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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F04D
審判 一部申し立て 1項2号公然実施  F04D
審判 一部申し立て 1項1号公知  F04D
審判 一部申し立て 2項進歩性  F04D
管理番号 1323498
異議申立番号 異議2015-700318  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-17 
確定日 2016-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5735963号発明「真空ポンプ」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5735963号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,〔2-8〕について訂正することを認める。 特許第5735963号の請求項1に係る特許についての申立てを却下する。 特許第5735963号の請求項2に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5735963号の請求項1?8に係る特許についての出願は,平成23年5月20日の特許出願であって,平成27年 4月24日にその特許権の設定登録がされた。これらの特許のうち請求項1,2に係る特許について,特許異議申立人 プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハーにより特許異議の申立てがあり,特許権者に対する平成28年2月17日付けの当審の審尋に対して,特許権者から同年3月17日付けで回答書が提出され,同年3月25日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年5月30日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正の請求があったものである。その後,同年6月15日付けで訂正拒絶理由が通知され,特許権者により同年8月4日付けで意見書が提出され,特許異議申立人により同年9月28日付けで意見書が提出されたところである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成28年5月30日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1?15のとおりである(下線部は,訂正個所を示し,当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,
前記円筒ロ-タは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され,
前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,
前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3,4,8も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記樹脂層が設けられた後,該樹脂層はその厚みの範囲内で除去加工されていることを特徴とする請求項2記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「前記樹脂層をその厚みの範囲内で除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項2記載の真空ポンプ。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4,8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「繊繊強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,
前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープを含む多層構造で形成され,
前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,
前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6,8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「前記ヘリカル層が設けられた後,該ヘリカル層の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂が除去加工されていることを特徴とする請求項5記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「前記へリカル層の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂を除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空ポンプ。」
に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,
前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,
前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,
少なくとも前記円筒ロータの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプ。」
に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,前記接合部分は,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1,2, 3,4,5,6又は7記載の真空ポンプ。」とあるのを,
「前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,
前記接合部分は,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプ。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項1記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,少なくとも前記円筒ロータの接合部分では,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプを提供する。この構成によれば,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成されている。すなわち,繊維は,円筒ロータの円周方向に対して45度未満の角度で巻かれてリング状の層を形成している。さらに,円筒ロータの接合部分においては,フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,最外層の外周に保護対策がなされている。」を削除する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項2記載の発明は,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記円筒口-タの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項2記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項3記載の発明は,前記樹脂層が設けられた後,該樹脂屑はその厚みの範囲内で除去加工されていることを特徴とする請求項2記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項3記載の発明は,前記樹脂層をその厚みの範囲内で除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項2記載の真空ポンプを提供する。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項5記載の発明は,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項5記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されれたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項6記載の発明は,前記ヘリカル層が設けられた後,該ヘリカル屑の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂が除去加工されていることを特徴とする請求項5記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項6記載の発明は,前記ヘリカル層の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂を除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空ポンプを提供する。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項7記載の発明は,前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項7記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,少なくとも前記円筒ロータの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプを提供する。」
に訂正する。
(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0005】に「請求項8記載の発明は,前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,前記接合部分が,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプを提供する。」とあるのを,
「請求項8記載の発明は,前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,前記接合部分が,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプを提供する。」
に訂正する。
(15)訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0006】に記載された「請求項1の発明によれば,最外層の外周に保護対策がなされたことにより,大きな負荷がかかるフープ層の繊維が寸断されなくなる為,強度の向上が期待できる。」を削除する。

2.訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は,請求項1を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は,訂正前の請求項1に「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,少なくとも前記円筒ロータの接合部分では,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプ。」とあり,訂正前の請求項2に「前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。」へと訂正するものである。
当該訂正は,訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しない独立形式請求項へ改めるものである。併せて,訂正前の請求項1に記載されていた「円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造」が「円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造」とされているが,これは訂正前の記載から把握することができた前記多層構造が前記フープ層以外の層をも含み得ることをより明瞭にしたものである。
また,訂正前の請求項1に記載されていた「前記最外層の外周に保護対策がなされていること」が削除されているが,当該記載は,取消理由通知においてそれにより特定しようとする構成が明確でないと指摘されたものであり(後記「第3 2.」を参照),かつ訂正前後の請求項2には,当該記載の下位概念である「少なくとも前記接合部分において,」「前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていること」が記載されている。そうすると,これらの訂正は,いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しない。
したがって,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」及び同4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア.訂正の目的について
当該訂正は,訂正前の請求項3が,物の発明において製造方法に関する記載を含んでいたのを,製造方法に関する記載を削除し,真空ポンプの構造に関する記載に改めるものであるから,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の段落【0009】(第7頁第17?21行)には,「・・・円筒ロ-タ21の外周の接合部20aを仕上げ加工する場合は,接合部20aの最外層に加工シロを設け,仕上げ加工は最外層の加工シロの範囲内で実施する。このとき,加工シロは,樹脂材をコーティングする・・・などの方法によって仕上げ加工を実施する」との記載があり,仕上げ加工が円筒ロータの表面を平滑化して凹凸を小さくすることであるのは明らかであるから,樹脂層の厚みの範囲内で樹脂を除去加工して形成された被除去加工部が設けられることが明細書に実質的に開示されていることは明らかである。
したがって,当該訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3は,物の発明において製造方法に関する記載を真空ポンプの構造に関する記載に改める訂正であり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4は,訂正前の請求項1に「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,少なくとも前記円筒ロータの接合部分では,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプ。」とあり,訂正前の請求項5に「前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ屑の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記円筒口-タにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。」へと訂正するものである。
当該訂正は,訂正前の請求項5が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しない独立形式請求項へ改めるものである。
また,訂正前の請求項1に記載されていた「前記最外層の外周に保護対策がなされていること」が削除されているが,当該記載は,取消理由通知においてそれにより特定しようとする構成が明確でないと指摘されたものであり(後記「第3 2.」を参照),かつ訂正前後の請求項5には,当該記載の下位概念である「少なくとも前記接合部分において,」「前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていること」と記載されている。そうすると,この訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しない。
したがって,訂正事項4は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」及び同4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア.訂正の目的について
当該訂正は,訂正前の請求項6は,物の発明において製造方法に関する記載を含んでいたが,当該訂正により,「当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか」を明らかにしたものであるから,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の段落【0009】(第7頁第17?21行目)には,「・・・円筒ロ-タ21の外周の接合部20aを仕上げ加工する場合は,接合部20aの最外層に加工シロを設け,仕上げ加工は最外屑の加工シロの範囲内で実施する。このとき,加工シロは,・・・FRPの巻付角45度以下でヘリカル状に繊維を巻きつけるなどの方法によって仕上げ加工を実施する」との記載があり,仕上げ加工が,円筒ロータの表面を平滑化して凹凸を小さくすることであるのは明らかであるから,ヘリカル層の厚みの範囲内で繊維又は樹脂を除去加工して形成された被除去加工部が設けられることが明細書に実質的に開示されていることは明らかである。
したがって,当該訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項5は,物の発明において製造方法に関する記載を真空ポンプの構造に関する記載に改める訂正であり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
訂正事項6は,訂正前の請求項1に「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,少なくとも前記円筒ロータの接合部分では,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプ。」とあり,訂正前の請求項7に「前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,前記円筒ロ-タの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。」とあるのを,「繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロー夕を有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,少なくとも前記円筒ロ-タの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように,前記円筒ロ-タの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプ。」へと訂正するものである。
当該訂正は,訂正前の請求項7が請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1を引用しない独立形式請求項へ改めるものである。
また,訂正前の請求項1に記載されていた「前記最外層の外周に保護対策がなされていること」が削除されているが,当該記載は,取消理由通知においてそれにより特定しようとする構成が明確でないと指摘されたものである(後記「第3 2.」を参照)。
ここで,訂正前後の請求項7に記載された「前記円筒ロ-タの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であること」が「前記最外層の外周に保護対策がなされていること」の下位概念といえるか否かについて検討する。
訂正前の請求項1の「保護対策」とは,荷重のかかる接合部分に仕上げ加工をすることによって繊維が寸断され,ササクレや歪みが生じることを抑制するものである(願書に添付した明細書の段落【0009】(特に特許掲載公報の第6頁第39?44行目))。
また,「円筒ロータの外周の除去加工」とは,円筒ロータの外周に施す除去加工により,円筒ロータの外周表面の凹凸を可能な限り小さくするものであり,「除去加工の範囲」とは,除去加工を施す領域を意味するから,「円筒ロータの外周の除去加工範囲」とは,円筒ロータの外周表面の凹凸を可能な限り小さくするために円筒ロータの外周に施す除去加工(仕上げ加工)の範囲を意味するものである(願書に添付した明細書の段落【0009】(特に特許掲載公報の第7頁第29?31行目))。
そして,請求項7に係る発明の要部を示す平成28年8月4日付けの意見書の参考断面図2に示すように,円筒ロータの外周のうち接合部分を除く部分の少なくとも一部のみを除去加工する場合,除去加工されない円筒ロータの接合部分においては,円筒ロータの最外層の繊維が寸断されないことは明らかである
したがって,「円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,接合部分を除く部分の少なくとも一部である」とは,円筒ロータの外周のうち接合部分を除く部分の少なくとも一部が除去加工されることであり,接合部分は除去加工(仕上げ加工)されていないので,ササクレや歪みが生じることがなく,これは,訂正前の請求項1の「少なくとも円筒ロータの接合部分では,最外層の外周に保護対策がなされていること」の一例であり下位概念であるといえる。
そうすると,訂正前後の請求項7には,「前記最外層の外周に保護対策がなされていること」の下位概念である「前記円筒ロ-タの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であること」が記載されている。
してみれば,この訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しない。
したがって,訂正事項6は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」及び同4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項7
当該訂正は,請求項1の記載を引用する請求項8の従属関係を改めるための訂正であって,多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少するものであるから,特許法第120条の5第2項第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,当該訂正は,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項8
上記訂正事項8は,上記訂正事項1に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項1記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,少なくとも前記円筒ロータの接合部分では,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプを提供する。この構成によれば,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成されている。すなわち,繊維は,円筒ロータの円周方向に対して45度未満の角度で巻かれてリング状の層を形成している。さらに,円筒ロータの接合部分においては,フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,最外層の外周に保護対策がなされている。」を削除するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であり,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項9
訂正事項9は,上記訂正事項2に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項2記載の発明は,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記円筒口-タの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項2記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロ-タは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(10)訂正事項10
訂正事項10は,上記訂正事項3に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項3記載の発明は,前記樹脂層が設けられた後,該樹脂層はその厚みの範囲内で除去加工されていることを特徴とする請求項2記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項3記載の発明は,前記樹脂層をその厚みの範囲内で除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項2記載の真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(11)訂正事項11
訂正事項11は,上記訂正事項4に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項5記載の発明は,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項5記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記円筒ロータにおける,少なくとも前記接合部分において,前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように,前記フープ層の外側に,円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,上記訂正事項4と同様に,何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(12)訂正事項12
訂正事項12は,上記訂正事項5に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項6記載の発明は,前記ヘリカル層が設けられた後,該ヘリカル層の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂が除去加工されていることを特徴とする請求項5記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項6記載の発明は,前記へリカル層の厚みの範囲内で,そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂を除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(13)訂正事項13
訂正事項13は,上記訂正事項6に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項7記載の発明は,前記フープ層が最外屑となるように形成された前記円筒ロータにおいて,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項7記載の発明は,繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて,前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され,前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて,少なくとも前記円筒ロータの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように,前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は,前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,上記訂正事項6と同様に,何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく,また,カテゴリーや対象,目的を変更するものには該当しないから,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(14)訂正事項14
訂正事項14は,上記訂正事項7に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「請求項8記載の発明は,前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,前記接合部分が,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6 又は7記載の真空ポンプを提供する。」を,「請求項8記載の発明は,前記円筒ロータは,ネジ溝ポンプを形成し,前記接合部分が,前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプを提供する。」に訂正するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,上記訂正事項7と同様に,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(15)訂正事項15
上記訂正事項15は,上記訂正事項1に係る訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,願書に添付した明細書の段落【0006】に記載された「請求項1の発明によれば,最外層の外周に保護対策がなされたことにより,大きな負荷がかかるフープ層の繊維が寸断されなくなる為,強度の向上が期待できる。」を削除するものである。
当該訂正は,特許法第120条の5第2項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって,何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(16)一群の請求項について
訂正により請求項1は削除された。訂正後の請求項2?8は一群の請求項である。

[独立特許要件について]
訂正事項7は,上記2.(7)で示したように,特許法第120条の5第2項第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるから,本件特許異議申立てがなされていない請求項8について,独立特許要件の充足が求められ,訂正後の請求項8は,訂正後の請求項2?7を引用している。
そこで,独立特許要件に関して検討した平成28年6月15日付け訂正拒絶理由通知における理由(3)について検討する。
訂正拒絶理由の理由(3)は,訂正後の請求項4,6,7,8に記載された発明は,明確でないから,特許法第36条第6項第2号の規定に違反するというものである。
(1)訂正後の請求項4について
請求項4は,「真空ポンプ」という物の発明に係るものであるから,請求項4の「前記樹脂層は,樹脂を注型することによって形成されること」という記載が,物の発明についての請求項の少なくとも一部に「その物の製造方法が記載されている場合」に該当するか否かを検討する。
上記「前記樹脂層は,樹脂を注型することによって形成されること」は,明細書,特許請求の範囲,及び図面の記載及び出願時の技術常識を考慮すると,「当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか」が明確であるから,「その物の製造方法が記載されている場合に」該当するとはしない。
(2)訂正後の請求項6について
FRP材全体に樹脂が含まれることは広く一般的に知られている。そして,請求項5に従属する請求項6にも樹脂が含まれること,及び,請求項6に係る発明の要部を示す参考断面図1に示すように,請求項6において,フープ層の外側に設けられたヘリカル層内の繊維及び樹脂が部分的に除去されても,円筒ロータに樹脂が残存することは明らかであるから,訂正後の請求項6は明確である。
(3)訂正後の請求項7について
上記2.(6)訂正事項6において検討したように,請求項7に係る発明の要部を示す平成28年8月4日付けの意見書の参考断面図2に示すように,円筒ロータの外周のうち接合部分を除く部分の少なくとも一部のみを除去加工する場合,除去加工されない円筒ロータの接合部分においては,円筒ロータの最外層の繊維が寸断されないことは明らかであるから,訂正後の請求項7は明確である。
(4)訂正後の請求項8について
訂正後の請求項4,6,7は明確であるから,これらを引用する訂正後の請求項8も明確である。
また,訂正後の請求項8に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由も発見しない。
したがって,訂正後の請求項8は,独立特許要件を充足し,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項の規定に適合するので,訂正後の請求項1,〔2?8〕について訂正することを認める。

第3.特許異議申立てについて
1.訂正請求項2に係る発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項2に係る発明(以下,「本件特許発明2」という。)は,上記「第2.1.訂正の内容(2)訂正事項2」において示したとおりのものである。

2.取消理由について
(1)取消理由
訂正前の請求項1?2に係る特許に対して平成28年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由は,次のとおりである。
「1)本件特許の請求項1,2に係る発明は,その出願前日本国内または外国において公然知られた発明であるから,特許法第29条第1項第1号に該当し,特許を受けることができない。
2)本件特許の請求項1,2に係る発明は,その出願前日本国内または外国において公然実施をされた発明であるから,特許法第29条第1項第2号に該当し,特許を受けることができない。
3)本件特許の請求項1,2に係る発明は,その出願前日本国内または外国において公然知られた発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4)本件特許に係る特許出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

<理由1?3>
甲第1号証:ターボ分子ドラッグポンプTMH1001P(品番PM P03 300G)部品表
甲第2号証:ローターアッセンブリーTMH1001P(品番PM 073 867AX)部品表
甲第3号証:ローターアッセンブリーTMH1001(品番PM 073 867AX)図面
甲第4号証:ラビリンスディスクTMH/U1001(品番PM 073 869)図面
甲第5号証:ローターディスクTMH/U1000MCT(品番PM 602 222)図面
甲第6号証:C-スリーブ T(品番PM 073 487)図面
甲第7号証:C-スリーブ T(品番PM 073 642)図面
甲第8号証:炭素繊維スリーブ,FU2802の技術仕様書 PM 083 542-V
甲第9号証:炭素繊維スリーブコーティングの技術仕様書 PM 093 037-V
甲第10号証:請求書339916-N及び納品書244300-N
甲第11号証:請求書353406-N及び納品書257384-N
甲第12号証:請求書312324-N及び納品書217169-N
甲第13号証:カタログ2002-2004 真空技術
甲第14号証:宣誓供述書

そして,請求項1,2に係る発明は,特許異議申立書第6ページ第22行?第13ページ第14行『イ 引用発明の説明・・・よって本件特許発明1乃至2は,特許法第29条第2甲(「甲」は「項]の誤記)違反に該当する。』記載の理由により,甲第10号証ないし甲第14号証のとおり公然知られた,又は,公然実施をされた甲第1号証?甲第9号証記載の発明と同一である,または,甲第10号証ないし甲第14号証のとおり公然知られた甲第1号証?甲第9号証記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,請求項1,2に係る発明は,特許法第29条第1項第1号,第2号の規定に該当し,又は,特許法第29条第2項の規定に違反するので,それらの発明に係る特許は取り消されるべきものである。

請求項1に係る発明の『フープ層を含む多層構造』に関して,特許権者は,審判合議体からの審尋に対する回答書において,『フープ層及びヘリカル層を交互に積層したFRP材の一般的な階層構造』を意味する旨主張しているが,そのようなものに限られるとは解されない(例えば,フープ層と樹脂層からなる多層構造や複数のフープ層からなる多層構造をも含むものと解される。)。

なお,従属項がある請求項について訂正請求する場合は,それらが一群の請求項を構成することになり,訂正された請求項3?8について,独立特許要件を満たさねばならなくなることがある。請求項3,6の記載は,明らかに製造方法の記載を含むものとなっている。

<理由4>
請求項1に係る発明は,『前記最外層の外周に保護対策がなされていること』なる事項を含むが,かかる事項により物に係る発明の構成がどのように特定されたのか明確でない。
よって,請求項1に係る発明の特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」

(2)判断
ア.特許法第29条第1項第1号,特許法第29条第1項第2号,及び,特許法第29条第2項について
甲第1号証?甲第9号証のいずれの証拠にも,
(ア)前記円筒ロータは,円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む「多層構造」で形成された点,
(イ)「前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断され」ない点
が記載されていない。
(ア)の点について,特許異議申立人は,引用発明の説明として,甲第8号証(炭素繊維スリーブ,FU2802の技術仕様書 PM 083 542-V)に「『・・・ワインディング技術を用いた繊維強化材料による部品製造に従って製造される。』と記載される通り,炭素繊維スリーブ15,16(品番PM073 487,PM 073 642)は,ワインディング技術を利用した繊維強化材料からなる炭素繊維スリーブである。そして,その層は,多層構造である。更に,甲第8号証より,炭素繊維スリーブ15及び16の材料は,複合体,エポキシ樹脂製の母材,そして繊維 PAN系炭素繊維(HT)である(項目「5.」。繊維はここでは88°の巻き付け角度で供給される。当該供給はスリーブの回転軸に対して平行に行われるものであるから,88°の意味するところはスリーブの円周方向に対して2°の角度の相当するということである。」(異議申立書8頁3行?13行)と主張する。
甲第8号証には,上記の主張に関係する点としては以下の記載がある(甲第8号証の抄訳にて示す。)。
「#1
炭素繊維スリーブ,FU2802の技術仕様書
・・・
#2
・・・
3.製造方法
本炭素繊維スリーブは,Schunk社製造規定116グループ2211番『製造記号O20に従った巻き付け技法を用いた繊維補強材料による部品製造』に従って製造される。
・・・
5.材料
5.1 繊維:PAN C-繊維HT
5.2 マトリクス:エポキシ樹脂HT
5.3 複合体:FU2802,巻き付け角度88°±2°
6.材料データ
6.1PAN C-繊維HT
繊維の直径:7μm^(*)
・・・」
(1ページ目)
「#1
・・・
7.表面仕上げ
本炭素繊維スリーブの加工は以下の作業工程に従い行われる:
・鋸切断
・研磨(回転,スリーブの外形<40mm)
・エッジのトリミング
・最終試験
・・・」
(2ページ目)
ここで,甲第8号証には,「3.製造方法 本炭素繊維スリーブは,・・・『・・・巻き付け技法を用いた繊維補強材料による部品製造』に従って製造される。」
「5.材料
5.1 繊維:PAN C-繊維HT
5.2 マトリクス:エポキシ樹脂HT
5.3 複合体:FU2802,巻き付け角度88°±2°」
との記載はある。
しかしながら,巻き付け角度88°±2°で巻かれた層があることは,開示されているとはいえるが,当該巻き付け角度88°±2°で巻かれた層が,「多層構造」であることの開示はない。

(イ)の点について,特許異議申立人は,甲第9号証の説明として,
「甲第9号証は,炭素繊維スリーブのコーティングについて規定する技術仕様書PM 093 037-Vである。炭素繊維スリーブ15,16は,当該技術仕様書PM 093 037-Vに従い作製される。当該仕様書から,炭素繊維スリーブ15,16はコーティングされていることが明らかである。項目『5.材料』欄より明らかなとおり,コーティングは,TempCoatポリマーコーティングである。」(特許異議申立書第8頁15行?20行)と主張する。
甲第9号証には,上記の主張に関係する点としては以下の記載がある(甲第9号証の抄訳にて示す。)。
「#1
炭素繊維スリーブコーティングの技術仕様書
・・・
3.製造方法
本コーティングは,製造方法TempCoat1011Fおよび現在有効な1998年3月6日付工順カードに従って塗布されなければならない。
・・・
4.公差
・・・
4.1 コーティング
層の厚み 15μm±5μm
5.材料
5.1コーティング
PTFE上に塗布するTempCoatポリマーコーティング-基礎。 色:黒
6.表面仕上げ
本コーティングは,方法TC1011Fに従ってスリーブの全表面に均等に塗布されていなければならない。スリーブの表面には,如何なる種類や大きさにおいても塗布されていない箇所があってはならない。
・・・」
(1ページ目)

ここで,甲第8号証,甲第9号証の記載からみて,甲第8号証の炭素繊維スリーブの作成途中において,甲第9号証の炭素スリーブコーティングを行うことは記載されていないから,炭素繊維スリーブコーティングは,炭素繊維スリーブの製品をコーティングするものと解される。即ち,炭素繊維スリーブは,甲第8号証によって作成された後に甲第9号証に開示されるようにコーティングされるものといえる。
そうすると,炭素繊維スリーブは甲第8号証のように表面仕上げされる際に研磨されることになるから,巻き付け角度88°±2°で巻いた最外層の繊維が研磨により寸断される可能性がある。
してみれば,甲第8号証と甲第9号証からみて,「前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断され」ないという技術思想が開示されているとはいえない。
また,上記技術思想は,甲第1号証?甲第7号証のいずれの証拠にも開示されていない。
したがって,特許異議申立人の提出した甲第1号証?甲第9号証のいずれの証拠にも上記(ア),(イ)の点は開示されていないから,特許法第29条第1項第1号,特許法第29条第1項第2号についての取消理由は,いずれも成り立たない。
また,上記(ア),(イ)の点については,自明な事項ともいえないから,甲第1号証?甲第9号証に開示された事項を如何に組み合わせても本件特許発明2の発明特定事項とすることはできないため特許法第29条第2項についての取消理由も成り立たない。

なお,甲第14号証の宣誓に代えて証言した宣誓供述書(抄訳文参照)には,「円筒状のホルベックローターは多層構造体に構成されて」いることが記載されているが,甲第14号証の内容が仮に真実だとしても,上記(イ)の点は,特許異議申立人の提示したいずれの証拠にも記載されていないから,特許法第29条第1項第1号,特許法第29条第1項第2号,及び,特許法第29条第2項についての取消理由は,いずれも成り立たないことには変わりはない。

イ.特許法第36条第6項第2号について
本件特許発明2については,明確性不備の取消理由は指摘されていない。

3.特許異議申立ての理由について
異議申立人は,特許異議申立書において,訂正前の請求項1,2のいずれについても,物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているから,発明が明確でない旨の主張をしている。
しかしながら,本件特許発明2の「略円筒形に形成された円筒ロータ」,「他材料性ロータに接合されたロータ」,「円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層」,「前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず,前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように,前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていること」といういずれの記載も,明細書,特許請求の範囲,及び図面の記載及び出願時の技術常識にを考慮すると,「当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか」が明らかでないとはいえないから,物の発明についての請求項の少なくとも一部に「その物の製造方法が記載されている場合に」該当しない。
したがって,本件特許発明2は,明確であり,物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているから発明が明確でないとする特許法第36条第6項第2号についての異議申立ての理由は成り立たない。

4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立ての理由によっては,本件請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,請求項1に係る特許は,訂正により削除されたため,本件特許の請求項1に対して,特許異議申立人 プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハーがした特許異議申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は真空ポンプに関するものであり、特に、半導体製造や高エネルギー物理学等に供される工業用真空装置において、中真空から高真空及び超高真空に亘る圧力範囲で利用可能な真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の真空ポンプは、吸気口と排気口とを有する筐体内に、該吸気口側からターボ分子ポンプ部と円筒形ネジ溝ポンプ部を順次配設した構造となっている。
また、前記円筒形ネジ溝ポンプ部のロータあるいはステータはアルミ合金製であり、真空ポンプの回転数の高速化は、円筒形ネジ溝ポンプ部のロータの強度で制限される。
そこで、前記真空ポンプのネジ溝ポンプ部のロータに、繊維強化プラスチック材(Fiber Reinforced Plastics、通称「FRP材」という。)を円筒形に成形してなる円筒ロータを使用し、該円筒ロータの強度アップを図るようにした構造のものも知られている。円筒ロータには、回転させたときの遠心力や熱膨張率の差により、円周方向の負荷が掛かる。その為、FRPでは通常、繊維を円周方向に配向した層を最も外側として形成する。繊維強化プラスチック材としては、アラミド繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維などを用いたものがある。
しかしながら、繊維強化プラスチック材(以下、FRP材)という)を円筒形に成形して円筒ロータとした場合は、FRP材を円筒形に成形した後の表面が大きく歪んでいるため、成形後に仕上げ加工を行う必要がある。ところが、この仕上げ加工では、円筒ロータの表層付近を蛇行している繊維が寸断されてしまうため、高い負荷(荷重)をかけたときに、該FRP材の繊維が部分的に剥がれてササクレや歪みを生じさせて破損するおそれがある。
そこで、従来から、その対策として、例えば特許文献1、特許文献2で知られるような、様々な手段が提案されている。
すなわち、特許文献1の真空ポンプでは、ターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部との熱膨張の差や遠心力による変形量の差を緩和させるために、FRP材の支え板を介して前記ターボ分子ポンプ部のロータと前記ネジ溝ポンプ部の円筒ロータとを接合させている。
さらに、特許文献2の真空ポンプでは、ターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部との熱膨張の差や遠心力による変形量の差を緩和させるために、FRP材における繊維の巻き付け角、及び、樹脂含有量等の成形条件や形状を工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3098139号公報
【特許文献2】特開2004-278512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来のFRP材を円筒形に形成してなる円筒ロータにおける繊維のササクレや歪みを生じて破損する場合の対策として、前記ターボ分子ポンプ部のロータと前記ネジ溝ポンプ部の前記円筒ロータとをFRP材の支え板を介して接合するようにした特許文献1に記載される構造では、部品点数及び組立工数が増加するためにコストアップになるという問題がある。また、精度良く組立てるのが難しく、固定部との接触防止のために、固定部とのクリアランスを広げることが必要となる場合もある。その結果、排気性能が低下する問題もある。
さらに、上述した特許文献2に記載される構造、すなわちFRP材における繊維の巻き付け角、及び、樹脂含有量等の成形条件や形状を工夫している構造では、FRP材の形状が複雑になるため、生産性が悪く、コストアップになるという問題がある。
そこで、繊維強化プラスチック材を円筒形に成形した円筒ロータを使用した場合であっても、円筒ロータの表面が部分的に剥れて破損するのを防ぐために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項2記載の発明は、繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され、前記円筒ロータにおける、少なくとも前記接合部分において、前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず、前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように、前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータの接合部分において、フープ層の外側に樹脂層が設けられている。これによって、円筒ロータの表面の凹凸を低減させることができる。なお、樹脂層を平滑面の形状に形成する方法としては、円筒ロータの表面の凹部に樹脂材をスプレーして該凹部内を埋める方法、樹脂材をハケで円筒ロータの表面に塗布して該凹部内を樹脂で埋める方法、又は、注型や金型を使用して形状や寸法精度を確保する方法などを行うことができる。
請求項3記載の発明は、前記樹脂層をその厚みの範囲内で除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項2記載の真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータの表面に樹脂層が設けられた後に、樹脂層はその厚みの範囲内で除去加工されているので、円筒ロータの表面の凹凸が低減されると共に表面の仕上がり精度を向上させることができる。
請求項4記載の発明は、前記樹脂層が、樹脂を注型することによって形成されることを特徴とする請求項2又は3記載の真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータの接合部分においてフープ層の外側に設けられた樹脂層は、樹脂を鋳型に注入することによって形成されているので、除去加工を行わなくても寸法精度を確保できる。
請求項5記載の発明は、繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され、前記円筒ロータにおける、少なくとも前記接合部分において、前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように、前記フープ層の外側に、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータにおける接合部分において、フープ層の外側には、さらに、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられている。
請求項6記載の発明は、前記ヘリカル層の厚みの範囲内で、そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂を除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータの接合部分におけるフープ層の外側にヘリカル層が設けられた後、そのヘリカル層の厚みの範囲内で、そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂が除去加工されている。ヘリカル層に巻かれた繊維は、円周方向に対して45度以上に配向されているため、円周方向に負荷がかかった場合にも、ヘリカル層の繊維には大きな負荷が発生することはない。従って、円筒ロータの表面が部分的に剥がれることを防止できる。
請求項7記載の発明は、繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され、前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて、少なくとも前記円筒ロータの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように、前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は、前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプを提供する。
この構成によれば、フープ層が最外層となるように形成された円筒ロータにおいて、その円筒ロータの外周部分は、接合部分を除く部分の一部分のみが除去加工されている。従って、真空ポンプの商品性を損なうおそれはない。
請求項8記載の発明は、前記円筒ロータは、ネジ溝ポンプを形成し、前記接合部分が、前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプを提供する。
この構成によれば、円筒ロータの接合部分はネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられている。すなわち、繊維強化プラスチック材を円筒形に成形して円筒ロータを形成した場合、その表面部分が凹凸状になるため、円筒表面に対して仕上げ加工を実施しない場合は、対向する部品との間の隙間を増やす必要がある。しかしながら、本発明の真空ポンプでは、圧力が低いために隙間を拡げたときの影響が小さい排気経路の上流側に、ターボ分子ポンプ部のロータとネジ溝ポンプ部の円筒ロータの接合部分を設置している。従って、円筒ロータと対向する部品との間に大きな隙間が生じていても、排気速度及び圧縮比を著しく低下させることなく排気口より排気される。したがって、繊維強化プラスチック材を円筒形に成形してなる円筒ロータの少なくとも荷重がかかる接合部分に対して、円筒ロータの成形後に仕上げ加工を行わなくてもよい。
【発明の効果】
【0006】
請求項2の発明によれば、最外層のフープ層を除去加工して平滑化する代わりに、樹脂をコーティングして平滑化している為、大きな負荷のかかるフープ層の繊維が寸断されなくなる為、強度の向上が期待できる。
請求項3記載の発明によれば、円筒ロータの表面に形成された樹脂層はその厚みの範囲内で除去加工されているので、請求項2記載の発明の効果に加えて、円筒ロータの表面の凹凸が低減されると共に表面の仕上がり精度を向上させることができる。言い換えると、円筒ロータの接合部分と対応する上端部最外層に加工シロを設け、円筒ロータの成形後に、該加工シロの部分だけ仕上げ加工して所定の精度に対応することができるので、加工精度の向上を期待することができる。
請求項4記載の発明によれば、フープ層の外側に設けられた樹脂層は樹脂を鋳型に注入することによって形成されているので、請求項2の発明の効果に加えて、加工工数を増加させることなく加工精度の良い円筒ロータを形成することができる。
請求項5記載の発明によれば、円筒ロータにおける接合部分において、フープ層の外側に、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層を設けているので、大きな負荷のかかるフープ層の繊維が寸断されなくなる為、強度の向上が期待できる。
請求項6記載の発明によれば、フープ層の外側に設けたヘリカル層の厚みの範囲内で、そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂が除去加工されているので、請求項5記載の発明の効果に加えて、円筒ロータの表面の凸凹が低減されると共に、表面の仕上がり精度を向上させることが出来る。また円周方向に対して、45度以上に繊維を配向している為、円周方向に負荷がかかっても、繊維には大きな負荷は発生しない。その為、部分的に剥れることはない。
請求項7記載の発明によれば、円筒ロータの外周部分は、接合部分を除く部分の一部分のみに除去加工の範囲が限定されており、大きな負荷のかかる接合部のフープ層の繊維が切断されることがないため、強度の向上が期待できる。
請求項8記載の発明によれば、圧力が低く固定部とのクリアランスを広げた場合にも排気性能に与える影響が小さい、排気経路の上流側に接合部分を設けたことにより、接合部分の外周面の仕上がり精度が良くなくとも高い商品性を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の一実施例として示す真空ポンプの縦断面図である。
図2は図1に示す本発明の複合真空ポンプにおける円筒ロータの仕上げ加工の一実施例を示す説明図である。
図3は図1に示す本発明の複合真空ポンプにおける円筒ロータの仕上げ加工の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、繊維強化プラスチック材を円筒形に成形して円筒ロータを使用した場合であっても、円筒ロータが低負荷で破損することを防止するという目的を達成するために、繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され、少なくとも前記円筒ロータの接合部分では、前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように、前記最外層の外周に保護対策がなされていることを特徴とする真空ポンプを提供することにより実現した。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の真空ポンプについて、図1乃至図3を参照しながら好適な実施例を説明する。図1は本発明に係る真空ポンプの縦断面図である。
図1において、真空ポンプ10は、吸気口11と排気口12とを有する筐体13を備えている。該筐体13内には、上部にターボ分子ポンプ部14と、その下方に円筒形のネジ溝ポンプ部15が設けられているとともに、該ターボ分子ポンプ部14内と該ネジ溝ポンプ部15内を通って前記吸気口11と前記排気口12を連通してなる排気経路24が形成されている。
前記排気通路24は、より具体的には、前記ターボ分子ポンプ部14の後述する相対向しているロータ17の外周面と前記筐体13の内周面との間の隙間、及び前記ネジ溝ポンプ部15の後述する円筒ロータ21の外周面とステータ23の内周面との間の隙間を相互に連通させるとともに、前記ターボ分子ポンプ部14側の隙間上端側を前記吸気口11に連通させ、かつ、前記ネジ溝ポンプ部15側の隙間下端側を前記排気口12に連通して形成されている。
前記ターボ分子ポンプ部14は、回転軸16に固設されたアルミ合金製のロータ17の外周面に突設された多数の動翼18,18…と、前記筐体13の内周面に突設された多数の静翼19,19…との組み合わせからなる。
前記ネジ溝ポンプ部15は、前記ターボ分子ポンプ部14におけるロータ17の下端部の外周面に突設された鍔状円環部20の外周、すなわち接合部20aに例えば接着剤等を用いて圧入固着された円筒ロータ21と、該円筒ロータ21の外周と小隙間を有して対向し、該小隙間と共に前記排気経路24の一部を形成してなるネジ溝22が設置されたステータ23とからなる。該ネジ溝22は、下方へ行くに従って深さが浅くなるようにして形成されている。また、該ステータ23は、前記筐体13の内面に固定されている。そして、前記ネジ溝22の下端は前記排気経路24の最下流側において前記排気口12に連通され、前記ターボ分子ポンプ部14の前記ロータ17と前記ネジ溝ポンプ部15の前記円筒ロータ21の接合部20aは、前記排気経路24の上流側に設置されている。
また、前記回転軸16の中間部には、モータ筐体25内に設けられたインダクションモータ等の高周波モータ26のロータ26aが固定されている。該回転軸16は、磁気軸受で支承され、上部及び下部に保護軸受27,27が設けられている。
前記円筒ロータ21は、FRP材を円筒形に形成してなり、円周方向と軸方向の両方に力が分担するように円周方向に繊維を配向させたフープ層、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層などを組合せた複合層としている。
なお、前記ターボ分子ポンプ部14の前記ロータ17と前記ネジ溝ポンプ部15における前記円筒ロータ21とが接合部20aと対応する上端部の箇所、すなわち、前記円筒形ロータ21の上端部最外層部分は、樹脂材をスプレーし、表面の凹部内を樹脂材で埋めて平滑化されている。
次に、図1に示す真空ポンプの動作について説明する。前記高周波モータ26の駆動によって前記吸気口11から流入した気体は、分子流あるいはそれに近い中間流状態にあり、その気体分子は前記ターボ分子ポンプ部14の回転する前記動翼18,18…と前記筐体13から突設した前記静翼19,19・‥との作用より、下方向に運動量が与えられ、該動翼18,18…の高速回転に伴って下流側へ気体が圧縮移動する。
また、圧縮移動された気体は、前記ネジ溝ポンプ部15において、回転する前記円筒ロータ21と、小間隙を有して形成された前記ステータ23に沿って下流に行くにしたがって深さが浅くなる前記ネジ溝22とに導かれるようにして、粘性流状態まで圧縮されながら前記排気通路24内を流れ、前記排気口12から排出される。
このとき、前記円筒ロータ21が、FRP材を円筒形に成形して形成された場合は、所定の仕上げ加工を実施しないと該円筒ロータ21の表面が凹凸状態であるため、対向する前記ステータ23との隙間を増やす必要がある。ところが、本実施例の真空ポンプ10では、前記ターボ分子ポンプ部14の前記ロータ17と前記ネジ溝ポンプ部15の円筒ロータ21との接合部20aを、隙間を拡げたときの影響が小さい排気口12側に対して圧力の低い排気経路24の上流側に設置している。従って、円筒ロータ21と対向するステータ23との間に大きな隙間が生じても、排気速度及び圧縮比を著しく低下させることなく排気口12より排気されることになる。
したがって、本実施例の真空ポンプ10では、FRP材を円筒形に成形してなる円筒ロータ21の少なくとも荷重がかかる前記接合部20aの部分は、前記円筒ロータ21の成形後に仕上げ加工を行わなくても済むことになる。従って、従来、仕上げ加工をすることによって、円筒ロータ21の表層付近を蛇行している繊維が寸断され、高い負荷(荷重)をかけたときに、FRP材の繊維構造が部分的に剥がれてササクレや歪みを生じて破損するおそれのある問題を解決することができる。また、真空ポンプの製造工程が簡単になるので、製造コストのコストダウンを計ることが可能になる。
また、前記円筒ロータ21の少なくとも前記接合部20aと対応する上端部最外層に前記加工シロ28を設け、前記円筒ロータ21の成形後に該加工シロ28の部分だけ、その加工シロ28の最外層の厚みの範囲内で仕上げ加工を行って所定の精度に対応することができるので、排気速度及び圧縮比の低下をさらに小さくすることが期待できる。
図2は、図1に示す本発明の複合真空ポンプにおける円筒ロータの仕上げ加工の一実施例を示す説明図である。円筒ロータ21の成形後に、該円筒ロータ21の全体を仕上げ加工する場合は、最外層の厚みの範囲内において、図2に示すように、例えば最外層の一部21aを切削することができる。
図3は、図1に示す本発明の真空ポンプにおける円筒ロータの仕上げ加工の他の実施例を示す説明図である。円筒ロータ21の成形後に、該円筒ロータ21の全体を仕上げ加工する場合は、最外層の厚みの範囲内において、図3に示すように、例えば最外層の凹み部分29に樹脂材30をコーティングするようにして仕上げ加工を施してもよい。
すなわち、本発明の真空ポンプでは、FRPからなる円筒ロータ21の外周の接合部20aを仕上げ加工しない場合と仕上げ加工をする場合の2通りの方法を実現している。前者における円筒ロータ21の外周の接合部20aを仕上げ加工しない場合は、一般的には、FRPの表面が凹凸状になるため、円筒ロータ21(FRP)の外周と対向する部品(すなわち、ロータ17の鍔状円環部20)との間の隙間(クリアランス)を大きくする必要がある。ところが、本発明の実施形態では、接合部20aを排気経路24の上流側に配置することによって、仕上げ加工をしないでFRPの表面の凹凸が大きくても使用できるようにしている。すなわち、排気経路24の上流側の圧力が低いところでは、対向する部品との間のクリアランスを大きくとっても影響力が小さいためである。
また、後者におけるFRPからなる円筒ロータ21の外周の接合部20aを仕上げ加工する場合は、接合部20aの最外層に加工シロを設け、仕上げ加工は最外層の加工シロの範囲内で実施する。このとき、加工シロは、樹脂材をコーティングするか、FRPを半円状の金型などで挟んで樹脂材を注入するか、又はFRPの巻付角45度以下でヘリカル状に繊維を巻きつけるなどの方法によって仕上げ加工を実施する。
ここで、排気経路24の上流側に接合部20aを持って行かない場合には、繊維強化プラスチック材(FRP)の仕上げ加工が必要な理由について説明する。円筒ロータ21としてFRPが使用されているネジ溝ポンプ部15の排気性能は、回転翼(動翼18)とネジ溝ポンプ部15の筐体13とのクリアランスの影響が非常に大きい。従って、可能な限りそのクリアランスを小さくする必要がある。
一方、FRPは繊維を巻き付けて成形するため、巻き付けムラによって表面が凹凸状になっている。また、繊維を巻き付けるときのテンションのかかり具合によって、繊維の巻数密度が変わるため、仕上がり寸法のばらつきも大きくなる。そこで、円筒ロータ21の表面を仕上げ加工しないとクリアランスが小さくすることができない。すなわち、FRPの外周を仕上げ加工してFRPの表面の凹凸を可能な限り小さくする必要がある。
次に、FRPに大きな荷重がかかる理由について説明する。円筒ロータ21は磁気軸受による非接触支持のため回転翼(動翼18)の放熱がよくない。そのため、内側に圧入されているアルミ合金が熱膨張することによってFRPを押し広げる。これによって、FRPに大きな荷重がかかる。
また、解決したい不具合の特殊性として、FRPは表面の凸凹に沿って波を打った状態で巻き付けられている。そのため、仕上げ加工を行うと波を打った部分の山のところで繊維が分断される。また、アルミ合金の熱膨張によってFRPが押し広げられたときも分断された繊維には荷重がかからないために円筒ロータ21にはせん断力が発生する。このとき、繊維をつなぐ樹脂材料の強度限界を超えると樹脂に亀裂が発生してササクレが生じる。一般用途の場合はササクレが生じても問題はないが、高速回転体の場合には、ササクレ部分に生じる遠心力によって樹脂に発生する亀裂の進展が加速し、繊維全体が剥離する不具合が発生する。そこで、本実施形態では荷重がかかる円周方向の繊維が寸断されないように保護対策を行うことによってこれらの不具合を解消している。
ここで、FRPの表面処理方法についてさらに詳しく説明する。前述したように、FRPの表面処理については、仕上げ加工を行わない場合と、スプレーやハケ塗りや注型などによって樹脂層を表面に設ける場合とがある。後者におけるFRPの表面に樹脂層を設ける場合は、その樹脂層の厚みの範囲内で仕上げ加工を行う。また、金型を用いて表面に樹脂層を形成する場合は、形状や寸法精度などが確保されているので、さらなる仕上げ加工を行う必要はない。
さらに、FRPの他の表面処理方法として、円筒ロータ21の軸方向の±45度以内にヘリカル状に繊維を巻き付けた層をFRPの表面に設けることもできる。この場合、円筒ロータ21の軸方向の±45度以内に繊維を巻くと、熱膨張などによって圧入部が押し広げられたときに発生するせん断力を小さくすることができる。この場合も、繊維を巻き付けた層の厚みの範囲内で仕上げ加工を行う。さらに、FRPの圧入部を排気径路24の上流側に設置する。このような圧力が低いところでは、固定部とのクリアランスを広げたときのときの影響を小さくすることができる。
以上を要約すると、FRPによって略円筒形に形成された円筒ロータ21が、他材料の鍔状円環部20の接合部20aに接合されたロータ17を有すると共に、円筒ロータ21がネジ溝ポンプ15を形成した真空ポンプにおいて、円筒ロータ21は、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成されていると共に、円筒ロータ21の接合部20aではフープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように、最外層の外周に保護対策がなされている。
このとき、少なくとも、円筒ロータ21が接合部20aに接合される部分においては、円筒ロータ21の表面の凹凸を低減させるように、フープ層の外側に樹脂層が設けられている。さらに、樹脂層が設けられた後、その樹脂層はその厚みの範囲内で除去加工されている。尚、樹脂層は、予め、樹脂を注型することによって形成することもできる。
また、FRPの円筒ロータ21が接合部20aに接合された部分においては、フープ層の外側に、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けることも出来る。さらに、ヘリカル層が設けられた後、ヘリカル層の厚みの範囲内においてそのヘリカル層に巻かれた繊維及び繊維の周囲の樹脂が除去加工されてもよい。
あるいは、フープ層が最外層となるように形成された円筒ロータ21の外周の除去加工の範囲を、接合部20aを除く部分の少なくとも一部としてもよい。また、接合部20aをネジ溝ポンプ15の排気経路24の上流側に設ければ、円筒ロータ21の外周の仕上げ加工を行わなくてもよい。
以上、本発明の具体的な実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
以上説明したように、本発明は、ネジ溝ポンプのみに適用されるものではなく、円筒ロータを備えた真空ポンプ(例えば、ゲーテポンプ等)に適用することもできる。また、本発明は真空ポンプ以外の、FRP材で円筒形に成形してなる円筒ロータを使用する各種の装置にも応用することができる。
【符号の説明】
【0011】
10 真空ポンプ
11 吸気口
12 排気口
13 筐体
14 ターボ分子ポンプ部
15 ネジ溝ポンプ部
16 回転軸
17 ロータ
18 動翼
19 静翼
20 鍔状円環部
20a 接合部
21 円筒ロータ
21a 最外層の一部
22 ネジ溝
23 ステータ
24 排気通路
25 モータ筐体
26 高周波モータ
26a ロータ
27 保護軸受
28 加工シロ
29 最外部の窪み部分
30 樹脂材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、
前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を少なくとも含む多層構造で形成され、
前記円筒ロータにおける、少なくとも前記接合部分において、
前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されず、前記円筒ロータの表面の凹凸を低減させるように、前記フープ層の外側に樹脂層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
前記樹脂層をその厚みの範囲内で除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項2記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記樹脂層は、樹脂を注型することによって形成されることを特徴とする請求項2又は3記載の真空ポンプ。
【請求項5】
繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、
前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され、
前記円筒ロータにおける、少なくとも前記接合部分において、
前記フープ層のうち最外層となる層の繊維が寸断されないように、前記フープ層の外側に、円周方向に対して45度以上に繊維を配向したヘリカル層が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項6】
前記ヘリカル層の厚みの範囲内で、そのヘリカル層に巻かれた繊維及び該繊維の周囲の樹脂を除去加工して形成された被除去加工部を設けたことを特徴とする請求項5記載の真空ポンプ。
【請求項7】
繊維強化複合材料により略円筒形に形成された円筒ロータが他材料性ロータに接合されたロータを有する真空ポンプにおいて、
前記円筒ロータは、円周方向に対して45度未満に繊維を配向したフープ層を含む多層構造で形成され、
前記フープ層が最外層となるように形成された前記円筒ロータにおいて、
少なくとも前記円筒ロータの接合部分で前記最外層の繊維が寸断されないように、前記円筒ロータの外周の除去加工の範囲は、前記接合部分を除く部分の少なくとも一部であることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項8】
前記円筒ロータは、ネジ溝ポンプを形成し、
前記接合部分は、前記ネジ溝ポンプの排気経路の上流側に設けられていることを特徴とする請求項2,3,4,5,6又は7記載の真空ポンプ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-11-25 
出願番号 特願2012-521388(P2012-521388)
審決分類 P 1 652・ 111- YAA (F04D)
P 1 652・ 121- YAA (F04D)
P 1 652・ 112- YAA (F04D)
P 1 652・ 537- YAA (F04D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 崇昭  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 中川 真一
藤井 昇
登録日 2015-04-24 
登録番号 特許第5735963号(P5735963)
権利者 エドワーズ株式会社
発明の名称 真空ポンプ  
代理人 林 孝吉  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 林 孝吉  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  
代理人 篠原 淳司  
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