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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01S 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1322957 |
審判番号 | 不服2015-20323 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-13 |
確定日 | 2016-12-13 |
事件の表示 | 特願2014- 75371「物体検出照明システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日出願公開、特開2014-170001〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成26年4月1日 (平成18年12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月19日、米国)を国際出願日とする特願2008-546050号の分割出願) 拒絶理由通知: 平成27年1月26日(発送日:同年同月28日) 手続補正: 平成27年5月28日(以下、「補正1」という。) 拒絶査定: 平成27年7月10日(送達日:同年同月15日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成27年11月13日 手続補正: 平成27年11月13日(以下、「本件補正」という。) 上申書: 平成28年5月13日 第2 補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正によって、特許請求の範囲の請求項9は、以下のように補正された。 (補正前) 「 【請求項9】 周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、照明モードにおいて可視光を発するという第1の機能を有する、可視光を発する光源と、 所定のモードにおいて前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラであって、前記所定モードにおける可視光は、前記光源が当該光源コントローラにより駆動されているときに周囲を明るくする又は人間の肉眼で見える信号を発するという前記第1の機能を維持するようになっている、光源コントローラと、 前記光源に対向するように配置され、物体により反射させられた/後方散乱させられた可視光を検出するように構成された、光学検出器と、 該光学検出器から検出データを受信し、前記所定モード及び該検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサと、 を具備することを特徴とする物体検出照明システム。」 (補正後) 「 【請求項9】 周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、照明モードにおいて可視光を発するという第1の機能を有する、可視光を発する光源と、 所定のモードにおいて前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラであって、前記所定のモードにおける可視光は、前記光源が前記光源コントローラにより前記所定のモードで駆動されている間に周囲を明るくする又は人間の肉眼で見える信号を発するという前記第1の機能を前記光源が維持するようになっている、光源コントローラと、 前記光源に対向するように配置され、物体により反射させられた/後方散乱させられた可視光を検出するように構成された、光学検出器と、 前記光学検出器から検出データを受信し、前記所定モード及び前記検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサと、を具備し、 前記光源の駆動は、100Hzより高い変調周波数で実行される、ことを特徴とする物体検出照明システム。」(下線は補正箇所。) 上記補正は、光源について、「前記光源の駆動は、100Hzより高い変調周波数で実行される」と限定することを含むものである。 よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項9に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2 検討 (1)引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-164482号公報(以下「引用例」という。)には、「測距機能付LEDランプ装置」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(d)が記載されている。(下線は当審が付した。) (a) 「【0001】 本発明は、ヘッドランプ自体にレーダ機能を持たせ、低コストで精度の高い車間距離測定を可能とした測距機能付LEDランプ装置に関する。」 (b) 「【0010】 〔第1実施例〕 図1は本発明の第1実施例に係る測距機能付LEDランプ装置の構成図である。図1において、本実施例の測距機能付LEDランプ装置は、自動車用ランプ(LEDヘッドランプ)を兼ねた信号送出部2と、信号受信部3と、信号処理部4とを備えて構成されている。 まず、信号送出部2は、照明用のLED群7と、該LED群7の発光を制御するLED駆動制御部21とを備えた構成である。LED群7は特許請求の範囲にいう自動車用ランプに該当する。LED群7のLEDの個数は、図1では6個となっているが、任意の個数で良く限定されない。 【0011】 また、LED駆動制御部21は、LEDランプ装置を照明として機能させるか否かを指示するライトON/OFF信号に基づき、照明として機能させる指示の場合には所定時間連続してLED群7による光照射を行わせ、また、信号処理部4からのパルス発光命令に基づき、LED群7から短パルス光を間欠送信させるように、LED群7の発光を制御する。なお、所定時間連続してLED群7の光照射を行うランプ照明期間(ランプ点灯期間)と、LED群7から短パルス光を間欠送信する反射信号観測期間(距離観測期間)とは、互いに重複しない時間分割された期間である。最近では、ヘッドランプ等に複数個のLEDランプを使用するものが開発されており、従来のヘッドランプバルブと違って発光の応答性がよく、該LEDランプでレーダ装置に使用するような数百マイクロ秒の短パルス光を発生させることができる。 【0012】 次に、信号受信部3は、特許請求の範囲にいう受光手段に該当し、光学レンズ9と、フォトダイオード8と、STC(Sensitivity Time Control)アンプ等を含む信号増幅器31とを備えた構成である。 【0013】 さらに、信号処理部4は、特許請求の範囲にいう信号処理手段に該当し、送信トリガ発生部41と、距離検出部42と、先行車認識ロジック部43とを備えた構成である。信号処理部4は、具体的にはCPU、ROM,RAMなどで実現され、信号処理部4内の各部は、CPU上で実行されるプログラムおよびCPU周辺の回路等で具体化されることになる。」 (c) 「【0018】 短パルス光を送出させるために、送信トリガ発生部41からトリガ信号が信号送信部2に送られると、信号送信部2のLED駆動制御部21は、トリガ信号の立ち上がりに同期してパルス幅τの発光パルス信号をLED群7に送信し、LED群7では発光パルス信号に基づいて短パルス光を前方物標に向けて送出する。送出された短パルス光は物標で反射して、信号受信部3の光学レンズ9を通してフォトダイオード8で受光される。短パルス光を送出してから反射光が受光されるまでの時間をΔt、光速をCとすると、測距機能付LEDランプ装置と物標までの距離Dは次式(1)にて算出される。」 (d) 「【0027】 〔第2実施例〕 次に、図4は本発明の第2実施例に係る測距機能付LEDランプ装置の構成図である。図4において、本実施例の測距機能付LEDランプ装置は、信号送出部2aと、信号受信部3と、信号処理部4とを備えて構成されている。信号受信部3および信号処理部4については、第1実施例と同様の構成であるため詳細な説明を省略する。 【0028】 信号送出部2aは、照明用のLED群7と、該LED群7の発光を制御するLED駆動制御部21aと、発光させるLED数を切り替える発光LED切替部22とを備えた構成である。LED群7は6個のLEDで構成され、それぞれ2個ずつの第1,第2,第3のLED群に分けられている。LED群7のLED個数を6個とし、3つのLED群に分けた構成としているが、あくまで例示であって、任意のLED個数、任意の群数として良く限定されるものではない。 【0029】 また、LED駆動制御部21aは、LEDランプ装置を照明として機能させるか否かを指示するライトON/OFF信号に基づき、照明として機能させる指示の場合には所定時間連続してLED群7による光照射を行わせ、また、信号処理部4からのパルス発光命令に基づき、LED群7から短パルス光を間欠送信させるように、LED群7の発光を制御する。なお、所定時間連続してLED群7の光照射を行うランプ照明期間(ランプ点灯期間)と、LED群7から短パルス光を間欠送信する反射信号観測期間(距離観測期間)とは、互いに重複しない時間分割された期間である。 【0030】 さらに、発光LED切替部22は、信号処理部4の測距結果に応じて短パルス光を発光させるLED数を切り替える。近距離に反射物標が存在する状況においては、全LEDをパルス発光させると、信号受信部3で検出される受信信号が飽和してしまって、距離検出に誤差が生じる場合がある。そこで、信号送出部2a内部に数段階のスイッチ回路を設けて、同時に発光するLEDの個数を段階的に増減させるのである。 【0031】 次に、本実施例の測距機能付LEDランプ装置の具体的動作、即ちLEDランプ装置による測距方法について説明する。 【0032】 図5は、自動車用ランプ(LED群7)を照明として利用している際に、測距用に短パルス光を発光させているLED群の動作(図5(a))と、短パルス光を発光せず照明としてのみ利用しているLED群の動作(図5(b))を説明するタイムチャートである。 【0033】 上述のように、距離に反射物標が存在する状況においては、受信信号が飽和するという不具合が発生することがあることから、信号処理部4において、受信信号が飽和していると判断した場合には、短パルス光を発光するLED数を少なくするように、信号処理部4の距離検出部42から信号送出部2aの発光LED切替部22に対してLED個数切替信号を送出する。 【0034】 自動車用ランプをONしている場合には、測距用に短パルス光を発光させているLED 群は、図5(a)に示すように、所定時間連続して光を照射するランプ照明期間と、短パルス光を間欠送信する反射信号観測期間とを、時間分割して発光制御が行われている。なお、LEDの短パルス光の発光時間、反射信号観測期間およびランプ照明期間については第1実施例と同様である。 【0035】 一方、短パルス光を発光せず照明としてのみ利用しているLED群については、図5(b)に示すように、反射信号観測期間に消灯させて、パルス発光しないLED群の発光が測距に影響が出ないようにしている。 【0036】 また、信号処理部4において、受信信号が小さい、或いは、受信信号が検出できないと判断された場合には、短パルス光を発光するLED数を多くするように、距離検出部42から発光LED切替部22に対してLED個数切替信号を送出する。 【0037】 以上説明したように、本実施例の測距機能付LEDランプ装置では、近距離に物標が検出されないときには、同時にパルス発光させるLEDの個数を増やすので、送信する短パルス光の輝度を大きくして遠距離検知性能を向上させることができる(請求項3の効果)。 【0038】 また、本実施例の測距機能付LEDランプ装置では、近距離に物標を検知しているときには、同時にパルス発光するLEDの個数を減らすので、送信する短パルス光の輝度を小さくして、受信信号の飽和を防止することができる(請求項4の効果)。」 上記記載(a)ないし(d)の記載から、引用例の第2実施例に係る測距機能付きLEDランプ装置として、次の発明が記載されていると認められる。 「自動車用ランプである照明用のLED群7と、 LED群7から短パルス光を間欠送信させるように、信号処理部4からのパルス発光命令に基づきLED群7の発光を制御する、LED駆動制御部21aと、 物標で反射した短パルス光を受光するフォトダイオード8と、 短パルス光を送出してから反射光が受光されるまでの時間から物標までの距離を算出する信号処理部4と、 自動車用ランプ(LED群7)を照明として利用している際に、測距用に短パルス光を発光させるLEDの動作と、短パルス光を発光せず照明としてのみ利用するLEDの動作とを切替える、発光LED切替部22と、 を具備する測距機能付LEDランプ装置。」(以下、「引用発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 まず、引用発明のLED群7は自動車用ランプであるから、「周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である」、「可視光を発する光源」であることは明らかである。したがって、引用発明の「自動車用ランプである照明用のLED群7」と、本願補正発明における「周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、照明モードにおいて可視光を発するという第1の機能を有する、可視光を発する光源」とは、共に「周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、可視光を発する光源」である点で共通する。 また、引用発明における「LED群7から短パルス光を間欠送信させるように、信号処理部4からのパルス発光命令に基づきLED群7の発光を制御する、LED駆動制御部21a」と、本願補正発明における「所定のモードにおいて前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラであって、前記所定のモードにおける可視光は、前記光源が前記光源コントローラにより前記所定のモードで駆動されている間に周囲を明るくする又は人間の肉眼で見える信号を発するという前記第1の機能を前記光源が維持するようになっている、光源コントローラ」とは、共に「前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラ」である点で共通する。 次に、引用発明における「物標で反射した短パルス光を受光するフォトダイオード8」は、本願補正発明の「前記光源に対向するように配置され、物体により反射させられた/後方散乱させられた可視光を検出するように構成された、光学検出器」に相当する。 さらに、引用発明における「短パルス光を送出してから反射光が受光されるまでの時間から物標までの距離を算出する信号処理部4」と、本願補正発明における「前記光学検出器から検出データを受信し、前記所定モード及び前記検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサ」とは、共に「前記光学検出器から検出データを受信し、前記検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサ」である点で共通し、引用発明の「測距機能付LEDランプ装置」は、本願補正発明の「物体検出照明システム」に相当する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、可視光を発する光源と、 前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラと、 前記光源に対向するように配置され、物体により反射させられた/後方散乱させられた可視光を検出するように構成された、光学検出器と、 前記光学検出器から検出データを受信し、前記検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサと、 を具備することを特徴とする物体検出照明システム。」 (相違点) 相違点1:本願補正発明は、「照明モードにおいて可視光を発するという第1の機能を有」し、また「所定のモード」において、「前記光源が前記光源コントローラにより前記所定のモードで駆動されている間に周囲を明るくする又は前記周囲にいる人間の肉眼で見える信号を発するという前記第1の機能を前記光源が維持するようになっている」のに対し、引用発明においてはそのような2つのモードを備えるとは明示されていない点。 相違点2:本願補正発明は、「前記光源の駆動は、100Hzより高い変調周波数で実行される」ものであるのに対し、引用発明のLED群7の駆動周波数は不明であり、また引用発明は単に短パルス光を間欠送信させるものであって変調を行っていない点。 (3)判断 ア 相違点1について 引用例には、「照明モード」や「所定のモード」のそれぞれに直接対応するような動作モードに関する明示的な記載は無い。 しかしながら、引用発明は「自動車用ランプ(LED群7)を照明として利用している際に、測距用に短パルス光を発光させるLEDの動作と、短パルス光を発光せず照明としてのみ利用するLEDの動作とを切替える、発光LED切替部22」を備えており、この「短パルス光を発光せず照明としてのみ利用するLEDの動作」(引用例の図5(b)を参照)において、可視光が発せられていることは明らかである。また一方、「自動車用ランプ(LED群7)を照明として利用している際に、測距用に短パルス光を発光させるLEDの動作」(引用例の図5(a)を参照)は、測距用短パルス光と共に照明光を照射しているのであるから、「前記光源が当該光源コントローラにより駆動されているときに周囲を明るくする又は前記周囲にいる人間の肉眼で見える信号を発する」ものであるといえる。 そうすると、引用発明において「発光LED切替部22」により切替えられる2つの動作状態が、「照明モード」及び「所定のモード」に相当するものであって、相違点1は実質的な相違点では無い。 また仮に、本願補正発明の「所定のモード」が、本願の図2に示されているような、パルス化及び変調された光自体が照明光でもあるもののみを指し、相違点1が実質的な相違点であるとしても、例えば、原査定の拒絶の理由において例示され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平2-59608号公報(特に第2頁右上欄第14行?第3頁左上欄第7行を参照)にも記載されているように、測定用の変調信号光を照明光により構成可能であるという程度のことは当業者にとって自明の範疇のものにすぎず、これを採用するか否かは設計事項である。 イ 相違点2について 例えば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-231700号公報(特に段落【0043】、【0044】及び図8を参照)や前記特開平2-59608号公報(特に第2頁左下欄第17行?同右下欄第1行を参照)にも記載されているように、光源の駆動周波数を100Hzより高いものとして誤検出やちらつきの防止を図ることは周知技術であり、これを引用発明に採用することは、当業者が容易になし得たものである。 また、例えば前記特開2000-231700号公報(特に段落【0030】、【0042】、【0044】を参照)や、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-52957号公報(特に段落【0022】、【0023】を参照)にも記載されているように、測定用光にパルス化及びコード化(「光源の駆動」を、「変調周波数で実行」することに相当)を施すことにより干渉防止を図るようにしたものは周知技術であり、これを引用発明に採用することは、当業者が容易になし得たものである。 またこれらの周知技術を採用することにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 請求人の主張について 審判請求人は、平成28年5月13日付上申書において以下のように主張しているので、検討する。 (1)請求人の主張の概要 「2.前置報告書の内容に対する意見 ・・・ 引用文献1のシステムは、0.01%の時間だけ(10μs/10ms)の測距を行うものであることを考慮すると、所定のモードで発光される可視光は無視できるものであり、たった0.01%の時間しか動作しないため、照明のために使用することはできません。したがいまして、引用文献1には、所定のモードにおける照明機能について開示されておりませんので、審査官殿のご指摘には、承服しかねます。 また、引用文献1のシステムは、約99.99%の時間(1-10μs/10ms)照明モードで動作するものであります。すなわち、このシステムは、ほとんどすべての時間、遮蔽されております(測距を行わない)。本願補正後の請求項1に係る発明は、「所定のモードにおいて可視光を発するように前記光源コントローラを用いて前記可視光光源を駆動」し、「前記所定のモードにおける可視光は、前記可視光光源が前記光源コントローラにより前記所定のモードで駆動されている間に人間の肉眼で見えるという前記第1の機能を前記可視光光源が維持するように、発せられる」ことにより、このような技術的課題を解決するものであります。すなわち、本願補正後の請求項1に係る発明は、測距のための所定のモードにおいて可視光を発光している間に、照明のための照明モードにおいて可視光を発光するものであります。 以上のように、本願補正後の請求項1に係る発明は、測距のための所定のモードにおいて発光している間に、照明のための発光を行うことから成る動作サイクルを有するものであり、100%の時間、照明と測距を同時に行います。 ・・・ よって、本願補正後の請求項1?15に係る発明は、進歩性を有し、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないと思料致します。」 (2)当審による検討 上記「2 検討」「(3)判断」の「イ 相違点2について」において示したように、引用発明において「発光LED切替部22」により切替えられる2つの動作状態が、「照明モード」及び「所定のモード」に相当するものであって、そのいずれにおいても可視光源の駆動は行われており、審判請求人の主張は採用できない。 なお、本願補正発明が「100%の時間、照明と測距を同時に行」うものであるとの上記主張は、請求項の記載に基づかないものであって、これを採用することはできない。 4 まとめ したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項9に係る発明は次のとおりである。 「 【請求項9】 周囲を明るくすること及び該周囲にいる人間に信号を発することのうちの少なくとも一方である、照明モードにおいて可視光を発するという第1の機能を有する、可視光を発する光源と、 所定のモードにおいて前記可視光を発するように前記光源を駆動する光源コントローラであって、前記所定モードにおける可視光は、前記光源が当該光源コントローラにより駆動されているときに周囲を明るくする又は人間の肉眼で見える信号を発するという前記第1の機能を維持するようになっている、光源コントローラと、 前記光源に対向するように配置され、物体により反射させられた/後方散乱させられた可視光を検出するように構成された、光学検出器と、 該光学検出器から検出データを受信し、前記所定モード及び該検出データに基づいて前記物体に関連したデータ出力を生成する、データ/信号プロセッサと、 を具備することを特徴とする物体検出照明システム。」(以下「本願発明」という。) 2 判断 本願発明は実質的に、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、光源についての「前記可視光光源の駆動は、100Hzより高い変調周波数で実行される」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-07-15 |
結審通知日 | 2016-07-19 |
審決日 | 2016-08-02 |
出願番号 | 特願2014-75371(P2014-75371) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 亮 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 須原 宏光 |
発明の名称 | 物体検出照明システム及び方法 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 岩崎 吉信 |
代理人 | 弟子丸 健 |