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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1322969
審判番号 不服2016-3476  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-07 
確定日 2016-12-15 
事件の表示 特願2015-104479「アクチュエータ機構、カメラモジュールおよびカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開,特開2015-146056〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成19年2月2日に出願した特願2007-24540号(以下,「原々出願」という。)の一部を平成24年2月3日に新たな特許出願としたもの(特願2012-22488号。以下,「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであるとして,平成27年5月22日に出願されたものであって,同年7月17日付けで拒絶理由が通知され,同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月30日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成28年3月7日に請求されたものである。

2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は,平成27年9月28日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし10(以降,本願の請求項や明細書等について,「出願当初の」という表現を付さない場合は,平成27年9月28日提出の手続補正書による補正後のものを指す。)に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,請求項1の記載は,次のとおりである。

「【請求項1】
レンズユニットを収容可能であって,前記レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能なホルダと,
前記ホルダに設けられ,複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状を有し,磁気回路内に位置するコイルと,
前記磁気回路の一部を構成するヨークと,
前記ホルダを支持する板バネと,
前記ヨークと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記ベースの水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,
前記ヨークの水平断面形状は,外側辺部ヨーク片と前記ベースの前記角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形であり,
前記ヨークは,前記外側角部ヨーク片の内側に,前記外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有し,
前記外側角部ヨーク片と前記内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ,
前記コイルの前記平板状の部分は,前記第1のマグネットと前記内側ヨーク片との間に位置しており,
前記外側角部ヨーク片,前記外側辺部ヨーク片および前記内側ヨーク片は,一体となって形成されていることを特徴とするアクチュエータ機構。」(以下,「本願発明」という。)

3 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は,本願は分割要件を満たしていないから,出願日は原々出願の出願日にまで遡及せず,引用文献1及び引用文献2は,本願の出願より前に頒布された刊行物であるところ,本願発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができず,また,本願発明は,引用文献2に記載された発明及び引用文献3,4に示される周知・慣用の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
原査定の拒絶の理由で引用した引用文献1ないし4は,次のとおりである。
引用文献1:特開2008-191332号公報
引用文献2:特開2008-26431号公報
引用文献3:特開2008-58659号公報
引用文献4:国際公開第2006/126545号

4 分割要件についての判断及び本願の出願日
(1)はじめに
特許法44条2項本文の規定により,新たな特許出願(以下,「子出願」という。)がもとの特許出願(以下,「親出願」という。)の時にしたものとみなされる(以下,「出願日の遡及」等と表現することがある。)ためには,子出願の明細書等に記載された事項が,親出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることが必要である(分割要件)。
また,親出願の一部を分割した子出願の一部をさらに分割した特許出願(以下,「孫出願」という。)について,特許法44条2項本文の規定により,孫出願が親出願の時にしたものとみなされるためには,子出願が親出願に対して分割要件を満たすこと(以下,便宜上「第1条件」という。),孫出願が子出願に対して分割要件を満たすこと(以下,便宜上「第2条件」という。),及び孫出願が親出願に対して分割要件を満たすこと(以下,便宜上「第3条件」という。)の全てを満足する必要がある。

(2)本願の分割要件についての判断
第3条件の判断
(ア) 本願は,原々出願(親出願)の一部を分割した原出願(子出願)の一部をさらに分割したもの(孫出願)であるとして出願されたものであるから,前記(1)で述べた事項に照らせば,特許法44条2項本文の規定により,本願が原々出願の出願日である平成19年2月2日に出願されたものとみなされるためには,第1条件ないし第3条件の全てを満足する必要がある。
そこで,まず,第3条件について検討する。

(イ)a 本願発明は,次の発明特定事項を有している。
本願発明特定事項1:
「外側辺部ヨーク片と『ベースの四隅の角部』に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形の水平断面形状」を有し,「外側角部ヨーク片の内側に,外側角部ヨーク片と対向するよう配設された複数の内側ヨーク片」を有するヨークを有すること。
本願発明特定事項2:
「外側角部ヨーク片と内側ヨーク片の間」に第1のマグネットを設けること。
本願発明特定事項3:
「複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状」を有するコイルを,前記平板状の部分が「第1のマグネットと内側ヨーク片の間に位置」するように設けること。

b また,本願の請求項1には,第1のマグネット以外のマグネットに関する記載が存在しない一方,当該請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項4では,外側辺部ヨーク片とコイルの平板状の部分との間に第2のマグネットを設けることが規定されていることから,当該規定がなされていない本願発明において,第2のマグネットが必須の構成ではなく任意の構成であること,すなわち,本願発明が,第1のマグネットのみを設けた態様(以下,「第1態様」という。)と,第1のマグネット及び第2のマグネットを設けた態様(以下,「第2態様」という)のいずれをも包含することは明らかである。
なお,請求項4の記載は,次のとおりである。
「【請求項4】
前記外側辺部ヨーク片の内側であって,前記外側辺部ヨーク片と前記コイルの前記平板状の部分との間には,第2のマグネットがそれぞれ設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載のアクチュエータ機構。」

c 前記bの本願発明特定事項1ないし3に関して,本願明細書等には,次の記載がある。(下線部は,後述する本願記載事項1及び2に特に関連する箇所を示す。)
(a) 「【書類名】明細書
【発明の名称】アクチュエータ機構,カメラモジュールおよびカメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は,アクチュエータ機構,カメラモジュールおよびカメラに関し,さらに詳しくは,比較的小型のデジタルカメラやカメラ付携帯電話などのカメラ付き小型電子機器に用いることができるカメラモジュール用のアクチュエータ機構,該アクチュエータ機構を備えるカメラモジュール,および該カメラモジュールを備えるカメラに関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
従来のカメラモジュールのオートフォーカス用のアクチュエータ機構を図4に示す。このアクチュエータ機構100は,レンズユニット(図示せず)を収容するホルダ103と,ホルダ103に巻回されているコイル101と,矩形状のベース104と,ベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102と,ホルダ103を弾性支持するバネ105とを有している。
【0004】
このアクチュエータ機構100では,ホルダ103に設けられているコイル101へ電流を供給することにより,4つのマグネット102に形成された磁界との反撥力を得,また,バネ105の弾発力を利用することにより,ホルダ103が図4の図面上下方向へ移動しオートフォーカスが実行される。
・・・(中略)・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のアクチュエータ機構100は矩形状のベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102を有しているが,アクチュエータ機構全体の小型化を図ろうとすると各マグネット102の板厚を十分に確保できないという問題点がある。マグネット102の板厚が薄くなるとN極とS極との間の距離が短縮されてしまうために減磁しやすくなるためである。
【0008】
さらに,このアクチュエータ機構100はバネ105を用いることによりマグネット102の小型化による磁界強度の低下を補っているが,アクチュエータ機構全体のさらなる小型化を図った場合,バネ105を設置するスペースを確保できなくなるという問題点がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み,アクチュエータ機構の小型化を図った場合においても,十分なホルダへの駆動力を確保することができるカメラモジュール用のアクチュエータ機構,該アクチュエータ機構を備えるカメラモジュール,および該カメラモジュールを備えるカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るアクチュエータ機構は,レンズユニットを収容可能であって,前記レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能なホルダと,前記ホルダに設けられ,複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状を有し,磁気回路内に位置するコイルと,前記磁気回路の一部を構成するヨークと,前記ホルダを支持する板バネと,前記ヨークと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記ベースの水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,前記ヨークの水平断面形状は,外側辺部ヨーク片と前記ベースの前記角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形であり,前記ヨークは,前記外側角部ヨーク片の内側に,前記外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有し,前記外側角部ヨーク片と前記内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ,前記コイルの前記平板状の部分は,前記第1のマグネットと前記内側ヨーク片との間に位置しており,前記外側角部ヨーク片,前記外側辺部ヨーク片および前記内側ヨーク片は,一体となって形成されていることを特徴とする。
【0011】
・・・(中略)・・・さらに,本発明に係るアクチュエータ機構は,前記外側辺部ヨーク片の内側であって,前記外側辺部ヨーク片と前記コイルの前記平板状の部分との間には,第2のマグネットがそれぞれ設けられていることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアクチュエータ機構において,ベースの水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,ヨークの水平断面形状は,外側辺部ヨーク片とベースの角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形である。また,ヨークは,外側角部ヨーク片の内側に,前記外側角部ヨーク片と対向するよう配設された複数の内側ヨーク片を有する。また,少なくとも4つのマグネットは,それぞれ,外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間に設けられ,コイルは,マグネットと内側ヨーク片との間に位置している。このように,コイルをマグネットと内側ヨーク片との間に形成される強い磁界内に位置させることによって,ホルダへの強い駆動力を得ることができる。さらに,ヨークの水平断面形状を略8角形とするとともに,外側角部ヨーク片をベースの角部に対応させて配置することにより,その外側角部ヨーク片の内側に,内側ヨーク片を配設するためのスペースを確保することができる。このため,アクチュエータ機構の全体形状をベースの形状に合わせて直方体形状とした場合においても,内側ヨーク片を設けるためにスペースを用意する必要がなくなる。その結果,アクチュエータ機構の内部空間に無駄なスペースが生じにくく,アクチュエータ機構全体の小型化を図ることができる。
【0014】
本発明に係るアクチュエータ機構は,さらに,外側辺部ヨーク片の内側に設けられている4つのマグネットを有する。このため,コイルがその全周に渡り,少なくとも8つのマグネットが形成する磁界に近接して配置されるため,ホルダへのより強い駆動力を得ることができる。
・・・(中略)・・・
【図面の簡単な説明】
【0016】
・・・(中略)・・・【図4】従来のアクチュエータ機構100を示す斜視図である。」

(b) 「【書類名】図面
・・・(中略)・・・
【図4】



d 本願明細書の【0003】,【0007】等の記載から,「『レンズユニットを収容するホルダ103と,ホルダ103に巻回されているコイル101と,矩形状のベース104と,ベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102と,ホルダ103を弾性支持するバネ105と,を有するアクチュエータ機構100。』という構成の従来のアクチュエータ機構100は,『小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない』という問題点を有していたこと」(以下,「本願記載事項1」という。)を把握できる。
また,本願明細書の【0009】,【0010】,【0013】等の記載から,「本願発明は,前記aの本願発明特定事項1ないし3を採用することによって,前述した従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決したものであり,当該発明特定事項により,小型化してもホルダへの十分な駆動力が得られること」(以下,「本願記載事項2」という。)を把握できる。

(ウ)a 一方,原々出願の出願当初の明細書等には次の記載がある。(下線部は,後述する原々出願当初記載事項に特に関連する箇所を示す。)
(a) 「【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと,
前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダと,
前記ホルダに設けられているコイルと,
前記コイルに磁界を提供するヨーク及び平板状の8つのマグネットと,
前記ホルダを支持する板バネと,
前記ヨーク及びマグネットと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記コイルの水平断面形状は8角形であり,
前記8つのマグネットは前記コイルの各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記8つのマグネットは4つの第1マグネットと4つの第2マグネットから構成されており,
前記各第1マグネットと前記各第2マグネットは交互に配設されており,
前記ホルダと前記コイルとの間には4箇所に間隙が形成されており,
前記ヨークからは前記4つの間隙において4つのヨーク片が突出しており,
前記4つのヨーク片のそれぞれは,前記第1マグネットに対応する位置であって前記コイルの内側に配設されていることを特徴とする請求項1記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記ヨークの水平断面形状は8角形であり,
前記4つの第2マグネットは前記ヨークの水平断面における各辺部に対応する位置に配設されていることを特徴とする請求項2記載のカメラモジュール。」

(b) 「【書類名】明細書
【発明の名称】カメラモジュール
【技術分野】
【0001】
本発明は,カメラモジュールに関し,さらに詳しくは,比較的小型のデジタルカメラやカメラ付携帯電話などのカメラ付き小型電子機器に用いることができるカメラモジュールに関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
従来のカメラモジュールのオートフォーカス用のアクチュエータ機構を図4に示す。このアクチュエータ機構100は,レンズユニット(図示せず)を収容するホルダ103と,ホルダ103に巻回されているコイル101と,矩形状のベース104と,ベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102と,ホルダ103を弾性支持するバネ105とを有している。
【0004】
このアクチュエータ機構100では,ホルダ103に設けられているコイル101へ電流を供給することにより,4つのマグネット102に形成された磁界との反撥力を得,また,バネ105の弾発力を利用することにより,ホルダ103が図4の図面上下方向へ移動しオートフォーカスが実行される。
・・・(中略)・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のカメラモジュールのアクチュエータ機構100は矩形状のベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102を有しているが,カメラモジュール全体の小型化を図ろうとすると各マグネット102の板厚を十分に確保できないという問題点がある。マグネット102の板厚が薄くなるとN極とS極との間の距離が短縮されてしまうために減磁しやすくなるためである。
【0008】
さらに,このアクチュエータ機構100はバネ105を用いることによりマグネット102の小型化による磁界強度の低下を補っているが,カメラモジュール全体のさらなる小型化を図った場合,バネ105を設置するスペースを確保できなくなるという問題点がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み,カメラモジュールの小型化を図った場合においても,十分なホルダへの駆動力を確保することができるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは,カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと,前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダと,前記ホルダに設けられているコイルと,
前記コイルに磁界を提供するヨーク及び平板状の8つのマグネットと,前記ホルダを支持する板バネと,前記ヨーク及びマグネットと前記板バネとを支持するベースとを有し,前記コイルの水平断面形状は8角形であり,前記8つのマグネットは前記コイルの各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とする。
【0011】
さらに,本発明に係るカメラモジュールは,前記8つのマグネットが4つの第1マグネットと4つの第2マグネットから構成されており,前記各第1マグネットと前記各第2マグネットは交互に配設されており,前記ホルダと前記コイルとの間には4箇所に間隙が形成されており,前記ヨークからは前記4つの間隙において4つのヨーク片が突出しており,前記4つのヨーク片のそれぞれは,前記第1マグネットに対応する位置であって前記コイルの内側に配設されていることが好ましい。
【0012】
さらに,本発明に係るカメラモジュールは,前記ヨークの水平断面形状が8角形であり,前記4つの第2マグネットは前記ヨークの水平断面における各辺部に対応する位置に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明に係るカメラモジュールは,コイルの水平断面形状が8角形であり,計8つの平板状のマグネットがコイルの各辺部分のそれぞれの外側に対向するように配設されている。このため,コイルがその全周に渡り8つの平板状のマグネットが形成する磁界に近接して配置することが可能となり,ホルダへの十分な駆動力を確保することができる。また,コイルの水平断面形状が8角形であるため,カメラモジュールの全体形状を直方体形状とした場合においても,内部空間に無駄なスペースが生じにくく,カメラモジュールの小型化を図ることができる。また,従来のカメラモジュールのように円筒状のコイルを用いた場合,平板状のマグネットと組み合わせると,コイルの円周面に応じてコイルとマグネットとの間の距離が離間してしまうが,このマグネットは平板状のマグネットであるにもかかわらずコイルとの距離を一定に保つことができる。
【0014】
請求項2記載の発明に係るカメラモジュールは,4つの第1マグネットと4つのヨーク片が配設されており,この各ヨーク片は,各第1マグネットに対応する位置であってコイルの内側に配設されている。このため,コイルは第1マグネットとヨーク片との間において形成される強い磁界内に位置するため,ホルダへのより強い駆動力を得ることができる。また,円筒状のホルダと水平断面形状が8角形状であるコイルとの間には,間隙が形成されているため,コイルの内側に4つのヨーク片を立設することができ,カメラモジュールの内部空間を有効に使用することができ,カメラモジュール全体の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項3記載の発明に係るカメラモジュールは,ヨークの水平断面形状が8角形であり,4つの第2マグネットがヨークの水平断面における各辺部に対応する位置に配設されている。従って,カメラモジュール全体形状を直方体形状とした場合においても,コイルが全周に渡って第1及び第2マグネットによって形成される磁界内に配置することができる。このため,カメラモジュールを小型化した場合においてもホルダへの十分な駆動力を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明に係る実施形態のカメラモジュールについて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
本実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1は,カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニット(図示せず)と,前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダ9と,前記ホルダ9に設けられているコイル8と,前記コイル8に磁界を提供するヨーク6及び計8つの平板状の第1及び第2マグネット7a,7bと,前記ホルダ9を支持する上部板バネ5及び下部板バネ11と,前記ヨーク6及び第1及び第2マグネット7a,7bと前記板バネ5,11とを支持するベース12とを有し,前記コイル8の水平断面形状は8角形であり,前記計8つの第1及び第2マグネット7a,7bは前記コイル8の各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とする。
【0018】
最初に図3を参照しつつ本実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1について説明する。なお,撮像素子(図示せず)はベース12の下方に配置されている。
【0019】
カバー2とベース12との間の空間には,レンズユニットを保持するバレル(図示せず)を保持しているホルダ9がレンズユニットの光軸方向へ変位可能に収容されている。
【0020】
ホルダ9の上下の各円筒縁部には,それぞれ上部板バネ5の内環部5bと下部板バネ11の内環部11bが取付けられており,上部板バネ5の外環部5a(図1参照)はヨーク6の上面に取付けられ,下部板バネ11の外環部11a(図2参照)はベース12に取付けられている。そして,上部板バネ5の内環部5bは架橋部5cを介して外環部5aにより弾性支持されており,また,下部板バネ11の内環部11bは架橋部11cを介して外環部11aにより弾性支持されている。
【0021】
上記ヨーク6とマグネット部7によりアクチュエータ機構1の磁気回路が構成されている。そしてこの磁気回路により形成された磁界にコイル8が配置されている。このコイル8はホルダ9の外周に配設されており,コイル8に電流を供給することによりホルダ9をレンズユニットの光軸方向へ変位させることができる。・・・(中略)・・・
【0022】
次に,図1及び図2を参照しつつヨーク6,マグネット部7,及びコイル8について説明する。ヨーク6は,水平断面形状が8角形であり,後述する第1マグネット7aに対応する位置であってコイル8の内側に4つの内側ヨーク片6aが配設されている。また,ヨーク6はその外側に一連に形成されている4つの外側角部ヨーク片6bと4つの外側辺部ヨーク片6cを有している。各外側角部ヨーク片6bはヨーク6の各角部に対応する位置に,また,外側辺部ヨーク片6cはヨーク6の各辺部に対応する位置に配設されている。
【0023】
マグネット部7は,4つの第1マグネット7aと4つの第2マグネット7bの計8つの平板状のマグネットから構成されている。この各第1マグネット7aは各外側角部ヨーク片6bに接着されており,また,各第2マグネット7bは各外側辺部ヨーク片6cが接着されている。従って,各第1マグネット7aと各第2マグネット7bは交互に配設されることになる。また,各第1マグネット7aは,各内側ヨーク片6aに対応する位置において対向するように配設されている。
【0024】
コイル8は水平断面形状が8角形になるように巻回されているムービングコイルである。コイル8は,4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bとを有し,各短辺コイル部分8aはその外側に対向するように配設されている各第1マグネット7aと各内側ヨーク片6aとの間に位置し,各長辺コイル部分8bはその外側に対向するように配設されている各第2マグネット7bに沿うように位置している。この水平断面形状が8角形のコイル8は円筒状のホルダ9により支持されているために,コイル8とホルダ9との間の4箇所において4つの間隙8cが形成されている。この各間隙8cにおいて各内側ヨーク片6aが立設されている。
【0025】
以下,本実施形態のカメラモジュールの作用効果を説明する。
本実施形態のカメラモジュールは,コイル8の水平断面形状が8角形であり,計8つの平板状の第1及び第2マグネット7a,7bがコイル8の各辺部分である短辺コイル部分8aと長辺コイル部分8bのそれぞれの外側に対向するように配設されている。このため,コイル8がその全周に渡り8つの平板状の第1及び第2マグネット7a,7bが形成する磁界に近接して配置することが可能となり,アクチュエータ機構1におけるホルダ9への十分な駆動力を確保することができる。また,コイル8の水平断面形状が8角形であるため,カメラモジュールの全体形状を直方体形状とした場合においても,内部空間に無駄なスペースが生じにくく,カメラモジュールの小型化を図ることができる。また,従来のカメラモジュールのように円筒状のコイルを用いた場合,平板状のマグネットと組み合わせると,コイルの円周面に応じてコイルとマグネットとの間の距離が離間してしまうが,この第1及び第2マグネット7a,7bは平板状のマグネットであるにもかかわらずコイル8との距離を一定に保つことができる。
【0026】
さらに,本実施形態のカメラモジュールは,4つの第1マグネット7aと4つの内側ヨーク片6aが配設されており,この各内側ヨーク片6aは,各第1マグネット7aに対応する位置であってコイル8の内側に配設されている。このため,コイル8の短辺コイル部分8aは第1マグネット7aと内側ヨーク片6aとの間において形成される強い磁界内に位置するため,ホルダ9へのより強い駆動力を得ることができる。また,円筒状のホルダ9と水平断面形状が8角形状であるコイル8との間には,間隙8cが形成されているため,コイル8の内側に4つの内側ヨーク片6aを立設することができ,カメラモジュールの内部空間を有効に使用することができ,カメラモジュール全体の小型化を図ることができる。
【0027】
さらに,本実施形態のカメラモジュールは,ヨーク6の水平断面形状は8角形であり,4つの第2マグネット7bがヨーク6の水平断面における各辺部に対応する位置に配設されている。従って,カメラモジュール全体形状を直方体形状とした場合においても,コイル8が全周に渡って第1及び第2マグネット7a,7bによって形成される磁界内に配置することができる。このため,カメラモジュールを小型化した場合においても,アクチュエータ機構1におけるホルダ9への十分な駆動力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施形態のカメラモジュールに用いられるアクチュエータ機構1を構成するヨーク6,マグネット部7,及びコイル8を示す平面図である。
・・・(中略)・・・
【図4】従来のカメラモジュールに用いられるアクチュエータ機構100を示す斜視図である。」

(c) 「【書類名】図面
【図1】

・・・(中略)・・・
【図4】



b 原々出願の出願当初の請求項1には,カメラモジュールが,「平板状の8つのマグネット」と,「水平断面形状」が「8角形」の「コイル」と,が「コイルの各辺部分の外側に対向するように配設」されている「平板状の8つのマグネット」とを有することが記載され,出願当初のその他の請求項はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されていることから,原々出願の出願当初の各請求項に係る発明は,いずれも,「水平断面形状が8角形のコイルの各辺部分のそれぞれの外側に対向するように,8つの平板状のマグネットを配設した」という発明特定事項(以下,「原々出願発明特定事項」という。)を具備するものである。
そして,原々出願の出願当初の明細書の【0003】,【0007】,【0009】等の記載から,出願当初の各請求項に係る発明が解決しようとする課題の一つが,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という従来のアクチュエータ機構100の問題点であることを把握できる。当該問題点は,前記(イ)dの本願記載事項1の問題点と同一である。
また,原々出願の出願当初の明細書の【0010】,【0013】等の記載から,出願当初の各請求項に係る発明が,前記原々出願発明特定事項を採用することによって,前記課題を解決したものであること,及び,当該原々出願発明特定事項による課題解決の作用機序が,コイルの全周に渡り8つの平板状のマグネットが形成する磁界に近接して配置できるため,小型化してもホルダへの十分な駆動力を確保できるというものであることが理解される。
さらに,原々出願の出願当初の明細書等には,実施形態として,4つの第1マグネット7aと4つの第2マグネット7bからなる計8つの平板状のマグネットと,4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bからなる水平断面形状が8角形のコイル8と,4つの内側ヨーク片6aを有する水平断面形状が8角形のヨーク6とを有し,内側ヨーク片6aが各短辺コイル部分8aの内側にそれぞれ配設され,第1マグネット7aが各内側ヨーク片6aに対向するように配設されたもの,すなわち,原々出願発明特定事項に相当する構成を具備するもののみが記載され(【0016】ないし【0024】,出願当初の図1等),原々出願発明特定事項以外の構成によって,従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決したものについては,記載も示唆もされていない。

c そして,前記bで述べた課題解決の作用機序は,原々出願発明特定事項の「平板状の8つのマグネット」が,8角形のコイルの全周を近接して囲むことにより,コイルに強力な磁力を作用させられるというものであるところ,これら8つの平板状のマグネットのいずれを欠いても,8角形のコイルの全周を近接して囲むことができなくなるのだから,原々出願の出願当初の明細書に記載された課題解決の作用機序が得られなくなることは明らかである。
そうすると,原々出願の出願当初の明細書等の記載からは,8つの平板状のマグネットのいずれもが,課題解決のために欠くことのできない構成としか理解できないのであって,当該8つの平板状のマグネットの一部である第2のマグネットを削除したものにおいても,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できることを,原々出願の出願当初の明細書等の記載から読み取ることはできないというべきである。

d なお,原々出願の出願当初の請求項2には,本願発明特定事項1ないし3に類似する発明特定事項が記載され,出願当初の明細書の【0014】及び【0026】には,当該発明特定事項を採用することによって,ホルダへのより強い駆動力を得ることができることが記載されているが,当該記載は,あくまでも,4つの第1マグネットと4つの第2マグネットからなる計8つの平板状のマグネットを設けた構成を前提として,各第1マグネットに対応する位置であってコイルの内側にそれぞれヨーク片を設けると,当該ヨーク片を設けないものに比べて,より強い駆動力が得られることを説明するに止まるのであって,第2マグネットを省略できること,及び第2マグネットを省略しても従来のアクチュエータ機構100の問題点が解決できることを説明するものではない。

(エ) 前記(イ)a及びdで述べたとおり,本願明細書等には,「外側辺部ヨーク片とベースの四隅の角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形の水平断面形状を有し,外側角部ヨーク片の内側に,外側角部ヨーク片と対向するよう配設された複数の内側ヨーク片を有するヨークを有する」という本願発明特定事項1と,「外側角部ヨーク片と内側ヨーク片の間に第1のマグネットを設ける」という本願発明特定事項2と,「複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状を有するコイルを,前記平板状の部分が第1のマグネットと内側ヨーク片の間に位置するように設ける」という本願発明特定事項3とを採用することによって,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できること(本願記載事項2)が記載されており,前記(イ)bで述べたとおり,これら発明特定事項では,第2のマグネットは必須の構成ではなく任意の構成であるところ,前記(ウ)cで述べたとおり,原々出願の出願当初の明細書等からは,第2のマグネット(原々出願の出願当初の明細書等では「第2マグネット」と表現されている。)を削除したものにおいても,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できることを読み取ることはできないから,第2のマグネットを必須の構成としない本願発明特定事項1ないし3を採用することによって,従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できるという本願発明の技術思想が,原々出願の出願当初の明細書等に記載されていたと認めることはできない。
したがって,本願は,第3条件を満足しないから,本願の出願日は,原々出願の出願日には遡及しない。

イ 請求人の主張について
(ア) 請求人は,審判請求書において,「審査官殿は,請求項1・・・(中略)・・・が『マグネットの設置が任意の場所である』構成を包含していると認定しているが,マグネットは,請求項1であれば,『外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間』であって,『コイルの平板状の部分が,第1のマグネットと内側ヨーク片との間に位置する』ように設置されていることは明らか・・・(中略)・・・である。したがって,審査官殿のマグネットの設置場所に関する認定は,誤認に基づくものである。」などと主張する。
そこで,原査定の備考欄をみてみると,
「請求項1には『外側角部ヨーク片と前記内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ』と記載されており,『マグネット』は,『略正方形』である『ベース』の『角部に対応する外側角部ヨーク片』と,『内側ヨーク片』と,の間に設けられた『第1のマグネット』の数である4つ以上の任意の数を採ることが特定されている。・・・(中略)・・・さらに,請求項1においては『マグネット』の設置につき『外側角部ヨーク片』と『内側ヨーク片との間に設けられ』ると記載されるだけであり,それ以外の設置場所に関しては任意である特定振りである。
・・・(中略)・・・
そうすると,請求項1・・・(中略)・・・に係る発明は,マグネット・・・(中略)・・・は4つ以上の任意の数(8個でも16個でも,そしてそれら以上の何でもよい数)にて構成され,それらの設置は外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間以外・・・(中略)・・・は任意の場所になされてもよい構成からなるアクチュエータ機構が特定されたものであると考えられる。・・・(中略)・・・
しかしながら,この出願の原々出願の当初特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,平板状のマグネットを8つ有していること,そして8つのマグネットがコイルの各辺部分の外側に対向するように配設されていることを発明特定事項の一つとしており,同請求項2及び3は当該請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであるから,原々出願当初特許請求の範囲には,平板状のマグネット・・・(中略)・・・の数が8以外でもよいこと,そしてそれらの設置場所が任意の場所でよいことは記載されていない。」
との記載がある。
当該記載に正確とはいえない表現は存在するものの,当該記載が,本願発明において,「外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間」に設けられる「第1のマグネット」以外のマグネットの存否及びその設置場所が任意であること,及び,原々出願の出願当初の特許請求の範囲に,「第1のマグネット」以外のマグネットの存否及びその設置場所が任意であることが記載されていないことを指摘していることは明らかである。
しかるに,本願発明において,「第1のマグネット」以外のマグネット,すなわち,「第2のマグネット」の存否が任意であること,及び,原々出願の出願当初の明細書等から,第2のマグネットを削除したものにおいても,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できることを読み取ることはできないことは,前記ア(ウ)cで述べたとおりであって,原査定の判断は,その趣旨において是認できるから,当該請求人の主張は採用できない。

(イ) また,請求人は,審判請求書において,「請求項1・・・(中略)・・・のマグネットに関する上記記載は,本出願の原々出願の当初明細書の以下の記載に基づくものである。
[0022]・・・。ヨーク6は,水平断面形状が8角形であり,後述する第1マグネット7aに対応する位置であってコイル8の内側に4つの内側ヨーク片6aが配設されている。・・・
[0023]・・・。この各第1マグネット7aは各外側角部ヨーク片6bに接着されており,・・・。また,各第1マグネット7aは,各内側ヨーク片6aに対応する位置において対向するように配設されている。
[0024]・・・,各短辺コイル部分8aはその外側に対向するように配設されている各第1マグネット7aと各内側ヨーク片6aとの間に位置し,・・・
・・・(中略)・・・このように,本出願の請求項1・・・(中略)・・・のマグネットに関する記載および特徴が原々出願または原出願の当初明細書等の記載に完全にサポートされている以上,特許法第44条第1項の分割要件は満たされていると解されるべきであって,審査官殿が行った明細書中に記載の特定の実施例と,請求項の記載から特定される発明との比較は,特許法第44条第1項の分割要件とは何ら関わりがないものである。」などとも主張する。
しかしながら,当該請求人の主張にある,原々出願の出願当初の明細書等におけるヨーク6,第1マグネット7a及び短辺コイル部分8aに関する構成の説明が,あくまでも,4つの第1マグネットと4つの第2マグネットからなる計8つの平板状のマグネットを設けた構成を前提として,当該構成を採用すると,当該構成を採用しないものと比べて,より強い駆動力が得られることを説明するに止まること,及び,第2のマグネットが存在しなくても,本願発明特定事項1ないし3を採用することによって,従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できるという本願発明の技術思想が,原々出願の出願当初の明細書等に記載されていたと認められないことは,前記(2)ア(ウ)d及び(エ)で述べたとおりである。
したがって,当該請求人の主張は採用できない。

(ウ) さらに,請求人は,審判請求書において,「マグネットの数が8つ以外であり,マグネットの形状が平板状ではないような様態は,背景技術として本出願の原々出願の図4および明細書段落[0003]?[0005]に記載されている。背景技術の欄の記載も明細書の一部である以上,背景技術の欄の記載より特定される技術的特徴もまた特許出願に含有される発明の一部である。このような点からも,審査官殿が行った明細書の図1?3に記載の特定の実施例と,請求項の記載から特定される発明との比較は不適切なものであり,本出願は,特許法44条1項の分割要件を満たしている。」などとも主張する。
しかしながら,原々出願の出願当初の明細書の【0003】ないし【0005】に記載された従来のアクチュエータ機構100は,「小型化を図ろうとすると,マグネットの板厚が薄くなり減磁するため,ホルダへの駆動力が確保できない」という原々出願の出願当初の各請求項に係る発明が解決しようとする問題点を有するものであって,当該従来のアクチュエータ機構100に関する記載中に,第2のマグネットが存在しなくても,本願発明特定事項1ないし3を採用することによって,従来のアクチュエータ機構100の問題点を解決できるという本願発明の技術思想は開示されてはいない。
したがって,当該請求人の主張も採用できない。

(3)本願の出願日について
前記(2)のとおり,本願の出願日は,原々出願の出願日には遡及しないから,少なくとも原出願の現実の出願日である平成24年2月3日より前に遡ることはない。

5 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は,原々出願の公開公報であって,平成20年8月21日に公開されたものであるところ,前記4(3)のとおり,本願の出願日は少なくとも平成24年2月3日より前に遡ることはないから,引用文献1は本願の出願より前に頒布された刊行物に該当する。
当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明1の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと,
前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダと,
前記ホルダに設けられているコイルと,
前記コイルに磁界を提供するヨーク及び平板状の8つのマグネットと,
前記ホルダを支持する板バネと,
前記ヨーク及びマグネットと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記コイルの水平断面形状は8角形であり,
前記8つのマグネットは前記コイルの各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記8つのマグネットは4つの第1マグネットと4つの第2マグネットから構成されており,
前記各第1マグネットと前記各第2マグネットは交互に配設されており,
前記ホルダと前記コイルとの間には4箇所に間隙が形成されており,
前記ヨークからは前記4つの間隙において4つのヨーク片が突出しており,
前記4つのヨーク片のそれぞれは,前記第1マグネットに対応する位置であって前記コイルの内側に配設されていることを特徴とする請求項1記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記ヨークの水平断面形状は8角形であり,
前記4つの第2マグネットは前記ヨークの水平断面における各辺部に対応する位置に配設されていることを特徴とする請求項2記載のカメラモジュール。」

(イ) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,カメラモジュールに関し,さらに詳しくは,比較的小型のデジタルカメラやカメラ付携帯電話などのカメラ付き小型電子機器に用いることができるカメラモジュールに関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0003】
従来のカメラモジュールのオートフォーカス用のアクチュエータ機構を図4に示す。このアクチュエータ機構100は,レンズユニット(図示せず)を収容するホルダ103と,ホルダ103に巻回されているコイル101と,矩形状のベース104と,ベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102と,ホルダ103を弾性支持するバネ105とを有している。
【0004】
このアクチュエータ機構100では,ホルダ103に設けられているコイル101へ電流を供給することにより,4つのマグネット102に形成された磁界との反撥力を得,また,バネ105の弾発力を利用することにより,ホルダ103が図4の図面上下方向へ移動しオートフォーカスが実行される。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のカメラモジュールのアクチュエータ機構100は矩形状のベース104の四隅に配設されている4つのマグネット102を有しているが,カメラモジュール全体の小型化を図ろうとすると各マグネット102の板厚を十分に確保できないという問題点がある。マグネット102の板厚が薄くなるとN極とS極との間の距離が短縮されてしまうために減磁しやすくなるためである。
【0008】
さらに,このアクチュエータ機構100はバネ105を用いることによりマグネット102の小型化による磁界強度の低下を補っているが,カメラモジュール全体のさらなる小型化を図った場合,バネ105を設置するスペースを確保できなくなるという問題点がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み,カメラモジュールの小型化を図った場合においても,十分なホルダへの駆動力を確保することができるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは,カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと,前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダと,前記ホルダに設けられているコイルと,
前記コイルに磁界を提供するヨーク及び平板状の8つのマグネットと,前記ホルダを支持する板バネと,前記ヨーク及びマグネットと前記板バネとを支持するベースとを有し,前記コイルの水平断面形状は8角形であり,前記8つのマグネットは前記コイルの各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とする。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明に係るカメラモジュールは,コイルの水平断面形状が8角形であり,計8つの平板状のマグネットがコイルの各辺部分のそれぞれの外側に対向するように配設されている。このため,コイルがその全周に渡り8つの平板状のマグネットが形成する磁界に近接して配置することが可能となり,ホルダへの十分な駆動力を確保することができる。また,コイルの水平断面形状が8角形であるため,カメラモジュールの全体形状を直方体形状とした場合においても,内部空間に無駄なスペースが生じにくく,カメラモジュールの小型化を図ることができる。また,従来のカメラモジュールのように円筒状のコイルを用いた場合,平板状のマグネットと組み合わせると,コイルの円周面に応じてコイルとマグネットとの間の距離が離間してしまうが,このマグネットは平板状のマグネットであるにもかかわらずコイルとの距離を一定に保つことができる。
【0014】
請求項2記載の発明に係るカメラモジュールは,4つの第1マグネットと4つのヨーク片が配設されており,この各ヨーク片は,各第1マグネットに対応する位置であってコイルの内側に配設されている。このため,コイルは第1マグネットとヨーク片との間において形成される強い磁界内に位置するため,ホルダへのより強い駆動力を得ることができる。また,円筒状のホルダと水平断面形状が8角形状であるコイルとの間には,間隙が形成されているため,コイルの内側に4つのヨーク片を立設することができ,カメラモジュールの内部空間を有効に使用することができ,カメラモジュール全体の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項3記載の発明に係るカメラモジュールは,ヨークの水平断面形状が8角形であり,4つの第2マグネットがヨークの水平断面における各辺部に対応する位置に配設されている。従って,カメラモジュール全体形状を直方体形状とした場合においても,コイルが全周に渡って第1及び第2マグネットによって形成される磁界内に配置することができる。このため,カメラモジュールを小型化した場合においてもホルダへの十分な駆動力を確保することができる。」

(ウ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明に係る実施形態のカメラモジュールについて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
本実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1は,カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニット(図示せず)と,前記レンズユニットを収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダ9と,前記ホルダ9に設けられているコイル8と,前記コイル8に磁界を提供するヨーク6及び計8つの平板状の第1及び第2マグネット7a,7bと,前記ホルダ9を支持する上部板バネ5及び下部板バネ11と,前記ヨーク6及び第1及び第2マグネット7a,7bと前記板バネ5,11とを支持するベース12とを有し,前記コイル8の水平断面形状は8角形であり,前記計8つの第1及び第2マグネット7a,7bは前記コイル8の各辺部分の外側に対向するように配設されていることを特徴とする。
【0018】
最初に図3を参照しつつ本実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1について説明する。なお,撮像素子(図示せず)はベース12の下方に配置されている。
【0019】
カバー2とベース12との間の空間には,レンズユニットを保持するバレル(図示せず)を保持しているホルダ9がレンズユニットの光軸方向へ変位可能に収容されている。
【0020】
ホルダ9の上下の各円筒縁部には,それぞれ上部板バネ5の内環部5bと下部板バネ11の内環部11bが取付けられており,上部板バネ5の外環部5a(図1参照)はヨーク6の上面に取付けられ,下部板バネ11の外環部11a(図2参照)はベース12に取付けられている。そして,上部板バネ5の内環部5bは架橋部5cを介して外環部5aにより弾性支持されており,また,下部板バネ11の内環部11bは架橋部11cを介して外環部11aにより弾性支持されている。
【0021】
上記ヨーク6とマグネット部7によりアクチュエータ機構1の磁気回路が構成されている。そしてこの磁気回路により形成された磁界にコイル8が配置されている。このコイル8はホルダ9の外周に配設されており,コイル8に電流を供給することによりホルダ9をレンズユニットの光軸方向へ変位させることができる。なお,符号3により示す部材は下部板バネ11の外環部5aをベース12に支持するために装着される第2プレートであり,符号4により示す部材はコイル8に電流を供給するためのフレキシブルプリント基板であり,符号10により示す部材は下部板バネ11とヨーク6の底面との間に装着される第1プレートである。
【0022】
次に,図1及び図2を参照しつつヨーク6,マグネット部7,及びコイル8について説明する。ヨーク6は,水平断面形状が8角形であり,後述する第1マグネット7aに対応する位置であってコイル8の内側に4つの内側ヨーク片6aが配設されている。また,ヨーク6はその外側に一連に形成されている4つの外側角部ヨーク片6bと4つの外側辺部ヨーク片6cを有している。各外側角部ヨーク片6bはヨーク6の各角部に対応する位置に,また,外側辺部ヨーク片6cはヨーク6の各辺部に対応する位置に配設されている。
【0023】
マグネット部7は,4つの第1マグネット7aと4つの第2マグネット7bの計8つの平板状のマグネットから構成されている。この各第1マグネット7aは各外側角部ヨーク片6bに接着されており,また,各第2マグネット7bは各外側辺部ヨーク片6cが接着されている。従って,各第1マグネット7aと各第2マグネット7bは交互に配設されることになる。また,各第1マグネット7aは,各内側ヨーク片6aに対応する位置において対向するように配設されている。
【0024】
コイル8は水平断面形状が8角形になるように巻回されているムービングコイルである。コイル8は,4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bとを有し,各短辺コイル部分8aはその外側に対向するように配設されている各第1マグネット7aと各内側ヨーク片6aとの間に位置し,各長辺コイル部分8bはその外側に対向するように配設されている各第2マグネット7bに沿うように位置している。この水平断面形状が8角形のコイル8は円筒状のホルダ9により支持されているために,コイル8とホルダ9との間の4箇所において4つの間隙8cが形成されている。この各間隙8cにおいて各内側ヨーク片6aが立設されている。」

(エ) 「【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施形態のカメラモジュールに用いられるアクチュエータ機構1を構成するヨーク6,マグネット部7,及びコイル8を示す平面図である。
【図2】図1に示すヨーク6の斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態のカメラモジュールに用いられるアクチュエータ機構1の分解斜視図である。
【図4】従来のカメラモジュールに用いられるアクチュエータ機構100を示す斜視図である。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



イ 引用文献1に記載された発明
図1から,各第1マグネット7aが,外側角部ヨーク片6bと内側ヨーク片6aの間に設けられていることを看取でき,図2から,外側角部ヨーク片6b,外側辺部ヨーク片6c及び内側ヨーク片6aが一体となってヨーク6を形成していることを看取でき,図3から,ベース12の水平断面形状が四隅に角部を有する略正方形であること,及び,外側角部ヨーク片6cが当該ベース12の角部に対応していることを看取できるから,前記ア(ア)ないし(エ)の記載から,引用文献1に次の発明が記載されていると認められる。(なお,図1では,【0024】等に記載された「短辺コイル部分8a」に対して「8b」という符号が付され,同「長辺コイル部分8b」に対して「8a」という符号が付されており,引用文献1に記載された符号に混乱が見受けられるが,【0024】等の記載どおり,それぞれを「短辺コイル部分8a」及び「長辺コイル部分8b」と表現した。)

「カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと,
前記レンズユニットを収容すると共に前記カメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能な円筒状のホルダ9と,
前記ホルダ9に設けられているコイル8と,
前記コイル8に磁界を提供するヨーク6及び4つの第1マグネット7aと4つの第2マグネット7bの計8つの平板状のマグネットから構成されているマグネット部7と,
前記ホルダ9を支持する上部板バネ5及び下部板バネ11と,
前記ヨーク6及び第1,第2マグネット7a,7bと前記上部板バネ5及び下部板バネ11とを支持するベース12と,
を有するアクチュエータ機構1であって,
前記ヨーク6と前記マグネット部7により磁気回路が構成され,当該磁気回路により形成された磁界にコイル8が配置されており,
前記ベース12の水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,
前記ヨーク6は,水平断面形状が8角形であり,前記第1マグネット7aに対応する位置であって前記コイル8の内側に4つの内側ヨーク片6aが配設され,その外側に一連に形成されている4つの外側角部ヨーク片6bと4つの外側辺部ヨーク片6cを有し,各外側角部ヨーク片6bはヨーク6の各角部に対応する位置であって前記ベース12の角部に対応する位置に配設され,各外側辺部ヨーク片6cはヨーク6の各辺部に対応する位置に配設されており,
前記各第1マグネット7aは,前記各内側ヨーク片6aに対応する位置において対向するように,前記外側角部ヨーク片6bと前記内側ヨーク片6aの間に配設されており,
前記コイル8は,水平断面形状が8角形になるように,4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bとを有しており,前記短辺コイル部分8aは,それぞれ,その外側に対向するように配設されている前記第1マグネット7aと前記内側ヨーク片6aとの間に位置しており,前記長辺コイル部分8bは,それぞれ,その外側に対向するように配設されている前記第2マグネット7bに沿うように位置しており,
前記外側角部ヨーク片6b,前記外側辺部ヨーク片6c及び前記内側ヨーク片6aが一体となってヨーク6を形成している,
アクチュエータ機構1。」(以下,「引用発明1」という。)

(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2は,平成20年2月7日に公開された公開公報であるところ,前記4(3)のとおり,本願の出願日は少なくとも平成24年2月3日より前に遡ることはないから,引用文献2は本願の出願より前に頒布された刊行物に該当する。
当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明2の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,小型カメラに用いられるオートフォーカス用のレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレンズ駆動装置において,特許文献1には,図9に示すように,ヨーク101が内周壁(内壁)109と外周壁105と連結壁106とから構成されおり,内周壁109と外周壁105とを円筒形状に形成してレンズ光軸方向の断面がコ字状を成すことが開示されている。
【0003】
外周壁105の内周面にはその周方向全体に亘って円筒形状に配置したマグネット107が設けてあり,コイル111は円筒形状を成し,その全周に亘って内周壁109とマグネット107との間に配置している。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,この種のレンズ駆動装置においては,更なる小型化の要請が高い。
【0006】
これに対して,ヨーク101の内周壁109と外周壁105との間の間隔は周方向全体に亘って同じ寸法としてあるので,内周壁109と外周壁105との間の間隔を小さくすることが考えられるが,内周壁109と外周壁105との間の間隔を小さくすると,マグネット107の厚みが薄くなる為,マグネット107とヨーク101とで形成する磁界強度を十分に取れなくなるおそれがある。
【0007】
そこで,本発明は,マグネットとヨークとで形成する磁界をコイルに有効に作用でき且つ小型化を図ることができるレンズ駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は,環状のヨークと,レンズを保持しヨークの内周側に配置された円筒状のレンズ支持体と,レンズ支持体の外周に固定した環状のコイルと,複数のマグネットと,スプリングと,筐体とを備え,ヨークは,外周壁と,外周壁の内周側に位置する内壁と,外周壁と内壁とを間隔をあけて連結する連結壁とを有し,外周壁は角筒状を成しており,マグネットは少なくともヨークの外周壁の角部に配置してあると共に隣合うマグネット間は間隔を設けてあり,コイルはヨークの外周壁に沿って配置し且つ一部が内壁とマグネットとの間に位置しており,スプリングは筐体とレンズ支持体との間に設けて筐体に対してレンズ支持体を光軸方向に移動自在に支持しており,コイルに通電して生じる電磁力によりレンズ支持体をレンズの光軸方向に移動するレンズ駆動装置であって,コイルはマグネットに対面する部分の側面は円弧面を成し,マグネットに対面しない部分の側面は平面を成していることを特徴とする。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば,コイルはマグネットに対面する部分の側面は円弧面とし,マグネットに対面しない部分(マグネットを配置していない部分)では外周壁の側壁に対面すると共に外周壁の側面に沿う平面としているので,ヨークにおいてマグネットを配置していない外周壁の側壁部では,少なくともマグネットの厚み分の寸法を少なくできるから,径方向におけるレンズ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0012】
隣り合うマグネットは間隔をあけており,マグネットのない部分ではコイルに磁界を作用することができないが,マグネットが配置されている部分はヨーク外周壁の角部になっているので,マグネットの配置スペースを広く取ることができ,マグネットの厚みを厚くできると共にマグネットが配置されている部分はヨークの外周壁と連結壁と内壁とで囲むことができるので,コイルに作用する磁気強度を高めることができ,コイルには部分的に磁界が作用するが強い磁界を作用できるので,全体としてはレンズ支持体を駆動する為に必要な推進力を得ることができる。」

(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に,添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが,まず,図1?図5を参照して本発明の第1実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施の形態にかかるレンズ駆動装置を前側から見た分解斜視図であり,図2は図1に示すコイル,マグネット及びヨークを抜き出して示すと共にこれらを後側から見た分解斜視図であり,図3はヨーク内におけるコイル及びマグネットの配置状態を示す平面図であり,図4は図5のA-A断面図であり,図5はレンズ駆動装置の外観を示す斜視図である。
【0016】
本実施の形態にかかるレンズ駆動装置1は,携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。このレンズ駆動装置1は,環状のヨーク3と,レンズ支持体7と,前側スプリング9と,後側スプリング11と,ヨーク3の後側に配置されるベース5(筐体)と,ヨークの前側に配置されるフレーム(筐体)6とを備えており,レンズ支持体7には,外周にコイル15が固定されている。ヨーク3と後側スプリング11との間には絶縁体(スペーサ)17が配置されている。
【0017】
ヨーク3は前側から見て外周が平面視四角形であり,内周が平面視円形になっており,外周壁3aと,内壁3bと,外周壁3aと内壁3bとを間隔をあけて連結する連結壁3cとからなり,外周壁3aと内壁3bと連結壁3cとで断面がコ字形状を成している。
【0018】
尚,外周壁3aの各角部14は面取りされている。内壁3bは外周壁3aの角部14に対応する位置に設けてあり,各内壁3bは,レンズ支持体7の外周面に沿って円弧状を成している。
【0019】
隣り合う内壁3b,3b間には,後側端から前方に向けて凹んだ空間部12が形成されている。空間部12は周方向に間隔をあけて配置してあり,本実施の形態では,平面視四角形状の外周壁3aにおいて,隣り合う角部14間に位置する側壁部16に対応する位置に設けてある。
【0020】
ヨーク3の各角部14において,外周壁3aの内周面にはマグネット13が固定されている。マグネット13は,角部14のみに設けてあり,隣り合う内壁3b,3b間に形成された空間部12に対応する位置にはない。
【0021】
マグネット13は内周側面13aが円弧面を成し,外周側面13bはヨーク外周壁3aの角部14に一致する形状を成して,ヨーク外周壁3aの角部14に納まるようになっている。
【0022】
レンズ支持体7は円筒形状であり,その内周部にレンズ8(図4参照)を保持し,ヨーク3の内周側を光軸方向に移動自在に設けられている。レンズ支持体7の外周面にはコイル15が装着されており,コイル15はレンズ支持体7に一体に設けたコイル固定部19に接着固定されている。コイル固定部19はレンズ支持体7の外周面の周方向に間隔をあけて配置してあり,ヨーク3の内壁3b,3b間に設けた空間部12の位置にはなく,ヨーク3の内壁部3bに対応する位置にのみ設けてある。
【0023】
コイル15は,レンズ支持体7と共にヨーク3内をレンズの光軸方向(前後方向)に移動するようになっている。
【0024】
コイル15は環状を成し,マグネット13が配置してある角部14においてマグネット13に対面して位置する部分15aは,マグネット13の内周側面13aに沿う円弧面を成している。ヨーク3の側壁部16(角部14,14間)に対応する部分15bは側壁部16と平行な平面を成している。
【0025】
コイル15は,円弧部15aのみがコイル固定部19に接着固定してあり,コイル15の平面部15bは固定していない。また,コイル15の平面部は,空間部12内に位置してレンズ8の光軸方向に移動自在になっている。(図1及び図4参照)。
【0026】
図1に示すように,ベース5はヨーク3の外周に位置する外壁5aと,ヨーク3の後側(レンズの光軸方向の後側)に位置する基底部5bとを有しており,ベース5の基底部5bには後側スプリング11の外周側部11bが載置される。
【0027】
前側スプリング9は環状の板ばねであり,内周側部9aと外周側部9bとが設けてあり,内周側部9aはレンズ支持体7に取り付けてあり,外周側部9bはヨーク3とフレーム6との間に挟持して固定されている。内周側部9aと外周側部9bとは弾性変形可能な腕部9cにより連結してある。
【0028】
後側スプリング11は全体として環状の板ばねであるが,本実施の形態では,左右に分割した一方側部30と他方側部32とから構成されている。後側スプリング11の各外周側部11b,11bは,絶縁体(スペーサ)17を介してベース5とヨーク3との間に挟持されており,絶縁体17は後側スプリング11とヨーク3との間の電気的絶縁を図っている。各内周側部11a,11aは,レンズ支持体7の後端に取り付けてある。後側スプリング11の各内周側部11aと外周側部11bとは弾性変形可能な腕部11cにより連結してある。
【0029】
本実施の形態では,後側スプリング11を構成する一方側部30には端子33が形成されており,他方側部32には端子35が形成されて各端子33,35が電源供給端子に接続されるようになっている。尚,一方側部30と他方側部32とは,各々コイル15にハンダ付け等により電気的に接続されており,後側スプリング11からコイル15に通電するようになっている。
【0030】
これらの前側スプリング9と後側スプリング11とは,組立て前の自然状態(フレーム6を組付ける前の状態)において平坦であるが(図1参照),少なくとも前側スプリング9は,組付け後には図4に示すように,内周側部9aが外周側部9bよりも前方に位置するように弾性変形した状態で取り付けてある。これにより,ばねの復帰力(付勢力)により内周側部9aがレンズ支持体7をベース5側に向けた付勢力で常時付勢するようにしている。
【0031】
フレーム6はレンズ支持体7の前側に配置されており,ヨーク3との間に前側スプリング9の外周側部9bを挟んで保持すると共に,ベース5に嵌合固定してベース5とフレーム6とで筐体2(図4参照)を形成している。
【0032】
コイル15は,コイル線を巻いて円筒形状に製造した後,目的形状にしてある成形治具に取り付けて加熱加圧することによって,円弧部15aと平面部15bとを形成するか,あるいは,目的形状(円弧状と平面部とを有する形状)の巻枠にコイル線を巻いてコイル15を製造する。
【0033】
次に,本発明にかかるレンズ駆動装置1の作用及び効果について説明する。
【0034】
本実施の形態にかかるレンズ駆動装置1によれば,端子33,35からコイル15に通電すると,コイル15に作用する電磁力で,レンズ支持体7は前側スプリング9及び後側スプリング11の付勢力に抗して移動し,スプリング9,11との力の釣り合う位置で停止する。
【0035】
隣り合うマグネット13,13は間隔をあけてヨーク3内に配置しており,マグネット13のない部分ではコイル15に磁界を作用することができないが,マグネット13が配置されている部分は,外周壁3aの角部14であるから,コイル15の円弧部15aと外周壁3aの角部14とで囲まれるスペースを広く取ることができるので,角部14におけるマグネット13の厚みを厚くしてコイル15に作用する磁気強度を高めることができる。したがって,マグネット13はヨーク3に部分的に配置しても,コイル15の全体としてはレンズ支持体7を駆動する十分な推進力を得ることができる。
【0036】
特に,マグネット13に対面する位置にあるコイル15の円弧部15aは,少なくともその一部が,常にヨークの内壁3bと外周壁3aとマグネット13とで形成される磁界内を移動でき,マグネット13とヨーク3とで形成する強い磁界強度を常時コイル15の円弧部15aに作用させることができ,高い推進力を得ることができる。
【0037】
コイル15は,ヨーク3においてマグネット13を配置してある角部14では円弧部15aとし,マグネット13を配置していない側壁部16では平面部15bとしているので,ヨーク3の側壁部16と内壁3bとの間は少なくともマグネット13の厚み分の寸法を少なくでき,レンズ駆動装置1の径方向の寸法を小さくすることができるから,レンズ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0038】
ヨーク3の空間部12にはコイル15の平面部15bが位置し,レンズ支持体7の移動に伴ってコイル15の平面部15bが空間部12内を移動するので,ヨーク3の外周壁3aと内周壁3bとの間をコイルの平面部の移動空間とする場合に比較して,径方向の寸法を更に小さくすることができる。
【0039】
レンズ支持体7のコイル固定部19は,周方向に間隔をあけて設けており,コイル15の円弧部15aのみを固定し,空間部12内に位置する平面部15bにはコイル固定部19がないので,コイル固定部19の突設寸法分,径方向の寸法を更に小さくすることができる。」

(ウ) 「【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施の形態にかかるレンズ駆動装置を前側から見た分解斜視図である。
【図2】図1に示すコイル,マグネット及びヨークを抜き出して示し,これらを後側から見た分解斜視図である。
【図3】第1実施の形態のヨーク内におけるコイル及びマグネットの配置状態を示す平面図である。
【図4】図5のA-A断面図である。
【図5】第1実施の形態にかかるレンズ駆動装置の外観を示す斜視図である。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】



イ 引用文献2に記載された発明
図1から,ベース5の基底部5bが光軸方向前側からみて平面視四角形状であること,及び,当該四角形状の各角部がヨーク3の各角部14に対応するように配置されていることを看取でき,図3から,コイル15の部分15aが,マグネット13とヨーク3の内壁3bの間に配置されていることを看取できるから,前記ア(ア)ないし(ウ)の記載から,引用文献2に次の発明が記載されていると認められる。(なお,【0026】の「ヨーク3の後側(レンズの光軸方向の後側)」という記載から,引用文献2に記載された「前側」及び「後側」という文言が,それぞれ「光軸方向の前側」及び「光軸方向の後側」を指していることが明らかであるから,理解を容易にするため,「前側」及び「後側」をそれぞれ「光軸方向前側」及び「光軸方向後側」と表現した。)

「ヨーク3と,
レンズ8を保持し,光軸方向に移動自在に設けられたレンズ支持体7と,
前記レンズ支持体7の外周に固定されたコイル15と,
前側スプリング9及び後側スプリング11と,
前記ヨーク3に固定されたマグネット13と,
前記ヨーク3の光軸方向後側に配置されるベース5と,
前記ヨーク3の光軸方向前側に配置されるフレーム6と,
を備えたレンズ駆動装置1であって,
前記ヨーク3は,光軸方向前側からみて平面視四角形状の外周壁3aと,内壁3bと,前記外周壁3aと前記内壁3bとを間隔をあけて連結する連結壁3cとからなり,前記外周壁3aと前記内壁3bと前記連結壁3cとで断面がコ字形状を成し,
前記外周壁3aの各角部14は面取りされ,隣り合う角部14間が側壁部16となっており,
前記内壁3bは,前記角部14に対応する位置に設けられ,前記レンズ支持体7の外周面に沿って円弧状を成し,隣り合う内壁3b間であって前記側壁部16に対応する位置には,光軸方向後側端から前方に向けて凹んだ空間部12が形成され,
前記マグネット13は,前記ヨーク3の各角部14の内周面に固定され,前記空間部12に対応する位置にはなく,
前記コイル15は,前記角部14において前記マグネット13に対面して位置する部分15aが,前記マグネット13の内周側面13aに沿う円弧面を成すとともに,前記マグネット13と前記内壁3bの間に配置され,前記ヨーク3の前記側壁部16に対応する部分15bは前記側壁部16と平行な平面を成しており,
前記前側スプリング9は環状の板ばねであり,前記レンズ支持体7に取り付けられた内周側部9aと,前記ヨーク3と前記フレーム6との間に挟持して固定された外周側部9bと,前記内周側部9aと前記外周側部9bとを連結する弾性変形可能な腕部9cとを有し,
前記後側スプリング11は全体として環状の板ばねであり,前記ベース5と前記ヨーク3との間に挟持された外周側部11bと,前記レンズ支持体7の後端に取り付けた内周側部11aと,前記内周側部11aと前記外周側部11bとを連結する弾性変形可能な腕部11cとを有し,
前記ベース5は,前記ヨーク3の外周に位置する外壁5aと,前記ヨーク3の光軸方向後側に位置する基底部5bとを有しており,当該基底部5bは光軸方向前側からみて平面視四角形状であり,当該四角形状の各角部が前記ヨーク3の前記各角部14に対応するように配置され,
前記フレーム6は,前記レンズ支持体7の光軸方向前側に配置されており,前記ヨーク3との間に前記前側スプリング9の外周側部9bを挟んで保持すると共に,前記ベース5に嵌合固定して前記ベース5と当該フレーム6とで筐体2を形成している,
レンズ駆動装置1。」(以下,「引用発明2」という。)

(3)周知の技術的事項
ア 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で周知例として例示された引用文献3は,平成20年3月13日に公開された公開公報であるところ,前記4(3)のとおり,本願の出願日は少なくとも平成24年2月3日より前に遡ることはないから,引用文献3は本願の出願より前に頒布された刊行物に該当する。
当該引用文献3には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0061】
[実施の形態4]
図7(a),(b),(c)は,本発明の実施の形態4に係るレンズ駆動装置のレンズ駆動機構に用いた磁気回路の平面図,縦断面図,およびマグネットの説明図である。
【0062】
図7(a),(b)に示すように,本形態でも,実施の形態1と同様,レンズ駆動機構5は,移動レンズ体3の外周面に直接,巻回された駆動コイル14と,駆動コイル14に鎖交磁界を発生させる鎖交磁界発生体4とを備え,駆動コイル14および鎖交磁界発生体4により磁気回路が構成されている。鎖交磁界発生体4は,駆動コイル14の外周側に配置されたマグネット17と,鋼板などの強磁性板からなるバックヨーク16とを備えている。バックヨーク16は,駆動コイル14の周りを囲む筒状胴部160(カバー部)を備えており,その内周面にマグネット17が固定されている。
【0063】
ここで,移動レンズ体3は,四角形の角部51,52,53,54を面取りした形状を備えているため,駆動コイル14も,四角形の角部51,52,53,54を面取りした形状を備えている。これに対して,バックヨーク16の筒状胴部160も,四角形の角部51,52,53,54を面取りした形状を備えているが,駆動コイル14の外周面と,バックヨーク16の筒状胴部160の内周面との間には,四角形の辺に相当する領域で幅が狭く,四角形の角部51,52,53,54に相当する領域で幅が広くなっている。それ故,本形態でも,4つのマグネット17をバックヨーク16の筒状胴部160の角部分の各々に離間して配置してある。
【0064】
4つのマグネット17はいずれも,実施の形態1?3と同様,外面は,バックヨーク16の筒状胴部160の内周面に沿った形状を有しているが,本形態では,駆動コイル14の光軸方向に位置している。また,本形態では,バックヨーク16(筒状胴部160)とは別体の内ヨーク162を備えており,かかる内ヨーク162は,マグネット17の内面に固定され,その端部が駆動コイル14を間に挟んでバックヨーク16(筒状胴部160)と対向している。
【0065】
このように構成したレンズ駆動装置10では,駆動コイル14の外周形状とバックヨーク16の筒状胴部160の内周形状とは略同一であるが,駆動コイル14の外周面とバックヨーク16の筒状胴部160の内周面との間のうち,幅が広い領域(四角形の角に相当する領域)の各々に対して,マグネット17をバックヨーク16の筒状胴部160の内周面に沿うように配置してある。このため,バックヨーク16の筒状胴部160の内周面と駆動コイル14の外周面との間をマグネット17の配置スペースとして有効利用でき,デッドスペースを縮小できる。」

(イ) 「【図面の簡単な説明】
【0092】
・・・(中略)・・・
【図7】(a),(b),(c)は,本発明の実施の形態4に係るレンズ駆動装置のレンズ駆動機構に用いた磁気回路の平面図,縦断面図およびマグネットの説明図である。
・・・(中略)・・・
【図7】



イ 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由で周知例として例示された引用文献4は,2006年(平成18年)11月30日にインターネットを利用した方法で発行された国際公開であるところ,前記4(3)のとおり,本願の出願日は少なくとも平成24年2月3日より前に遡ることはないから,引用文献3は本願の出願より前にインターネットを通じて公開されたものに該当する。
当該引用文献4には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)

(ア) 「図面の簡単な説明
[0011][図1]図1は,本発明の第1の実施の形態におけるカメラモジュールの構成図(図1(a)は当該カメラモジュールの構成を示す平面図,図1(c)は当該カメラモジュールの構成を示す底面図,図1(b)は図1(a)及び図1(c)の1A-1A線での矢視断面図)である。」

(イ) 「[0023][第1の実施の形態]
まず,本発明の第1の実施の形態におけるカメラモジュールについて,図面を参照しながら説明する。図1に,本実施の形態におけるカメラモジュールの構成を示す。図1(a)は本実施の形態のカメラモジュールの構成を示す平面図,図1(c)は当該カメラモジュールの構成を示す底面図である。また,図1(b)は,図1(a)及び図1(c)の1A-1A線での矢視断面図である。
[0024]図1(a)?(c)に示すように,本実施の形態のカメラモジュール100は,レンズモジュール1と,基板2と,撮像素子3と,演算素子4と,駆動素子5とを備えている。そして,レンズモジュール1は,可動部10と,固定部30と,可動部10と固定部30とを弾性的に支持する弾性体40とを備えている。
[0025]可動部10は,レンズ11と,レンズホルダ12と,レンズフード13と,コイル部22とを有している。ここで,レンズ11は,光を曲げる機能を果たすものであり,ガラス又はプラスチックなどを用いて形成されている。また,レンズホルダ12は,加工性及び耐熱性の良好なプラスチックなどを用いて略円筒状に形成されており,レンズ11は,当該レンズホルダ12の内壁に圧入等することによって固定されている。また,レンズフード13も,加工性及び耐熱性の良好なプラスチックなどを用いて円板状に形成されており,当該レンズフード13は,レンズホルダ12の内壁に圧入等することによって固定されている。尚,レンズホルダ12の外周面には,後述する上部ばね41a,下部ばね41bの円環部150を固着するための段差部が設けられている。レンズフード13の中央には,レンズ11の光軸上に被写体からの入射光を通過させる穴13aが形成されている。すなわち,レンズ11の光軸と穴13aの中心とは一致している。また,穴13aは,図1(a)の平面図でレンズフード13を見た場合に,レンズ11の中心に向かって径が小さくなるテーパ状の階段形状に加工されている。尚,レンズフード13は,レンズホルダ12と一体に形成されていてもよい。コイル部22は,レンズホルダ12の外周を周回するように配置された少なくとも1つのコイルにより構成されている。そして,これらのコイルは,それぞれ自己溶着線などを用いて整列巻きされている。
[0026]固定部30は,永久磁石部31と,ヨーク32と,支持ベース部33とを有し,可動部10のレンズ11の光軸方向への移動を許容するように,レンズ11の光軸方向に中空となっている。また,永久磁石部31の内側の面とコイル部22の外側の面との間には,可動部10をレンズ11の光軸方向へ移動させることができるように微小な隙間が設けられている。尚,永久磁石部31は,磁束がコイル部22に向かって発生するように配置された4つの永久磁石31a,31b,31c,31dにより構成されている。
[0027]ここで,永久磁石31a,31b,31c,31dとしては,ネオジ焼結磁石などを用いることができる。これらの永久磁石31a,31b,31c,31dは,可動部10側(内側)がS極,固定部30側(外側)がN極となるように着磁されている。尚,永久磁石部31を構成する永久磁石31a,31b,31c,31dは,低コスト化を図るために平板状であるのが望ましい。また,永久磁石の形状は,長方形状に限定されるものではなく,円弧形状など如何なる形状であってもよい。また,コイル部22を構成するコイルの巻き形状は,永久磁石31a,31b,31c,31dの配列形状に沿うものである。また,図1(b)に示すコイル部22の断面形状は,レンズ11の光軸方向と直交する方向の長さ(巻幅)よりもレンズ11の光軸方向の長さ(巻厚)の方が長い形状となっているが,このような断面形状とすれば,永久磁石部31から効率的に磁気力を得ることができる。
[0028]ヨーク32は,表面をめっき処理した鉄などの強磁性体を用いて形成されており,当該ヨーク32の内側の面に,永久磁石部31を構成する永久磁石31a,31b,31c,31dが固着されている。
[0029]支持ベース部33は,加工性及び耐熱性の良好なプラスチックなどを用いて形成された4つの支持ベース33a,33b,33c,33dにより構成されている。各支持ベース33a,33b,33c,33dは,ヨーク32の内側に固着された4つの永久磁石31a,31b,31c,31dの配列方向に沿ったそれぞれの永久磁石間,すなわち,永久磁石31aと永久磁石31bとの間,永久磁石31bと永久磁石31cとの間,永久磁石31cと永久磁石31dとの間,永久磁石31dと永久磁石31aとの間にそれぞれ配置されて,基板2とヨーク32とを連結している。すなわち,各支持ベース33a,33b,33c,33dは,その底面が基板2に固着され,その上面がヨーク32に固着されている。尚,支持ベース33a,33b,33c,33dは,一体に形成されていてもよい。
[0030]弾性体40は,上部ばね41aと,下部ばね41bとを有している。上部ばね41aと下部ばね41bは,電導性が高く,かつ,金属疲労に強いベリリウム銅などの金属を用いて形成され,板状の部材をエッチング又は打ち抜き加工することによって得られる。尚,上部ばね41aと下部ばね41bの形状及び構成については後述する。」

(ウ) 「[図1]



ウ 引用文献3及び4から把握される周知の技術的事項
前記ア(ア)及び(イ)の記載や,前記イ(ア)ないし(ウ)の記載からみて,レンズの駆動機構の技術分野において,「レンズを駆動するためのコイルの形状を,平板状の部分が連続した8角形とする」ことが,本願の出願より前に周知であったと認められる。(以下,「レンズを駆動するためのコイルの形状を,平板状の部分が連続した8角形とする技術」を「周知技術」という。)

6 引用発明1に基づく新規性欠如についての判断
(1)対比・判断
ア 引用発明1の「レンズユニット」,「ホルダ9」,「コイル8」,「ヨーク6」,「上部板バネ5及び下部板バネ11」,「ベース12」,「外側辺部ヨーク片6c」,「外側角部ヨーク片6b」,「内側ヨーク片6a」及び「第1マグネット7a」は,本願発明の「レンズユニット」,「ホルダ」,「コイル」,「ヨーク」,「板バネ」,「ベース」,「外側辺部ヨーク片」,「外側角部ヨーク片」,「内側ヨーク片」及び「第1のマグネット」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明1の「ホルダ9」(本願発明の「ホルダ」に相当する。以下,「(1)対比・判断」の欄において,引用発明1の構成に付したカッコ中の記載は,これに相当する本願発明の発明特定事項を指す。)は,「レンズユニット」(レンズユニット)を収容すると共にカメラモジュールの光軸方向に沿って移動可能であるところ,「カメラモジュールの光軸方向」がレンズユニットの光軸方向と一致することは自明であるから,本願発明の「レンズユニット」と,「レンズユニットを収容可能であって,レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能」である点で一致する。

ウ 引用発明1の「コイル8」(コイル)は,「ホルダ9」(ホルダ)に設けられている。
また,引用発明1の「コイル8」は,水平断面形状が8角形になるように,4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bとを有しているところ,当該4つの短辺コイル部分8aと4つの長辺コイル部分8bを「複数の平板状の部分」ということができ,「コイル8」の水平断面形状を「複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状」ということができる。
さらに,引用発明1では,ヨーク6とマグネット部7により磁気回路が構成され,当該磁気回路により形成された磁界に「コイル8」が配置されているから,「コイル8」が「磁気回路内に位置」しているといえる。
したがって,引用発明1の「コイル8」は,本願発明の「コイル」と,「ホルダに設けられ,複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状を有し,磁気回路内に位置する」点で一致する。

エ 引用発明1では,「ヨーク6」(ヨーク)とマグネット部7により磁気回路が構成されているから,「ヨーク6」が磁気回路の一部を構成している。
したがって,引用発明1の「ヨーク6」は,本願発明の「ヨーク」と,「磁気回路の一部を構成する」点で一致する。

オ 引用発明1の「上部板バネ5及び下部板バネ11」(板バネ)は,「ホルダ9」(ホルダ)を支持しているから,本願発明の「板バネ」と,「ホルダを支持する」点で一致する。

カ 引用発明1の「ベース12」(ベース)は,「ヨーク6」(ヨーク)及び第1,第2マグネット7a,7bと「上部板バネ5及び下部板バネ11」(板バネ)とを支持しているから,本願発明の「ベース」と,「ヨークと板バネとを支持する」点で一致する。

キ 引用発明1の「ベース12」(ベース)の水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であるから,本願発明の「ベース」の水平断面形状と,「四隅に角部を有する略正方形」である点で一致する。

ク 引用発明1の「ヨーク6」(ヨーク)は,水平断面形状が8角形であり,一連に形成されている4つの「外側角部ヨーク片6b」(外側角部ヨーク片)と4つの「外側辺部ヨーク片6c」(外側辺部ヨーク片)を有し,各「外側角部ヨーク片6b」は「ヨーク6」の各角部に対応する位置であって「ベース12」(ベース)の角部に対応する位置に配設され,各「外側辺部ヨーク片6c」は「ヨーク6」の各辺部に対応する位置に配設されているから,「ヨーク6」の水平断面形状は,「外側辺部ヨーク片6cとベース12の角部に対応する外側角部ヨーク片6bが交互に配設されてなる8角形」であるといえる。
したがって,引用発明1の「ヨーク6」は,本願発明の「ヨーク」と,「水平断面形状は,外側辺部ヨーク片とベースの角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形」である点で一致する。

ケ 引用発明1の「ヨーク6」(ヨーク)は,4つの「内側ヨーク片6a」(内側ヨーク片)が配設され,その外側に一連に形成されている4つの「外側角部ヨーク片6b」(外側角部ヨーク片)と4つの「外側辺部ヨーク片6c」(外側辺部ヨーク片)を有しているから,「外側角部ヨーク片6b」の内側に,4つの「外側角部ヨーク片6b」とそれぞれ対向するよう設けられた4つの「内側ヨーク片6a」を有しているといえる。
したがって,引用発明1の「ヨーク6」は,本願発明の「ヨーク」と,「外側角部ヨーク片の内側に,外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有」する点で一致する。

コ 引用発明1の「第1マグネット7a」(第1のマグネット)は,「外側角部ヨーク片6b」(外側角部ヨーク片)と「内側ヨーク片6a」(内側ヨーク片)の間に配設されているから,引用発明1と本願発明は,「外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ」ている点で一致する。

サ 引用発明1の「短辺コイル部分8a」(コイルの平板状の部分)は,それぞれ,その外側に対向するように配設されている「第1マグネット7a」(第1のマグネット)と「内側ヨーク片6a」(内側ヨーク片)との間に位置しているから,本願発明の「コイルの平板状の部分」と,「第1のマグネットと内側ヨーク片との間に位置して」いる点で一致する。

シ 引用発明1の「外側角部ヨーク片6b」(外側角部ヨーク片),「外側辺部ヨーク片6c」(外側辺部ヨーク片)及び「内側ヨーク片6a」(内側ヨーク片)は,一体となってヨーク6を形成しているから,本願発明の「外側角部ヨーク片」,「外側辺部ヨーク片」及び「内側ヨーク片」と,「一体となって形成されている」点で一致する。

ス 前記アないしシから,本願発明と引用発明1は,
「レンズユニットを収容可能であって,前記レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能なホルダと,
前記ホルダに設けられ,複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状を有し,磁気回路内に位置するコイルと,
前記磁気回路の一部を構成するヨークと,
前記ホルダを支持する板バネと,
前記ヨークと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記ベースの水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,
前記ヨークの水平断面形状は,外側辺部ヨーク片と前記ベースの前記角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形であり,
前記ヨークは,前記外側角部ヨーク片の内側に,前記外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有し,
前記外側角部ヨーク片と前記内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ,
前記コイルの前記平板状の部分は,前記第1のマグネットと前記内側ヨーク片との間に位置しており,
前記外側角部ヨーク片,前記外側辺部ヨーク片および前記内側ヨーク片は,一体となって形成されているアクチュエータ機構。」
である点で一致し,相違するところはない。

(2)小括
前記(1)のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない。

7 引用発明2に基づく進歩性欠如についての判断
(1)対比
ア 引用発明2の「レンズ8」,「レンズ支持体7」,「コイル15」,「ヨーク3」,「『環状の板ばね』である『前側スプリング9』及び『全体として環状の板ばね』である『後側スプリング11』」,「ベース5」,「側壁部16」,「角部14」,「内壁3b」,「マグネット13」及び「レンズ駆動装置1」は,本願発明の「レンズユニット」,「ホルダ」,「コイル」,「ヨーク」,「板バネ」,「ベース」,「外側辺部ヨーク片」,「外側角部ヨーク片」,「内側ヨーク片」,「第1のマグネット」及び「アクチュエータ機構」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明2の「レンズ支持体7」(本願発明の「ホルダ」に相当する。以下,「(1)対比」の欄において,引用発明2の構成に付したカッコ中の記載は,これに相当する本願発明の発明特定事項を指す。)は,「レンズ8」(レンズユニット)を保持し,光軸方向に移動自在に設けられているところ,引用発明2の「保持する」という概念と本願発明の「収容する」という概念に実質的な差異はなく,かつ,引用発明2の「光軸」という文言が,「レンズ8」の光軸を指していることは明らかであるから,本願発明の「レンズユニット」と,「レンズユニットを収容可能であって,前記レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能」である点で一致する。(なお,仮に,「保持する」という概念と「収容する」という概念に何らかの差異があるとしたとしても,当該差異は単なる設計変更でしかないから,結論に変わりはない。)

ウ 引用発明2の「コイル15」(コイル)は,「レンズ支持体7」(ホルダ)の外周に固定されている。
また,引用発明2の「コイル15」は,マグネット13に対面して位置する部分15aが,マグネット13の内周側面13aに沿う円弧面を成し,ヨーク3の側壁部16に対応する部分15bは側壁部16と平行な平面を成しているところ,当該形状を,「平面」の「部分」と「円弧面」の「部分」が交互に連結した概ね「8角形の水平断面形状」ということができ,かつ,当該「平面の部分」の形状を「平板状」ということができるから,本願発明の「複数の平板状の部分が連続してなる8角形の水平断面形状」を有する「コイル」と,「複数の部分が連続してなる8角形といえる水平断面形状」であり,かつ,前記「複数の部分のうちの少なくとも第1のマグネットと対面していない部分の形状が平板状」である点で共通する。
さらに,引用発明2において,ヨーク3とマグネット13により磁気回路が構成され,当該磁気回路により形成された磁界内に「コイル15」が配置されていることが自明であるから,「コイル13」が「磁気回路内に位置」しているといえる。
したがって,引用発明2の「コイル8」は,本願発明の「コイル」と,「ホルダに設けられ,8角形といえる水平断面形状を有し,磁気回路内に位置する」点で共通する。

エ 前記ウで述べたように,引用発明2において,「ヨーク3」(ヨーク)とマグネット13により磁気回路が構成されていることが自明であるから,「ヨーク3」は磁気回路の一部を構成するといえる。
したがって,引用発明2の「ヨーク3」は,本願発明の「ヨーク」と,「磁気回路の一部を構成する」点で一致する。

オ 引用発明2の「前側スプリング9及び後側スプリング11」(板バネ)は,前側スプリング9の内周側部9aが「レンズ支持体7」(ホルダ)に取り付けられ,前側スプリング9の外周側部9bがヨーク3とフレーム6との間に挟持して固定されており,かつ,後側スプリング11の内周側部11aが「レンズ支持体7」の後端に取り付けられ,後側スプリング11の外周側部11bがベース5とヨーク3との間に挟持されているから,「レンズ支持体7」を支持しているといえる。
したがって,引用発明2の「前側スプリング9及び後側スプリング11」は,本願発明の「板バネ」と,「ホルダを支持する」点で一致する。

カ 引用発明2の「ベース5」(ベース)は,「ヨーク3」(ヨーク)との間に「後側スプリング11」(板バネ)の外周側部11bを挟持し,さらに,当該「ベース5」に嵌合固定される「フレーム6」と「ヨーク3」との間に「前側スプリング9」(板バネ)の外周側部9bを挟持し固定しているから,「ヨーク3」と「前側スプリング9及び後側スプリング11」とを支持しているといえる。
したがって,引用発明2の「ベース5」は,本願発明の「ベース」と,「ヨークと板バネとを支持する」点で一致する。

キ 引用発明2の「ベース5」(ベース)は,その基底部5bが光軸方向前側からみて平面視四角形状を有しているから,その水平断面形状が「四隅に角部を有する略正方形」であるといえる。
したがって,引用発明2の「ベース5」の水平断面形状は,本願発明の「ベース」の水平断面形状と,「四隅に角部を有する略正方形」である点で一致する。

ク 引用発明2の「ヨーク3」(ヨーク)は,光軸方向前側からみて平面視四角形状の外周壁3aの各角部14が面取りされ,隣り合う角部14間が側壁部16となっており,各角部14が,ベース5の基底部5bの平面視四角形状の各角部と対応するように配置されているところ,その水平断面形状を,「側壁部16」(外側辺部ヨーク片)と,「ベース5」(ベース)の「基底部5bの平面視四角形状の角部」(角部)に対応する「角部14」(外側角部ヨーク片)とが交互に配設されてなる「略8角形」ということができる。
したがって,引用発明2の「ヨーク3」は,本願発明の「ヨーク」と,「水平断面形状は,外側辺部ヨーク片とベースの角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形」である点で一致する。

ケ 引用発明2の「ヨーク3」(ヨーク)は,「内壁3b」(内側ヨーク辺)と外周壁3aとを有しており,「内壁3b」は,外周壁3aの「角部14」(外側角部ヨーク片)に対応する位置に設けられているから,本願発明の「ヨーク」と,「外側角部ヨーク片の内側に,外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有」する点で一致する。

コ 引用発明2のヨークは,外周壁3aと「内壁3b」(内側ヨーク片)と連結壁3cとで断面がコ字形状を成しているところ,「マグネット13」(第1のマグネット)が,当該ヨーク3の各「角部14」(外側角部ヨーク片)の内周面に固定されているから,当該「マグネット13」は,各「角部14」と各「内壁3b」の間に設けられたものである。
したがって,引用発明2と本願発明は,「外側角部ヨーク片と内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ」ている点で一致する。

サ 引用発明2の「コイル15」(コイル)の「部分」のうち「マグネット13に対面して位置する部分15a」は,本願発明の「コイルの複数の平板状の部分」のうち「第1のマグネットと前記内側ヨーク片との間に位置」する部分と,「コイルの第1のマグネットに対面する部分」である点で共通し,かつ,当該「マグネット13に対面して位置する部分15a」は,「マグネット13」(第1のマグネット)と「内壁3b」(内側ヨーク片)の間に配置されているから,本願発明の「コイルの平板状の部分」と,「第1のマグネットと内側ヨーク片との間に位置」する点で一致する。

シ 引用発明2の「ヨーク3」は,光軸方向前側からみて平面視四角形状の外周壁3aと,「内壁3b」(内側ヨーク片)と,前記外周壁3aと前記「内壁3b」とを間隔をあけて連結する連結壁3cとからなり,前記外周壁3aと前記内壁3bと前記連結壁3cとで断面がコ字形状を成し,前記外周壁3aの各「角部14」(外側角部ヨーク片)は面取りされ,隣り合う角部14間が「側壁部16」(外側辺部ヨーク片)となっているところ,「角部14」と「側壁部16」と「内壁3b」が,一体となって形成されているといえるから,引用発明2の「角部14」,「側壁部16」及び「内壁3b」は,本願発明の「外側角部ヨーク片」,「外側辺部ヨーク片」及び「内側ヨーク片」と,「一体となって形成されている」点で一致する。

ス 前記アないしシから,本願発明と引用発明2は,
「レンズユニットを収容可能であって,前記レンズユニットの光軸方向に沿って移動可能なホルダと,
前記ホルダに設けられ,複数の部分が連続してなる8角形といえる水平断面形状を有し,磁気回路内に位置するコイルであって,前記複数の部分のうちの少なくとも第1のマグネットと対面していない部分の形状が平板状であるコイルと,
前記磁気回路の一部を構成するヨークと,
前記ホルダを支持する板バネと,
前記ヨークと前記板バネとを支持するベースとを有し,
前記ベースの水平断面形状は,四隅に角部を有する略正方形であり,
前記ヨークの水平断面形状は,外側辺部ヨーク片と前記ベースの前記角部に対応する外側角部ヨーク片が交互に配設されてなる略8角形であり,
前記ヨークは,前記外側角部ヨーク片の内側に,前記外側角部ヨーク片と対向するよう設けられた複数の内側ヨーク片を有し,
前記外側角部ヨーク片と前記内側ヨーク片との間には第1のマグネットがそれぞれ設けられ,
前記コイルの前記複数の部分のうち第1のマグネットに対面する部分は,前記第1のマグネットと前記内側ヨーク片との間に位置しており,
前記外側角部ヨーク片,前記外側辺部ヨーク片および前記内側ヨーク片は,一体となって形成されているアクチュエータ機構。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明では,コイルの水平断面形状を構成する複数の部分のうちの第1のマグネットと対面する部分の形状が,「平板状」であり,コイルの水平断面形状が8角形であるのに対して,
引用発明2では,コイル15の水平断面形状を構成する複数の部分のうちのマグネット13と対面して位置する部分15aの形状は,「円弧状」であって,コイル15の水平断面形状が厳密な意味での8角形ではない点。

(2)相違点についての判断
前記5(3)ウで認定したように,レンズの駆動機構の技術分野において,「レンズを駆動するためのコイルの形状を,平板状の部分が連続した8角形とする技術」(周知技術)が,本願の出願より前に周知であったと認められる。
しかるに,引用発明2は,引用文献2の【0007】に記載されているとおり,マグネットとヨークとで形成する磁界をコイルに有効に作用でき且つ小型化を図ることができるレンズ駆動装置の提供を目的としてなされたものであるところ,当該引用発明2において,コイル15の形状を,前記周知技術の「8角形」に変更しても,「マグネットとヨークとで形成する磁界をコイルに有効に作用でき且つ小型化を図ることができる」という点で,引用発明2と同程度の効果が得られることは,容易に理解できることであるから,引用発明2において,コイル15における部分15aの形状を平板状として,コイル15の形状を「平板状の部分が連続した8角形」に変更すること,すなわち,引用発明2を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことというほかない。

(3)効果について
本願発明が有する効果は,引用発明2及び周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(4)小括
以上のとおりであって,本願発明は,引用発明2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

8 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明1と同一発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであり,かつ,引用発明2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-13 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2015-104479(P2015-104479)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小倉 宏之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 アクチュエータ機構、カメラモジュールおよびカメラ  
代理人 朝比 一夫  
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