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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1322961
審判番号 不服2015-21744  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-08 
確定日 2016-12-14 
事件の表示 特願2011-151720「光制御フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 19988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月8日の出願であって、平成27年4月17日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年9月4日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して、同年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年12月8日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成27年12月8日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成27年12月8日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書及び特許請求の範囲についてするものであって、そのうち特許請求の範囲の請求項1についての補正は、本件補正前の請求項2(平成27年6月19日提出の手続補正書により補正されたもの)に、

「 【請求項1】
複数枚の散乱フィルムが積層された光制御フィルムであって、
前記散乱フィルムは、光重合性組成物の硬化物からなる板状のマトリックスと該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とを備え、
同一の散乱フィルム内では、前記各柱状構造体が、該散乱フィルムの法線方向に対し一定角度で傾斜し略平行に配向され、
前記傾斜角度が、一方の散乱フィルムから他方の散乱フィルムに向けて段階的に変化し、
前記光制御フィルムへの光の入射角と、散乱光の出射角度範囲とが異なり、
前記柱状構造体の横断面の直径が0.1μm?15μmであり、
前記散乱フィルム内の柱状構造体の配列周期が、0.1μm?15μmである、
ことを特徴とする光制御フィルム。
【請求項2】
前記各散乱フィルムは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものである、
請求項1に記載の光制御フィルム。」とあったものを、新たな請求項1として、

「 【請求項1】
多官能性モノマーと前記多官能性モノマーの単独重合体と屈折率が異なる光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する光重合性組成物の硬化物である複数枚の散乱フィルムが積層された光制御フィルムであって、
前記散乱フィルムは、前記光重合性組成物の硬化物からなるものであって、板状のマトリックスと該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とを備え、
同一の散乱フィルム内では、前記各柱状構造体が、該散乱フィルムの法線方向に対し一定角度で傾斜し略平行に配向され、
前記傾斜角度が、一方の散乱フィルムから他方の散乱フィルムに向けて段階的に変化し、
前記光制御フィルムへの光の入射角と、散乱光の出射角度範囲とが異なり、
前記柱状構造体の横断面の直径が0.1μm?15μmであり、
前記散乱フィルム内の柱状構造体の配列周期が、0.1μm?15μmである、
ことを特徴とする光制御フィルム。」とする補正である(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次のア及びイの補正からなるものである。
ア 本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマー」のうち1種類が、「多官能性モノマー」であることを限定する。
イ 本件補正前の請求項2に係る発明において、「光重合性組成物の硬化物からなる」のが、「板状のマトリックス」だけなのか、それとも、当該「板状のマトリックス」と「該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体」の双方なのか、が不明りょうであったものを、補正前の「光重合性組成物の硬化物からなる」を「前記光重合性組成物の硬化物からなるものであって、」とすることによって、「前記光重合性組成物の硬化物からなるもの」が「板状のマトリックス」と「該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体」の双方であることを明確化する。

2 新規事項の追加及び本件補正の目的
(1)新規事項の追加
ア 上記1(2)のアの点は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、願書に最初に添付した明細書を「当初明細書」といい、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面をあわせて「当初明細書等」という。)の【0052】、【0053】、【0056】等に記載されており、上記1(2)のイの点は当初明細書の【0052】、【0065】等に記載されている。
イ 上記アからみて、本件補正のうち、少なくとも特許請求の範囲の請求項1についての補正は、当初明細書等の記載との関係において、新たな事項を追加しないものであるから、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
(2)本件補正の目的
上記1(2)イの補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
また、上記1(2)アの補正は、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、本件補正の前後で請求項2(補正後は請求項1)に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開2005-326824号公報(以下「引用例」という。)には、「スクリーン及びこれを用いた画像投影システム」(発明の名称)に関し、図とともに次の(1)ないし(6)の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影された光画像を表示するスクリーンであって、
特定角度範囲で入射した光を散乱するとともにそれ以外の角度で入射した光を透過する指向性散乱層を備えることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記指向性散乱層は、周囲の領域より屈折率の高い領域が厚み方向に連続的に形成された柱状構造が面内に複数配列され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシートであることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
・・・(略)・・・
【請求項10】
前記指向性散乱層は、第一の特定角度範囲で入射した光を散乱するとともにそれ以外の角度で入射した光を透過する第一の指向性散乱層と、第二の特定角度範囲で入射した光を散乱するとともにそれ以外の角度で入射した光を透過する第二の指向性散乱層を有し、前記第一の特定角度範囲の中心軸と前記第二の特定角度範囲の中心軸の方向が異なることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
・・・(略)・・・」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のビーズなどの拡散素材によるスクリーンは広視野角を実現できるがゲインが低いために画面が暗くなるという問題点を有していた。また、レンチキュラレンズなどを用いたスクリーンは指向性が高いために高ゲインで明るい画面が得られるが視野角が狭くなるという問題点を有していた。また、レンチキュラレンズを用いたプロジェクタ用スクリーンにおいては、アクリルなどの透明な樹脂を成形して作製するために、安価にすることができない上に、近距離で画像を視認する8?20型程度の中小型スクリーンに応用すると画質劣化が大きくなるという問題点を有していた。
【0004】
そこで、本発明は、良好な視野角特性と輝度特性とコントラストとを有する薄型軽量のプロジェクタ用スクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のスクリーンは、特定角度範囲で入射した光を散乱するとともにそれ以外の角度で入射した光を透過する指向性散乱層を備えた構成である。指向性散乱層としては、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、柱状構造の柱状中央領域はそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシート、厚み方向に貫通する穴を有する穴あきシート、あるいは液晶分子が配列された液晶ポリマー等を用いることができる。
【0006】
また本発明のスクリーンは、特定角度範囲が異なる指向性拡散層が帯状あるいは行状に配置された構成でも良い。また、指向性散乱層を互いに特定角度範囲が異なる二層の指向性散乱層で構成しても良い。」

(3)「【0015】
以下に本発明のスクリーンの実施例に関して図面を参照しながら説明する。なお、以下では、指向性散乱層として、柱状レンズシートを用いた例を説明する。柱状レンズシートとは、周囲の領域より屈折率の高い領域が厚み方向に連続的に形成された柱状構造が面内に複数配列された構造であり、厚さ方向に光を導く機能を有している。
【0016】
図1に本実施例のスクリーンの断面構成とプロジェクタの配置を模式的に示す。図示するように、プロジェクタ4からの光画像は、柱状レンズシート1と透明基材2と光反射層3とを備えたスクリーンに投影され、その投影画像はスクリーンを介してプロジェクタ4と同じ側にいる観測者8によって観測される。このような使われ方のスクリーンをフロントスクリーンと言う。ここで、柱状レンズの光軸方向をその配向方向と呼ぶことにする。図1に示す構成では、柱状レンズの配向方向はプロジェクタ4から投影される光画像の光軸5の方向とおよそ一致している。すなわち、柱状レンズは柱状レンズシートの面内で下方に傾いて配列している。ここで、柱状レンズシートは、屈折率が中心に向かう程連続的に大きくなっているグレイディッドインデックス型柱状レンズ、または、中心部分の屈折率がそれを取り巻く外周領域の屈折率よりも高い2層構造を持つステップインデックス型柱状レンズ等の柱状レンズが平面に複数配列されたフィルムである。
【0017】
このような構成のスクリーンとそこに入射した光の様子を図5、図6に模式的に示す。便宜上、図では高屈折率領域14と低屈折率領域15に明確な境界があるように描かれているが、グレイディッドインデックス型柱状レンズの場合は、高屈折率領域14と低屈折率領域15との間には明確な境界はない。柱状レンズの中心軸すなわち光軸はフィルム面垂線に対して0?70度程度の任意の傾きに作製することができる。
【0018】
この柱状レンズシートは、例えば、屈折率の異なる2種類以上の光重合性化合物からなる液状反応層に、グラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって製造される。」

(4)「【0020】
本発明のスクリーンには、柱状レンズのレンズ径が、0.2μm?500μm、レンズ高さ(柱状レンズシート層厚)が10μm?2mmの柱状レンズシートを用いることができる。しかしながら、製造歩留まりや光利用効率あるいはハンドリングのし易さなどを考慮すると、レンズ径は5μm?100μm、レンズ高さは20μm?200μmとするのが好ましい。また、柱状レンズの屈折率差は0.01?0.05のものを用いることができる。また、柱状レンズのシート面に立てた垂線との傾き角は、0?70度程度の任意の角度にすることができる。」

(5)「【0063】
次に、柱状レンズシートと第二柱状レンズシートを用いたリアスクリーンの断面構成とプロジェクタ4の配置を図16に模式的に示す。図示するように、プロジェクタ4からの光画像は、柱状レンズシート1と第二柱状レンズシート17が接合された構成のスクリーンに投影され、その投影画像はスクリーンを介してプロジェクタ4の逆側にいる観察者の視点8から観察される。図16に示す構成では、柱状レンズシート1を構成する柱状レンズの配向方向はプロジェクタ4から投影される光画像の光軸5の方向とおよそ一致している。すなわち、これらの柱状レンズは柱状レンズシート1の面内で下方に傾いて配列している。また、第二柱状レンズシート17の配向方向は、視点8の方向と略一致している。
【0064】
プロジェクタ4からの投影画像は光軸5を中心として光線6と光線7で示される広がりをもって投影される。そして、柱状レンズシート1の散乱入射角がこの投影画像の広がりの範囲内になるように設定されている。このような構成によって、柱状レンズシート1内を図5で示した光路をたどり第二柱状レンズシート17の表面から散乱入射角に対応した散乱角で視点8側に散乱する。そのため、視点8からスクリーンを観察している人には、広い視野角で明るい投影画像が観察されることになる。一方、観察者に対してスクリーンの反対側上方にある物体からの光は、柱状レンズシート1と第二柱状レンズシート17の直線入射角からスクリーンに入射するため、観察者の視点8に届くことになる。従って、観察者にとってはスクリーンの反対側にある物体と、スクリーンに投影された画像とを同時に観察することができる。 ・・・(略)・・・
【0066】
次に、透明基材2を介して柱状レンズシート1と第二柱状レンズシート17を接合した構成のスクリーンを図17に示す。このような構成によって、柱状レンズシート1の特定の柱状レンズから散乱出射された光は、第二柱状レンズシート17の複数の柱状レンズに入射し、それらによって再び散乱出射される。その結果、スクリーンに投影された画像は、ぼかし処理をされたのと同様の作用を受け、プロジェクタ内の液晶素子の画素の映り込みのない滑らかな画像を表示することができる。しかしながら、透明基材2の板厚を大きくし過ぎると、画像がぼやけてしまい鮮明さが落ちるために、透明基材2の板厚は投影される画像の画素の大きさ程度以下にするのが好ましい。」

(6)図16及び図17は次のとおりものであり、特に図17からは、柱状レンズシート1から出射する光が散乱することが見てとれる。
【図16】


【図17】


(7)上記(5)は、実施例7についての記載の摘記であるが、引用例全体の記載からみて、当該実施例7における柱状レンズシート1及び第二柱状レンズシート17は、上記(3)及び(4)に摘記した実施例1の柱状レンズシート1の製造方法と同様の方法で製造され、実施例1の柱状レンズシート1の柱状レンズと同様のレンズ径を備えるものと解するのが自然である。
また、上記(5)の「柱状レンズシート1」は、「第二柱状レンズシート17」に対するものであるから、「第一柱状レンズシート」と称して差し支えないものと認められる。
そうすると、上記(1)ないし(6)から、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「特定角度範囲で入射した光を散乱するとともにそれ以外の角度で入射した光を透過する指向性散乱層を備えたスクリーンであって、
前記指向性散乱層を互いに特定角度範囲が異なる二層の指向性散乱層で構成し、
前記指向性散乱層として、微細な柱状構造が面内に複数本配列され、当該柱状構造の柱状中央領域がそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する柱状レンズシートを用い、
前記柱状レンズシートは、屈折率の異なる2種類以上の光重合性化合物からなる液状反応層にグラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって製造され、
前記柱状レンズシートの柱状レンズのレンズ径は、0.2μm?500μm、好ましくは5μm?100μmであり、レンズ高さ(柱状レンズシート層厚)は、10μm?2mm、好ましくは20μm?200μmであり、
前記二層の指向性散乱層で構成されたスクリーンは、第一柱状レンズシートと第二柱状レンズシートが直接又は透明基材を介して接合されたものであり、
前記第一柱状レンズシートを構成する柱状レンズの配向方向はプロジェクタから投影される光画像の光軸の方向とおよそ一致、すなわち、これらの柱状レンズは第一柱状レンズシートの面内で下方に傾いて配列する一方、前記第二柱状レンズシートの配向方向は、視点の方向と略一致し、
前記第一柱状レンズシートの特定の柱状レンズから散乱出射された光は、前記第二柱状レンズシートの複数の柱状レンズに入射し、それらによって再び散乱出射される、
指向性散乱層を備えたスクリーン。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「指向性散乱層」及び「『柱状構造』、『柱状レンズ』」は、それぞれ、本願補正発明の、「散乱フィルム」及び「柱状構造体」に相当する。
また、引用発明の「光重合性化合物」は、2種類以上混合して用いられるから、本願補正発明の「光重合性組成物」に相当する。
さらに、引用発明の「スクリーン」は、指向性散乱層を備え、光が当該「スクリーン」を透過する際にその散乱出射方向に指向性を持たせる、すなわち、出射方向を制御するものであるから、本願補正発明の「光制御フィルム」に相当する。

(2)引用発明の「スクリーン」(本願補正発明の「光制御フィルム」に相当。以下、引用発明の構成に相当する本願補正発明の構成を()内に記す。)における「柱状レンズシート」は、2種類以上の「光重合性化合物」(光重合性組成物)からなる液状反応層にグラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって製造されるものであるから、「光重合性化合物」(光重合性組成物)の硬化物であることは明らかである。
また、引用発明の「スクリーン」(光制御フィルム)は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)を互いに特定角度範囲が異なる二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成しており、前記「指向性散乱層」(散乱フィルム)として、前記「柱状レンズシート」を用いており、前記二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成された「スクリーン」(光制御フィルム)は、「第一柱状レンズシート」と「第二柱状レンズシート」が直接又は透明基材を介して接合されたものであるから、前記二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)は積層されたものである。
したがって、引用発明は、「光制御フィルム」について、本願補正発明の「光重合性組成物の硬化物である複数枚の散乱フィルムが積層された光制御フィルム」との構成を備えるといえる。

(3)引用発明は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)として、微細な「柱状構造」(柱状構造体)が面内に複数本配列され、当該「柱状構造」(柱状構造体)の柱状中央領域がそれを取り巻く外周領域に比べて屈折率が高く形成され、厚さ方向に光を導く機能を有する「柱状レンズシート」を用い、前記「柱状レンズシート」は、屈折率の異なる2種類以上の「光重合性化合物」(光重合性組成物)からなる液状反応層にグラデーション加工を施したフォトマスクを介して紫外線を照射することによって、光照射強度による光重合性化合物の光重合速度の違いによって屈折率の分布状態を制御することによって製造されるものである。ここで、「柱状構造」(柱状構造体)の柱状中央領域の外周領域は、上記の製造方法からみて一定の厚さを有する板状であることは明らかであり(図16及び図17からも見てとれる事項である。)、当該外周領域が本願補正発明の「マトリックス」に相当するといえる。
したがって、引用発明は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)について、本願補正発明の「散乱フィルムは、光重合性組成物の硬化物からなるものであって、板状のマトリックスと該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とを備え」との構成を備えるといえる。

(4)引用発明は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)を互いに特定角度範囲が異なる二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成しており、前記「指向性散乱層」(散乱フィルム)として、「柱状レンズシート」を用いており、前記二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成された「スクリーン」(光制御フィルム)は、「第一柱状レンズシート」と「第二柱状レンズシート」が直接又は透明基材を介して接合されたものであり、前記「第一柱状レンズシート」を構成する「柱状レンズ」(柱状構造体)の配向方向はプロジェクタから投影される光画像の光軸の方向とおよそ一致、すなわち、これらの「柱状レンズ」(柱状構造体)は「第一柱状レンズシート」の面内で下方に傾いて配列される一方、前記「第二柱状レンズシート」の配向方向は、視点の方向と略一致するのであるから、「第一柱状レンズシート」の各「柱状レンズ」(柱状構造体)が、「指向性散乱層」(散乱フィルム)の法線方向に対し一定角度で傾斜し略平行に配向されていることは明らかであるとともに、「第二柱状レンズシート」についても、各「柱状レンズ」(柱状構造体)が、略平行に配向されていることは明らかである。
また、「第二柱状レンズシート」の配向方向と視点の方向とは「略」一致するのであって厳密に一致しない場合を含み、そもそも「スクリーン」(光制御フィルム)に対する視点の方向が常に法線方向を向いているとは限らないのであるから、「第二柱状レンズシート」についての「柱状レンズ」(柱状構造体)の配向方向と視線の方向の「略一致」には、該配向方向と法線方向とのなす角が0°でない場合が含まれる。仮にそうとまではいえないとしても、本願の実施例5の光学制御フィルムで積層されているサンプルviのフィルムは内部構造の傾斜角度が0°であるから、本願補正発明の「各柱状構造体が、該散乱フィルムの法線方向に対し一定角度で傾斜している」との事項における「一定角度」は0°を含む。これらのことからみて、「第二柱状レンズシート」の各「柱状レンズ」(柱状構造体)は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)の法線方向に対し一定角度で傾斜しているといえる。
さらに、各「柱状レンズ」の配向方向すなわち傾斜角度が、「第一柱状レンズシート」から「第二柱状レンズシート」に向けて段階的に変化していることも明らかである。
したがって、引用発明は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)について、本願補正発明の「同一の散乱フィルム内では、各柱状構造体が、該散乱フィルムの法線方向に対し一定角度で傾斜し略平行に配向され」との構成を備えるとともに、「指向性散乱層」(散乱フィルム)の各柱状構造体の傾斜角度について、本願補正発明の「傾斜角度が、一方の散乱フィルムから他方の散乱フィルムに向けて段階的に変化し」との構成を備えるといえる。

(5)引用発明の「スクリーン」(光制御フィルム)は、「指向性散乱層」(散乱フィルム)を互いに特定角度範囲が異なる二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成しており、前記「指向性散乱層」(散乱フィルム)として、前記「柱状レンズシート」を用いており、前記二層の「指向性散乱層」(散乱フィルム)で構成された「スクリーン」(光制御フィルム)は、「第一柱状レンズシート」と「第二柱状レンズシート」が直接又は透明基材を介して接合されたものであり、前記「第一柱状レンズシート」を構成する「柱状レンズ」(柱状構造体)の配向方向はプロジェクタから投影される光画像の光軸の方向とおよそ一致、すなわち、これらの「柱状レンズ」(柱状構造体)は「第一柱状レンズシート」の面内で下方に傾いて配列する一方、前記「第二柱状レンズシート」の配向方向は、視点の方向と略一致しており、前記「第一柱状レンズシート」の特定の「柱状レンズ」(柱状構造体)から散乱出射された光は、前記「第二柱状レンズシート」の複数の「柱状レンズ」(柱状構造体)に入射し、それらによって再び散乱出射されるから、「スクリーン」(光制御フィルム)への光の入射角と、散乱光の出射角度範囲とが異なることは明らかである(図16及び図17からも見てとれる事項である。)。
したがって、引用発明は、「スクリーン」(光制御フィルム)について、本願補正発明の「光制御フィルムへの光の入射角と、散乱光の出射角度範囲とが異なり」との構成を備えるといえる。

(6)引用発明の「柱状レンズ」(柱状構造体)のレンズ径は、0.2μm?500μm、好ましくは5μm?100μmであるから、例えば、レンズ径を好ましいとされる範囲内の5μm、10μm、15μm等としたときに、本願補正発明の「柱状構造体の横断面の直径」の範囲(0.1μm?15μm)内に入っている。
したがって、引用発明は、「柱状レンズ」(柱状構造体)について、本願補正発明の「柱状構造体の横断面の直径が0.1μm?15μmである」との構成を備えるといえる。

(7)上記(1)ないし(6)から、本願補正発明と引用発明とは、
「光重合性組成物の硬化物である複数枚の散乱フィルムが積層された光制御フィルムであって、
前記散乱フィルムは、前記光重合性組成物の硬化物からなるものであって、板状のマトリックスと該マトリックス中に配設され該マトリックスと屈折率が異なる複数の柱状構造体とを備え、
同一の散乱フィルム内では、前記各柱状構造体が、該散乱フィルムの法線方向に対し一定角度で傾斜し略平行に配向され、
前記傾斜角度が、一方の散乱フィルムから他方の散乱フィルムに向けて段階的に変化し、
前記光制御フィルムへの光の入射角と、散乱光の出射角度範囲とが異なり、
前記柱状構造体の横断面の直径が0.1μm?15μmである、
光制御フィルム。」の点で一致し、次の二つの点で相違する。

相違点1:
前記「光重合性組成物」が、
本願補正発明では、「多官能性モノマーと前記多官能性モノマーの単独重合体と屈折率が異なる光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する」のに対し、
引用発明では、屈折率の異なる2種類以上の光重合性化合物であるが、多官能性モノマー及び前記多官能性モノマーの単独重合体と屈折率が異なるモノマー又はオリゴマーを含有するかどうかまでは明らかでない点。

相違点2:
前記「散乱フィルム内の柱状構造体の配列周期」が、
本願補正発明では、「0.1μm?15μm」であるのに対し、
引用発明では、明らかでない点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1について
本願出願前に、特定角度からの入射光のみを散乱する光制御板、入射角依存性を有する異方性光拡散フィルム、あるいは、入射角度選択性を持つと共に光散乱特性に異方性を持つ光散乱フィルムにおいて、当該光制御板又は光拡散(散乱)フィルムの材料となる樹脂組成物又は光重合性化合物を、多官能性モノマーと、当該多官能性モノマーと屈折率に差があるモノマー又はオリゴマーの混合物とすることは、周知(以下「周知技術」という。)である。
周知例として、例えば、特許第2691543号公報(以下「周知例1」という。3欄12行?4欄4行の「・・・本発明は、それぞれの屈折率に差がある分子内に1個以上の重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物の複数からなる樹脂組成物を硬化させることを特徴とする、プラスチックシートからなる光制御板の製造方法を提供するものである。・・・本発明の方法において用いられる重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物とは分子内に・・・などの重合可能な基を1個以上有するモノマー又はオリゴマーである。例えば、・・・などの多官能アクリレートや・・・などがあげられる。本発明に使用する樹脂組成物は、これらの化合物のうち、それぞれの屈折率に差がある二種以上の混合物である」との記載を参照。)、国際公開第2008/053592号(以下「周知例2」という。[0022]?[0024]の「・・・屈折率の異なる複数の材料を組み合わせることが好ましい・・・本発明の異方性光拡散層を形成するのに必須な材料である光重合性化合物は、ラジカル重合性またはカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーから選択される光重合性化合物と光開始剤とから構成され、紫外線及び可視光線を照射することにより重合・硬化する材料である。ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、・・・ネオペンチルグリコールジアクリレート・・・トリメチロールプロパントリアクリレート・・・ペンタエリスリトールテトラアクリレート・・・が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい」との記載を参照。)、特開2001-228312号公報(以下「周知例3」という。【0050】、【0051】の「軸外し異方性光散乱フィルムは該異方性光散乱フィルムを膨潤させうる(A)実質的に透明な光重合性化合物が異方性光散乱フィルム中に浸透し、作製された屈折率の濃淡模様を膨潤させることを利用したものである。・・・このような(A)光重合性化合物としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物を少なくとも1つ以上含まれることが望ましい。・・・ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物の具体例として・・・トリエチレングリコールジアクリレート・・・ネオペンチルグリコールジアクリレート・・・及びこれらアクリレートに対応するメタアクリレート・・・及びこれらの混合物が挙げられる・・・」との記載を参照。)を挙げることができる。
引用発明において、屈折率の異なる2種類以上の前記「光重合性化合物」(光重合性組成物)を、多官能性モノマーと、当該多官能性モノマーと屈折率に差があるモノマー又はオリゴマーの混合物となすこと、すなわち相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
ア 引用発明の「柱状レンズシート」において、当該「柱状レンズシート」へ入出射する光のうち、「柱状構造」の柱状中央領域と外周領域の境界部分を通らず、外周領域のみを透過する光は、所望の散乱特性を有さない光(以下、便宜上「非散乱光」という。)となる。引用発明の「スクリーン」は、プロジェクタから投影された光画像を表示するためのものであり、良好な視野角特性を提供するために出射光を所望の出射角度範囲に散乱させているものである(引用例の【0004】(上記3(2))参照。)から、出射光全体に占める非散乱光の割合が大きくなり過ぎる(すなわち、所望の散乱特性を有する散乱光の割合が小さくなり過ぎる)と、視野角特性が望ましくないものとなってしまう。
出射光全体に占める非散乱光の割合は、プロジェクタから投影された光の「柱状レンズシート」への入射角、「柱状レンズ」の傾斜角、外周領域の屈折率、「柱状レンズシート」の厚さ等によって決まるが、レンズ径とレンズピッチ(配列周期)の比も上記割合を左右する。すなわち、上記入射角、上記傾斜角、上記屈折率、上記厚さ及び「柱状レンズ」のレンズ径を固定し、「柱状レンズ」のピッチを徐々に大きくしていくと、外周領域のみを透過する光(非散乱光)の割合が徐々に大きくなっていく(散乱光の割合が徐々に小さくなっていく)から、レンズ径に対するレンズピッチの比が過度に大きくなってしまうと望ましい視野角特性を持つ「スクリーン」とならないことは、当業者には明らかである
また、望ましい視野角特性を持つ「スクリーン」を実現するためには、当業者は、上記入射角、上記傾斜角、上記屈折率、上記厚さ等に加えて、レンズ径とレンズピッチの比を適宜調整しなければならないことも、当業者には明らかである。
イ 引用発明において、「柱状レンズシート」の「柱状レンズ」(柱状構造体)のレンズ径は、0.2μm?500μm、好ましくは5μm?100μmである。引用発明の「スクリーン」において、「柱状レンズ」のレンズ径が、例えば、好ましいとされる5μmであるときに、「柱状レンズ」の配列周期がレンズ径の3倍を超えるような大きな値であると、非散乱光の割合が大きすぎてもはや望ましい視野角特性ではなくなってしまうから、「柱状レンズ」の配列周期がレンズ径の3倍を超える15μm超であるとはおよそ考え難い。
仮に、そうとまではいえないとしても、上記アからみて、レンズ径やレンズの高さ(=レンズシートの厚さ)が所与の値であるときに、それに対するレンズピッチは、「スクリーン」の視野角特性を考慮して、上記入射角、上記傾斜角、上記屈折率とともに当業者が適宜定め得る設計的事項であるといえるから、例えば、「柱状レンズ」のレンズ径が好ましいとされる5μmであるときに、柱状レンズの配列周期をレンズ径の3倍未満の15μm未満とすることは、当業者が適宜なし得る程度の事項である。
ウ 上記ア及びイからみて、相違点2は実質的な相違点ではないか、あるいは、引用発明において、「散乱フィルム内の柱状構造体の配列周期」を0.1μm?15μmとなすこと、すなわち、相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(3)効果について
本願補正発明が奏する効果は、引用発明が奏する効果及び周知技術が奏する効果から、当業者が容易に予測できる程度のものである。

(4)まとめ
上記(1)ないし(3)のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成27年6月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6によって特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項2として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を明確化するとともに限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-07 
結審通知日 2016-10-17 
審決日 2016-10-28 
出願番号 特願2011-151720(P2011-151720)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 西村 仁志
渡邉 勇
発明の名称 光制御フィルム  
代理人 西島 孝喜  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 井野 砂里  
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