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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1323228
審判番号 不服2015-18063  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-02 
確定日 2017-01-17 
事件の表示 特願2011- 70947「パターン形成方法、処理容器内の部材の温度制御方法、及び基板処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-204806、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月28日の出願であって、平成26年3月26日付けで審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年7月1日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成27年10月2日付けで審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、平成28年7月29日付けで当審から拒絶理由を通知し、同年9月27日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年9月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし4に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)、請求項3に係る発明(以下、「本願発明2」という。)、および、請求項4に係る発明(以下、「本願発明3」という。)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。」
「【請求項3】
基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該パターンの面内均一性を高めるために該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法において、
前記処理容器内の部材の温度を設定する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する測定工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とする処理容器内の部材の温度制御方法。」
「【請求項4】
処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する形成手段と、
前記パターンの面内均一性を高めるために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材と、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段と、
前記処理容器に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内を所定の真空度までに減圧する排気手段と
を備え、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する ことを特徴とする基板処理システム。」

第3 査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成26年11月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項 1,5
・引用文献等 1-3
先に通知した引用文献1には,スキャトロメトリ装置によりエッチング形状を求めること,および,マスク形状や被エッチング材料の形状に変動があった場合にエッチング条件を変更すること,一例として電極温度をコントロールすることが記載されている(特に段落[0052]-[0056],[図10]を参照されたい。)。
平成27年1月15日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
測定する工程と、
前記測定した結果に基づいて、前記処理容器内の部材の温度へフィードバックして前記処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。
[相違点]
温度制御を行う観点として,本願発明が,パターンの形状又は寸法を測定し,測定した前記パターンの形状又は寸法のばらつきに基づいているのに対して,引用文献1には,エッチング形状を求めマスク形状や被エッチング材料の形状に変動があった場合に基づいている点。
上記相違点について検討するに,引用文献1には,エッチング形状を求めマスク形状や被エッチング材料の形状に変動があった場合に温度制御を行うことが記載されており,この記載から,パターンの形状を測定し,測定したパターンの形状に基づいて温度制御を行うことは当業者が容易に想到し得るものと認められる。また,引用文献2(特に段落[0035]-[0046],[0095],[0120],[0132],[0214]-[0218],[0224],[図13]を参照されたい。)には,エッチング処理後のパターン構造の寸法などウェハの表面構造を測定し,サセプタの温度などエッチング条件を補正することが開示されており,引用文献3の段落[0009]には,寸法データから寸法ばらつきの少ない温度分布を実現するエッチング条件を求め,この条件によりエッチング処理を行うことが開示されている。このことから,これらの文献には[相違点]の寸法のばらつきに基づいて温度制御を行う技術が開示されているものと認められる。

出願人は、平成27年1月15日付け意見書において,本願の請求項1に係る発明にて特定した「測定したパターンの形状又は寸法のばらつきに基づいて、処理容器内の部材の温度へフィードバックして該処理容器内の部材の温度を制御する」ことについては、何れの引例にも開示も示唆もなされていない旨、主張しているが,引用文献1にはエッチング形状を求めマスク形状や被エッチング材料の形状に変動があった場合に電極温度をコントロールすることが記載されており,この記載から測定したパターンの形状に基づいて処理容器内の部材の温度へフィードバックして該処理容器内の部材の温度を制御する構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものと認められる。
したがって、出願人の主張は、採用できない。

よって、請求項1に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,請求項1と同じ構成要素を持ちカテゴリーの異なる請求項5においても同様に、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 2,6,8,9
・引用文献等 1-4
引用文献4(第[0034]-[0036],[0043]段落の記載および図3を参照。)に記載されているように,エッチングされたウエハについて複数の位置で測定し,それによりエッチングレシピを調整することはすでに知られた技術である
よって、請求項2,6,8,9に係る発明は、引用文献1-4に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 3
・引用文献等 1-5
引用文献5(第[0002]-[0005]段落の記載を参照。)には,パターンウエハ上のエッチング構造体のプロファイルを測定するにあたり,幅や段の高さ,側壁の角度を構造体のパラメータとすることが開示されている。
よって、請求項3に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 4,7,10
・引用文献等 1-3
引用文献2の段落[0217]には,エッチング条件のパラメータとしてサセプタの温度を制御することが開示されている。
よって、請求項4,7,10に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
1.特開2010-272758号公報
2.特開2005-033187号公報
3.特開2006-216822号公報(新たに引用された文献)
4.特表2006-506812号公報
5.特表2004-510152号公報」

また、平成26年11月12日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・理由 1,2
・請求項 1,4,5,7
・引用文献等 1または2
・備考
引用文献1(第【0052】-【0056】段落の記載および図10を参照。)には,スキャトロメトリによりエッチング形状を求め,温調装置に制御信号が送られ形状変動を抑制すること,例として電極温度をコントロールすることが記載されている。
引用文献2(第【0095】,【0120】,【0132】,【0214】-【0218】,【0224】段落の記載および図13を参照。)には,エッチングパターンを測定した結果により,サセプタの温度などエッチング条件を変更することが記載されている。
引用文献1または2に記載された構成と本願発明とに格別の差異が認められない。

・理由 2
・請求項 2,6,8?10
・引用文献等 1?3
・備考
引用文献3(第【0034】-【0036】,【0043】段落の記載および図3を参照。)に記載されているように,エッチングされたウエハについて複数の位置で測定し,それによりエッチングレシピを調整することはすでに知られた技術である。

・理由 2
・請求項 3
・引用文献等 1?4
・備考
引用文献4(第【0002】-【0005】段落の記載を参照。)には,パターンウエハ上のエッチング構造体のプロファイルを測定するにあたり,幅や段の高さ,側壁の角度を構造体のパラメータとすることが開示されている。


引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2010-272758号公報
2.特開2005-033187号公報
3.特表2006-506812号公報
4.特表2004-510152号公報」

2 原査定の理由についての当審の判断
(1)引用例1の記載事項及び引用例1発明
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-272758号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。以下同じ。)

(ア)「【実施例3】
【0052】
実施例1および実施例2に示す被エッチング材のエッチング方法において、長期間安定にエッチング形状を制御するエッチング方法について説明する。
【0053】
まず、本発明によるプラズマエッチング方法を実施するプラズマエッチング装置構成の概要を図10に示す。図10の実施の形態は本発明を実施するプラズマエッチング装置の基本的構成である。プラズマエッチング装置は、ガス導入手段108と真空排気手段117を有する真空容器101に磁場コイル107が配置されており、同軸ケーブルによりアンテナ109に導入される電磁波と該磁場コイル107による磁場の相互作用で真空容器101内に導入されたガスをプラズマ化する。この時、バイアス用電源110より発振された電磁波を整合器111とブロッキングコンデンサを用いて試料設置電極114に印加することで、高速に被処理体102のプラズマ処理を行うことができる。本実施の形態におけるアンテナ109には第一の整合器104を介し450MHzのプラズマ生成用の第一の電源103と、第二の整合器106を介し、4MHzの第二の電源105の2つの周波数が印加されている。被処理体102は12インチ径であり、該被処理体とアンテナ109の間隔は3cmとなっている。アンテナ109は、シリコンで形成されており、また該シリコンの表面に形成した複数の孔から原料ガスが真空容器101内に導入される構成となっている。また処理室内を所定の圧力に減圧するため、例えばターボ分子ポンプなどの排気手段117と、処理室内を所定の圧力値に調節するためのガス圧力調整バルブ116が該排気手段の前段に設置されている。4MHzの第二の電源105の電磁波は、アンテナ109表面とプラズマとの間で形成される電位を調節する機能を持つ。該4MHzの第二の電源105の出力を調節することでシリコン表面の電位が任意に調節でき、アンテナ109とプラズマ内活性種の反応が制御できる。処理室内には被エッチング材(被処理体)102を戴置するためのステージ112が設置されている。該ステージ(戴置台)112には被処理体102を吸着するための試料設置電極114と被処理体を上に持ち上げるためのプッシャーピン(図示せず)が設置されている。また、試料設置電極114には温調装置115が接続されており、電極温度を制御することができる。
【0054】
さらに、処理室内にはスキャトロメトリ装置を具備している。スキャトロメトリとは、非特許文献1に示すように、外部光を被処理体に照射した際の反射光の偏光状態を測定し、そこで得られるスペクトル分布から、データベースを基に解析し、被処理体の形状を計算により求める手法である。
【0055】
実施例1および実施例2に示す本発明では、マスク形状を制御することが、ボーイングを抑制する上で重要である。スキャトロメトリにより、エッチング形状を求めることができる点を利用し、エッチング終了後、外部光源118、発光モニタ119、発光を解析する装置120から構成されるスキャトロメトリ装置により、エッチング形状を求めることができる。もし、マスク形状または被エッチング材の形状に変動があった場合は、通信線を介してフィードバック手段121に制御信号が送られ、さらに通信線を介してガス導入手段108、ガス圧力調整バルブ116、温調装置115に制御信号が送られ、形状変動を抑制することができる。例えば、マスク表面に近い開口が所望の狭め量となった場合には、フィードバック手段を介して、CFポリマーの堆積速度を増加する効果のあるフルオロカーボンガス流量を増加することで、マスク表面近くの開口を狭めることができる。本実施例では、フィードバック制御するガスパラメータをフルオロカーボンガス流量としたが、CFポリマーを除去する効果のあるO2流量を減少させることによっても同様の効果が得られることは言うまでも無い。また、ガス圧力調整装置や電極温度をコントロールすることにより、形状を安定化させることができるのは勿論である。
【0056】
なお、上記プラズマエッチング装置では、エッチング終了後にスキャトロメトリ装置により形状を求めたが、エッチングをしながらスキャトロメトリにより形状を求め(in-situ観測)、フィードバックすることでエッチングしても良い。また、このプラズマエッチング装置では、スキャトロメトリ装置を、処理室に取り付けて計測しているが、ロードロック室やアンロードロック室に設置しても良い。さらに、エッチング装置とは別に、独立してスキャトロメトリ装置を追加しても良い(ex-situ観測)。この様に、スキャトロメトリ装置により求めた形状結果を基にフィードバックをかけることにより、長期安定して形状制御することが可能になる。また、スキャトロメトリ装置と同等あるいはそれを上回る形状測定結果が得られる手法であれば、スキャトロメトリ装置以外の形状測定手段であっても同様の効果が得られることは言うまでも無い。」

(イ)「上記(ア)より、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「プラズマエッチング装置であって、
真空容器101にガス導入手段108と真空排気手段117を有し、
被エッチング材(被処理体)102を戴置するためのステージ112が設置され、該ステージ(戴置台)112には被処理体102を吸着するための試料設置電極114が設置され、また、試料設置電極114には温調装置115が接続され、電極温度を制御することができ、
外部光を被処理体に照射した際の反射光の偏光状態を測定し、そこで得られるスペクトル分布から、データベースを基に解析し、被処理体の形状を計算により求める、スキャトロメトリ装置を備える、
プラズマエッチング装置であって、
長期間安定的にエッチング形状を制御するために、
非エッチング材のエッチング終了後、スキャトロメトリ装置により、エッチング形状を求め、
被エッチング材の形状に変動があった場合、通信線を介してフィードバック手段121に制御信号が送られ、さらに通信線を介して温調装置115に制御信号が送られ、試料設置電極の電極温度をコントロールすることにより、形状を安定させる、
エッチング方法。」

(2)引用例2の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2005-033187号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0035】
上記目的を達成するために,別の観点による本発明の処理システムは,被処理体にエッチング処理を施すエッチング処理装置と,エッチング処理された被処理体の表面構造の寸法を,スキャトロメトリ法を用いて測定する表面構造測定装置(構造測定装置)と,前記表面構造の測定寸法を予め設定されている許容値と比較し,当該比較結果に基づいて前記エッチング処理装置におけるエッチング処理の継続又は中断を決定する制御装置と,を備えた。」

(イ)「【0094】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る処理システム2について、以下図面を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る処理システム1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0095】
処理システム2は、図11に示すように、減圧処理装置10と、レシピ格納部14と、構造判別装置80と、システム制御装置40と、ロードポート50と、搬送機構60と、アライメント部70と、から構成され、処理基体であるウェハWにエッチング処理を施し、該エッチング処理後のウェハWの表面構造を反射率測定法(Reflectmetry)により判別する。
・・・ 中 略 ・・・
【0121】
減圧処理装置10は、エッチング処理が終了すると、サセプタ12及び上部電極13への高周波電圧の印加を停止するとともに、ガス導入管134のバルブ135を閉鎖する。また、減圧処理装置10は、チャンバ11内をインサイチュアッシング雰囲気にする。
・・・ 中 略 ・・・
【0123】
減圧処理装置10は、インサイチュアッシング処理が終了すると、サセプタ12及び上部電極13への高周波電圧の印加を停止するとともに、ガス導入管134のバルブ135を閉鎖する。また、減圧処理装置10は、サセプタ12への直流電圧の印加を停止するとともに、チャンバ11内を常圧雰囲気に戻す。さらに、減圧処理装置10は、昇降機構123を駆動することにより、サセプタ支持台121とともにウェハWを載置したサセプタ12を所定位置まで下降させる。システム制御装置40は、ゲートバルブ114を開放し、変質硬化層9とダメージ層Aとが除去されたウェハWを減圧処理装置10から搬出し、搬出した後、ゲートバルブ114を閉鎖する。システム制御装置40は、減圧処理装置10から搬出したウェハWを構造判別装置80に搬入し、搬入したウェハWを載置台811に載置する。
【0124】
光学部81は、発光器812から地面に対して白色光を水平に放出し、反射鏡813において白色光を垂直下方向に反射させ、反射させた白色光をレンズ814を介してウェハWに照射する(ステップS204)。光学部81は、ウェハWからの反射光を受光し、受光した反射光を電気信号に変換して、変換した電気信号を構造判別部82に供給する。
【0125】
構造判別部82は、光学部81から供給される電気信号に基づいて反射光の各波長λにおける強度I反射光を解析する。また、構造判別部82は、ウェハWに照射した光の各波長λにおける強度I入射光と、解析した反射光の各波長λにおける強度I反射光と、から反射率(=I反射光/I入射光)を算出する(ステップS205)。
【0126】
構造判別部82は、算出した反射率(=I反射光/I入射光)とROMに格納する所定の重回帰式とを用いて重回帰分析して構造パラメータを算出する(ステップS206)。
【0127】
構造判別部82は、算出した構造パラメータから、複数のコンタクトホール7が形成されたウェハWの表面構造を推定する(ステップS207)。構造判別部82は、算出した構造パラメータをシステム制御装置40に供給する。
【0128】
システム制御装置40は、メモリに格納した構造パラメータと構造判別部82から供給された構造パラメータとを比較することにより、減圧処理装置10において指示されたコンタクトホールの深さ等と、実際に形成されたコンタクトホール6の深さ等と、を比較する(ステップS208)。
【0129】
システム制御装置40は、指示されたコンタクトホールの深さよりも、実際に形成されたコンタクトホール7の深さの方が浅い場合、チャンバ11に供給するガス流量を増加させるべく、(初期)設定されたエッチング条件GrをGr+ΔGに補正する(ステップS209)。システム制御装置40は、補正したエッチング条件(Gr+ΔG)を減圧処理装置10に供給することにより、エッチング条件を減圧処理装置10にフィードバックする。
【0130】
減圧処理装置10は、システム制御装置40からエッチング条件(Gr+ΔG)が供給されると、メモリに格納しているエッチング条件を(Gr)から(Gr+ΔG)に書き換えて、エッチング条件を設定変更する(ステップS210)。」

(ウ)「【0217】
さらに、上記第2及び第4の実施の形態において、エッチング条件のパラメータをエッチングガスの流量とした。しかし、本発明は、これに限定されず、エッチング条件のパラメータとして、チャンバ11内の圧力、第1及び第2の高周波電源の電力及び周波数、ガス種、サセプタ12の温度、サセプタ12と上部電極13とのギャップ等を用いてもよい。」

(エ)上記(ア)-(ウ)より、引用例2には、以下の事項が記載されていると認められる。

「被処理体にエッチング処理を施すエッチング処理装置において、エッチング終了後、エッチング処理された被処理体の表面構造の寸法を、スキャトロメトリ法を用いて測定し、前記表面構造の測定寸法を予め設定されている許容値と比較し、当該比較結果に基づいて前記エッチング処理装置における、サセプタの温度を設定変更すること。」


(3)引用例3の記載事項
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-216822号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0009】
本発明の第一の目的は、異なる温度条件により得られたウェハ面内の寸法データから、寸法ばらつきの少ないウェハ温度分布を実現するエッチング条件を求め、この条件により処理することによりウェハ面内の寸法ばらつきの少ないウェハ処理装置およびウェハ処理方法を提供することである。」
(イ)「【0015】
図1および図2は、第一の実施例にかかる本発明を有磁場マイクロ波プラズマ処理装置)ウェハ処理装置)に適用した例を示す図である。図2は本発明の第一の実施例にかかるプラズマ処理装置の模式的な断面図である。図1は第一の実施例のウェハステージの模式的な断面図である。まず、図2により有磁場マイクロ波プラズマ処理装置を簡単に説明する。
【0016】
真空チャンバ3上部に石英窓14を設置し、真空処理室1内にウェハステージ8を用いてウェハ9を固定する。このウェハステージ8は静電チャック機能を有しており、詳細は後述する。石英窓14の下には処理室内に処理ガスを導入するガス穴43が設けられたシャワープレート44がOリング45を挟んで組み込まれている。これら石英窓とシャワープレートの間に処理ガス13を送り込むとガス穴から処理室に導入される。処理ガスは、マイクロ波発振器19で発生し導波管4を通って導入されるマイクロ波5と、真空チャンバ3の周りに取り付けられたコイル6が発生する磁場との相互作用によりプラズマ状態7となっている。このプラズマに半導体ウェハがさらされることにより処理(ここではエッチング処理)が行われるが、特にイオンの入射を制御してエッチング状態を制御するのがコンデンサ18を介して接続された高周波電源10である。静電吸着装置への電圧の印加は直流電源11によりおこなわれる。なお、コイル17は高周波成分の流れ込みを防止するコイルである。真空ポンプ12は、バルブ15の開度調節により処理室内の圧力を一定に保っている。
【0017】
引き続き、図1を用いて本実施例のウェハステージ8の構成を詳細に説明する。ウェハステージ8の基材2の材質はアルミニウムである。基材の外周の上面に段差20が設けてあり、この段差には基材と電気的に絶縁する目的で、高抵抗アルミナ21が溶射されている。この高抵抗アルミナの表面にはタングステンのヒータ22が溶射されている。ヒータへの給電は高抵抗アルミナ膜と基材に設けた貫通穴16から行う。本実施例では、基材2に貫通穴16を設けておき、この貫通穴16に電気絶縁をとるためのセラミックスパイプ23が埋め込んであり、高周波電圧が流れ込むのを防止するフィルタとなるコイル27を介してヒータ電源28に接続してある。ヒータ電源28の出力は、制御用コンピュータ37により制御されている。なお、図1ではヒータの給電部は1箇所のみ記述しているが、実際には2箇所必要であることはいうまでもない。また、本実施例ではヒータ電源28は直流電源であるが、必ずしもそうである必要は無く交流電源であってもよい。これら高抵抗アルミナ、およびヒータの表面に静電吸着膜となるセラミックス膜29を溶射している。したがって、プラズマが発生した状態で、基材に直流電圧を印加すると基材と半導体ウェハ間に電位差が生じ、セラミックス膜に電荷がチャージしてクーロン力により半導体ウェハを固定することができる。この構成で、ヒータに投入する電力を調節すれば基材の外周付近の温度を調節することができるので、半導体ウェハの温度分布とりわけ外周付近の温度分布を調節することができる。また、本実施例ではヒータは1系統のみとしたが、複数系統とすれればウェハの温度分布をより詳細に調節することが可能となる。
【0018】
実際のエッチングでは、半導体ウェハにバイアス電圧を発生させてプラズマ中のイオンを引き込んでエッチングを行うが、このとき半導体ウェハには入熱がともなう。この入熱にともなうウェハ温度の上昇はエッチング形状に大きく影響する。したがって、半導体ウェハは冷却する必要があるが、処理室の圧力は数Pa程度に減圧されているため、積載しただけでは熱伝達が不十分である。そこで、通常は半導体ウェハとウェハステージの間にヘリウム等の冷却ガスを導入して熱伝達を確保する。この熱伝達率は、導入する冷却ガスの圧力に依存する。本実施例では、後述する理由により半導体ウェハの半径方向に温度分布を持たせる目的で、半導体ウェハの中心と外周部の圧力を独立に制御できる冷却ガス導入システムを持たせている。すなわち、ウェハステージの中心には貫通穴30を1個配置し、外周部には貫通穴24を周方向に均等に8個配置している。それぞれの貫通穴には独立にヘリウムガスの流量制御器25,46と圧力計47,48によりヘリウムガスを供給している。本実施例では、外周付近のヘリウム圧力と、これより内径位置でのヘリウム圧力を独立に管理しやすくするために、ウェハステージの表面にシールとなるシール吸着部47が設けてある。流量制御器25,46の流量制御は、圧力計47,48の信号を制御用コンピュータ37に取り込み、制御用コンピュータにあらかじめ組み込まれたアルゴリズムに従い制御する。
【0019】
プラズマからの入熱は、最終的には基材内を循環する冷媒により除熱される。本実施例では、半導体ウェハの半径方向に温度分布を持たせる目的で、冷媒溝31,32にはそれぞれ異なる温度の冷媒を循環させている。そのために、中心付近に配置された冷媒溝31にはサーキュレータ48が、外周付近に配置された冷媒溝32にはサーキュレータ49が独立に接続されており、これらサーキュレータの設定温度を変えることにより基材の半径方向に温度分布を持たせることができる。なお、本実施例では実施していないが、冷媒溝31,32の間に例えば1周にわたって空間を設け断熱層とすることにより、より温度差を明確に付けることも可能である。サーキュレータ48,49の冷媒の設定温度は、制御用コンピュータ37により制御する。
【0020】
以上の構成により、サーキュレータの温度設定により基材の半径方向に温度分布を与えることができ、また半導体ウェハとウェハステージ間の熱伝達率に半径方向の分布を持たせることができ、またヒータに投入する電力を調節することにより基材外周への入熱量を調節することができるので、ウェハ面内の半径方向の温度分布を自在に変更することができる。
【0021】
処理中のウェハ温度は、たとえば半導体ウェハの裏面から、蛍光温度計を用いて直接測定することも可能であるが、本実施例ではウェハ温度分布と相関がとれることが事前に明らかになっている基材の温度を測定している。具体的には、基材にくぼみ33を設け、シース熱電対34をばね35と固定冶具36で基材下面に固定している。シース熱電対で測定する場合には、先端の接触状態が測定結果に大きく影響するが、本実施例ではばねにより常に一定の押し付け加重で接触しているので測定結果の信頼性は高い。温度の測定結果は制御用コンピュータ37に送られる。
【0022】
以上のように、ヒータの出力、ヘリウムガスの圧力、サーキュレータの設定温度は、制御用コンピュータで管理している。次に、具体的にヒータの出力値、ヘリウムガスの圧力、必要なサーキュレータの設定温度を、どのような目的で、どのような方法で決定するかを説明する。
【0023】
通常、パターン付ウェハをエッチング処理すると、処理する前より後ではCDは細くなる。この線幅の変動量をCDシフト量とする。図3を用いて説明する。図3(1)はポリシリコン表面にハードマスクでパターンが付けられており、処理する前の状態である。このときの線幅をCD1とする。これをエッチング処理した後の状態が図3(2)であり、このときの線幅をCD2とする。このときCDシフト量はCD2-CD1となる。本実施例ではCD2の値はCD1よりも小さい。したがって、マイナスの値となるが、この値が小さいほどCDは処理により細くなることを意味する。
【0024】
エッチング処理において問題となるのは、このCDシフト量が半導体ウェハの面内で不均一となる場合である。このCDシフト量の面内分布は主に、半導体ウェハ上のプラズマ分布、半導体ウェハ上の反応生成物の密度分布、半導体ウェハの温度分布の3つの要因により決まる。それぞれの分布に影響する装置パラメータは、プラズマ分布はソースパワー、電極間距離、磁場、圧力などが、反応生成物の密度分布はガス種、流量、圧力、ガス導入部構造、ソースパワー、バイアスパワーなどが、ウェハ温度分布は冷媒温度、冷却ガス圧力、ヒータ電力、バイアスパワーなど、が挙げられる。これらプラズマ分布、反応生成物分布、温度分布の3つの要因のうち、特に温度分布は、CDシフト量に及ぼす影響度が大きく、かつ装置パラメータとして調節しやすいために、ウェハ面内のCD分布の調節パラメータとして利用しやすい。そこで、本発明の実施例ではウェハ温度分布を最適化することによりウェハ面内のCD分布を均一化することを目的としている。
【0025】
図4のフローチャートを用いて、本発明の第一の実施例の特徴である、エッチング条件を決定する処理の流れを説明する。まず、半導体ウェハの温度条件を変えてN回エッチング処理を行い、それぞれのエッチングでのCDシフト量を測定する(101)。このとき、ウェハ温度とCDシフト量の関係を明らかにするためには温度以外の処理条件、例えばガス種、流量、圧力、ソースパワー、バイアスパワーなどは同一で処理するのが望ましい。これらの条件は、過去の経験や実績にもとづいて決定することができるが、最終的な条件とはことなる場合もある。この場合には、変更後の条件で同じ手順を実施することになる。
【0026】
この実験の結果得られたCDシフト量を制御用コンピュータに入力する(102)。制御用コンピュータは、このCDシフト量とウェハ温度の関係式を求める(103)。ウェハ温度は、実測するかシミュレーション、もしくは制御用コンピュータに蓄積された温度データを参照することにより得られる。シミュレーションの場合には、あらかじめ制御用コンピュータに用意された温度計算プログラムにより計算する。次に、制御用コンピュータは、ウェハ温度とCDシフト量の関係式からウェハ面内でCDシフト量を均一にする温度分布を算出する(104)。次に、制御用コンピュータは、この温度分布を実現するための冷媒の設定温度、ヘリウム圧力、ヒータ電力といったパラメータを算出する(105)。次に、算出するパラメータをモニタに表示する(106)。次に、パラメータを制御用コンピュータに送信する(107)。制御用コンピュータは、算出したパラメータにより温度を管理しプラズマ処理を実施する(108)。ここで、パラメータをモニタに表示する必要がない場合には、表示しなくともよい。
【0027】
本実施例では、温度分布を調節する装置パラメータとして、冷媒温度、冷却ガス圧、ヒータ電力の3種類をすべて利用した。しかし、必ずしもすべてを利用する必要があるわけではなく、3種類のうちの1種類、もしくは2種類の組み合わせであってもよい。
【0028】
次に、本実施例の効果を説明する。図5に本発明を実施せずにエッチングを実施した時のウェハ面内のCDシフト量の分布を示す。この条件では、ウェハ外周の温度を下げすぎたために、外周付近の反応生成物の付着率が高すぎ、ウェハ外周付近のCDシフト量が小さく、すなわち中心付近に比べてCDが太くなる傾向となっている。
【0029】
このときの処理中のウェハ温度の実測とシミュレーションの結果を図6に示す。ウェハ温度の測定は市販の蛍光温度計埋め込み半導体ウェハを使用した。本例では実測と、シミュレーション両方を示したが、実際にはどちらか一方でよいし、前述したように予め制御用コンピュータに蓄積された温度情報を参照してもよい。図5と図6から温度とCDの関係を求めたのが図7である。この結果からCDシフト量は下記(1)式で表せることがわかる。本実施例では、(1)式は具体的には温度Tの2次関数で表現することができた。
【0030】
CDシフト量=f(T) … (1)
【0031】
(1)式から、逆に図5のCDシフト量が半径方向で均一化するための温度分布が求められる。この温度分布を図8に示す。この温度分布を実現するためには、外周の冷媒溝に循環させる冷媒の温度を6℃高く設定すればよいことがわかった。
【0032】
図9は、本発明を適用して半導体ウェハをエッチングした場合のCDシフト量分布を示している。本実施例に従い、半導体ウェハの外周付近の温度を高く設定してエッチング処理したところ、外周での反応生物の付着率が低下し、結果的に外周付近のCDが細くなり、面内分布が均一化したことがわかる。
【0033】
本実施例では温度条件を変更しても反応生成物の面内分布が変化しないという仮定のもとにCDシフト量を算出した。実際には反応生成物の分布が変化する場合もあり、この場合は、CDシフト量は温度だけの関数ではなく、反応生成物の分布も考慮した関数となる。例えば、下記(2)式の通りとなる。
【0034】
CDシフト量=f(T,RP(r)) … (2)
ここで、RP(r)は、半径rにおける反応生成物の密度となる。
【0035】
このように、本実施例ではウェハ面内で均一なCD分布を得るための温度条件を一義的に決定することができ、この温度条件でプラズマ処理することができるので、短期間でプロセス条件を構築することができ、ウェハ面内のCD分布が均一なプラズマ処理装置を提供することができる。
【0036】
また、本実施例ではエッチング対象が変更されたりするなどしてガス種や圧力などのエッチング条件が変更され、エッチングに伴うCDシフト量が変化した場合でも、温度条件を変更した処理した数個のCDデータから計算により均一なCD分布を得るための温度条件を一義的に決定することができるので、プロセス開発期間の非常に短いプラズマ処理装置を提供することができる。」
(ウ)「【0052】
次に、本発明の実施例を実際の半導体製造ラインに適用する場合に、より製造歩留まりを向上させることができる処理方法である第四の実施例を、図13を用いて説明する。本実施例は、実際の製造ラインでウェハ処理枚数が増加していくと、例えば真空チャンバの内壁に反応生成物のデポ物が付着して、このデポ物から反応生成物が供給されるような場合に有効な実施例である。すなわち、壁から供給される反応生成物により当初CD分布を測定して決めた処理条件で得られる面内CD分布が徐々に変化してくる場合、あらかじめ決めた累積処理枚数ごとに面内CD分布を測定し、この結果にもとづいて再度処理条件を決めていく。
【0053】
まず、第一の実施例に従い処理条件を決める(401)。処理条件に従いエッチング処理を行う(402)。あらかじめ規定した累積枚数に達するまで処理条件に従い処理をおこなう(403)。累積枚数に到達した場合にはCD面内分布を測定する(404)。面内CDばらつきが規定内である場合、当初の処理条件に従いエッチング処理を行う(405)。面内CDばらつきが規定外の場合、第一の実施例に従い再度処理条件を決定する(406)。
【0054】
本実施例では、大量のウェハを連続的に処理し、チャンバの内壁がデポにより汚染され、このデポ物により反応生成物が供給されてチャンバ内の反応生成物分布が変化する場合にも、ある一定の逸脱の範囲内で処理条件を見直しながら処理を行っていくので非常に歩留まりの良い処理方法を提供することができる。」

(エ)上記(ア)より、引用例3には、以下の事項が記載されていると認められる。

「ウェハ面内の寸法データから、寸法ばらつきの少ないウェハ温度分布を実現するエッチング条件を求め、この条件により処理することによりウェハ面内の寸法ばらつきの少ないウェハ処理方法とすること。」

(オ)上記(イ)(ウ)より、引用例3には、以下の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。

「エッチングを行う、プラズマ処理装置であって、
半導体ウェハの温度分布を調整するために、ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節し、基材の外周付近の温度を調節する、制御用コンピュータと、
真空チャンバ上部に石英窓を設置し、石英窓とシャワープレートの間に処理ガスを送り込むと石英窓の下に設けられたガス穴から処理室に導入される、ガス穴と、
バルブの開度調節により処理室内の圧力を数Pa程度に減圧している、真空ポンプと、
を有し、
ウェハ温度分布を最適化することによりウェハ面内のCD分布を均一化するために、
制御用コンピュータは、ウェハ面内でCDシフト量を均一にする温度分布を算出し、この温度分布を実現するための冷媒の設定温度、ヘリウム圧力、ヒータ電力といったパラメータを算出し、算出したパラメータにより温度を管理し、
制御用コンピュータは、処理条件に従いエッチング処理を行い、累積枚数に到達した場合にはCD面内分布を測定し、面内CDばらつきが規定内である場合、当初の処理条件に従いエッチング処理を行い、面内CDばらつきが規定外の場合、再度処理条件を決定する、
プラズマ処理装置。」

(4)引用例4の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2006-506812号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0034】
再び、図3を参照すれば、ステップ3300において、ウェハWは、実験で決定されたアルゴリズムを使用してプロセッサ320により決定されたエッチングレシピを用いてエッチングされる。その結果が図2の右側に示されており、基底層240にトレンチTが形成されている。次いで、ウェハWは、ホトレジストアッシュ剥離チャンバーへ運ばれ(ステップ3400を参照)、更に、ステップ3500において、測定ツール310へ戻される。トレンチTのCD及び深さが、ウェハW上の多数の位置、例えば、ホトレジスト層250のエッチング前測定がステップ3000で行なわれた位置において測定される。
【0035】
収集されたCD及び深さデータは、例えば、図4A及び4Cに示されたものに匹敵し得る、ステップ3600で発生されるCD及び深さマップの形態で、プロセッサ320へ供給される。目標とする結果からの偏差は、エッチングされるべき次のウェハに対するエッチングレシピを調整するように、アルゴリズムにより使用される。例えば、発生されたCD及び深さマップと、以前に発生されたDOEモデリングから、エッチング装置のプロセスドリフトを決定することができ、即ちエッチング装置のプロセス「年齢」、又はエッチング装置がそのプロセスタイムライン上のどこにあるかを決定することができる。次いで、エッチングレシピを次のウェハに対して調整し、エッチング結果を目標に近づけることができる。更に、測定された寸法変動が所定の境界の外側にあるか、又は処理結果が1つのウェハから次のウェハへ急激に変化する場合には、例えば、修理又は保守のためにエッチング装置を運転停止すべきであることを指示するアラームを発することができる。又、深さマップを化学的-機械的研磨(CMP)ツールへフィードフォワードして、ウェハに対するCMPレシピを調整することもできる。」

(イ)上記(ア)より、引用例4には、以下の事項が記載されていると認められる。

「エッチングにおいて、
エッチング後、測定ツールによりウェハW上の多数の位置のトレンチTのCD及び深さが測定され、
測定されたトレンチTのCD及び深さから、目標とする結果との偏差を求め、その偏差を使い、次のウェハに対するエッチングレシピを調整し、エッチング結果を目標に近づけるとともに、
測定された寸法変動が所定の境界の外側にあるか、又は処理結果が1つのウェハから次のウェハへ急激に変化する場合には、修理又は保守を行うこと。」

(5)引用例5の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2004-510152号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
【従来の技術】
マイクロ電子デバイスの集積化および高速化がすすむにつれ、回路構造体の寸法サイズの縮小、およびプロファイルのエッジをさらに鋭くするための改善が行われている。現時点の当該技術におけるこのような装置には相当数の処理工程が必要である。各処理工程においては、サブミクロンの線幅の正確な測定やパターンウェーハ上のエッチング構造体のプロファイルを詳細にしたものがますます重要になってきている。さらに、ウェハ工程の監視やフォトリソグラフィにおける焦点-露出制御のような閉ループ制御の必要性も増えてきている。
【0003】
特に、散乱測定法のような回折に基づいた分析技術はマイクロエレクトロニクス測定学の応用に極めて適している。なぜなら、これらの技術が限界寸法走査型電子顕微鏡(CD-SEM)に比べ非破壊的であり、十分に正確であり、再現性があり、迅速、簡単、安価であるからである。
【0004】
散乱測定法は、構造体から散乱した光を角度分解して測定し特性を決定するものである。断続的な構造体の場合、入射光は、散乱したり、異なる次数に回折したりする。入射角θ_(i) に対してm次の回折次数の角度位置θ_(r) は、次に示すグレーティングの式で求める。
sinθ_(i) +sinθ_(r) =m(λ/d) (1)
ここで、λは入射光の波長であり、dは回折構造体の周期である。分光散乱測定法では、グレーティングパラメータの測定で使用可能な様々な透過光を用いて上記のような測定を行う。
【0005】
構造体から回折した光のパターンまたはスペクトルは、構造体自体の寸法を特定するための“指紋”または“署名”として利用できる。周期のほかに、さらに詳しい寸法、例えば、幅や限界寸法(CD)、段の高さ(H)、線の形状、側壁の角度(SWA)、他の変数などを以下構造体のパラメータと呼ぶことにするが、これらも分散パターンを分析することによって測定することができる。」

(イ)上記(ア)より、引用例5には、以下の事項が記載されていると認められる。

「サブミクロンの線幅の正確な測定やパターンウェーハ上のエッチング構造体のプロファイルとして、構造体自体の寸法を特定するために、幅や限界寸法(CD)、段の高さ(H)、側壁の角度(SWA)等の構造体のパラメータを測定すること。」

(6)対比・判断
(ア)本願発明1と引用例1発明について
ア 本願発明1と引用例1発明を対比する。
a.引用例1発明の「エッチング方法」は、「試料設置電極の電極温度をコントロール」しているから、本願発明1の「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するエッチング形成方法」に相当する。
b.引用例1発明は、「エッチング方法」であるから、本願発明1の「基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程」を備えていることは明らかであると認められる。
c.引用例1発明の「エッチング形状を求め」ることは、本願発明1の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程」と、「前記パターンの形状又は寸法を測定する工程」である点で共通する。
d.引用例1発明の「被エッチング材の形状に変動があった場合、載置台の被処理体を吸着するための試料設置電極の電極温度をコントロールする」ことは、本願発明1の「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」と、「前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値に基づいて、処理容器内の部材の温度を制御する工程」である点で共通する。
e.そうすると、本願発明1と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
前記パターンの形状又は寸法を測定する工程と、
前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値に基づいて、処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。」
[相違点1]
本願発明1は、「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程」を有しているが、引用例1発明は、「前記パターンの形状又は寸法を測定する工程」を備えているものの、その測定が「複数の位置」であるのか不明であり、また、本願発明1は、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」を有しているが、引用例1発明は、そのような制御を行っていない点。
イ 判断
[相違点1]について検討する。
引用例1発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「試料設置電極」の温度を制御しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例1発明において、「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明1と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例2ないし5の記載から、引用例1発明において、上記[相違点1]について、本願発明1の工程を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明1は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例1発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明1は引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本願発明2と引用例1発明について
ア 本願発明2と引用例1発明を対比する。
a.引用例1発明は、「長期間安定的にエッチング形状を制御する」ために、「載置台の被処理体を吸着するための試料設置電極の電極温度をコントロール」しているから、本願発明2の「基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該パターンの面内均一性を高めるために該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法」と、「基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法」である点で共通する。
b.引用例1発明の「載置台の被処理体を吸着するための試料設置電極の電極温度をコントロールすること」は、本願発明2の「前記処理容器内の部材の温度を設定する工程」に相当する。
c.引用例1発明の「エッチング形状を求め」ることと、本願発明2の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する測定工程」は、「前記パターンの形状又は寸法を測定する測定工程」である点で共通する。
d.引用例1発明の「被エッチング材の形状に変動があった場合、載置台の被処理体を吸着するための試料設置電極の電極温度をコントロールすることにより、形状を安定させる」ことは、本願発明2の「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」と、「前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値に基づいて、処理容器内の部材の温度を制御する工程」である点で共通する。
e.そうすると、本願発明2と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法において、
前記処理容器内の部材の温度を設定する工程と、
前記パターンの形状又は寸法を測定する測定工程と、
前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値に基づいて、処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とする処理容器内の部材の温度制御方法。
[相違点1]
本願発明2は、「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する測定工程」を備え、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」を備えることにより、「該パターンの面内均一性を高め」ているのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。
イ 判断
[相違点1]について検討する。
引用例1発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「試料設置電極」の温度を制御しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例1発明において、「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明2と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例2ないし5の記載から、引用例1発明において、上記[相違点1]について、本願発明2の工程を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明2は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例1発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明2は引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本願発明3と引用例1発明について
ア 本願発明3と引用例1発明を対比する。
a.引用例1発明の「ガス導入手段」「真空排気手段」「プラズマエッチング装置」は、本願発明3の「処理ガス供給部」「排気手段」「基板処理システム」に相当する。
b.引用例1発明は「プラズマエッチング装置」であるから、本願発明3の「処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する形成手段」と同様の手段を備えていることは自明である。
c.引用例1発明は「被エッチング材の形状に変動があった場合、通信線を介してフィードバック手段121に制御信号が送られ、さらに通信線を介して温調装置115に制御信号が送られ、試料設置電極の電極温度をコントロールすることにより、形状を安定させ」ているから、引用例1発明の「試料設置電極」は、本願発明3の「前記パターンの面内均一性を高めるために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材」と、前記パターンを所望のものとするために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材という点で共通する。
d.引用例1発明の「スキャトロメトリ装置により、エッチング形状を求め」ることは、本願発明3の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定」することと、前記パターンの形状又は寸法を測定する点で共通する。
e.引用例1発明は、「非エッチング材のエッチング終了後、スキャトロメトリ装置により、エッチング形状を求め、被エッチング材の形状に変動があった場合、通信線を介してフィードバック手段121に制御信号が送られ、さらに通信線を介して温調装置115に制御信号が送られ、試料設置電極の電極温度をコントロールすることにより、形状を安定させる」ことを行っており、そのための「制御手段」を有する事は明かである。
そうすると、引用例1発明の「制御手段」と、本願発明3の「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」ことは、前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの形状又は寸法を測定し、前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値により、前記前記処理容器内の部材の温度へのフィードバックにより、前記パターンを所望のものとするために前記処理容器内の部材の温度を制御する点で一致する。
f.そうすると、本願発明2と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する形成手段と、
前記パターンを所望のものとするために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材と、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段と、
前記処理容器に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内を所定の真空度までに減圧する排気手段と
を備え、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、
前記パターンの形状又は寸法を測定し、
前記測定した前記パターンの形状又は寸法に関する数値により、前記処理容器内の部材の温度へのフィードバックにより、前記パターンを所望のものとするために前記処理容器内の部材の温度を制御する
ことを特徴とする基板処理システム。」
[相違点1]
本願発明3は、「前記パターンの面内均一性を高めるために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材」を有し、その「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」ものであるのに対して、引用例1発明は、そのような制御は行っていない点。
イ 判断
[相違点1]について検討する。
引用例1発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「試料設置電極」の温度を制御しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例1発明において、「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に、「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明3と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例2ないし5の記載から、引用例1発明において、上記[相違点1]について、本願発明3の方法を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明3は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例1発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明3は引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本願の請求項2に係る発明の進歩性について
本願の請求項2は、請求項1を引用しており、本願の請求項2に係る発明は本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明1が引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2に係る発明も、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用例1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審の拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成28年7月29日付けで当審より通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



発明の詳細な説明には、エッチングパターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきに基づいて、フォーカスリングおよびサセプタの温度をフィードバック制御することによりエッチングパターンの面内均一性を高めることは記載されているが、フォーカスリング又はサセプタ以外の処理容器内の部材の温度を制御することは記載されていない。
これに対して、請求項1,4,6に記載された発明は、
「前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが所定の閾値より大きい場合、前記処理容器内の部材の温度へフィードバックして前記処理容器内の部材の温度を制御する」
となっており、フォーカスリングおよびサセプタ以外の処理容器内の部材を制御することも含んでいるとともに、面内均一性を高めるための温度制御以外の温度制御を含んでおり、発明の詳細な説明に記載された発明以外を含むものとなっている。
従って、請求項1,4,6および、請求項1を引用する請求項2に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは言えない。

なお、上記拒絶理由は例えば、請求項1の
「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが所定の閾値より大きい場合、前記処理容器内の部材の温度へフィードバックして前記処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。」
を、発明の詳細な説明【0118】の記載に基づいて、
「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが所定の閾値より大きい場合、前記処理容器内のフォーカスリング及びサセプタの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリング及びサセプタの温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。」
とすることにより解消される。


B.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



・請求項 1-7
・引用文献等 1
・備考
引用文献1「第四の実施例」(【0052】-【0054】、【図13】)には、決定された処理条件に基づきエッチング処理を行い、累積枚数に到達した場合にCD面内分布を測定し、面内CDのばらつきが規定外の場合、再度処理条件を決定することが記載されている。
また、上記処理条件は、引用例1【0015】-【0036】に記載されているように、ウェハ面内のCD分布を均一化するために、ウエハステージ(本願発明の「サセプタ」に相当する。)の温度分布である旨記載されている。
そうすると、引用文献1「第四の実施例」として記載された発明と、請求項1-7に記載された発明との格別の相違は認められない。


C.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-7
・引用文献等 1-3
・備考
上記理由B.を参照されたい。
なお、エッチングにおいて均一性の判断を行う際に、エッチングされたパターンの側壁角度や線の高さをもちいることは、引用例2【0071】に記載されているように、当業者が適宜行っている。
そして、引用例1「第四の実施例」において、均一性の判断を行う際に、エッチングされたパターンの側壁角度や線の高さをもちいることは当業者が適宜為し得たことと認められる。
さらに、発明の詳細な説明を参酌すると、本願は「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程」を「基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程」の後に必ず行っているのに対して、引用文献1「第四の実施例」として記載された発明は、累積枚数に到達した場合に、本願の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程」に相当するCD面内分布の測定を行っている点で、一応相違する。
しかしながら、引用例3【0055】に記載されているように、エッチングの終了後、エッチング形状を測定することは、公知の技術であるから、引用文献1「第四の実施例」として記載された発明を同様の測定頻度とし、本願と同様の方法/システムとすることに格別の困難性は認められない。


引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1 特開2006-216822号公報
引用文献2 特開2008-270542号公報
引用文献3 特開2010-272758号公報 」

2 当審拒絶理由についての判断
(1)記載要件(理由A)について
請求項1ないし4は、補正により「処理容器内の部材」が「フォーカスリング」であることが明らかになったから、請求項1ないし4に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、当審拒絶理由のAに示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。
(2)新規性(理由B)および進歩性(理由C)について
ア 引用例3(当審の拒絶理由において引用例1として引用した文献)の記載事項及び引用例3発明
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-216822号公報には、図面とともに、上記「第3 2(3)(ア)-(ウ)」で示したことが記載されている。
(イ)引用例3には、上記「第3 2(3)(オ)」で示した発明が記載されていると認められる。

イ 引用例6(当審の拒絶理由において引用例2として引用した文献)の記載事項
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-270542号公報には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0071】
また、以上の実施の形態では、エッチングパターンのウェハ面内の線幅が均一になるように熱板の温度設定を行っていたが、線幅以外の他の状態、例えばエッチングパターンの溝の側壁角度(サイドウォールアングル)やエッチングパターンの膜厚がウェハ面内で均一になるように熱処理板の温度設定を行うようにしてもよい。この場合、例えば線幅測定装置171に、スキャトロメトリ(Scatterometry)法を用いてエッチングパターンの寸法を測定する光学式表面形状測定計を用いる。そして、当該光学式表面形状測定計により、エッチングパターンのウェハ面内のサイドウォールアングルや膜厚を測定し、それらがウェハ面内で均一になるようにプリベーク装置の熱板の温度設定を行うようにしてもよい。また、エッチングパターンの測定結果から、線幅が均一になるように露光後ベーク装置の熱板の温度設定を行いつつ、さらにサイドウォールアングルや膜厚が均一になるようにプリベーク装置の熱板の温度設定を行うようにしてもよい。さらに、本発明は、ウェハ以外の例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板を熱処理する熱処理板の温度設定にも適用できる。」

(イ)上記(ア)より、引用例6には、以下の事項が記載されていると認められる。

「エッチングパターンの側壁角度(サイドウォールアングル)やエッチングパターンの膜厚がウェハ面内で均一になるように、ウェハ面内のサイドウォールアングルや膜厚を測定し、それらがウェハ面内で均一になるようにプリベーク装置の熱処理板の温度設定を行うこと。」

ウ 引用例1(当審の拒絶理由において引用例3として引用した文献)の記載事項
(ア)当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-272758号公報には、図面とともに、上記「第3 2(1)(ア)」で示したことが記載されている。
(イ)引用例1には、上記「第3 2(1)(イ)」で示した発明が記載されていると認められる。

エ 対比・判断
(ア)本願発明1と引用例3発明について
a.本願発明1と引用例3発明について対比する。
a-1.引用例3発明の「プラズマ装置」は、「エッチング」を行うものであり、また、「ウェハ温度分布を最適化することによりウェハ面内のCD分布を均一化するために、」「ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節し」ているから、このことは、本願発明1の「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法」に相当する。
a-2.引用例3発明の「プラズマ装置」は、「エッチング」を行うものであるから、本願発明1の「基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程」を備えていることは明らかであると認められる。
a-3.引用例3発明の「CD面内分布を測定」することは、本願発明1の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程」に相当する。
a-4.引用例3発明の「面内CDばらつきが規定外の場合、再度処理条件を決定する」ことと、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」とは、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつき」に基づいて、「前記パターンの面内均一性を高めるように」処理容器内の部材「の温度を制御する工程」である点で共通する。
a-5.そうすると、本願発明1と引用例3発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「処理容器内の部材の温度を制御し、前記処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成するパターン形成方法において、
基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきに基づいて、前記パターンの面内均一性を高めるように処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とするパターン形成方法。」
[相違点1]
本願発明1は、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」を有しているのに対して、引用例3発明は、フォーカスリングに関する制御を行っていない点。
b.判断
[相違点1]について検討する。
引用例3発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節」しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例3発明において「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明1と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例1および6の記載から、引用例3発明において、上記[相違点1]について、本願発明1の工程を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明1は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例3発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明1は引用例3に記載された発明ではなく、また、引用例3および引用例1もしくは6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本願発明2と引用例3発明について
a.本願発明2と引用例3発明について対比する。
a-1.引用例3発明は「エッチングを行う、プラズマ処理装置」において、「ウェハ温度分布を最適化することによりウェハ面内のCD分布を均一化するために」、ウェハステージの基材に設けられたヒータの「ヒータ電力」を管理しているから、このことは、本願発明2の「基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該パターンの面内均一性を高めるために該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法」に相当する。
a-2.引用例3発明の「ウェハ面内でCDシフト量を均一にする温度分布を算出し、」「この温度分布を実現するための」「ヒータ電力といったパラメータを算出し、算出したパラメータにより温度を管理」することは、本願発明2の「前記処理容器内の部材の温度を設定する工程」に相当する。
a-3.引用例3発明の「CD面内分布を測定」することは、本願発明2の「前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する測定工程」に相当する。
a-4.引用例3発明の「面内CDばらつきが規定外の場合、再度処理条件を決定する」ことと、本願発明2の「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」とは、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつき」に基づき、「前記パターンの面内均一性を高めるように」該基板の周辺に配置される処理容器内の部材「の温度を制御する工程」である点で共通する。
a-5.そうすると、本願発明2と引用例3発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「基板上の膜をエッチングして所定のパターンを形成する際に、該パターンの面内均一性を高めるために該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度制御方法において、
前記処理容器内の部材の温度を設定する工程と、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定する測定工程と、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきに基づき、前記パターンの面内均一性を高めるように該基板の周辺に配置される処理容器内の部材の温度を制御する工程と
を備える
ことを特徴とする処理容器内の部材の温度制御方法。」
[相違点1]
本願発明2は、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する工程」を有しているのに対して、引用例3発明は、フォーカスリングに関する制御を行っていない点。
b.判断
[相違点1]について検討する。
引用例3発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節」しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例3発明において「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明2と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例1および6の記載から、引用例3発明において、上記[相違点1]について、本願発明2の工程を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明2は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例3発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明2は引用例3に記載された発明ではなく、また、引用例3および引用例1もしくは6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本願発明3と引用例3発明について
a.本願発明3と引用例3発明について対比する。
a-1.引用例3発明の「真空ポンプ」「エッチングを行う、プラズマ処理装置」は、本願発明3の「排気手段」「基板処理システム」に相当する。
a-2.引用例3発明は、「真空チャンバ上部に石英窓を設置し、石英窓とシャワープレートの間に処理ガスを送り込むと石英窓の下に設けられたガス穴から処理室に導入される、ガス穴」を有しているから、本願発明3の「前記処理容器に処理ガスを供給する処理ガス供給部」と同様の手段を備えていることは自明である。
a-3.引用例3発明は「エッチングを行う、プラズマ処理装置」であるから、本願発明3の「処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する形成手段」と同様の手段を備えていることは自明である。
a-4.引用例3発明は「半導体ウェハの温度分布を調整するために、ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節し、基材の外周付近の温度を調節」しているから、引用例3発明の「基材」は、本願発明3の「前記処理容器内の部材」に相当する。
a-5.引用例3発明は「制御用コンピュータ」により「ウェハ面内でCDシフト量を均一にする温度分布を算出し、この温度分布を実現するための冷媒の設定温度、ヘリウム圧力、ヒータ電力といったパラメータを算出し、算出したパラメータにより温度を管理し」ているから、引用例3発明の「制御用コンピュータ」は、本願発明3の「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段」に相当する。
a-6.引用例3発明の「制御用コンピュータ」は、「処理条件に従いエッチング処理を行い、累積枚数に到達した場合にはCD面内分布を測定し、面内CDばらつきが規定内である場合、当初の処理条件に従いエッチング処理を行い、面内CDばらつきが規定外の場合、再度処理条件を決定」しているから、本願発明3の「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」ことと、「前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつき」に基づき「前記パターンの面内均一性を高めるように」前記処理容器内の部材「の温度を制御する」点で共通する。
a-7.そうすると、本願発明3と引用例3発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「処理容器内で基板上の膜をエッチングしてパターンを形成する形成手段と、
前記パターンの面内均一性を高めるために前記処理容器内に配置される前記処理容器内の部材と、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段と、
前記処理容器に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内を所定の真空度までに減圧する排気手段と
を備え、
前記処理容器内の部材の温度を制御する制御手段は、
前記パターンの複数の位置における形状又は寸法を測定し、
前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきに基づき前記パターンの面内均一性を高めるように前記処理容器内の部材の温度を制御する
ことを特徴とする基板処理システム。」
[相違点1]
本願発明3は、「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御」しているのに対して、引用例3発明は、フォーカスリングに関する制御を行っていない点。
b.判断
[相違点1]について検討する。
引用例3発明は、「処理容器内の部材の温度を制御する」際に、「ウェハステージの基材に設けられたヒータに投入する電力を調節」しているが、「フォーカスリング」の温度制御は行っていないから、引用例3発明において「フォーカスリング」の温度制御を想起し、また、その際に「前記測定した前記複数の位置における前記パターンの形状又は寸法に関する数値のばらつきが、前記処理容器内のフォーカスリングの交換の要否を決定するための第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合、前記フォーカスリングの温度へのフィードバックにより、前記パターンの面内均一性を高めるように前記フォーカスリングの温度を制御する」こととし、本願発明3と同様の発明とすることができたとは認められない。
また、フォーカスリングについて記載されていない、引用例1および6の記載から、引用例3発明において、上記[相違点1]について、本願発明3の制御を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明3は、[相違点1]を有することによって、フォーカスリングの交換時期を的確かつ迅速に判定することができるという(本願明細書段落番号【0005】)、引用例3発明に記載された発明にはない格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]は、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明3は引用例3に記載された発明ではなく、また、引用例3および引用例1もしくは6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)本願の請求項2に係る発明の新規性および進歩性について
本願の請求項2は請求項1を引用しており、本願の請求項2係る発明は本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明1が引用例3に記載された発明ではなく、また、引用例3および引用例1もしくは6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願の請求項2に係る発明も、引用例3に記載された発明ではなく、また、引用例3および引用例1もしくは6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由のA乃至Cに示した理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そすると、もはや、当審の拒絶理由によっては本願を拒絶することはできない。

第5 結語
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由は発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2011-70947(P2011-70947)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 パターン形成方法、処理容器内の部材の温度制御方法、及び基板処理システム  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 英仁  

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