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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01T
管理番号 1322652
審判番号 不服2015-8761  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-12 
確定日 2016-12-08 
事件の表示 特願2012-506385「電子放射の強度を監視する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日国際公開、WO2010/121775、平成24年10月11日国内公表、特表2012-524281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年4月21日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月28日付けで拒絶理由が通知され、同年5月1日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、同年7月23日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月7日付けで、平成26年10月2日付けの手続補正が決定をもって却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年5月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、平成28年2月22日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年5月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?15に記載された発明は、平成28年5月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。
「その拡散の間にプラズマを発生する電子放射の強度を監視する方法であって、電子放射の強度の変化の認識のために、電子放射により間接に発生する電磁放射線が検出され、および評価され、およびその際、電子放射により間接に発生する電磁放射線の計測技術的検出の為の検出器が設けられている方法において、検出器が、透明なまたは光を透過させる材料の壁部を通して容器内部のプラズマに向けられ、かつ、その際検出器が容器内部のプラズマの方に向けられかつ容器内部のプラズマの放射線放出物を監視するよう設けられていること、
その際、電子放射が、腐食性の製品の包装材料の表面の領域の菌減少のために使用されること、その際、電子放射によって発生された放射線が、半導体センサーによって検出されること、その際、半導体センサーによって受信される放射線が、中空体の内部で発生することを特徴とする方法。」

3.当審の拒絶理由の概要
当審の拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-126171号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4.引用例
(1)引用例の記載
引用例には、「食品容器の電子線殺菌検査システム及び食品容器の電子線殺菌検査方法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
ア 「【0001】
本発明は、電子線殺菌の検査システム、及び、電子殺菌の検査方法に関し、特に、PETのような電子線を透過可能な樹脂に電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムにおける検査システム、及び検査方法に関する。
【0002】
食品又は飲料の容器(以下、食品容器と記す)は、その内外面の殺菌が求められる。細菌、ウイルスのような細胞性生物の破壊するために用いられる粒子線として、電子線が用いられることがある。電子線は、細胞性生物の破壊のために2点で特に好ましい物理的性質を有している。電子線の積算照射量が細胞性生物の種類に応じて見出される細胞性生物破壊の積算照射量の値以上になるように調整すれば、電子線照射で細胞性生物を確実に破壊することができる。電子線は、その加速エネルギーに応じて一定質量以下の樹脂膜に対して透過性を有している。」
イ 「【0008】
本発明の目的は、電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムを備える食品製造ラインにおいて、確実に電子線の照射が行われたかを検査できる食品容器の電子線殺菌検査システムを提供することである。」
ウ 「【0012】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)は、
食品容器(10)を搬送する食品容器搬送装置(20)と、
食品容器搬送装置(20)によって搬送される食品容器(10)に電子線を照射する電子線照射装置(30)と、
電子線照射装置(30)により食品容器(10)に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出部(40)と、
物性検出部(40)により検出されたその物性値、又はその物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断部(50)と、
を備える。
上述の構成に依れば、電子線が照射された後に、食品容器の物性値を検知し、その物性値を判断する。ここで、食品容器の物性値とは、電子線の照射の前後で変化が生じる食品容器部材の物理化学的特性や、食品容器部材及び食品容器の周囲の物理化学的状態の量をいう。電子線の照射状態(電子線照射線量を含む)を、電子線照射装置側の運転条件の設定値からの推定によるのではなく、被照射体である食品容器部材の物理化学的特性や、食品容器部材及び食品容器の周囲の物理化学的状態を直接計測することによって、より確実に適正に殺菌が成されたかどうかを判断することができるので、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器をより確実に製造ラインから除去することができる。」
エ 「【0015】
本発明に係る食品容器の電子線殺菌検査システム(1)において、
物性検出部(40)は、オゾン濃度を検出するオゾンガスセンサ(42)を備える。
電子線照射を受けた食品容器の中や周囲の空気中では、電子線照射によりオゾンガスが発生する。上述の構成に依れば、適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾン濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断して、適正に電子線の照射が行われなかった食品容器を確実に製造ラインから除去することができる。」
オ 「【0037】
図1は、食品容器10であるPETボトルを電子線によって殺菌し、内容物を充填してキャップするPETボトル飲料充填システムの構成を概略的に示す図である。入り口2から投入されたPETボトルは、食品容器搬送装置20によって殺菌部3へ搬送され、電子線照射装置30により殺菌される。殺菌されたPETボトルはすすぎリンサ4へ搬入され、水又は空気により洗浄される。電子線殺菌を行う本発明においては、すすぎリンサ4は不要な場合がある。すすぎリンサ4から送出されたPETボトルには、充填器5によって内容物が充填される。充填器5には制御装置7が接続されており、充填器5の動作を制御している。内容物を充填されたPETボトルは、キャッパー6においてキャップを取り付けられて密封される。PETボトル飲料充填システムには、電子線殺菌検査システム1が組み込まれており、電子線殺菌が十分であるか否かを判別できるようになっている。
【0038】
図2Aは、本実施の形態に係る電子線殺菌検査システム1の構成を概略的に示す図である。電子線殺菌検査システム1は、食品容器搬送装置20、電子線照射装置30、物性検出部40、コンピュータ51、位置モニタリング装置58、制御装置7、及び不良品除去装置60を備えている。」
カ 「【0041】
物性検出部40は、温度検出器41、オゾンガスセンサ42、帯電量測定器43、カメラ44、及びミラー70を備えている。」
キ 「【0043】
オゾンガスセンサ42は、電子線の照射によって食品容器の中や周囲の空気中に発生し、電子線が照射された後の食品容器10の内部や周囲に残存するオゾンガスを検出する。オゾンガスセンサ42をボトル内部に挿入してボトル内部に残存するオゾンガスを検出し濃度を測定してもよいが、より好ましくは、例えば、オゾンガスセンサ42を食品容器10の開口部11の真上に配置するとよい。オゾンガスセンサ42を食品容器10の開口部11の真上に配置した場合、オゾンガスセンサ42は、食品容器10の開口部11の真上であり、且つ、開口部11から所定の距離だけ離れた位置におけるオゾンガス濃度を測定できるように配置される。オゾンガスセンサ42の測定部分を食品容器10の内部に挿入する手間を掛けることなしに、食品容器10の中や周囲から開口部11の真上に拡散したオゾンガスを検出しオゾンガスの濃度を検出することができる。測定部分を内部に挿入する手間を省くことができるので、ランニングコストが抑制される。オゾンガスセンサ42は、検出したオゾンガス濃度をコンピュータ51へ通知する。」
ク 「【0045】
カメラ44は、ミラー70に映った食品容器10の映像を撮影できる位置に設けられている。電子線照射装置30は、食品容器10に対して単位時間あたりに所定の数回の電子線照射を行う。カメラ44は、食品容器10に電子線の照射が開始されてから終了されるまでの間、ミラー70に映った食品容器10の映像を撮影する。
電子線照射時にはX線が発生し、カメラ44が電子線照射中の食品容器10を直接撮影した場合には故障の原因となり得る。ミラー70を介することにより、カメラ44をX線の影響に受けない位置に設置することができるので、故障を回避することができる。カメラ44は、撮影した食品容器10の映像を発光画像データとしてコンピュータ51に通知する。また、カメラ44は、電子線照射が終了した後の食品容器10の映像をも撮影する。ここで、電子線照射が終了した後の食品容器10の撮影は、必ずしもミラー70に映った映像を撮影する必要はなく、カメラ44が食品容器10を直接撮影してもよい。カメラ44は撮影した食品容器10の映像を照射後画像データとしてコンピュータ51へ通知する。」
ケ 「【0049】
図3に戻り、物性判断部50は、発光画像解析部52、照射後画像データ解析部53、温度解析部54、オゾンガス濃度解析部55、及び帯電量解析部56の少なくとも一以上の解析部と、殺菌性判断部57とを備えている。」
コ 「【0055】
殺菌性判断部57は、照射後画像データ解析部53、発光画像データ解析部52、温度解析部54、オゾンガス濃度解析部55、及び帯電量解析部56から通知された判断結果に基いて、食品容器10の殺菌性が十分であるか否かの判断をおこなう。殺菌性が十分であるか否かの判断基準は、ユーザーによって設定されて、予め格納部59に格納されている。殺菌性判断部57は、食品容器10の殺菌性が不十分であると判断すると、その判断結果を位置モニタリング装置58へ通知する。」
サ 図1

シ 図2A

ス 図3

(2)引用発明の認定
上記(1) アから、引用例には、食品容器の内外面の殺菌のために、PETのような電子線を透過可能な樹脂に電子線を照射して高速に容器に対して殺菌処理を実行する殺菌システムにおける電子殺菌の検査方法が記載されている。
上記(1)イから、該検査方法は、電子線の照射が行われたかを検査するものである。
上記(1)ウから、該検査方法に用いられる食品容器の電子線殺菌検査システム1は、食品容器10を搬送する食品容器搬送装置20と、食品容器搬送装置20によって搬送される食品容器10に電子線を照射する電子線照射装置30と、電子線照射装置30により食品容器10に電子線が照射されて変化した少なくとも一つの物性値を検出する物性検出部40と、物性検出部40により検出されたその物性値、又はその物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する物性判断部50とを備えている。
上記(1)エから、該物性検出部40は、オゾン(ガス)濃度を検出するオゾンガスセンサ42を備え、電子線照射を受けた食品容器の中や周囲の空気中では、電子線照射によりオゾンガスが発生し、適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾン(ガス)濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断するものである。
上記(1)オから、該食品容器10は、PETボトルである。
上記(1)キから、該オゾンガスセンサ42は、電子線の照射によって食品容器の中の空気中に発生し、電子線が照射された後の食品容器10の内部に残存するオゾンガスを検出し、その検出は、オゾンガスセンサ42をボトル内部に挿入してボトル内部に残存するオゾンガスを検出し濃度を測定するものである。
上記(1)ケから、物性判断部50は、オゾンガス濃度解析部55と、殺菌性判断部57とを備えている。

これらのことから、引用例には、
「食品容器10の内外面の殺菌のために、PETボトルの食品容器10に電子線の照射が行われたかどうかを検査できる、電子線殺菌検査システム1を備えた食品容器の電子線殺菌検査方法において、
食品容器10を搬送する食品容器搬送装置20と、
食品容器搬送装置20によって搬送される食品容器10に電子線を照射する電子線照射装置30と、
食品容器であるPETボトル内部に挿入して、食品容器中のオゾンガス濃度を検出するオゾンガスセンサ42を有する、電子線照射装置30により食品容器10に電子線が照射されて変化した物性値を検出する物性検出部40と、
物性検出部40により検出されたその物性値、又はその物性値の電子線照射前後における変化量が予め設定された範囲内に収まっているか否かを判断する、オゾンガス濃度解析部55及び殺菌性判断部57を有する物性判断部50と、を備え、
適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾンガス濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断する電子線殺菌検査方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「電子線の照射」、「食品」、「殺菌」及び「食品容器10の内外面」は、本願発明の「電子放射」、「腐食性の製品」、「菌の減少」及び「包装材料の表面の領域」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「PETボトルの食品容器10」の「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを意味し、透明な又は光を透過させる材料であることは明らかであるから、該「PET」は、本願発明の「透明なまたは光を透過させる材料」に相当し、しかも、引用発明の「食品容器10」は「PETボトル」であるから、中空体であって、該「食品容器10」は、本願発明の「透明なまたは光を透過させる材料の壁部」を有する構成を備えた「容器」及び「中空体」に相当する。

ウ 引用発明の「食品容器であるPETボトル内部に挿入して、食品容器中のオゾンガス濃度を検出するオゾンガスセンサ42」は、技術常識に照らせば、電子線の照射によって、食品容器中で電子が拡散され、拡散した電子によって、プラズマが発生し、食品容器10内の酸素が、プラズマによって励起されることで、生じたオゾンガスの濃度を検出するものである。
そして、オゾンガスの生成とプラズマの生成とは一体不可分であることは明らかであるから、引用発明の「食品容器であるPETボトル内部に挿入して、食品容器中のオゾンガス濃度を検出する」ことは、「食品容器であるPETボトル内部」に「電子線」により間接に発生する「プラズマ」を検出することということができる。
また、引用発明は、「適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾンガス濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断」するものであるから、引用発明は、「電子線照射」量が適正かどうかを判断するものであって、引用発明の「適正な照射が行われたときに発生するオゾンガス濃度の許容値を予め把握しておき、電子線照射後のオゾンガス濃度を測定し、これを所定の許容範囲を外れたときには電子線の過剰照射又は照射不足と判断」することは、「食品容器10に」「照射され」た「電子線」の強度を、「オゾンガスセンサ42」による「オゾンガス濃度」の「検出」によって、監視することであるということができる。

そうすると、引用発明の「電子線照射」によって発生する「オゾンガス」と本願発明の「電子放射により間接に発生する電磁放射線」とは、「電子放射により間接に発生する物」である点で共通する。
そして、引用発明の「食品容器中のオゾンガス濃度を検出するオゾンガスセンサ42」と本願発明の「電磁放射線の計測技術的検出の為の検出器」とは、「電子照射」の「その拡散の間にプラズマを発生する電子放射の強度を監視」し、「電子放射の強度の変化の認識のために、電子放射により間接に発生する物」を「検出」し、「電子放射により間接に発生する物の計測技術的検出の為の検出器」である点で共通する。
また、引用発明の「オゾンガスセンサ42」は、「食品容器中のオゾンガス濃度を検出」するものであって、「食品容器中」すなわち、「中空体の内部で発生する」オゾンガス濃度を受信するものということができ、また、上述したように、「オゾンガスセンサ42」は、電子線の照射によって生じたオゾンガス濃度を測定するものであるから、引用発明の「オゾンガスセンサ42」が、「食品容器であるPETボトル内部に挿入して、食品容器中のオゾンガス濃度を検出する」ことと、本願発明の「その際、電子放射によって発生された放射線が、半導体センサーによって検出されること、その際、半導体センサーによって受信される放射線が、中空体の内部で発生すること」とは、「その際、電子放射によって発生するものが、検出器によって検出されること、その際、検出器で受信される物が、中空体の内部で発生する」点で共通する。

エ 引用発明の該「オゾンガスセンサ42」が、食品容器10の内部に挿入されている構成は、本願発明の「容器内部のプラズマに向けられ」る点及び「容器内部のプラズマの方に向けられ」る点に相当し、該「オゾンガスセンサ42」は、容器内部のプラズマによって生成されたオゾンを監視するように設けられているから、引用発明の該構成は、本願発明の「容器内部のプラズマの放出物を監視するように設けられている」構成に相当する。

オ 引用発明の「発光画像解析部52、オゾンガス濃度解析部55及び殺菌性判断部57を有する、物性検出部40」は、本願発明の「電子放射」の「その拡散の間にプラズマを発生する電子放射の強度を」監視する構成に相当し、引用発明の「電子線殺菌検査方法」は、本願発明の「その拡散の間にプラズマを発生する電子放射の強度を監視する方法」に相当する。

カ そうすると、本願発明と引用発明とは、
「その拡散の間にプラズマを発生する電子放射の強度を監視する方法であって、電子放射の強度の変化の認識のために、電子放射により間接に発生する物が検出され、および評価され、およびその際、電子放射により間接に発生する物の計測技術的検出の為の検出器が設けられている方法において、検出器が、透明なまたは光を透過させる材料の壁部を有する容器内部のプラズマに向けられ、かつ、その際検出器が容器内部のプラズマの方に向けられかつ容器内部のプラズマの放出物を監視するよう設けられていること、その際、電子放射が、腐食性の製品の包装材料の表面の領域の菌減少のために使用されること、その際、電子放射によって発生するものが、検出器によって検出されること、その際、検出器で受信される物が、中空体の内部で発生する方法。」である点で一致し、次の相違で相違する。
(相違点)
(a)「電子放射の強度の変化の認識のために」「検出」される「電子放射により間接に発生する物」について、本願発明は「電磁放射線」であるのに対し、引用発明は「オゾン」であり、「容器内部のプラズマの放出物」について、本願発明は「放射線」であるのに対し、引用発明は「オゾン」である点。
(b)「プラズマに向けられる」「検出器」について、本願発明は、「壁部」を通して検出する「半導体センサー」であるのに対し、引用発明では、「食品容器10の内部に挿入されて」検出する「オゾンガスセンサ42」である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、オゾンガスはプラズマの生成に伴うものであり、既に述べたように、オゾンガスの生成とプラズマの生成とは一体不可分である。
しかも、プラズマの検出を、オゾンガスの検出に替えて、半導体センサーを用いて、プラズマからの光といった電磁放射線の検出で行うことは、当業者にとって周知である。
必要であれば、特開昭61-9440号公報の次の記載を参照。
「本発明は前記実施例に限定されるものでなく、下記のように具体化してもよい。
プラズマが放電されると、それに伴なって光ばかりでなく、熱、オゾン等が発生する。これらを利用してプラズマ放電を検知することもできる。
(1)前記実施例では光を感知する放電センサ12としてCdSを用いたがこの他に光センサ21としてフォトトランジスタ、フォトダイオード、シリコンプリューセル(SBC)などの素子を用いてもよい。
(2)熱を感知する放電センサ12として、熱雷対、サーモスタット等を第3図に示すようにプラズマ発生管9に取付けてもよい。
(3)オゾンセンサ23として例えばセラミックス半導体を用いてもよく、これを発生したオゾンに触れるように例えば第4図に示すようにジョイント8内側に取着してもよい。」(3頁左上欄15行?右上欄11行)

そうすると、「電子放射の強度の変化の認識のために」「検出」される「電子放射により間接に発生する物」を「オゾン」とするか、光のような「電磁放射線」とするかは、当業者が適宜決定する事項にすぎず、しかも、「電子放射により間接に発生する物」を検出する検出器としてどのような検出器を採用し、どのように配置するかも、検出する対象に応じて、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
したがって、引用発明において、「電子放射の強度の変化の認識のために」「検出」される「電子放射により間接に発生する物」及び「容器内部のプラズマの放出物」を、「オゾン」に替えて光のような「電磁放射線」とし、その際に、「プラズマに向けられる」「検出器」を、「食品容器10の内部に挿入されて」検出する「オゾンガスセンサ42」に替えて、「壁部」を通して検出する「半導体センサー」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成28年5月16日付けの意見書において、引用例に記載の発明には、電子放射によって発生された放射線が、半導体センサーによって検出される点や、半導体センサーによって受信される放射線が、中空体の内部で発生する点については、記載・示唆ともに存在していない旨主張している。
しかしながら、上述したように、引用発明では、中空体内部のオゾンガス濃度を検出するものであって、電子放射によって発生される、中空体内部で発生した放射線と一体不可分のものであるオゾンを検出していることから、引用発明は、検出される「放射線が、中空体の内部で発生する点」を示唆しているということができ、しかも、放射線を半導体センサーによって検出することは周知であるから、「電子放射によって発生された放射線が、半導体センサーによって検出される点」は当業者が容易に想到し得たということができるものであって、請求人の意見書における主張は、結論を左右しない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-08 
結審通知日 2016-07-13 
審決日 2016-07-29 
出願番号 特願2012-506385(P2012-506385)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 祐樹  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 川端 修
井口 猶二
発明の名称 電子放射の強度を監視する方法および装置  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  

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