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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60N
管理番号 1322782
審判番号 不服2016-5288  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-08 
確定日 2017-01-06 
事件の表示 特願2011-209202「車両のシートバックロック構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 67347、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年9月26日付けの特許出願であって、平成27年11月9日付けで手続補正がなされ、同年12月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 平成28年1月8日。)がされ、これに対して、平成28年4月8日に拒絶査定不服審判が請求され、これと同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年4月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲については、その請求項1を、
「起立位置から傾倒可能なシートバックを前記起立位置で車体側にロックする車両のシートバックロック構造であって、
前記シートバックの車両後方に配置されて車幅方向に延びる係止部と、該係止部の車幅方向の両端から車両後方に延びて車体側に固定される固定部とを有するストライカと、
前記シートバックに対して固定されるロック保持ブラケットと、
ロック溝を有し、ロック位置とロック解除位置とを含む範囲で回転可能に前記ロック保持ブラケットに支持され、前記シートバックが前記起立位置に設定された状態で、前記ロック位置の前記ロック溝は、前記係止部に上方から係合して前記シートバックの傾倒を規制し、前記ロック解除位置の前記ロック溝は、前記係止部の上方に外れて該ストライカとの係合を解除するロックアームと、を備え、
前記ロック保持ブラケットには、前記シートバックが前記起立位置に設定された状態で、前記係止部の下方まで延びる延長部が形成され、
前記延長部は、前記ロック溝に係合した前記係止部に対して前記ロック保持ブラケットが上方へ移動したときに、前記係止部に下方から係合して該係止部に対する前記ロック保持ブラケットの上方への移動を規制することにより該係止部の前記ロック溝からの離脱を阻止する係合凹部を有する
ことを特徴とするシートバックロック構造。」
と補正するというものである。(以下「補正事項1」という。下線は審決で付した。)
(2)明細書の段落【0008】について
「上記目的を達成すべく、本発明は、起立位置から傾倒可能なシートバックを前記起立位置で車体側にロックする車両のシートバックロック構造であって、ストライカとロック保持ブラケットとロックアームとを備える。ストライカは、シートバックの車両後方に配置されて車幅方向に延びる係止部と、係止部の車幅方向の両端から車両後方に延びて車体側に固定される固定部とを有する。ロック保持ブラケットは、シートバックに対して固定される。」
と補正するというものである。(以下「補正事項2」という。)

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ストライカ」に関して、「シートバックの車両後方に配置されて車幅方向に延びる」係止部「と、該係止部の車幅方向の両端から車両後方に延びて」車体側に固定される「固定部とを有する」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項1について、特許法第17条の2第3項、同第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、以下「独立特許要件」という。)について以下に検討する。

ア 引用発明
(ア)刊行物1
原査定に係る拒絶の理由1で引用された特開平6-206486号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、ストライカの移動によってロックプレートが変形されるような状況であっても該ロックプレートのフック部の先端部を位置規制することによってロックプレートとストライカとの係止状態を維持するようにした。具体的に請求項1記載の発明は、一端が車体側部材に固着され、係止部と該係止部の一端に連続して該係止部に対して直交する方向に延びた延長部とを有するストライカと、シートバックに備えられたベース部材に組付けられて、先端部に形成されたフック部が前記ストライカの係止部と延長部とで一部が囲まれた領域に挿入されて該フック部が前記係止部に係止した状態となるロック位置と前記フック部が係止部から外れた状態となるロック解除位置との間で回動するロックプレートとを有し、該ロックプレートのロック位置において前記シートバックを起立状態で維持する一方、ロックプレートのロック解除位置において前記シートバックの傾倒を可能にするようにした自動車のシートバックロック装置を前提としている。そして、前記フック部を、ロックプレートのロック位置において、前記係止部の両側に跨り、その先端部が係止部を越えた位置まで延びるようにし、また、前記ベース部材に、前記ストライカが前記車体側部材の変形に伴って移動してその延長部がロックプレートを押圧する際、該ロックプレートのフック部の先端部に当接することにより該フック部の先端部の移動を阻止してフック部とストライカの係止部との係止状態を維持するように、一端部が前記フック部に対してストライカの延長部の配設位置と反対側の位置で且つ前記フック部の先端部に対向した位置にまで延長されたプロテクタを固着するような構成としている。」
「【0011】図3及び図4に示すように、このロック装置4は、シートバック2の内部に備えられた該シートバック2の骨組みとしてのフレーム材2aの隅角部周辺に配設されている。詳しくは、このフレーム材2aにおいて車幅方向に延びる横部材2bとシートバック2の起立状態において上下方向に延びる縦部材2cとを連結するジョイント部材2dの上端部に形成された車幅方向に厚肉のベース部材2eに取付けられたロックプレート5、ラバー部材6、プロテクタ7、前記ロックプレート5が係止する車体側のストライカ8を備えて成っている。」
「【0012】前記ロックプレート5は、前記ベース部材2eに対して、車幅方向に延びる水平軸回りに回動自在とされており、その先端部(図3の状態における車体後方側の端部)には鉤型のフック部5aが形成されている。また、このロックプレート5の配設位置は、図4にも示すように、前記ベース部材2eに対して所定寸法の間隙を存した車幅方向外側位置に設定されている。
【0013】また、前記ストライカ8は、平面視コ字状であって、車体側部材としてのキャブサイドのインナパネル9に固着されており、このストライカ8に対して前記ロックプレート5のフック部5aが係止自在とされている。つまり、このストライカ8は、車幅方向に互いに平行に延びる前後の水平部8a,8bと該水平部8a,8bの車幅方向内側端同士を連結する連結部8cとを備えて成っており、前記前後の水平部8a,8bの車幅方向外側端が前記キャブサイドのインナパネル9に固着されている。従って図3及び図4に示すようなロックプレート5のストライカ8への係合状態にあっては、ロックプレート5のフック部5aが、ストライカ8の各水平部8a,8bと連結部8cとによって囲まれた領域に挿入されて、前側の水平部8aに係止された状態となってシートバック2の前方への回動を阻止して該シートバック2の起立状態を維持するようになっている。従って、この前側の水平部8aが本発明でいう係止部となり、連結部8cが本発明でいう延長部となっている。また、このロックプレート5のロック状態にあっては、該ロックプレート5のフック部5aの先端部が水平部8aを越えた位置となってストライカ8よりも下側に位置されている。・・・」
「【0015】そして、本例の特徴とする部材としてのプロテクタ7は、縦断面が車幅方向外側に開放する略コ字状に形成された部材であって、その上側半分は前記ベース部材2eとロックプレート5との間に形成されている間隙内に位置されている一方、その下側半分はロックプレート5のフック部5a先端部の車幅方向外側に位置されている。詳しくは、前記上側半分は、図4にも示すように、略コ字状断面の一部を構成する縦壁7aの車幅方向内側面が前記ベース部材2eの車幅方向外側面に固着されており、この縦壁7aの固着部分の下側では、該縦壁7aが前記ロックプレート5及びラバー部材6の下側を巻込むように車幅方向外側に延長され、その下端部は車体後方に向って延長されて前記ロックプレート5のフック部5a先端部の車幅方向外側に配置されている。つまり、このプロテクタ7は、上端部が剛性の高いベース部材2eに固着され、下端部が係止状態のロックプレート5のフック部5aの車幅方向外側で且つストライカ8の下方に位置されていて、ストライカ8の連結部8cの配設位置と反対側の位置で且つ該ストライカ8の下側でフック部5aの先端部に近接して対向するように配設されている。また、このプロテクタ7の縦壁7aの上下及び後方の縁部には車幅方向外側へ小寸法をもって延びるフランジ部7bが一体形成されて該プロテクタ7の補強が図られている。」
図2、3から、「前後の水平部8a(係止部)、8bが、シートバックの車両後方に配置されている」ことが看取できる。

上記の記載事項と図示内容とを総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「一端が車体側部材に固着され、係止部と該係止部の一端に連続して該係止部に対して直交する方向に延びた延長部とを有するストライカと、シートバックに備えられたベース部材に組付けられて、先端部に形成されたフック部が前記ストライカの係止部と延長部とで一部が囲まれた領域に挿入されて該フック部が前記係止部に係止した状態となるロック位置と前記フック部が係止部から外れた状態となるロック解除位置との間で回動するロックプレートとを有し、該ロックプレートのロック位置において前記シートバックを起立状態で維持する一方、ロックプレートのロック解除位置において前記シートバックの傾倒を可能にするようにした自動車のシートバックロック装置であって、
前記ベース部材に、前記ストライカが前記車体側部材の変形に伴って移動してその延長部がロックプレートを押圧する際、該ロックプレートのフック部の先端部に当接することにより該フック部の先端部の移動を阻止してフック部とストライカの係止部との係止状態を維持するように、一端部が前記フック部に対してストライカの延長部の配設位置と反対側の位置で且つ前記フック部の先端部に対向した位置にまで延長されたプロテクタを固着し、
ストライカ8は、平面視コ字状であって、シートバックの車両後方に配置されて車幅方向に互いに平行に延びる前後の水平部8a、8bと該水平部8a,8bの車幅方向内側端同士を連結する連結部8c(延長部)とを備えて成っており、前記前後の水平部8a、8bの車幅方向外側端が車体側部材としてのキャブサイドのインナパネル9に固着されており、ロックプレート5のストライカ8への係合状態にあっては、ロックプレート5のフック部5aが前側の水平部8a(係止部)に係止された状態となってシートバック2の前方への回動を阻止して該シートバック2の起立状態を維持するようになっており、
前記ロックプレート5は、シートバック2の骨組みとしてのフレーム材2aの車幅方向に延びる横部材2bとシートバック2の起立状態において上下方向に延びる縦部材2cとを連結するジョイント部材2dの上端部に形成された車幅方向に厚肉のベース部材2eに、車幅方向に延びる水平軸回りに回動自在に取付けられ、その先端部に形成された鉤型のフック部5aを、ロックプレート5のロック状態にあっては、前記係止部の両側に跨り、その先端部が係止部を越えた位置となってストライカ8よりも下側に位置するまで延びるようにし、
また、プロテクタ7の上側半分は前記ベース部材2eとロックプレート5との間に形成されている間隙内に位置されている一方、その下側半分はロックプレート5のフック部5a先端部の車幅方向外側に位置され、下端部が係止状態のロックプレート5のフック部5aの車幅方向外側で且つストライカ8の下方に位置されていて、ストライカ8の下側でフック部5aの先端部に近接して対向するように配設されている、
自動車のシートバックロック装置。」

(イ)刊行物2
原査定に係る拒絶の理由1で引用された実公平4-35228号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「シートクッションにシートバックを起倒可能に枢着し、シートバックにロックプレートを揺動可能に枢支し、シートクッションにロックピンを固設し、該ロックピンにシートバックの要部が当接するとともに、前記ロックプレートが係合し、シートバックが前倒れ不能に起立位置に拘束される車両用シートにおいて、
前記ロックピンを両側から挾持すべく、シートバックの要部とは反対側から前記ロックピンに当接する当接プレートを揺動可能にシートバックに枢着し、
前記ロックピンに当接する方向へ前記当接プレートを付勢し、
前記ロックピンから前記ロックプレートが外れる際に、該ロックプレートに連動して前記当接プレートが前記ロックピンから外れるように、前記ロックプレートに係止可能な係止部を前記当接プレートに形成したことを特徴とする車両用シート。」(第1頁第1欄第2?20行)
「第2図に示すように、シートクッション10にデバイス30を介してシートバック20が起倒可能に枢着されている。デバイス30はベース部材32に揺動アーム36が傾動可能に枢支されて成る。シートクッション10にベース部材32の前端部34が枢軸12により前倒れ可能に枢着されており、シートバック20に揺動アーム36が締着されている。
第1図および第2図に示すように、シートクッション10側には、ロックピン40が固着されている。一方、デバイス30には、ロックプレート50が枢軸52により揺動可能に枢着されており、ロックプレート50が揺動し、ロックピン40に係脱するようになっている。」(第2頁第4欄第20?33行)
「シートバック20の起立位置において、ロックピン40の上側には、シートバック20の要部としてベース部材32の下縁の凹部35が当接しており、ロックピン40の下側には、ロックプレート50の係合突起54が臨んでいるが、ロックピン40の下側とロックプレート50の係合突起54との間には前記距離Dの隙間が生じている。
距離Dの隙間をなくすべく、ベース部材32には、ロックプレート50に重なるように、枢軸52を同一の揺動中心にして、当接プレート60が枢支されている。当接プレート60がばね部材66により時計方向に付勢され、揺動してロックピン40の下側に当接するようになっている。」(第2頁第4欄第43行?第3頁第5欄第11行)
第1図から、「ロックプレート50と当接プレート60には、ロックピン40に下方から係合する係合凹部が設けられている」ことが看取できる。

上記の記載事項と図示内容とを総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「シートクッションにシートバックを起倒可能に枢着し、シートバックにロックプレートを揺動可能に枢支し、シートクッションにロックピンを固設し、該ロックピンにシートバックの要部が当接するとともに、前記ロックプレートが係合し、シートバックが前倒れ不能に起立位置に拘束される車両用シートであって、
シートクッション10にデバイス30を介してシートバック20が起倒可能に枢着され、デバイス30はベース部材32に揺動アーム36が傾動可能に枢支されて成り、シートクッション10にベース部材32の前端部34が枢軸12により前倒れ可能に枢着されており、シートバック20に揺動アーム36が締着されていて、
シートクッション10側には、ロックピン40が固着され、一方、デバイス30には、ロックプレート50が枢軸52により揺動可能に枢着されており、ロックプレート50が揺動し、ロックピン40に係脱するようになっていて、
シートバック20の起立位置において、ロックピン40の下側には、ロックプレート50の係合突起54が臨み、ベース部材32に枢支された当接プレート60が揺動してロックピン40の下側に当接するもので、
ロックプレート50と当接プレート60には、ロックピン40に下方から係合する係合凹部を設けた
シートバックが前倒れ不能に起立位置に拘束される車両用シート。」

イ 対比
補正発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「ストライカ」は、その構造や機能、作用等からみて、前者における「ストライカ」に相当し、同様に、「『車幅方向に延びる水平部8a』、及び『係止部』」は「車幅方向に延びる係止部」に、相当する。
また、後者の「ストライカ」は、車体側部材としてのキャブサイドのインナパネル9に固着されているから、「車体側に固定される固定部」を備えているといえる。
また、後者の「ロックプレート5」は、前者の「ロックアーム」に相当する。
また、後者の「ロックプレート5」は、ロック状態にあっては、係止部の両側に跨り、その先端部が係止部を越えた位置となってストライカ8よりも下側に位置するまで延び、ロックプレート5のフック部が前記係止部に係止した状態となるロック位置と前記フック部が係止部から外れた状態となるロック解除位置との間で回動するものであるから、「ロック溝を有し、ロック位置とロック解除位置とを含む範囲で回転可能に支持され、シートバックが起立位置に設定された状態で、前記ロック位置の前記ロック溝は、係止部に上方から係合して前記シートバックの傾倒を規制し、前記ロック解除位置の前記ロック溝は、前記係止部の上方に外れて該ストライカとの係合を解除する」ものといえる。
更に、後者の「プロテクタ7」は、シートバック2の骨組みとしてのフレーム材2aを構成するベース部材2eに固着され、ロックプレート5のフック部の先端部の移動を阻止してフック部とストライカの係止部との係止状態を維持しているから、前者の「シートバックに対して固定されるロック保持ブラケット」に相当する。
また、後者の「プロテクタ7」は、その下端部が係止状態のロックプレート5のフック部5aの車幅方向外側で且つストライカ8の下方に位置されていて、ストライカ8の下側でフック部5aの先端部に近接して対向するように配設されているから、「シートバックが起立位置に設定された状態で、係止部の下方まで延びる延長部が形成され」ているといえる。
また、後者の「自動車のシートバックロック装置」は、「車両のシートバックロック構造」を示しているといえ、後者において「ロックプレートのロック位置においてシートバックを起立状態で維持する一方、ロックプレートのロック解除位置において前記シートバックの傾倒を可能にする」から、「起立位置から傾倒可能なシートバックを起立位置で車体側にロックする」といえる。

したがって、両者は、
「起立位置から傾倒可能なシートバックを前記起立位置で車体側にロックする車両のシートバックロック構造であって、
前記シートバックの車両後方に配置されて車幅方向に延びる係止部と、車体側に固定される固定部とを有するストライカと、
前記シートバックに対して固定されるロック保持ブラケットと、
ロック溝を有し、ロック位置とロック解除位置とを含む範囲で回転可能に支持され、前記シートバックが前記起立位置に設定された状態で、前記ロック位置の前記ロック溝は、前記係止部に上方から係合して前記シートバックの傾倒を規制し、前記ロック解除位置の前記ロック溝は、前記係止部の上方に外れて該ストライカとの係合を解除するロックアームと、を備え、
前記ロック保持ブラケットには、前記シートバックが前記起立位置に設定された状態で、前記係止部の下方まで延びる延長部が形成される
シートバックロック構造。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
ストライカに関して、補正発明1は「係止部の車幅方向の両端から車両後方に延びて」車体側に固定される固定部を有するのに対し、引用発明1は「前後の水平部8a,8bの車幅方向外側端」が車体側に固定される固定部とされる点。
[相違点2]
ロックアームが、補正発明1では「ロック保持ブラケット」に支持されるのに対し、引用発明1では「ベース部材2e(フレーム材)」に支持される点。
[相違点3]
補正発明1は、「延長部は、ロック溝に係合した係止部に対してロック保持ブラケットが上方へ移動したときに、前記係止部に下方から係合して該係止部に対する前記ロック保持ブラケットの上方への移動を規制することにより該係止部の前記ロック溝からの離脱を阻止する係合凹部を有する」のに対し、引用発明1のプロテクタの下端部は、そのような係合凹部を有していない点。

ウ 判断
上記の相違点3について検討する。
引用発明2の「ロックピン40」は、補正発明1の「『ストライカ』、及び『ストライカの係止部』」に相当しており、引用発明2には、ロックピン40(係止部)に下方から係合する係合凹部を有するロックプレート50や当接プレート60が示されている。しかしながら、これらのロックプレート50や当接プレート60は、補正発明1の「ロックアーム」や、引用発明1の「ロックプレート5」に相当する部材であって、「ロック保持ブラケット」に相当する部材ではない。
したがって、引用発明2は、上記相違点3に係る補正発明1の発明特定事項を具備するものではない。
また、引用発明1では、プロテクタ7(ロック保持ブラケット)が、ストライカの水平部8a(係止部)と係合することが想定されていないから、プロテクタ7が係合凹部を有するものとするべき動機もない。
したがって、補正発明1は、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)補正事項2について
補正事項2は、補正事項1で特許請求の範囲を減縮する補正をしたことに伴って、発明の詳細な説明の記載と、補正後の特許請求の範囲の記載との整合性を図ったものである。
したがって、補正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものと認められ、特許法第17条の2第5項第4号に該当する適法なものといえる。
また、補正事項2について、特許法第17条の2第3項、同第4項に違反するところはない。

3.むすび(本件補正の適否について)
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願の発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1、2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(補正発明1と同じ発明であって、以下「本願発明1」という。)は、上記第2の2.(1)で検討したとおり、当業者が上記引用発明1、2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明1を引用する本願の請求項2に係る発明は、本願発明1を更に限定した発明であるから、当業者が上記引用発明1、2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2011-209202(P2011-209202)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 義典栗山 卓也  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 畑井 順一
黒瀬 雅一
発明の名称 車両のシートバックロック構造  
代理人 米山 尚志  

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