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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01F
管理番号 1323392
審判番号 不服2015-6164  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-02 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2012-506582「流体フローメータ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日国際公開、WO2010/122348、平成24年10月18日国内公表、特表2012-524897、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年4月23日(パリ条約による優先権主張 2009年4月23日(以下、「優先日」という。) 英国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月17日付けで拒絶理由が通知され、平成26年4月22日付けで手続補正がされ、平成26年11月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成27年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成28年4月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成28年11月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年11月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1ないし8」という。)。

「 【請求項1】
流体の流路を形成する手段と、前記流体の流路内に位置するロータと、前記ロータのシャフト上の少なくとも1つの誘導ターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された導電性のストリップを含む少なくとも1つの誘導ターゲットと、少なくとも2つの誘導センサを含む馬蹄形のセンサ体と、を有する流体フローメータであって、前記少なくとも2つの誘導センサが前記少なくとも1つの誘導ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置され、前記誘導センサと前記誘導ターゲットの間の距離が一定である、流体フローメータ。
【請求項2】
少なくとも3つの誘導センサを有する、請求項1に記載の流体フローメータ。
【請求項3】
複数の前記誘導センサは、前記シャフトの周りで互いに等しい角度間隔で位置する、請求項2に記載の流体フローメータ。
【請求項4】
前記ロータは、前記少なくとも1つの誘導ターゲットが前記ロータ内で重量バランスを失わないように配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の流体フローメータ。
【請求項5】
複数の前記誘導ターゲットを有し、前記複数の誘導ターゲットは、前記シャフトの周りに等角度間隔で配置されている、請求項4に記載の流体フローメータ。
【請求項6】
複数の前記誘導ターゲットを有し、前記複数の誘導ターゲットは、前記シャフトの周りに等距離の位置に配置されている、請求項4に記載の流体フローメータ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの誘導ターゲットの重量とバランスを取るようになっている釣り合い重りをさらに有する、請求項4から6のいずれか1項に記載の流体フローメータ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの誘導ターゲットは前記シャフトの端面上に配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の流体フローメータ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由となった、平成25年10月17日付けで通知した拒絶理由の理由3の概要は、次のとおりである。
「理由3
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1ないし8
・拒絶理由 上記理由2ないし3(請求項2ないし3、7は理由3のみ)
・引用文献等 1ないし4
・備考
引用文献1の下記指摘箇所に記載された、タービン式流量計の発明(以下「引用発明」という。)における「羽根車16」、「羽根(ブレード)32」及び「ピックアップコイル36」が、それぞれ本願発明の「ロータ」、「誘導ターゲット」及び「誘導センサ」に相当し、羽根32とピックアップコイル36とは隣接して配置されていることから、引用発明が本願発明の「少なくとも1つのセンサは前記少なくとも1つの誘導ターゲットに隣接して位置している」との構成を具備していると認められる。(請求項1、4ないし6、8)

引用文献1(段落【0013】及び図5(A))には、複数の羽根(ブレード)32が、羽根車16の軸の周りに均等配置されている点が記載されており、これらに隣接して、複数のピックアップコイルを隣接配置することは、引用文献3ないし4の記載されているとおりタービン式流量計の技術分野では周知であるから、当該周知技術を引用発明に適用することは当業者にとって容易である。
(請求項2ないし3)

請求項7で特定された「釣り合い重り」は、引用文献2の下記指摘箇所に記載されているように周知であり、その効果も予想外のものではない。
・・・
引 用 文 献 等 一 覧

1.特開2003-166861号公報
(段落【0011】?【0021】【0039】?【0040】、図1)
2.特表2001-513585号公報(37頁、図28)
3.実願昭57-22374号(実開昭58-141817号)のマイクロフィ
ルム(3頁2行から4行、図面)
4.特開平6-18308号公報(段落【0011】)」

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-166861号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明の一実施例について説明する。図1は本発明になるタービン式流量計の一実施例を示す図であり、(A)はタービン式流量計の縦断面図、(B)は流路内の圧力分布図である。図1(A)に示されるように、タービン式流量計10は、メータ本体12の内部に形成された流路14内に羽根車(ロータ)16を回転自在に設けてなる。羽根車16は、流路14の中心に支持された回転軸18に挿通されて回転可能に支持されており、流路14内を流れる被測流体の流量に比例した回転数で回転する。
【0012】回転軸18の両端は、流路14内に嵌合された軸支持部材20,22により保持されている。そして、回転軸18には、羽根車16の上流側に位置する上流側コーン24と、羽根車16の下流側に位置する下流側コーン26と、上流側コーン24と下流側コーン26との間に介在する円筒軸28とが挿通されている。
【0013】羽根車16は、ハブ30の外周に磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32が一定間隔で放射状に設けられており、且つハブ30の中心には円筒軸28の外周に摺動可能に嵌合する軸受部材34が一体的に設けられている。また、羽根車16のハブ30は、軸方向の厚さTが上流側コーン24と下流側コーン26との間隔Lよりも小さくなっている(T<L)。」

b「【0021】羽根車16の羽根32の外周端部に近接する流路14の壁面内部には、ピックアップコイル36が取り付けられている。そして、ピックアップコイル36は、流量演算を行う制御回路38に接続されている。
【0022】ピックアップコイル36は、磁性材料により形成された羽根車16の羽根32が磁界40を横切ることによって磁気回路の磁気抵抗を変化させて誘起電圧を生じさせることで、検出信号を出力する。」

上記a及びbより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」)が記載されている。
「タービン式流量計10は、メータ本体12の内部に形成された流路14内に羽根車(ロータ)16を回転自在に設けてなり、
羽根車16は、ハブ30の外周に磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32が一定間隔で放射状に設けられており、
羽根車16の羽根32の外周端部に近接する流路14の壁面内部には、ピックアップコイル36が取り付けられており、
ピックアップコイル36は、磁性材料により形成された羽根車16の羽根32が磁界40を横切ることによって磁気回路の磁気抵抗を変化させて誘起電圧を生じさせることで、検出信号を出力する、タービン式流量計10」

イ 原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2001-513585号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「 【0037】
図3B、7、8に示すように、計器装置36は、タービンハウジング144内で流れストリーム内に位置するタービン148に関連して、計器のケース106内に形成された空洞122内に部分的に収容される。計器装置36は流れストリーム内に位置した回転可能なタービンと、センサ184及びマイクロコントローラ186と、出力装置40とを含む。センサ184、マイクロコントローラ186及び出力装置40はすべてカセット106内に取り付けられた回路板188上に位置し、バッテリー160と電気的に接続される。計器装置34は2つの基本的な記録保持機能を果たす。第1に、計器装置34は、計器装置が最後にリセットされてからの時間を計数する。計器装置34はバッテリーを取り外して再挿入することによりリセットされる。ホルダ162からバッテリー160を取り外したとき、クリップ172、174が係合し、マイクロコントローラ186及びその内部で使用されるカウンタをリセットする。」

b「 【0039】
タービン148即ち流れ反応装置はタービンハウジング144内に回転可能な状態で位置し、これに装着した信号発生部材190を有する。好ましくは、タービンは実質上細長いシリンダ(円筒体)であり、図18、19に示すように、シリンダの長さに沿って形成された半径方向に延びるタービンブレード192を有する。タービン148の1つのブレード192はその先端に位置する磁気ロッド190を有し、ロッドはブレード192の長さに沿って延びる。磁気ロッド190を有するブレードに対向するタービンブレード192は磁気ロッドの付加的な重量と釣り合わせるために一層大きな質量(一層大なるブレード厚さ寸法)を有する。特に、タービン148は8つの等間隔のブレードを有し、その中に磁気ロッドを位置させたブレードに対向する3つのブレードは他のブレードよりも一層厚くなっている。この特徴は重要である。その理由は、タービンが比較的高い周波数で回転し、回転慣性におけるいかなる不平衡もが計器装置36の性能及びタービンとアクセルブラケット146との構造上の一体性にとって有害であることが分かっているからである。所望の釣り合い機能を得るために、釣り合いおもりを対向するブレード内又は他の位置に配置するような、タービン148を釣り合わせる他の手段がある。」

c「 【0041】
センサ184及びマイクロコントローラ186はカセット106により形成された空洞122内で水の流れの外に位置する回路板188上で相互接続された電気素子により形成される。リードスイッチ又はホール効果センサの如きセンサ184はタービンハウジング144の近傍でタービン148に隣接して位置する。センサは空洞の内部にあり、一方、タービン148は第2の垂直に指向したチャンネル118内にあり、タービンハウジング144の壁はその間に位置する。従って、センサ及びマイクロコントローラ組立体は比較的乾いた状態に維持され、計器装置36の性能に対する水の有害効果を最小化する。」

d「 【0044】
流れセンサ184は、タービンハウジング144の壁を通して、回転するときの磁気ロッド190の運動を感知でき、従って、第2の流れ経路28を通って流れる水により駆動されたときのタービン148の回転数及び回転周波数を表示する信号を発生させる。流れセンサ184はこの情報を含む信号を流れカウンタ194へ送り、このカウンタはタービン148従ってフィルタカートリッジ38を通過する合計流れを記録する。流れセンサ194はタービン回転情報を含む信号を発生させ、これを年月合計モジュール200へ送り、このモジュールは、既知の回転対流れ関係に基づき、回転情報を第1の性能データとして知られる合計流れ情報に変換する。この情報はプログラムされたコントローラ内のそれぞれのしきいデータとの比較を含むいくつかの目的のために使用される。」

ウ 原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願昭57-22374号(実開昭58-141817号)のマイクロフィム(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「ブレード3の相互間隔lの整数倍の間隔、すなわち図では4lの間隔をもってピックアップコイル4及び5が配置されている。ブレード通過検出器としてのピックアップコイル4及び5は異なる位置にあるブレード3の先端の通過を磁気的に同時に検出する。」(明細書第3頁第2?7行)

エ 原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平6-18308号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0011】
【実施例】図1の実施例で、1と2は第1と第2の磁気センサで、電子式水道メータの図示されてない羽根車に取付けられたマグネットの回転磁界をセンシングして、電気的に90°位相の違う電気パルス信号を出力する。」

オ 原査定の備考欄で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願平1-144299号(実開平3-83824号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「磁気センサ24のケース25の内部に埋設したセンサユニット23が、その先端を、上記の羽根車7の永久磁石11を埋め込んだ軸部10の近傍まで突出させて嵌入されて」(明細書第5頁第7?10行)

(2)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1の「メータ本体12」、「羽根車(ロータ)16」及び「タービン式流量計10」は、それぞれ、本願発明1の「流体の流路を形成する手段」、「ロータ」及び「流体フローメータ」に相当する。

イ 引用発明1の「メータ本体12の内部に形成された流路14内に羽根車(ロータ)16を回転自在に設けてなり」は、本願発明1の「流体の流路を形成する手段と、前記流体の流路内に位置するロータ」に相当する。

ウ 引用発明1の「ハブ30の外周に磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32」と、本願発明1の「前記ロータのシャフト上の少なくとも1つの誘導ターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された導電性のストリップを含む少なくとも1つの誘導ターゲット」とは、「ターゲット」である点で共通する。

エ 引用発明1の「ピックアップコイル36」は、「磁性材料により形成された羽根車16の羽根32が磁界40を横切ることによって磁気回路の磁気抵抗を変化させて誘起電圧を生じさせる」ので、引用発明1の「ピックアップコイル36」と、本願発明1の「誘導センサ」とは、「センサ」である点で共通する。

オ 引用発明1の「壁面内部」に取り付けられた「ピックアップコイル36」と、本願発明1の「馬蹄型のセンサ体」とは、「センサ体」である点で共通する。

カ 引用文献1の「羽根32」と、本願発明1の「誘導ターゲット」とは、「ターゲット」である点で共通し、
引用発明1は、「羽根32」に近接する「壁面内部に」、「ピックアップコイル36が取り付けられて」いるので、「ピックアップコイル36」と「羽根32」の間の距離が一定であるといえるので、
引用発明1の「羽根車16の羽根32の外周端部に近接する流路14の壁面内部には、ピックアップコイル36が取り付けられており」と、本願発明1の「前記少なくとも2つの誘導センサが前記少なくとも1つの誘導ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置され、前記誘導センサと前記誘導ターゲットの間の距離が一定である」とは、「前記センサが前記ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が配置され、前記センサと前記ターゲットの間の距離が一定である」点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「流体の流路を形成する手段と、前記流体の流路内に位置するロータと、
ターゲットと、
センサを含むセンサ体と、を有する流体フローメータであって、
前記センサが前記ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が配置され、前記センサと前記ターゲットの間の距離が一定である、流体フローメータ。」

(相違点1)
ターゲットが、本願発明1は、「導電性のストリップを含む少なくとも1つの誘導ターゲット」であるのに対して、引用発明1は、「ハブ30の外周に磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32」である点。

(相違点2)
センサが、本願発明1は、「誘導センサ」であるのに対して、引用発明1は、「磁性材料により形成された羽根車16の羽根32が磁界40を横切ることによって磁気回路の磁気抵抗を変化させて誘起電圧を生じさせる」「ピックアップコイル36」である点。

(相違点3)
センサ体が、本願発明1は、「馬蹄形のセンサ体」であるのに対して、引用発明1は、「ピックアップコイル36」を「壁面内部」に取り付けたものである点。

(相違点4)
ターゲットとセンサ体の配置が、本願発明1は、「前記ロータのシャフト上の少なくとも1つの誘導ターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された」「誘導ターゲットと」「前記少なくとも2つの誘導センサが前記少なくとも1つの誘導ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置され」るのに対して、引用発明1は、「羽根車16」の「ハブ30の外周に磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32」と「羽根32の外周端部に近接する流路14の壁面内部」の「ピックアップコイル36」である点。

(3)判断
「ターゲット」と「センサ」の対で、ロータの回転を検知して流量を検出するという機能を果たすことができるので、上記相違点1及び2についてまとめて検討する。
引用発明1は、「磁性材料により形成された複数の羽根(ブレード)32」と「磁気回路の磁気抵抗を変化させて誘起電圧を生じさせる」「ピックアップコイル36」を用いて流量を検出するものであり、本願発明1のように「導電性のストリップ」の「誘導ターゲット」と「誘導センサ」を用いて流量を検出するものではなく、また、引用文献1にも、「誘導ターゲット」と「誘導センサ」について記載されていない。
そして、引用文献2ないし5についても、「導電性のストリップ」の「誘導ターゲット」と「誘導センサ」を用いて流量を検出することは記載されていない。
してみると、引用文献1ないし5には、「導電性のストリップ」の「誘導ターゲット」と「誘導センサ」を用いて流量を検出することは記載も示唆もされておらず、引用発明1において、「導電性のストリップ」の「誘導ターゲット」と「誘導センサ」を用いることは、当業者といえども容易であるということはできない。

したがって、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成は、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点3及び4について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
上記「(3)」に記載したように、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2ないし8は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要

「 理 由

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1
・引用例A-D

引用例Aには、
「・・・電子式軸流羽根車式水道メータ。」
の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている
・・・
したがって、本願発明と引用発明Aとの実質的な相違点は、次のとおりである。
<相違点>
本願発明は、ロータの回転を検出するのに、誘導ターゲットと誘導センサを用いるのに対して、引用発明Aは、永久磁石とセンサを用いる点。

そこで、上記相違点について検討する。
ロータの回転を検出するのに、誘導ターゲットと誘導センサを用いる技術は、例えば、引用例B(図1)、引用例C(図1)又は引用例D(図1)に記載されているように周知技術である。
・・・
よって、本願発明は、引用発明A及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
引用例A:実願平3-27628号(実開平4-122323号)のマイクロフィルム
引用例B:実願昭47-57846号(実開昭49-18573号)のマイクロフィルム(周知技術として引用)
引用例C:特開平7-49353号公報(周知技術として引用)
引用例D:特開平4-232874号公報(周知技術として引用)
引用例E:特表2001-513585号公報 」

2 当審拒絶理由の判断
(1)引用例の記載事項
ア 当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願平3-27628号(実開平4-122323号)のマイクロフィルム(以下、「引用例A」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「【請求項1】 一端に流入口、他端に流出口を有したケースの内部に流通路を形成し、この流通路に流体の流体圧を受けて回転する羽根車を設けた電子式軸流羽根車式水道メータにおいて、前記羽根車の羽根車軸の両端部を軸受によって回転自在に軸支するとともに、羽根車ボスの端部にテーパ状で、そのテーパ面に回転軸心を中心として異極を対称的に設けた永久磁石を設け、この永久磁石の円周方向に沿って、しかも永久磁石の回転時に変化する磁界によってパルスを発生する磁気応動素子を配置したことを特徴とする電子式軸流羽根車式水道メータ。」

b「 【0020】
また、前記永久磁石26の磁気面27の近傍にはセンサ保護筒22が設けられている。このセンサ保護筒22の内部には永久磁石26の円周方向に沿って、しかも永久磁石26の回転時に変化する磁界によってパルスを発生する磁気応動素子としてのセンサ24,24が配置されている。」

c 図1


d 図2



(ア)上記aの記載から、引用例Aには、「ケースの内部に流通路を形成し、この流通路に羽根車を設けた電子式軸流羽根車式水道メータ」が記載されている。

(イ)上記bの記載から、引用例Aには、「永久磁石26の磁気面27の近傍にはセンサ保護筒22が設けられ、センサ保護筒22の内部には永久磁石26の円周方向に沿って、永久磁石26の回転時に変化する磁界によってパルスを発生する磁気応動素子としてのセンサ24,24が配置されている」ことが記載されている。

(ウ)上記cの記載から、引用例Aには、「円筒形のセンサ保護筒22が、羽根車軸10の周りに配置されている」ことが記載されている。

(エ)上記dの記載から、引用例Aには、「羽根車軸10を囲んで取り付けられた永久磁石26」が記載されている。

上記(ア)及び(エ)より、引用例Aには、次の発明(以下、「引用発明A」)が記載されている。
「ケースの内部に流通路を形成し、この流通路に羽根車を設けた電子式軸流羽根車式水道メータにおいて、
羽根車軸10を囲んで取り付けられた永久磁石26と、
永久磁石26の磁気面27の近傍にはセンサ保護筒22が設けられ、
円筒形のセンサ保護筒22が、羽根車軸10の周りに配置され、
センサ保護筒22の内部には永久磁石26の円周方向に沿って、永久磁石26の回転時に変化する磁界によってパルスを発生する磁気応動素子としてのセンサ24,24が配置されている、電子式軸流羽根車式水道メータ。」

イ 当審拒絶理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願昭47-57846号(実開昭49-18573号)のマイクロフィルム(以下、「引用例B」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「実用新案登録請求の範囲
断面が円形の高速回転軸の外周面上の少なくとも2個所以上に高導電率非磁性金属を厚さ10μ以上にメッキ装着し、この金属薄膜の表面積に見合う一定大きさの高周波コイルを上記回転軸に対向して設けたことを特徴とする回転数測定装置。」

ウ 当審拒絶理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平7-49353号公報(以下、「引用例C」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「【0007】ここで、図31に示す、いわゆる高周波誘導方式の回転速度センサでは、上記の金属製のロータ19に近接して一対のセンサ部21を配置し、これらのセンサ部21にそれぞれ発振器22から高周波電流を流す。高周波電流が流れるセンサ部21にはコイル(図示せず)が具備されていて、このコイルから発生する高周波磁界によりロータ19の表面に渦電流が流れる。一方、ロータ19は回転軸(図示せず)とともに回転しており、センサ部21とロータ19との距離は凹凸部20により変化する。そのため、ロータ19の表面に流れる渦電流の強さ・向きが変化し、渦電流によって生じる磁界によりセンサ部21のコイルによる高周波磁界が影響を受け変化する。その変化によりセンサ部21に誘導される起電力を各センサ部21に接続された検出器23で検出し、検出した信号電圧を差動増幅器24で増幅して比較器25に送る。この比較器25では基準電圧Vref と差動増幅器24の出力電圧とを比較してセンサ出力を得ている。」

b「【0015】本実施例は、図1に示すように、樹脂により略円筒状に形成されたロータ本体2の外周面にその円周方向に沿って、四角形状に形成された金属片3を等間隔に並べ、金属片3の表面とロータ本体2の外周面とが段差なく同一面になるように埋設している。その結果、従来の金属製のロータにおいて検出に寄与していた凹凸部の役割を、金属片3と、金属片3の間に位置するロータ本体2の樹脂の部分とで担わせ、検出の感度を低下させることなくロータ1を軽量化することができる。」

エ 当審拒絶理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平4-232874号公報(以下、「引用例D」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0016】説明上、2つの接近検出器L0及びL1は、磁気コイル3a及び4aをキャパシタ3b及び4bと並列に接続したものであり、2つの対向する半径方向に配置された2つの発振回路が形成されている。ディスク2は非金属性の材料、例えば成形プラスチックで形成され、そしてマーク5はディスク上の金属化された半径セクタである。」

オ 当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2001-513585号公報は、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2であり、その記載事項は、上記第3 2(1)イに記載したとおりである。

(2)対比
本願発明1と引用発明Aを対比する。
ア 引用発明Aの「ケース」、「羽根車」、「羽根車軸10」及び「電子式軸流羽根車式水道メータ」は、本願発明1の「流体の流路を形成する手段」、「ロータ」、「シャフト」及び「流体フローメータ」に相当する。

イ 引用発明Aの「ケースの内部に流通路を形成し、この流通路に羽根車を設けた」は、本願発明1の「流体の流路を形成する手段と、前記流体の流路内に位置するロータ」に相当する。

ウ 引用発明Aの「羽根車軸10を囲んで取り付けられた永久磁石26」と、本願発明1の「前記ロータのシャフト上の少なくとも1つの誘導ターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された導電性のストリップを含む少なくとも1つの誘導ターゲット」とは、「前記ロータのシャフト上の少なくとも1つのターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された少なくとも1つのターゲット」である点で共通する。

エ 引用発明Aは「センサ保護筒22の内部には」「センサ24,24が配置されている」ので、
引用発明Aの「円筒形の」「センサ保護筒22」と、本願発明1の「少なくとも2つの誘導センサを含む馬蹄形のセンサ体」とは、「少なくとも2つのセンサを含むセンサ体」である点で共通する。

オ 引用発明Aは「センサ24,24」が、「永久磁石26の円周方向に沿って」配置されているので、引用発明Aは、「センサ24,24」が「永久磁石26」に隣接して位置しているといえるので、
引用発明Aの「センサ保護筒22の内部には永久磁石26の円周方向に沿って」「センサ24,24が配置され」「センサ保護筒22が、羽根車軸10の周りに配置され」と、本願発明1の「前記少なくとも2つの誘導センサが前記少なくとも1つの誘導ターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置され」とは、「前記少なくとも2つのセンサが前記少なくとも1つのターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置され」る点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明Aとは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「流体の流路を形成する手段と、前記流体の流路内に位置するロータと、
前記ロータのシャフト上の少なくとも1つのターゲットであって前記ロータの前記シャフトの周りに配置された少なくとも1つのターゲットと、
少なくとも2つのセンサを含むセンサ体と、を有する流体フローメータであって、
前記少なくとも2つのセンサが前記少なくとも1つのターゲットに隣接して位置するように前記センサ体が前記ロータの前記シャフトの周りに配置された、流体フローメータ。」

(相違点1)
ターゲットが、本願発明1は、「導電性のストリップを含む少なくとも1つの誘導ターゲット」であるのに対して、引用発明Aは、「永久磁石26」である点。

(相違点2)
センサが、本願発明1は、「誘導センサ」であるに対して、引用発明Aは、「永久磁石26の回転時に変化する磁界によってパルスを発生する磁気応動素子としてのセンサ24,24」である点。

(相違点3)
センサ体が、本願発明1は、「馬蹄形のセンサ体」であるのに対して、引用発明Aは、「円筒形のセンサ保護筒22」である点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記誘導センサと前記誘導ターゲットの間の距離が一定である」のに対して、引用発明Aは、そのような特定がない点。

(3)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点3について検討する。
引用発明Aの「センサ保護筒22」は「円筒形」であり、本願発明1のように「馬蹄形のセンサ体」ではなく、また、引用例AないしEには、「馬蹄形のセンサ体」が記載も示唆もされてないことから、引用発明Aにおいて、「円筒形のセンサ保護筒22」を「馬蹄形のセンサ体」とすることは、当業者といえども容易であるということはできない。

したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明A及び引用例BないしEに記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1,2及び4について検討するまでもなく、引用発明A及び引用例BないしEに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
上記「(3)」に記載したように、本願発明1は、引用発明A及び引用例BないしEに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2ないし8は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明A及び引用例BないしEに記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定及び当審の拒絶の理由を検討しても、その理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-11 
出願番号 特願2012-506582(P2012-506582)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 里村 利光  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 流体フローメータ  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
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