• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H03F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03F
管理番号 1323393
審判番号 不服2016-4977  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2011-141102「増幅回路および窒化物半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日出願公開、特開2013- 9200、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願の手続の概要は以下のとおりである。

平成23年 6月24日 特許出願
平成26年10月31日 拒絶理由通知
平成26年12月19日 意見書、手続補正書
平成27年 5月29日 拒絶理由通知
平成27年 8月 3日 意見書、手続補正書
平成27年 9月14日 拒絶理由通知
平成27年11月27日 意見書、手続補正書
平成27年12月28日 拒絶査定
平成28年 4月 5日 審判請求、手続補正書
平成28年 6月13日 前置報告
平成28年11月 7日 拒絶理由通知
平成28年11月21日 意見書、手続補正書

第2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成28年11月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
Si基板またはSiC基板と前記Si基板またはSiC基板上に形成された窒化物半導体層とを有し、かつ高周波信号がゲート端子に入力され、高周波信号がドレイン端子から出力するFETからなるパワーアンプと、
前記ドレイン端子と前記ドレイン端子に電圧を供給する電源との間に接続されたインダクタと、
前記インダクタの前記電源側の電流を前記パワーアンプのドレイン電流として検出する検出部と、
前記検出されたドレイン電流が所定値より小さい場合は、ドレイン電流に応じたゲートバイアス電圧を前記パワーアンプのゲート端子に出力し、前記検出されたドレイン電流が前記所定値以上の場合は、固定値のゲートバイアス電圧を前記パワーアンプのゲート端子に出力する制御部と、
を具備し、
前記所定値は、前記ゲート端子に前記高周波信号が入力されず、かつ前記固定値のゲートバイアスが入力されかつドレイン電流のドリフトが生じていないときのドレイン電流であり、
前記制御部は、前記検出されたドレイン電流が前記所定値より小さい場合は、前記ドレイン電流が前記所定値となるように前記パワーアンプのゲート端子に前記ゲートバイアス電圧を出力することを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記検出部は、前記ドレイン電流が前記所定値の場合前記固定値を、前記ドレイン電流が前記所定値より大きい場合前記固定値より負側の電圧を、前記ドレイン電流が前記所定値より小さい場合前記固定値より正側の電圧を、それぞれ前記制御部に出力し、
前記制御部は、前記検出部からの入力電圧が、前記固定値より負側の場合前記固定値を、前記固定値より正側の場合前記入力電圧を、前記ゲートバイアス電圧として出力することを特徴とする請求項1記載の増幅回路。
【請求項3】
前記ドレイン電流は、ドハティ増幅回路のメインアンプに含まれるFETのドレイン電流であり、前記ゲートバイアス電圧は、前記メインアンプに含まれるFETのゲートバイアス電圧であることを特徴とする請求項1または2記載の増幅回路。
【請求項4】
前記パワーアンプのドレイン電圧を制御するエンベロープコントローラを具備することを特徴とする請求項1または2記載の増幅回路。」

第3.当審の拒絶理由
平成28年11月7日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の請求項の記載が不備のため、本願の請求項5及びそれを引用する請求項6に係る発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。
平成28年11月21日付けの手続補正によって、補正前の請求項5及び6が削除され、上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載したように、本願の特許請求の範囲の請求項の記載は、補正によって明確なものとなり、当審の拒絶理由は解消した。

第4.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。



1.特開2010-268393号公報
2.実願昭63-110084号(実開平2-32221号)の願書に添付 した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
3.特開2009-59945号公報

第5.当審の判断
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1(以下、「引用例」とい
う。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNを用いて信号を増幅するトランジスタのドレイン端子に流れる電流を電圧変換により電位差として検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した電位差に基づいて利得補償を行うか否かを判定する補償判定部と、
前記補償判定部により利得補償を行うと判定された場合に、前記電位差に応じた利得補償を実行する利得補償部と
を備えたことを特徴とする増幅器。
【請求項2】
前記電圧検出部は、前記トランジスタのドレイン端子に接続する線の異なる2点間の差分電圧を検出し、前記利得補償部は、前記差分電圧に応じて前記信号の減衰量を調整することで利得補償を実行することを特徴とする請求項1に記載の増幅器。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した高出力増幅器は、GaN-HEMTデバイスの出力レベルを高出力から低出力に制御した場合に、アイドル電流(Idq)が規定値以下となるIdqドリフトが発生し、かかるIdqドリフトによりGaN-HEMTデバイスの利得が大幅に変動してしまうという問題があった。」

(3)「【0018】
次に、本実施例にかかる送信装置の概要について説明する。図4は、本実施例にかかる送信装置の概要を説明するための図である。図4に示すよう
に、本実施例にかかる送信装置は、GaN-HEMTデバイスのドレイン端子に入力するドレイン電流をモニタし、ドレイン電流の電流値が規定値未満となるか否かを判定する。そして、送信装置は、ドレイン電流の電流値が規定値未満となる場合に、ドレイン電流に応じた利得補償を実行する。
【0019】
例えば、図4において、ドレイン電流をモニタした結果、ドレイン電流が0.1Aの場合には、GaN-HEMTデバイスの利得が基準値の23dBから20dBに低下するため、送信装置は、利得が23dBに戻るように利得補償を実行する。
【0020】
このように、本実施例にかかる送信装置は、ドレイン電流に基づいて利得補償を実行することで、IdqドリフトによるGaN-HEMTデバイスの利得が大幅に変動してしまうという問題を解決することが出来る。」

(4)「【0026】
次に、図5に示した高出力増幅器140の概要構成について説明する。図6は、本実施例にかかる高出力増幅器140の概要構成を示す図である。図6に示すように、この高出力増幅器140は、GaN-HEMTデバイス141、電圧検出部142、利得補償判定回路143、制御回路144、利得補償回路145を有する。
【0027】
このうち、GaN-HEMTデバイス141は、Vg(ゲートバイアス)とVd
(ドレインバイアス)に接続され、図5に示したQMOD130が出力する信号を増幅する回路である。電圧検出部142は、GaN-HEMTデバイス141のドレイン端子に流れる電流を電圧変換により電位差(電圧)として検出する処理部である。電圧検出部142は、検出結果となる電圧の値を利得補償判定回路143と制御回路144に出力する。
【0028】
利得補償判定回路143は、電圧検出部142から電圧の値を取得し、取得した電圧の値に基づいて、利得補償を実行するか否かを判定する回路である。具体的に、利得補償判定回路143は、電圧の値が規定値未満の場合に利得補償を実行すると判定し、電圧の値が規定値以上の場合に利得補償を実行しないと判定する。利得補償判定回路143は、判定結果を制御回路144に出力する。
【0029】
制御回路144は、利得補償判定回路143から判定結果を取得し、電圧検出部142から電圧の値を取得すると共に、判定結果に応じて電圧の値を利得補償回路145に出力する。具体的に、制御回路144は、利得補償を実行する旨の判定結果を取得した場合に、電圧の値を利得補償回路145に出力する。一方、制御回路144は、利得補償を実行しない旨の判定結果を取得した場合に、電圧の値を利得補償回路145に出力しない。
【0030】
利得補償回路145は、制御回路144から電圧の値を取得した場合に、取得した電圧の値に応じて、利得補償を実行する回路である。例えば、利得補償回路145は、信号線を伝送する信号の減衰量を電圧の値に応じて調整することで、利得補償を実行する。」

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

GaNを用いて信号を増幅するトランジスタ(GaN-HEMTデバイス141)と、
前記トランジスタのドレイン端子に流れる電流を電圧変換により電位差
(電圧)として検出する処理部である電圧検出部(142)と、
前記電圧検出部から電圧の値を取得し、取得した電圧の値に基づいて、利得補償を実行するか否かを判定する回路であって、電圧の値が規定値未満の場合に利得補償を実行すると判定し、電圧の値が規定値以上の場合に利得補償を実行しないと判定する利得補償判定回路(143)と、
前記利得補償判定回路から判定結果を取得し、前記電圧検出部から電圧の値を取得すると共に、判定結果に応じて電圧の値を利得補償回路(145)に出力する制御回路(144)であって、利得補償を実行する旨の判定結果を取得した場合に、電圧の値を前記利得補償回路に出力し、利得補償を実行しない旨の判定結果を取得した場合に、電圧の値を前記利得補償回路に出力しない制御回路と、を備え、
前記利得補償回路は、前記制御回路から電圧の値を取得した場合に、取得した電圧の値に応じて、利得補償を実行する回路であって、信号線を伝送する信号の減衰量を電圧の値に応じて調整することで、利得補償を実行する利得補償回路であり、
前記トランジスタのドレイン電流の電流値が規定値未満となる場合に、ドレイン電流に応じた利得補償を実行する送信装置の増幅器。

2.対比
本願の請求項1-4に係る発明は、上記「第2.特許請求の範囲の記載」に示した平成28年11月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「トランジスタ」は、GaNを用いるので窒化物半導体層を有するもので、「前記トランジスタのドレイン端子…」とあることからFETであり、送信装置の増幅器を構成するものであるから、高周波信号がゲート端子に入力され、高周波信号がドレイン端子から出力するパワーアンプを構成するものといえる。
引用発明の「電圧検出部」は、パワーアンプのドレイン電流を検出する点で、本願発明の「検出部」と共通する。
引用発明は、「利得補償判定回路」、「制御回路」、及び「利得補償回
路」によって、「トランジスタのドレイン電流の電流値が規定値未満となる場合に、ドレイン電流に応じた利得補償を実行する」とするものであり、本願発明の「前記ドレイン電流が前記所定値となるように前記パワーアンプのゲート端子に前記ゲートバイアス電圧を出力すること」も補償といえるの
で、両者は、検出されたドレイン電流が所定値より小さい場合は補償を行
い、検出されたドレイン電流が前記所定値以上の場合は補償を行わない点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。

(1)一致点
窒化物半導体層を有し、かつ高周波信号がゲート端子に入力され、高周波信号がドレイン端子から出力するFETからなるパワーアンプと、
前記パワーアンプのドレイン電流を検出する検出部と、
検出されたドレイン電流が所定値より小さい場合は補償を行い、検出されたドレイン電流が前記所定値以上の場合は補償を行わない制御部と、
を具備する増幅回路。

(2)相違点1
本願発明のFETは、「Si基板またはSiC基板と前記Si基板またはSiC基板上に形成された窒化物半導体層とを有し」とするのに対して、引用発明のものは、基板についての特定がない点。

(3)相違点2
本願発明は「前記ドレイン端子と前記ドレイン端子に電圧を供給する電源との間に接続されたインダクタ」を有し、「検出部」が「前記インダクタの前記電源側の電流を前記パワーアンプのドレイン電流として検出する」とするのに対して、引用発明のものは、インダクタについての特定がない点。

(4)相違点3
補償することが、本願発明では、「前記検出されたドレイン電流が所定値より小さい場合は、ドレイン電流に応じたゲートバイアス電圧を前記パワーアンプのゲート端子に出力し、前記検出されたドレイン電流が前記所定値以上の場合は、固定値のゲートバイアス電圧を前記パワーアンプのゲート端子に出力する制御部」により、「前記検出されたドレイン電流が前記所定値より小さい場合は、前記ドレイン電流が前記所定値となるように前記パワーアンプのゲート端子に前記ゲートバイアス電圧を出力する」とするもので、
「所定値」は「前記ゲート端子に前記高周波信号が入力されず、かつ前記固定値のゲートバイアスが入力されかつドレイン電流のドリフトが生じていないときのドレイン電流」であるのに対して、引用発明では、「利得補償判定回路」、「制御回路」、及び「利得補償回路」により、「前記トランジスタのドレイン電流の電流値が規定値未満となる場合に、ドレイン電流に応じた利得補償を実行する」とするもので、「利得補償回路」は「信号線を伝送する信号の減衰量を電圧の値に応じて調整することで、利得補償を実行する」ものである点。

3.判断
上記相違点3について検討する。
引用発明は「信号線を伝送する信号の減衰量を電圧の値に応じて調整することで、利得補償を実行する利得補償回路」によって、利得補償を行うものである。
そのため、利得補償ができるのは「信号線を伝送する信号」が入力されないときではなく、補償を行うかどうかを決める「所定値」(規定値)は、特定の値の「信号線を伝送する信号」が入力されたときのドレイン電流とな
る。
仮に、原査定の理由となった拒絶理由で指摘されているように、ゲートバイアス電圧を調整することにより利得を調整することが周知であるとして
も、引用発明にそのような周知技術を適用することで、上記相違点3を本願発明と同様のものとすることは、「所定値」(規定値)の値が異なるものとなるため、当業者であっても容易にできることではない。
また、上記「第4.原査定の理由の概要」の刊行物1及び2には、本願発明の「所定値」に関する事項は、記載も示唆もされていない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項2-4に係る発明は、請求項1を引用するものであるから、本願発明と同様である。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-11 
出願番号 特願2011-141102(P2011-141102)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H03F)
P 1 8・ 121- WY (H03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 白井 孝治  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 加藤 恵一
山本 章裕
発明の名称 増幅回路および窒化物半導体装置  
代理人 片山 修平  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ