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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1323426
審判番号 不服2016-7401  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-20 
確定日 2017-01-24 
事件の表示 特願2011-225602「表示装置、表示装置の制御方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 88840、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月13日の出願であって、平成28年2月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年5月20日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年5月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「画像ソースから入力される入力画像を表示面に表示する表示手段と、
前記表示面に対してなされた指示操作の指示位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された指示位置を示す位置情報を生成する位置情報生成手段と、
前記位置情報生成手段により生成された位置情報に基づいて処理を実行する処理手段と、
前記位置情報生成手段により生成された位置情報の出力を制御する出力制御手段と、
動作モードを切り替えるためのボタンを前記表示手段により前記表示面に表示させるボタン表示手段と、
前記ボタン表示手段により表示された前記ボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記動作モードを切り替えるモード切替手段と、
を備え、
前記出力制御手段は、前記モード切替手段による前記動作モードの切り替えに連動して、前記位置情報の出力先を、前記画像ソースと前記処理手段との間で切り替えることを特徴とする表示装置。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。

(2)請求項6について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を、
「画像ソースから入力される入力画像を表示面に表示する表示装置を制御する表示装置の制御方法であって、
前記表示面に対してなされた指示操作の指示位置を前記表示装置が検出し、
検出した指示位置を示す位置情報を前記表示装置が生成し、
動作モードを切り替えるためのボタンを前記表示装置が前記表示面に表示し、
前記表示面に表示された前記ボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記表示装置が前記動作モードを切り替え、
前記動作モードの切り替えに連動して、前記表示装置が、前記位置情報の出力先を、前記画像ソースと、前記位置情報に基づく処理を実行する処理手段と、の間で切り替えること、
を特徴とする表示装置の制御方法。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。

(3)請求項7について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項7を、
「画像ソースから入力される入力画像を表示面に表示する表示装置を制御するコンピューターが実行可能なプログラムであって、
前記コンピューターを、
前記表示面に対してなされた指示操作の指示位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された指示位置を示す位置情報を生成する位置情報生成手段と、
前記位置情報生成手段により生成された位置情報に基づいて処理を実行する処理手段と、
前記位置情報生成手段により生成された位置情報の出力を制御する出力制御手段と、
動作モードを切り替えるためのボタンを前記表示手段により前記表示面に表示させるボタン表示手段と、
前記ボタン表示手段により表示された前記ボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記動作モードを切り替えるモード切替手段と、
して機能させ、
前記出力制御手段は、前記モード切替手段による前記動作モードの切り替えに連動して、前記位置情報の出力先を、前記画像ソースと前記処理手段との間で切り替えることを特徴とするプログラム。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正(以下、「補正事項3」という。)を含んでいる。

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、補正前の請求項1における「前記表示手段により前記表示面に表示された所定のボタン」について「前記表示手段により前記表示面に表示させるボタン表示手段」により表示される「動作モードを切り替えるためのボタン」と限定し、それにともない「前記表示手段により前記表示面に表示された所定のボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記動作モードを切り替えるモード切替手段」を「前記ボタン表示手段により表示された前記ボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記動作モードを切り替えるモード切替手段」とするものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(ア)引用文献・引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-92592号公報(以下、「引用例1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。
「【0009】
そこで本発明の実施例を、図2?4を用いて説明する。
図2に本発明のプロジェクタの一実施例の構成ブロック図を示す。
プロジェクタ1は、投射レンズ2と、撮像素子3と、ポインタ4と、ライトバルブ21と、スクリーンセンサ23と、ライトバルブ駆動回路24と、CPU26と、プロジェクション用画像処理LSI25と、映像入力部27と、入力部28とから構成される。
ポインタ4は、輝点を有する指し棒やレーザポインタ等である。ポインタの輝点とカーソルとを両方表示する場合には輝点の光は可視光を使用し、カーソルのみを表示する場合には赤外光を用いればよい。輝点は投写された映像より高い輝度を有している。
・・・中略・・・
【0010】
図3および4に本実施例の動作を示す。
まずユーザーが、CPU26によってスクリーン20上に表示されるOSDなどのインターフェイスにより、スクリーン上の映像に歪みが無くなるよう入力部57から角度及び座標の設定を行う。もしくはスクリーンセンサ23によって検出されたスクリーンまでの距離とスクリーンに対するプロジェクタのあおり角度からCPUが座標の自動設定を行う(S10)。
次にその設定値からCPU26がPJ用画像処理LSI25に設定するパラメータを生成する(S11)。
設定されたパラメータによって、PJ用画像処理LSI25は、PJ用画像処理LSI25に入力した方形の入力映像を画像処理し、変形した投影映像を生成してライトバルブ駆動回路24を介してライトバルブ21に投影映像を書き込み、ライトバルブはスクリーン20上に投影する。これによってプロジェクタ投射画像のひずみ補正が行われる(S12)。
【0011】
撮像素子3は、輝点を有するポインタ4を含めて歪ませて投射された投影映像5を撮影し撮影映像10をCPU26に送る。
CPU26において、撮影映像10は、座標変換手段によって座標変換された撮影映像12に変換される(S13)。
座標変換された撮影映像から輝点の座標x’、y’を取得する(S14)。
座標変換後輝点位置12で示されるx’、y’をカーソルの座標としてカーソルを入力映像に重畳し(S15)、カーソル重畳映像13を形成し投写すると、図3のカーソル7に示すように物理的ポインタ4の輝点の位置と同じ場所にカーソルを表示することができる。
この際、座標変換手段の動作は投射映像歪み補正の設定値(S10)を参照して設定される。このため、プロジェクタの投射映像歪み補正の補正量が増減してもそれに応じた座標変換がなされカーソルは常に物理ポインタ4の位置に一致する。
輝点の座標は、座標変換された撮影映像信号のピーク検出を行うことによって取得される。
【0012】
実施例では簡単のためカーソル表示に重きを置いて説明したが、座標変換後のx’、y’は入力映像の座標系と一致していることから、OSDの操作(S16)や、画面上に線を書くチョークボード機能(S17)についても問題なく使用できる。
この場合には、物理的ポインタに押下ボタンを設け、ボタン押下の信号をプロジェクタとの間に設けたコードによる接続やワイヤレスによる接続の手段を介して送信することによって行うことができる。
また、別に接続手段を設けずに、ボタン押下の信号をポインタ輝点の符号化された明滅の信号に乗せ、装備されている撮像素子を介してプロジェクタのCPUに送達することも可能である。
【0013】
また、PC30をプロジェクタ1に接続してPC画面の映像信号をプロジェクタ1に入力し、同時にプロジェクタ1から座標変換後のx’、y’をPC30に出力すれば、プロジェクタ1からの座標データによってパソコンカーソルの制御も可能となる。
また、上述と同様に物理的ポインタに押下ボタンを設け、ボタン押下の信号をPCに送信することによって、ポインタをPCのマウスの機能と同様の働きをさせることもでき、画面の展開やアプリケーションソフトの変更等を行うこともできる。」

上記記載から、引用例1記載のプロジェクタ1について次のことがいえる。
a.【0010】の「設定されたパラメータによって、PJ用画像処理LSI25は、PJ用画像処理LSI25に入力した方形の入力映像を画像処理し、変形した投影映像を生成してライトバルブ駆動回路24を介してライトバルブ21に投影映像を書き込み、ライトバルブはスクリーン20上に投影する。」の記載、及び【0013】の「また、PC30をプロジェクタ1に接続してPC画面の映像信号をプロジェクタ1に入力し、同時にプロジェクタ1から座標変換後のx’、y’をPC30に出力すれば、プロジェクタ1からの座標データによってパソコンカーソルの制御も可能となる。」の記載によれば、プロジェクタ1は、PC30から入力されるPC画面の映像をスクリーン20上に投影映像として表示するPJ用画像処理LSI25等の表示手段を備えることは明かである。
b.【0011】の「撮像素子3は、輝点を有するポインタ4を含めて歪ませて投射された投影映像5を撮影し撮影映像10をCPU26に送る。CPU26において、撮影映像10は、座標変換手段によって座標変換された撮影映像12に変換される(S13)。座標変換された撮影映像から輝点の座標x’、y’を取得する(S14)。」の記載によれば、プロジェクタ1は、スクリーンに対するポインタ4の輝点の位置を検出するための撮影映像を撮影する撮像素子13及び撮影映像から輝点の座標データを取得するCPU26を備えている。
c.【0011】の「座標変換後輝点位置12で示されるx’、y’をカーソルの座標としてカーソルを入力映像に重畳し(S15)、カーソル重畳映像13を形成し投写すると、図3のカーソル7に示すように物理的ポインタ4の輝点の位置と同じ場所にカーソルを表示することができる。」の記載、【0012】の「実施例では簡単のためカーソル表示に重きを置いて説明したが、座標変換後のx’、y’は入力映像の座標系と一致していることから、OSDの操作(S16)や、画面上に線を書くチョークボード機能(S17)についても問題なく使用できる。」の記載及び図4によれば、プロジェクタ1は、取得された座標データに基づいてカーソルの表示、OSDの操作、画面上に線を書くチョークボード機能を実行するCPU26を備えている。
d.【0013】の「また、PC30をプロジェクタ1に接続してPC画面の映像信号をプロジェクタ1に入力し、同時にプロジェクタ1から座標変換後のx’、y’をPC30に出力すれば、プロジェクタ1からの座標データによってパソコンカーソルの制御も可能となる。」の記載及び図4によれば、プロジェクタ1のCPU26は、取得された座標データをPC30にも出力するものである。
上記a.?d.によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「PC30から入力されるPC画面の映像をスクリーン20上に投影映像として表示するPJ用画像処理LSI25等の表示手段と、
スクリーンに対するポインタ4の輝点の位置を検出するための撮影映像を撮影する撮像素子13と、
前記撮影映像から輝点の座標データを取得し、取得された座標データに基づいてカーソルの表示、OSDの操作、画面上に線を書くチョークボード機能を実行するCPU26と、
を備え、
前記CPU26は、取得された座標データをPC30にも出力することを特徴とするプロジェクタ1。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-78686号公報(以下、「引用例2」という。)には、図とともに以下の記載がある。
a.「【0026】
本実施の形態の電子黒板システムは、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)102(図10)などのコンピュータ装置の画像データをプロジェクタ104(図10)により電子黒板101(図10)のスクリーン111に投影するものである。
【0027】
そして、電子黒板は、図1に示すように、電子ペン107(図10)で操作されたスクリーン111上の座標位置を座標検出センサ106(図10)と組み合わせて検出する座標検出手段11、座標検出手段11により検出されたスクリーン111上の座標情報をPCへ通知する通信手段12、および装置全体の動作制御を行う制御部13を備えている。そして、本実施の形態においては、座標検出手段11では、電子ペン107より同時に発信された赤外線と超音波とが座標検出センサ106に受信され、その時間差により電子ペン107から座標検出センサ106までの距離が算出されるようになっている。
【0028】
また、PCは、キーボードやマウス等の入力装置21、CRT等の出力装置22、電子黒板とのデータ通信を行って電子黒板からの座標情報を受信する通信手段23、画面105(図10)のスクリーン上への投影位置情報を設定する投影位置情報設定手段24、投影位置情報設定手段24で設定された投影位置情報を記憶する投影位置情報記憶部25、電子ペン107によるマウス操作や画面105上への自由線描画を行うデスクトップ操作・描画手段26、所定時点での描画状態をページ単位とし複数ページをドキュメント単位として画面105のベースイメージと自由線とのペアを記憶するドキュメント情報記憶部27、ドキュメント情報記憶部27のドキュメント情報を元にPCのウィンドウ上に描画状態を再現するドキュメント情報再生手段28、PC全体の動作を制御する制御部29を備えている。
【0029】
ここで、デスクトップ操作・描画手段26は、座標情報および投影位置情報を元に、スクリーン111上に投影された画面に対して電子ペン107を用いての操作を可能にし、画面105上に描画された自由線の軌跡を画面105のベースイメージに対応付けて記憶する。また、ドキュメント情報再生手段28は、PCのウィンドウ上にベースイメージを表示してその上に自由線を描画順に表示することにより、スクリーンへの描画状態を再現する。」

b.「【0035】
図6は、電子ペン107によるPCのマウス操作や画面上への自由線描画を行うためのデスクトップ操作・描画手段(以下、「描画ツール」という。)の具体例である。
【0036】
この第2の描画ツールにおいては、電子ペン107によりマウス操作をする際に選択するマウス操作ツール61、PCの画面105上へ自由線を描画する際に選択するペン描画ツール62、ペン描画ツール62で描画された自由線を部分的あるいは全てを消去するときに選択するイレーサツール63、選択された時点でのベースイメージと自由線のデータをページ情報として記憶するページ情報登録ボタン64、選択された時点で記憶されているページ情報をドキュメント情報として保存するドキュメント保存ボタン65、ダイアログボックス等を表示してペン描画ツールの幅やカラー、イレーサツール63のサイズなどを変更する設定ボタン66を備えている。
【0037】
このような電子黒板システムにおいて、スクリーン上に投影されたPCの画面で作業を行ったときの具体例を図7に示す。
【0038】
図7において、電子黒板のスクリーン71上には、PCの画面72が投影されている。また、スクリーン71の上部両端の2箇所には、スクリーン71上における電子ペンの書き込み位置である座標位置を検出する座標検出センサ73が配置されている。さらに、スクリーン71には、前述した第2の描画ツール74が表示されている。
【0039】
図7(a)は1ページ目のベースイメージであり、図7(b)は1ページ目のベースイメージ上に電子ペンを使用して自由線で丸とOKを記入した状態を示している。また、図7(c)は2ページ目のベースイメージであり、図7(d)は2ページ目のベースイメージ上に電子ペンを使用して自由線で矢印とNGを記入したとき状態を示している。
【0040】
以下、本実施の形態の電子黒板システムにおける処理の流れを説明する。
【0041】
本実施の形態における電子黒板システムを用い、第2の描画ツール74でプレゼンテーションを行ったときの手順を図8に示す。
【0042】
ここでは、先ず、プレゼンテーションに必要な最初の資料(ページ)を表示させるため、マウス操作ツール61を選択し(S81)、電子ペンでこの操作を行う。
【0043】
次に、必要ならば設定ボタン66を押してペン描画ツール62のサイズやカラーを設定し(S82)、ペン描画ツール62を選択して自由線で資料に注釈などを記入することによりプレゼンテーションを行う(S83)。なお、描画した自由線を消去したいときはイレーサツール63を選択する。ここで、イレーサツール63の例としては、電子ペンで操作した位置をあるサイズの円または矩形によりその位置の自由線を消去するということが考えられる。そのサイズは設定ボタン66で設定させることが可能である。
【0044】
最初のページのプレゼンテーションが終了した時点で、ページ情報登録ボタン64を押してベースイメージと自由線の情報を登録する(S84)。
【0045】
次にページが続くときは(S85)、マウス操作ツール61を再び選択して必要な資料(ページ)を表示させる作業に戻り(S81)、ペン描画ツール62およびイレーサツール63による注釈、ページ情報の登録、修正といった作業を繰り返す。
【0046】
そして、最後の資料(ページ)のプレゼンテーションが終了したならば(S85)、ドキュメント保存ボタン65を選択してこれまで登録しておいた全てのページ情報をドキュメント情報として保存する(S86)。これによりプレゼンテーションの進行過程が保存される。」

上記下線部の記載によれば、引用例2には、以下の技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が記載されている。
「電子黒板のスクリーン上にPCの画面が投影され、さらに、前記スクリーンには、座標情報および投影位置情報を元に、電子黒板のスクリーン上に投影されたPCの画面に対して電子ペン107を用いてマウス操作や画面上への自由線描画を行う操作を可能にするPCの描画ツールが表示され、前記描画ツールは、電子ペン107によりマウス操作をする際に選択するマウス操作ツール61、PCの画面上へ自由線を描画する際に選択するペン描画ツール62を備える技術。」

(イ)対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「PC30」、「PC30から入力されるPC画面の映像」、「スクリーン20」は、それぞれ、補正発明1の「画像ソース」、「画像ソースから入力される入力画像」、「表示面」に相当し、引用発明の「PC30から入力されるPC画面の映像をスクリーン20上に投影映像として表示するPJ用画像処理LSI25等の表示手段」は、補正発明1の「画像ソースから入力される入力画像を表示面に表示する表示手段」に相当する。
引用発明の「スクリーンに対するポインタ4の輝点の位置を検出するための撮影映像を撮影する撮像素子13」は、補正発明1の「前記表示面に対してなされた指示操作の指示位置を検出する位置検出手段」に相当する。
引用発明の「CPU26」は、「前記撮影映像から輝点の座標データを取得」するから、補正発明1の「前記位置検出手段により検出された指示位置を示す位置情報を生成する位置情報生成手段」に相当する。
引用発明の「CPU26」は、「取得された座標データに基づいてカーソルの表示、OSDの操作、画面上に線を書くチョークボード機能を実行する」から、補正発明1の「前記位置情報生成手段により生成された位置情報に基づいて処理を実行する処理手段」にも相当するといえる。
引用発明の「プロジェクタ1」は、補正発明1の「表示装置」に相当する。

したがって、両者は、以下の一致点と相違点とを有する。
<一致点>
「画像ソースから入力される入力画像を表示面に表示する表示手段と、
前記表示面に対してなされた指示操作の指示位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された指示位置を示す位置情報を生成する位置情報生成手段と、
前記位置情報生成手段により生成された位置情報に基づいて処理を実行する処理手段と、を備えることを特徴とする表示装置。」

<相違点1>
補正発明1は、「動作モードを切り替えるためのボタンを前記表示手段により前記表示面に表示させるボタン表示手段」と、「前記ボタン表示手段により表示された前記ボタンに対して前記指示操作がなされた場合に、前記動作モードを切り替えるモード切替手段」とを備えるのに対し、引用発明は、そのようなボタン表示手段及びモード切替手段を備えていない点。

<相違点2>
補正発明1は、「前記位置情報生成手段により生成された位置情報の出力を制御する出力制御手段」を備え、「前記出力制御手段は、前記モード切替手段による前記動作モードの切り替えに連動して、前記位置情報の出力先を、前記画像ソースと前記処理手段との間で切り替える」としているのに対し、引用発明は、取得された座標データをPC30にも出力するようにしているが、上記のような出力制御手段を備えていない点。

(ウ)判断
上記相違点2について検討する。
引用文献2記載の技術の電子黒板のスクリーンに表示された描画ツールの「電子ペン107によりマウス操作をする際に選択するマウス操作ツール61」及び「PCの画面上へ自由線を描画する際に選択するペン描画ツール62」は、マウス操作をする動作モードと画面上へ自由曲線を描画する動作モードとを切り替えるものといえるが、マウス操作をする動作及びPCの画面上へ自由線を描画する動作とも、検出された座標情報がPCのデスクトップ操作・描画手段(「描画ツール」)で処理されて動作するものであるから、引用文献2記載の技術は、上記相違点2に係る補正発明1の構成を示すものではなく、示唆するものでもない。

拒絶査定において引用された他の引用文献には、上記相違点2に係る補正発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。

また、上記相違点2に係る補正発明1の構成が周知技術であったともいえない。

ほかに、引用発明において上記相違点2に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。

以上のとおりであるから、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ほかに、補正発明1を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。

よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
本件補正の補正事項2は、補正前の請求項6における「所定のボタン」を「動作モードを切り替えるためのボタン」と限定し、「表示装置の制御方法」の各動作の主体が「表示装置」であることを限定するものであって、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後の前記請求項6に記載された発明(以下、「補正発明6」という。)は、補正発明1と同様に引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、補正事項2についても、補正事項1と同様に、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

(3)補正事項3
本件補正の補正事項3は、補正事項1と同様の補正内容であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後の前記請求項7に記載された発明(以下、「補正発明7」という。)は、補正発明1と同様に引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、補正事項3についても、補正事項1と同様に、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?7に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、補正発明1、補正発明6、補正発明7は、上記第2の2.のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用する請求項2?5に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定した発明であるから、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-11 
出願番号 特願2011-225602(P2011-225602)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 和田 志郎
山澤 宏
発明の名称 表示装置、表示装置の制御方法、及び、プログラム  
代理人 西田 圭介  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 仲井 智至  

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