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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1322841
審判番号 不服2015-12031  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-24 
確定日 2017-01-10 
事件の表示 特願2013- 80647「装置を移動させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-210371、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年(平成18年)1月25日(パリ条約による優先権主張 2005年1月27日、英国)に国際出願した特願2007-552709号の一部を平成25年4月8日に新たな特許出願としたものであって、平成26年2月20日付け(同年同月25日発送)で拒絶理由が通知され、同年8月25日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたが、平成27年2月18日付け(同年同月24日送達)で拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対して、同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審より平成28年3月22日付け(同年同月29日発送)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年9月29日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「位置誤差の影響下にある複数の画定された各割り出し位置において相対的に移動可能である二つの物体と、前記物体ごとに一組で、二組の移動止め部品であって、前記二つの物体を前記画定された割り出し位置で固定するために互いに係合され、前記二つの物体がアンロックされた場合、解放される移動止め部品と、該二つの物体の相対位置を測定する手段であって、位置誤差のために各割り出し位置で信号の値の範囲にある信号の値を示す測定する手段と、を含み、測定装置用関節機構を位置決めする方法において、
前記複数の割り出し位置それぞれに、前記関節機構を移動させ、
互いに係合された前記移動止め部品により各割り出し位置に前記二つの物体を固定し、
二つの物体が各割り出し位置で固定される間、各割り出し位置で、前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を各割り出し位置について記録し、
前記記録された信号の値により、割り出し位置への次の移動の間、前記相対位置を示す信号の値が前記測定する手段から得られ、該信号が前記対応する記録された信号の値と比較され、前記関節機構は、該示される信号が該記録された信号の値に一致するまで移動されることを可能にする方法。」

第3 原査定の拒絶理由について
1 原査定の拒絶理由の概要
(進歩性)この出願の請求項1?9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平7-27557号公報
備考:
引用文献1には、三次元測定機が有する旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26において、旋回テーブル22の旋回角度を検出するために複数の被検出素子24_(1)-24_(24)及び近接センサ25_(1)-25_(24)を備えた位置決め機構の発明が記載されている。
一般に、物体を所望の位置に位置決めしたい場合に、物体の位置をセンサで確認しながら位置決めすることは、当業者が適宜実施している技術事項に過ぎない。
よって、引用文献1に記載された発明において上記技術事項を付加し、近接センサ25の出力が所望の出力になるまで旋回テーブルを旋回させるようにして、請求項1、2、4-6、8、9に係る発明とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、引用文献1に記載された発明の複数の被検出素子及び近接センサからなる旋回角度検出手段は、旋回角度毎に異なる検出パターンが複数の近接センサから得られる手段であるから、検出パターンと旋回角度の対応関係を表にしておくことは、当業者が通常可能な技術事項に過ぎない。
よって、引用文献1に記載された発明に基づいて請求項3及び7に係る発明とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

2 原査定の拒絶理由の判断
(1)引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載事項
引用文献1には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下、同様。)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、三次元測定機に関する。詳しくは、水平移動するスライダにアームを介して測定子を取り付けた、いわゆる、横形の三次元測定機に関する。」

「【0011】前記第1の旋回装置18は、図2に示す如く、前記Zスライダ13にベアリング21を介して前記B軸を中心として旋回可能に設けられた旋回テーブル22と、この旋回テーブル22を旋回させる回転駆動機構(図示省略)と、前記旋回テーブル22の旋回角度を検出する角度検出機構23と、前記旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26とから構成されている。なお、旋回テーブル22には、前記水平ビーム14が取り付けられている。」

「【0015】、次に、本実施例の作用を説明する。測定に当たっては、コラム12をX軸方向へ、Zスライダ13をZ軸方向へ、Yスライダ15をY軸方向へそれぞれ移動させながら、プローブ17を被測定物の測定部位に順次当接させ、そのときの各軸の座標値を読み取り、この座標値を基に被測定物の寸法や形状を求める。」

「【0019】また、各旋回装置18,19は、旋回テーブル22の旋回中心を中心とする同一円周上に一定ピッチ間隔で配列された複数(ここでは、24個)の被検出素子24_(1) ?24_(24)と、この被検出素子24_(1) ?24_(24)と隙間を隔てて対向するZスライダ13側に配列された5つの近接センサ25_(1) ?25_(5) とからなる角度検出機構23を備えているから、近接センサ25_(1) ?25_(5) で検出される被検出素子24_(1) ?24_(24)の磁性体と非磁性体との検出パターンを調べるだけで旋回テーブル22の角度を検出することができる。つまり、特別なロータリエンコーダを設けなくても済む。
【0020】また、旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26は、旋回テーブル22に固定された第1のカービックカップリング27と、前記Zスライダ13側に固定された第2のカービックカップリング28と、前記Zスライダ13側にB軸方向へ変位可能に設けられ第1および第2のカービックカップリング27,28に対して噛合可能かつ分離可能に設けられた第3のカービックカップリング29とを含んで構成してあるから、第3のカービックカップリング29をB軸方向へ変位させるだけで旋回テーブル22を位置決め状態、旋回可能状態に切り換えることができる。
【0021】以上、本発明について好適な実施例を挙げ説明したが、本発明は、上記実施例に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。例えば、角度検出機構23としては、上記実施例で述べた構成に限られるものでなく、図5に示す構成でもよい。これは、Zスライダ13側に円環状の第1接点41を形成するとともに、その外側に複数の第2接点42_(1) ?42_(24)を所定角度間隔で形成し、一方、これと隙間を隔てて対向する旋回テーブル22側に第1接点41に常時接する第1接触子43と第2接点42_(1) ?42_(24)に選択的に接する第2接触子44とを電気的に接続した状態で埋設し、第2接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置から旋回テーブル22の角度を検出するようにしたものである。これによっても、特別なロータリエンコーダを必要としない利点がある。」

(イ)引用発明
上記記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「水平移動するスライダにアームを介して測定子を取り付けた三次元測定機による測定に当たっては、コラム12をX軸方向へ、Zスライダ13をZ軸方向へ、Yスライダ15をY軸方向へそれぞれ移動させながら、プローブ17を被測定物の測定部位に順次当接させ、そのときの各軸の座標値を読み取り、この座標値を基に被測定物の寸法や形状を求める方法において、
旋回装置18は、前記Zスライダ13にベアリング21を介してB軸を中心として旋回可能に設けられた旋回テーブル22と、この旋回テーブル22を旋回させる回転駆動機構と、前記旋回テーブル22の旋回角度を検出する角度検出機構23と、前記旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26とから構成され、
旋回装置18は、旋回テーブル22の旋回中心を中心とする同一円周上に一定ピッチ間隔で配列された複数(ここでは、24個)の被検出素子24_(1) ?24_(24)と、この被検出素子24_(1) ?24_(24)と隙間を隔てて対向するZスライダ13側に配列された5つの近接センサ25_(1) ?25_(5) とからなる角度検出機構23を備え、近接センサ25_(1) ?25_(5) で検出される被検出素子24_(1) ?24_(24)の磁性体と非磁性体との検出パターンを調べることで旋回テーブル22の角度を検出し、または、
Zスライダ13側に円環状の第1接点41を形成するとともに、その外側に複数の第2接点42_(1) ?42_(24)を所定角度間隔で形成し、一方、これと隙間を隔てて対向する旋回テーブル22側に第1接点41に常時接する第1接触子43と第2接点42_(1) ?42_(24)に選択的に接する第2接触子44とを電気的に接続した状態で埋設し、第2接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置から旋回テーブル22の角度を検出し、
旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26は、旋回テーブル22に固定された第1のカービックカップリング27と、前記Zスライダ13側に固定された第2のカービックカップリング28と、前記Zスライダ13側にB軸方向へ変位可能に設けられ第1および第2のカービックカップリング27,28に対して噛合可能かつ分離可能に設けられた第3のカービックカップリング29とを含んで構成してあるから、第3のカービックカップリング29をB軸方向へ変位させるだけで旋回テーブル22を位置決め状態、旋回可能状態に切り換える、
方法。」

(2)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「第1および第2のカービックカップリング27,28」と、「第3のカービックカップリング29」は、本願発明の「相対的に移動可能である二つの物体」に相当し、引用発明の第1および第2のカービックカップリング27,28と第3のカービックカップリング29を「噛合可能かつ分離可能」とする「旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26」は、本願発明の「前記物体ごとに一組で、二組の移動止め部品であって、前記二つの物体を前記画定された割り出し位置で固定するために互いに係合され、前記二つの物体がアンロックされた場合、解放される移動止め部品」に相当する。

引用発明の「磁性体と非磁性体との検出パターンを調べることで旋回テーブル22の角度を検出」する構成、または、「第2接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置から旋回テーブル22の角度を検出」する構成と、本願発明の「該二つの物体の相対位置を測定する手段であって、位置誤差のために各割り出し位置で信号の値の範囲にある信号の値を示す測定する手段」とは、共に、「該二つの物体の相対位置を測定する手段」の点で共通する。

引用発明の、「水平移動するスライダにアームを介して測定子を取り付けた三次元測定機による測定当たって」、「Zスライダ13に」「旋回可能に設けられた」「旋回テーブル22を所定割出角度位置に位置決めする位置決め機構26」を用いることを含む「方法」は、本願発明の「測定装置用関節機構を位置決めする方法」に相当する。

イ 以上の相当関係から、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「相対的に移動可能である二つの物体と、前記物体ごとに一組で、二組の移動止め部品であって、前記二つの物体を前記画定された割り出し位置で固定するために互いに係合され、前記二つの物体がアンロックされた場合、解放される移動止め部品と、該二つの物体の相対位置を測定する手段とを含む、測定装置用関節機構を位置決めする方法」

ウ そして、本願発明と引用発明は、以下の点で、相違する。
(ア)相違点1
割り出し位置が、本願発明においては、「位置誤差の影響下にある複数の画定された各割り出し位置」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定がない点。

(イ)相違点2
測定する手段が、本願発明は、「位置誤差のために各割り出し位置で信号の値の範囲にある信号の値を示す測定する手段」であるのに対し、引用発明の「角度検出機構23」は、特定の検出パターンと角度が1対1に対応し、また、接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置が角度と1対1に対応し、「位置誤差のために各割り出し位置で信号の値」に範囲があるものではない点。

(ウ)相違点3
本願発明は、「前記複数の割り出し位置それぞれに、前記関節機構を移動させ、互いに係合された前記移動止め部品により各割り出し位置に前記二つの物体を固定し、二つの物体が各割り出し位置で固定される間、各割り出し位置で、前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を各割り出し位置について記録し、前記記録された信号の値により、割り出し位置への次の移動の間、前記相対位置を示す信号の値が前記測定する手段から得られ、該信号が前記対応する記録された信号の値と比較され、前記関節機構は、該示される信号が該記録された信号の値に一致するまで移動される」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(3)判断
事案に鑑み、相違点2及び3を合わせて検討する。
引用発明の「角度検出機構23」は、特定の検出パターンと角度が1対1に対応し、また、接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置が角度と1対1に対応しているから、本願発明のように「位置誤差のために各割り出し位置で信号の値」に範囲があるものではなく(相違点2)、「割り出し位置への次の移動の」ために「前記複数の割り出し位置それぞれに、前記関節機構を移動させ、互いに係合された前記移動止め部品により各割り出し位置に前記二つの物体を固定し、二つの物体が各割り出し位置で固定される間、各割り出し位置で、前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を各割り出し位置について記録」(相違点3)しておく必要がない。そして、引用発明において、測定子を特定の位置に移動する場合、特定の角度位置に1対1対応している「検出パターン」の信号や、「第2接点」からの信号を得るように、「旋回テーブル22を旋回させる回転駆動機構」を制御するものである。
してみると、引用発明において、相違点2、3に係る構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものということはできない。

(4)請求項2?5に係る発明について
請求項2に係る発明は、本願発明の発明特定事項の全てを有し、さらに限定した発明であり、請求項3に係る発明は、本願発明を装置の発明として特定したものであり、請求項4及び5に係る発明は、請求項3に係る発明の発明特定事項の全てを有し、さらに限定した発明であり、いずれも引用発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるとすることはできない。

(5)小括
上記のとおりであるから、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に記載されている、「前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を記録し」のうち、「前記信号の値の範囲内」とは、どの様にして範囲内であることがわかるのか、また、発明の詳細な説明のどの記載から、そのように解することができるのか不明である。
請求項4にも「前記信号の値の範囲内」の記載があるので、請求項4についても請求項1と同様である。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明、請求項1を引用する請求項2,3に係る発明、請求項4に係る発明、請求項4を引用する請求項5,6に係る発明及び請求項4?6を引用する請求項7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(2)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ア 上記1の段落0037に付された下線部の「本発明は、このドリフトを識別する方法・・・を提供する。」は、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された特定事項のうち、どの特定事項に対応するものなのか不明である。

イ 請求項1に記載されている、「前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を記録し」のうち、「前記信号の値の範囲内」とは、発明の詳細な説明のどの記載に対応するものなのか不明である。
したがって、請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(3)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1に記載の「前記位置誤差が各割り出し位置で信号の値の範囲を表す」の「信号」が、何の信号であるのかが不明確であり、さらに、「位置誤差が信号の値の範囲を表す」の文章の意味が不明であり、当該記載により限定しようとしている技術事項が何であるのかが不明である。
請求項4についても同様である。
イ 請求項1に記載の「それにより」の「それ」が、何を指し示しているのかが不明確である。

(4)本願の請求項1ないし7に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物
特開平7-27557号公報(以下、「引用例1」という。)
特開平5-248801号公報(以下、「引用例2」という。
特開2003-241838号公報(以下、「引用例3」という。)
特表2005-531765号公報(以下、「引用例4」という。)

2 当審拒絶理由の判断
(1)当審拒絶理由(1)?(3)について
ア 本件補正により、以下の補正事項を含む補正がなされた。

補正前の請求項1の
(ア)「と、を含み、前記位置誤差が各割り出し位置で信号の値の範囲を表す」が、
「であって、位置誤差のために各割り出し位置で信号の値の範囲にある信号の値を示す測定する手段と、を含み、」に補正され、

(イ)「前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を記録し、」が、
「互いに係合された前記移動止め部品により各割り出し位置に前記二つの物体を固定し、二つの物体が各割り出し位置で固定される間、各割り出し位置で、前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を各割り出し位置について記録し、」に補正され、

(ウ)「それにより」が、
「前記記録された信号の値により」に補正され、

(エ)「前記記録された信号」が、
「前記対応する記録された信号の値」に補正され、

(オ)「該記録された信号」が、
「該記録された信号の値」に補正され、

(カ)「移動される」が、
「移動されることを可能にする」に補正された。

(キ)補正前の請求項4は、請求項1と同様の補正がされ、新たに請求項3となった。

(ク)また、発明の詳細な説明の段落【0037】から、「このドリフトを識別する方法、および、」との記載が削除された。

イ 当審拒絶理由(1)について
上記ア(ア)?(キ)の補正により、「信号の値」の意義が明瞭になったことで、本願の発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえなくなった。

ウ 当審拒絶理由(2)について
上記ア(ア)(キ)(ク)の補正により、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえなくなった。

エ 当審拒絶理由(3)について
上記ア(ア)(ウ)(キ)の補正により、請求項1ないし5に係る発明は、明確でないとはいえなくなった。

オ 小括
以上のとおり、本件補正により、当審拒絶理由で指摘した理由(1)?(3)は解消した。

(2)当審拒絶理由(4)について
ア 引用例の記載事項、引用発明
(ア)引用例1について
引用例1は、原査定の拒絶理由で引用された引用文献1と同じであり、記載事項及び引用発明は、上記「第3」「2」「(1)」「ア」に記載したとおりである。

(イ)引用例2について
a 引用例2には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。以下、同様。)
「【請求項1】軸を有する2つの部材からなり、その一方の部材は上記軸のまわりに配設された3個以上の第1の支承体群を有し、他方の部材は軸のまわりに配設された3個の第2の支承体群を有し、上記両部材は、上記3個の第2の支承体と第1の支承体の選択された3つの支承体とが対応位置になるように前記各軸のまわりに相対的に回転可能であり、第1の支承体は係合面を有し、第2の支承体は前記対応関係が成立したとき第1の支承体の係合面に対向する係合面を有し、前記両部材は対向した両係合面が互いに係合するよう相対的に軸方向に移動可能であり、一方の支承体群の係合面は複数対の収斂する面を形成し、両支承体の係合中その収斂する面に他方の支承体の係合面が係合しそれによって両部材が確実に他方の部材に対して所定関係位置に位置するようにしたことを特徴とする、割出し機構。」

「【0009】・・・バネ127がこの部材122を他の部材126と係合状態に弾発し、この部材126に対して、環状に配列された球形支承体125Bが固着されている。上記各対の円筒形支承体125Aはその間の1個の球形支承体125Bと係合している(図4)。・・・」

「 【図3】 【図4】


b 上記記載から、引用例2には、以下の技術事項が記載されている。
「割出し機構において、一方の支承体群の係合面は複数対の収斂する面を形成し、両支承体の係合中その収斂する面に他方の支承体の係合面が係合しそれによって両部材が確実に他方の部材に対して所定関係位置に位置するようにすること。」及び「各対の円筒形支承体125Aはその間の1個の球形支承体125Bと係合すること。」

(ウ)引用例3について
a 引用例3には次の事項が記載されている。
「【0027】得られたブリッジ出力電圧は位置センサ3に内蔵されたゲージアンプ(図示せず)によって増幅され、位置センサ3の出力信号としてA/D変換器8に送信される。A/D変換器8で位置センサ3の出力信号がデジタル信号に変換され、そのデジタル信号がCPU5に送信される。CPU5ではこのデジタル化されたセンサ出力信号とその中に設定されている所定の制御情報に基づいて所定の数値演算処理を行い、制御信号を出力する。この際に、CPU5は、ROM6に記憶された位置センサ3の特性に関する情報および/または圧電アクチュエータ4の特性に関する情報に基づいてCPU5における制御情報を補正する。CPU5から出力された制御信号は、D/A変換器9でアナログ信号に変換され、ドライバ7に送信される。そして、ドライバ7はこの制御信号に基づいて圧電アクチュエータ4に駆動信号を送信する。圧電アクチュエータ4はこの駆動信号に基づいて伸縮変位する。このようにして、位置センサ3の検出位置に基づいて、位置決めステージ2の可動部21が所定の位置になるようにフィードバック制御される。」

「【0032】次に、ROM6に記憶される情報およびそれに基づく制御情報の補正の具体例について説明する。
【0033】ROM6には、例えば、圧電アクチュエータ4の変位量と印加電圧、および位置センサ3の出力電圧の関係が図4に示すようなテーブルとして記憶されており、CPU5はこれらの情報に基づいて圧電アクチュエータ4の変位量や位置センサ3の直線性等を補正する。つまり、CPU5では、通常はPID制御を行うが、この制御は入力に対して出力が直線になることを前提にしており、個々の圧電アクチュエータおよび位置センサの固有の特性は考慮しないから、圧電アクチュエータ4が印加電圧に対して直線的に変位するのではなく例えば図5に示すようにヒステリシス(履歴)を持っているような場合には、通常の制御のみでは誤差が生じて位置決め精度が低下してしまう。また、位置センサ3の特性の直線性が悪い場合には、やはり通常の制御のみでは位置決め精度が低下してしまう。
【0034】圧電アクチュエータ4の特性が図5のような場合に、センサ出力曲線は図6のようになる。そこで、圧電アクチュエータの変位量とセンサ出力との相関関係をROM6に記憶すれば、それに基づいて圧電アクチュエータのヒステリシスを補正することができ、結果として図7に示すように圧電素子の変位量と位置センサの出力との関係がほぼ直線となって高精度で位置決めを行うことができる。位置センサ3の特性の直線性が悪い場合にも同様の原理で補正を行うことができる。」

「【図4】


b 上記記載から、引用例3には、以下の技術事項が記載されている。
「圧電アクチュエータ4の変位量と印加電圧、および位置センサ3の出力電圧の関係をテーブルとして記憶しておき、位置センサ3の検出位置に基づいて、位置決めステージ2の可動部21が所定の位置になるようにフィードバック制御すること。」

(エ)引用例4について
a 引用例4には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
第1の部分およびこの第1の部分に対して相対移動可能な第2の部分と、
スタイラスおよびスタイラスチップを有する測定機構と、
前記第2の部分に対して相対回転可能に位置調整し得る少なくとも1つの回転可能な部材を具え、前記測定機構と前記第2の部分とを相互に接続するための継手と、
一方が前記第1の部分にあって他方が前記回転可能な部材にある2つの相互に係合可能な部分を具えた係合部と
を具えた座標測定装置であって、
前記係合部の一方の部分とこの係合部の他方の部分とを共に係合状態に保持するためのホルダを具え、
前記回転可能な部材にある前記係合部の一方の部分が前記スタイラスチップから離れていることを特徴とする座標測定装置。
【請求項2】
前記回転可能な部材が複数の再現可能な位置に位置調整し得る請求項1に記載の座標測定装置。」

「【0039】
ボール122およびローラ120は、図2,図3および図3aに示されている。再現可能な複数の位置をもたらすため、この構成に代えて任意の運動学的機構、例えば半径方向に延在して配列するV字状溝および3つの係合ボールを採用することができる。」

b 上記記載から、引用例4には、以下の技術事項が記載されている。
「相対回転可能に位置調整し得る少なくとも1つの回転可能な部材を具えた座標測定装置において、前記回転可能な部材が複数の再現可能な位置に位置調整し得るために、ボール122およびローラ120を用いること。」

イ 対比
本願発明と引用発明との対比において、一致点及び相違点は、上記「第3」「2」「(2)」「イ」及び「ウ」に記載したとおりである。

ウ 判断
事案に鑑み、相違点2及び3を合わせて検討する。
引用例3には、「圧電アクチュエータ4の変位量と印加電圧、および位置センサ3の出力電圧の関係をテーブルとして記憶しておき、位置センサ3の検出位置に基づいて、位置決めステージ2の可動部21が所定の位置になるようにフィードバック制御すること。」との技術事項が記載されている。これは、変位量と位置センサ3の出力電圧の関係に誤差が生じることを前提とする技術事項である。
しかしながら、上記「第3」「2」「(3)」に記載したとおり、引用発明の「角度検出機構23」は、特定の検出パターンと角度が1対1に対応し、また、接触子44が接触した第2接点42_(1) ?42_(24)の位置が角度と1対1に対応しているから、本願発明のように「位置誤差のために各割り出し位置で信号の値」に範囲があるものではなく(相違点2)、「割り出し位置への次の移動の」ために「前記複数の割り出し位置それぞれに、前記関節機構を移動させ、互いに係合された前記移動止め部品により各割り出し位置に前記二つの物体を固定し、二つの物体が各割り出し位置で固定される間、各割り出し位置で、前記信号の値の範囲内で前記相対位置を示す信号の値を各割り出し位置について記録」(相違点3)しておく必要がない。そして、引用発明において、測定子を特定の位置に移動する場合、特定の角度位置に1対1対応している「検出パターン」の信号や、「第2接点」からの信号を得るように、「旋回テーブル22を旋回させる回転駆動機構」を制御するものである。
してみると、引用発明において、引用例3に記載された、変位量と位置センサ3の出力電圧の関係に誤差が生じることを前提とする技術事項を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、引用例2には、「割出し機構において、一方の支承体群の係合面は複数対の収斂する面を形成し、両支承体の係合中その収斂する面に他方の支承体の係合面が係合しそれによって両部材が確実に他方の部材に対して所定関係位置に位置するようにすること。」及び「各対の円筒形支承体125Aはその間の1個の球形支承体125Bと係合すること。」の技術事項が記載され、引用例4には、「相対回転可能に位置調整し得る少なくとも1つの回転可能な部材を具えた座標測定装置において、前記回転可能な部材が複数の再現可能な位置に位置調整し得るために、ボール122およびローラ120を用いること。」の技術事項が記載されているものの、いずれの引用例にも本願発明の相違点2、3に係る構成が記載されておらず、引用発明に引用例2、4に記載された技術事項を適用しても、本願発明の相違点2,3に係る構成とすることはできない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用例2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものということはできない。

(3)請求項2?5に係る発明について
請求項2に係る発明は、本願発明の発明特定事項の全てを有し、さらに限定した発明であり、請求項3に係る発明は、本願発明を装置の発明として特定したものであり、請求項4及び5に係る発明は、請求項3に係る発明の発明特定事項の全てを有し、さらに限定した発明であり、いずれも引用発明及び引用例2?4に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであるとすることはできない。

(4)小括
上記(1)(2)のとおりであり、当審拒絶理由は解消した。

第5 結論
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。また、他に、本願を拒絶する理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2013-80647(P2013-80647)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 536- WY (G01B)
P 1 8・ 537- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲うし▼田 真悟  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
森 竜介
発明の名称 装置を移動させる方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
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