量盛土構造。」を追加する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10として、「前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする請求項1、8又は9に記載の軽量盛土構造。」を追加する。

(8)訂正事項8
本件特許明細書の段落【0013】に「空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも高密度のものとした」とあるのを、「空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
本訂正事項は、空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックの圧縮強度と密度について、空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと当該空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックの間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件訂正前の請求項7、本件特許明細書の段落【0025】、【0026】、【0050】、図5及び図7の記載からみて、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
本訂正事項は、請求項4が請求項1?3のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1の引用を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
本訂正事項は、請求項6が請求項1?5のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1の引用を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
本訂正事項は、請求項7が請求項1?6のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1の引用を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(5)訂正事項5について
本訂正事項は、請求項4が請求項1?3のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1を引用する請求項4に相当するものを新たな請求項8として追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
本訂正事項は、請求項5が請求項1?3のいずれかを引用する請求項4を引用していたところ、そのうち請求項1を引用する請求項4を引用する請求項5に相当するものを、新たな請求項8を引用する請求項9として新たに追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(7)訂正事項7について
本訂正事項は、請求項6が請求項1?5のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1、4又は5を引用する請求項6に相当するものを、請求項10として新たに追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(8)訂正事項8について
本訂正事項は、発明の詳細な説明の記載について、訂正事項1との整合を図り、記載を明瞭にするために行うものと認められるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項1と同様に、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)請求項5の訂正について
請求項5は、請求項4を引用する請求項であるから、本件訂正事項2によって請求項4が訂正されることにより、実質的に訂正されている。
本訂正事項は、請求項5において引用する請求項4が請求項1?3のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1の引用を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。
そして、本訂正事項は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは明らかである。

(10)一群の請求項について
本件訂正は、訂正後の請求項1、8ないし10、及び同請求項4ないし7が請求の対象とされており、一群の請求項毎に請求がされているものであるから、本件訂正は特許法第134条の2第3項の規定に適合する。

(11)明細書の訂正と関係する請求項について
本件訂正は、願書に添付した明細書の訂正である訂正事項8と関係する全ての一群の請求項(訂正後の請求項1、8ないし10)が請求の対象とされているものであるから、本件訂正は特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

3 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第3項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正を認めるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】 前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項2】 前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
前面壁の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、その後方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項3】 壁体間の空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる自立壁の盛土構造において、
壁体の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、中間部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項4】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする請求項2又は3に記載の軽量盛土構造。
【請求項5】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項4に記載の軽量盛土構造。
【請求項6】 前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする請求項2?5のいずれかに記載の軽量盛土構造。
【請求項7】 前記空所の最上層にも高密度の発泡プラスチックブロックを用い、該高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項2?6のいずれかに記載の軽量盛土構造。
【請求項8】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の軽量盛土構造。
【請求項9】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項8に記載の軽量盛土構造。
【請求項10】 前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする請求項1、8又は9に記載の軽量盛土構造。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書によれば、請求人は、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成27年12月21日付け口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理調書、平成28年2月9日付け上申書、平成28年6月22日付け審判事件弁駁書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出している。
請求人が主張する無効理由1及び2は、本件訂正発明1ないし10に対しても主張される一方、本件訂正発明1及び10に対して新たに無効理由3が主張された(弁駁書2頁8ないし21行及び3頁14ないし25行)。無効理由3の追加は、補正許否の決定により認められた。

(1)無効理由1(新規性欠如)
本件特許発明1及び6は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第123条第1項第2号の規定により、その特許は無効とすべきである。

(2)無効理由2(進歩性欠如)
ア 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された周知技術(地震時に直立壁の内側に大きな力が作用すること)、並びに甲第4号証に記載された技術(作用応力に応じた圧縮強さのEPSを使い分けること)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

イ 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された周知技術(自立壁の盛土構造)、甲第2号証及び甲第3号証に記載された周知技術(地震時に直立壁の内側に大きな力が作用すること)、並びに甲第4号証に記載された技術(作用応力に応じた圧縮強さのEPSを使い分けること)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

ウ 本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された周知技術(型内発泡ポリスチレンとしてD-12?D-30、押出発泡ポリスチレンとしてDX-9が知られていること)、並びに甲第4号証に記載された技術(作用応力に応じた圧縮強さのEPSを使い分けること)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

エ 本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された周知技術(型内発泡ポリスチレンとしてD-12?D-30、押出発泡ポリスチレンとしてDX-9が知られていること)、甲第4号証に記載された技術(作用応力に応じた圧縮強さのEPSを使い分けること)、並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術(押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着し積層したもの)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

オ 本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第7号証に記載された周知技術(軽量盛土の上層部にのみ高密度の発泡プラスチックブロックを使用すること)、並びに甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術(押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着し積層したもの)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

(3)無効理由3(進歩性欠如)
ア 本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第7号証に記載された周知技術(軽量盛土の上層部にのみ高密度の発泡プラスチックブロックを使用すること)、並びに甲第2号証及び甲第6号証に記載された周知技術(型内発泡ポリスチレン、押出発泡ポリスチレンが知られていること)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

イ 本件訂正発明10は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第7号証に記載された周知技術(軽量盛土の上層部にのみ高密度の発泡プラスチックブロックを使用すること)、甲第2号証及び甲第6号証に記載された周知技術(型内発泡ポリスチレン、押出発泡ポリスチレンが知られていること)、並びに甲第2号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された技術(押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着し積層したもの)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:「(社)プラスチック処理促進協会支援事業 発泡スチロール減容品の用途開発事業報告書(EPS土木工法拡幅盛土の裏込材モデル実験)」,発泡スチロール再資源化協会,平成10年8月,目次、1ないし55頁
甲第2号証:発泡スチロール土木工法開発機構,「EPS工法-発泡スチロール(EPS)を用いた超軽量盛土工法-」,3版,理工図書株式会社,平成10年8月25日,目次、9ないし51頁、77ないし87頁、135ないし143頁
甲第3号証:巽治外5名,「EPS盛土の荷重分散特性を考慮した合理的設計法の提案」,第31回地盤工学研究発表会発表講演集,平成8年7月,2523ないし2524頁
甲第4号証:大江祐一外2名,「荷重分散特性を考慮したEPS盛土の設計法」,開発土木研究所月報,No.523,平成8年12月,2ないし10頁)
甲第5号証:実願平4-80426号(実開平6-42152号)のCD-ROM
甲第6号証:「土木研究所資料 発泡スチロールを用いた軽量盛土の設計・施工マニュアル」,建設省土木研究所、土質研究室、動土質研究室,平成4年3月,7頁
甲第7号証:「第10期(平成7年度)第1回合同部会資料」,EDO・発泡スチロール土木工法開発機構,平成7年11月20日,56ないし59頁
甲第8号証:特願平11-85531号の平成15年4月14日付け意見書
甲第9号証:「EPS工法/拡幅盛土の設計、施工に関する留意点」,発泡スチロール土木工法開発機構,平成10年2月
甲第10号証:請求人太陽工業株式会社代理人の森本英伸から発泡スチロール土木工法開発機構事務局に宛てた平成27年12月16日付けの照会書
甲第11号証:発泡スチロール土木工法開発機構会長の三木五三郎から請求人太陽工業株式会社代理人の森本英伸に宛てた平成27年12月16日付けの回答書
甲第12号証:請求人太陽工業株式会社代理人の森本英伸から発泡スチロール土木工法開発機構事務局に宛てた平成28年1月22日付けの照会書(2)
甲第13号証:発泡スチロール土木工法開発機構会長の三木五三郎から請求人太陽工業株式会社代理人の森本英伸に宛てた平成28年1月25日付けの回答書
甲第14号証:平成28年2月2日に行われた、請求人太陽工業株式会社代理人の森本英伸と発泡スチロール土木工法開発機構事務局員の塚本英樹との面談内容に関する平成28年2月8日付けの照会書兼確認書
甲第15号証:「山梨県庁道路建設課打合わせ(2)」と題する文書
甲第16号証:平成10年12月16日付けの「第13期 合同部会開催のご案内」と題する文書

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1について
ア 本件特許発明1について
甲第1号証には、以下の通り、前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造が開示されている(甲第1号証の42頁横断図。以下、「本件横断図」という。)。
甲第1号証の26頁12行目の「実験の目的」の項目には、「斜面を掘削してEPS盛土を構築する場合」と記載されていること、11頁の下から6行目?25頁末行にかけてEPS工法が詳細に紹介されていること(特に甲第1号証の15頁のEPS工法概略図)からすれば、本件横断図で用いられている「D-20」、「D-25」は、発泡プラスチックブロックであり、全体として軽量盛土構造が開示されていることは明らかである。
以上から、甲第1号証には、「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」及び「軽量盛土構造」が開示されている。
本件横断図には、発泡プラスチックブロックが17段積み重ねられた図が記載されているが、そのうち、最底部及びその上段5段の合計6段には「D-25」と記載されており、その更に上段11段には「D-20」と記載されていることからすれば、2種類の異なる発泡プラスチックブロックが使用されていることが分かる。
そして、本件特許の明細書には、「D-20」、「D-25」の密度が、それぞれ20+1.5(-1.0)kg/m^(3)、25±1.5kg/m^(3)であることが記載されており、最底部を含む下層の「D-25」が高密度、その上層での「D-20」が低密度であることが分かる。
本件横断図から明らかなとおり、下層の高密度の発泡プラスチックブロック「D-25」は、敷設面積の最も小さい空所の最低部を含んでいる。
甲1発明と本件特許発明1は、すべての構成で一致しており、相違点はない。
(請求書12頁下から4行ないし16頁7行)

イ 本件特許発明6について
甲1発明で下層の高密度の発泡プラスチックブロックとして開示されている「D-25」の密度が25±1.5kg/m^(3)であることを考慮すれば、甲1発明と本件特許発明6は、すべての構成で一致しており、相違点はない。
(請求書18頁1ないし5行)

(2)無効理由2及び3について
ア 本件特許発明2について
甲1発明と本件特許発明2との相違点は、前者が下層に高密度の発泡プラスチックブロックを使用しているのに対して、後者は直立壁の内側に高密度の発泡プラスチックブロックを使用している点である。
しかしながら、地震時に直立壁の内側に大きな力が係ることは出願時において周知の事項であり、その際の直立壁の内側にかかる大きな力に対抗するために既存の高密度発泡プラスチックブロックを図2のように直立壁の内側に並べることは単なる設計事項に過ぎない。
本件特許の明細書の段落【0038】には、傾斜地拡幅盛土構造において、地震時に極めて大きな水平力が発生し、前面壁側の地盤反力が増大し、前面壁の背面直後の発泡プラスチックブロックに対して大きな圧縮力として作用することが記載されているが、当該課題は基本書(甲第2号証)や論文(甲第3号証)において数多く指摘されており、周知の事項である。
甲第4号証には、発泡プラスチックブロック内部の荷重分散特性を把握して、経済性を考慮して、圧縮強度の異なる発泡プラスチックブロックを合理的に用いる提案がされている。
地震時に直立壁の内側に大きな力が係るという周知事実(甲第2、3号証)及び、発泡プラスチックブロック内部の荷重分散特性を把握して、圧縮強度の異なる発泡プラスチックブロックを合理的に用いる提案(甲第4号証)があることからすれば、甲1発明に触れた当業者であれば、直立壁の内側に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを使用する本件特許発明2に容易に想到することは明らかである。
(請求書19頁4行ないし24頁23行)

イ 本件特許発明3について
甲1発明と本件特許発明3との相違点1は、前者が傾斜地に発泡プラスチックブロックを敷設するのに対して、後者は直立壁2枚に挟まれた領域に発泡プラスチックブロックを敷設する点である。また、相違点2は、前者が下層に高密度の発泡プラスチックブロックを使用しているのに対して、後者は直立壁の内側に高密度の発泡プラスチックブロックを使用している点である。
しかしながら、自立壁の盛土構造自体は、出願当時においてごく一般的なものであり、地震時に直立壁の内側に大きな力が係ることは出願時において周知の事項であり、その際の直立壁の内側にかかる大きな力に対抗するために既存の高密度発泡プラスチックブロックを図4のように直立壁の内側に並べることは単なる設計事項に過ぎない。
本件特許の出願時にすでに発刊されていた基本書である甲第2号証には、自立壁の盛土構造がEPSの主な適用分野として紹介されており、自立壁の盛土構造が一般的であったことが分かる。
自立壁の盛土構造が出願時において一般的であり(甲第2号証)、地震時に直立壁の内側に大きな力が係るという周知事実(甲第2、3号証)及び、発泡プラスチックブロック内部の荷重分散特性を把握して、圧縮強度の異なる発泡プラスチックブロックを合理的に用いる提案(甲第4号証)があることからすれば、甲1発明に触れた当業者であれば、必要に応じて自立壁の盛土構造を採用し、直立壁の内側に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを使用する本件特許発明3に容易に想到することは明らかである。
(請求書24頁下24行ないし27頁10行)

ウ 本件特許発明4について
甲1発明と本件特許発明4との相違点は、前者が下層に高密度の発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレン(D-25)を使用しているのに対して、後者は押出発泡ポリスチレンを使用している点である。
しかしながら、型内発泡ポリスチレンと押出発泡ポリスチレンとは、製造方法が異なるという違いしかなく、しかもこの2つの製造方法はいずれも本件特許の出願時においてごく一般的な発泡プラスチックブロックの製造方法にすぎないものである。EPS工法の基本書(甲第2号証)においても、2つの製造方法が詳しく紹介されてある。
また、圧縮強度の異なる発泡プラスチックブロックを組み合わせて合理的な設計をすることの動機づけがあることについては、甲第4号証の記載を挙げることができ、押出発泡ポリスチレンを採用するに当たっての阻害要因は特段見当たらない。
以上からすれば、本件横断図において、下層の高密度の発泡プラスチックブロックとして押出発泡ポリスチレンを採用し、低層低密度の発泡プラスチックブロックとして型内発泡ポリスチレンを採用することは、単なる設計事項に過ぎない。
(請求書27頁14行ないし29頁4行)

エ 本件特許発明5について
甲1発明と本件特許発明5との相違点は、前者が下層の高密度の発泡プラスチックブロックとして一体のものを使用しているのに対して、後者は、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したものを使用している点である。
しかしながら、以下の甲第5号証、甲第6号証の通り、本件特許出願時において、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したものは公知であり、かつ軽量盛土に使用するためのものであることも示唆されている。
以上からすれば、本件横断図において、下層の高密度の発泡プラスチックブロックとして、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したもの(甲第5、6号証)を採用し、上層に低密度の発泡プラスチックブロックとして型内発泡ポリスチレンを採用することは、単なる設計事項に過ぎない。
(請求書29頁5行ないし31頁5行)

オ 本件特許発明7について
甲1発明と本件発明7との相違点は、前者においては、上層の発泡プラスチックブロックが全て「D-20」であり、最上層に高密度の発泡プラスチックブロックを使っていないのに対して、後者は、最上層に押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したものである点である。
しかしながら、甲第4号証、甲第7号証の通り、上層部にのみ高密度の発泡プラスチックブロックを使用することにより、利点の多い有利な設計が可能であることは周知である。
押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したものは公知である(甲第5、6号証)。
以上からすれば、本件横断図において、最上層の発泡プラスチックブロック「D-20」を、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成したものに置き換えることは、単なる設計事項に過ぎない。
(請求書31頁6行ないし33頁12行)

カ 本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、最底部付近への応力集中によるEPSブロックの塑性変形を防止するという甲第9号証記載の技術課題の対応技術を記載した甲1発明を前提として、EPSの積層の上層部にも高密度のEPSブロックを用いるべきことを記載した甲第4、7号証、押出発泡法・型内発泡法について記載した甲第2、6号証の各文献記載の技術を単純に組み合わせたものに過ぎない。
(弁駁書2頁15ないし20行)

キ 本件訂正発明8について
本件訂正発明8は、最底部付近への応力集中によるEPSブロックの塑性変形を防止するという甲第9号証記載の技術課題の対応技術を記載した甲1発明を前提として、EPSの積層の上層部にも高密度のEPSブロックを用いるべきことを記載した甲第4、7号証、押出発泡法・型内発泡法について記載した甲第2、6号証の各文献記載の技術を単純に組み合わせたものに過ぎない。
(弁駁書2頁25ないし末行)

ク 本件訂正発明9について
本件訂正発明9は、最底部付近への応力集中によるEPSブロックの塑性変形を防止するという甲第9号証記載の技術課題の対応技術を記載した甲1発明を前提として、EPSの積層の上層部にも高密度のEPSブロックを用いるべきことを記載した甲第4、7号証、押出発泡法・型内発泡法について記載した甲第2、6号証、押出発泡法のEPSブロックは押出発泡ポリスチレン板状体複数枚を接着剤で積層して形成すべきことを記載した甲第2、5、6号証の各文献記載の技術を単純に組み合わせたものに過ぎない。
(弁駁書3頁5ないし11行)

ケ 本件訂正発明10について
本件訂正発明10は、最底部付近への応力集中によるEPSブロックの塑性変形を防止するという甲第9号証記載の技術課題の対応技術を記載した甲1発明を前提として、EPSの積層の上層部にも高密度のEPSブロックを用いるべきことを記載した甲第4、7号証、押出発泡法・型内発泡法について記載した甲第2、6号証、押出発泡法のEPSブロックは押出発泡ポリスチレン板状体複数枚を接着剤で積層して形成すべきことを記載した甲第2、5、6号証の各文献記載の技術を単純に組み合わせたものに過ぎない。
(弁駁書3頁17ないし23行)

(3)甲第1号証の頒布について
ア 被請求人の主張する通り、甲第1号証の資料が(社)プラスチック処理促進協会支援事業に対してのみ提出された報告書であったとしても、秘密文書とされたわけでもなく、不特定又は多数人が知り得る状況に置かれた以上、公知性は満たすので、被請求人の主張は失当である。
甲第1号証の資料は、(社)プラスチック処理促進協会支援事業に対してのみ提供されたものとは考えられない。
設立の目的や出資関係からすれば、発泡スチロール再資源化協会(現・発泡スチロール協会。以下「JEPSA」という。)が調査・研究し作成した資料を、(社)プラスチック処理促進協会支援事業に対してのみ提供するなどという被請求人の憶測は不合理極まりない。
JEPSAは会員からの出資金や会費を原資として、発泡スチロール業界の発展のために調査・研究等の活動を行っているのであるから、組織の目的・性質上、その成果を取りまとめた甲第1号証のような資料を所属会員に配布し、還元することは当然の義務であり、そのようにしているはずである。
その調査・研究の成果は、極めて実務的な内容であるから、そのような成果を取りまとめて作成した資料を完成後に何カ月も放置しておくことはありえず、平成10年8月に完成した甲第1号証の資料は、いくら遅くとも、平成10年中にはJEPSAの会員一般に配布されていたはずである。
(口頭審理陳述要領書2頁21行ないし3頁32行)

イ 甲第14号証によると、発泡スチロール土木開発機構(以下「EDO」という。)の協力を得てJEPSAが作成した甲第1号証は、甲第1号証の表紙に記載の「平成10年8月」に完成し、その頃に、JEPSA・EDOの事務局担当者間を通じて、EDOにも複数部数が提供されたものであった。
甲第1号証は、平成10年8月、完成と共に、JEPSAにおいても、JEPSA会員であれば誰でも閲覧可能な状態で保管されていたことはいうまでもない。
以上より、いくら遅くとも、甲第1号証は、EDOがJEPSAより、複数部数の提供を受けた平成10年8月時点で、不特定多数又は多数人が認識しうる状態の下で開示されていたものであることは明らかである。
(平成28年2月9日付け上申書2頁11ないし28行)

(4)甲第9号証の頒布について
ア 甲第9号証の作成経緯の詳細については、EDOに電話で問い合わせて確認したところ、平成10年当時、山梨県の韮崎増富線の傾斜地における拡幅盛土道路工事に関して、最下段のEPSブロックに変形等が生じる問題が認められたことから、山梨県道路建設課とEDO等によって協議が行われ、その際、EDOは、山梨県道路建設課から対応策の策定等の依頼を受けて、作成した書類が甲第9号証であるとのことであった。そして、当時、同種の問題は、各地で生じており、EDOに所属し、各地でEPS工法を施工していたEDOの会員業者間でも関心が高かった問題であったので、同機構は、会員の協力を得て対応策を策定し、甲第9号証の資料を取りまとめるとともに、山梨県や会員にも配布したものであった。
したがって、甲第9号証の資料は、平成10年2月頃に頒布されたものである。
(口頭審理陳述要領書3頁33行ないし4頁18行)

イ 甲第9号証は、平成10年当時、EDOの事務局長であった塚本氏が作成したものであった(甲第14号証)。同氏によると、当時、全国的に、EPSブロックを用いた急斜面での拡幅盛土工事が増加傾向にあったことから、そもそも、甲第9号証は、EDO会員に注意を促すために、同工事上の問題点及びその対策案をEDO会員に周知する前提で同作成したものであった(甲第14号証)。
そして、同氏は、平成10年2月17日に山梨県道路建設課と打合せ(甲第15号証)をしてから数日後に資料を完成させた後、直ちにFAXや手交により、主要なEDOの所属会員複数社に甲第9号証を配布し、かつ、甲第9号証をEDO事務所において誰でも閲覧可能な書類として保管したとのことである(甲第14号証)。
甲第9号証は、平成11年1月28日に開催されたEDOの第13期合同部会において、EDOの会員全員に対しても配布・報告されたとのことである(甲第14号証、甲第16号証)。
以上より、甲第9号証は、塚本氏が甲第9号証を完成させ、EDOの会員複数社にFAXし、あるいは、EDO事務所において誰でも閲覧可能な書類として保管した平成10年2月の時点で、不特定又は多数人が認識しうる状態の下で開示されていたものであることは明らかである。
(平成28年2月9日付け上申書3頁1ないし30行)

第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(審判事件答弁書、平成28年1月12日付け口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理調書、平成28年2月23日付け上申書、平成28年5月16日付け上申書(第2)、平成28年8月29日付け審判事件答弁書(第2)を参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:発泡スチロール土木工法開発機構壁材標準化ワーキンググループ,「EPS開発機構 壁材標準化ワーキング -EPSを用いた拡幅盛土の壁体構造の標準化- 活動報告書」,発泡スチロール土木工法開発機構,平成9年12月,表紙、序文、目次及び裏表紙
乙第2号証:塚本英樹の名刺
乙第3号証:「第12期(平成9年度)第1回合同部会資料」,EDO・発泡スチロール土木工法開発機構,平成9年12月11日,表紙、目次及び裏表紙
乙第4号証:「第14期(平成11年度)EPS開発機構合同部会資料」,発泡スチロール土木工法開発機構,平成11年9月2日,表紙、目次及び裏表紙
乙第5号証:発泡スチロール土木工法開発機構,「EPS工法-発泡スチロール(EPS)を用いた超軽量盛土工法-」,初版,理工図書株式会社,平成5年2月1日,表紙、目次、10頁、145頁、204頁、奥付

3 被請求人の具体的な主張
(1)甲第1号証の頒布について
ア 甲第1号証に係る報告書は、発泡スチロール再資源化協会から(社)プラスチック処理促進協会支援事業へ提出されたものと考えられる。甲第1号証の表紙の上部に記載されているのが(社)プラスチック処理促進協会支援事業の1社のみであることからすると、甲第1号証が(社)プラスチック処理促進協会支援事業以外には提出されていないと考えられる。つまり、甲第1号証は、発泡スチロール再資源化協会から(社)プラスチック処理促進協会支援事業1社に対してだけ提出された私的な報告書であって、刊行物として発刊されたものであるとは社会通念上考えられない。
甲第1号証に記載されているような新たな技術の開発に関する情報は、これに携わったグループ内のみに止められるのが通常である。甲第1号証のような報告書が、調査・検討のための施工後、それほどの期間をおくことなく刊行物として発刊されるとは一般的には考えられない。
甲第1号証の表紙に記載の「平成10年8月」は、甲第1号証に係る報告書の提出年・月又は作成年・月であると解するのが相当であり、この記載をもって甲第1号証の発刊年・月であるとは認められない。また、「平成10年8月」をもって甲第1号証の発刊年・月であるとするに足る証拠もない。
以上のことからすれば、甲第1号証が、本件特許の出願前に頒布された刊行物であるとは認められず、甲1発明が本件特許の出願前に公知であったとは認められない。
(答弁書2頁22行ないし4頁3行)

イ JEPSAの目的や出資関係に基づき、発泡スチロール再資源化協会が、甲第1号証を遅くとも平成10年12月までに所属の会員一般に対して頒布しているはずであるとする請求人の主張は、合理的根拠を全く欠く主張にすぎない。
(口頭審理陳述要領書3頁9ないし12行)

ウ 甲第14号証に記載されている事項は、今からほぼ20年も前の事柄であり、一般的な人間の記憶状態を考えると、直ちには、当時の事実を正確に表しているものとは認め難い。
(上申書2頁4ないし6行)

エ 甲第1号証は、(社)プラスチック処理促進協会から委託されて発泡スチロール再資源化協会が作成して納品した文書であると考えるのが最も一般的な解釈であろうと考える。このように解釈した場合、甲第1号証を(社)プラスチック処理促進協会支援事業以外の第三者に配布するには、(社)プラスチック処理促進協会の許可が必要となると考えるのが自然である。
塚本氏の記憶からすると、(社)プラスチック処理促進協会が発泡スチロール再資源化協会から甲第1号証を受領したであろう時期とほぼ同時期に、EDOは甲第1号証の提供を受けている。
しかしながら、甲第1号証をこのような時期に第三者に配布することを(社)プラスチック処理促進協会が許可するとは一般的には考えられない。また、甲第1号証を緊急に第三者に配布しなければならない特段の事由があったとも認められない。したがって、EDOが「1998年8月」頃に甲第1号証を受領したとする塚本氏の記憶は誤っている可能性が高い。
(上申書2頁17行ないし3頁3行)

オ 甲第1号証は、発泡スチロール再資源化協会が行った独自の研究活動に関し、(社)プラスチック処理協会への補助金を請求するための報告書である可能性も否定できない。甲第1号証が補助金請求のための報告書であるとすると、この報告書の内容が発泡スチロール減容品の新しい用途の開発に関するものであり、知的財産としての保護等を考慮すれば、甲第1号証を第三者に配布するとしても、一般的には請求手続からかなりの期間経過後であると考えられる。したがって、大滝氏からの連絡は、報告書の完成からかなりの時間が経過した後と考えるのが自然である。この場合には、甲第1号証は公知文献ではない可能性が高い。
(上申書(第2)4頁7ないし9行、5頁7ないし13行)

(2)甲第9号証の頒布について
ア 甲第11号証の内容からは、発泡スチロール土木工法開発機構の会員への周知時期は、全く明らかではない。明らかではないにも拘わらず、作成時期と同時期にEDOの会員に配布したとの回答が得られた、としている請求人の主張は、甲第11号証の記載内容に反する。
甲第9号証は、もっぱら山梨県等の特定の者への報告のために作成された書面であり、刊行物には該当しない。また、甲第9号証は、山梨県の道路建設工事について発生した問題に基づく書面であること、施主は明らかに山梨県であること、当該工事現場であると考えられる写真も添付されていること等からすれば、施主である山梨県に対して甲第9号証の作成者等は暗黙の守秘義務を負っていたと解すべきである。
山梨県が、原因も分からない問題に対する、未検証の対応策に関する甲第9号証をEDOの会員へ配布することを、甲第9号証の作成と同時期にEDOに許可又は指示することは、後に甲第9号証の対応策が不十分であったことが明らかになった場合を想定すると、考えられないことである。
被請求人の一人であるダウ化工株式会社は、1998年2月当時も含めてEDOの会員であるが、1998年2月にEDOから甲第9号証の資料の配付を受けた事実は確認できていない。
(口頭審理陳述要領書3頁13行ないし5頁5行)

イ 甲第14号証に記載されている事項は、今からほぼ20年も前の事柄であり、一般的な人間の記憶状態を考えると、直ちには、当時の事実を正確に表しているものとは認め難い。
(上申書2頁4ないし6行)

ウ 塚本氏が一人で原因を突き止め、その対応策を甲第9号証として作成したかのような甲第14号証は信用することができない。
(上申書6頁10ないし12行)

エ 甲第9号証は、山梨県と全く関連のない文書ではなく、しかも山梨県の工事現場の写真を添えている点からすれば、その配布には、当然に山梨県の承諾が必要と認められる。塚本氏が、配布に際しては山梨県の承諾をとっておくべき甲第9号証の文書を山梨県の承諾なしに配布したとすれば、当然に内密に配布したものであり、配布先に守秘義務を課していたと考えるのが自然である。また、検討未了の状態であったことからしても、配布があったとしても、特定の範囲に、非拡散を条件に行われたと考えるのが自然である。
(上申書(第2)7頁8ないし15行)

(3)無効理由1について
甲1発明は本件特許の出願前に公知であったとは認められない。したがって、本件特許発明1、6について、甲1発明と同一であって新規性がないとする請求人の主張には全く理由がない。
甲第2?7号証のうち、甲第2、5、6号証については、軽量盛土の最底部に、圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いることを開示も示唆もしていないことが明らかである。また、甲第3、4、7号証が開示するEPSの荷重分散特性を考慮した設計は、EPS盛土の最底部のEPSは高強度のものでなくてもよいとする設計であり、これらからは、軽量盛土の最底部に、圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いることは容易に着想することができない。
(答弁書5頁1ないし19行)

(4)無効理由2について
ア 本件特許発明2について
甲1、9発明が本件特許の出願前に公知であったとは認められないと共に、甲1発明の課題が本件特許の出願当時周知であったとも認められない。したがって、軽量盛土において、大きな荷重が加わりやすい箇所に、その他の箇所に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いるという、本件特許発明の基本的構成すら公知であるとすることができないことから、本件特許発明2?5、7が、本件請求人指摘の甲号証の発明からは容易に想到できないことが明らかである。
請求人が本件特許発明2に対して指摘する甲第2号証の記載が開示している内容は、EPS盛土で擁壁がある場合の擁壁の耐震設計である。これに対して、本件特許発明2において、前面壁の背面直後に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを使用しているのは、EPS部分の耐震設計に係わるものである。つまり、EPS部分の耐震設計と擁壁の耐震設計は、設計対象が全く異なることから、甲第2号証が示す擁壁の耐震設計からは、EPS部分の耐震設計に係る本件特許発明2を容易に着想することはできないものである。
甲第3号証の荷重分散特性と本件特許発明2とでは、考慮する荷重が全く異なっており、甲第3号証のように垂直方向の荷重を考慮することが、甲第3号証に示される擁壁の背面直後に圧縮強度の高い高密度のEPSを用いることに結び付くとは認められない。
請求人が指摘する甲第3号証の記載には、EPSブロックの端部が鉛直方向にそろって盛土されている場合、端部付近に作用した荷重は分散が制限され、EPSには通常よりも大きな応力が作用することが開示されている。しかしながら、盛土端部は、路肩部分であって、盛土中央部分に比して大きな交通荷重がかからない部分である。したがって、荷重分散性が制限されるとしても、直ちにこれが盛土端部付近の補強の必要性に結び付くものではなく、上記甲第3号証の記載からでは、本件特許発明2を容易に着想することはできないものである。
本件請求人が本件特許発明2に対して指摘する甲第4号証の荷重分散特性を考慮した設計からも、既に説明した甲第3号証の荷重分散特性を考慮した設計と同様の理由から、本件特許発明2を容易に着想することはできないものである。
(答弁書5頁20行ないし8頁18行)

イ 本件特許発明3について
本件請求人が本件特許発明3に対しても指摘している、本件特許発明2に対してと同じ甲第2?4号証の記載は、EPS盛土の擁壁の背面直後に圧縮強度の高い高密度のEPSを用いることを着想させるものではない。
(答弁書9頁24行ないし10頁15行)

ウ 本件特許発明4について
本件特許発明1?3は新規性及び進歩性を有しており、本件特許発明4は、本件特許発明1、2又は3を必須の構成要件として内包している。よって、本件特許発明4は、本件請求人指摘の甲号証の発明からでは、容易には想到し得ないものである。
(答弁書10頁16ないし22行)

エ 本件特許発明5について
本件特許発明1?3は新規性及び進歩性を有しており、本件特許発明5は、本件特許発明1、2又は3を必須の構成要件として内包している。よって、本件特許発明5は、本件請求人指摘の甲号証の発明からでは、容易には想到し得ないものである。
(答弁書10頁23行ないし11頁2行)

オ 本件特許発明7について
本件特許発明1?3は新規性及び進歩性を有しており、本件特許発明7は、本件特許発明1、2又は3を必須の構成要件として内包している。よって、本件特許発明7は、本件請求人指摘の甲号証の発明からでは、容易には想到し得ないものである。
(答弁書11頁3ないし9行)

カ 本件訂正発明1について
甲第4、7号証に記載された周知技術は、軽量盛土の応力は下側ほど小さくなることから、下段に位置するEPSブロックほど上段のEPSブロックより低強度のものにできるとするものである。これに対し、甲第9号証の記載を踏まえた甲1発明は、応力集中による最下段付近のEPSブロックを上部のEPSブロックより高強度のものとするものである。つまり、甲第9号証の記載を踏まえた甲1発明と周知技術とは、高強度とするEPSブロックと低強度とするEPSブロックの配置が全く逆で、基本的な考え方が相反する技術である。したがって、甲第9号証の記載を踏まえた甲1発明に周知技術を適用することは、両者の基本的な考え方が矛盾することから、現場の状況に応じて適宜なし得る設計的事項とすることはできないと認められる。
(上申書(第2)9頁末行ないし10頁10行)

第6 当審の判断
1 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の頒布性について
被請求人は、甲第1号証が本願出願前に頒布された刊行物であるか否かについて争っているので、まず、この点について検討する。

(ア)甲第1号証には、次の事項が記載されている。
a 「(社)プラスチック処理促進協会支援事業 発泡スチロール減容品の用途開発事業報告書(EPS土木工法拡幅盛土の裏込材モデル実験) 平成10年8月 発泡スチロール再資源化協会」(表紙)
b 「発泡スチロールは今世紀最大の発明と言われている。……しかし、使用後は容積がかさむ為、処理に困ることから、ゴミの代名詞のように、白眼視された時期もあった。発泡スチロール再資源化協会はこうした問題に立ち向かい、現在では30.2%にリサイクルを果たすまでになった。……すでに、国内でもインゴットを粉砕してペレット化して、面木、目地棒等の土木・建築材料、玩具、家電OA機器の部品等で15千トン使用されているが、30千トンを消化出来る迄には到っていない。そこで大量の使用の期待出来る土木用途への用途開発に取りかかることにした。インゴットを粉砕したものは比重が0.5トン/m^(3)と軽く……強度も4号砕石並みであるところに着目した。
一方、EPS工法は、’85年に国内で取り上げられてから10数年を経て、96年には458件の254千m^(3)使用される迄になった。……急傾斜地での道路の拡幅工事への採用が増え、EPSを裏込めとする、擁壁の高さも年々高くなり8?10Mの物件が増えてきている。その分EPSの裏込めに通水材として使用している砕石の荷重が擁壁に掛かり、鋼材を変形させたり、基礎を破壊させるおそれがあり、通水材の再検討の必要性が出てきており、リサイクルの面と土木の施工の面でドッキングして用途開発にあたることにした。」(1頁2ないし28行)
c 「・開発を進めるための組織体制
事務局を発泡スチロール再資源化協会の中に置き、推進-部長の大瀧がコーディネートを行い、同協会の瀬尾技術部長及び岡三興業(株)開発事業部大阪技術課と九州技術課がフォローを行った。……」(1頁29ないし35行)
d 「EPS軽量盛土の裏込めとして砕石が使用されているのが現状である。本試験は、粒状ペレットの特性(軽量化:背面土圧の軽減)を生かし、裏込めとしての使用を検討する際の資料を得る目的で、粒状ペレットの特性を把握すると共に現在使用されている砕石との比較試験を行ったものである。
……
<使用材料>
イ)インゴットを粉砕した粒状ペレット(粒径:20?30mm)」(29頁2ないし13行)

(イ)上記(ア)aないしdの摘記事項によると、甲第1号証は、(社)プラスチック処理促進協会が支援する事業において、発泡スチロール再資源化協会が主体となって、発泡スチロールをリサイクルして製造された粒状ペレットをEPS土木工法拡幅盛土の裏込材として用いるモデル実験を行った結果をまとめた報告書であって、平成10年8月に作成されたものと認められる。
そして、甲第1号証の報告書は、その内容からみて、作成後速やかに、少なくとも発泡スチロール再資源化協会の会員企業、(社)プラスチック処理促進協会及びその会員企業に提供されるべきものであり、その内容を広く世の中に知らしめることが発泡スチロールのリサイクルの向上に繋がるものであって、秘密にする特段の理由も認められない。

(ウ)また、甲第14号証には、発泡スチロール再資源化協会及び(社)プラスチック処理促進協会とは別組織である、発泡スチロール土木工法開発機構が、平成10年8月頃に、発泡スチロール再資源化協会より甲第1号証の報告書を複数部提供され、同機構の主要メンバー社に対して配布すると共に、同機構の事務所にも会員が閲覧可能な資料として保管したことが記載されており、甲第1号証が守秘義務を課すことなく頒布されたことを裏付けている。

(エ)してみると、甲第1号証は、平成10年8月頃、すなわち本件特許の出願日前に頒布された刊行物であると推認できる。

(オ)なお、被請求人は、甲第14号証に記載されている事項は、今からほぼ20年も前の事柄であり、一般的な人間の記憶状態を考えると、当時の事実を正確に表しているものとは認め難い旨、(社)プラスチック処理促進協会が、甲第1号証を受領した時期とほぼ同時期に、甲第1号証を第三者に配布することを許可するとは考えられない旨、甲第1号証が補助金請求のための報告書であるとすると、知的財産の保護等を考慮すれば、甲第1号証を第三者に配布するとしても、一般的には請求手続からかなりの期間経過後であると考えられる旨等、縷々主張するが、上記(イ)、(ウ)のとおりであって、いずれも採用できない。

イ 甲第1号証の記載
(ア)甲第1号証には、次の事項が記載されている。

a 「EPS工法は、発泡スチロールの大型ブロックを土木、建築分野の土木工事、構造物工事……に用いる工法で、EPSの超軽量性、耐圧縮性、自立性、耐水性および施工性などの特徴を有効に活用する工法の総称である。」(12頁18ないし20行)

b 「第2章 急傾斜地でのモデル施工
1.在来工法での問題点
1986年以降、軟弱地盤状の軽量盛土、拡幅盛土、……等々さまざまなロケーションに採用されて来た。その中で、我が国のインフラ整備として道路部に採用されるケースが多く、国土事情から最近では、より急峻な山岳道路部の斜面拡幅や大規模地すべり地への適用など設計、施工条件がかなり厳しい箇所への適用が多くなっている。そのような背景をもとに、基礎幅の確保が不十分な急傾斜やゆるい崩積土上に施工された拡幅盛土などでは、盛土本体と併せて裏込め材も含めた軽量化を図らなければ全体の変形やすべりが懸念されるケースも生じている。

2.EPSドレン材を用いた新工法
(2)実験の目的
斜面を掘削してEPS盛土を構築する場合、地山とEPSとの境界部は、湧水や浸透水の排水を考慮して砕石が使用されているのが現状である。……
ここでは、従来EPS背面の裏込め材として使用している砕石と、砕石と比較して軽量という特徴を生かし、裏込め材として最低限の物性値を有しているか、比較試験を行ったものが特性確認試験である。……」(26頁1ないし19行)

c 「EPS軽量盛土の裏込め材として砕石が使用されているのが現状である。
本試験は、粒状ペレットの特性(軽量化:背面土圧の軽減)を生かし、裏込めとしての使用を検討する際の資料を得る目的で、粒状ペレットの特性を把握すると共に現在使用されている砕石との比較試験を行ったものである。」(29頁2ないし4行)

d 「また、室内試験においてEPS背面裏込め材として強度特性に問題がないため、実現場における試験施工を行うこととした。」(41頁1ないし2行)

e 「(4)考察
EPS背面砕石部に砕石とインゴット砕石の区間分けをして試験施工を行った。掘削のり面は、降雨、周辺からの流入水が溜まりやすい箇所であり、このためわずかの水位でもEPSが容易に浮き上がることとなる。そこで、掘削部ではその流入した水が滞留することなく、速やかに排水する必要がある。」(44頁16ないし20行)

f 上記aないしeの摘記事項、及び甲第2号証、甲第6号証の記載(下記(2)サ及び(6)ウを参照。)に照らせば、「D-20」及び「D-25」は、型内発泡法によるEPSの種別を意味すると推認できることを踏まえて、42頁の正面展開図及び横断図をみると、以下の事項がみてとれる。
(a)壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロック(D-25、D-20)を積み上げた拡幅盛土構造であること。
(b)拡幅盛土構造の最底部が最もEPSブロックの敷設面積が小さく、上方ほどEPSブロックの敷設面積が大きいこと。
(c)最底部を含む6層のEPSブロックとしてD-25を用い、その上方部のEPSブロックとしてD-20を用いたこと。

(イ)上記(ア)aないしfを総合し、さらに、甲第2号証及び甲第6号証に記載(下記(2)サ及び(6)ウを参照。)のように、「D-20」及び「D-25」は、それぞれ密度20kg/m^(3)、25kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)、7.0tf/m^(2)の特性を有することを踏まえると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた拡幅盛土構造。」

(2)甲第2号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 「EPSは,軽量性・自立性・施工性などにすぐれているため,軟弱地盤上の盛土や擁壁・橋台の裏込め,直立壁,あるいは管基礎などに使用した場合にこれらの特性が有効に発揮される。」(9頁2ないし4行)

イ 「EPS工法の主な適用分野を,表1.4.1に項目として示し,表1.4.2は形態別に整理して示している。また,図1.4.1はそれぞれの用途ごとに様々な適用形態を示したものである。」(9頁9ないし11行)

ウ 「型内発泡法とは,ポリスチレンと発泡剤から得られた発泡性ポリスチレンビーズを所定の発泡倍率に予備発泡させたものを,さらにサイロで乾燥,熟成させた後,成形機に充填し,予備発泡粒が軟化するまで加熱した後,冷却して成形体を製造する方法である。」(21頁2行ないし22頁2行)

エ 「押出発泡法とは,押出機内で加熱溶融させたポリスチレンに炭化水素などの易気体性液体ガスを混合して流動性ゲルを作り,これを押出機先端のオリフィスから低圧下の成型装置へ発泡しながら押出す方法である。」(25頁2ないし4行)

オ 「押出発泡法によるブロックは,製造メーカー4社で生産されている。……10工場の生産量の合計は15万m^(3)/月で,……EPS工法に用いる場合はボード状の物を重ね合わせたブロックとして使用されている。」(26頁13ないし18行)

カ 「EPSは厚さ50cmのブロックが得られる型内発泡法によるものと,最大厚さ10cmのボード状ブロックが得られる押出発泡法による2種類の種別があり,それぞれEPS(種別記号としてD-30?D-12),XPS(種別記号としてDX-29)と略記している。」(27頁7ないし10行)

キ 「……設計に用いる圧縮応力の許容値は,圧縮比例限(圧縮弾性限界)ひずみに対応する圧縮応力としている。」(40頁14ないし15行)

ク 「EPS工法の設計で考慮する荷重は,一般には土圧,自重,載荷重のほかEPS側圧,水圧・浮力,地震慣性力などである。」(77頁末行ないし78頁1行)

ケ 「(1)前面に擁壁等がある場合の耐震設計方法。
EPS部分の変形に対して前面の擁壁部分(鋼矢板,杭等を含む)が抵抗力を発揮する構造の場合には,……EPS部分から擁壁に作用する力を考慮して擁壁の設計を行う。水平力に関しては,極限状態を仮定し,擁壁がないとしたときの各部の慣性力から計算される作用力と,EPS盛土底面での摩擦による抵抗力との差が擁壁に作用するものと考える。曲げモーメントについても同様に考え,これらに加えて擁壁自体に作用する慣性力を考慮して擁壁の滑動,転倒,支持力に対する安定,部材強度および変形量に関する照査を行う。」(140頁4行ないし141頁1行)

コ 13頁の3段目左側の「自立盛土(L型壁)」の図をみると、L型壁間の空所にEPSブロックが積層されていることがみてとれる。

サ 上記カの記載を踏まえて、41頁の「表2.2.8 EPSの圧縮特性」をみると、型内発泡法で製造されたEPSであるD-25、D-20、及び押出発泡法で製造されたDX-29の単位体積重量は、それぞれ25kgf/m^(3)、20kgf/m^(3)、及び29kgf/m^(3)であり(密度は、それぞれ25kg/m^(3)、20kg/m^(3)、及び29kg/m^(3))、同じく許容圧縮応力は、それぞれ7.0tf/m^(2)、5.0tf/m^(2)、及び14.0tf/m^(2)であることがみてとれる。

(3)甲第3号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「発泡スチロール(以下EPS)ブロックを道路路床部に用いた軽量盛土工法において,交通荷重のEPS盛土内部での荷重分散特性を把握することによって,作用応力に応じた圧縮強さのEPS材を深度ごとに使い分ける合理的な設計が可能となる.また,EPS盛土の上層部に高強度EPS用いた場合には路盤厚が薄くでき,盛土重量の軽減を図ることができる他,擁壁などではこれによって地震時の水平慣性力を軽減することが可能となる.」(2523頁本文2ないし5行)

イ 「EPSブロックの端部が鉛直にそろって盛土されている場合(以下直盛土),端部付近に作用した荷重は分散が制限され,EPSには通常よりも大きな応力が作用することが三浦らの研究により報告されている….」(2524頁11ないし14行)

ウ 「一連の実験によりEPS盛土内の荷重分散特性を把握できた.この荷重分散を考慮することにより,強度の異なるEPSを組合わせた合理的な設計を可能とする盛土内応力の算定式を提案することができた.」(2524頁20ないし21行)

エ 2524頁の「表-2 端部増加応力比較表」をみると、深度1.5mでは、三次元FEM解析による応力値が、一般部では0.368tf/m^(2)であるのに対し、端部0.5mでは0.503tf/m^(2)であり、同様に深度2.0mでは、応力値が、一般部では0.255tf/m^(2)であるのに対し、端部0.5mでは0.382tf/m^(2)であることがみてとれる。

(4)甲第4号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「道路の盛土材料に発泡スチロール……を用いる場合、現在の設計法ではEPS盛土内部の荷重分散特性が明らかでないため、上層から下層まですべて同じ圧縮強さのEPSを使用している。そこで、EPS盛土内部の荷重分散特性を把握することにより、作用応力に応じた圧縮強さおEPSを深さごとに使い分ける合理的な設計方法が考えられる。
このため、EPSの荷重分散特性の適切な評価を目的に室内実験と現場実験を実施した。この実験から、載荷荷重直下の応力が最も大きく、またEPS上面より深くなるにつれて応力が減衰されていくことがわかった。……そこで各層のEPSに作用する最大応力を求め、圧縮強さの違うEPSを使い分けることができるようになる。」(2頁要約欄の1ないし10行)

イ 「2.研究の目的
道路盛土に使用されるEPSの設計では、死荷重としての舗装体やコンクリート床版、活荷重としての交通荷重等に十分耐えるEPSの強度が必要である。最近、設計自動車荷重が改正され、従来と同じ強度のEPSを使用するためには、路盤工を厚くして、舗装体やコンクリート床版を伝播してEPSに作用する活荷重の低減をはかる必要がある。
高強度EPSを使用する計画も考えられるが、従来、EPS内部での荷重分散特性が明確になっていないことから荷重の分散を考慮した適切な設計ができず、高強度EPSを全厚もしくは経験的にかなり安全側の厚さに使用せざるを得なかった。
しかし、適切な強度のEPSを従来通り積み上げ、上層部にのみ荷重分散特性上最低限の厚さで高強度EPSを使用し、路盤工の厚さを薄く抑えて死荷重の低減をはかることができれば、EPS材料費用の節約や、鉛直方向の荷重軽減、直立壁、擁壁、橋台背面などでの側圧や地震時の水平方向の慣性力低減など利点が多く、有利な設計が可能となる。
実際に、このような高強度EPSを使用した合理的な設計法に対する現場の要望は高まってきている。
そこで本研究の目的は、道路盛土構造体におけるEPS内部の荷重分散特性を把握し、上記のような状況から現場の要望の多い、圧縮強度の異なるEPSブロックを組み合わせた合理的な設計法の提案を行うことである。」(3頁左欄15行ないし同頁右欄8行)

(5)甲第5号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】
従来より軽量盛り土及び100mmを超える厚い断熱材などに使用する熱可塑性合成樹脂としては、発泡ポリスチレン系ブロックなどが使用されている。発泡体の成形方法としては、発泡剤を含むポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂等のビ-ズを金型内において発泡成形するビ-ズ型内発泡成形方法と押出発泡成形方法とがある。……押出発泡成形方法は、一定巾(特に900mm巾以上)で厚みを大きくするには、金型のみならず押出機本体をも大型のものにする必要がある。現在の技術水準から、押出発泡生産方式で得られる巾900mm以上で厚み200mm以上の押出発泡板を得ることは困難である。
【0003】
そのため、従来、押出発泡成形によって得られた発泡板をエマルジョン系接着剤若しくは溶剤系接着剤を用いて接着・積層して目標厚みの成形体としていた。」

イ 「【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案の要旨は、発泡剤として炭化水素、弗化炭化水素等を使用した密度が10?100kg/m^(3)のポリスチレン系樹脂押出発泡板の、少なくともその一方の面に、オ-プンタイム10秒以上、好ましくは30秒?60秒の合成ゴム系感熱型接着剤、または、合成ゴム系もしくはアクリル系感熱・感圧型接着剤を塗布した面に、押出発泡板を順次重ね合わせて任意の厚みに圧着・接合したポリスチレン系樹脂押出発泡積層板である。」

ウ 「【0010】
本考案の実施例として具体的に図面をもって説明する。
図1及び図2は押出発泡板の平面図であり、図3は得られた製品の斜視図である。図において、厚さ100mm、幅1000mm、長さ2,000mmの押出発泡ポリスチレン板(商品名エスレンフォ-ムSG)1の一方の面に感熱型接着剤(合成ゴム系接着剤:商品名ヒロダイン5132S ボ-ルタック28、オ-プンタイム30秒)2をホットメルトガンにて線状(幅3mm)及び点状(径5mm)に塗布し、これらを5層積層する。積層接着部を3で示す。
得られた製品4の厚さは500mmで、その特性は積層前と変化はなかった。」

(6)甲第6号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 「発泡スチロールによる軽量盛土工法の主要な材料としては,本体となる発泡スチロールブロック,ブロック相互を結合する緊結金具,保護材,基盤材,被覆材,壁体,アンカー材などがある。」(7頁3ないし4行)

イ 「発泡スチロールブロックは,製造方法によって厚さが異なり,押出発泡法の製品は,厚さが10cmなので,数枚を重ね,結合したブロック体として使用することが多い。」(7頁13ないし14行)

ウ 表3-1をみると、型内発泡法で製造された発泡スチロールの種別として、D-12、D-16、D-20、D-25及びD-30があり、押出発泡法で製造された発泡スチロールの種別として、DX-29があること、型内発泡法で製造された種別D-20の発泡スチロールの単位体積重量は20kgf/m^(3)(密度は20kg/m^(3))であり、プラス1.5kgf/m^(3)、マイナス1.0kgf/m^(3)の誤差が許容されること、及び型内発泡法で製造された種別D-25の発泡スチロールの単位体積重量は25kgf/m^(3)(密度は25kg/m^(3))であり、プラスマイナス1.5kgf/m^(3)の誤差が許容されることが記載されている。

(7)甲第7号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「軽量盛土材として発泡スチロール(以後EPSと呼ぶ)を道路に使用する場合には、荷重分散特性を知る必要がある。舗装体およびコンクリート床版を含めたEPS材内での荷重分散性能についていくつか報告されているが、EPS単独の荷重分散特性については明確になっていない。このEPSの荷重分散特性を知ることによって、大きな交通荷重の作用する上側に高強度EPS、下側には低強度EPSを配した合理的な設計が可能となる」(56頁本文2ないし6行)

イ 「載荷結果を図2、3に示す。
(1)EPS下面での応力は、載荷板直下が最大で、載荷位置から離れるに従って小さくなる分布を示した。」(57頁2ないし5行)

ウ 「近年、交通荷重が年々増大化する傾向にあり、EPSを用いた軽量盛土工法を施工する際、高強度EPSと低強度EPSを組み合わせた、いわゆるハイブリッド構造に対する現場の要望は大きい。」(57頁28ないし32行)

(8)甲第9号証
ア 甲第9号証の頒布性について
被請求人は、甲第9号証が本願出願前に頒布された刊行物であるか否かについて争っているので、まず、この点について検討する。

(ア)甲第9号証は、「EPS工法/拡幅盛土の設計、施工に関する留意点」と題する文書であって、その表紙には、「現在、各地でEPS工法による急傾斜斜面の拡幅設計並びに拡幅工事が行われております。……現場の状況によっては拡幅盛土の下部に応力集中が発生し、最下段付近のEPSブロックが塑性変形する現象が発生しているケースが見受けられます。これらの原因は今後解明しなければならない問題ではありますが、当面の設計、施工中の現場に注意を促し、より安全な設計、施工が行われますよう現段階の対策案をお知らせいたします。」と記載され、さらに「1998年2月」、「発泡スチロール土木工法開発機構」と記載されている。

(イ)上記(ア)の摘記事項によると、甲第9号証は、発泡スチロール土木工法開発機構がその会員企業に対して、EPS工法による急傾斜斜面の拡幅設計及び拡幅工事において問題が発生していること、及びその問題に対する現段階の対策案を知らせた文書であり、その内容の緊急性からみて、1998年(平成10年)2月の文書作成後、直ちに配布されたものと考えるのが自然である。そして、甲第9号証は、その文書の性格からみて、秘密にすべきものとも認められない。

(ウ)また、甲第14号証には、発泡スチロール土木工法開発機構が甲第9号証の原案を作成し、平成10年2月17日に、山梨県道路建設課に対し当該原案を提出し、内容を報告したこと、及びその後数日程度で甲第9号証の文書を完成させ、山梨県に提出するとともに、取り急ぎ同機構の会員に対してFAXで配信したこと等が記載されており、甲第9号証が、作成後速やかに、守秘義務を課すことなく頒布されたことを裏付けている。

(エ)してみると、甲第9号証は、平成10年2月頃、すなわち本件特許の出願日前に頒布された刊行物であると推認できる。

(オ)なお、被請求人は、山梨県が未検証の対応策に関する甲第9号証を発泡スチロール土木工法開発機構の会員へ配布することを、甲第9号証の作成と同時期に許可又は指示することは考えられない旨、甲第9号証の文書を山梨県の承諾なしに配布したとすれば、当然に内密に配布したものであり、配布先に守秘義務を課していたと考えるのが自然である旨等、縷々主張するが、甲第9号証は、発泡スチロール土木工法開発機構がその会員企業に配布したものであるから、その配布に際し、山梨県の許可が必要であったとは認められないし、上記(イ)、(ウ)のとおりであって、いずれも採用できない。

イ 甲第9号証の記載
甲第9号証には、次の事項が記載されている。

(ア)「現在、各地でEPS工法による急傾斜面の拡幅設計並びに拡幅工事が行われております。……現場の状況によっては拡幅盛土の下部に応力集中が発生し、最下段付近のEPSブロックが塑性変形する現象が発生しているケースが見受けられます。これらの原因は今後解明しなければならない問題ではありますが、当面の設計、施工中の現場に注意を促し、より安全な設計、施工が行われますよう現段階の対策案をお知らせいたします。」(表紙枠囲い内)

(イ)「EPS工法 設計・施工上の留意点
1.斜面角度45度以上の拡幅盛土を設計する場合、最下段EPSが設置される基礎工(フーチング)の上面幅は応力分散を考えて2m以上とする。
2.最下段1m分のEPSブロックの種別は応力集中を勘案して簡易的に以下の方法で応力度qを算定し決定する。
q=[活荷重+死荷重(舗装、盛土、EPS路床およびコンクリート床版等)](t/m)÷最下段EPS幅(m)」(1頁目1ないし8行)

2 無効理由1(新規性欠如)について
本件訂正発明1は本件特許発明1に対応し、本件訂正発明6及び10は、本件特許発明6に対応する。

(1)本件訂正発明1について
ア 対比・判断
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」、「掘削のり面」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明1の「前面壁」、「背面傾斜地」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明1の「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」に相当する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明1の「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」とは、「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」で共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明1の「軽量盛土構造」に相当する。

(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした軽量盛土構造。」

(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点1>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明1では、空所の最上層にも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いるのに対し、甲1発明では、そのような構成を有していない点。

(カ)よって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

イ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1の特許は、請求人が主張する無効理由により無効にすることはできない。

(2)本件訂正発明6について
本件訂正発明6は、本件訂正発明2ないし5のいずれかを引用してさらに限定したものであるから、甲1発明とは、下記3(2)、(3)の本件訂正発明2、3についての判断で示す相違点2又は3で相違する。
よって、本件訂正発明6は、甲第1号証に記載された発明ではなく、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

(3)本件訂正発明10について
本件訂正発明10は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用してさらに限定したものであるから、上記(1)の本件訂正発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。
よって、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

3 無効理由2及び3(進歩性欠如)について
本件訂正発明2ないし5、7は、本件特許発明2ないし5、7にそれぞれ対応し、本件訂正発明8及び9は、本件特許発明4及び5にそれぞれ対応する。

(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、上記2(1)ア(エ)の一致点で一致し、同(オ)の相違点1で相違する。

イ 判断
(ア)相違点1について
甲第4号証及び甲第7号証に記載のように、道路盛土構造体において、荷重分散特性を考慮して、大きな交通荷重の作用する上側に高強度のEPSブロックを用い、下側には低強度のEPSブロックを用いることにより合理的な設計を行うことは、本件特許の出願時点において周知である(上記1(4)ア、イ及び上記1(7)ア、ウを参照。)。
そして、甲第1号証の42頁の正面展開図及び横断図の記載に照らせば、甲1発明の拡幅盛土構造は、道路盛土構造体であって、上層部のEPSブロックにより大きな交通荷重が作用することは、当業者にとって自明の事項であるから、上記周知技術を適用して、最上層に用いるEPSブロックとしてD-20に代えて圧縮強度の高いD-25等を採用すること、すなわち上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、作用する交通荷重の大きさに応じて当業者が適宜なし得ることである。

(イ)被請求人の主張について
被請求人は、上記周知技術は、下段に位置するEPSブロックほど上段のEPSブロックより低強度のものにできるのに対し、甲1発明は、最下段付近のEPSブロックを上部のEPSブロックより高強度のものとするものであって、甲1発明と周知技術とは、高強度とするEPSブロックと低強度とするEPSブロックの配置が全く逆で、基本的な考え方が相反する技術であるから、甲1発明に上記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ない旨主張する(上記第5、3(4)カを参照。)。
上記被請求人の主張について検討する。
甲第9号証の記載(上記1(8)イを参照。)を踏まえると、甲1発明は、急傾斜斜面の拡幅盛土構造において、基礎工の上面幅が狭い場合、すなわち最下段のEPSブロック層の幅が狭い場合に、拡幅盛土の下部に盛土構造体の自重や全交通荷重による応力が集中し、最底部付近のEPSブロックが塑性変形するとの課題に対処するものと認められる。
他方、上記周知技術は、一般的な道路盛土構造体において、局所的な交通荷重の分散特性を考慮して、EPSブロックの設計を行うものである。
被請求人が主張する甲1発明と上記周知技術におけるEPSブロックの配置の違いは、両者の設計条件の違い、すなわち盛土構造体の全体形状や考慮する荷重の違いに起因して生じたものであって、両者の技術思想が相反するものではないから、両者は並立可能な技術というべきである。
そして、甲1発明に上記周知技術を適用するにあたり動機付けがあることは上記(ア)のとおりであるから、上記被請求人の主張は採用できない。

(ウ)本件訂正発明1の効果について
本件訂正発明1によってもたらされる効果を全体としてみても、甲1発明及び上記周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に規定により、無効とすべきものである。

(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」、「掘削のり面」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明2の「前面壁」、「背面傾斜地」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明2の「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」に相当する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明2の「前面壁の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、その後方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」ことは、「一部に他の発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものを用いた」ことで共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明2の「軽量盛土構造」に相当する。

(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、一部に他の発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものを用いた軽量盛土構造。」

(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点2>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明2では、前面壁の背面直後に、その後方部に用いるものよりも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いたのに対し、甲1発明では、敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックに、その上方部のものより圧縮強度が高く、高密度のD-25を用いた点。

イ 判断
(ア)相違点2について
上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成は、地震時の水平力によって盛土躯体の重心の位置が偏った場合にも、最大応力がかかる前面壁もしくは壁体の背面直後の発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みを防止するという課題を解決するものである(本件訂正明細書の段落【0008】ないし【0010】、【0017】を参照。)。
他方、甲第2号証には、EPS盛土の耐震設計に関し、EPS部分から擁壁に作用する力を考慮して擁壁の設計を行うこと、及び擁壁の滑動、転倒、支持力に対する安定、部材強度および変形量に関する照査を行うことが記載されるにとどまり(上記1(2)キ及びクを参照。)、本件訂正発明2の上記課題や、前面壁の背面直後の発泡プラスチックブロックとして圧縮強度の高い高密度のものを用いることについては記載も示唆もされていない。
甲第3号証には、交通荷重のEPS盛土内部での荷重分散特性を把握することによって、作用応力に応じた圧縮強さのEPS材を深度ごとに使い分ける合理的な設計が可能となること、及びEPS盛土の上層部に高強度EPSブロックを用いた場合には路盤厚が薄くでき、地震時の水平慣性力を軽減することが可能となることが記載されている(上記1(3)アを参照。)。また、EPSブロックの端部が鉛直にそろって盛土されている場合、端部付近に作用した荷重は分散が制限され、EPSブロックに通常よりも大きな応力が作用することが記載され、表-2には、荷重の分散が制限される深度1.5m及び2.0mの端部付近のEPSブロックに作用する応力は、一般部のEPSブロックに作用する応力より大きく、それぞれ0.503tf/m^(2)、0.382tf/m^(2)であることが記載されている(上記1(3)イ、エを参照。)。
しかし、甲第3号証には、本件訂正発明2の上記課題について記載も示唆もされておらず、また、上記端部付近のEPSブロックに作用する応力は、例えばD-20の許容圧縮応力5.0tf/m^(2)と比較しても極めて小さく、高強度のEPSブロックを用いる程のものとはいえないから、甲第3号証は、甲1発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成とすることを教示するものではない。
甲第4号証には、EPS盛土内部の荷重分散特性を把握することにより、作用応力に応じた圧縮強さおEPSを深さごとに使い分ける合理的な設計方法が考えられること、及び上層部にのみ荷重分散特性上最低限の厚さで高強度EPSを使用し、路盤工の厚さを薄く抑えて死荷重の低減をはかることができれば、直立壁、擁壁などでの側圧や地震時の水平方向の慣性力低減など利点が多く、有利な設計が可能となることが記載されているにとどまり(上記(3)ア、イを参照。)、本件訂正発明2の上記課題や、前面壁の背面直後の発泡プラスチックブロックとして圧縮強度の高い高密度のものを用いることについては記載も示唆もされていない。
してみると、甲1発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明2の構成とすることは、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るとすることはできない。

(イ)請求人の主張について
請求人は、地震時に直立壁の内側に大きな力が係ることは、甲第2号証及び甲第3号証に記載のように、本件特許の出願時において周知の事項である旨主張するが、上記(ア)のとおりであって、採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

(3)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明3の「壁体」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」と、本件訂正発明3の「壁体間の空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる自立壁の盛土構造」は、「発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる盛土構造」で共通する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明3の「壁体の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、中間部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」ことは、「一部に他の発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものを用いた」ことで共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明3の「軽量盛土構造」に相当する。

(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる盛土構造において、一部に他の発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものを用いる軽量盛土構造。」

(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点3>
盛土構造の用途、及び圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明3は、壁体間の空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる自立壁の盛土構造であって、壁体の直後に、中間部に用いるものよりも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いたのに対し、甲1発明は、壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造であって、敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックに、その上方部のものより圧縮強度が高く、高密度のD-25を用いた点。

イ 判断
(ア)相違点3について
上記相違点3に係る本件訂正発明3の「壁体の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、中間部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした」との構成は、地震時の水平力によって盛土躯体の重心の位置が偏った場合にも、最大応力がかかる前面壁もしくは壁体の背面直後の発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みを防止するという課題を解決するものである(本件訂正明細書の段落【0008】ないし【0010】、【0017】を参照。)。
そして、甲第2号証ないし甲第4号証の記載を参酌しても、甲1発明において、上記相違点3に係る上記本件訂正発明3の構成とすることが、当業者にとって容易であるとすることができないことは、上記(2)イ(ア)における検討と同様である。

(イ)請求人の主張について
請求人は、自立壁の盛土構造が出願時において一般的であり(甲第2号証)、地震時に直立壁の内側に大きな力が係るという周知事実(甲第2、3号証)及び、発泡プラスチックブロック内部の荷重分散特性を把握して、圧縮強度の異なる発泡プラスチックブロックを合理的に用いる提案(甲第4号証)があることからすれば、甲1発明に触れた当業者であれば、必要に応じて自立壁の盛土構造を採用し、直立壁の内側に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを使用する本件訂正発明3に容易に想到することは明らかである旨主張するが、自立壁の盛土構造が一般的なものであるとしても、上記(2)イ(ア)における検討と同様に、甲第2号証ないし甲第4号証には、本件訂正発明3の上記課題や、前面壁の背面直後の発泡プラスチックブロックとして圧縮強度の高い高密度のものを用いることについては記載も示唆もされていないから、請求人の採用できない。

ウ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明2又は3を引用してさらに限定したものであるから、上記(2)又は(3)の本件訂正発明2又は3についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証、甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件訂正発明4の特許は、請求人が主張する無効理由により無効にすることはできない。

(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明4を引用してさらに限定したものであるから、甲1発明とは、上記相違点2又は3で相違する。
そして、甲第2号証、甲第4号証に記載された事項が、甲1発明において、上記相違点2又は3に係る本件訂正発明5の構成とすることを教示するものではないことは、上記(2)、(3)のとおりである。
また、甲第5号証及び甲第6号証は、軽量盛土に用いられる押出発泡ポリスチレンからなるブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成されることが、本件特許の出願時点において周知であることを示すために提出されたものであって、甲1発明において、上記相違点2又は3に係る本件訂正発明5の構成とすることを教示するものではない。
よって、本件訂正発明5は、甲1発明及び甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

(6)本件訂正発明7について
本件訂正発明7は、本件訂正発明2ないし6のいずれかを引用してさらに限定したものであるから、甲1発明とは、上記相違点2又は3で相違する。
そして、甲第5号証及び甲第6号証に記載された事項が、甲1発明において、上記相違点2又は3に係る本件訂正発明7の構成とすることを教示するものではないことは、上記(5)のとおりである。
また、甲第4号証及び甲第7号証は、軽量盛土の上層部にのみ高密度の発泡プラスチックブロックを使用することが、本件特許の出願時点において周知であることを示すために提出されたものであって、甲1発明において、上記相違点2又は3に係る本件訂正発明7の構成とすることを教示するものではない。
よって、本件訂正発明7は、甲1発明及び甲第4号証ないし甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求人が主張する無効理由により、その特許を無効にすることはできない。

(7)本件訂正発明8について
ア 本件訂正発明8
本件訂正発明8を、本件訂正発明1を引用しない形式で表すと次のとおりである。

「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、
前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする軽量盛土構造。」

イ 対比
本件訂正発明8と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」、「掘削のり面」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明8の「前面壁」、「背面傾斜地」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明8の「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」に相当する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明8の「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」とは、「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」で共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロック」の「D-25」及び「D-20」は、いずれも型内発泡スチロールであるから(上記1(1)イ(ア)fを参照。)、甲1発明の「密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20」は、本件訂正発明8の「低密度」の「型内発泡ポリスチレンからなる」「前記発泡プラスチックブロック」に相当する。

(エ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明8の「軽量盛土構造」に相当する。

(オ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、
低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなる軽量盛土構造。」

(カ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点4>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明8では、空所の最上層にも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いるのに対し、甲1発明では、そのような構成を有していない点。

<相違点5>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックに関し、本件訂正発明8では、高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなるのに対し、甲1発明では、(型内発泡スチロールの)D-25である点。

ウ 判断
(ア)相違点4及び5について
上記相違点4及び5について併せて検討する。
甲第4号証及び甲第7号証に記載のように、道路盛土構造体において、荷重分散特性を考慮して、大きな交通荷重の作用する上側に高強度のEPSブロックを用い、下側には低強度のEPSブロックを用いることにより合理的な設計を行うことは、本件特許の出願時点において周知である(上記1(4)ア、イ及び上記1(7)ア、ウを参照。)。
また、甲第2号証及び甲第6号証に記載のように、軽量盛土に用いる発泡プラスチックブロックとして、押出発泡ポリスチレンからなるもの(DX-29)も、型内発泡ポリスチレンからなるもの(D-12ないしD-30)も、いずれも本件特許の出願時点において周知である(上記1(2)カ、サ及び1(6)イ、ウを参照。)。
他方、甲第1号証の42頁の正面展開図及び横断図の記載に照らせば、甲1発明の拡幅盛土構造は、道路盛土構造体であって、上層部のEPSブロックにより大きな交通荷重が作用することは、当業者にとって自明の事項である。
また、甲第9号証の記載(上記1(8)イを参照。)を踏まえると、甲1発明において、敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとしてD-20より圧縮強度が強いD-25を用いたことの技術的意義は、応力集中が発生する最下段付近のEPSブロックの塑性変形を防止することにあると認められる。
してみると、押出発泡ポリスチレンからなるDX-29の許容圧縮応力が14.0tf/m^(2)であって、D-25の7.0tf/m^(2)、D-20の5.0tf/m^(2)よりも大きいことを踏まえると(上記1(2)サを参照。)、甲1発明において、最上層のEPSブロック、及び最底部を含む6層のEPSブロックとして、D-20やD-25に代えて圧縮強度が強いDX-29を用いること、すなわち上記相違点4及び5に係る本件訂正発明8の構成とすることは、最上層のEPSブロックに作用する交通荷重の大きさや最底部付近のEPSブロックに作用する応力の大きさに応じて当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(イ)本件訂正発明8の効果について
本件訂正発明8によってもたらされる効果を全体としてみても、甲1発明及び上記周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明8は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に規定により、無効とすべきものである。

(8)本件訂正発明9について
ア 本件訂正発明9
本件訂正発明9を、本件訂正発明8を引用しない形式で表すと次のとおりである。

「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、
前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなり、
前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする軽量盛土構造。」

イ 対比
本件訂正発明9と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」、「掘削のり面」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明9の「前面壁」、「背面傾斜地」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明9の「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」に相当する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明9の「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」とは、「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたこと」で共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロック」の「D-25」及び「D-20」は、いずれも型内発泡スチロールであるから(上記1(1)イ(ア)fを参照。)、甲1発明の「密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20」は、本件訂正発明9の「低密度」の「型内発泡ポリスチレンからなる」「前記発泡プラスチックブロック」に相当する。

(エ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明9の「軽量盛土構造」に相当する。

(オ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、
低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなる軽量盛土構造。」

(カ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点6>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明9では、空所の最上層にも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いるのに対し、甲1発明では、そのような構成を有していない点。

<相違点7>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックに関し、本件訂正発明9では、高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなるのに対し、甲1発明では、(型内発泡スチロールの)D-25である点。

ウ 判断
(ア)相違点6及び7について
上記相違点6及び7について併せて検討する。
甲第4号証及び甲第7号証に記載のように、道路盛土構造体において、荷重分散特性を考慮して、大きな交通荷重の作用する上側に高強度のEPSブロックを用い、下側には低強度のEPSブロックを用いることにより合理的な設計を行うことは、本件特許の出願時点において周知である(上記1(4)ア、イ及び上記1(7)ア、ウを参照。)。
また、上記(7)ウ(ア)のとおり、軽量盛土に用いる発泡プラスチックブロックとして、押出発泡ポリスチレンからなるもの(DX-29)も、型内発泡ポリスチレンからなるもの(D-12ないしD-30)も、いずれも本件特許の出願時点において周知であり、甲第2号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載のように、軽量盛土に用いられる押出発泡ポリスチレンからなるブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成されることも、本件特許の出願時点において周知である(上記1(2)オ、上記1(5)アないしウ及び上記1(6)イを参照。)。
他方、甲第1号証の42頁の正面展開図及び横断図の記載に照らせば、甲1発明の拡幅盛土構造は、道路盛土構造体であって、上層部のEPSブロックにより大きな交通荷重が作用することは、当業者にとって自明の事項である。
また、甲第9号証の記載(上記1(8)イを参照。)を踏まえると、甲1発明において、敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとしてD-20より圧縮強度が強いD-25を用いたことの技術的意義は、応力集中が発生する最下段付近のEPSブロックの塑性変形を防止することにあると認められる。
してみると、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成されるDX-29の許容圧縮応力が14.0tf/m^(2)であって、D-25の7.0tf/m^(2)、D-20の5.0tf/m^(2)よりも大きいことを踏まえると(上記1(2)サを参照。)、甲1発明において、最上層のEPSブロック、及び最底部を含む6層のEPSブロックとして、D-20やD-25に代えて圧縮強度が強いDX-29を用いること、すなわち上記相違点6及び7に係る本件訂正発明9の構成とすることは、最上層のEPSブロックに作用する交通荷重の大きさや最底部付近のEPSブロックに作用する応力の大きさに応じて当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(イ)本件訂正発明9の効果について
本件訂正発明9によってもたらされる効果を全体としてみても、甲1発明及び上記周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明9は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に規定により、無効とすべきものである。

(9)本件訂正発明10について
ア 本件訂正発明10
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明10を、本件訂正発明1を引用しない形式で表すと次のとおりである。

「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、
前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする軽量盛土構造。」

イ 対比
本件訂正発明10と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「壁面材」、「掘削のり面」及び「EPSブロック」は、本件訂正発明10の「前面壁」、「背面傾斜地」及び「発泡プラスチックブロック」に、それぞれ相当し、甲1発明の「壁面材と掘削のり面との空所にEPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明10の「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造」に相当する。

(イ)甲1発明の「敷設面積の最も小さい最底部を含む6層のEPSブロックとして、密度25kg/m^(3)、許容圧縮応力7.0tf/m^(2)のD-25を用い、その上方部のEPSブロックとして密度20kg/m^(3)、許容圧縮応力5.0tf/m^(2)のD-20を用いた」ことと、本件訂正発明10の「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいこと」とは、「敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとし、前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいこと」で共通する。

(ウ)甲1発明の「EPSブロックを積み上げた拡幅盛土構造」は、本件訂正発明10の「軽量盛土構造」に相当する。

(エ)以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、
敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックを、その上方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとした軽量盛土構造。」

(オ)他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点8>
圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いる部位に関し、本件訂正発明10では、空所の最上層にも圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いるのに対し、甲1発明では、そのような構成を有していない点。

ウ 判断
上記相違点8は、上記相違点1と同じであるから、上記(1)の本件訂正発明1についての判断と同様に、本件訂正発明10は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 小括
よって、本件訂正発明10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に規定により、無効とすべきものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1、8ないし10は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により、その特許は無効とされるべきものである。
また、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては本件訂正発明2ないし7に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その7分の2を請求人の負担とし、7分の5を被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
軽量盛土
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項2】 前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、前面壁の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、その後方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項3】 壁体間の空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる自立壁の盛土構造において、壁体の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、中間部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴とする軽量盛土構造。
【請求項4】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする請求項2又は3に記載の軽量盛土構造。
【請求項5】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項4に記載の軽量盛土構造。
【請求項6】 前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする請求項2?5のいずれかに記載の軽量盛土構造。
【請求項7】 前記空所の最上層にも高密度の発泡プラスチックブロックを用い、該高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項2?6のいずれかに記載の軽量盛土構造。
【請求項8】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが押出発泡ポリスチレンからなり、これよりも低密度の前記発泡プラスチックブロックが型内発泡ポリスチレンからなることを特徴とする請求項1に記載の軽量盛土構造。
【請求項9】 前記高密度の発泡プラスチックブロックが、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層して形成してなることを特徴とする請求項8に記載の軽量盛土構造。
【請求項10】 前記高密度の発泡プラスチックブロックの密度が22kg/m^(3)より大きいことを特徴とする請求項1、8又は9に記載の軽量盛土構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡プラスチックブロックを盛土材料として用いる軽量盛土に関し、特に傾斜地の拡幅軽量盛土や自立壁の軽量盛土の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
傾斜地の拡幅盛土や自立壁の盛土の工法として、盛土構造の軽量化や土圧軽減等を図るために、盛土材料に超軽量の発泡プラスチックブロックを用いる工法が知られている。
【0003】
傾斜地の拡幅盛土では、例えば図9に示すように、背面傾斜地102と前面壁103との間に発泡プラスチックブロックが充填され、これにより前面壁103の背面に作用する土圧、すなわち主働土圧の低減が図られている。
【0004】
また、載荷重の分散や発泡プラスチックブロックの保護及び不陸整地等を目的として、発泡プラスチックブロックの最上部及び中間部に夫々コンクリート床版105及び104が配設される。
【0005】
また、かかる盛土構造の頂部にコンクリート床版105、路床(砂層)106、下層路盤(切込砕石層)107、上層路盤(粒調砕石層)108、表層109等からなる道路舗装体110が形成される場合には、さらに車両の交通荷重が舗装体110を伝搬して発泡プラスチックブロックに作用する。この発泡プラスチックブロックに作用する交通荷重は、舗装体110の厚さと密接な関係があり、舗装体110が薄いとそれだけ発泡プラスチックブロックには大きな交通荷重が作用する。逆に言えば、より高密度で圧縮強度の高い発泡プラスチックブロックを用いれば、舗装体110の厚さを薄くでき、より経済的な道路設計が可能になる。
【0006】
このため、従来から最上層の発泡プラスチックブロック101bには、下層に用いる発泡プラスチックブロック101aよりも高密度で圧縮強度の高いものが用いられることが多い。
【0007】
自立壁の軽量盛土では、例えば図10に示すように、対向する壁体112a,112b間に盛土材料として発泡プラスチックブロックが充填される。また、前記と同様に発泡プラスチックブロックの最上部及び中間部に夫々コンクリート床版105及び104が配設され、最上層の発泡プラスチックブロック101bには、下層に用いる発泡プラスチックブロック101aよりも高密度で圧縮強度の高いものが用いられることが多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように超軽量の発泡プラスチックブロックを盛土材として用いることにより、主働土圧を大幅に低減することができ、例えば傾斜地の拡幅盛土においては拡幅可能な幅を増すことができ、自立壁においてはより高い構造体が可能となる。
【0009】
しかしながら、図9及び図10に示したような軽量盛土構造体を構築する際、特に重量物たる舗装体等が軽量盛土構造の最上部に形成される場合には、以下のような不具合が生じる場合がある。
▲1▼特に勾配がきつい傾斜地に対して大規模な拡幅盛土構造を構築する場合、交通荷重及び舗装体等を含む盛土躯体自重による大きな滑動力によって一部の発泡プラスチックブロックに塑性歪みが生じる場合がある。
▲2▼特に高い盛土構造を構築する場合、地震時に舗装体を含む盛土躯体の重心の位置が偏ることで、一部の発泡プラスチックブロックに塑性歪みが生じる場合がある。
【0010】
盛土材である発泡プラスチックブロックに大きな塑性歪みが発生すると、盛土構造の安定性が低下し、最悪の場合には盛土構造体の転倒、崩壊に繋がる危険性もある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、傾斜地拡幅盛土や自立壁の軽量盛土の新規な構造、特に重量物たる舗装体等が最上部に形成される場合にも盛土構造の安定性を高める新規な構造を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
なわち、本発明の第1は、前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、敷設面積の最も小さい空所の最底部を含む少なくとも一層に用いる発泡プラスチックブロックと、前記空所の最上層に用いる発泡プラスチックブロックとを、その両者間に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴としているものである。
【0014】
上記本発明の第1の軽量盛土構造によれば、傾斜地拡幅盛土構造における背面勾配の傾斜角度によって大きな滑動力が働く場合にも、最大応力がかかる下層の発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みが発生するのを防止でき、特に重量物たる舗装体等が最上部に形成される場合にも、十分な安定性、信頼性を有する軽量盛土構造とすることができる。
【0015】
また、本発明の第2は、前面壁と背面傾斜地との空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる傾斜地の拡幅盛土構造において、前面壁の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、その後方部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴としているものである。
【0016】
また、本発明の第3は、壁体間の空所に発泡プラスチックブロックを盛土材として用いる自立壁の盛土構造において、壁体の背面直後に用いる発泡プラスチックブロックを、中間部に用いる発泡プラスチックブロックよりも圧縮強度の高い高密度のものとしたことを特徴としているものである。
【0017】
上記本発明の第2もしくは第3の軽量盛土構造によれば、傾斜地拡幅軽量盛土構造(本発明の第2)もしくは自立壁軽量盛土構造(本発明の第3)において、地震時の水平力によって盛土躯体の重心の位置が偏った場合にも、最大応力がかかる前面壁もしくは壁体の背面直後の発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みを防止でき、特に重量物たる舗装体等が最上部に形成される場合にも十分な安定性、信頼性を有する軽量盛土構造とすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、盛土構造体の適宜の箇所に高密度の発泡プラスチックブロックを盛土材として用いることで、構造的に安定な軽量盛土構造をより経済的に実現するものであり、以下に具体例を挙げて詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の第1の軽量盛土構造について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の軽量盛土構造の一例を模式的に示した立断面図である。図中、1aは低密度の発泡プラスチックブロック、1bは高密度の発泡プラスチックブロック、2は背面傾斜地、3は前面壁、4は発泡プラスチック充填層の中間部に配置されたコンクリート床版、11は基礎コンクリートである。また、10はコンクリート床版5、路床6、下層路盤7、上層路盤8、表層9等からなる道路舗装体である。
【0021】
本例のような傾斜地拡幅盛土構造において、背面傾斜地の勾配がきつい程、同じ拡幅(道路幅)をする場合にも盛土構造がより高く大規模になると共に、背面傾斜方向下向きにより大きな力(本明細書では「滑動力」と称す)が発生する。かかる滑動力は発泡プラスチックブロックに対しては圧縮力として作用するが、発泡プラスチックブロックの断面は下層ほど小さくなるため、下層の発泡プラスチックブロックほどより大きな圧縮応力が作用することになる。
【0022】
そこで、本発明の第1では、前面壁3と背面傾斜地2との空所(盛土材充填層)の最底部を含む少なくとも一層に、より圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロック1bを用いることにより、上記滑動力による圧縮に十分対抗できるものとし、かかる下層の発泡プラスチックブロックに大きな塑性歪みが発生するのを防止している。
【0023】
高密度の発泡プラスチックブロック1bは、具体的には密度が22kg/m^(3)より大きいものが好ましく、より好ましくは24kg/m^(3)以上、特に好ましくは28kg/m^(3)以上のものが望ましい。一方、低密度の発泡プラスチックブロック1aは、具体的には密度が15kg/m^(3)以上22kg/m^(3)以下のものが好ましい。
【0024】
発泡プラスチックブロックとしては、強度的に優れたものが好ましく、例えばポリスチレン発泡体,ポリエチレン発泡体,ポリウレタン発泡体等を用いることができ、特に強度的にも耐水性にも優れるポリスチレン発泡体が好適である。
【0025】
発泡プラスチックブロックとしては、予備発泡させたビーズを金型内に入れ、加熱及び冷却することにより所定密度に成形する型内発泡法によるもの、高圧下で溶融プラスチックに発泡剤を注入混合して流動性のゲルを作り、これを大気中に押出して急速に膨張させる押出発泡法によるものとがあるが、押出発泡法によるものは型内発泡法によるものよりも圧縮強度が高い。
【0026】
このため、本発明においては、高密度の発泡プラスチックブロック1bとして押出発泡ポリスチレンを特に好ましく用いることができ、これよりも低密度の発泡プラスチックブロック1aとして型内発泡ポリスチレンを好ましく用いることができる。
【0027】
高密度の発泡プラスチックブロック1bとして好適な押出発泡ポリスチレンとしては、具体的には、ダウ化工株式会社製商品名ライトフィルブロックDX-29(密度:29±2.0kg/m^(3)、許容圧縮応力:14tonf/m^(2))、同DX-35(密度:35±3.0kg/m^(3)、許容圧縮応力:20tonf/m^(2))が挙げられる。
【0028】
また、低密度の発泡プラスチックブロック1aとして好適な型内発泡ポリスチレンとしては、具体的には、ダウ化工株式会社製商品名ライトフィルブロックD-16(密度:16±1.0kg/m^(3)、許容圧縮応力:3.5tonf/m^(2))、同D-20(密度:20+1.5(-1.0)kg/m^(3)、許容圧縮応力:5tonf/m^(2))、同D-25(密度:25±1.5kg/m^(3)、許容圧縮応力:7tonf/m^(2))が挙げられる。
【0029】
なお、低密度及び高密度の発泡プラスチックブロックの組み合わせは設計条件に応じて適宜に行うことができ、特に限定されるものではない。例えば低密度の発泡プラスチックブロック1aとして上記ライトフィルブロックD-16もしくはD-20を用いる場合には、上記ライトフィルブロックD-25を高密度の発泡プラスチックブロック1bとして用いることもできる。
【0030】
発泡プラスチック材の標準試験法(JIS K 7220)では圧縮強さは5%歪時の圧縮応力としているが、5%歪時では塑性変形が生じ始めており、変形も残留する。また、繰り返し荷重に対して弾塑性的挙動を示す領域は、圧縮歪1%以下で圧縮比例限と一致しており、この時の荷重は5%圧縮強さの約1/2である。このため、上記許容圧縮応力は、5%圧縮強さの1/2としている。
【0031】
したがって、盛土材として発泡プラスチック材を用いる場合には、各部の発泡プラスチックブロックの圧縮応力が上記許容圧縮応力以下となるように設計することにより塑性歪みの発生を防止することができ、安定性、信頼性の高い軽量盛土構造とすることができる。
【0032】
本発明の第1の軽量盛土構造において、高密度の発泡プラスチックブロック1bを用いる範囲は、低密度の発泡プラスチックブロック1aの許容圧縮応力及び前記滑動力の大きさによって適宜設計される。具体的には、例えば滑動力が9tonf/mであり、低密度の発泡プラスチックブロック1aとして許容圧縮応力が5tonf/m^(2)のもの(前記ライトフィルブロックD-20)を用いる場合には、幅W(図1参照)が1.8m以下の層に前記ライトフィルブロックDX-29(許容圧縮応力:14tonf/m^(2))を発泡プラスチックブロック1bとして用いれば良い。
【0033】
高密度の発泡プラスチックブロック1bとして好適な押出発泡ポリスチレンは、通常の製造設備では、発泡性ポリスチレンビーズを原材料とする型内発泡ポリスチレンのように厚さの大きいものは製造できず、例えば500mmもの厚さの押出ポリスチレン発泡体を商業的に製造するのは、設備が特殊で製造コストが高価となり、経済的な理由から現実的ではない。また、一般に押出発泡では中心部の密度が低くなり、500mmもの厚さの押出ポリスチレン発泡体では密度が厚み方向に均一な製品が得られず、安定した製品を得るのが難しくなり、製造上の技術的な理由からも現実的ではない。現実には、100mm以上の厚さのものは製品の均質性が極端に悪くなるという問題があり、押出ポリスチレン発泡体は商業的に製造する場合100mm程度の厚さが現実的な限界と言える。
【0034】
このため、本発明の高密度の発泡プラスチックブロック1bとして押出発泡ポリスチレンを用いる際には、押出発泡ポリスチレン板状体の複数枚を接着剤で積層してブロック状に形成したものを用いることが好ましい。
【0035】
すなわち、通常の製造設備で量産可能で、製品の均質性を確保できる厚さ(具体例として100mm)の押出発泡ポリスチレン板の複数を接着剤により一体化して発泡プラスチックブロックを構成すれば、大きな発泡プラスチックブロックの製造に特殊な製造設備が不要であり、製造コストを削減できると共に、このようにして構成された発泡プラスチックブロックは、押出発泡ポリスチレン板が有する優れた圧縮強度及び耐水性能をそのまま保持することができ、安定性、信頼性の高い軽量盛土構造を構築できるものである。
【0036】
次に、本発明の第2の軽量盛土構造について説明する。
【0037】
図2は、本発明の第2の軽量盛土構造の一例を模式的に示した立断面図である。なお、図1と同一の符号は同一部材を示しており、1cは高密度の発泡プラスチックブロックである。
【0038】
傾斜地拡幅盛土構造において、特に重量物たる舗装体10が最上部に形成されると、地震時に極めて大きな水平力が発生し、かかる水平力によって軽量盛土躯体の重心が前面壁側に偏り、前面壁側の地盤反力が増大する。このように増大した地盤反力は、前面壁の背面直後の発泡プラスチックブロックに対して大きな圧縮力として作用する。
【0039】
そこで、本発明の第2では、前面壁の背面直後の部分に、より圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロック1cを用いることにより、上記地震時の地盤反力による圧縮に十分対抗できるものとし、かかる部分の発泡プラスチックブロックに大きな塑性歪みが発生するのを防止している。
【0040】
なお、高密度の発泡プラスチックブロック1cとしては、前述の発泡プラスチックブロック1bと同様のものを用いることができる。
【0041】
本発明の第2の軽量盛土構造において、高密度の発泡プラスチックブロック1cを用いる範囲は、低密度の発泡プラスチックブロック1aの許容圧縮応力及び前記地盤反力の大きさによって適宜設計される。具体的には、例えば低密度の発泡プラスチックブロック1aとして許容圧縮応力が5tonf/m^(2)のもの(前記ライトフィルブロックD-20)を用いる場合には、地震時の前面壁側の地盤反力が5tonf/m^(2)を超える部分(但し14tonf/m^(2)以下)に、前記ライトフィルブロックDX-29(許容圧縮応力:14tonf/m^(2))を発泡プラスチックブロック1cとして用いれば良い。
【0042】
上述の本発明の第1及び第2は互いに組み合わせて実施することができる。図3は、かかる軽量盛土構造の一例を模式的に示した立断面図であり、図1及び図2と同一の符号は同一部材を示している。
【0043】
図3のように、盛土材充填層の下層及び前面壁の背面直後に、それぞれ圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロック1b及び1cを用いることにより、前記滑動力及び地震時の地盤反力によってかかる部分の発泡プラスチックブロックに大きな塑性歪みが発生するのを防止することができる。この場合、発泡プラスチックブロック1bと発泡プラスチックブロック1cは同一材料として良いが、各部分の圧縮応力によって異なる材料を用いることもできる。
【0044】
次に、本発明の第3の軽量盛土構造について説明する。
【0045】
図4は、本発明の第3の軽量盛土構造の一例を模式的に示した立断面図である。なお、図1と同一の符号は同一部材を示しており、1dは高密度の発泡プラスチックブロック、12a及び12bは対向する壁体である。
【0046】
本発明の第3は、傾斜地拡幅盛土構造に関する本発明の第2の技術的思想を自立壁の軽量盛土構造に適用したものである。
【0047】
図4に示すような自立壁の軽量盛土構造においても、特に大規模で高く、さらに重量物たる舗装体10が最上部に形成されると、地震時に極めて大きな水平力が発生し、かかる水平力によって軽量盛土躯体の重心が両壁体12a,12b側に偏り、両壁体12a,12b側の地盤反力が増大する。このように増大した地盤反力は、両壁体12a,12bの背面直後の発泡プラスチックブロックに対して大きな圧縮力として作用する。
【0048】
そこで、本発明の第3では、両壁体12a,12bの背面直後の部分に、より圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロック1dを用いることにより、上記地震時の地盤反力による圧縮に十分対抗できるものとし、かかる部分の発泡プラスチックブロックに大きな塑性歪みが発生するのを防止している。
【0049】
なお、高密度の発泡プラスチックブロック1dとしては、前述の発泡プラスチックブロック1bと同様のものを用いることができる。また、本発明の第3の軽量盛土構造における高密度の発泡プラスチックブロック1dを用いる範囲の設計方法は、前述の本発明の第2と同様である。
【0050】
以上説明した本発明の軽量盛土構造では、更に図5?図8に示すように軽量盛土材の最上層にも高密度の発泡プラスチックブロック1eを用いることが好ましい。これにより、前述のように舗装体10の厚さを薄くでき、盛土構造の軽量化が図られると共に、より経済的な道路設計が可能になる。なお、高密度の発泡プラスチックブロック1eとしても、前述の発泡プラスチックブロック1bと同様のものを用いることができる。
【0051】
本発明の軽量盛土構造は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば傾斜地拡幅盛土構造における基礎としてH鋼等からなる杭基礎を用いたり、背面傾斜地と発泡プラスチック充填層との一体性を高めるために、コンクリート床版4及び5内にアンカーロッドを埋設し、このアンカーロッドの一端を前面壁3を構成するH鋼杭等に固定し、他端を背面傾斜地2に深く埋設したアンカーによって張設することができる。また、自立壁の盛土構造においても同様にコンクリート床版4及び5内にアンカーロッドを埋設し、このアンカーロッドの両端を壁体12a,12bを構成するH鋼杭等に張設固定することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果を奏する。
(1)傾斜地の拡幅盛土において、前面壁と背面傾斜地との空所の最底部を含む少なくとも一層に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いることにより、背面傾斜方向に大きな滑動力が働く場合にも、発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みが発生するのを防止でき、十分な安定性、信頼性を有する軽量盛土構造が実現される。
(2)傾斜地の拡幅盛土において、前面壁の背面直後に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いることにより、地震時の水平力によって盛土躯体の重心の位置が偏ることで前面壁側に大きな地盤反力が働く場合にも、発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みを防止でき、十分な安定性、信頼性を有する軽量盛土構造が実現される。
(3)自立壁の盛土において、壁体の背面直後に圧縮強度の高い高密度の発泡プラスチックブロックを用いることにより、地震時の水平力によって盛土躯体の重心の位置が偏ることで両壁体側に大きな地盤反力が働く場合にも、発泡プラスチックブロックに構造上問題となるような大きな塑性歪みを防止でき、十分な安定性、信頼性を有する軽量盛土構造が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の一例を模式的に示す立断面図である。
【図2】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図3】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図4】
本発明による自立壁の盛土構造の一例を模式的に示す立断面図である。
【図5】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図6】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図7】
本発明による傾斜地拡幅盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図8】
本発明による自立壁の盛土構造の別の例を模式的に示す立断面図である。
【図9】
従来の傾斜地拡幅盛土の構造を模式的に示す立断面図である。
【図10】
従来の自立壁の盛土構造を模式的に示す立断面図である。
【符号の説明】
1a,101a 低密度の発泡プラスチックブロック
1b,1c,1d,1e,101b 高密度の発泡プラスチックブロック
2,102 背面傾斜地
3,103 前面壁
4,104 中間床版
5,105 上部床版
6,106 路床砂
7,107 下層路盤
8,108 上層路盤
9,109 表層
10,110 道路舗装体
11 基礎コンクリート
12a,12b,112a,112b 壁体
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-09-06 
結審通知日 2016-09-08 
審決日 2016-09-21 
出願番号 特願平11-85531
審決分類 P 1 113・ 121- ZDA (E02D)
P 1 113・ 113- ZDA (E02D)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 赤木 啓二
中田 誠
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3450742号(P3450742)
発明の名称 軽量盛土構造  
代理人 野中 啓孝  
代理人 山口 芳広  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 軸丸 欣哉  
代理人 森本 英伸  
代理人 山口 芳広  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 山口 芳広  
代理人 渡辺 敬介  
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