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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1323274
審判番号 不服2015-12561  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-02 
確定日 2017-01-04 
事件の表示 特願2010-186285「データ伝送方法、サーバおよびデータ伝送システム(DATATRANSMITTINGMETHODSERVERANDTRANSMITTINGSYSTEM)」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月 3日出願公開、特開2011- 45081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月23日(パリ条約による優先権主張2009年8月21日 大韓民国、2009年11月6日 大韓民国)の出願であって、原審において平成27年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成28年3月18日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年6月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年3月18日付け拒絶理由通知の概要
平成28年3月18日付けで、当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の内容は、以下のとおりである。

「理 由

1)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
2)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由1について
1.請求項1、18、19、20において、「第1のユーザ」と「第2のユーザ」に関する記載がある。しかしながら、本願明細書段落【0053】?【0076】、図4?6によれば、本願発明の実施形態において、同一のユーザが、複数のデバイスでデータを共有することが記載されている。ここで、段落【0055】には、「他のユーザと共に使用しようとする場合・・・」との記載があるが、他のユーザとのデータの共有を目的とするものではない。その他の実施形態を見ても同様である。よって、本願発明のユーザは、同一であることが前提であると解される。
そして、請求人が、「第1のユーザ」「第2のユーザ」の補正の根拠とする本願明細書段落【0221】の記載は、下記理由2 1.のとおり意味不明であるから、請求項1、18、19、20における、「第1のユーザ」と「第2のユーザ」の関係に関する構成は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

2.上記1.に関連して、請求項1、18、19、20において、「ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」との記載があるが、本願明細書段落【0221】には、マッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されているにすぎず、第1のユーザと第2のユーザの関連情報が、職業、役職、所属部または会社であることまでは記載されていない。
したがって、「ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」であることは、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

3.、4.(略)

理由2について
1.請求人が、「第1のユーザ」「第2のユーザ」の補正の根拠とする本願明細書段落【0221】には、マッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されている。しかしながら、マッピングについては、当該段落【0221】の前段の段落【0216】?【0220】には、データ加工および保存について記載され、その中で、データとデバイスとのマッピングについて記載されているのみである。そして、段落【0216】?【0220】におけるマッピングと、段落【0221】における、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づくマッピングとは、相互の関係が不明であり、如何にして、どのようなマッピングが、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われるのか不明である。このため段落【0221】の記載は意味不明である。

2.上記1.のとおり意味不明であるから、請求項1、18、19、20において、「サーバに登録された前記第2ユーザのユーザ情報に基づいて前記保存されたデータのうちの選択されたデータ」「前記ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」との記載があるが、本願明細書段落【0221】には、データとデバイスのマッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されているにすぎず、如何にして、第1及び第2ユーザの関連情報に基づいて、データを保存されたデータのうちから選択するのか、優先権主張の日前の技術常識を考慮しても不明である。したがって、発明の詳細な説明は、請求項1?20に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。」

第3 請求人の対応
1.平成28年6月10日付け手続補正書の概要
上記当審拒絶理由に対し、請求人は、平成28年6月10日付けで、以下の手続補正を行う手続補正書を提出した。

「【請求項1】
ネットワークを介するデータ伝送方法であって、
第1デバイスからサーバがデータを受信して保存するステップと、
前記サーバに第2デバイスが接続すると、ユーザ情報に基づいて前記保存されたデータから前記サーバがデータを選択し、前記選択したデータを前記第2デバイスが再生できるように加工するステップと、
前記加工されたデータを第2デバイスに前記サーバが伝送するステップと、を含み、
前記ユーザ情報は、前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)を含む
ことを特徴とするデータ伝送方法。
【請求項2】?【請求項19】(略)」

当審注:請求項18は削除され、請求項19、20は、請求項18、19に繰り上げられた。

2.平成28年6月10日付け意見書の概要
上記当審拒絶理由に対し、請求人は、平成28年6月10日付けで、以下の意見書(以下「意見書」という。)を提出した。その概要は以下のとおりである。

「2.補正の内容及び特許されるべき理由
(一)サポート要件・明確性要件について
(1)『1.請求項1、18、19、20において、「第1のユーザ」と「第2のユーザ」に関する記載がある。しかしながら、本願明細書段落[0053]?[0076]、図4?6によれば、本願発明の実施形態において、同一のユーザが、複数のデバイスでデータを共有することが記載されている。ここで、段落[0055]には、「他のユーザと共に使用しようとする場合・・・」との記載があるが、他のユーザとのデータの共有を目的とするものではない。その他の実施形態を見ても同様である。よって、本願発明のユーザは、同一であることが前提であると解される。そして、請求人が、「第1のユーザ」「第2のユーザ」の補正の根拠とする本願明細書段落[0221]の記載は、下記理由2 1.のとおり意味不明であるから、請求項1、18、19、20における、「第1のユーザ」と「第2のユーザ」の関係に関する構成は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。』との指摘について:

請求項1については、「(略)」と補正致しましたので、本指摘事項は解消されるものと請求項人は思料致します。
なお、請求項18は削除し、請求項19,20についても同様の補正対応と致しました。

(2)『2.上記1.に関連して、請求項1、18、19、20において、「ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」との記載があるが、本願明細書段落[0221]には、マッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されているにすぎず、第1のユーザと第2のユーザの関連情報が、職業、役職、所属部または会社であることまでは記載されていない。したがって、「ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」であることは、発明の詳細な説明に記載されたものではない。』との指摘について:

当該指摘事項については、「前記ユーザ情報は、前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)を含む」と補正致しましたので、本指摘事項は解消されるものと請求人は思料致します。

((3)、(4)は、(略)。)

(二)実施可能要件について
(1)『1.請求人が、「第1のユーザ」「第2のユーザ」の補正の根拠とする本願明細書段落[0221]には、マッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されている。しかしながら、マッピングについては、当該段落[0221]の前段の段落[0216]?[0220]には、データ加工および保存について記載され、その中で、データとデバイスとのマッピングについて記載されているのみである。そして、段落[0216]?[0220]におけるマッピングと、段落[0221]における、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づくマッピングとは、相互の関係が不明であり、如何にして、どのようなマッピングが、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われるのか不明である。このため段落[0221]の記載は意味不明である。』との指摘について:

請求項1については、「(略)」と補正致しましたので、本指摘事項は解消されるものと請求人は思料致します。
なお、請求項18については削除し、請求項19,20についても同様の補正対応と致しました。

(2)『2.上記1.のとおり意味不明であるから、請求項1、18、19、20において、「サーバに登録された前記第2ユーザのユーザ情報に基づいて前記保存されたデータのうちの選択されたデータ」「前記ユーザ情報は、第1及び第2ユーザの関連情報」との記載があるが、本願明細書段落[0221]には、データとデバイスのマッピングについて、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのようなユーザ情報に基づいて行われてもよいことが記載されているにすぎず、如何にして、第1及び第2ユーザの関連情報に基づいて、データを保存されたデータのうちから選択するのか、優先権主張の日前の技術常識を考慮しても不明である。したがって、発明の詳細な説明は、請求項1?20に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。』との指摘について:

上記(1)に示す補正対応により、本指摘事項についても解消されるものと思料致します。」

第4 当審の判断
補正前の請求項1,19,20における「第1及び第2ユーザの関連情報」は、上記手続補正により、請求項1,18,19における「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」に補正された。
しかしながら、補正前の「第1ユーザ」及び「第2ユーザ」は、それぞれ第1デバイス、第2デバイスを使用するユーザであるから、「第1デバイスのユーザ」及び「第2デバイスのユーザ」ということができるので、補正前の「第1及び第2ユーザの関連情報」と、補正後の「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」とは実質的な差異はない。

次に、請求項1,18,19における「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」の記載が、発明の詳細な説明に記載されたものであるかどうか、明確であるかどうか、また、本願の発明の詳細な説明に、当業者が請求項1?19に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているかどうかについて、以下に検討する。

「第1及び第2ユーザの関連情報」なる事項は、平成26年9月16日付け手続補正により追加されたものであるが、当該補正の根拠について同日付け意見書【意見の内容】の項2.において、「本願明細書の段落[0219]?[0221]には、特定の装置からデータをマッピングするとともに、前記装置が接続された場合に直接データを伝送するという特徴が記載されています。このようなマッピング操作は、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのような様々なユーザ情報に基づいて行われます。さらに、前記マッピング操作は、第1ユーザに関連する第2ユーザの端末装置を予め選択することが出来ます。したがって、補正後の請求項1には、ユーザ情報が第1及び第2ユーザの関連情報であることを特徴としています。」旨釈明し、「ユーザ情報が第1及び第2ユーザの関連情報」であることは、段落【0221】における「マッピングは、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのような様々なユーザ情報に基づいて行われてもよい。」との記載を根拠としていることが述べられている。

そこで、請求人が根拠とする部分をみると、本願明細書には、以下の記載がある。

「【0216】
<データ加工および保存>
上述したように、サーバ200は外部機器から伝送されたデータを加工して保存することができる。
【0217】
加工とは、データを使用する周辺装置またはそのユーザの特性に最適化するか、または予め選択しておく作業を意味する。ユーザの特性とは、ユーザの選好度または選択履歴などであり得る。
【0218】
サーバ200は、加工完了したデータは、そのデータを用いる装置とマッピングさせて保存しておいてもよい。すなわち、特定の端末装置に伝送できるデータがクリッピングされれば、その端末装置に最適なフォーマット、解像度、サイズなどに予め変換し、変換されたデータを該当の端末装置にマッピングさせて保存しておく。このような状態で、その端末装置がサーバ200に接続されれば、直ちに保存されたデータを伝送することができる。マッピングは様々な基準に基づいて行える。
【0219】
一例として、サーバ200は、各ユーザがデータが伝送された履歴情報を保存しておいてもよい。このような履歴情報は、ユーザから直接提供されてもよいが、サーバ200が直接管理してもよい。すなわち、サーバ200は、ユーザ別にアクセスした回数、データ利用回数、クリッピング回数、利用データの種類などの情報を記録しておき、これを活用することができる。これにより、ユーザの履歴情報を用いて該当のユーザに伝送するデータ、すなわちコンテンツを予め選択しておき、そのユーザがアクセスすれば選択されたデータを直ちに伝送してもよい。一例として、イメージデータがサーバに新たにクリッピングされるとき、周辺装置の中からイメージデータが主に伝送されるデバイスがあれば、その装置が接続される前であっても新たにクリッピングされたイメージデータを該当の装置にマッピングさせておいてもよい。これにより、該当の装置が接続されれば直ちに伝送することができる。
【0220】
他の例として、データをクリッピングする装置そのものからデータを使用可能な装置に対する情報の提供を受けることができる。すなわち、PC100のユーザは、自分と関連する特定ユーザの端末装置のみを予め選択することができる。この場合、該当のPC100でクリッピングされるデータは、選択された端末装置がサーバに接続するたびにその端末装置に直ちに伝送され得る。
【0221】
その他にも、マッピングは、ユーザの職業、役職、所属部または会社などのような様々なユーザ情報に基づいて行われてもよい。」

まず、根拠とされる部分をみても「第1及び第2ユーザの関連情報」、「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」なる記載及びそれに相応する記載はない。そして【0221】には「ユーザの職業、役職、所属部または会社などのような様々なユーザ情報」との記載はあるが、当該「ユーザ情報」は、ユーザの個人情報であって「第1デバイスのユーザと第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」とまでは言えない。
ここで、「会社」なるユーザ情報によれば、同じ会社に勤務しているとの関係が見出せるかもしれないが、それはユーザ情報を解析して抽出される情報であって「会社」なるユーザ情報自体は、「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」そのものではない。
したがって、「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」は、根拠とされる部分には記載されていない。また、本願明細書の他の部分にも記載されておらず、出願時の技術常識を考慮しても自明な事項ともいうことができないから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

次に、請求人が根拠とする【0221】により実施可能要件を満たしているかどうかについて検討する。【0221】の文章からみて「マッピング」の内容は【0221】以前に記載された「マッピング」と同一の意味を有するものであると解されるところ、「マッピング」については【0218】、【0219】に開示があり、【0216】?【0219】は「<データ加工および保存>」について記載されているものである。そして【0218】、【0219】に記載されている「マッピング」は、加工完了したデータをそのデータを用いる装置とマッピングさせて保存しておくものであり、すなわち、特定の端末装置に伝送できるデータがクリッピングされると、その端末装置に最適なフォーマット、解像度、サイズなどに予め変換し、変換されたデータを該当の端末装置にマッピングさせて保存しておくというものである。すなわち、デバイスと当該デバイスで表示されるデータとのマッピングである。そして、請求項2、【0009】にも「マッピング」に係る記載があるが、いずれも同様の意味である。
しかしながら、「デバイスと当該デバイスで表示されるデータとのマッピング」と、「ユーザの職業、役職、所属部または会社などのような様々なユーザ情報」との関連性は全く見出せず、これらのユーザ情報により「デバイスと当該デバイスで表示されるデータとのマッピング」がどのように影響されるのかについての開示も全くないから、【0221】の記載は意味不明である。
よって、【0221】を根拠とする「前記第1デバイスのユーザと前記第2デバイスのユーザとの間の関連情報(information regarding a relationship)」については、当審拒絶理由の理由2の実施可能要件は解消していない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2016-08-04 
結審通知日 2016-08-08 
審決日 2016-08-22 
出願番号 特願2010-186285(P2010-186285)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04L)
P 1 8・ 537- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 一道  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 萩原 義則
林 毅
発明の名称 データ伝送方法、サーバおよびデータ伝送システム(DATATRANSMITTINGMETHODSERVERANDTRANSMITTINGSYSTEM)  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  

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