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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
管理番号 1323492
異議申立番号 異議2015-700209  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-20 
確定日 2016-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5722418号発明「感光性樹脂組成物,ドライフィルム,硬化物およびプリント配線板」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5722418号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5722418号の請求項1,4ないし6に係る特許を取り消す。 特許第5722418号の請求項2及び3に係る特許についての申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5722418号の請求項1?6に係る特許についての出願は,平成27年4月3日付けでその特許権の設定の登録がされ,その後,特許異議申立人山田かおりより特許異議の申立てがなされ,平成28年5月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され(同年5月27日発送),その指定期間内である平成28年7月26日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされたものである。

第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
特許権者が求める訂正の請求の趣旨は,「特許第5722418号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。」というものである。

2 訂正の内容
特許権者が求める訂正の内容は,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,
前記(B)熱硬化性成分が,芳香環を有しない樹脂として,トリグリシジルイソシアヌレートを含有し,
前記(D)光重合開始剤が,(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」とあるのを,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が,不飽和カルボン酸と,スチレンを含む不飽和基含有化合物との共重合樹脂であり,
前記(B)熱硬化性成分が,芳香環を有しない樹脂として,トリグリシジルイソシアヌレートを含有し,
前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有し,
前記(D)光重合開始剤が,(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としてのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有し,
有機溶剤として,カルビトールアセテートおよび芳香族炭化水素のうちのいずれか少なくとも1種を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。」に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「キャリアフィルム上に,請求項1?3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。」とあるうち,請求項1と引用関係を有するものについて,訂正後の請求項4とする。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物,または,請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。」とあるうち,請求項1と引用関係を有するものについて,訂正後の請求項5とする。

(6) 訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0083】に記載された【表1】中,「実施例4,5,7」とあるのを,「参考例1,2,3」に訂正し,「実施例6」とあるのを「実施例4」,「参考例1」とあるのを「参考例4」,「実施例8」とあるのを「実施例5」に,それぞれ訂正する。

3 当合議体の判断
(1) 訂正事項1?3について
訂正事項1?3は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,新規事項の追加に該当せず,一群の請求項毎に請求された訂正であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2) 訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は,多数項(請求項1?3)を引用している請求項4及び5の引用請求項を1項(請求項1)に減少する訂正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。そして,訂正事項4及び5は,新規事項の追加に該当せず,一群の請求項毎に請求された訂正であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項6について
訂正事項6は,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であるから,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。そして,新規事項の追加に該当せず,一群の請求項毎に請求された訂正であり,事実上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

4 まとめ
本件訂正請求による訂正事項1?6は,特許法120条の5第2項1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項で準用する同法126条4項から6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。

第3 取消理由についての判断
1 本件訂正後発明について
上記訂正請求により訂正された訂正請求項1,4,5及び6に係る発明(以下,それぞれ,「本件訂正後発明1」,「本件訂正後発明4」,「本件訂正後発明5」及び「本件訂正後発明6」という。)は,本件訂正後の請求項1,4,5及び6に記載されたとおりの,次のものである。
「【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が,不飽和カルボン酸と,スチレンを含む不飽和基含有化合物との共重合樹脂であり,
前記(B)熱硬化性成分が,芳香環を有しない樹脂として,トリグリシジルイソシアヌレートを含有し,
前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有し,
前記(D)光重合開始剤が,(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としてのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有し,
有機溶剤として,カルビトールアセテートおよび芳香族炭化水素のうちのいずれか少なくとも1種を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。

【請求項4】
キャリアフィルム上に,請求項1記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。

【請求項5】
請求項1記載の感光性樹脂組成物,または,請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。

【請求項6】
請求項5記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。」

2 甲1及び甲1発明
(1) 甲1の記載
本件特許の出願前の刊行物である,特開2011-227343号公報(【公開日】平成23年11月10日,【発明の名称】ソルダーレジスト組成物及びプリント配線板,【出願番号】特願2010-98016号,【出願日】平成22年4月21日,【出願人氏名又は名称】互応化学工業株式会社)には,以下のとおり記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂,白色顔料,波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤,及び蛍光染料を含有するソルダーレジスト組成物。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は光反射性の高いソルダーレジスト層を形成し得るソルダーレジスト組成物及びこのソルダーレジスト組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,民生用及び産業用の各種プリント配線板におけるレジストパターン形成法としては,高配線密度化に対応するため,スクリーン印刷法に代わって,解像性及び寸法精度等に優れたドライフィルムや液状の現像可能なソルダーレジスト組成物を用いる方法が大きな位置を占めてきている。
【0003】
また,近年,携帯端末,パーソナルコンピュータ,テレビジョン等の液晶ディスプレイのバックライト,照明器具の光源などに用いられる発光ダイオード等の光学素子が,ソルダーレジスト層を備えるプリント配線板に直接実装されることが増えてきている。この場合,ソルダーレジスト層に酸化チタン等の白色顔料を含有させることで,ソルダーレジスト層の光反射性を向上し,機器からの発光光量を増大させることも,おこなわれている。このようなソルダーレジスト層は,例えば感光性樹脂及び酸化チタンを含有するソルダーレジスト組成物から形成される。このようなソルダーレジスト組成物がプリント配線板上に塗布された後,露光・現像されることで,光反射性を有するソルダーレジスト層が形成される(特許文献1参照)。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,酸化チタン等の白色顔料は,波長400nm以下の紫外域に大きな吸収を有する。このため,ソルダーレジスト組成物に酸化チタンが含有されていると,ソルダーレジスト組成物の紫外線露光時に酸化チタンが紫外線を吸収してしまい,ソルダーレジスト組成物の露光に要する照射光の積算光量が増大してしまう。一方,白色顔料による照射光の吸収を避けるために,波長400nm以上の光に反応する光重合開始剤をソルダーレジスト組成物に含有させると共に,ソルダーレジスト組成物の露光時に波長400nmの光を照射することも考えられる。しかし,白色顔料は波長400nm以上の光をよく反射するため,やはりソルダーレジスト組成物の露光に要する照射光の積算光量が増大してしまう。このため,ソルダーレジスト層を備えるプリント配線板等の生産性は悪いものであった。
【0006】
また,発光ダイオードを備える機器には,益々の発光光量の増大が求められており,このためソルダーレジスト層の光反射性の更なる向上が求められている。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり,白色顔料を含有しながら,露光に要する光量が抑制され,且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層が形成可能なソルダーレジスト組成物及びこのソルダーレジスト組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を提供することを目的とする。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は,感光性樹脂,白色顔料,波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤,及び蛍光染料を含有する。
【0009】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は,前記光重合開始剤として,アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有してもよい。
【0010】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は,前記光重合開始剤として,更に,α-ヒドロキシアセトフェノンを含有してもよい。」

オ 「【0016】
本発明に係るプリント配線板は,前記ソルダーレジスト組成物から形成されたソルダーレジスト層を備える。」

カ 「【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,白色顔料を含有しながら,露光に要する光量が抑制され,且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層が形成可能なソルダーレジスト組成物が得られる。
【0018】
また,本発明によれば,白色顔料を含有しながら,露光に要する光量が抑制され,且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層を備えるプリント配線板が得られる。」

キ 「【発明を実施するための形態】
【0019】
ソルダーレジスト組成物は,感光性樹脂,白色顔料,波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤,及び蛍光染料を含有する。まず,ソルダーレジスト組成物が含有する各成分について説明する。
【0020】
〔感光性樹脂〕
感光性樹脂は,1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する。この感光性樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが,好ましい範囲は3000?400000である。この範囲において,ソルダーレジスト組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。」

ク 「【0025】
(感光性樹脂(A1))
感光性樹脂(A1)は,1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と,カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(b)と,飽和或いは不飽和の酸無水物(c)とが反応することで生成する。」

ケ 「【0043】
(感光性樹脂(A2))
感光性樹脂(A2)は,カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(b)を含むエチレン性不飽和化合物(カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(b)と,必要に応じて使用されるエチレン性不飽和化合物(d2))が重合することで得られる化合物に,エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(d1)が反応することで得られる。」

コ 「【0049】
〔白色顔料〕
ソルダーレジスト組成物が白色顔料を含有することで,ソルダーレジスト層が高い光反射性を発揮する。白色顔料としては,例えば酸化チタン,硫酸バリウム,酸化マグネシウム,炭酸カルシウム等が挙げられる。酸化チタンは,ルチル型,アナターゼ型,ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよい。ラムスデライト型酸化チタンは,ラムスデライト型Li0.5TiO2に化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。ソルダーレジスト組成物は,白色顔料を一種のみ含有してもよく,二種以上を含有してもよい。
【0050】
ソルダーレジスト組成物中の白色顔料の割合は,ソルダーレジスト組成物中の成分全量(ソルダーレジスト組成物が有機溶剤を含有する場合にはこの有機溶剤を除く)に対して好ましくは5?80質量%の範囲,より好ましくは15?50質量%の範囲である。この割合が5質量%以上であればソルダーレジスト層が高い隠蔽性,白色性を発揮し,この割合が80質量%以下であればソルダーレジスト層の耐熱性,鉛筆硬度等のレジストに必要とされる物性が高い水準で維持されるようになる。」

サ 「【0051】
〔光重合開始剤〕
光重合開始剤は,波長400nmより長波長領域の光を吸収して活性化される化合物であることが好ましい。この場合,波長400nmより長波長領域の光は酸化チタンなどの白色顔料によって吸収されにくいため,ソルダーレジスト組成物の露光効率が向上する。更に光重合開始剤は,紫外線や熱などによる変色が生じにくい化合物であることが好ましい。
【0052】
光重合開始剤は,特にアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤であることが好ましい。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例としては,2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO),2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート(SPEEDCURE TPO-L),ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819),ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI 403)などが挙げられる。
【0053】
光重合開始剤として,アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤と共に,α-ヒドロキシアセトフェノンが使用されてもよい。α-ヒドロキシアセトフェノンはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤よりも酸素障害を受けにくく,且つ熱により変色しにくい。このため,α-ヒドロキシアセトフェノンが使用される場合には,ソルダーレジスト組成物の露光時における表層の硬化性が特に高くなる。α-ヒドロキシアセトフェノンの具体例としては,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE 184),2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(DAROCUR 1173),1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
【0054】
ソルダーレジスト組成物がアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤とα-ヒドロキシアセトフェノンとを含有する場合には,アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は0.1?20質量%の範囲,α-ヒドロキシアセトフェノンの含有量は0.1?20質量%の範囲であることが好ましい。この場合,ソルダーレジスト組成物の光硬化性が充分に維持されると共に,ソルダーレジスト層の硬度が更に向上し,且つ,ソルダーレジスト層の耐現像液性が向上する。またこのため,特にソルダーレジスト層の耐無電解Niめっき性が向上する。
【0055】
ソルダーレジスト組成物中における光重合開始剤の配合量は,ソルダーレジスト組成物の光硬化性と,このソルダーレジスト組成物から形成されるソルダーレジスト層の物性とのバランスを考慮して適宜設定されることが好ましく,特にソルダーレジスト組成物の成分全量(ソルダーレジスト組成物が有機溶剤を含有する場合はこの有機溶剤を除く)中で0.1?30質量%の範囲であることが望ましい。」

シ 「【0056】
[蛍光染料]
蛍光染料(蛍光増白剤)は,波長200?400nmの光を吸収し,波長400?500nmの光を放出する。」

ス 「【0064】
〔有機溶剤〕
ソルダーレジスト組成物は必要に応じて有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤によって樹脂成分が溶解され,或いはソルダーレジスト組成物が希釈されることで,ソルダーレジスト組成物が液状になると共にその粘度が調整され,これによりソルダーレジスト組成物の塗布性が向上する。有機溶剤は,ソルダーレジスト組成物の乾燥時の造膜性の向上のためにも使用される。
【0065】
有機溶剤の具体例としては,エタノール,プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,ヘキサノール,エチレングリコール等の直鎖,分岐,2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製),ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ,ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール,ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル,酢酸ブチル,セロソルブアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類などが挙げられる。これらの有機溶剤は一種単独で使用され,或いは複数種が併用される。
【0066】
ソルダーレジスト組成物中への有機溶剤の配合量は適宜設定される。この配合量は,ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜の仮乾燥時に有機溶剤が速やかに揮散するように,すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように,調整されることが好ましい。この有機溶剤の配合量は,特にソルダーレジスト組成物の成分全量中で5?99.5重量%の範囲であることが好ましく,この場合,ソルダーレジスト組成物の良好な塗布性が維持される。尚,有機溶剤の好適な配合量は塗布方法により異なるので,塗布方法に応じて配合量が適宜調節されることが好ましい。」

セ 「【0072】
〔プリント配線板に対するソルダーレジスト層の形成〕
ソルダーレジスト組成物が塗布成膜されることで,ソルダーレジスト層が形成される。プリント配線板上にソルダーレジスト層が形成されると,ソルダーレジスト層を備えるプリント配線板が得られる。」

ソ 「【0081】
ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合,ソルダーレジスト層に,必要に応じて例えば120?180℃で30?90分程度の条件で加熱処理が施されてもよい。この場合,エポキシ化合物の熱硬化反応が進行し,ソルダーレジスト層の膜強度,硬度,耐薬品性等が向上する。」

タ 「【実施例】
【0083】
〔合成例1〕
還流冷却器,温度計,窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに,メタクリル酸42質量部,メチルメタクリレート43質量部,スチレン35質量部,ベンジルアクリレート35質量部,カルビトールアセテート100質量部,ラウリルメルカプタン0.5質量部,アゾビスイソブチロニトリル4質量部を加えた。この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させ,濃度50質量%の共重合体溶液を得た。
【0084】
この共重合体溶液に,ハイドロキノン0.05質量部,グリシジルメタクリレート23質量部,ジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え,80℃で24時間付加反応を行なった後,カルビトールアセテート35質量部を加えることで,濃度50質量%の感光性樹脂の溶液(感光性樹脂溶液A)を得た。」

チ 「【0087】
〔実施例1乃至10及び比較例1,2〕
上記各合成例で生成された感光性樹脂の溶液に,表1に示す各配合組成の配合成分を加え,これを3本ロールで混練し,ソルダーレジスト組成物を得た。
【0088】
実施例1?10及び比較例1では樹脂成分全量に対する芳香環量は23.2質量%であり,比較例2では樹脂成分全量に対する芳香環量は0質量%である。
【0089】
表1中に示される原料成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物:トリグリシジルイソシアヌレート(S-トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造を有するβ体)。
・DPHA:ジペンタエリストールヘキサアクリレート。
・酸化チタン:石原産業株式会社製,品番CR-90。
・ルシリンTPO:BASF社製,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド。
・IRGACURE184:チバスペシャルティ・ケミカルズ社製,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
・メラミン樹脂:日産化学工業株式会社製,微粉メラミン。
・シリコーン:信越シリコーン株式会社製,品番KS-66。
・TINOPAL OB:チバ・ジャパン株式会社製,2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール。
・Hostalux KCB:クラリアントジャパン株式会社製,ナフタレンベンゾキサゾイル誘導体。」
(当合議体注:「2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール」は,「2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール)」の誤記である。)

ツ 「【0090】
〔評価試験〕
各ソルダーレジスト組成物を,厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ基材銅張積層板及びこれを予めエッチングしてパターンを形成しておいたプリント配線基板の全面にスクリーン印刷により塗布し,基板表面に湿潤塗膜を形成した。
【0091】
この湿潤塗膜を80℃で20分加熱して予備乾燥し,膜厚20μmの乾燥塗膜を得た。
【0092】
この乾燥塗膜の表面にネガマスクを直接当てがうとともに照射エネルギー密度350mJ/cm^(2)の条件で紫外線を照射し,基板表面上の乾燥塗膜を選択的に露光した。
【0093】
露光後の乾燥塗膜に炭酸ナトリウム水溶液で現像処理を施して,基板上に乾燥塗膜の露光硬化部分を残存させた
この乾燥塗膜の露光硬化部分を150℃で60分間加熱して熱硬化させることでソルダーレジスト層を形成し,ソルダーレジスト層を備えるテストピースを得た。」

テ 「【0116】
【表1】



(2) 甲1発明
甲1には,【発明を実施するための形態】(段落【0019】)の実施例1として,以下の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。なお,甲1発明の認定に活用した甲1の記載箇所を段落番号等で併記する。)。
「【0019】 感光性樹脂,白色顔料,波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤,及び蛍光染料を含有するソルダーレジスト組成物であって,
前記ソルダーレジスト組成物は,
【表1】【0087】感光性樹脂の溶液80質量部に,エポキシ化合物7質量部,DPHA(ジペンタエリストールヘキサアクリレート)25質量部,白色顔料70質量部,光重合開始剤13質量部,メラミン樹脂2質量部,シリコーン2質量部及び蛍光染料0.2質量部を配合成分として加え,これを3本ロールで混練して得たものであり,
【表1】 前記感光性樹脂の溶液は,感光性樹脂溶液Aであり,
【表1】【0089】 前記エポキシ化合物は,トリグリシジルイソシアヌレートであり,
【表1】【0089】 前記白色顔料は,酸化チタン(石原産業株式会社製,品番CR-90)であり,
【表1】【0089】 前記光重合開始剤は,ルシリンTPO(BASF社製,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)10質量部及びIRGACURE184(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)3質量部であり,
【表1】【0089】 前記メラミン樹脂は,微粉メラミン(日産化学工業株式会社製)であり,
【表1】【0089】 前記シリコーンは,信越シリコーン株式会社製の品番KS-66であり,
【表1】【0089】 前記蛍光染料は,TINOPAL OB(チバ・ジャパン株式会社製,2,5-チオフェンジイルビス(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾキサゾール))であり,
前記感光性樹脂溶液Aは,
【0083】(A)還流冷却器,温度計,窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに,メタクリル酸42質量部,メチルメタクリレート43質量部,スチレン35質量部,ベンジルアクリレート35質量部,カルビトールアセテート100質量部,ラウリルメルカプタン0.5質量部,アゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え,(b)この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させ,濃度50質量%の共重合体溶液を得,【0084】(c)この共重合体溶液に,ハイドロキノン0.05質量部,グリシジルメタクリレート23質量部,ジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え,80℃で24時間付加反応を行なった後,カルビトールアセテート35質量部を加えることで得たものである,
ソルダーレジスト組成物。」

3 本件訂正後発明1について
(1) 対比
本件訂正後発明1と甲1発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア カルボキシル基含有樹脂
甲1発明の「感光性樹脂溶液A」は,「(A)還流冷却器,温度計,窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに,メタクリル酸42質量部,メチルメタクリレート43質量部,スチレン35質量部,ベンジルアクリレート35質量部,カルビトールアセテート100質量部,ラウリルメルカプタン0.5質量部,アゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え,(b)この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させ,濃度50質量%の共重合体溶液を得」,「(c)この共重合体溶液に,ハイドロキノン0.05質量部,グリシジルメタクリレート23質量部,ジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え,80℃で24時間付加反応を行なった後,カルビトールアセテート35質量部を加えることで得たもの」である。
ここで,甲1発明の「メタクリル酸」及び「メチルメタクリレート」は,技術的にみて,「不飽和カルボン酸」である。また,甲1発明の「スチレン」及び「ベンジルアクリレート」は,技術的にみて,「不飽和基含有化合物」である。
したがって,甲1発明の「感光性樹脂溶液A」は,本件訂正後発明1の「(A)カルボキシル基含有樹脂」に相当し,また,「前記(A)カルボキシル基含有樹脂が,不飽和カルボン酸と,スチレンを含む不飽和基含有化合物との共重合樹脂であり」の要件を満たす。

イ 熱硬化性成分
甲1発明の「ソルダーレジスト組成物」は,「感光性樹脂の溶液80質量部に,エポキシ化合物7質量部,DPHA(ジペンタエリストールヘキサアクリレート)25質量部,白色顔料70質量部,光重合開始剤13質量部,メラミン樹脂2質量部,シリコーン2質量部及び蛍光染料0.2質量部を配合成分として加え,これを3本ロールで混練して得たもの」である。また,甲1発明の「エポキシ化合物」は,「トリグリシジルイソシアヌレート」であるところ,「トリグリシジルイソシアヌレート」は,技術的にみて,「熱硬化性成分」である(段落【0081】及び【0093】からも理解できる事項である。)。また,「トリグリシジルイソシアヌレート」は,技術的にみて,「芳香環を有しない樹脂」の要件を満たす。
したがって,甲1発明の「エポキシ化合物」,すなわち,「トリグリシジルイソシアヌレート」は,本件訂正後発明1の「(B)熱硬化性成分」に相当し,また,「前記(B)熱硬化性成分が,芳香環を有しない樹脂として,トリグリシジルイソシアヌレートを含有し」の要件を満たす。

ウ 無機充填物
甲1発明の「酸化チタン」は,ソルダーレジスト組成物中に,「白色顔料」として含まれるものである。したがって,甲1発明の「白色顔料」は,技術的にみて,本件訂正後発明1の「(C)無機充填物」に相当する(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】?【0046】の記載と,甲1の段落【0049】及び【0050】の記載の対比からも,理解できる事項である。)。また,甲1発明の「白色顔料」は,本件訂正後発明1の「前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有し」の要件を満たす。

エ 光重合開始剤
甲1発明の「ソルダーレジスト組成物」は,「光重合開始剤」を含有する。ここで,甲1発明の「光重合開始剤」は,本件訂正後発明1の「(D)光重合開始剤」に相当する。また,甲1発明の「光重合開始剤」は,「ルシリンTPO(BASF社製,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)10質量部及びIRGACURE184(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)3質量部」であるところ,「IRGACURE184」は,技術的にみて,「(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤」である。
そうしてみると,甲1発明の「光重合開始剤」と本件訂正後発明1の「(D)光重合開始剤」は,「前記(D)光重合開始剤が」,「(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有する」点で共通する。

オ 感光性樹脂組成物
以上勘案すると,甲1発明の「ソルダーレジスト組成物」は,本件訂正後発明1の「感光性樹脂組成物」に相当し,また,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物」の要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件訂正後発明1と甲1発明は,以下の構成において一致する。
「 (A)カルボキシル基含有樹脂,(B)熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が,不飽和カルボン酸と,スチレンを含む不飽和基含有化合物との共重合樹脂であり,
前記(B)熱硬化性成分が,芳香環を有しない樹脂として,トリグリシジルイソシアヌレートを含有し,
前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有し,
前記(D)光重合開始剤が,(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」

イ 相違点
本件訂正後発明1と甲1発明は,以下の点で相違する,又は,一応,相違する。
(相違点1)
本件訂正後発明1の「(D)光重合開始剤」は,「(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としてのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有する」のに対して,甲1発明の「光重合開始剤」は,「ルシリンTPO(BASF社製,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)10質量部及びIRGACURE184(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)3質量部」である点。

(相違点2)
本件訂正後発明1の「感光性樹脂組成物」は,「有機溶剤として,カルビトールアセテートおよび芳香族炭化水素のうちのいずれか少なくとも1種を含む」のに対して,甲1発明は,一応,これが明らかではない点。

(3) 判断
ア 相違点1について
甲1発明の「ルシリンTPO」は,技術的にみて,「アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤」である。そして,甲1の段落【0052】には,「アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤」として,「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819)」が挙げられている。さらに,「IRGACURE 819」が,広域な吸収特性を具備すること,顔料を高濃度で含んだコーティングに適すること,単体でも高い硬化性を示すこと,適当量の「IRGACURE 184」との併用によりその特性を最大限引き出せることは,本件特許出願前の製品カタログにも掲載されている事項である(甲17の13頁)から,本件特許出願前における技術常識である。加えて,甲1には,α-ヒドロキシアセトフェノンの具体例として,「IRGACURE 184」とともに「DAROCUR 1173」が挙げられているところ,「DAROCUR 1173」が液状であるためハンドリング性・相溶性に優れ,「IRGACURE 819」等の他の光重合開始剤とブレンドするのに適することも,本件特許出願前の製品カタログにも掲載されている事項である(甲17の4頁)から,本件特許出願前における技術常識である。
そうしてみると,甲1発明において,「ルシリンTPO」に加えて,あるいは,替えて,「IRGACURE 819」を採用すること,その際,「IRGACURE 184」に加えて,あるいは,替えて,「DAROCUR 1173」を採用し,「IRGACURE 819」とブレンドすることは,技術常識を踏まえた当業者が,容易に想到した事項である。
いずれにせよ,甲1発明において相違点1を克服することは,当業者が容易に想到できた事項である。

イ 相違点2について
甲1発明の「感光性樹脂溶液A」は,「(c)この共重合体溶液に,ハイドロキノン0.05質量部,グリシジルメタクリレート23質量部,ジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え,80℃で24時間付加反応を行なった後,カルビトールアセテート35質量部を加えることで得たもの」である。
すなわち,甲1発明の「ソルダーレジスト組成物」は,組成物中にカルビトールアセテートを含むから,相違点2は,「感光性樹脂組成物」としての相違をもたらさない(相違点2は,事実上,相違点ではない。)。
あるいは,甲1発明の上記「カルビトールアセテート」について,甲1の段落【0084】には,「カルビトールアセテート35質量部を加えることで,濃度50質量%の感光性樹脂の溶液(感光性樹脂溶液A)を得た」と記載されている。この記載からみて,甲1発明の「カルビトールアセテート」は,「感光性樹脂溶液A」の濃度調整用の「有機溶剤」と考えるのが妥当である。したがって,訂正請求項1に「有機溶剤として,カルビトールアセテート…を含む」と記載されていることを考慮しても,相違点2は,事実上,相違点ではない。
さらに検討するに,甲1の段落【0064】及び【0066】には,それぞれ,「ソルダーレジスト組成物は必要に応じて有機溶剤を含有してもよい。」及び「有機溶剤の好適な配合量は塗布方法により異なるので,塗布方法に応じて配合量が適宜調節されることが好ましい。」と記載されているところ,「カルビトールアセテート」は有機溶剤として周知であり,また,甲1の段落【0065】には,「有機溶剤の具体例としては,…トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素類…などが挙げられる。」とも記載されている。そうしてみると,甲1発明において,「有機溶剤として,カルビトールアセテートおよび芳香族炭化水素のうちのいずれか少なくとも1種を含む」ようにすることは,塗布方法に応じたソルダーレジスト組成物の調節の範囲内の事項にすぎない。
(なお,有機溶剤としてカルビトールアセテートが周知であることについて,必要ならば,甲2(特開2012-78414号公報)の段落【0058】及び【0113】を参照されたい。)

(4) 本件訂正後発明1の効果について
本件特許明細書の段落【0008】及び【0014】には,それぞれ,「本発明者らは鋭意検討した結果,光重合開始剤として,ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とともに,ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を併用することで,ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤がビスアシルフォスフィンオキサイドの溶解性を向上させて,結果として良好な光硬化性を得ることが可能となることを見出して,本発明を完成するに至った。」及び「本発明によれば,上記構成としたことにより,光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して,光硬化性に優れた感光性樹脂組成物,ドライフィルム,硬化物およびプリント配線板を実現することが可能となった。」と記載されている。
本件訂正後発明1の効果は,前記(3)のように容易推考した当業者が期待する範囲内の効果であり,少なくとも,当業者が予測できないような顕著なものではない。

(5) 小括
したがって,本件訂正後発明1は,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4 本件訂正後発明4について
ソルダーレジスト組成物の使用態様として,例示するまでもなく周知である。
本件訂正後発明4は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

5 本件訂正後発明5について
光照射により,硬化させることは,甲1の段落【0092】に開示されている。
本件訂正後発明5(請求項4を引用しないもの)は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。また,本件訂正後発明5(請求項4を引用するもの)は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

6 本件訂正後発明6について
プリント配線板への適用については,甲1の段落【0072】に開示されている。
本件訂正後発明6(請求項4を引用しないもの)は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。また,本件訂正後発明6(請求項4を引用するもの)は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

7 まとめ
以上のとおり,本件訂正後発明1,本件訂正後発明5(請求項4を引用しないもの)及び本件訂正後発明6(請求項4を引用しないもの)は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件訂正後発明1,5及び6についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。また,本件訂正後発明4,本件訂正後発明5(請求項4を引用するもの)及び本件訂正後発明6(請求項4を引用するもの)は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件訂正後発明4?6についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって,本件訂正後発明1,4?6についての特許は,特許法113条2項に該当し,取り消されるべきものである。
また,請求項2及び請求項3に係る特許は,本件訂正により削除された。したがって,本件特許の請求項2及び3に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しないこととなったから,申立は却下されるべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関し、詳しくは、光重合開始剤の改良に係るアルカリ現像型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板は、積層板に貼り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板においては、必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体が露出して酸化や湿気により腐食されることを防止するための保護膜として、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、ソルダーレジストが形成される。ソルダーレジストは回路基板の永久保護膜としても機能するので、ソルダーレジストには、密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの種々の性能を備えることが要求される。
【0003】
基板上に所望のパターンのソルダーレジストを形成する方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物からなる感光性ソルダーレジストを、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することにより、露光部と非露光部とに生じたアルカリ現像液への溶解性の差を利用してパターンを形成することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、白色顔料を含有しながら、露光に要する光量が抑制され、且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層が形成可能なソルダーレジスト組成物を提供することを目的として、感光性樹脂、白色顔料、波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤、及び蛍光染料を配合したソルダーレジスト組成物が開示されている。特許文献1の実施例では、具体的に、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドと1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンとを併用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-227343号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤をソルダーレジストに用いることは知られている。中でも、ビスアシルフォスフィンオキサイドは、特許文献1で使用されている2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイドよりも光硬化性に優れ、ソルダーレジスト用として好適である。しかし、ビスアシルフォスフィンオキサイドは、溶剤に対する溶解性が悪いことから、結果として露光時に充分な光硬化性が得られるものではなかった。
【0007】
本発明の目的は、光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して、光硬化性に優れた感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、光重合開始剤として、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とともに、ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を併用することで、ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤がビスアシルフォスフィンオキサイドの溶解性を向上させて、結果として良好な光硬化性を得ることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤が、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の組成物においては、前記(B)熱硬化性成分が、芳香環を有しない樹脂を少なくとも一種含有することが好ましい。また、本発明の組成物においては、前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有することが好ましい。さらに、本発明の組成物において、前記(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを好適に用いることができる。
【0011】
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の硬化物は、上記本発明の感光性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、本発明のプリント配線板は、上記本発明の硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成としたことにより、光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して、光硬化性に優れた感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を実現することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0016】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂を含有する。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、本発明の組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いることもできる。(A)カルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有しても有さなくてもよい。(A)カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、熱や光による劣化を抑制する効果が得られるため、好ましい。
【0017】
本発明の組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。このカルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、不飽和カルボン酸および不飽和基含有化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0019】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0020】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物および酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0021】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート若しくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0022】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0023】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0024】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、多官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0025】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、2官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0026】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、多官能オキセタン樹脂、ジカルボン酸および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0027】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、エポキシ化合物、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物、不飽和基含有モノカルボン酸および多塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0030】
(13)上記(1)?(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0031】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0032】
上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20?200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40?180mgKOH/gの範囲である。20?200mgKOH/gの範囲であると、塗膜の密着性が得られ、アルカリ現像が容易となり、現像液による露光部の溶解が抑えられ、必要以上にラインが痩せたりせずに、正常なレジストパターンの描画が容易となるため好ましい。
【0033】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000?150,000の範囲が好ましい。この範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、解像度が向上し、現像性が良好であり、貯蔵安定性が良くなる。より好ましくは、5,000?100,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0034】
[(B)熱硬化性成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、(B)熱硬化性成分を含有させる。(B)熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂組成物において熱硬化性成分として使用されるものであれば、公知のものをいずれも使用可能である。(B)熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0035】
これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)の少なくともいずれか1種を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0036】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0037】
上記多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学(株)製のjER828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、日産化学工業(株)製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、柔軟強靭エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、2官能のエポキシ樹脂であることが可撓性の観点から好ましい。特に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が難燃性の観点から好ましい。
【0038】
上記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0039】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)や、東都化成(株)製のYSLV-120TEなどが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0040】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3?2.5当量、より好ましくは0.5?2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量を、0.3当量以上とすることで、硬化被膜におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。一方、上記配合量を2.5当量以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化被膜の強度等を良好に確保することができる。
【0041】
本発明の組成物において、上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、さらに、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール誘導体、ヒドラジン化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくは、密着性付与剤としても機能する化合物を上記熱硬化触媒と併用する。
【0042】
これら熱硬化触媒の配合量は、固形分換算で、熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1?20質量部、より好ましくは0.5?15.0質量部である。
【0043】
本発明においては、上記した中でも、(B)熱硬化性成分として、芳香環を有しない樹脂を少なくとも一種含有することが好ましい。熱硬化性成分として使用できる芳香環を有しない樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が挙げられる。中でも、S-トリアジン骨格面に対して同一方向にエポキシ基が結合した構造をもつβ体のトリグリシジルイソシアヌレートを50重量%以上含有するトリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学工業(株)製TEPIC-H,TEPIC-S)が特に好ましい。β体のトリグリシジルイソシアヌレートを50重量%以上含有するトリグリシジルイソシアヌレートは、光硬化によるソルダーレジスト膜のパターニングの段階まで透明であり、その後、熱硬化する際に白濁する傾向がある。よって、本発明の組成物を白色とする場合には、得られるソルダーレジスト膜の白色度をさらに高め、高反射率のものとすることができるため、好ましい。
【0044】
[(C)無機充填物]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(C)無機充填物を含有する。(C)無機充填物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。これらの無機充填物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明においては、(C)無機充填物として、シリカ、硫酸バリウムおよび酸化チタンのうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。シリカとしては、溶融シリカが好ましい。また、硫酸バリウムおよび酸化チタンを含有することで、組成物の硬化物を白色とすることができ、高い反射率を得ることが可能となる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよい。ラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li_(0.5)TiO_(2)に化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。ルチル型酸化チタンは、光照射を起因とする変色を起こしにくいので好ましい。
【0046】
このような無機充填物の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分(感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を除く成分)に対して、好ましくは5?80質量%の範囲、より好ましくは10?70質量%の範囲である。
【0047】
[(D)光重合開始剤]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。(D)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であればいずれでもよいが、本発明においては、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および、(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することが必要である。
【0048】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,IRGACURE819)が、入手しやすく実用的である。
【0049】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1?50質量部であることが好ましい。(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤をこの範囲で配合することで、銅上での光硬化性が十分となり、塗膜の硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上する。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1?40質量部である。
【0050】
(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE184)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE2959)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE127)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(BASFジャパン(株)製,DAROCUR1173)等が挙げられる。
【0051】
(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1?50質量部であることが好ましい。(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤をこの範囲で配合することで、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の溶解性を向上しつつ、銅上での十分な光硬化性を得ることができ、塗膜の硬化性が良好となって、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上するとの効果が良好に得られる。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1?40質量部である。
【0052】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤との配合比は、質量比で、1:0.5?1:5が好ましく、1:1?1:3がより好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、(D)光重合開始剤として、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤以外の他の公知慣用の含有してもよい。例えば、モノアシルフォスフィンオキサイドとして、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等を用いることができる。中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,DAROCUR TPO)が入手しやすく実用的である。
【0054】
その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η^(5)-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。以上の光重合開始剤は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
他の光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、例えば、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1?40質量部である。
【0056】
(希釈剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、希釈剤を含有していてもよい。本発明に用いられる希釈剤は、組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げたり、密着性などを向上するために用いられ、光硬化性モノマーなどの反応性希釈剤や公知慣用の有機溶剤が使用できる。
【0057】
光硬化性モノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0058】
このような光硬化性モノマーの配合率は、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5?100質量部、より好ましくは5?70質量部の割合である。上記配合率の範囲では、光硬化性が向上して、パターン形成が容易となり、硬化膜の強度も向上できる。
【0059】
有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
(その他の任意成分)
本発明の組成物には、電子材料の分野において公知慣用の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、熱硬化触媒、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、上記以外の充填剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、着色剤、光開始助剤、増感剤等が挙げられる。
【0061】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明の組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムの形成は、本発明の組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50?130℃の温度で1?30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10?150μm、好ましくは20?60μmの範囲で適宜選択される。
【0062】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10?150μmの範囲で適宜選択される。
【0063】
キャリアフィルム上に本発明の組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0064】
また、本発明の組成物を、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60?100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂層を形成できる。
【0065】
上記基材としては、あらかじめ回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0066】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0067】
本発明の組成物は、例えば、約140?180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0068】
また、本発明の組成物を塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3?3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。
【0069】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350?450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350?410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザーおよび固体レーザーのいずれでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20?800mJ/cm^(2)、好ましくは20?600mJ/cm^(2)の範囲内とすることができる。
【0070】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0071】
本発明の組成物は、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジストや層間絶縁層等の硬化皮膜の形成に適している。また、本発明の組成物は、白色とすることで、照明器具や携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト等において、その光源として使用される発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネセンス(EL)から発せられる光を反射する反射板に、好適に使用される。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散させ、混練して、それぞれ組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
【0073】
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂の調製)>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42質量部、メチルメタクリレート43質量部、スチレン35質量部、ベンジルアクリレート35質量部、カルビトールアセテート100質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部およびアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させて、共重合体溶液(固形分濃度50質量%)を得た。これに、ハイドロキノン0.05質量部、グリシジルメタクリレート23質量部およびジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、80℃で24時間付加反応を行った後、カルビトールアセテート35質量部を加えて、芳香環を有する共重合樹脂溶液(固形分濃度50質量%)を得た。
【0074】
<感度>
各実施例および比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分間乾燥させた。この基板上の塗膜にコダック(株)製のステップタブレット(21段)を当て、600mJ/cm^(2)の露光量で露光し、1%Na_(2)CO_(3)水溶液によりスプレー圧2kg/cm^(2)で1分間現像した後における残存段数を調べた。
【0075】
<タック(指触乾燥性)>
各実施例および比較例の組成物を、それぞれパターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、室温まで放冷した。この基板にPETフィルムを押し当て、その後、PETフィルムを剥がしたときのフィルムの貼り付き状態を評価した。フィルムを剥がすときに、全く抵抗がなく、塗膜に跡が残らない場合を○、フィルムを剥がす時に、僅かに抵抗があり、塗膜に跡が少しついている場合を△、フィルムを剥がす時に、抵抗があり、塗膜にはっきり跡がついている場合を×とした。
【0076】
<反射率>
各実施例および比較例の組成物を、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR-4銅張り積層板に対し、スクリーン印刷法にて、膜厚40μmとなるように、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)でパターンを印刷した。これらを80℃で30分間に渡って熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにプリント配線板用露光機HMW-680GW(株式会社オーク製作所製)を用いて、30mm角のネガパターンを残すように、900mJ/cm^(2)の積算光量で紫外線露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、これらをプリント配線板用現像機にて60秒間現像し、続いて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行い、特性試験用の試験片を作製した。
【0077】
得られた試験片を、色彩色差計CR-400(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定して、Y値の値が85以上の場合を○、80以上85未満の場合を△、80未満の場合を×とした。なお、色調が赤または緑のものについては、反射率が要求されないため評価しなかった。
【0078】
<鉛筆硬度>
各試験片に対し、芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、約45°の角度で押し付けて、塗膜の剥がれが生じない鉛筆の硬さを記録した。
【0079】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した試験片を、あらかじめ260℃に設定したはんだ槽に30秒ずつ3回浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の剥がれについて評価した。剥がれがなかった場合を○、若干の剥がれが生じた場合を△、著しい剥がれが生じた場合を×とした。
【0080】
<耐無電解金めっき耐性>
市販品の無電解ニッケルめっき浴および無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。剥がれがない場合を○、剥がれが生じた場合を×とした。
【0081】
<色調>
得られた試験片の色調を、目視により評価した。
【0082】
上記の各評価結果を、下記の表中に示す。
【0083】
【表1】

※1)合成例1で得られた芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂
※2)DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)で44質量%に希釈(ダイセル化学工業(株)製)(芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂)
※3)MMA(メチルメタクリレート)/GMA(グリシジルメタクリレート)のグリシジルエーテル部位にアクリル酸をfull付加させた後発生する40%の水酸基にTHPA(テトラヒドロフタル酸無水物)を付加させた樹脂、CA(カルビトールアセテート)で60質量%に希釈(大阪有機化学工業(株)製)(芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂)
※4)日産化学工業(株)製(芳香環を有しない樹脂)
※5)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製(芳香環を有する樹脂)
※6)石原産業(株)製
※7)堺化学工業(株)製
※8)日本アエロジル(株)製 エロジール#R974
※9)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※10)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、IRGACURE184,BASFジャパン(株)製
※11)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、DAROCUR1173,BASFジャパン(株)製
※12)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ルシリンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※13)Pigment Blue 15:3
※14)Pigment Yellow 147
※15)Pigment Red 264
※16)イミダゾール系化合物、四国化成工業(株)製
※17)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
※18)芳香族炭化水素(ソルベッソ150)
※19)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
【0084】
【表2】

※20)塗膜が形成できず評価できなかった。
【0085】
上記表中の結果から、各実施例の組成物は、光硬化性に優れるとともに、ソルダーレジストとしての諸性能を満足するものであることが確かめられた。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、不飽和カルボン酸と、スチレンを含む不飽和基含有化合物との共重合樹脂であり、
前記(B)熱硬化性成分が、芳香環を有しない樹脂として、トリグリシジルイソシアヌレートを含有し、
前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有し、
前記(D)光重合開始剤が、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としてのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有し、
有機溶剤として、カルビトールアセテートおよび芳香族炭化水素のうちのいずれか少なくとも1種を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
キャリアフィルム上に、請求項1記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1記載の感光性樹脂組成物、または、請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-09-23 
出願番号 特願2013-249061(P2013-249061)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (G03F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 倉本 勝利  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 道祖土 新吾
樋口 信宏
登録日 2015-04-03 
登録番号 特許第5722418号(P5722418)
権利者 太陽インキ製造株式会社
発明の名称 感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板  
代理人 本多 一郎  
代理人 本多 一郎  
代理人 杉本 由美子  
代理人 杉本 由美子  
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