• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01N
管理番号 1322712
審判番号 不服2015-5967  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-01 
確定日 2016-12-06 
事件の表示 特願2012-505893「排ガス処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日国際公開、WO2010/120380、平成24年10月11日国内公表、特表2012-524206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年4月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年4月17日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月17日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出された後、平成23年12月19日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成24年12月13日に手続補正書及び上申書が提出され、平成25年11月26日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成26年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年11月21日付けで拒絶査定がされ、平成27年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成27年5月13日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出され、当審において、平成27年12月1日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されたのに対し、平成28年6月2日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成27年4月1日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲、平成24年12月13日に提出された手続補正書によって補正された明細書並びに平成23年12月19日に提出された図面の翻訳文及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
排ガス処理装置のための実質的に耐亀裂性の取付マットであって、
(1)対向する主表面を有する少なくとも1つの無機繊維層と、
(2)前記主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強連続コーティング層とを含み、
前記層(2)が、前記取付マットの保持圧力、低温圧縮及び低温摩擦という性能特性に実質的に影響を与えず、前記層(2)の無い同じ取付マットと比較して前記取付マットの耐亀裂性を高め、
前記層(2)が、前記取付マットの少なくとも一方の主表面に連続コーティングとして施され、前記連続コーティングが、前記取付マットの前記主表面全体にわたって実質的に均一であることを特徴とする取付マット。」

3.引用文献
3.1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である特表2002-514283号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「多層膨張性シート」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「多層膨張性シート
技術分野
この発明は、防火仕切りとして、または触媒コンバーター及びディーゼルパーティキュレイトフィルターまたはトラップ用の取付けマットとして有用な可撓性膨張性シートに関し、特に、異なった膨張性特性を有する少なくとも2つの層を有する可撓性多層膨張性シートを含むこのような装置に関する。」(第10ページ第2ないし7行)

(イ)「 一般的にみて、本発明の可撓性多層シートは実質的に無機系であり、層の少なくとも1つが膨張性材料を含む少なくとも2つの非成形性の可撓性層を含む。前記2つの層は望ましくは、単一湿式(wet laid)シートにおいて一つの層を他の層の上面に同時形成するなど、補助結合手段を用いることなく単一の弾性シートを形成する。
本発明の膨張性シートの特有の特徴の1つは、シートは、全体として特に横断面において、非均質組成を有するということである。この特徴は、各隣接した層が、均一だが異なった組成物を有する少なくとも2つの隣接した層から単一シートを形成することに起因する。所望のシートは、セラミック繊維を含有する非膨張性層、未膨張バーミキュライト、未膨張の処理バーミキュライトの何れか、または両方の混合物を含有する膨張性層を含む。他の実施例においては、第1の膨張性層が膨張性グラファイトを含有し、第2の膨張性層が未膨張バーミキュライト、未膨張処理バーミキュライトの何れか、または両方の混合物を含有する。別の実施例において、第1の膨張性層が膨張性グラファイトと未膨張バーミキュライトとの混合物を含有し、第2の膨張性層が未膨張バーミキュライト、未膨張の処理バーミキュライトの何れか、または両方の混合物を含有する。」(第16ページ第15行ないし第17ページ第2行)

(ウ)「 本発明の非成形性の可撓性膨張性層は、可撓性且つ弾性のシートになるように湿式で塗ることができる材料の組成物を含む。概して、本発明の非成形性の可撓性膨張性層は、前記層の約5?約85乾燥重量パーセントの膨張性材料と、20乾燥重量パーセント未満の有機結合剤とを含む。
前記非成形性の可撓性膨張性層は、望ましくは、約5?約85乾燥重量パーセントの膨張性材料と、約0.5?約15乾燥重量パーセントの有機結合剤と、約10?約65乾燥重量パーセントの無機繊維とを含み、より望ましくは、約5?約70乾燥重量パーセントの膨張性材料と、約0.5?約9乾燥重量パーセントの有機結合剤と、約30?約45乾燥重量パーセントの無機繊維とを含む。本発明の非成形性の可撓性膨張性層はまた、一つ以上の無機充填剤、無機結合剤、有機繊維、及びそれらの混合物を含有することができる。」(第19ページ第14ないし25行)

(エ)「 好適な有機結合剤の材料は、ポリマーエマルジョン水溶液、溶液型ポリマー液及びポリマーまたはポリマー樹脂(固形分100パーセント)などである。ポリマーエマルジョン水溶液は、ラテックスの形の有機結合剤ポリマー及びエラストマー、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエンラテックス、ブタジエン‐アクリロニトリルラテックス、エチレン酢酸ビニルラテックス、及びアクリレート及びメタクリレートのポリマー及びコポリマーのラテックスである。ポリマー及びポリマー樹脂は、天然ゴム、ブタジエンスチレンゴム、及び他の弾性ポリマー樹指などである。アクリルラテックス及びポリ酢酸ビニル有機結合剤が望ましい。」(第21ページ第26行ないし第22ページ第6行)

(オ)「 好適な非成形性の可撓性非膨張性層は、約10乾燥重量パーセント?約99.5乾燥重量パーセントの無機繊維、約0.5乾燥重量パーセント?約20乾燥重量パーセントの有機結合剤、90乾燥重量パーセントまでの充填剤を含む。望ましい可撓性非膨張性層は、約20?約99.5乾燥重量パーセントの無機繊維、約0.5?20乾燥重量パーセントの有機結合剤、60乾燥重量パーセントまでの充填剤を含む。本発明の非成形性の可撓性非膨張性層はまた、一つ以上の有機繊維、無機結合剤、及びそれらの混合物を含有することができる。」(第24ページ第20ないし26行)

(カ)「 別の実施例において、本発明は、本発明の多層シートを用いた、汚染防止装置、例えば、触媒コンバーターまたはディーゼルパーティキュレイトフィルターを提供する。図1は、メリーらに対する米国特許第4,865,818号で開示されたものと同様であるが本発明の実施例を取り入れた触媒コンバーターを示す。触媒コンバーター10は、前記コンバーター10内に取り付けられたモノリシック構造体上に一般に塗被される触媒を含有する。モノリシック構造体20は一般にセラミックであるが、これまでは金属モノリスが用いられている。前記触媒は、一酸化炭素及び炭化水素を酸化させ、自動車排気ガス中の窒素の酸化物を低減させて大気汚染を防止する。
触媒コンバーター10は、内部にモノリシック構造体20を保持する金属ハウジング11を含む。ハウジング11は入口及び出口端部12及び13をそれぞれ有する。
モノリシック構造体20は概して、表面積が大きい非常に薄い壁を有するため、壊れやすく、折損しやすい。モノリシック構造体20はまた、それが含まれる金属(通常、ステンレス鋼)ハウジング11よりはぼ一桁小さい熱膨張率を有する。衝撃及び振動によるモノリス20への損傷を回避し、熱膨張差を緩和させ、排気ガスがモノリス20と金属ハウジング11との間を通過するのを防ぐために、本発明による膨張性シート材料はモノリシック構造体20と金属ハウジング11との間に配置される。シート材料30は、第1の端部31と第2の端部32とを有することができる。」(第29ページ第13行ないし第30ページ第4行)

(キ)「 多層シート30、50はモノリス20、42とハウジング11、44との間で著しく圧縮される。例えば、多層シートの厚さは、周間隙の100%より大きく約400%までである。多層シート30、50の圧縮は、望ましくは約20?500kPaである初期取り付け圧を提供する。」(第32ページ第23ないし26行)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(ア)ないし(キ)並びに図1及び2の記載から、以下の事項が分かる。

(サ)上記(1)(ア)ないし(キ)並びに図1及び2の記載から、引用文献1には、触媒コンバータ10の取付けマットとして有用な多層シート30が記載されていることが分かる。

(シ)図1において、多層シート30は、ハウジング11とモノリシック構造体のそれぞれに接する表面を有することが看取でき、該表面は対向するものであるということができる。また、上記(1)(イ)、(ウ)及び(オ)から、多層シート30を構成する非成形性の可撓性膨張層及び非成形性の可撓性非膨張層のそれぞれが無機繊維を含むことが分かる。これらのことから、引用文献1に記載された多層シート30は、対向する表面を有する少なくとも1つの無機繊維層を含むものであることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1及び2の記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「触媒コンバータ10の取付けマットとして有用な多層シート30であって、
対向する表面を有する少なくとも1つの無機繊維層を含む多層シート30。」

3.2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である特開2009-41499号公報(平成21(2009)年2月26日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、「触媒コンバーター用保持材」に関し、図面とともに次の記載がある。

(タ)「【請求項1】
触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
無機繊維製の基材と、基材の少なくともケーシング側表面に形成され、25℃でのヤング率が0.3MPa以下である粘弾性層とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(チ)「【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーター(排気ガス浄化装置ともいう)に組み込まれる触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材並びにその製造方法に関する。
…(後略)…」(段落【0001】)

(ツ)「【0022】
粘弾性層は、25℃におけるヤング率が0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下であれば、その材料には制限がないが、(A)粘着付与剤を添加したゴム、(B)ガラス転移点が25℃以下の樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。
【0023】
具体的には、(A)において、ゴムはポリイソプレンを主成分とする天然ゴム、あるいはSBR、ブチルゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム等の合成ゴムが好ましい。粘着付与剤は分子量が数千程度のオリゴマーが好ましく、例えば、ロジン、テルペン、石油系樹脂等のオリゴマーが好適である。また、粘着付与剤の配合量は、ゴム100質量部に対して40?300質量部配合が好ましい。粘着付与剤の配合量が40質量部未満では、期待する伸びを実現できない。
【0024】
また、(B)としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを主成分とするアクリル樹脂、EVA、ポリビニルエーテル等が好適である。保持材の触媒担体への巻き付け作業が通常室温で行われるため、ガラス転移点が25℃を超える樹脂では巻き付け作業の際に保持材が硬くなりすぎて、上記のヤング率を得ることが難しくなる。そのため、樹脂のガラス転移点は低い方が好ましく、-50℃?25℃が好ましい。尚、弾性を出すには樹脂は架橋されていない方が好ましいが、架橋剤を配合する場合は乾燥工程等での加熱条件により架橋度を制御して、上記のヤング率に調整する必要がある。架橋剤としては、メラミン、エポキシ、尿素樹脂等を使用でき、樹脂100質量部に対して1?40質量部配合することが好ましい。
【0025】
尚、ヤング率はJIS K6251(加硫ゴムの引張試験方法)に基づき下記式(1)から求めることができる。
ヤング率(Y)=M/E ・・・(1)
ここで、Eは切断時伸び(%)であり、試験片の初期長さをL0(mm)、切断時の試料編長さをL1(mm)とするとき、下記式(2)から求めることができる。
切断伸び(E)=〔(L1-L0)/L0〕×100 ・・・(2)
また、Mは引張応力(MPa)であり、切断時における引張力をF(N)、試験片の断面
積をA(mm^(2))とするとき、下記式(3)から求めることができる。
引張応力(M)=F/A ・・・(3)
【0026】
上記(1)式から、切断時伸びEが大きくなるとヤング率が小さくなることがわかる。本発明では、粘弾性層の切断時伸びEが300%以上であることが好ましい。保持材は、触媒担体に巻き付けられた際に、ケーシング側の面が周方向に大きく引っ張られるため、ケーシング側となる粘弾性層の伸びを大きくすることにより亀裂や破断を防止することができる。
【0027】
粘弾性層を形成するには、上記のゴム材料または樹脂材料を基材上に塗布し、乾燥すればよい。塗布方法には制限がないが、粘性があるため、刷毛塗りやロールコーティングが好ましい。また、基材が湿式成形から得る圧縮マットや膨張マットの場合は、脱水成形した状態いわゆるケーキの状態でゴム材料または樹脂材料を塗工した後、全体を乾燥させることも可能である。
…(中略)…
【0038】
また、粘弾性層及び平滑層を部分的に形成して有機分を削減することもできる。但し、被覆面積が少なすぎると、被覆されていない部分から基材の無機繊維が離脱したり、巻回時に割れが発生する恐れがある。一方、被覆面積が多すぎると、有機分低減の効果が小さい。そのため、被覆面積は、保持材の片側表面積の30?90%とすることが好ましく、40?60%とすることがさらに好ましい。尚、部分的に形成する場合、触媒担体に巻き付けるときに触媒担体の周方向に亀裂が入る恐れがあるので、被覆パターンは格子柄か、長手方向(触媒担体の周方向に相当)に延びるストライプ柄等が望ましい。
【0039】
本発明の触媒コンバーター用保持材は、粘弾性層あるいは平滑層を外側(金属性ケーシング側)となるように、触媒担体に巻装される。巻き付けに際し、粘弾性層あるいは平滑層により基材が保護され、亀裂や破断を防ぐことができる。」(段落【0022】ないし【0039】)

(2)引用文献2記載の事項
上記(1)(タ)ないし(ツ)並びに図1及び図4の記載から、以下の事項が分かる。

(ナ)上記(1)(タ)ないし(ツ)並びに図1及び図4の記載から、引用文献2には、触媒コンバーター10のための触媒コンバーター用保持材が記載されていることが分かる。

(ニ)上記(1)(タ)の記載から、引用文献2に記載された触媒コンバーター用保持材は、ケーシング側表面を有するものであるところ、図1及び図4から、同触媒コンバーター用保持材は、このケーシング側表面に対向する表面を有することが分かり、該表面は、触媒担体に巻き付けられた状態で触媒担体に接するものであるから、以下、便宜上、該表面を「触媒担体側表面」という。

(ヌ)上記(1)(タ)ないし(ツ)の記載及び上記(ニ)から、引用文献2に記載された触媒コンバーター用保持材は、ケーシング側表面と触媒担体側表面のうち少なくともケーシング側表面に粘弾性層を塗布することにより、触媒担体への巻き付け時に粘弾性層に亀裂や破断が発生することを防止するものであることが分かる。

(3)引用文献2記載技術
上記(1)及び(2)並びに図1及び図4の記載から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認める。

「 触媒コンバーター10のための触媒コンバーター用保持材において、ケーシング側表面と触媒担体側表面のうち少なくともケーシング側表面に粘弾性層を塗布することにより、触媒担体への巻き付け時に粘弾性層に亀裂や破断が発生することを防止する技術。」

3.3 引用文献3の記載
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由に引用された刊行物である国際公開第2007/070531号(以下、「引用文献3」という。)には、「汚染制御のための実装マット」に関し、図面とともに次の記載がある。なお、当審仮訳は、引用文献3のパテントファミリーである特表2009-520121号公報を参考にして、当審で作成した。

(ハ)「US 6,231,818 attempts to overcome … would desirably be improved.」(第4ページ第1ないし20行)
(当審仮訳)
「 米国特許第6,231,818号は、低温でディーゼル触媒を実装することの現在の困難さを、非晶質無機繊維からなる非膨張性マットを使うことによって克服することを試みている。この特許でマットは有機結合剤不要でありうることが教示されているが、例に使われるいくつかのマットは実質的な量の結合剤の使用を必要とするようである。さらに、この米国特許に開示されている実装マットが、ディーゼルエンジン、特にTDIエンジンからの排気ガスの処理にまだ適切に機能しないことが見出された。
欧州特許第1388649号は、金属ケーシングとディーゼル汚染制御モノリスの間に配置された不織布マットで金属ケーシングに配置されたディーゼル汚染制御モノリスを含む、ディーゼルエンジンで使うのに適した汚染制御装置を開示している。不織布マットは、マットの総重量に対して、5μm又はそれ以上の数平均直径及び0.5cm?15cmの長さを有するチョップドケイ酸マグネシウム・アルミニウムガラス繊維を少なくとも90重量%含む、非膨張マットであり、ガラス繊維が、ニードルパンチ又はスティッチボンドされ、マットが有機結合剤を含まない又は実質的に含まない。

概要
先行技術に開示されている実装マットはディーゼル汚染制御モノリスに対し良好な保持特性を提供できるが、さらに実装マットを改善する、特に低温における回復力及び保持力が望ましく改善される、要求が存在しつづけている。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「触媒コンバータ10」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「排ガス処理装置」に相当し、同様に「多層シート30」は「取付マット」に相当する。
そして、「排ガス処理装置のための取付けマット」という限りにおいて、引用発明における「触媒コンバータ10の取付けマットとして有用な多層シート30」は、本願発明における「排ガス処理装置のための実質的に耐亀裂性の取付マット」に相当する。
また、引用発明における「表面」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「主表面」に相当し、同様に「無機繊維層」は「無機繊維層」に相当するから、引用発明における「対向する表面を有する少なくとも1つの無機繊維層」は、本願発明における「対向する主表面を有する少なくとも1つの無機繊維層」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「 【請求項1】
排ガス処理装置のための取付マットであって、
対向する主表面を有する少なくとも1つの無機繊維層を含む取付マット。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明においては、「取付けマット」が「実質的に耐亀裂性の取付マット」であって、「主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強連続コーティング層」を含み、「層(2)が、取付マットの保持圧力、低温圧縮及び低温摩擦という性能特性に実質的に影響を与えず、前記層(2)の無い同じ取付マットと比較して前記取付マットの耐亀裂性を高め、前記層(2)が、前記取付マットの少なくとも一方の主表面に連続コーティングとして施され、前記連続コーティングが、前記取付マットの前記主表面全体にわたって実質的に均一である」のに対し、引用発明において、「多層シート30」が耐亀裂性であるか否かが不明であり、「補強連続コーティング層」を有さない点(以下、「相違点」という。)。

5.判断
上記相違点について検討する。
排ガス処理装置において、外側ハウジングと触媒担体又はディーゼル微粒子フィルタとの間に介在させるマットに亀裂が生じたときには、排気ガスや熱の洩れ等が生じることは自明の事項であるから、該マットに亀裂が生じないようにすることは、引用発明においても、当然に内在している課題であるということができる。
そして、本願発明と引用文献2記載技術は、排ガス処理装置のための取付マットという共通の技術分野に属する。そこで、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項と引用文献2記載技術とを対応させると、引用文献2記載技術における「触媒コンバーター10」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「排ガス処理装置」に相当し、同様に、「触媒コンバーター用保持材」は「取付マット」に、「粘弾性層」は「補強連続コーティング層」に、それぞれ相当する。また、引用文献2記載技術における「ケーシング側表面」及び「触媒担体側表面」は、その構成からみて、本願発明における「主表面」に相当し、引用文献2記載技術において、「ケーシング側表面」及び「触媒担体側表面」は、互いに対向するものであるといえるから、引用文献2記載技術において「触媒コンバーター用保持材において、ケーシング側表面と触媒担体側表面のうち少なくともケーシング側表面に粘弾性層を塗布する」ことは、本願発明において「取付マット」が「対向する」「主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強連続コーティング層」「を含む」ことに相当する。さらに、引用文献2記載技術における「触媒コンバーター用保持材」は「触媒担体への巻き付け時に粘弾性層に亀裂や破断が生じること」を「防止」するものであるから、その機能からみて、「実質的に耐亀裂性」を有するということができる。
したがって、引用文献2記載技術を本願発明の用語を用いて表面すると、「排ガス処理装置のための実質的に耐亀裂性の取付マットであって、対向する主表面の少なくとも一方の少なくとも一部に施された補強連続コーティング層を含む技術。」であるといえる。
また、排ガス処理装置の外側ハウジングと触媒担体又はディーゼル微粒子フィルタとの間に介在させるマットに必要な性能として、適切な保持圧力を有すること、及び、低温において適切な保持力、すなわち、適切な低温圧縮を有することは、当然の事項であって(必要であれば、上記引用文献3の上記記載3.3等参照。)、引用発明におけるマット10の製造の際に、マットの保持圧力、低温圧縮及び低温摩擦という性能特性に実質的に影響を与えないようにすることは、当然に行われるべき事項にすぎない。
さらに、引用文献2記載技術において、ケーシング側表面に粘弾性層を塗布するときに、ケーシング側表面の全体にわたって実質的に均一に塗布することは、ごく普通のことである。なお、引用文献2の記載中に「粘弾性層及び平滑層を部分的に形成して有機分を削減することもできる。…(中略)…尚、部分的に形成する場合、触媒担体に巻き付けるときに触媒担体の周方向に亀裂が入る恐れがあるので、被覆パターンは格子柄か、長手方向(触媒担体の周方向に相当)に延びるストライプ柄等が望ましい。」(上記3.2(1)(ツ)段落【0038】)と記載されているが、あくまで、「粘弾性層及び平滑層を部分的に形成して有機分を削減することもできる」(下線は、当審で付した。)ものにすぎず、しかも、引用文献2に記載された実施例1ないし3のいずれにも粘断性層を部分的に形成した旨の記載はないから、引用文献2記載技術において粘弾性層を部分的に形成することは、あくまで任意の事項として記載されているにすぎない。
以上から、引用発明において、引用文献2記載技術を参酌して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは当業者が容易に想到することができたことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載技術から予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏するものではない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
上記のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-08 
結審通知日 2016-07-11 
審決日 2016-07-25 
出願番号 特願2012-505893(P2012-505893)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 由希子岩附 秀幸  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 松下 聡
中村 達之
発明の名称 排ガス処理装置  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  
代理人 浅井 賢治  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  
代理人 山崎 一夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ