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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
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管理番号 | 1323141 |
審判番号 | 不服2015-10578 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-04 |
確定日 | 2016-12-28 |
事件の表示 | 特願2011-550105「マルチプロジェクタシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日国際公開、WO2010/093361、平成24年 8月 2日国内公表、特表2012-517621〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2009年(平成21年)2月11日を国際出願日とする出願であって、平成25年3月26日付けで拒絶理由が通知され、同年6月27日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、平成26年3月27日付けで拒絶理由が通知され、同年9月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年2月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、平成28年3月4日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年5月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?15に記載された発明は、平成28年5月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。 「マルチプロジェクタシステムにおいて複数の合成画像にわたって首尾一貫した合成画像を生成するための方法であって、 複数の合成画像を生成するために複数のプロジェクタを、複数のサブグループに分割し、各サブグループが複数のプロジェクタからなり、各サブグループの各プロジェクタがサブグループ表示場所にサブフレームを投影するように向けられており、 前記複数のサブグループ間の目標表示特性を指定し、 前記指定された目標表示特性に基づいて前記複数のサブグループのそれぞれの目標パラメータを求め、 各サブグループの前記求められた目標パラメータに基づいて各サブグループの各プロジェクタのレンダリングパラメータを最適化し、各サブグループの各プロジェクタの出力を調整することを含む、方法。」 3.当審の拒絶理由の概要 当審の拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-239504号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 4.引用例 (1)引用例の記載 引用例には、「大型表示装置」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、イベントなどに用いて好適な大型表示装置に関する 【0002】 【従来の技術】従来、図6に示すような大型のマルチプロジェクタシステム(大型表示装置)では、人間が目で見て、スクリーン上の画像間のずれを補正していた。図の例では、投影型表示器であるマルチプロジェクタを4つ用意し、スクリーン上に拡大表示したい画像を4つの部分画像に分割して、この分割した部分画像をそれぞれマルチプロジェクタでスクリーン上の所定の領域に投影させて拡大表示させていた。」 イ 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記したように従来の複数のプロジェクタを有する大型表示装置では、スクリーン上に画像を投影したときに生じる画像間のずれの補正を、人間が目で見て行っていた。」 ウ 「【0010】本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、スクリーン上で1つの画像を構成する複数の部分画像の隣接する部分画像間の継ぎ目が目立たないように自動的に補正できる大型表示装置を提供することにある。 【0011】また、本発明の他の目的は、スクリーン上で1つの画像を構成する複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないうに(審決注:「目立たないように」の誤記と認める。)自動的に補正できる大型表示装置を提供することである。」 エ 「【0018】 【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1および図2は、本発明の一実施例に係る大型表示装置の構成を示すブロック図である。図1および図2の大型表示装置は、スクリーン1、プロジェクタ2_(-1)?2_(-4)、計算機3、画像データベース4、TVカメラ5および操作入力装置6から構成されている。 【0019】スクリーン1は、画像を表示するためのものである。プロジェクタ2_(-1)?2_(-4)は、スクリーン1上にカラー画像を投影する。各プロジェクタ2_(-1)?2_(-4)では、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の強度を調節することで、それぞれの色相を設定するようになっている。また、各プロジェクタ2_(-1)?2_(-4)は、スクリーン1上の所定の領域に画像が投影できるようにそれぞれ設置されている。 【0020】計算機3は、画像データベース4内の原画像を分割して、分割した画像(部分画像)を各プロジェクタ2_(-1)?2_(-4)に振り分けたり、TVカメラ5で撮像された画像(実画像)を基に、スクリーン1上での表示位置のずれおよび色相のずれの補正を行う。 【0021】画像データベース4には、スクリーン1への表示対象となる原画像が格納されているTVカメラ5は、スクリーン1上に表示された画像を撮像する。 【0022】操作入力装置6は、外部からの指示を計算機3に入力するためのものである。つぎに、計算機3の詳細な構成を図3を用いて説明する。図3に示すように、計算機3は、制御部300、原画像入力部301、原画像分割部302、補正部303、画像出力部304、実画像入力部306、テストパターン描画部307、テストパターン検出部308、位置ずれ算出部309、位置ずれ総和算出部310、位置補正係数算出部311、色相検出部312、色相ずれ算出部313、色相ずれ総和算出部314、および色相補正係数算出部315から構成されている。 【0023】制御部300は、図1の計算機3外部の操作入力装置6により入力される指示に従って、計算機3内の各種処理部の制御を行う。原画像入力部301は、計算機3外部の画像データベース4から図1のスクリーン1上への投影の対象となる原画像を入力する。 【0024】原画像分割部302は、原画像入力部301により入力された原画像を4つの部分画像に分割する。補正部303は、表示位置補正部303aと色相補正部303bとから構成される。表示位置補正部303aは、位置補正係数算出部311で算出される位置補正係数を基に、原画像分割装置302で分割された各部分画像のスクリーン1上での表示位置を補正する。色相補正部303bは、色相補正係数算出部315で算出される色相補正係数を基に、原画像分割装置302で分割された各部分画像の色相を補正する。 【0025】画像出力部304は、補正部303により表示位置または色相が補正された各部分画像を、それぞれ計算機3外部の対応するプロジェクタ2_(-1)?2_(-4)に出力する。」 オ 「(色相のずれの補正)つぎに、色相のずれを補正する場合の大型表示装置の動作を説明する。 【0051】この場合、オペレータが各プロジェクタ2_(-i)(i=1,2,3,4)に任意に同一色相(R,G,B)を設定する。ここで、プロジェクタ2_(-i)によりスクリーン1上に表示される部分画像の色相を示す色相情報(ρi ,γi ,βi )は、補正を考慮に入れた場合には、次式(5)および(6)で表現することができる。 【0052】 【数3】 【0053】図1のスクリーン1上に表示された実画像は、TVカメラ5によって撮像されて、計算機3内部の実画像入力部306に出力される。実画像入力部306は、TVカメラ5からの実画像を色相検出部312に出力する。 【0054】色相検出部312は、実画像入力部306からの実画像の各部分画像毎にそれぞれの色相を示す色相情報を検出し、各部分画像の色相情報を色相ずれ算出部313に出力する。 【0055】色相ずれ算出部313は、色相検出部312から出力された各部分画像の色相情報を基に、(スクリーン1上で)隣接する部分画像間での色相情報の差の2乗δ^(2 )をスクリーン上1での画像の継ぎ目毎に算出し、求めた色相情報の差の2乗δ^(2) を出力する。例えば、プロジェクタ2_(-1)の投影する部分画像とプロジェクタ2_(-2)の投影する部分画像との色相情報の差の2乗であれば、次式(7)で表現される。 【0056】 δ^(2 )=(ρ1 -ρ2 )^(2) +(γ1 -γ2 )^(2) +(β1 -β2 )^(2) …(7) 色相ずれ算出総和部314は、色相ずれ算出部313から出力された色相情報の差の2乗δ^(2) の総和Δ=Σδ^(2) を算出し、算出した色相情報の差の2乗δ^(2 )の総和Δ=Σδ^(2 )を色相補正係数算出部315に出力する。 【0057】色相補正係数算出部315は、最小2乗法を用いて、色相ずれ算出総和部314から出力された総和Δ=Σδ^(2) を最小にするような補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)を算出し、算出した補正係数ai ?ci を補正部303に出力する。 【0058】補正部303では、内部の表示位置補正部303により式(6)に各補正係数ai ?ci が式(6)に設定される。表示位置補正部303は、この式(6)を用いて原画像分割部309から出力される部分画像の色相の補正を行う。 【0059】これにより、スクリーン1上に画像を拡大表示したときに、隣接する部分画像間で生じる色相のずれを目立たないようにすることができる。なお、上記大型表示装置は、警察、自衛隊等の作戦表示装置として適用することができる。」 カ 図2 キ 図6 (2)引用発明の認定 ア 上記(1)ア?ウから、引用例には、「投影型表示器であるマルチプロジェクタを4つ用意し、スクリーン上に拡大表示したい画像を4つの部分画像に分割して、この分割した部分画像をそれぞれマルチプロジェクタでスクリーン上の所定の領域に投影させて拡大表示したマルチプロジェクタシステム」において、「人間が目で見て、スクリーン上の画像間のずれを補正していた」(【0002】)ものを、「スクリーン上で1つの画像を構成する複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないように自動的に補正できる」ようにした「マルチプロジェクタシステム(大型表示装置)」(【0011】)が記載されていることがわかる。 イ 上記(1)エから、該「マルチプロジェクタシステム」は、画像を表示するためのスクリーン1を備え、4つのマルチプロジェクタであるプロジェクタ2_(-1)?2_(-4)は、スクリーン1上にカラー画像を投影するものであることがわかる。 ウ 上記(1)オから、「スクリーン上で1つの画像を構成する複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないように自動的に」される「補正」は、 「(1)各プロジェクタ2_(-)i(i=1,2,3,4)に任意に同一色相(R,G,B)を設定し、 (2)スクリーン1上に実画像を表示し、 (3)スクリーン1上に表示された実画像は、TVカメラ5によって撮像されて、計算機3内部の実画像入力部306に出力され、実画像入力部306は、TVカメラ5からの実画像を色相検出部312に出力し、 (4)色相ずれ算出部313によって、色相検出部312から出力された各部分画像の色相情報を基に、スクリーン1上で隣接する部分画像間での色相情報の差の2乗δ^(2 )をスクリーン上1での画像の継ぎ目毎に算出し、求めた色相情報の差の2乗δ^(2) を出力し、 (5)色相ずれ算出総和部314によって、色相ずれ算出部313から出力された色相情報の差の2乗δ^(2) の総和Δ=Σδ^(2) を算出し、算出した色相情報の差の2乗δ^(2 )の総和Δ=Σδ^(2 )を色相補正係数算出部315に出力し、 (6)色相補正係数算出部315によって、最小2乗法を用いて、色相ずれ算出総和部314から出力された総和Δ=Σδ^(2) を最小にするような補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)を算出し、算出した補正係数ai ?ci を補正部303に出力して、表示位置補正部303によって、部分画像の色相の補正を行う」ものであることがわかる。 ここで、「スクリーン上」の「1つの画像」は、上記アの「拡大表示したい画像」であることは明らかである。 エ 上記ア?ウより、引用例には、 「投影型表示器である4台のプロジェクタ2_(-)i(i=1,2,3,4)を用意し、拡大表示したい画像を4つの部分画像に分割して、この分割した部分画像をそれぞれプロジェクタでスクリーン1上の所定の領域に投影させて拡大表示させるマルチプロジェクタシステムにおいて、 複数の部分画像からスクリーン上で1つの拡大表示したい画像を構成し、複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないように自動的に補正する方法において、 (1)各プロジェクタ2_(-)i(i=1,2,3,4)に任意に同一色相(R,G,B)を設定し、 (2)スクリーン1上に実画像を表示し、 (3)スクリーン1上に表示された実画像は、TVカメラ5によって撮像されて、計算機3内部の実画像入力部306に出力され、実画像入力部306は、TVカメラ5からの実画像を色相検出部312に出力し、 (4)色相ずれ算出部313によって、色相検出部312から出力された各部分画像の色相情報を基に、スクリーン1上で隣接する部分画像間での色相情報の差の2乗δ^(2 )をスクリーン上1での画像の継ぎ目毎に算出し、求めた色相情報の差の2乗δ^(2) を出力し、 (5)色相ずれ算出総和部314によって、色相ずれ算出部313から出力された色相情報の差の2乗δ^(2) の総和Δ=Σδ^(2) を算出し、算出した色相情報の差の2乗δ^(2 )の総和Δ=Σδ^(2 )を色相補正係数算出部315に出力し、 (6)色相補正係数算出部315によって、最小2乗法を用いて、色相ずれ算出総和部314から出力された総和Δ=Σδ^(2) を最小にするような補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)を算出し、算出した補正係数ai ?ci を補正部303に出力して、表示位置補正部303によって、部分画像の色相の補正を行う方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 5.対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「投影型表示器である4台のプロジェクタ2-i(i=1,2,3,4)」のそれぞれは、本願発明の「プロジェクタ」に相当する。 イ 引用発明の「投影型表示器である4台のプロジェクタ2-i(i=1,2,3,4)」では、4台がそれぞれ、異なる部分画像の投影に用いられることから、引用発明の「投影型表示器である4台のプロジェクタ2-i(i=1,2,3,4)」は、4つのサブグループに分割されているということができる。 ウ 引用発明の「拡大表示したい画像」は、「4つの部分画像に分割して、この分割した部分画像をそれぞれプロジェクタでスクリーン1上の所定の領域に投影させて拡大表示させ」たものであるから、引用発明の「部分画像」は、本願発明の「サブフレーム」に相当し、引用発明の「4つの部分画像に分割して、この分割した部分画像をそれぞれプロジェクタでスクリーン1上の所定の領域に投影させ」る構成は、本願発明の「各サブグループの各プロジェクタがサブグループ表示場所にサブフレームを投影するように向けられて」いる構成に相当する。 エ 引用発明の「複数の部分画像からスクリーン上で1つの画像を構成し、複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないように自動的に補正する方法」において、「複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たない」ようにすることは、本願発明の「複数の合成画像にわたって首尾一貫した合成画像を生成するための方法」において「首尾一貫した」「合成画像を生成する」ことに相当する。 そして、引用発明の「複数の部分画像からスクリーン上で1つの画像を構成し、複数の部分画像の隣接する部分画像間の色相のずれが目立たないように自動的に補正する方法」と、本願発明の「複数の合成画像にわたって首尾一貫した合成画像を生成するための方法」とは、「複数の」「画像にわたって首尾一貫した合成画像を生成するための方法」である点で共通する。 オ 引用発明は、「各プロジェクタ2-i(i=1,2,3,4)に任意に同一色相(R,G,B)を設定し」ているから、引用発明の「任意」の「同一色相(R,G,B)」は、本願発明の「複数のサブグループ間の目標表示特性」に相当する。 そして、引用発明の「各プロジェクタ2_(-)i(i=1,2,3,4)に任意に同一色相(R,G,B)を設定」する構成は、本願発明の「複数のサブグループ間の目標表示特性を指定」する構成に相当する。 カ 引用発明では、「補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)」を求め、該補正係数に基いて、プロジェクタの出力を調整していることから、引用発明の「補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)」は、本願発明の「目標パラメータ」に相当し、引用発明の「補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)を算出」することは、本願発明の「目標パラメータを求め」ることに相当する。 そして、引用発明の「部分画像」は、本願発明の「複数のサブグループ間の目標表示特性」に相当する「任意」の「同一色相(R,G,B)」が設定されたものであるから、引用発明の 「補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)を算出し、算出した補正係数ai ?ci を補正部303に出力して、表示位置補正部303によって、部分画像の色相の補正を行う」構成は、本願発明の「指定された目標表示特性に基づいて前記複数のサブグループのそれぞれの目標パラメータを求め」る構成に相当する。 キ ア?カより、本願発明と引用発明とは、 「マルチプロジェクタシステムにおいて複数の画像にわたって首尾一貫した合成画像を生成するための方法であって、 複数の画像を生成するために複数のプロジェクタを、複数のサブグループに分割し、各サブグループがプロジェクタからなり、各サブグループの各プロジェクタがサブグループ表示場所にサブフレームを投影するように向けられており、 前記複数のサブグループ間の目標表示特性を指定し、 前記指定された目標表示特性に基づいて前記複数のサブグループのそれぞれの目標パラメータを求めることを含む、方法。」である点で一致し、つぎの点で相違する。 (相違点) 各サブグループのプロジェクタの数が、本願発明では「複数」であるのに対し、引用発明は1台であって、このため、「合成画像」を構成する複数の画像の各画像が、本願発明では、「合成画像」であるのに対し、引用発明の「拡大表示したい画像」の4つの「部分画像」のそれぞれは合成画像ではなく、本願発明は、「各サブグループの前記求められた目標パラメータに基づいて各サブグループの各プロジェクタのレンダリングパラメータを最適化し、各サブグループの各プロジェクタの出力を調整する」のに対し、引用発明は、該「部分画像」を投影する各サブグループのプロジェクタは1台であって、このような規定はされない点。 (2)判断 相違点について検討する。 合成画像の解像度よりも低い解像度を有するプロジェクタを複数使い、それぞれのプロジェクタの像を重ねて、本来投影したい画像との差異が少ない高画質の投影像が映し出されるようにすることは周知である。 必要であれば、原査定の理由に引用された特開2009-8974号公報の下記の記載を参照。 「【0001】 本発明は画像生成装置及び方法、プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、本来投影したい画像より低解像度であり、投影面に投影される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように投影面に投影されることで、本来投影したい画像との差異が少ない高画質の投影像が映し出されるようになる位相画像を生成する画像生成装置及び方法、プログラム、並びに記録媒体に関する。」 「【0022】 図3は、入力画像より低解像度の投影画像を投影する投影装置を複数台利用して、入力画像と同等の解像度でかつ入力画像と同等の画質の投影像が投影面に映し出されるようにすることができる画像投影システム1の構成例を示している。 【0023】 画像投影システム1は、画像処理装置11、4個の投影装置12A,12B,12C,12D、及び投影面13から構成される。 ・・・(略)・・・ 【0027】 各投影装置12は、透過型液晶プロジェクタ、反射型液晶プロジェクタ、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタ等から構成され、画像処理装置11から供給された位相画像を、4個の位相画像がそれぞれ縦横方向に位相画像の半画素分互いにずれて(すなわち、画素ピッチをdとした場合の画素の縦横の大きさの半分のずらし量d/2だけ互いにずれて)重なり合うように投影面13に投影する(以下、このような投影を重畳投影とも称する)。」 引用発明においても、本来投影したい画像との差異が少ない高画質の投影像が映し出されるようにする課題が存在することは明らかであるから、引用発明の各プロジェクタ2_(-)i(i=1,2,3,4)から投影される複数の各「部分画像」の投影に、上記周知技術を採用して、複数の各「部分画像」を、それぞれ複数のプロジェクタを用いた合成画像とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、各「部分画像」の投影に複数のプロジェクタを用いるにあたっては、4つの「部分画像」から、「拡大表示したい画像」とするには、用いられた複数のプロジェクタについて、本願発明の「目標パラメータ」に相当する、引用発明の「補正係数ai ?ci (ただしi=1,2,3,4)」に基づき、各プロジェクタのレンダリングパラメータを最適化し、各プロジェクタの出力を調整しなければならないことは当然であるから、引用発明及び周知技術に基いて、上記相違点に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-07-22 |
結審通知日 | 2016-07-26 |
審決日 | 2016-08-12 |
出願番号 | 特願2011-550105(P2011-550105) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 請園 信博 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
川端 修 土屋 知久 |
発明の名称 | マルチプロジェクタシステム及び方法 |
代理人 | 西山 清春 |
代理人 | 古谷 聡 |