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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01L 審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備 H01L 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 H01L 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01L |
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管理番号 | 1323506 |
異議申立番号 | 異議2016-700329 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-04-20 |
確定日 | 2016-12-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5796412号発明「半導体素子の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5796412号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5796412号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5796412号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成23年8月26日に特許出願され、平成27年8月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人青山裕樹(以下「異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、平成28年7月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年9月1日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、異議申立人から平成28年10月21日付けで意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のア及びイのとおりである。 ア 請求項1に係る「75°以上90°未満」を「75°以上85°以下」に訂正する。 イ 明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】の「75°以上90°未満」という記載を、「75°以上85°以下」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アの訂正事項に関する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0020】には、「図11は、チッピングの数、しみの数、及び薄化部の厚みばらつきのθ(ウエハの主面と斜面のなす角)依存性を示すグラフである。」と記載され、段落【0021】には、「図11を参照すると、薄化部の厚みばらつきはθが75°未満となると上昇することが分かる。本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法ではθは75°以上とするので、薄化部の厚みばらつきを低減できる。」と記載されている。また、図11のグラフを見ると、厚みばらつきを示す黒三角を繋いだ線の値が、75°以上ではほぼ横這いなのに対し75°未満では上昇しており、しみの数を示す白抜き丸を繋いだ線の値が、85°以下ではほぼ0であるのに対し85°を超えて90°までは上昇していることが、それぞれ読み取れる。 そうすると、ウエハ外周部の内側に沿ってウエハの主面とのなす角が「75°以上85°以下」の斜面を形成することの根拠は、明細書に記載されているものと認められる。 そして、上記アの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、ウエハ外周部の内側に形成する斜面について、そのウエハの主面とのなす角の数値範囲をより狭い範囲に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 さらに、上記イの訂正は、請求項1の訂正に伴い、明細書中の請求項1の記載に対応する部分を同様に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これら訂正は、請求項1?3の一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 回転させた研削砥石により、ウエハ外周部の内側に沿って前記ウエハの主面とのなす角が75°以上85°以下の斜面を、既に形成された斜面と前記研削砥石の間に間隙を設けた状態で形成しつつ、前記斜面に囲まれた部分に前記外周部よりも薄い薄化部を形成するウエハ研削工程と、 前記薄化部に半導体素子を形成する工程と、 を備えたことを特徴とする半導体素子の製造方法。 【請求項2】 前記半導体素子を形成する工程は、フォトリソグラフィ工程、イオン注入工程、熱拡散工程、成膜工程、又はエッチング工程を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項3】 前記半導体素子を形成する工程では、前記薄化部の表面に第1の電極を形成し、前記薄化部の裏面に第2の電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。」 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1?3に係る特許に対して平成28年7月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 請求項1?3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?3に係る特許は、取り消されるべきものである。 イ 本件特許は、その発明の詳細な説明が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)甲号証の記載 ア 甲第1号証(特開2009-224622号公報)には、「半導体チップの製造方法、半導体ウエハ及び半導体チップ」について、次の記載がある。 (ア) 「【0045】 研磨工程は、図1(b)に示すように、半導体ウエハ100の一方の面100aを研磨するものであり、半導体ウエハ100の縁部を残すように研磨を行う。これにより、半導体ウエハ100の縁部が凸状縁部140として残る。このような研磨工程を行う際、凸状縁部140の内側壁面140aがテーパを有するように研磨を行う。凸状縁部140の内側壁面140aのテーパは、凸状縁部140の内側壁面140aと研磨された面(研磨面)とのなす角度が90度以上となるように設けられる。続いて、半導体素子形成工程を行う。 【0046】 半導体素子形成工程は、図1(c)に示すように、研磨面を半導体素子形成面(半導体素子形成面100aという)として用い、研磨面にダイシングライン120を格子状に設けるとともに半導体素子形成領域110を設定し、設定された半導体素子形成領域110内に各半導体素子130を形成する。そして、半導体素子形成面100aと反対側の面(裏面という)100bに電極などを取り付ける工程を行ったのちに、ダイシング工程を行う。」 (イ) 図1(b)(ii)を見ると、半導体素子形成面100aを有する半導体素子形成領域は、凸状縁部140よりも薄くなっていることが読み取れる。 イ 以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。 「研磨により、半導体ウエハ100の凸状縁部140の内側壁面140aに、前記半導体ウエハ100の半導体素子形成面100aとのなす角が90度以上となるテーパを形成しつつ、前記内側壁面140aのテーパに囲まれた部分に前記凸状縁部140よりも薄い半導体素子形成領域110を形成するウエハ研磨工程と、 前記半導体素子形成領域110に半導体素子130を形成する工程と、 を備えた半導体チップの製造方法。」 (4)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について (ア)特許法第29条第2項について 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「半導体ウエハ100の凸状縁部140の内側壁面140aに、前記半導体ウエハ100の半導体素子形成面100aとのなす角が90度以上となるテーパを形成」したことは、甲第1号証の図1(b)(ii)を参照しつつ、本件特許の図5及び段落【0012】の記載を考慮すれば、「ウエハ外周部の内側に沿って前記ウエハの主面とのなす角が90°未満の斜面を形成」したという点までは、本件発明1と一致するといえる。 しかし、引用発明においては、半導体ウエハ100の凸状縁部140の内側壁面140aのテーパと半導体素子形成面100aとのなす角については、あくまでも90°未満という90°に近い値を限界値として示しているだけであり、本件発明1の「ウエハの主面とのなす角が75°以上85°以下の斜面」のような、斜面角度の上限を90°に近い値よりも小さい85°として数値範囲を設定することは開示されていない。そして、当該85°という具体的数値を上限とすることにより、本件発明1は、薄化部のしみを減少させるという顕著な効果を奏するものであり、本件発明1は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明2及び本件発明3については、本件発明1をさらに減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)特許法第36条第4項第1号について 本件訂正請求項1に記載された、斜面とウエハの主面とのなす角を「75°以上」としたことの技術的意義については、本件特許明細書の段落【0021】に「θが75°未満となる斜面を形成するためには、研削砥石のウエハ主面平行方向の移動量を増加させなければならない。そのため、研削砥石とウエハ主面の平行度が悪化し、薄化部の厚みばらつきが上昇する」との記載からみて、研削砥石のウエハ主面平行方向の移動量を考慮し、当該移動量をなるべく少なく抑えることであることが理解できる。 また、このような研削砥石のウエハ主面平行方向の移動量を抑えるという観点から見れば、ウエハの厚みを変更した場合でも、研削砥石のウエハ主面方向の移動量が斜面の角度に応じて増減する傾向は同様であるから、ウエハの厚みが必ずしも厚みばらつきの要因となるものとはいえない。 そして、本件特許の図11からみて、斜面とウエハの主面とのなす角が75°以下となると厚みばらつきが大きくなることも読み取れるから、「75°以上」としたことにより顕著な効果を奏することも、当業者には理解できるものである。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?3の解決手段について、当業者がその技術上の意義を理解するために必要な事項を記載しているものである。 (ウ)特許異議申立人の意見について 異議申立人は、訂正事項により追加された斜面とウエハの主面とのなす角の値を「85°以下」とした事項は、甲第1号証の記載からみて困難性はない旨主張している。しかし、上記のとおり甲第1号証には、90°に近い「90°未満」の値が示唆されているとしても、「85°以下」とする点が記載されているものとは認められないから、本件発明1が引用発明から当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 また、異議申立人は、本件訂正請求項1に記載された、斜面とウエハの主面とのなす角を「75°以上」としたことについての技術的意義が不明であり、ウエハの厚みが厚みばらつきの要因となることも主張している。しかし、斜面とウエハの主面とのなす角が90°から小さくなるにつれ、研削砥石のウエハ主面平行方向の移動量がより大きくなる(増加率が高い)ことは、異議申立人の提出した意見書6ページの(c)のグラフにも示されているように明らかな事項であり、また、甲第5号証の「5.実験結果」のグラフのように、厚みばらつきが斜面の角度が90°から小さくなるにつれ増加していくことも理解される。そうすると、このように斜面とウエハの主面とのなす角が90°から小さくなるにつれ効果が減少してくるものについて、適宜の効果の範囲までを選択することは当然行うことであり、「75°以上」としてそこまでの顕著な効果を奏するようにしたことは、十分に技術的意義があるものと認められる。さらに、ウエハの厚みが異なる場合についても、上記のとおり、研削砥石のウエハ主面方向の移動量は、斜面の角度が90°より小さくなるにつれ増加していく傾向は変わらないため、下限値として75°を選択して、「75°以上」の顕著な効果を奏するようにしたことの技術的意義が不明であるとはいえない。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1?3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであって、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないと主張しているが、上記ア(イ)及び(ウ)でも説示したとおり、「75°以上」の技術的意義は認められ、厚みばらつきを低減できる根拠も示されていると認められるから、かかる主張は理由がない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 半導体素子の製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば産業用モータや自動車用モータの制御などに用いられる半導体素子の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 特許文献1には、中央部を研削砥石で研削し外周部は厚いままとしたウエハが開示されている。ウエハ中央部を研削するのは、半導体素子を所望の厚さとするためである。ウエハ外周部を厚いままとするのは、ウエハの強度を確保するためである。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2009-279661号公報 【特許文献2】特開2007-19379号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 研削砥石でウエハを研削すると研削屑が生じる。研削屑が研削砥石とウエハの間に挟まれた状態で研削を進めると、ウエハが局所的に欠ける場合がある。この「欠け」はチッピングと呼ばれる。チッピングは、ウエハ割れの起点となったり、薬液等がウエハ表面に残留する原因となったりする。 【0005】 本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、チッピングの発生を抑制してウエハを研削できる半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本願の発明に係る半導体素子の製造方法は、回転させた研削砥石により、ウエハ外周部の内側に沿って該ウエハの主面とのなす角が75°以上85°以下の斜面を、既に形成された斜面と該研削砥石の間に間隙を設けた状態で形成しつつ、該斜面に囲まれた部分に該外周部よりも薄い薄化部を形成するウエハ研削工程と、該薄化部に半導体素子を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば、研削屑を外部に排出しながらウエハの研削を進めるので、チッピングの発生を抑制できる。 【図面の簡単な説明】 【0008】 【図1】 研削前のウエハの断面図である。 【図2】 ウエハをウエハ研削装置のステージに固定したことを示す図である。 【図3】 図2の研削砥石を斜め下方からみた斜視図である。 【図4】 ウエハ研削装置でウエハを研削することを示す図である。 【図5】 研削工程後のウエハを示す断面図である。 【図6】 図5の平面図である。 【図7】 薄化部に半導体素子を形成したことを示す断面図である。 【図8】 比較例の半導体素子の製造方法を示す断面図である。 【図9】 比較例の方法で研削及びその後の処理が実施されたウエハを示す断面図である。 【図10】 図9の平面図である。 【図11】 チッピングの数、しみの数、及び薄化部の厚みばらつきのθ(ウエハの主面と斜面のなす角)依存性を示すグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0009】 実施の形態. 本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法について、図を参照しつつ説明する。図1は、研削前のウエハの断面図である。ウエハ10は、例えば、FZ法で作成されたシリコンで形成されている。ウエハ10は、裏面10aと表面10bを有している。表面10bには、例えば、トランジスタや配線構造などの半導体素子構造を形成する。そして、ウエハの裏面10aを上向きにして、ウエハ10の表面10bに保護テープ12を貼り付ける。 【0010】 次いで、ウエハ10をウエハ研削装置のステージに固定する。図2は、ウエハをウエハ研削装置のステージに固定したことを示す図である。保護テープ12をステージ20に吸着させ、ウエハ10をステージ20に固定する。ウエハ研削装置はステージ20の上方に、研削ホイール22及びこれに固定された研削砥石24を備えている。研削砥石24の形状について説明する。図3は、図2の研削砥石を斜め下方からみた斜視図である。研削砥石24は、全体として環状に形成されている。研削砥石24は、角部24aと底面24bを有している。 【0011】 次いで、研削工程を実施する。図4は、ウエハ研削装置でウエハを研削することを示す図である。研削工程では、例えば、ステージ20を図4に示す方向に回転させつつ、研削ホイール22及び研削砥石24をステージ20と反対方向に回転させる。そして、研削砥石24をウエハ10と接触させてウエハ10を研削する。研削砥石24は、図4のx-y平面と平行方向の移動とz方向の移動を交互に繰り返す。この研削によりウエハ10に、斜面25と薄化部26を形成する。但し、ステージ20と研削砥石24の回転方向は必ずしも逆方向である必要はない。 【0012】 斜面25は、ウエハ10外周部の内側に沿ってウエハの主面(裏面10aのことをいう、以下同じ)とのなす角が75°以上90°未満となるように形成する。図4には、ウエハ10の主面と斜面25のなす角の例として、これが80°であることが示されている。斜面25は、既に形成された斜面25と研削砥石24の間に間隙を設けた状態でウエハ10の厚み方向に順次形成していく。このとき、主として研削砥石24の角部24aが斜面25を形成していく。なお、図4には、研削で生じる研削屑29が前述の間隙を通って外部に排出されることを示す。 【0013】 一方、薄化部26は、斜面25に囲まれた部分に外周部よりも薄くなるように形成する。薄化部26は、研削砥石24の主として底面24bをウエハに面接触させることで形成する。薄化部26は平坦な面となっている。薄化部26の厚みは、例えば60μm程度である。 【0014】 図5は、研削工程後のウエハを示す断面図である。ウエハ10の中央部30には斜面25及び薄化部26が形成されている。ウエハの中央部30は、研削されていない外周部32に囲まれている。研削されていない外周部32は、リブ構造と呼ばれる。図6は、図5の平面図である。外周部32はウエハ10の外周に沿って環状に設けられている。 【0015】 次いで、研削工程で生じたウエハの加工歪みを除去するためにウェットエッチング又はドライエッチングを実施する。また、適当な時期に保護テープ12を剥離する。次いで、薄化部に半導体素子を形成する。図7は、薄化部に半導体素子を形成したことを示す断面図である。前述のとおり、ウエハ10の表面10bには、半導体素子構造が形成されているので、この工程では主として薄化部26の裏面10aに必要な処理を施して半導体素子を形成する。具体的には、フォトリソグラフィ工程、イオン注入工程、熱拡散工程、スパッタ等による成膜工程、及びエッチング工程を適宜実施する。また、薄化部26の表面10bに第1の電極27を形成し、裏面10aに第2の電極28を形成する。半導体素子がIGBTである場合、第1の電極27はエミッタ電極であり、第2の電極28はコレクタ電極である。断面図である図7には、薄化部26に形成された6つの半導体素子D1?D6が示されている。 【0016】 ここで、本発明の意義の説明に先立って、比較例について説明する。図8は、比較例の半導体素子の製造方法を示す断面図である。比較例では、ウエハ40の外周部44の側面44aが、主面40aに対して垂直となるようにウエハ40の研削が進められる。すなわち、外周部44の側面44aとウエハの主面40aとのなす角が90°となっている。この場合、研削屑29が側面44aと研削砥石24に挟まれて、側面44aにチッピングが生じる。研削後には、本発明の実施の形態と同様の工程で半導体素子が形成される。 【0017】 図9は、比較例の方法で研削及びその後の処理が実施されたウエハを示す断面図である。図10は、図9の平面図である。側面44aには複数のチッピング50が見られる。よってウエハのハンドリングの際に、チッピング50を起点としてウエハ40が割れるおそれがある。また薄化部42にはしみ52が見られる。しみ52は、ウエハ研削後のウェット処理や写真製版処理で用いる薬液、フォトレジスト、現像液などがチッピング内に残留し、スピン乾燥でも除去できず薄化部42に付着することで生じる。しみ52を有する薄化部42に電極を形成すると、しみ52が抵抗層となり半導体素子の特性が変動するおそれがある。 【0018】 ところが本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法によれば、チッピングの発生を抑制しつつウエハの中央部を研削できる。つまり、既に形成された斜面25と研削砥石24の間に間隙を設けた状態で斜面25の形成を進めるので、研削屑は当該間隙を通って外部に排出される。よって、チッピングの発生を抑制できる。 【0019】 また、ウエハの研削は、ウエハの主面とのなす角が75°以上90°未満となる斜面25を形成しながら進められる。斜面25があるため、研削砥石の回転運動によって弾き飛ばされた研削屑29が前述の間隙を通って外部に排出されやすくなる。また、本発明の実施の形態では、斜面25と接するのは、主として研削砥石24の角部24aである。よって、本発明の実施の形態によれば、比較例のように側面44aと研削砥石24が面接触する場合と比較して、容易に研削屑29を外部に排出できる。 【0020】 ここで、ウエハ10の主面に対し75°以上90°未満の角度をなすように斜面25を形成することの意義を説明する。図11は、チッピングの数、しみの数、及び薄化部の厚みばらつきのθ(ウエハの主面と斜面のなす角)依存性を示すグラフである。このグラフは、薄化部が50μmとなるように研削したウエハをサンプルとして作成したものである。チッピングの数、及びしみの数は、θが90°になると急上昇する。これは、θが90°であると、比較例のように研削屑の外部への排出が困難になることが原因と考えられる。本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法では、θは90°未満であるので斜面25に沿って研削屑29を外部に排出し、チッピングの数、及びしみの数を抑制できる。 【0021】 例えばIGBTやMOSFETなどの半導体素子では薄化部の厚み方向に電流を流すため、薄化部の厚みがばらつくと半導体素子の特性もばらつく。よって、薄化部の厚みばらつきはできるだけ低減することが好ましい。図11を参照すると、薄化部の厚みばらつきはθが75°未満となると上昇することが分かる。本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法ではθは75°以上とするので、薄化部の厚みばらつきを低減できる。ところで、θが75°未満となる斜面を形成するためには、研削砥石のウエハ主面平行方向の移動量を増加させなければならない。そのため、研削砥石とウエハ主面の平行度が悪化し、薄化部の厚みばらつきが上昇すると考えられる。 【0022】 本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法は、本発明の特徴を失わない範囲において様々な変形が可能である。 【符号の説明】 【0023】 10 ウエハ、 20 ステージ、 22 研削ホイール、 24 研削砥石、 24a 角部、 24b 底面、 25 斜面、 26 薄化部、 29 研削屑、 30 中央部、 32 外周部、 50 チッピング、 52 しみ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 回転させた研削砥石により、ウエハ外周部の内側に沿って前記ウエハの主面とのなす角が75°以上85°以下の斜面を、既に形成された斜面と前記研削砥石の間に間隙を設けた状態で形成しつつ、前記斜面に囲まれた部分に前記外周部よりも薄い薄化部を形成するウエハ研削工程と、 前記薄化部に半導体素子を形成する工程と、 を備えたことを特徴とする半導体素子の製造方法。 【請求項2】 前記半導体素子を形成する工程は、フォトリソグラフィ工程、イオン注入工程、熱拡散工程、成膜工程、又はエッチング工程を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。 【請求項3】 前記半導体素子を形成する工程では、前記薄化部の表面に第1の電極を形成し、前記薄化部の裏面に第2の電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-11-18 |
出願番号 | 特願2011-184441(P2011-184441) |
審決分類 |
P
1
651・
841-
YAA
(H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L) P 1 651・ 853- YAA (H01L) P 1 651・ 538- YAA (H01L) P 1 651・ 537- YAA (H01L) P 1 651・ 851- YAA (H01L) P 1 651・ 854- YAA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 内田 正和 |
特許庁審判長 |
平岩 正一 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 刈間 宏信 |
登録日 | 2015-08-28 |
登録番号 | 特許第5796412号(P5796412) |
権利者 | 三菱電機株式会社 |
発明の名称 | 半導体素子の製造方法 |
復代理人 | 桑野 敦司 |
復代理人 | 桑野 敦司 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高田 守 |