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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H01L
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H01L
管理番号 1323114
審判番号 不服2016-17006  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-14 
確定日 2017-01-17 
事件の表示 特願2016-85471「研削・研磨装置及び研削・研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月8日出願公開,特開2016-165007,請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成22年11月16日を出願日とする出願である特願2010-256217号の一部を,平成28年4月21日に新たな特許出願としたものであって,平成28年5月11日付けで拒絶理由通知がなされ,同年6月6日付けで手続補正がなされ,同年6月22日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,同年7月25日付けで手続補正がなされ,同年8月9日付けで同年7月25日付けでなされた手続補正についての補正の却下の決定がなされると共に同日付で拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年11月14日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。


第2 補正の却下の決定の当否について

請求人は,審判請求書の請求の趣旨において「特願2016-85471について、平成28年8月9日付けでなされた補正の却下の決定ならびに査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」としており,審判請求書の請求の理由「3.補正の却下の決定に対する不服の理由」の項でも,「平成28年8月9日付け補正の却下の決定については不適法なものであるので取り消されるべきものである。」と主張しているので,平成28年8月9日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。


[補正の却下の決定の当否の結論]

平成28年8月9日付けの補正の却下の決定を取り消す。


[理由]

1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
平成28年7月25日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は,補正箇所である。)
「【請求項1】
ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハを研削・研磨して前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を進展させる研削・研磨装置において、
前記ウェハを真空吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを備え、
前記回転テーブルを回転させて、前記ウェハチャックを、
前記ウェハの表面を真空吸着する位置と、
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して、前記レーザ改質領域を除去し、且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる位置と、
前記微小亀裂の進展後、前記ウェハの裏面を研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う位置と、に順に移動させ、
前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態で行う研削・研磨装置。

【請求項2】
ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハを研削・研磨して前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を進展させる研削・研磨方法において、
前記ウェハを真空吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを回転させて、前記ウェハチャックを、
前記ウェハの表面を真空吸着する位置と、
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して、前記レーザ改質領域を除去し、且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる位置と、
前記微小亀裂の進展後、前記ウェハの裏面を、研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う位置と、に順に移動させ、
前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態で行う研削・研磨方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成28年6月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハを研削・研磨して前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を進展させる研削・研磨装置において、
前記ウェハを真空吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを備え、
前記回転テーブルを回転させて、前記ウェハチャックを、
前記ウェハの表面を真空吸着する位置と、
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して、前記レーザ改質領域を除去し、且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる位置と、
前記微小亀裂の進展後、前記ウェハの裏面を研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う位置と、に順に移動させ、
前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに吸着した状態で行う研削・研磨装置。

【請求項2】
ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハを研削・研磨して前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を進展させる研削・研磨方法において、
前記ウェハを真空吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを回転させて、前記ウェハチャックを、
前記ウェハの表面を真空吸着する位置と、
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して、前記レーザ改質領域を除去し、且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる位置と、
前記微小亀裂の進展後、前記ウェハの裏面を、研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う位置と、に順に移動させ、
前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに吸着した状態で行う研削・研磨方法。」

2 本件補正の適否
上記補正は,補正前の請求項1及び2に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに吸着した状態で行う」とした事項について,上記1(1)のとおり「一つの前記ウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態」とすること,すなわち,吸着する対象を「前記ウェハの表面」とする限定を付加するものであって,当該補正によって補正前後の請求項1及び2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることは明らかであるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)平成28年8月9日付けの補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由で引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2007-235069号公報(平成19年9月13日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,図1ないし19とともに,次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、ウェーハ加工方法に係り、特に、半導体ウェーハの平面加工からチップサイズに切断されたウェーハのマウントまでを欠陥なく行うのに好適なウェーハ加工方法に関する。」
「【0012】レーザーダイシング装置では、高速回転するダイヤモンドブレードに代えて、レーザー光によりウェーハがチップに分割されるため、ウェーハに大きな力がかからず、チッピングや割れが発生しない。また、ウェーハに直接接触する部分がなく、熱や切削屑が発生しないため、切削水を必要としない。更に、内部に改質領域を形成してウェーハの割段を行いチップに分割するため、チップの間隔がダイヤモンドブレードによる切断よりも非常に狭く、一枚のウェーハからより多くのチップを得られる。」
「【0013】しかしながら、レーザーダイシング装置では、ダイシング後に各工程に使用される装置間を搬送される際、衝撃や振動により内部の改質領域を起点として割段されてしまう場合がある。そして、一旦割段された場合、ウェーハとしてのハンドリングができず、以降の工程の進行が大幅に妨げられるという問題があった。
【0014】この問題に対し、本発明者は、ウェーハの裏面を研削・研磨加工(第1の機械加工)し、ウェーハの最終加工厚さより厚い状態までウェーハを加工し、次いで、ウェーハにレーザー光を照射して内部へ改質領域を形成し、その後、ウェーハの裏面を再度研削・研磨加工(第2の機械加工)し、ウェーハの最終加工厚さまでウェーハの裏面を加工する方法を検討しており、顕著な効果を得ている。
【0015】ところが、このプロセスにおいて、第2の機械加工の際に、改質領域によりウェーハの機械的強度が低下していることに起因して、ウェーハの外周部より割れ欠け(チッピング)を生じ、このチッピングが研削砥石とウェーハとの間に巻き込まれてスクラッチを生じたり、このチッピングが研磨パッドとウェーハとの間に巻き込まれて傷欠陥を生じたりする現象が認められた。
【0016】また、チッピングが大きい場合に、ウェーハのノッチ部が損傷したり、ウェーハのオリフラ部が損傷したりして、ウェーハのアライメントに不具合を生じることもある。
【0017】本発明は、このような問題に対してなされたものであり、レーザーダイシング装置によりダイシングされたウェーハを、欠陥なく加工できるウェーハ加工方法を提供することを目的とする。」
「【0018】本発明は、前記目的を達成するために、ウェーハの裏面を研削加工し、研削後の前記ウェーハの裏面を研磨加工し、ウェーハの最終加工厚さT1より厚い厚さT2まで前記ウェーハの裏面を加工する第1の機械加工ステップと、第1の機械加工後の前記ウェーハの外周より0.1?10mmの非改質ゾーンの内側にレーザー光を照射して前記ウェーハの内部へ改質領域を形成する改質領域形成ステップと、改質領域形成後の前記ウェーハの裏面を研削加工し、研削後の前記ウェーハの裏面を研磨加工し、ウェーハの最終加工厚さT1まで前記ウェーハの裏面を加工する第2の機械加工ステップと、を備えることを特徴とするウェーハ加工方法を提供する。
【0019】本発明によれば、第1の機械加工により厚さT2までウェーハを加工し、レーザー光を照射してウェーハの内部へ改質領域を形成し、第2の機械加工によりウェーハの最終加工厚さT1まで加工するウェーハ加工方法において、ウェーハの外周より0.1?10mmの非改質ゾーンにレーザー光を照射しない。
【0020】したがって、非改質ゾーンに改質領域が形成されることはなく、非改質ゾーンのウェーハの機械的強度が低下することもない。これにより、ウェーハの外周部より割れ欠け(チッピング)を生じる不具合は解消できる。
【0021】その結果、チッピングが研削砥石とウェーハとの間に巻き込まれてスクラッチを生じたり、チッピングが研磨パッドとウェーハとの間に巻き込まれて傷欠陥を生じたりする現象もなく、また、ウェーハのノッチ部が損傷したり、ウェーハのオリフラ部が損傷したりする不具合も生じない。
【0022】以上のように、本発明によれば、レーザーダイシング装置によりダイシングされたウェーハを、ダメージを与えることなくチップに分割することができる。」
「【0031】平面加工装置10Aは、第1の機械加工ステップに使用され、平面加工装置10Cは、第2の機械加工ステップに使用される。
【0032】なお、平面加工装置を図1のように2台設けず、1台の平面加工装置10A(又は10C)で第1及び第2の機械加工ステップに対応させてもよい。
【0033】図2は、平面加工装置10A(10C)の斜視図であり、図3は平面図である。図2に示されるように平面加工装置10A(10C)の本体112には、カセット収納ステージ114、アライメントステージ116、粗研削ステージ118、精研削ステージ120、研磨ステージ122、研磨布洗浄ステージ123、研磨布ドレッシングステージ127、及びウェーハ洗浄ステージ124が設けられている。」
「【0043】アライメントステージ116は、カセット126から搬送されたウェーハWを所定の位置に位置合わせするステージである。このアライメントステージ116で位置合わせされたウェーハWは、搬送用ロボット130のハンド131に再度吸着保持された後、空のチャック132に向けて搬送され、このチャック132の吸着面に吸着保持される。
【0044】チャック132は、インデックステーブル134に設置され、また、同機能を備えたチャック136、138、140が、インデックステーブル134の図3の破線で示される回転軸135を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されている。
【0045】また、回転軸135には、図3に破線で示されるモータ(移動手段に相当)137のスピンドル(不図示)が連結されている。チャック136は、粗研削ステージ118に位置されており、吸着したウェーハWがここで粗研削される。
【0046】また、チャック138は、精研削ステージ120に位置され、吸着したウェーハWがここで仕上げ研削(精研削、スパークアウト)される。更に、チャック140は、研磨ステージ122に位置され、吸着したウェーハWがここで研磨され、研削で生じた加工変質層、及びウェーハWの厚さのバラツキ分が除去される。
【0047】チャック132、136、138、140は、図4の如くその下面にスピンドル194と回転用モータ192が各々連結され、これらのモータ192の駆動力によって回転される。モータ192は、支持部材193を介してインデックステーブル134に支持されている。
【0048】したがって、本実施の形態の平面加工装置10A(10C)は、モータ192とスピンドル194がチャック132、136、138、140に連結された状態で、チャック132、136、138、140がモータ137によって移動される装置である。
【0049】これにより、チャック132、136、138、140をモータ137で移動させる毎に、スピンドル194をチャック132、136、138、140から切り離したり、次の移動位置に設置されたスピンドル194にチャック132、136、138、140を連結したりする手間を省くことができる。
【0050】本実施の形態のチャック132、136、138、140は、その吸着面がセラミックス等の焼結体からなるポーラス材で形成されている。これによってウェーハWがポーラス材の表面にしっかりと吸着保持される。」
「【0053】チャック32に吸着保持されたウェーハWは、たとえば一対の測定ゲージ136、138によってその厚さを測定することもできる。これらの測定ゲージ136、138は、それぞれ図示しない接触子を有し、一方の接触子はウェーハWの上面(裏面)に、他方の接触子はチャック132の上面に接触されている。これらの測定ゲージ136、138は、チャック132の上面を基準点としてウェーハWの厚さをインプロセスゲージ読取値の差として検出することができる。
【0054】厚さが測定されたウェーハWは、インデックステーブル34の図2、図3の矢印A方向の90度の回動で粗研削ステージ118に位置され、粗研削ステージ118のカップ型砥石146によってウェーハWの裏面が粗研削される。
【0055】このカップ型砥石146は図2に示されるように、モータ148の図示しない出力軸に連結され、また、モータ148のサポート用ケーシング150を介して砥石送り装置152に取り付けられている。砥石送り装置152は、カップ型砥石146をモータ148とともに昇降移動させるもので、この下降移動によりカップ型砥石146がウェーハWの裏面に押し付けられる。
【0056】これにより、ウェーハ126の裏面粗研削が行われる。カップ型砥石146の下降移動量は、即ち、カップ型砥石146による研削量は、予め登録されているカップ型砥石146の基準位置と、測定ゲージ236、238で検出されたウェーハWの厚さとに基づいて設定される。
【0057】粗研削ステージ118で裏面が粗研削されたウェーハWは、ウェーハWからカップ型砥石146が退避移動した後、図示しない厚さ測定ゲージによってその厚さが測定される。厚さが測定されたウェーハWは、インデックステーブル134の同方向の90度の回動で精研削ステージ120に位置され、精研削ステージ120のカップ型砥石154によって精研削、スパークアウトされる。
【0058】この精研削ステージ120の構造は、粗研削ステージ118の構造と同一なので、ここではその説明を省略する。なお、本実施の形態では、研削ステージを2か所設けたが、研削ステージは1か所でもよい。また、測定ゲージによる厚さ測定は、インラインで実施してもよい。
【0059】精研削ステージ120で裏面が精研削されたウェーハWは、ウェーハWからカップ型砥石154が退避移動した後、図示しない厚さ測定ゲージによってその厚さが測定される。厚さが測定されたウェーハWは、インデックステーブル134の同方向の90度の回動で研磨ステージ122に位置され、研磨ステージ122の図4に示される研磨布156と、研磨布156から供給されるスラリとによって研磨され、その裏面に生じている加工変質層が除去される。なお、測定ゲージによる厚さ測定は、インラインで実施してもよい。」
「【0107】図13は、表面(下面)に既述の保護用シート21が貼着されたウェーハWの断面図である。同図において、ウェーハWは、裏面が加工された後に最終加工厚さT1より厚い厚さT2になっている。
【0108】次いで、レーザーダイシング装置10B使用して、ウェーハWの裏面(上面)よりレーザー光Lを照射して、ウェーハWの内部へ改質領域K、K…を形成する(ステップS20)。この改質領域K、K…のウェーハWの厚さ方向の位置は、ウェーハの表面(下面)より厚さ方向にT1までの距離の位置であることが好ましい。このような厚さ方向に改質領域が形成されれば、ウェーハの割断が容易となる。
【0109】この改質領域K、K…のウェーハWの平面方向の位置は、図14に示されるように、ウェーハの外周より0.1?10mmの非改質ゾーンZの内側の割断予定線上に形成する必要がある。
【0110】このような方法によれば、非改質ゾーンZに改質領域が形成されることはなく、非改質ゾーンZのウェーハWの機械的強度が低下することもない。これにより、ウェーハWの外周部より割れ欠け(チッピング)を生じる不具合は解消できる。
【0111】その結果、次ステップ(ステップS30)の平面加工装置10Cによる加工の際に、チッピングが研削砥石とウェーハWとの間に巻き込まれてスクラッチを生じたり、チッピングが研磨パッドとウェーハとの間に巻き込まれて傷欠陥を生じたりする現象もなく、また、ウェーハWのノッチ部が損傷したり、ウェーハWのオリフラ部が損傷したりする不具合も生じない。
【0112】次いで、平面加工装置10Cを使用して、ウェーハWの裏面を加工し(研削及び研磨)、最終加工厚さT1まで加工する(ステップS30)。」

(イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている(なお、段落【0053】における「チャック32」及び段落【0054】における「インデックステーブル34」はそれぞれ「チャック132」及び「インデックステーブル134」の誤記と認められる。)。
「ウェーハの内部へ改質領域を形成」し、「改質領域形成後の前記ウェーハの裏面を研削加工し、研削後の前記ウェーハの裏面を研磨加工」する「ウェーハ加工方法」(【0018】)において,「レーザー光を照射してウェーハの内部へ改質領域を形成し」(【0019】),「平面加工装置10Cを使用して、ウェーハWの裏面を加工」「(研削及び研磨)」(【0112】)するものであって,「平面加工装置10A(10C)の本体112には、カセット収納ステージ114、アライメントステージ116、粗研削ステージ118、精研削ステージ120、研磨ステージ122、研磨布洗浄ステージ123、研磨布ドレッシングステージ127、及びウェーハ洗浄ステージ124が設けられて」(【0033】),「ウェーハWは」「チャック132の吸着面に吸着保持され」(【0043】),「チャック132は、インデックステーブル134に設置され」(【0044】),「チャック」「に吸着保持されたウェーハW」(【0053】)を,「インデックステーブル」「の」「90度の回動で粗研削ステージ118に位置され」,「ウェーハWの裏面が粗研削され」(【0054】),「粗研削ステージ118で裏面が粗研削されたウェーハWは」,「インデックステーブル134の同方向の90度の回動で精研削ステージ120に位置され](【0057】),「精研削ステージ120で裏面が精研削されたウェーハWは」,「インデックステーブル134の同方向の90度の回動で研磨ステージ122に位置され、研磨ステージ122の図4に示される研磨布156と、研磨布156から供給されるスラリとによって研磨され、その裏面に生じている加工変質層が除去される」(【0059】)ウェーハ加工方法と当該方法に用いられる研削及び研磨装置。

(ウ)これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ウェハの内部にレーザー光を照射して形成された改質領域を有するウェハを研削・研磨する平面加工装置において,
前記ウェハを吸着するチャックを有するインデックステーブルを備え,
前記インデックステーブルを回転させて,前記チャックを,
前記ウェハの表面を吸着する位置と,
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理する粗研削ステージと,
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理する精研削ステージと,
前記ウェハの裏面を研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う研磨ステージと,に順に移動させ,
前記研削処理と,前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記チャックに前記ウェハの表面を吸着した状態で行う研削・研磨装置。」

イ 引用例2
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特許第4440582号公報(平成22年3月24日発行。以下,「引用例2」という。)には,図1ないし21とともに,次の記載がある。
「【請求項1】表面に機能素子が形成された半導体基板を切断予定ラインに沿って切断する半導体基板の切断方法であって、
前記半導体基板の裏面を研磨して前記半導体基板を第1の厚さにする工程と、
前記半導体基板を第1の厚さにした後に、前記半導体基板の裏面をレーザ光入射面として前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することで改質領域を形成し、その改質領域によって、前記切断予定ラインに沿って前記レーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と、
前記切断起点領域を形成した後に、前記半導体基板に前記改質領域が残存しないように、前記半導体基板の裏面を研磨して前記半導体基板を第2の厚さにする工程とを備えることを特徴とする半導体基板の切断方法。」
「【技術分野】【0001】本発明は、半導体デバイスの製造工程等において、表面に機能素子が形成された半導体基板を切断するために使用される半導体基板の切断方法に関する。」
「【0015】そして、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図1の矢印A方向に)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3?図5に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って半導体基板1の内部に形成され、この改質領域7が切断起点領域8となる。本実施形態のレーザ加工方法は、半導体基板1がレーザ光Lを吸収することにより半導体基板1を発熱させて改質領域7を形成するものではない。半導体基板1にレーザ光Lを透過させ半導体基板1の内部に多光子吸収を発生させて改質領域7を形成している。よって、半導体基板1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、半導体基板1の表面3が溶融することはない。
【0016】半導体基板1の内部に切断起点領域8を形成すると、この切断起点領域8を起点として割れが発生し易くなるため、図6に示すように、比較的小さな力で半導体基板1を切断することができる。よって、半導体基板1の表面3に不必要な割れを発生させることなく、半導体基板1を高精度に切断することが可能になる。
【0017】この切断起点領域8を起点とした半導体基板1の切断には、次の2通りが考えられる。1つは、切断起点領域8の形成後、半導体基板1に人為的な力が印加されることにより、切断起点領域8を起点として半導体基板1が割れ、半導体基板1が切断される場合である。これは、例えば半導体基板1の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは、例えば、半導体基板1の切断起点領域8に沿って半導体基板1に曲げ応力やせん断応力を加えたり、半導体基板1に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは、切断起点領域8を形成することにより、切断起点領域8を起点として半導体基板1の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に半導体基板1が切断される場合である。これは、例えば半導体基板1の厚さが小さい場合には、1列の改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となり、半導体基板1の厚さが大きい場合には、厚さ方向に複数列形成された改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となる。なお、この自然に割れる場合も、切断する箇所において、切断起点領域8が形成されていない部位に対応する部分の表面3上にまで割れが先走ることがなく、切断起点領域8を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので、割断を制御よくすることができる。近年、シリコンウェハ等の半導体基板1の厚さは薄くなる傾向にあるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効である。」
「【0041】切断予定ライン5を設定した後、図14(b)に示すように、裏面17をレーザ光入射面としてシリコンウェハ11の内部に集光点Pを合わせて、上述した多光子吸収が生じる条件でレーザ光Lを照射し、載置台20の移動により切断予定ライン5に沿って集光点Pを相対移動させる。これにより、図14(c)に示すように、シリコンウェハ11の内部には、切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13により切断起点領域8が形成される。
【0042】続いて、図15(a)に示すように、シリコンウェハ11及び保護フィルム18が固定されたガラスプレート19を載置台20から取り外し、図15(b)に示すように、厚さ150μm(第1の厚さ)のシリコンウェハ11の裏面17を平面研削して、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する。この切断起点領域8形成後の裏面17の平面研削においては、平面研削開始後に切断起点領域8を起点として発生した割れ21がシリコンウェハ11の表面3と裏面17とに到達するため、割れ21が裏面17に到達した状態で裏面17を更に平面研削していくことになる。そして、シリコンウェハ11が厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化された際には、シリコンウェハ11が切断予定ライン5に沿って精度良く切断される。これにより、機能素子15を1つ有した半導体チップ22を複数得ることができる。」
「【0048】このようにシリコンウェハ11の内部に切断起点領域8が形成されると、自然に或いは比較的小さな力を加えることで、切断起点領域8を起点として割れを発生させ、その割れをシリコンウェハ11の表面3と裏面17とに到達させることができる。従って、切断起点領域8形成後にシリコンウェハ11の裏面17を研磨してシリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する際に、切断起点領域8を起点として発生した割れ21に研磨面が達しても、その割れ21により切断されたシリコンウェハ11の切断面22aは互いに密着しているため、研磨によってシリコンウェハ11にチッピングやクラッキングが発生するのを防止することができる。よって、チッピングやクラッキングの発生を防止して、シリコンウェハ11を薄型化し且つシリコンウェハ11を切断することが可能になる。」
「【0049】ところで、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化した後における半導体チップ22と溶融処理領域13との関係としては、図19?図21に示すものがある。各図に示す半導体チップ22には、後述するそれぞれの効果が存在するため、種々様々な目的に応じて使い分けることができる。ここで、図19(a)、図20(a)及び図21(a)は、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する前に割れ21がシリコンウェハ11の表面3に達している場合であり、図19(b)、図20(b)及び図21(b)は、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する前に割れ21がシリコンウェハ11の表面3に達していない場合である。図19(b)、図20(b)及び図21(b)の場合にも、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化した後には、割れ21がシリコンウェハ11の表面3に達する。
【0050】図19(a),(b)に示すように、溶融処理領域13が切断面内に残存する半導体チップ22は、その切断面が溶融処理領域13により保護されることとなり、半導体チップ22の抗折強度が向上する。また、図20(a),(b)に示すように、溶融処理領域13が切断面内に残存しない半導体チップ22は、溶融処理領域13が半導体デバイスに好影響を与えないような場合に有効である。更に、図21(a),(b)に示すように、溶融処理領域13が切断面の裏面側のエッジ部に残存する半導体チップ22は、当該エッジ部が溶融処理領域13により保護されることとなり、半導体チップ22のエッジ部を面取りした場合と同様に、エッジ部におけるチッピングやクラッキングの発生を防止することができる。
【0051】そして、図19(a)、図20(a)及び図21(a)に示すように、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する前に割れ21がシリコンウェハ11の表面3に達している場合に比べ、図19(b)、図20(b)及び図21(b)に示すように、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する前に割れ21がシリコンウェハ11の表面3に達していない場合の方が、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化した後に得られる半導体チップ22の切断面の直進性がより一層向上する。
【0052】なお、シリコンウェハ11を厚さ100μm(第2の厚さ)に薄型化する前に割れ21がシリコンウェハ11の表面3に到達するか否かは、溶融処理領域13の表面3からの深さに関係するのは勿論であるが、溶融処理領域13の大きさにも関係する。すなわち、溶融処理領域13の大きさを小さくすれば、溶融処理領域13の表面3からの深さが浅い場合でも、割れ15は半導体基板1の表面3に到達しない。溶融処理領域13の大きさは、例えば切断起点領域8を形成する際におけるパルスレーザ光の出力により制御することができる。つまり、パルスレーザ光の出力を上げれば大きくなり、パルスレーザ光の出力を下げれば小さくなる。」

(イ)上記記載から,引用例2には,次の技術が記載されている。
「ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハの裏面を一様に研削処理して,前記レーザ改質領域を除去し,且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる技術。」

ウ 引用例3
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2009-131942号公報(平成21年6月18日出願公開。以下,「引用例3」という。)には,図1ないし19とともに,次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、加工対象物を所定の厚さに研削するための加工対象物研削方法に関する。」
「【0006】この加工対象物研削方法では、加工対象物の外縁から所定の距離内側に外縁に沿って設定された改質領域形成ラインに沿って、加工対象物に改質領域を形成している。この改質領域又は改質領域から延びる割れによって、加工対象物の研削に起因して外縁部で生じた割れが内側に伸展するのを抑制することができる。その結果、加工対象物を確実に研削することができる。なお、「割れ」には、亀裂、切れ目及び裂け目等を含んでいる(以下、同じ)。
【0007】また、加工対象物の主面を研削する工程は、改質領域を形成する工程を実施した後に実施されることが好ましい。この場合、加工対象物の研削中にその外縁部で割れが発生したとしても、改質領域又は改質領域から延びる割れによって、割れが内側に伸展するのを抑制することができる。
【0008】このとき、改質領域を形成する工程においては、改質領域から延びる割れのみが研削後の加工対象物に残存するように、加工対象物に改質領域を形成することが好ましい。この場合、切削後の加工対象物には改質領域が残存しないことから、発塵を低減することができる。」
「【0035】本実施形態の加工対象物研削方法は、例えば厚さが15μm?25μm(所定の厚さ:以下、「最終研削厚さ」という)の極薄の半導体基板を形成するために加工対象物を研削するものである。図10に示すように、研削加工の対象となる加工対象物1は、例えばシリコンからなる円板状を呈している。ここでは、加工対象物1は、円筒状のシリコンインゴットを輪切り状に切断して形成されている。この加工対象物1は、その外縁Eから所定の距離内側に、改質領域形成ライン5が設定されている。なお、加工対象物1では、説明の便宜上オリエンテーションフラットを省略する。また、ここでの「研削」とは、砥石、刃物、エッチング液等で機械的、化学的、電気化学的に表面を削って滑らかにすることを意味し、また、研磨と同義である。」
「【0039】この状態で、加工対象物1の内部に集光点を合わせて加工対象物1の表面3側からレーザ光Lを照射しながら、レーザ光Lに対しステージをθ方向(図中の矢印R方向)に相対回転させる。これにより、図11(b)に示すように、外周縁の改質領域形成ライン5(図10参照)に沿って、加工対象物1の内部に改質領域7を形成し、改質領域7の上端部及び下端部から、厚さ方向に沿って延びる亀裂(割れ)C1を生じさせる。なお、この改質領域7には、その内部に亀裂が含まれてもよい。
【0040】続いて、図12(a)に示すように、加工対象物1の表面3における有効領域26に、複数の機能素子22をマトリックス状に配設されるように形成した後、図12(b)に示すように、加工対象物1を上下反転して裏面21を上方に位置させる。そして、図12(c)に示すように、研削砥石32(グラインダー)で加工対象物1の裏面21を研削し、加工対象物1を最終研削厚さに薄化する。ここで、研削後の加工対象物1aでは、亀裂C1のみが残存しており、この亀裂C1が裏面21に露出している。つまり、裏面21にハーフカット亀裂C1が露出した状態となっている。
【0041】加工対象物1を薄化した後には、隣り合う機能素子22間を通るような格子状に設定された切断予定ラインに沿って、加工対象物1を切断するための切断起点領域が形成される。ここでは、切断起点領域として、加工対象物に集光点を合わせてレーザ光を照射し、改質領域7と同様な切断用改質領域を形成している。切断起点領域は、レーザアブレーション、スクライブ若しくはブレードダイシング等で形成された溝等でもよい。そして、加工対象物1がエキスパンドテープに張り替えられ、このエキスパンドテープが拡張されることで、切断起点領域を起点として加工対象物1が切断予定ラインに沿って分断(切断)される。ちなみに、加工対象物1の研削中、研削後又はエキスパンドテープ拡張時において、改質領域7を起点として改質領域形成ライン5(図10参照)に沿って加工対象物1が切断されてもよい。」
「【0046】また、本実施形態では、上述したように、研削後の加工対象物1aに亀裂C1のみが残存している。すなわち、改質領域7から延びる亀裂C1のみが研削後の加工対象物1aに残存するように、加工対象物1に改質領域7が形成されている。この場合、切削後の加工対象物1aには改質領域7が残存しないことから、発塵を低減することができる。」

(イ)上記記載から,引用例3には,次の技術が記載されている。
「ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して,前記レーザ改質領域を除去し,且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる技術。」

エ 引用例4
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2007-67175号公報(平成19年3月15日出願公開。以下,「引用例4」という。)には,図1ないし21とともに,次の記載がある。
「【0012】次に、図3に示すように、半導体ウェハ1の裏面1bを研削して半導体ウェハ1を薄膜化するBG(バックグラインディング)を行う(ステップS2)。この研削によって半導体ウェハ1の裏面1bには、0.05?0.1μm程度の凹凸1cが形成される。
【0013】次に、図4に示すように、ドライポリッシングによって、半導体ウェハ1の裏面1bを平坦化加工して鏡面仕上げする(ステップS3)。ここで、ドライポリッシングとは、例えば、シリカを含有させた繊維を押し固めて形成した研磨布を用いて表面を2μm程度削る(磨く)加工方法である。これにより、半導体ウェハ1の裏面1bの凹凸1cは0.0015μm程度となる。また、半導体ウェハ1は薄膜化され、その厚さは例えば90μm程度となる。ただし、ドライポリッシングは省略することもできる。
【0014】なお、半導体ウェハ1の裏面1bのバックグラインディング後の平坦化加工は、ドライポリッシングに限らず、ウェットエッチングなどでもよい。この場合のウェットエッチングは、例えば、スピンナで半導体ウェハ1を回転させながらフッ硝酸を供給してエッチングを行うスピンエッチングであり、ドライポリッシングよりもさらに凹凸1cを小さく仕上げることができる。」

(イ)上記記載から,引用例4には,次の技術が記載されている。
「ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理した後,前記ウェハの裏面を研磨布を用いて研磨処理を行う技術。」

オ 引用例5
(ア)平成28年8月9日付けの補正の却下の決定で引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2010-137349号公報(平成22年6月24日出願公開。以下,「引用例5」という。)には,図1ないし8とともに,次の記載がある。
「【0003】図8は、特許文献1に開示されるような従来技術におけるウェーハの裏面研削作用を示す断面図である。裏面研削する前には、粘着性フィルム11がウェーハ20の表面に貼付けられ、それにより、ウェーハ20はマウントフレーム36と予め一体化されている。
【0004】図8から分かるように、そのようなウェーハ20は、その裏面22が上方を向いた状態で、チャックテーブル120の吸着パッド510に載置されて真空吸着される。図示されるように、マウントフレーム36およびマウントフレーム36とウェーハ20との間に位置するフィルム11も吸着パッドに吸着される。次いで、研削砥石420が回転して、ウェーハ20の裏面22を研削する。」

(イ)上記記載から,引用例5には,次の技術が記載されている。
「ウェハの表面を真空吸着し,前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削する処理を一つのウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態で行う技術。」

カ 引用例6
(ア)平成28年8月9日付けの補正の却下の決定で引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2009-246240号公報(平成21年10月22日出願公開。以下,「引用例6」という。)には,図1ないし6とともに,次の記載がある。
「【発明を実施するための最良の形態】【0014】以下添付図面に従って本発明に係る半導体ウェーハ裏面の研削方法及びそれに用いる半導体ウェーハ裏面研削装置の好ましい実施形態について説明する。図1には、本発明に係る半導体ウェーハ裏面研削装置の代表的形態が示されているが、本発明はこれには限られない。本実施形態の裏面研削装置1は、装置本体1aと、支持基材13が貼り合わされたウェーハ積層体10の表面側をチャック3で真空吸着することによりウェーハ積層体10を保持するターンテーブル2と、研削砥石15を回転可能に支持する主軸ヘッド4と、を備えている。主軸ヘッド4の一形態としては、研削砥石15を鉛直方向(垂直方向)で上下動させる直動送り機構と、研削砥石15を鉛直方向の軸線R2回りで回転させる回動機構と、を有することができる。この例において、直動送り機構にボールねじ送り機構を適用し、回動機構にサーボモータを適用することができる。」

(イ)上記記載から,引用例6には,次の技術が記載されている。
「ウェハを真空吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを備え,前記ウェハの表面を真空吸着し,前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削する処理を一つのウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態で行う技術。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「レーザー光を照射して形成された改質領域」,「平面加工装置」,「ウェハを吸着するチャック」及び「インデックステーブル」はそれぞれ,本件補正発明における「レーザ改質領域」,「研削・研磨装置」,「ウェハチャック」及び「回転テーブル」に相当する。
(イ)引用発明における「粗研削ステージ」と「精研削ステージ」とはどちらも,本件補正発明における「研削処理を行う位置」に相当する。
(ウ)引用発明における「研磨ステージ」は,本件補正発明における「研磨処理を行う位置」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハを研削・研磨する研削・研磨装置において、
前記ウェハを吸着するウェハチャックを有する回転テーブルを備え、
前記回転テーブルを回転させて、前記ウェハチャックを、
前記ウェハの表面を吸着する位置と、
前記ウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理する位置と、
前記ウェハの裏面を研磨布を用いて加工変質層を除去する研磨処理を行う位置と、に順に移動させ、
前記研削処理と、前記研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに前記ウェハの表面を吸着した状態で行う研削・研磨装置。

<相違点1>
本件補正発明は「レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を進展させる研削・研磨装置」であって,「研削処理」において「前記レーザ改質領域を除去し、且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂をウェハの内部で進展させる」ものであるのに対し,引用発明は,研削処理単体でレーザ改質領域を除去するとはされておらず,また「レーザ改質領域から伸びる微小亀裂をウェハの内部で進展させる」ものとはされていない点

<相違点2>
本件補正発明は「ウェハチャック」で「ウェハを真空吸着する」「研削・研磨装置」であって,「研削処理」と,「研磨処理を含む一連の処理を一つの前記ウェハチャックに前記ウェハの表面を真空吸着した状態で行う」ものであるのに対し,引用発明は,チャックの吸着について「真空吸着」であるかどうか明記していない点

(4)判断
以下,相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について

引用例2には「ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハの裏面を一様に研削処理して,前記レーザ改質領域を除去し,且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる技術。」が記載されている。しかしながら,引用例2は段落【0042】に記載されているように,平面研削によってウェハを目的の厚さ(第2の厚さ)に薄型化するものであって,その後に研磨布を用いて研磨する事項を有していない。そして、引用発明は研削と研磨とによってウェハを目的の厚さに薄型化するものであるが,レーザ改質領域を除去するものではなく,微小亀裂が進展したウェハを研磨する事項も有していない。
そうすると,「研削・研磨処理」によってウェハを薄型化する引用発明の「研削処理」部分のみを引用例2に記載された技術に置換する,という動機が存在しないことから,「研削処理」及び「研磨処理」を有し,その上で「研削処理」で「レーザ改質領域」を除去し,「研磨処理」で「加工変質層」を除去する,という構成を,引用発明及び引用例2から当業者が容易に想到し得るとまではいえない。

また、引用例3には「ウェハの内部にレーザ改質領域を有するウェハの裏面を一様に研削砥石を用いて研削処理して,前記レーザ改質領域を除去し,且つ前記レーザ改質領域から伸びる微小亀裂を前記ウェハの内部で進展させる技術。」が記載されており,段落【0008】には「切削後の加工対象物には改質領域が残存しないことから、発塵を低減することができる。」と記載されているが,引用発明は,ウェハ外周部は非改質領域としており,ウェハ内部の改質領域が外部に露出するものではないことから,改質領域による発塵という課題を内在しておらず,引用発明に引用例3に記載された技術を適用する必要性が生じない。

したがって,引用発明に,仮に,引用例2又は3の技術思想を適用したとしても,本件補正発明が備える上記相違点1に係る構成には至らない。
また,上記補正の却下の決定又は拒絶査定において引用された,引用例4ないし6のいずれにも,当業者が上記相違点1を容易想到とし得ることの根拠となる記載はない。

イ よって,相違点2について検討するまでも無く,本件補正発明は,上記引用例1ないし6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

ウ 補正後の請求項1とカテゴリが異なるにすぎない請求項2に係る発明についても同様に,上記引用例1ないし6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。

エ また,補正後の請求項1及び2に係る発明について,他の拒絶すべき理由を発見しない。

オ よって,本件補正後の請求項1及び2に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。


第3 本願の請求項1及び2に係る発明について


1 本願の請求項1及び2に係る発明

上記のとおり,平成28年8月9日付けの補正の却下の決定は取り消されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は,「第2 補正の却下の決定の当否について」の「[理由]」の「1 補正の内容」の項の(1)に挙げた,補正後の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2 判断

そうすると,上記「第2」の「2 本件補正の適否」で挙げた理由と同様の理由により,本願の請求項1及び2に係る発明は,原査定の拒絶の理由において示された引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

3 むすび

以上のとおり,本願の請求項1及び2に係る発明は,いずれも引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2016-85471(P2016-85471)
審決分類 P 1 8・ 575- WYA (H01L)
P 1 8・ 121- WYA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西出 隆二  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 平岩 正一
長清 吉範
発明の名称 研削・研磨装置及び研削・研磨方法  
代理人 松浦 憲三  

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