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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1323421
審判番号 不服2016-4234  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-18 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2012- 69688「媒体収納繰出装置及び媒体処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-199365、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成24年3月26日の出願であって、平成27年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月15日付けで拒絶の査定がなされた。これに対し、平成28年3月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に同日付で手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年3月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正の内容は、以下のとおりである(下線は、補正箇所を明らかにするために、当審にて付した。)。
(1)補正事項1
本件補正は、請求項1および3に
「上記巻き取り時用の複数のギアは、上記ドラムが上記テープを巻き取る速度より、上記テープリールから上記テープが巻き戻される速度の方が遅くなるようにギア比が設定され、
上記巻き戻し時用の複数のギアは、上記ドラムから上記テープが巻き戻される速度より、上記テープリールに上記テープが巻き取られる速度の方が速くなるようにギア比が設定され、」
とあるのを、
「上記巻き取り時用の複数のギアは、上記ドラムが上記テープを巻き取る速度より、上記テープリールから上記テープが巻き戻される速度の方が常に遅くなるようにギア比が設定され、
上記巻き戻し時用の複数のギアは、上記ドラムから上記テープが巻き戻される速度より、上記テープリールに上記テープが巻き取られる速度の方が常に速くなるようにギア比が設定され、」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。

(2)補正事項2
本件補正は、段落【0024】 および段落【0025】に
「巻き取り時用の複数のギアは、ドラムがテープを巻き取る速度より、テープリールからテープが巻き戻される速度の方が遅くなるようにギア比が設定され、巻き戻し時用の複数のギアは、ドラムからテープが巻き戻される速度より、テープリールにテープが巻き取られる速度の方が速くなるようにギア比が設定され、」
とあるのを、
「巻き取り時用の複数のギアは、ドラムがテープを巻き取る速度より、テープリールからテープが巻き戻される速度の方が常に遅くなるようにギア比が設定され、巻き戻し時用の複数のギアは、ドラムからテープが巻き戻される速度より、テープリールにテープが巻き取られる速度の方が常に速くなるようにギア比が設定され、」
とする補正(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。

2 補正の適否についての判断
(1)補正事項1の適否
ア 補正の目的
本件補正の補正事項1は、請求項1及び3に記載した発明を特定するために必要な事項である「ドラムがテープを巻き取る速度より、テープリールからテープが巻き戻される速度の方が遅くなる」ものである「巻き取り時用の複数のギア」を、「ドラムがテープを巻き取る速度より、テープリールからテープが巻き戻される速度の方が常に遅くなる」ものに限定するものである。
また、「ドラムからテープが巻き戻される速度より、テープリールにテープが巻き取られる速度の方が速くなる」ものである「巻き戻し時用の複数のギア」を、「ドラムからテープが巻き戻される速度より、テープリールにテープが巻き取られる速度の方が常に速くなる」ものに限定するものである。
そして、補正前の請求項1、3、及び請求項1を引用する請求項2に記載された発明と、補正後の請求項1、3、及び請求項1を引用する請求項2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無
出願当初の明細書には、以下の記載がある。(下線は当審にて付した。以下同じ。)
「【0142】
ここで、巻き取り時駆動ギア82と上側リール回転軸シャフトギア48は、ドラム21が上側左テープ28L及び上側右テープ28Rを巻き取る速度よりも、上側左テープリール24L及び上側右テープリール24Rが上側左テープ28L及び上側右テープ28Rを巻き戻す速度の方が遅くなるようにギア比が設定されている。
【0143】
また同様に、巻き取り時駆動ギア82と下側リール回転軸シャフト第1ギア84は、ドラム21が下側左テープ30L及び下側右テープ30Rを巻き取る速度よりも、下側左テープリール26L及び下側右テープリール26Rが下側左テープ30L及び下側右テープ30Rを巻き戻す速度の方が遅くなるようにギア比が設定されている。
【0144】
このように、ドラム21が各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き取る速度よりも、各テープリール24L、24R、26L、26Rが各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き戻す速度の方を遅くすると、ドラム21が各テープリール24L、24R、26L、26Rから各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き取るときに、各テープ28L、28R、30L、30Rに張力がかかる。 」

「【0147】
これにより、一時保留部80でも、各テープ28L、28R、30L、30Rに対して常に一定の張力がかかった状態で、各テープリール24L、24R、26L、26Rからドラム21へ各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き取ることができるようになっている。」

上記【0144】の「ドラムが各テープを巻き取る速度よりも、各テープリールが各テープを巻き戻す速度の方を遅くすると、ドラムが各テープリールから各テープを巻き取るときに、各テープに張力がかかる。」との記載と、上記【0147】の「各テープに対して常に一定の張力がかかった状態で、各テープリールからドラムへ各テープを巻き取ることができる。」との記載を合わせれば、「ドラムが各テープを巻き取る速度よりも、各テープリールが各テープを巻き戻す速度の方」が「常に」「遅い」ことは明らかである。この点と、上記【0142】、【0143】の記載からすれば、「巻き取り時駆動ギアと上側リール回転軸シャフトギア」、及び「巻き取り時駆動ギア82と下側リール回転軸シャフト第1ギア」は、それぞれ「ドラムが各テープを巻き取る速度よりも、各テープリールが各テープを巻き戻す速度の方」が「常に」「遅くなるようにギア比が設定され」ていることは自明である。
また、「巻き取り時駆動ギアと上側リール回転軸シャフトギア」、及び「巻き取り時駆動ギアと下側リール回転軸シャフト第1ギア」は、「巻き取り時用の複数のギア」であることは自明である。

また、出願当初明細書には、以下の記載がある。
「【0152】
ここで、巻き戻し時駆動ギア86と上側リール回転軸シャフトギア48は、ドラム21が上側左テープ28L及び上側右テープ28Rを巻き戻す速度よりも、上側左テープリール24L及び上側右テープリール24Rが上側左テープ28L及び上側右テープ28Rを巻き取る速度の方が速くなるようにギア比が設定されている。
【0153】
また同様に、巻き戻し時駆動ギア82と下側リール回転軸シャフト第2ギア87は、ドラム21が下側左テープ30L及び下側右テープ30Rを巻き戻す速度よりも、下側左テープリール26L及び下側右テープリール26Rが下側左テープ30L及び下側右テープ30Rを巻き取る速度の方が速くなるようにギア比が設定されている。
【0154】
このように、ドラム21が各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き戻す速度よりも、各テープリール24L、24R、26L、26Rが各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き取る速度の方を速くすると、ドラム21から各テープリール24L、24R、26L、26Rへ各テープ28L、28R、30L、30Rが巻き戻されるときに、各テープ28L、28R、30L、30Rに張力がかかる。」

「【0157】
これにより、一時保留部80でも、各テープ28L、28R、30L、30Rに対して常に一定の張力がかかった状態で、ドラム21から各テープリール24L、24R、26L、26Rへ各テープ28L、28R、30L、30Rを巻き戻すことができるようになっている。」

上記【0154】の「ドラムが各テープを巻き戻す速度よりも、各テープリールが各テープを巻き取る速度の方を速くすると、ドラムから各テープリールへ各テープが巻き戻されるときに、各テープに張力がかかる」との記載と、上記【0157】の「各テープに対して常に一定の張力がかかった状態で、ドラムから各テープリールへ各テープを巻き戻すことができる」との記載を合わせれば、「ドラムが各テープを巻き戻す速度よりも、各テープリールが各テープを巻き取る速度の方」が「常に」「速い」ことは明らかである。この点と、上記【0152】、【0153】の記載からすれば、「巻き戻し時駆動ギアと下側リール回転軸シャフト第2ギア」、及び「巻き戻し時駆動ギアと下側リール回転軸シャフト第2ギア」は、それぞれ「ドラムが各テープを巻き取る速度よりも、各テープリールが各テープを巻き戻す速度の方」が「常に」「速くなるようにギア比が設定され」ていることは自明である。
また、「巻き戻し時駆動ギアと下側リール回転軸シャフト第2ギア」、「巻き戻し時駆動ギアと下側リール回転軸シャフト第2ギア」は、「巻き戻し時用の複数のギア」であることは自明である。

以上より、「巻き取り時用の複数のギアは、ドラムがテープを巻き取る速度より、テープリールからテープが巻き戻される速度の方が常に遅くなるようにギア比が設定され、巻き戻し時用の複数のギアは、ドラムからテープが巻き戻される速度より、テープリールにテープが巻き取られる速度の方が常に速くなるようにギア比が設定され、」との事項は、出願当初明細書から自明のものである。したがって、補正事項1は、出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、補正事項1は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

ウ 一群の発明
本件補正前の請求項1ないし3に係る発明と、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明とは、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当する。
よって、補正事項1は、同法第17条の2第4項に適合する。

エ 独立特許要件
補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明(以下それぞれ「補正発明1」ないし「補正発明3」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(ア)補正発明
補正発明1ないし3は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、補正発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
2本1組で媒体を挟持するテープをテープリールとドラムとの間で巻き取る又は巻き戻すことで媒体を収納又は繰り出す媒体収納繰出装置において、
複数組のテープと、
上記複数組のテープのそれぞれを巻き取る複数組のテープリールと、
上記テープリールの回転軸であり、各組の一方のテープリールと他方のテープリールとで別々に設けられる2本のリール回転軸シャフトと、
上記複数組のテープにより挟持された媒体を上記複数組のテープと共に巻き取るドラムと、
上記テープリールごとに独立して設けられ、各テープリールと上記ドラムとの間で各テープの張力が一定となるように、各テープリールと上記リール回転軸シャフトとの間のトルク制御を行うトルク制御部と、
を有し、
上記ドラムの回転軸であるドラム回転軸シャフトと、上記2本のリール回転軸シャフトは、それぞれ巻き取り時用の複数のギアと、巻き戻し時用の複数のギアとにより連結され、
上記巻き取り時用の複数のギアは、上記ドラムが上記テープを巻き取る速度より、上記テープリールから上記テープが巻き戻される速度の方が常に遅くなるようにギア比が設定され、
上記巻き戻し時用の複数のギアは、上記ドラムから上記テープが巻き戻される速度より、上記テープリールに上記テープが巻き取られる速度の方が常に速くなるようにギア比が設定され、
さらに、上記ドラム回転軸シャフトと上記2本のリール回転軸シャフトのそれぞれとの間に設けられ、上記ドラム回転軸シャフトの回転方向がドラムを巻き取る方向の回転方向である場合にのみ、当該ドラム回転軸シャフトの回転を当該ドラム回転軸シャフトから上記巻き取り時用の複数のギアを介して上記2本のリール回転軸シャフトへと伝達する巻き取り駆動用の回転方向制御部と、
上記ドラム回転軸シャフトと上記2本のリール回転軸シャフトのそれぞれとの間に設けられ、上記ドラム回転軸シャフトの回転方向がドラムを巻き戻す方向の回転方向である場合にのみ、当該ドラム回転軸シャフトの回転を当該ドラム回転軸シャフトから上記巻き戻し時用の複数のギアを介して上記2本のリール回転軸シャフトへと伝達する巻き戻し時駆動用の回転方向制御部と
を有する媒体収納繰出装置。」

(イ)刊行物
a 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特表2005-505068号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

(a) 「【0029】
アキュムレータ2の詳細は図1に示される。各アキュムレータは、不透明サイドパネル2aと、蝶番付きパネル8および固定され透き通った被覆パネル10によって規定された透明部とによって囲まれた筐体を有している。この被覆パネル10は、アキュムレータの周囲に延在し、基本的に蝶番付きパネル8に接している。透明パネル8および10は、アキュムレータの内部とその作動部品とを、目視検査することを可能にしている。紙幣は、紙幣投入口4を通してアキュムレータに送られる。このアキュムレータは、駆動機構6によって駆動され、紙幣をアキュムレータ内に引き込むか、あるいは、以前に受容された紙幣をアキュムレータから払い出す。紙幣投入口4は、蝶番付きパネル8のフランジ端9と被覆パネル10のフランジ端11との間に規定されている。
【0030】
図2および図3は、アキュムレータの内部作動について図示している。紙幣12は、このアキュムレータ内に送られ、巻回ドラム20に巻かれる。このアキュムレータは、紙幣12の下側面と噛み合う二つのテープ22と、紙幣の上側面と噛み合う二つのテープ26とを有している。理解できる通り、これらのテープと紙幣とは、次いで巻回ドラム20に巻き取られる。各テープ22は、所定のテープ長さを保持するテープリール24を持ち、テープ26は、供給リール28を有している。各テープ22および26は、巻回ドラム20に確保され、巻回ドラムが紙幣を受容するよう駆動される際に巻回ドラム上に巻き取られる。このように、紙幣は、連続的に巻回ドラム20上に巻き取られ、テープ22および26によって以前受容した紙幣と後に受容した紙幣とに分離される。これらのテープはまた、紙幣が巻回ドラム20に送られる際に紙幣を制御し、紙幣が巻回ドラムから払い出されて紙幣投入口を経てアキュムレータから導き出される際に紙幣を制御するのに役立つ。
【0031】
図2はまた、蝶番付きパネル8がどのように解放され、外側に旋回し、ローラ62および63間の紙幣送り点により良く接近するかを示している。各テープ22および26は、ローラ60および64等の幾つかのガイドローラを持つことができ、テープが巻回ドラム上に巻き取られる際、あるいは、テープが供給リール24および28に巻き取られる際に、幾つかのガイドローラは、テープの案内役として機能する。」

(b) 「【0034】
駆動歯車45は、オーバランニングクラッチ45aを通して駆動軸45bに連結している。図5に示されるとおり、オーバランニングクラッチ45aは、歯車45が時計回り方向に回転する時に軸45bに噛み合い、軸45bを駆動する。歯車47は、軸45bに固定され、アキュムレータの向かい側に配置されている。歯車151および155もまた、アキュムレータの向かい側に配置されている。歯車45が反時計回り方向に回転すると、全ての歯車は駆動され、供給リール24および28は、紙幣を払い出す間、テープを巻き取るよう回転する。
【0035】
紙幣を受容する際は、図4に示すとおり、巻回ドラム20は、供給リールから各テープ22および26を引き寄せる。この供給リールは、各リールと協働する別の摩擦クラッチ機構のために各軸上を滑ることができる。このようにテープが巻回ドラム20上に巻かれるので、所定量の引っ張り力がテープに掛けられ、持続されている。理解されるとおり、テープの実際の速度は、モータ40、蓄えられるテープの直径、および巻回ドラム20上に巻かれた紙幣によって決定される。摩擦抗力を伴うテープの引き寄せは、アキュムレータの歯車機構を簡素なものにしている。」

(c) 「【0038】
図5は、以前巻回ドラム20上に巻かれた紙幣を払い出す方法で駆動される際のアキュムレータを示している。歯車45は、一方向クラッチ45aを使用して歯車47に連結される。歯車47は、歯車151および155を駆動し、テープを巻く。これが、各軸と各リールの摩擦クラッチによって容認されるリール24および28のオーバドライブ関係である。紙幣が払い出される際、このドライブ機構は、テープ速度に関係なく、テープの全てを巻き取り、このテープに明確な引っ張り力を与えるのに十分であることを保証している。巻回ドラム上の紙幣とテープの直径が減少すると、テープに必要な駆動は遅くなり、この結果、クラッチ滑りが多くなる。」

(d) 「【0047】
図10および図11は、テープが遊びローラ53を通過する際のテープ22および24の速度を感知する速度機構を示している。遊びローラ53は、軸81に堅固に連結され、速度感知ホイール83を回転させている。図に見られるとおり、ホイール83は周縁にスリットを有している。光レシーバ伝送機構85は、このスリット縁に関連付けられている。ホイール上の複数の突起が光線感知機構間の光線を遮り、これにより、光線を突起によって遮らせるホイール83の運動の度毎に一回の休止がなされる。これにより、テープ22の速度を測定するために使用される精度の高い増分信号が得られる。この信号は、次いで処理され、モータ40は、テープ速度を紙幣駆動通路中の送りと効率的に合致するよう整合される。基本的に、紙幣は、予め決められた凡その速度でアキュムレータに送られ、モータ40は、アキュムレータが紙幣を適切な速度で受容することを確認し、調整される。
モータ40は、停止/開始というように駆動され、紙幣が紙幣投入口に進入し光線の遮りを引き起こした時に、このモータは、基本的に始動する。モータは、アキュムレータを紙幣受容速度に素早く持って行く。」

(e) Fig.10より、「軸81」に2つの「遊びローラ53」が設けられ、2つの「遊びローラ53」を「紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22」が通過していることが見て取れる。

(f) 上記(a)の【0030】には「テープリール24」、「供給リール28」と記載がある一方、【0031】及び【0034】には「供給リール24および28」とあるから、【0030】の「テープリール24」は、「供給リール24」であることは自明である。また、【0038】の「リール24および28」についても、「供給リール24および28」であることは自明である。

(g) 上記(d)【0047】の「テープ」が「通過する」ものである「遊びローラ53は軸に堅固に連結され」との記載と、上記(e)より、「紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22」が「通過する」2つの「遊びローラ53」は、「軸81に堅固に連結され」されていることは自明である。
そして、紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22が通過する2つの遊びローラは、一つの軸に堅固に連結されている場合に、「巻回ドラム」の径が両端部で異なることにより2つのテープ22の速度に差が生じても、「巻回ドラム」と「遊びローラ」の間ではその速度の差が吸収されず、2つのテープ22の一方にたるみが生じるから、「遊びローラ」と「巻回ドラム」の間での「紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22」にかかる張力は、一定ではないといえる。

上記(a)ないし(g)より、刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「紙幣を引き込むか、あるいは、以前に受容された紙幣を払い出すアキュムレータであって、
紙幣12の下側面と噛み合う二つのテープ22と、紙幣の上側面と噛み合う二つのテープ26とを有し、
これらのテープと紙幣とは、次いで巻回ドラム20に巻き取られ、各テープ22は、所定のテープ長さを保持する供給リール24を持ち、テープ26は、供給リール28を有し、各テープ22および26は、巻回ドラム20に確保され、巻回ドラムが紙幣を受容するよう駆動される際に巻回ドラム上に巻き取られ、紙幣は、連続的に巻回ドラム20上に巻き取られ、
紙幣を受容する際は、巻回ドラム20は、供給リールから各テープ22および26を引き寄せ、供給リールは、各供給リールと協働する別の摩擦クラッチ機構のために各軸上を滑ることができ、テープが巻回ドラム20上に巻かれるので、所定量の引っ張り力がテープに掛けられ、持続され、
各軸と各供給リールの摩擦クラッチによって容認される供給リール24および28は、紙幣が払い出される際、テープの全てを巻き取り、このテープに明確な引っ張り力を与え、
紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22が通過する2つの遊びローラ53は、軸81に堅固に連結されされ、
遊びローラ53と巻回ドラム20の間での紙幣12の下側面と噛み合う2つのテープ22にかかる張力は、一定ではない、
アキュムレータ。」

b 刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-107824号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

(a) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープのみを巻き取るリールと、該リールを回転させるリール軸と、前記リールを前記リール軸に取り付けるトルクリミッタと、テープと媒体とを一緒に巻き取るドラムを有し、
前記リールとドラム間で前記テープの巻き取りまたは巻き戻しを行うことにより前記媒体の繰出しまたは収納を行うように構成した媒体収納繰出装置において、
前記媒体の繰出し時には、前記ドラムが前記テープを巻き戻す速度より速い速度で前記リール軸を回転させ、
前記媒体の収納時には、前記ドラムが前記テープを巻き取る速度より遅い速度で前記リール軸を回転させて、
前記リール軸と前記リールの回転速度差を前記トルクリミッタで吸収することを特徴とする媒体収納繰出装置。
【請求項2】
請求項1記載の媒体収納繰出装置において、
前記ドラム及びリールを回転させる駆動源と
前記ドラムがテープを巻き戻す速度より速い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する第1の伝達手段と、
この第1の伝達手段中に設けられ、前記ドラムを取り付けたドラム軸と前記リール軸間の巻き取り方向になる回転の伝達を阻止する第1のワンウェイクラッチと、
前記ドラムがテープを巻き取る速度より遅い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する第2の伝達手段と、
この伝達手段中に設けられ、前記ドラム軸と前記リール軸間の巻き戻し方向になる回転の伝達を阻止する第2のワンウェイクラッチを備えたことを特徴とする媒体収納繰出装置。」

(b) 「【0004】
前記ドラム120は、テープ110、115に挟まれた媒体300をテープ110、115と一緒に巻き取るドラムであり、ドラム軸121に固定してある。
また、リール130、135は、テープ110、115のみを巻き取るリールであり、両リール130、135は同じ形状である。両リール130、135は、それぞれのリール軸131、136にトルクリミッタ132、137を介して取り付けてある。」

(c) 「【0015】
こうして、常にドラムがテープを巻き戻す速度よりリールがテープを巻き取る速度の方が速くなるようなギヤ比を設定している。
この媒体収納繰出装置100の繰出動作を図33を用いて以下に説明する。
駆動モータ140は、ドラム120を矢印a1方向に回転する。このとき、ドラムギヤ150を介してリールギヤ155、160がリールを巻き取る方向である矢印a2方向に回転するため、ワンウェイクラッチ165、170がロックし、リールギヤ155、160の回転をリール軸131、136に伝達されるようになっている。
【0016】
そのため、リール軸131、136は、矢印a3方向に回転するため、ワンウェイクラッチ175、180が空転し、リール軸131、136は回転できる。
また、このとき、前述した式10を満たすため、ドラム120がテープ110、115を巻き戻す速度より、リール軸131、136がテープ110、115を巻き取る速度の方が常に速くなるようなギヤ比を設定しているため、速度の差分をリール130、135とリール軸131、136の間にあるトルクリミッタ132、137が回転することによって吸収する。そのため、テープ110、115には、トルクリミッタ132、137のトルクによって絶えずテンションがかかっている。」

(d) 「【0020】
そのため、リール130、135は、テープによって回転方向に力がかかるが、リール軸131、136は回転しないために、リール130、135とリール軸131、136の間にあるトルクリミッタ132、137が回転することにより、リール130、135が回転してテープ110、115はリール130、135からドラム120に巻き取られる。そのため、テープ110、115は、トルクリミッタ132、137のトルクによって、絶えずテンションがかかった状態になっている。
【0021】
こうして、媒体入出口185から入ってきた媒体320は、テープ110、115に挟まれながらドラム120に巻き取られることによって媒体を収納する。
このように、収納・繰出動作時に、テープ110、115に弛みが発生すると、テープ110、115がアイドルプーリ190、195やリール130、135から外れたり巻き取り時の媒体挟み力がなくなる問題がでるが、上記繰出し・収納動作では、テープに絶えずテンションをかけて弛まないような仕組みになっている。」

(e) 「【0023】
この繰出動作でのトルクリミッタの角速度をTA1、収納動作でのトルクリミッタの角速度をTA2とすると、
TA1=(リール軸の角速度)-(リール角速度)…式11
TA2=(リールの角速度)…式12
トルクリミッタは、角速度が大きくなると、寿命が短くなる問題があり、また、高回転に対応したトルクリミッタは、価格が高価であることからも品質とコストを両立させようとするとトルクリミッタは低回転での使用が求められる。」

(f) 「【発明の効果】
【0032】
このようにした本発明は、媒体の繰出し時だけでなく、媒体の収納時にも、リール軸を回転させるため、収納・繰出動作両方でみた最大角速度を大幅に下げることができてトルクリミッタを低回転で使用が可能となり、トルクリミッタの寿命を長くすることができるという効果が得られ、さらに、ワンウェイクラッチの使用個数を少なくすることが可能となる。」

(g) 「【0038】
よって、リールギヤ411でドラムギヤ416をドラム120がテープを巻き取り方向、すなわち反時計回りに回転すると、ワンウェイクラッチ425がロックする。
このとき、リール軸131の角速度をWA3、テープ巻き戻し速度をVA3、ドラムの角速度をWA4、テープの巻き取り速度をVA4とすると、
ZA3、ZA4は常にVA4>VA3となるようにギヤ比が設定されている。」

(h) 「【0041】
こうして、リールギヤ411とドライブギヤ416は、リールがテープを巻き戻す速度よりドラム120がテープを巻き取る速度の方が速くなるようなギヤ比を設定している。
上述した構成による繰出動作を図2及び図4を用いて以下に説明する。
駆動モータ140は、ドラム120が巻き戻す方向に回転し、ドラムギヤ142を介してドラム軸121に伝達される。
【0042】
このとき、ドラム軸121とワンウェイクラッチ420の関係は、図3(イ)に示す如く、ドラム軸121が時計回りに回るため、ワンウェイクラッチ420はロックしてワンウェイクラッチ420が破線矢印に示すように時計回りに回る。
そのため、図4に示す如く、ドラムギヤ405は矢印c1方向に回転し、リールギヤ410、415は矢印c2方向に回転する。
【0043】
リールギヤ410、415は、リール軸131、136に固定されているために、リール軸131、136を巻き取り方向である矢印c2方向に回転させる。
リール軸131、136の回転速度は、ドラムギヤ405のギヤ歯数ZA2、リールギヤ410、415の歯数をZA1が式10を満たしているため、ドラム120がテープを巻き戻すことにより、ドラム120とテープで接続されているリール130、135が回転する量より速い速度で回転している。この回転速度の差は、リール130、135とリール軸131、136の間に接続されているトルクリミッタ132、137によって吸収される。
【0044】
また、図5に示す如く、リール軸131が矢印c2方向に回転することにより、リールギヤ411が矢印c3方向に回転する。それにより、ドラムギヤ416が矢印c4方向に回転する。
ドラム軸121の角速度WX1のときのドラムギヤ416の角速度WX2は、ドラムギヤ405→リールギヤ410→リールギヤ411→ドラムギヤ416の歯数で決まるため、
WX2=(ドラムギヤ405の歯数/リールギヤ410の歯数)×(リールギヤ411の歯数/ドラムギヤ416の歯数)×WX1
WX2=(ZA2/ZA1)×(ZA3/ZA4)×WX1…式31
式10より、
ra1/(ra2×T2)>ZA1/ZA2
ZA2/ZA1>(ra2×T2)/ra1…式32
式24と式32により式31は、
WX2>[(ra2×T2)/ra1]×[(ra1×T1)/ra2]×WX1
=[(ra2×T2×ra1×T1/(ra1×ra2)]×WX1
=(T1×T2)×WX1
式8、式9により、
1<T1、1<T2のため、(T1×T2)>1となり、
WX2>WX1…式33
そのため、図6に示す如く、ドラム軸121に対するワンウェイクラッチ420の回転は、ドラム軸121が矢印c5に示すように時計回りにWX1の角速度で回転し、ワンウェイクラッチ420は矢印c6に示すように時計回りにWX2の角速度で回転する。
【0045】
式33より、WX2>WX1のため、ドラム軸121に対するワンウェイクラッチ420の相対角速度は、図7に示す如く、ワンウェイクラッチ420が矢印c7に示すように時計回りに回転する。
この場合、図3(ロ)に示す如く、ワンウェイクラッチ420は空転し、ドラムギヤ416の回転は、ドラム軸121に伝達されない。
【0046】
つぎに、収納動作について図2及び図8を用いて説明する。
駆動モータ140によってドラム120が巻き取る方向に回転し、ドラムギヤ142を介してドラム軸121に伝達される。このとき、ドラム120が巻き取り方向である矢印d1方向に回転することにより、テープ110、115が巻き取られ、テープの他端が巻かれているリール130、135が矢印d2方向に回転する。
【0047】
それにより、図9に示す如く、リール130とトルクリミッタ132を介して接続されているリール軸131が矢印D3方向に回転し、リールギヤ411を通してドラムギヤ416が矢印d4方向に伝達される。
このときのワンウェイクラッチ425については、ワンウェイクラッチ425がd4方向、ドラム軸121がd1方向のため、共に反時計回りに回転する。
【0048】
図10に示す如く、ワンウェイクラッチ425の角速度d5がドラム軸121の角速度d6より遅いとき、ドラム軸121に対するワンウェイクラッチ425の相対角速度は、図11の矢印d7に示す如く、時計回りになるため図3(ハ)に示す如く、ワンウェイクラッチ425は空転する。
図12に示す如く、ワンウェイクラッチ425の角速度d8がドラム軸121の角速度d9より速いとき、ドラム軸121に対するワンウェイクラッチ425の相対角速度は図13の矢印d10に示す如く、反時計回りになるため、図3(二)で示すようにワンウェイクラッチ425はロックしてドラム軸121も矢印d11で示すようにワンウェイクラッチ425と同じ速度で回りだす。
【0049】
そのため、リール130の回転によってリール軸131はつれまわし回転をするが、リール軸131の回転速度は、ワンウェイクラッチ425の角速度がドラム軸121の角速度と同じになる角速度までである。
また、リール軸136は、リール軸131とドラムギヤ405にて1対1で伝達されているため、リール軸136は、リール軸131と同じ角速度で回転する。
【0050】
ドラム120の角速度をWY1、ドラムに巻かれるテープによって回転するリール130、135の角速度をWY2、リールに接続されているトルクリミッタ132、137によってつれまわし回転されるリール軸131、136の最大つれまわし回転速度をWY3とすると、
WY2とWY1は、テープの両端をそれぞれ巻き取っているため、テープの速さと巻き取り半径によって角速度が決定される。テープの速度をVTとすると、
VT=WY2×RA1、VT=WY1×RA2
WY2×RA1=WY1×RA2
WY2=(RA2/RA1)×WY1
式6、式7より、
WY2=[(ra2×ka2)/(ra1×ka1)]×WY1…式41
式8、式9により、
WY2=[(ra2×ka2)/(ra1×ka1)]×WY1>[(ra2×1)/(ra1×T1)]×WY1
WY2>[ra2/(ra1×T1)]×WY1…式42
WY3は、ドラム120の角速度WY1とドラムギヤ416、リールギヤ411の歯数によって決まるため、
WY3=(ZA4/ZA3)×WY1…式43
式24により、ZA4/ZA3<ra2/(ra1×T1)のため、
WY3<[ra2/(ra1×T1)]×WY1…式44
式42、式44から、
WY3<[ra2/(ra1×T1)]×WY1<WY2…式45
常に、リール速度WY2の方がリール軸速度WY3より速い速度で回転するようになる。
【0051】
そのため、常にリール130、135の角速度よりリール軸131、136の回転速度が遅い角速度で回転しており、回転速度の差は、トルクリミッタ132、137によって吸収される。
またこのときに、図14に示す如く、リール軸131が矢印e1方向に回転することにより、リールギヤ410が回転し、ドラムギヤ405が矢印e2方向である反時計回りに回転する。そのため、ワンウェイクラッチ420については、ドラム軸121とワンウェイクラッチ420共に反時計回りに回転する。
【0052】
このワンウェイクラッチ420の空転・ロックの条件は、前述したワンウェイクラッチ425の条件と同じである。
ドラムギヤ405の回転速度をWY4とすると、
WY4は、リール軸131の角速度WY3とリールギヤ410、ドラムギヤ405の歯数によって決まるため、
WY4=(ZA1/ZA2)×WY3…式46
式10により、
ZA1/ZA2<ra1/(ra2×T2)
WY4<[ra1/(ra2×T2)]×WY3…式47
WY3の速度は、式44より、
WY3<[ra2/(ra1×T1)]×WY1…式48
WY4<[ra1/(ra2×T2)]×[ra2/(ra1×T1)]×WY1
WY4<[(ra1×ra2)]/(ra2×T2×ra1×T1)]×WY1
WY4<[1/(T2×T1)]×WY1…式49
式8、式9より、
1<T1、1<T2のため、(T2×T1)>1
よって、WY4<WY1…式50
図15に示す如く、ドラムギヤ405に固定されているワンウェイクラッチ420の角速度e3は、ドラム軸121の角速度e4より遅いため、ドラム軸121に対するワンウェイクラッチ420の相対角速度は、図16の矢印e5に示すように時計回りになり、ワンウェイクラッチ420は空転する。
【0053】
よって、リールギヤ410からの伝達でドラムギヤ405は回転するが、ドラム軸121に駆動を伝達しないため、収納動作時のドラム120への影響はない。
このように収納動作時もリール軸が回転しているため、収納動作でのトルクリミッタの角速度をTB2とすると、
TB2=(リールの角速度)-(リール軸の角速度)…式51
となり、従来技術での角速度の式12と比較してリール軸が回転している分、角速度を遅くすることができる。」

(i) 上記(a)の【請求項2】の「前記ドラムがテープを巻き戻す速度より速い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する第1の伝達手段」の記載について、上記(h)の【0041】ないし【0045】の「操出動作」の説明についての記載から、「第1の伝達手段」は複数のギヤからなることは自明である。
また、【請求項2】の「前記ドラムがテープを巻き取る速度より遅い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する第2の伝達手段」についても、上記(h)の【0046】ないし【0053】の「収納動作」の説明についての記載から、「第2の伝達手段」は複数のギヤからなることは自明である。

(j) 上記(b)の記載から、「テープ」は「2本1組で媒体を挟む」ものであり、「リール」は「2本のテープをそれぞれ巻き取る2つのリール」であり、「リール軸」は「一方のリールと他方のリールとで別々に設けられる2本のリール軸」であり、「ドラム」は「2本のテープに挟まれた媒体をテープと一緒に巻き取るドラム」であることは自明である。

(k) 上記(c)には、「ドラム120がテープ110、115を巻き戻し、リール軸131、136がテープ110、115を巻き取るときに、テープ110、115には、トルクリミッタ132、137のトルクによって絶えずテンションがかかっている」ことが記載されており、上記(d)には、「テープ110、115はリール130、135からドラム120に巻き取られるときにテープ110、115は、トルクリミッタ132、137のトルクによって、絶えずテンションがかかった状態になっている」ことが記載されている。これらの記載から、ドラムが2本のテープを巻き戻すとき、及び2本のテープが2つのリールからドラムに巻き取られるとき、2本のテープは、2つのトルクリミッタのトルクによって、絶えずテンションがかかった状態になっていることは自明である。

上記(a)ないし(k)から、刊行物2には以下の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。

「テープのみを巻き取るリールと、該リールを回転させるリール軸と、前記リールを前記リール軸に取り付けるトルクリミッタと、テープと媒体とを一緒に巻き取るドラムを有し、
前記リールとドラム間で前記テープの巻き取りまたは巻き戻しを行うことにより前記媒体の繰出しまたは収納を行うように構成した媒体収納繰出装置において、
前記リール軸と前記リールの回転速度差を前記トルクリミッタで吸収し、
前記ドラム及びリールを回転させる駆動源と、
前記ドラムがテープを巻き戻す速度より速い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する、複数のギヤからなる第1の伝達手段と、
この第1の伝達手段中に設けられ、前記ドラムを取り付けたドラム軸と前記リール軸間の巻き取り方向になる回転の伝達を阻止する第1のワンウェイクラッチと、
前記ドラムがテープを巻き取る速度より遅い速度で前記リール軸が回転するように前記駆動源の動力を伝達する、複数のギヤからなる第2の伝達手段と、
この伝達手段中に設けられ、前記ドラム軸と前記リール軸間の巻き戻し方向になる回転の伝達を阻止する第2のワンウェイクラッチを備え、
常にドラムがテープを巻き戻す速度よりリールがテープを巻き取る速度の方が速くなるようなギヤ比を設定され、
リール軸131のテープ巻き戻し速度をVA3、ドラムのテープの巻き取り速度をVA4とすると、常にVA4>VA3となるようにギヤ比が設定され、リールがテープを巻き戻す速度よりドラム120がテープを巻き取る速度の方が速くなるようなギヤ比を設定され、
トルクリミッタは、角速度が大きくなると、寿命が短くなる問題があり、また、高回転に対応したトルクリミッタは、価格が高価であることからも品質とコストを両立させようとするとトルクリミッタは低回転での使用が求められ、
媒体の繰出し時だけでなく、媒体の収納時にも、リール軸を回転させるため、収納・繰出動作両方でみた最大角速度を大幅に下げることができてトルクリミッタを低回転で使用が可能となり、トルクリミッタの寿命を長くすることができるという効果が得られ、
上記テープは2本1組で媒体を挟むものであり、上記リールは2本のテープをそれぞれ巻き取る2つのリールであり、リール軸は一方のリールと他方のリールとで別々に設けられる2本のリール軸であり、ドラムは2本のテープに挟まれた媒体をテープと一緒に巻き取るドラムであり、
ドラムが2本のテープを巻き戻すとき、及び2本のテープが2つのリールからドラムに巻き取られるとき、2本のテープは、2つのトルクリミッタのトルクによって、絶えずテンションがかかった状態になっており、
収納・繰出動作時に、テープ110、115に弛みが発生すると、テープ110、115がアイドルプーリ190、195やリール130、135から外れたり巻き取り時の媒体挟み力がなくなる問題がでるが、上記繰出し・収納動作では、テープに絶えずテンションをかけて弛まないような仕組みになっている、
媒体収納繰出装置。」

(ウ)対比
まず、補正発明1について検討すると、補正発明1の課題は、「ドラム201の巻き取り径Lがドラム201の両端部で異なるために、ドラム1回転当たりのテープの巻き取り量及び巻き戻し量がそれぞれの組で異なることになり、結果として上下1対のテープの組間でテープ速度に差が生じ」(本願【0019】)、「このテープ速度差に起因して、上下1対のテープの組間でテープの張力にばらつきが生じ」(本願【0020】)、「各組でテープの張力を一定に保つことができないと、紙幣の挟持安定性が低下することになり、紙幣の収納時及び繰り出し時にジャムなどの障害が発生し易くなる」(本願【0022】)というものであり、補正発明の効果は「それぞれのテープリールとドラムとの間でのテープの張力を一定に保つことができるので、媒体の挟持安定性を向上させることができ、かくして従来と比してより確実に障害の発生を防止し得る媒体収納繰出装置及び媒体処理装置を実現できる」(本願【0027】)というものである。したがって、これらからすれば、補正発明1の「各テープリールと上記ドラムとの間で各テープの張力が一定となる」という発明特定事項の「各テープリール」は、補正発明1の「複数組のテープリール」との発明特定事項と一体不可分であり、また、同様に「各テープ」の発明特定事項は「複数組のテープ」との発明特定事項と一体不可分のものである。
補正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「紙幣」は、補正発明1の「媒体」に相当する。
刊行物1発明の「紙幣12の下側面と噛み合う二つのテープ22と、紙幣の上側面と噛み合う二つのテープ26」は、補正発明1の「2本1組で媒体を挟持するテープ」及び「複数組のテープ」に相当する。
刊行物1発明の「供給リール24」、「供給リール28」は、補正発明1の「テープリール」、「複数組のテープのそれぞれを巻き取る複数組のテープリール」に相当する。
刊行物1発明の「巻回ドラム」は、補正発明1の「ドラム」に相当する。
刊行物1発明の「これらのテープと紙幣とは、次いで巻回ドラム20に巻き取られ、各テープ22は、所定のテープ長さを保持する供給リール24を持ち、テープ26は、供給リール28を有し、各テープ22および26は、巻回ドラム20に確保され、巻回ドラムが紙幣を受容するよう駆動される際に巻回ドラム上に巻き取られ、紙幣は、連続的に巻回ドラム20上に巻き取られ」ることは、補正発明1の「2本1組で媒体を挟持するテープをテープリールとドラムとの間で巻き取る」ことに相当する。
刊行物1発明の「各軸と各供給リールの摩擦クラッチによって容認される供給リール24および28は、紙幣が払い出される際、テープの全てを巻き取」ることは、補正発明1の「2本1組で媒体を挟持するテープをテープリールとドラムとの間」で「巻き戻す」ことに相当する。
刊行物1発明の「紙幣を引き込む」、及び「紙幣を受容する」ことは、補正発明1の「媒体を収容」することに相当する。
刊行物1発明の「以前に受容された紙幣を払い出す」、及び「紙幣が払い出される」ことは、補正発明1の「媒体」を「繰り出す」ことに相当する。
刊行物1発明の「アキュムレータ」は、「媒体収納操出」を行うから、補正発明1の「媒体収納操出装置」に相当する。
刊行物1発明において、「紙幣を受容する際」は「供給リール」が「各軸上を滑る」とともに、「紙幣が払い出される際」は「各軸」と「供給リール24および28」が「テープ」を「巻き取」るものであるから、「各軸」は「供給リール24および28」の回転軸であり、「供給リール24および28」とで別々に設けられる2本の回転軸であることは自明である。また、その形状が「シャフト」であることも自明である。したがって、刊行物1発明の「各軸」は、補正発明1の「テープリールの回転軸であり、各組の一方のテープリールと他方のテープリールとで別々に設けられる2本のリール回転軸シャフト」に相当する。
刊行物1発明の「巻回ドラム」は、「紙幣12の下側面と噛み合う二つのテープ22と、紙幣の上側面と噛み合う二つのテープ26」と「紙幣」を「巻き取」るから、補正発明1の「複数組のテープにより挟持された媒体を上記複数組のテープと共に巻き取るドラム」に相当する。
刊行物1発明において、「摩擦クラッチ機構」は、「各供給リールと協働する」ものであるから、「各供給リール」ごとに独立して設けられているといえる。また、「摩擦クラッチ機構」は、「紙幣を受容する際」には「供給リールは各供給リールと協働する別の摩擦クラッチ機構のために各軸上を滑る」とともに、「紙幣が払い出される際」には、「各軸と各供給リールの摩擦クラッチによって容認される供給リール24および28」が、「テープの全てを巻き取り、このテープに明確な引っ張り力を与える」ものであるから、「各供給リール」と「各軸」の間にあって、「紙幣を受容する際」と「紙幣が払い出される際」とでトルク制御を行っているといえる。したがって、刊行物1発明の「摩擦クラッチ」は、補正発明1の「テープリールごとに独立して設けられ」、「各テープリールと上記リール回転軸シャフトとの間のトルク制御を行うトルク制御部」に相当する。
以上より、補正発明1と刊行物1発明とは、
「2本1組で媒体を挟持するテープをテープリールとドラムとの間で巻き取る又は巻き戻すことで媒体を収納又は繰り出す媒体収納繰出装置において、
複数組のテープと、
上記複数組のテープのそれぞれを巻き取る複数組のテープリールと、
上記テープリールの回転軸であり、各組の一方のテープリールと他方のテープリールとで別々に設けられる2本のリール回転軸シャフトと、
上記複数組のテープにより挟持された媒体を上記複数組のテープと共に巻き取るドラムと、
上記テープリールごとに独立して設けられ、各テープリールと上記リール回転軸シャフトとの間のトルク制御を行うトルク制御部と、
を有する媒体収納繰出装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
補正発明1では、「複数組のテープリール」の「各テープリールと上記ドラムとの間で」「複数組のテープ」の「各テープの張力が一定となる」のに対し、刊行物1発明では、「遊びローラと巻回ドラムの間での紙幣の下側面と噛み合う2つのテープにかかる張力は一定ではない」点。

[相違点2]
補正発明1は、「ドラムの回転軸であるドラム回転軸シャフトと、2本のリール回転軸シャフトは、それぞれ巻き取り時用の複数のギアと、巻き戻し時用の複数のギアとにより連結され、
上記巻き取り時用の複数のギアは、上記ドラムが上記テープを巻き取る速度より、上記テープリールから上記テープが巻き戻される速度の方が常に遅くなるようにギア比が設定され、
上記巻き戻し時用の複数のギアは、上記ドラムから上記テープが巻き戻される速度より、上記テープリールに上記テープが巻き取られる速度の方が常に速くなるようにギア比が設定され、
さらに、上記ドラム回転軸シャフトと上記2本のリール回転軸シャフトのそれぞれとの間に設けられ、上記ドラム回転軸シャフトの回転方向がドラムを巻き取る方向の回転方向である場合にのみ、当該ドラム回転軸シャフトの回転を当該ドラム回転軸シャフトから上記巻き取り時用の複数のギアを介して上記2本のリール回転軸シャフトへと伝達する巻き取り駆動用の回転方向制御部と、
上記ドラム回転軸シャフトと上記2本のリール回転軸シャフトのそれぞれとの間に設けられ、上記ドラム回転軸シャフトの回転方向がドラムを巻き戻す方向の回転方向である場合にのみ、当該ドラム回転軸シャフトの回転を当該ドラム回転軸シャフトから上記巻き戻し時用の複数のギアを介して上記2本のリール回転軸シャフトへと伝達する巻き戻し時駆動用の回転方向制御部」を備えるのに対し、刊行物1発明はこれを備えていない点。

(エ)判断
相違点1について検討する。
刊行物2発明は、「複数組のテープ」、「複数組のテープリール」の構成を備えていないから、刊行物2発明は、上記相違点1に係る補正発明1の発明特定事項である、「複数組のテープリール」の「各テープリールと上記ドラムとの間」で「複数組のテープ」の「各テープの張力が一定となる」ことについても備えていない。
また、相違点1に係る発明特定事項について、設計的事項であるとする根拠はない。
そして、補正発明1は、これにより、「(ウ)対比」に記載した課題を解決し、効果を奏するものであるが、当該効果は、刊行物1発明及び刊行物2発明から予想できない顕著なものである。
したがって、当業者が、刊行物2発明に基づいて、相違点1に係る発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、補正発明1は、当業者が刊行物1発明および刊行物2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、補正発明2は、補正発明1を引用してさらに限定したものであるから、補正発明1同様に、当業者が刊行物1発明および刊行物2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
補正発明3は、補正発明1が備える上記相違点1及び相違点2に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を備えているから、補正発明1同様に、当業者が刊行物1発明および刊行物2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(オ)独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、補正発明1ないし3は、当業者が刊行物1発明および刊行物2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、その他に補正発明1ないし3を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

オ 補正事項1の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

(2)補正事項2の適否
本件補正の補正事項2は、上記(1)の「イ 新規事項の有無」のとおり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

(3)補正の適否のむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 原査定の理由について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、補正発明1ないし3は、上記第2の2の(1)の「エ 独立特許要件」のとおり、当業者が刊行物1発明及び刊行物2発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-11 
出願番号 特願2012-69688(P2012-69688)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 黒瀬 雅一
植田 高盛
発明の名称 媒体収納繰出装置及び媒体処理装置  
代理人 田辺 恵基  
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