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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1322675
審判番号 不服2015-19037  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-22 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2010- 97809「色素斑を特性化する方法及び装置、並びに化粧製品、皮膚製品又は薬剤製品の着色効果又は脱色効果を評価する方法におけるその応用」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日出願公開、特開2010-279686、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年4月21日(パリ条約による優先権主張2009年4月23日、フランス)の出願であって、平成27年6月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同査定の謄本は、同月30日に請求人に送達され、これに対して、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
その後、当審において平成28年9月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月1日に意見書及び手続補正書の提出がされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成28年11月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
皮膚色素斑を特性化する方法であって、
a)デジタルカラーイメージ撮影デバイスを使用して、色素斑の少なくとも一部を含む、少なくとも1つの決定した皮膚の領域の少なくとも1つのデジタルカラーイメージを撮影し、該イメージが多数のピクセルで画成され、該イメージがデジタルイメージ処理デバイスに送られ、
b)前記イメージ処理デバイスを使用して、適切に格納した前記デジタルカラーイメージを、R、G、Bと呼ばれる赤色、緑色、青色の3つのカラープレーンに分割し、
c)これらのプレーンのうちの1つだけ、又はこれらのプレーンの組合せを抽出し、
該方法は、
d)抽出された前記プレーンの少なくとも一部をフィルタリングして、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの広い空間的変動を特徴付けるリップルイメージと呼ばれる第1サブイメージと、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの小さい空間的変動を特徴付けるラフネスイメージと呼ばれる第2サブイメージを得て、
e)適切な計算手段を使用して、前記リップルイメージの少なくとも一部、及び/又は前記ラフネスイメージの一部にわたって、グレイレベルの平均偏差の算術平均、前記グレイレベルの前記平均偏差の二乗平均平方根、最低のグレイレベルと最高のグレイレベルの差、前記最高のグレイレベルと前記グレイレベルの平均の差、及び最後に、前記最低のグレイレベルと前記グレイレベルの前記平均の差のうちの少なくとも1つのパラメータを計算し、
前記色素斑の一様性又は非均一性に関して、該色素斑を特性化する、
方法。」

第3 原査定の理由について

1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1ないし20に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2?4を参照。)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1?4は、以下のとおり。
1.特表2009-509708号公報
2.特開2008-11994号公報(周知技術を示す文献)
3.特許第3219550号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2006/057314号(周知技術を示す文献)

2 原査定の理由の判断

(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付加したものである。)。

「【請求項1】
人の肌の欠陥部の特性評価を行う方法であって、
a)少なくとも1つの特定の肌の区域(34、36、38、40)の少なくとも1つのデジタル画像(14)を取得するステップであって、前記画像がデジタルビデオカメラ又はデジタルスチールフォト若しくは撮影カメラ(12)を用いて多数の画素によって確定され、デジタル画像処理デバイスに送られるステップと、
b)このように記録されたデジタル画像を、前記画像処理デバイスを用いてR、G、Bと呼ばれる赤(60)、緑(70)、青(80)の3つの色平面に分割するステップと、
c)これらの平面のうちの1つ(80)を抽出するステップと、
d)この平面に基づいて適切な計算手段によって以下のパラメータの少なくとも1つを計算するステップであって、そのパラメータが、
画像の平均グレーレベルと、
前記画像の肌の欠陥部の表面積であって、欠陥部のいくつかがしわ、小じわ、そばかす、くま、しみ、たるんだ区域などの老化と関係している表面積と、
肌の均質性を表すパラメータとしての、画像の一組の画素に対するグレーレベルの分散と
であるステップと
を含むことを特徴とする方法。」

(2)引用文献1に記載された発明の認定

上記(1)の記載から、引用文献1には、

「人の肌の欠陥部の特性評価を行う方法であって、
a)少なくとも1つの特定の肌の区域(34、36、38、40)の少なくとも1つのデジタル画像(14)を取得するステップであって、前記画像がデジタルビデオカメラ又はデジタルスチールフォト若しくは撮影カメラ(12)を用いて多数の画素によって確定され、デジタル画像処理デバイスに送られるステップと、
b)このように記録されたデジタル画像を、前記画像処理デバイスを用いてR、G、Bと呼ばれる赤(60)、緑(70)、青(80)の3つの色平面に分割するステップと、
c)これらの平面のうちの1つ(80)を抽出するステップと、
d)この平面に基づいて適切な計算手段によって以下のパラメータの少なくとも1つを計算するステップであって、そのパラメータが、
画像の平均グレーレベルと、
前記画像の肌の欠陥部の表面積であって、欠陥部のいくつかがしわ、小じわ、そばかす、くま、しみ、たるんだ区域などの老化と関係している表面積と、
肌の均質性を表すパラメータとしての、画像の一組の画素に対するグレーレベルの分散と
であるステップと
を含む、方法。」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「人の肌の欠陥部の特性評価を行う方法」は、「人の肌の欠陥部」に皮膚色素斑である「しみ」を含むものであるから、本願発明の「皮膚色素斑を特性化する方法」を含むものである。

イ 引用発明の「デジタルビデオカメラ又はデジタルスチールフォト若しくは撮影カメラ(12)」は、これらの撮影デバイスの一つにより取得された「デジタル画像(14)」が、「赤(60)、緑(70)、青(80)の3つの色平面に分割」されることから、本願発明の「デジタルカラーイメージ撮影デバイス」に相当することは、明らかである。
また、引用発明の「デジタル画像(14)」及び「デジタル画像処理デバイス」は、それぞれ本願発明の「デジタルカラーイメージ」及び「デジタルイメージ処理デバイス」に相当する。
よって、引用発明の「a)少なくとも1つの特定の肌の区域(34、36、38、40)の少なくとも1つのデジタル画像(14)を取得するステップであって、前記画像がデジタルビデオカメラ又はデジタルスチールフォト若しくは撮影カメラ(12)を用いて多数の画素によって確定され、デジタル画像処理デバイスに送られるステップと、」は、本願発明の「a)デジタルカラーイメージ撮影デバイスを使用して、色素斑の少なくとも一部を含む、少なくとも1つの決定した皮膚の領域の少なくとも1つのデジタルカラーイメージを撮影し、該イメージが多数のピクセルで画成され、該イメージがデジタルイメージ処理デバイスに送られ、」に相当する。

ウ 引用発明の「色平面」は、本願発明の「カラープレーン」に相当する。
よって、引用発明の「b)このように記録されたデジタル画像を、前記画像処理デバイスを用いてR、G、Bと呼ばれる赤(60)、緑(70)、青(80)の3つの色平面に分割するステップと、」は、「b)前記イメージ処理デバイスを使用して、適切に格納した前記デジタルカラーイメージを、R、G、Bと呼ばれる赤色、緑色、青色の3つのカラープレーンに分割し、」に相当する。

エ 引用発明の「c)これらの平面のうちの1つ(80)を抽出するステップと、」は、本願発明の「c)これらのプレーンのうちの1つだけ、又はこれらのプレーンの組合せを抽出し、」のうち、「c)これらのプレーンのうちの1つだけを抽出し、」に相当する。

オ 引用発明の「d)この平面に基づいて適切な計算手段によって以下のパラメータの少なくとも1つを計算するステップであって、そのパラメータが、
画像の平均グレーレベルと、
前記画像の肌の欠陥部の表面積であって、欠陥部のいくつかがしわ、小じわ、そばかす、くま、しみ、たるんだ区域などの老化と関係している表面積と、
肌の均質性を表すパラメータとしての、画像の一組の画素に対するグレーレベルの分散と
であるステップと」と、
本願発明の「該方法は、
d)抽出された前記プレーンの少なくとも一部をフィルタリングして、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの広い空間的変動を特徴付けるリップルイメージと呼ばれる第1サブイメージと、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの小さい空間的変動を特徴付けるラフネスイメージと呼ばれる第2サブイメージを得て、
e)適切な計算手段を使用して、前記リップルイメージの少なくとも一部、及び/又は前記ラフネスイメージの一部にわたって、グレイレベルの平均偏差の算術平均、前記グレイレベルの前記平均偏差の二乗平均平方根、最低のグレイレベルと最高のグレイレベルの差、前記最高のグレイレベルと前記グレイレベルの平均の差、及び最後に、前記最低のグレイレベルと前記グレイレベルの前記平均の差のうちの少なくとも1つのパラメータを計算し、
前記色素斑の一様性又は非均一性に関して、該色素斑を特性化する」とは、
「該方法は、
該抽出されたプレーンについて適切な計算手段を使用して、少なくとも1つのパラメータを計算し、
該色素斑を特性化する」点で共通する。

(4)一致点及び相違点
よって、本願発明と引用発明とは、

「皮膚色素斑を特性化する方法であって、
a)デジタルカラーイメージ撮影デバイスを使用して、色素斑の少なくとも一部を含む、少なくとも1つの決定した皮膚の領域の少なくとも1つのデジタルカラーイメージを撮影し、該イメージが多数のピクセルで画成され、該イメージがデジタルイメージ処理デバイスに送られ、
b)前記イメージ処理デバイスを使用して、適切に格納した前記デジタルカラーイメージを、R、G、Bと呼ばれる赤色、緑色、青色の3つのカラープレーンに分割し、
c)これらのプレーンのうちの1つだけ、又はこれらのプレーンの組合せを抽出し、
該方法は、
該抽出されたプレーンについて適切な計算手段を使用して、少なくとも1つのパラメータを計算し、
該色素斑を特性化する、
方法。」

の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
抽出されたプレーンについて適切な計算手段を使用して、少なくとも1つのパラメータを計算し、色素斑を特性化する点について、
本願発明は、
「d)抽出された前記プレーンの少なくとも一部をフィルタリングして、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの広い空間的変動を特徴付けるリップルイメージと呼ばれる第1サブイメージと、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの小さい空間的変動を特徴付けるラフネスイメージと呼ばれる第2サブイメージを得て、
e)適切な計算手段を使用して、前記リップルイメージの少なくとも一部、及び/又は前記ラフネスイメージの一部にわたって、グレイレベルの平均偏差の算術平均、前記グレイレベルの前記平均偏差の二乗平均平方根、最低のグレイレベルと最高のグレイレベルの差、前記最高のグレイレベルと前記グレイレベルの平均の差、及び最後に、前記最低のグレイレベルと前記グレイレベルの前記平均の差のうちの少なくとも1つのパラメータを計算し、
前記色素斑の一様性又は非均一性に関して、該色素斑を特性化する」ステップを備えているのに対し、
引用発明は、
「d)この平面に基づいて適切な計算手段によって以下のパラメータの少なくとも1つを計算するステップであって、そのパラメータが、
画像の平均グレーレベルと、
前記画像の肌の欠陥部の表面積であって、欠陥部のいくつかがしわ、小じわ、そばかす、くま、しみ、たるんだ区域などの老化と関係している表面積と、
肌の均質性を表すパラメータとしての、画像の一組の画素に対するグレーレベルの分散と
であるステップ」を備えているものの、本願発明の上記ステップを備えていない点。

(5)当審の判断
相違点について検討する。

上記相違点に係る構成、特に、
「d)・・・該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの広い空間的変動を特徴付けるリップルイメージと呼ばれる第1サブイメージと、該抽出されたプレーンの各ピクセルについてグレイレベルの小さい空間的変動を特徴付けるラフネスイメージと呼ばれる第2サブイメージを得て、
e)・・・前記リップルイメージの少なくとも一部、及び/又は前記ラフネスイメージの一部にわたって、・・・少なくとも1つのパラメータを計算し、
前記色素斑の一様性又は非均一性に関して、該色素斑を特性化する」点については、原査定の理由で引用した引用文献2?4のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、引用発明において、上記相違点における本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(6)小括
上記(5)で検討したとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
そして、本願の請求項2ないし8に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、本願の請求項9に係る発明は、本願発明のカテゴリーを変更しただけで、その発明特定事項を実質的に変更したものでなく、本願の請求項10ないし19に係る発明は、本願の請求項9に係る発明をさらに限定したものであるから、本願の請求項2ないし19に係る発明は、本願発明と同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について

1 当審拒絶理由の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項9、12及び17には、「考慮に入れる」という曖昧な表現があるため、明確でない。
また、請求項12を直接的又は間接的に引用する請求項13ないし20に記載の発明も、同様の理由で明確でない。
また、請求項17を直接的又は間接的に引用する請求項18ないし20に記載の発明も、同様の理由で明確でない。

2 当審拒絶理由の判断
(1)明確性要件についての判断
本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成28年11月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものとなったことで、当審拒絶理由は解消された。

(2)小括
上記(1)で検討したとおり、本願の請求項1ないし19に係る発明は、明確でないとはいえないため、本願の請求項1ないし19の記載は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていないとはいえない。
よって、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定及び当審拒絶理由通知の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-09 
出願番号 特願2010-97809(P2010-97809)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野田 洋平  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
藤田 年彦
発明の名称 色素斑を特性化する方法及び装置、並びに化粧製品、皮膚製品又は薬剤製品の着色効果又は脱色効果を評価する方法におけるその応用  
代理人 山田 行一  
代理人 野田 雅一  
代理人 城戸 博兒  
代理人 柏岡 潤二  
代理人 池田 正人  

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