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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1323513
異議申立番号 異議2016-700986  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-13 
確定日 2016-12-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第5902030号発明「低温結合方法および結合構成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5902030号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5902030号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし25に係る特許についての手続の経緯は,以下のとおりである。
平成24年 5月 8日 特許出願
(2001年(平成13年)2月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2000年2月16日,米国)を国際出願日とする出願2001-560438号(以下「原出願」という。)の一部を,平成24年5月8日に新たな特許出願(特願2012-107053号)とした。)
平成28年 1月29日 特許査定
平成28年 3月18日 特許の設定登録
平成28年10月13日 特許異議の申立て(特許異議申立人 家田亘久)


第2 特許異議の申立てについて

1 本件特許発明
本件の請求項1ないし25の各請求項(以下,請求項1ないし25を「本件請求項1」ないし「本件請求項25」という。)に係る発明(以下,各請求項に係る発明を,請求項1ないし25の区分に応じて,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明25」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
結合面を研磨することにより,0.1から3.0nmの範囲の面粗さをそれぞれ有する第1,第2の結合面を形成すること,
前記面粗さを維持しながら,前記第1,第2の結合面を活性化するために前記結合面の研磨後に前記第1,第2の結合面をエッチングすることによって,前記第1,第2の結合面から材料を除去すること,および
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも500mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む結合方法。
【請求項2】
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも1000mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも2000mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1,第2の結合面を活性化すること,および
前記第1,第2の結合面に選択的な結合基を形成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
結合副産物を,結合工程中に吸収されるかまたは前記結合面から隔てて拡散させることが可能な化学種への転換を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
プラズマRIE法を用いて前記第1,第2の結合面をエッチングすること,
欠陥を有する表面下層を形成すること,および前記表面下層を用いて結合副産物を除去することを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の結合面を面に形成されたデバイスを有する第1の半導体ウェハの面として形成すること,および
前記第2の結合面を面に形成されたデバイスを有する第2の半導体ウェハの面として形成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1,第2のウェハのいずれかの部分を除去することを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1,第2のウェハのデバイスを相互に接続することを含む請求項7記載の方法。
【請求項10】
第1の絶縁層を電気デバイスを含む第1のウェハ上に形成すること,
前記第1の絶縁層を研磨して前記第1の結合面を形成すること,
第2の絶縁層を電気デバイスを含む第2のウェハ上に形成すること,および
第2の酸化物層を研磨して前記第2の結合面を形成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
第1の絶縁層を電気デバイスを含みかつ不規則な幾何学面を有する第1のウェハ上に形成すること,
前記第1の絶縁層を研磨して前記第1の結合面を形成すること,
第2の絶縁層を電気デバイスを含みかつ不規則な幾何学面を有する第2のウェハ上に形成すること,および
第2の酸化物層を研磨して前記第2の結合面を形成することを含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
結合面を研磨することにより,第1,第2の結合面を形成すること,
前記第1,第2の結合面を活性化するために,前記結合面の研磨後に前記第1,第2の結合面をエッチングすること,
室温で化学結合の形成をなすように化学種で前記第1,第2の結合面を停止すること,および前記第1,第2の結合面を室温で結合することを含む結合方法。
【請求項13】
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも500mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも1000mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも2000mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む請求項12記載の方法。
【請求項16】
結合工程の前に前記第1,第2の結合面を活性化することを含む請求項12記載の方法。
【請求項17】
結合副産物を,前記結合工程中に吸収されるか,または前記結合面から隔てて拡散させることが可能な化学種への転換を含む請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記第1の結合面を面に形成されたデバイスを有する第1の半導体ウェハの面として形成すること,および
前記第2の結合面を面に形成されたデバイスを有する第2の半導体ウェハの面として形成することを含む請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記第1,第2のウェハのいずれかは,基板を備え,前記方法は前記第1,第2のウェハのいずれかの部分を除去することを含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記第1,第2のウェハ中のデバイスを相互に接続することを含む請求項18記載の方法。
【請求項21】
第1の絶縁層を電気デバイスを含む第1のウェハ上に形成すること,
前記第1の絶縁層を研磨して前記第1の結合面を形成すること,
第2の絶縁層を電気デバイスを含む第2のウェハ上に形成すること,および
第2の酸化物層を研磨して前記第2の結合面を形成することを含む請求項12記載の方法。
【請求項22】
第1の絶縁層を電気デバイスを含みかつ不規則な幾何学面を有する第1のウェハ上に形成すること,
前記第1の絶縁層を研磨して前記第1の結合面を形成すること,
第2の絶縁層を電気デバイスを含みかつ不規則な幾何学面を有する第2のウェハ上に形成すること,および
第2の酸化物層を研磨して前記第2の結合面を形成することを含む請求項12記載の方法。
【請求項23】
除去工程後に結合基板をアニールすることを含む請求項8記載の方法。
【請求項24】
除去工程後に前記第1,第2の半導体ウェハ中のデバイスを相互に接続することを含む請求項8記載の方法。
【請求項25】
除去工程後に結合基板をアニールすることを含む請求項19記載の方法。」

2 特許異議申立理由の概要
本件請求項1ないし25の各請求項に係る特許に対して,特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は,以下のとおりである。
(1)異議理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件特許の請求項1ないし3の各請求項に係る発明は,いずれも,原出願の優先権主張の日(以下「原出願の優先日」という。)前,日本国内及び外国において頒布された刊行物である,Effect of Surface Roughness on Room-Temperature Wafer Bounding/JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS Vol.37(1998)pp4197-4203(甲第1号証)に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(2)異議理由2(特許法第29条第2項)
ア 本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証記載の発明において,原出願の優先日前,日本国内において頒布された刊行物である,特開平10-92702号公報(甲第3号証)記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,また,本件特許の請求項2ないし11の各請求項に係る発明は,いずれも,甲第1号証記載の発明において,甲第3号証記載の発明,並びに原出願の優先日前,日本国内において頒布された刊行物である,日経マイクロデバイス1988年3月号,No33 85頁-91頁(甲第4号証),応用物理第60巻,第8号 1991年(甲第5号証),特開平8-45699号公報(甲第6号証)及び特開平8-213548号公報(甲第7号証)にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。
イ 本件特許の請求項12に係る発明は,甲第1号証記載の発明において,原出願の優先日前,日本国内において頒布された刊行物である,特開平9-82588号公報(甲第8号証)記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,また,本件特許の請求項13ないし25の各請求項に係る発明は,いずれも,甲第1号証記載の発明において,甲第8号証記載の発明,並びに甲第3号証ないし第5号証,及び甲第7号証にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(3)異議理由3(特許法第36条第4項第1号)
本件特許明細書の段落【0080】から【0094】には,結合強度が観察された旨が記載されているが,結合強度を達成するための具体的な条件は開示も示唆もされておらず,周知でもないから,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,本件特許の請求項1ないし3,及び請求項13ないし15の各請求項に係る発明について,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。

(4)異議理由4(特許法第36条第6項第2号)
ア 本件特許の請求項5及び17にそれぞれ記載された「結合副産物」がどのような物質であるかが,本件特許明細書の記載を参酌しても不明瞭であり,そのため,「結合副産物を,結合工程中に吸収されるかまたは前記結合面から隔てて拡散させることが可能な化学種への転換」することが,どのような処理を含み,どのような処理を含まないのかが不明瞭であるから,上記各請求項は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって,上記の各請求項に係る特許は取り消すべきものである。
イ 本件特許の請求項6の記載からは,「欠陥を有する表面下層を形成」し,かつ「前記表面下層を用いて結合副産物を除去する」処理の内容が,本件特許明細書の記載を参酌しても不明瞭であり,また,「プラズマRIE法を用いて前記第1,第2の結合面をエッチングすること」をいつ実行するか,及びプラズマRIE法で,表面下層を用いて結合副産物を除去できるのかが不明瞭であるから,上記請求項は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって,上記の請求項に係る特許は取り消すべきものである。

3 甲号証の記載について
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載(4197頁左欄1行ないし右欄15行(1.Introduction),4197頁右欄16行ないし4198左欄9行(2.Experimentalの2.1Bonding Procedure),4199頁Fig.4及びFig.5,並びに4202頁Table2)より,甲第1号証には,下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「両面研磨した2枚のSiウェハーを加熱炉で酸化し,そのうちの1枚のウェハーに,メサ状の構造を,フォトリソグラフィと化学溶液によるエッチングにより形成し,2枚のウェハーのSiO_(2)膜を除去して洗浄し,
これらのウェハーの表面を,真空でArビームによりエッチングして,ウェハー表面の粗さ(Rrm)を0.3ないし0.6nmとし,
2枚のウェハーを常温で結合して,11MPa以上の結合強度を得ることを含む方法。」

(2)甲第2号証
甲第2号証の62頁Figure7及びFigure8には,ウェハー結合の強度を表す,破壊応力(MPa)と有効表面エネルギー(J/m^(2))との関係が示されており,両者の関係より,11MPaは2000mJ/m^(2)に略等しいと認められる。

(3)甲第3号証
甲第3号証の記載(特許請求の範囲の請求項1,【0009】及び図4)より,甲第3号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「両方のシリコンウェハーの接合面を接合に先立って,室温の真空中で不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス高速原子ビームで照射してスパッタエッチングするシリコンウェハーの常温接合法であって,接合した面の引っ張り強度が,11MPa以上となるシリコンウェハーの常温接合法。」

(4)甲第4号証
甲第4号証の記載(87頁左欄14行ないし19行,同頁左欄23行ないし27行,及び同頁左欄37行ないし右欄2行)より,甲第4号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「鏡面研磨したSiウエーハの表面をH_(2)O_(2)-H_(2)SO_(4)溶液中で洗浄し,次にウエーハの表面に親水性を持たせ,室温の清浄な雰囲気で接触させ,ウエーハ表面に着いたOH基による水素結合により,2枚のSiウエーハ同士を直接接合すること。」

(5)甲第5号証
甲第5号証の記載(790頁左欄14行ないし19行,及び同頁右欄5行ないし8行)より,甲第5号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「ウエハーを洗浄し,乾燥させた後,2枚のウエハーを室温大気中で鏡面同士を接触させると,洗浄活性化によりウェハー表面に形成されたOH基同士が,水素結合を起こし密着すること。」

(6)甲第6号証
甲第6号証の記載(【0002】)より,甲第6号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「処理室内に被処理体を配置した状態で所定のプラズマを発生させ,イオンや電子の作用によって被処理体にエッチングを施す,プラズマRIEを用いてエッチングをすること。」

(7)甲第7号証
甲第7号証の記載(特許請求の範囲の請求項1,及び【0011】ないし【0022】)より,甲第7号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「同時に多くの独立した部品および回路を持つ1つあるいは複数のプロセス化の完了した部品3を有する第1の面を第1の側に含む第1の部品基層1を準備し,その際に複数の部品面の部品および回路が堆積部品を形成する第1のステップと;
機能能力がある部品,堆積部品および回路を第2の部品基層7の第2の側に有しこの第2の側に補助基層13が接合されている複数のチップを準備する第2のステップと;
この第2のステップにおいて準備された機能能力がある部品,部品堆積および回路を有する前記チップを前記第1の部品基層1の第1の側に並べてはりつける第3のステップと;
この第3のステップにおいて前記第1の部品基層1にはりつけられた前記チップから前記補助基層13を除去する第4のステップと;
前記第3のステップにおいて前記第1の部品基層1にはりつけられた前記チップの部品,堆積部品あるいは回路と,前記第1の部品基層1の部品,堆積部品あるいは回路との間の電気的接続部材を作る第5のステップと
を有する3次元集積回路の製造方法。」

(8)甲第8号証
甲第8号証の記載(特許請求の範囲の請求項1ないし5)より,甲第8号証には,下記の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも一方の材料の少なくとも表面が窒化物で覆われた第1材料の表面と,他の第2材料の表面とを接合する方法において,前記第1材料及び前記第2材料の表面を溶剤を用いて化学的に,又は高エネルギービームを用いて物理的に清浄し,その後に,希フッ酸による化学エッチングにより,前記第1材料の前記表面において窒素原子が水素原子で終端された状態を形成し,その後に,前記第1材料の前記表面と前記第2材料の前記表面とを密着する窒化物の直接接合方法。」

4 特許異議申立理由の検討
(1)異議理由1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると,上記3(2)より,11MPaは2000mJ/m^(2)に略等しいと認められるから,両者の一致点及び相違点は,それぞれ,以下のとおりと認められる。
(ア)一致点
「第1,第2の結合面を形成すること,
前記第1,第2の結合面をエッチングすることによって,前記第1,第2の結合面から材料を除去すること,および
前記第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも500mJ/m^(2)の結合強度を得ることを含む結合方法。」
(イ)相違点
本件特許発明1は,「結合面を研磨することにより,0.1から3.0nmの範囲の面粗さをそれぞれ有する第1,第2の結合面を形成」し,「前記面粗さを維持しながら,前記第1,第2の結合面を活性化するために前記結合面の研磨後に前記第1,第2の結合面をエッチングすることによって,前記第1,第2の結合面から材料を除去する」のに対し,甲1発明は,両面研磨した2枚のSiウェハーの1枚に,メサ状の構造を形成し,これらのウェハーの表面を,真空でArビームによりエッチングして,ウェハー表面の粗さ(Rrm)を0.3ないし0.6nmとする点。
そうすると,本件特許発明1は,甲1発明と同一とはいえない。
そして,本件特許発明1の構成を備える本件特許発明2及び3も,甲1発明と同一とはいえない。
以上より,本件特許発明1ないし3は,いずれも,甲第1号証記載の発明とは認められず,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当しない。
イ 小括
したがって,異議理由1に理由はない。

(2)異議理由2について
ア 本件特許発明1ないし11について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると,両者の一致点及び相違点は,それぞれ,上記(1)アの(ア)及び(イ)のとおりである。
(イ)判断
上記3(3)のとおり,甲第3号証には,「両方のシリコンウェハーの接合面を接合に先立って,室温の真空中で不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス高速原子ビームで照射してスパッタエッチングするシリコンウェハーの常温接合法であって,接合した面の引っ張り強度が,11MPa以上となるシリコンウェハーの常温接合法。」が記載されているとは認められるが,本件特許発明1における,「結合面を研磨することにより,0.1から3.0nmの範囲の面粗さをそれぞれ有する第1,第2の結合面を形成」し,「前記面粗さを維持しながら,前記第1,第2の結合面を活性化するために前記結合面の研磨後に前記第1,第2の結合面をエッチングすることによって,前記第1,第2の結合面から材料を除去する」との構成について,記載又は示唆されているとは認められない。
そうすると,甲1発明において,本件特許発明1との相違点に係る構成とすることを,甲第3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たということはできない。
以上より,本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第3号証にそれぞれ記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえず,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものとは認められない。
そして,同様の理由により,本件特許発明1の構成を備える本件特許発明2ないし11も,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものとは認められない。
イ 本件特許発明12ないし25について
(ア)対比
本件特許発明12と甲1発明とを対比すると,両者の一致点及び相違点は,それぞれ,以下のとおりと認められる。
a 一致点
第1,第2の結合面を形成すること,
前記第1,第2の結合面を活性化するために,前記結合面の研磨後に前記第1,第2の結合面をエッチングすること,
前記第1,第2の結合面を室温で結合することを含む結合方法。
b 相違点
・相違点1
本件特許発明12は,「結合面を研磨することにより,第1,第2の結合面を形成する」のに対し,甲1発明は,両面研磨した2枚のSiウェハーの1枚に,メサ状の構造を形成する点。
・相違点2
本件特許発明12は, 「室温で化学結合の形成をなすように化学種で前記第1,第2の結合面を停止する」のに対し,甲1発明は,このような構成を備えていない点。
(イ)判断
a 相違点1について
甲第1号証には,2枚のウェハーの1枚がメサ状の構造を有していないと,端部近くの切欠や小さな起伏により,結合界面における密接を妨げる旨の記載(4197頁右欄16行?4198頁左欄9行)があるから,甲1発明において,2枚のウェハーの1枚にメサ状の構造を形成しないようにすることには,阻害要因があるというべきである。
そうすると,甲1発明において,2枚のウェハーの1枚にメサ状の構造を形成せず,「結合面を研磨することにより,第1,第2の結合面を形成する」ことは,当業者が容易に想到し得たとはいえない。
b 相違点2について
上記3(8)のとおり,甲第8号証には,「少なくとも一方の材料の少なくとも表面が窒化物で覆われた第1材料の表面と,他の第2材料の表面とを接合する方法において,前記第1材料及び前記第2材料の表面を溶剤を用いて化学的に,又は高エネルギービームを用いて物理的に清浄し,その後に,希フッ酸による化学エッチングにより,前記第1材料の前記表面において窒素原子が水素原子で終端された状態を形成し,その後に,前記第1材料の前記表面と前記第2材料の前記表面とを密着する窒化物の直接接合方法。」が記載されていると認められる。
他方,甲1発明は,2枚のSiウェハーであって1枚にメサ状の構造が形成されたウェハーを常温で結合するもので,窒化物で覆われた第1材料の表面と他の第2材料の表面との接合方法に関する甲第8号証に記載の発明とは,その前提において異なるといわざるを得ない。
そうすると,甲1発明に前提の異なる甲8に記載の発明を適用することに,動機付けがあるとはいえないから,甲1発明において,相違点2に係る構成とすることを,甲第8号証に記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たとは認められない。
c まとめ
以上より,本件特許発明12は,甲第1号証及び甲第8号証にそれぞれ記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえず,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものとは認められない。
そして,同様の理由により,本件特許発明12の構成を備える本件特許発明13ないし25も,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものとは認められない。
ウ 小括
上記ア及びイより,異議理由2に理由はない。

(3)異議理由3について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許に係る発明の実施例として,3インチ,1?10Ω-cm,ボロンドープシリコンウェハの上に,PECVD酸化物が堆積され,軽い研磨が,上記酸化物の約30nmを除去し,かつ初期に?0.56nmのマイクロ粗さ二乗平均値(RMS)を有する酸化物面を最終?0.18nmに平滑にするためになされ(【0080】),2つのウェハが,プラズマシステムに装入され,両ウェハはRF電極上に置かれ,酸素プラズマは,16scc/mの公称流量を用い,RF電力は,13,56MHzにて20?400W(典型的に80W)で,かつ真空レベルは100mTorrとして,上記酸化物被覆ウェハは,15秒?5分の間の時間で,RIEモードのプラズマ中で処理され,プラズマ処理されたシリコンウェハは,適切な溶液に浸漬され,スピン乾燥,室温,空気中の結合がなされた(【0081】)ことが記載されていると認められる。
そして,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,上記の方法で結合されたシリコンウェハの結合エネルギーを,楔を界面に挿入することによって測定した(【0082】ないし【0084】)ところ,浸漬され,結合されたRIEプラズマ処理酸化物ウェハに対して,室温結合エネルギーは,結合されたプラズマ処理酸化物被覆シリコンウェハの貯蔵時間に伴って増加し,かつ空気または低真空で?20時間後に安定値に達し,RIEプラズマ処理後にNH_(4)OH浸漬した場合には,1000mJ/m^(2)を超える室温結合エネルギーが観察され(【0084】,図6A),また,SiとPECVD酸化物堆積層を持つAlNとの室温結合では,約100時間の貯蔵時間後,2000mJ/m^(2)を超える結合エネルギーが観察された(【0085】,図6B)ことが記載されていると認められる。
そうすると,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,第1,第2の結合面を室温にて直接結合し,室温にて,少なくとも500mJ/m^(2),又は少なくとも1000mJ/m^(2)の結合強度を得る結合方法について,当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。
そして,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,第1,第2の結合面を室温にて直接結合する際に,室温にて,少なくとも2000mJ/m^(2)の結合強度を得ることができる旨,記載されていると認められ,その結合方法は,室温にて,少なくとも500mJ/m^(2),又は少なくとも1000mJ/m^(2)の結合強度を得る結合方法に関する記載に接した当業者が,期待される程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とすることなく,実施し得ると認められる。
以上より,本件特許明細書の発明の詳細な説明は,結合強度が特定された,本件特許発明1ないし3,及び本件特許発明13ないし15について,当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されていると認められ,特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するということができる。
したがって,異議理由3に理由はない。

(4)異議理由4について
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件特許発明5,6及び17における「結合副産物」及び「結合副産物」の除去について,以下の記載がある。(当審注.下線は,当審で付した。)
(ア)「【0055】
例えば図2に示すように,PECVDSiO_(2)はデバイスを含むSiウェハに堆積される。プラズマ(アルゴン,酸素またはCF_(4)のような)処理後の面34は,プラズマシステム中および空気中の湿気の効力のためにSi-OH基によって主に停止される。プラズマ処理の後,前記ウェハは10?20分間のような期間,水酸化アンモニア(NH_(4)OH),NH_(4)FまたはHFのような溶液に直ぐに浸漬される。NH_(4)OHに前記ウェハを浸漬後,多くのSi-OH基は次の置換反応によりSi-NH_(2)基によって置き換えられる。
【0056】
2Si-OH+NH_(4)OH→2Si-NH_(2)+4HOH (1)
択一的に,多くのSi-F基はNH_(4)OHまたはHF浸漬後にPVCVDSiO_(2)面で停止している。
【0057】
結合面を横切る水素結合されたSi-NH_(2);Si-OH基またはSi-NH_(2);Si-NH_(2)基は,Si-O-SiまたはSi-N-N-Si(またはSi-N-Si)共有結合の形態で室温にて高分子化できる。
【0058】
Si-NH_(2)+Si-OH→Si-O-Si+NH_(3) (2)
Si-NH_(2)+SiNH_(2)→Si-N-N-Si+2H_(2) (3)
(当審注:「SiNH_(2)」は,「Si-NH_(2)」の誤記と認める。)
択一的に,酸化物面に堆積された前記HFまたはNH_(4)FはSi-OH基の他にSi-F基によって停止される。HFまたはNH_(4)F溶液は,シリコン酸化物を激しくエッチングするので,それらの濃度は適切な低レベルに制御されなければならず,かつ浸漬時間は十分に短くしなければならない。これは,後VSEプロセスが第2のVSEプロセスの例である。前記結合界面をわたる共有結合は,水素結合されたSi-HFまたはSi-OHの基間の高分子化反応によりに形成される。
【0059】
Si-HF+Si-HF→Si-F-F-Si+H_(2) (4)
Si-F+Si-OH→Si-O-Si+HF (5)
図8は,室温結合前の0.05%HFに浸漬されたシリコンウェハを覆う結合熱酸化物のフッ素濃度プロファイルを示す。フッ素濃度ピークは,結合界面に明らかに見られる。これは,所望の化学種が結合界面に位置されている前述した化学プロセスの証拠を提供する。
【0060】
反応(2)は,比較的高い?500℃でのみ可逆的であるので,前記形成されたシロキサン結合は室温でNH_(3)によって作用されることはない。H_(2)分子は小さくかつ酸化物中で水分子に比べて約50倍早く拡散することが知られている。適切な厚さ,すなわち数nmの面近傍における損傷層の存在は,拡散または反応(2),(3),(4)および/または(5)のNH_(3),HFおよび水素の溶解,および化学結合の増強を促進する。前記3つの反応は,NH_(3)またはH_(2)を遠くへ拡散させるような貯蔵時間の期間後に室温でSiO_(2)/SiO_(2)結合対の高い結合エネルギーをもたらす。
【0061】
図2の例において,前記プラズマ処理は前記結合面近傍の前記酸化物層に損傷または欠陥の領域を創るかもしれない。その領域は,僅かな単一層に広がる。損傷または欠陥の領域は,結合副産物の除去を助長する。前記副産物は,高強度結合の形成を妨げるように結合プロセスと干渉するので,前記結合副産物の効率的な除去は,結合強度を改良する。」
(イ)「【0069】
・・・
図5の(A)?(E)は,2つのシリコンウェハの結合を示す。ウェハ50,52は,それぞれVSEプロセスに委ねられた自然酸化物(図示せず)を持つ面51,53を有する。図5の(C)で示される面53は,所望の化学種54で停止されている。前記2つのウェハは,接合され,結合55が形成し始める(図5の(D))。この結合は伝達し,かつ結合副産物,この場合H_(2)ガス,は除去される。除去された前記副産物は図5の(E)に矢印で示される。」
(ウ)「【0079】
低温または室温で増加された結合エネルギーを左右する機構はいずれも似ている。プラズマによる結合ウェハの非常に僅かなエッチング(VSE)は前記面を洗浄し,活性化し,かつ望ましくない可逆反応を防ぐために高分子化界面の副産物の除去を改善し,室温で共有結合を促進する所望の化学種で面を停止するために適切な液でリンスする。前記酸化物被覆ウェハである場合,異なる面停止を除いて同様に好ましい。ベアウェハ結合において,水吸収をなし,かつ水素に転換するために酸化物の非常に高い反応面およびシリコンは,形成されるべきである。非常に高い反応層は,プラズマ薄膜酸化物層および損傷シリコン面層でできる。前記シリコンウェハ上の前記酸化物は幾つかの損傷を有してもよい。O_(2)プラズマのみならず他のガスプラズマ(Ar,CF_(4)のような)は適切である。VSE中および後にシリコンウェハは湿気と直ぐに反応し,酸化物層を形成するので,下方の損傷シリコン層がVSEによって創られる。前記VSEおよび副産物除去方法は,事実上,むしろ一般であるので,このアプローチは多くの手段および多くの材料の適用によって履行できる。」
イ 本件請求項5,6及び17の明確性についての検討
本件請求項5,6及び17の記載からは,当該各請求項における「結合副産物」の内容について一義的に理解することは困難であり,その結果,本件請求項5及び17にそれぞれ記載の「結合副産物を,結合工程中に吸収されるかまたは前記結合面から隔てて拡散させることが可能な化学種への転換」の意味内容,及び本件請求項6に記載の「欠陥を有する表面下層を形成すること,および前記表面下層を用いて結合副産物を除去すること」の意味内容についても,一義的に理解することは困難である。
そこで,本件特許明細書の記載を参酌すると,上記ア(ア)及び(イ)より,結合面を横切るSi-NH_(2)基とSi-OH基間の高分子化反応,Si-NH_(2)基とSi-NH_(2)基間の高分子化反応,Si-HF基間び高分子化反応,又はSi-OHの基間の高分子化反応によって,結合面をわたる共有結合が形成される際に生成されるNH_(3),HF及び水素が,本件請求項5,6及び17にそれぞれ記載の「結合副産物」と認められる。
そして,上記ア(ア)及び(ウ)の本件特許明細書の記載より,僅かなエッチング(VSE)におけるプラズマ処理によって,結合面近傍の酸化物層に創られる損傷又は欠陥の領域が,結合副産物の拡散又は溶解を促進し,結合副産物の除去を助長すると認められる。
そうすると,本件請求項5及び17にそれぞれ記載の「結合副産物を,結合工程中に吸収されるかまたは前記結合面から隔てて拡散させることが可能な化学種への転換」は,本件特許明細書の記載を参酌すれば,高分子化反応によって結合面をわたる共有結合が形成される際に,結合副産物が,NH_(3),HF及び水素といった,結合面近傍の酸化物層に創られる損傷又は欠陥の領域で拡散又は溶解される化学種で生成されることを特定したものと理解することができる。
また,本件請求項6に記載の「欠陥を有する表面下層を形成すること,および前記表面下層を用いて結合副産物を除去すること」も,本件特許明細書の記載を参酌すれば,僅かなエッチング(VSE)におけるプラズマ処理によって,すなわち,「プラズマRIE法を用いて前記第1,第2の結合面をエッチングすること」によって,結合面近傍の酸化物層に創られる損傷又は欠陥の領域に,NH_(3),HF及び水素といった結合副産物を拡散又は溶解させて,結合副産物を除去することを特定したものと理解することができる。
以上から,本件請求項5,6及び17には,当該各請求項に係る発明の構成が明確に記載されていると認められ,いずれも,特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するといえる。
ウ 小括
したがって,異議理由4に理由はない。

(5)小括
上記(1)ないし(4)より,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし25の各請求項に係る特許を,異議理由1ないし4によって取り消すことはできない。


第4 結言

以上のとおりであるから,本件特許の請求項1ないし25の各請求項に係る特許は,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,取り消すことができない。
また,他に,本件特許の上記各請求項に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-12-14 
出願番号 特願2012-107053(P2012-107053)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H01L)
P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 536- Y (H01L)
P 1 651・ 537- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 弘亘大嶋 洋一  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
河口 雅英
登録日 2016-03-18 
登録番号 特許第5902030号(P5902030)
権利者 ジプトロニクス・インコーポレイテッド
発明の名称 低温結合方法および結合構成物  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 白根 俊郎  
代理人 福原 淑弘  
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