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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01T
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01T
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01T
管理番号 1323525
異議申立番号 異議2016-700857  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-13 
確定日 2016-12-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第5887785号発明「点火プラグ及び点火装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5887785号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5887785号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成23年9月17日に特許出願され、平成28年2月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第5887785号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火する点火プラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極の電位となる第一電極と、
前記第一電極の突出方向にて当該第一電極と対向する電極本体部、及び前記電極本体部から前記第一電極に向かって柱状に突出することにより当該第一電極との間にて前記火花放電を生じさせる放電ギャップを形成する電極突起部を、有し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極の電位となる第二電極とを、備え、
前記電極突起部は、白金又は白金合金によって形成されており、
前記電極突起部の横断面積Sと、前記電極本体部からの前記電極突起部の突出量Lとが下記式1を満たし、
0.2平方ミリメートル以上、且つ、1.0平方ミリメートル以下である前記電極突起部の横断面積Sに対して、前記電極突起部の突出量Lは、下記式2を満たし、さらに0.4ミリメートル以上、且つ、1.0ミリメートル以下に規定されることを特徴とする点火プラグ。
(式1) L(mm)≧S(mm^(2))×A+B
(式2) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.24
【請求項2】
前記電極突起部において、前記横断面積Sと前記突出量Lとが下記式3をさらに満たすことを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
(式3) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.44
【請求項3】
前記電極突起部において、前記第一電極と対向する対向頂面は、円滑な平面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の点火プラグ。
【請求項4】
前記電極突起部は、前記電極本体部から円柱状に突出することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の点火プラグ。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の点火プラグと、
前記点火プラグの前記第一電極をプラス極の電位とし、前記第二電極をマイナス極の電位とするプラス放電電圧を印加することにより、当該点火プラグの前記放電ギャップに前記火花放電を生じさせる前記電圧印加手段とを、
備えることを特徴とする点火装置。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第3号証(以下、「刊行物1」ないし「刊行物3」という。)を提出し、以下のとおり、本件発明1ないし本件発明5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)新規性進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)刊行物1に記載された発明または刊行物2に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
(イ)刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反する。

イ 本件発明2について
(ア)刊行物1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
(イ)刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反する。

ウ 本件発明3ないし本件発明5について
(ア)刊行物1に記載された発明または刊行物2に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当する。
(イ)刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反する。

(2)記載不備について
請求項1ないし4の記載は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

甲第1号証:特開平5-335066号公報
甲第2号証:特開平5-275157号公報
甲第3号証:特開2006-120649号公報

4 刊行物
(1)刊行物1
刊行物1には、図面(特に【図1】及び【図4】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【請求項1】 絶縁碍子と該絶縁碍子に保持した中心電極と,上記絶縁碍子の外周に固定したハウジングと,該ハウジングに設けられ上記中心電極と対向させた接地電極とよりなり,かつ上記中心電極或いは接地電極の少なくとも一方の電極材料の先端には,該電極材料を延設した突出部と,該突出部の先端に固着した貴金属チップとからなる細径部を設けてなり,上記電極材料はNi基耐熱合金であり,上記貴金属チップはPt(白金)90?100%(重量比,以下同じ)とIr(イリジウム)0?10%とからなるPt─Ir合金,または前記Pt─Ir合金99.99?98%にジルコニア,もしくはイットリアを0.01?2%分散させた合金よりなり,上記細径部の直径Dは0.6?1.2mm,上記貴金属チップの厚さtを含む上記細径部の長さLは0.8?1.5mmであり,かつ上記厚さt,直径D,及び長さLは次の関係にあることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
0.6mm≦D<0.8mmのとき;0.4L≦t≦0.8mm
0.8mm≦D<1.0mmのとき;0.3L≦t≦0.8mm
1.0mm≦D≦1.2mmのとき;0.2L≦t≦0.8mm」

イ「【0014】また,本発明において,上記貴金属チップを含む細径部の長さLは0.8?1.5mmである。Lが0.8mm未満では,放電電圧の低減効果がみられない。一方,Lが1.5mmを越える場合には,中心電極への熱引きが悪化するため,突出部の熱負荷が増大する。それ故,突出部は,エンジン運転時に非常に厳しい温度環境に晒されることになり,使用可能期間が短くなる。なお,好ましくは,Lは0.9?1.3mmである。
【0015】上記細径部の直径Dは0.6?1.2mmである。Dが0.6mm未満では,誘導放電時に火花放電が陰極放電面で拡がるため,細径部の突出部が火花消耗を起こしてしまう。ひいては,貴金属チップが剥離脱落するおそれがある。一方,Dが1.2mmを越える場合,放電電圧の低減効果はみられない。
【0016】また,この場合には,貴金属チップに亀裂が発生し易くなる。即ち,加熱時において,線膨張係数の小さい貴金属チップは,線膨張係数の大きい電極材料から引張り応力を受ける。この応力は,貴金属チップと突出部との接触面積が大きい程,増加する傾向にある。そのため,細径部の直径Dが1.2mmよりも大きいと,突出部から貴金属チップへの応力の増加のため,貴金属チップに亀裂が非常に生じやすくなる。なお,好ましくは,Dは0.7?1.1mmである。
【0017】また,細径部の直径D,細径部の長さL,及び貴金属チップの厚さtの関係は,Dが0.6mm以上0.8mm未満のとき,0.4L≦t≦0.8mmであり,上記Dが0.8mm以上1.0mm未満のとき,0.3L≦t≦0.8mmであり,上記Dが1.0mm以上1.2mmを越えるとき,0.2L≦t≦0.8mmである。
【0018】tが0.8mmを越える場合には,電極材料に応力腐食が発生し易くなる(図10参照)。即ち,電極材料は貴金属チップからの前記の冷却時の引張り応力を受けるため,貴金属チップとの接触面付近に膨らみが発生する。この膨らみは,冷熱負荷を繰り返すことにより,益々膨張し,甚だしい場合には,電極材料に亀裂が発生する。一方,tが小さくなると,貴金属チップの強度が低下するため,貴金属チップに亀裂が発生しやすくなり,甚だしい場合には貴金属チップが脱落するおそれがある。」

ウ「【0026】
【実施例】
実施例1
本発明の実施例につき,図1?図3を用いて説明する。本例の内燃機関用スパークプラグ2は,絶縁碍子20と,絶縁碍子20に保持した中心電極4と,絶縁碍子20の外周に固定したハウジング25と,ハウジング25に設けられて,上記中心電極4との間に火花放電用のギャップ5を設けて対向させた接地電極3とよりなる。
【0027】上記中心電極4の先端には,貴金属チップ1と中心電極4の突出部40とからなる細径部41を設けている。中心電極4は陰極である。上記突出部40は,中心電極4を延設することにより形成されている。また,中心電極4及び接地電極3は,Ni基耐熱合金を用いた電極材料により形成されている。また中心電極4の伝熱性を向上させるため,Cu材42が中心電極4内に封入されている。突出部40の先端には,Pt95%-Ir5%合金からなる貴金属チップ1が固着されている。
【0028】また,本例においては,細径部41の直径Dは0.9mm,上記金属チップ1を含む上記細径部41の長さLは1.2mmである。また,上記厚さtは0.4mmである。また,接地電極3の先端には,貴金属チップ19が固着されている。火花放電は,貴金属チップ1,19の間のギャップ5で発生する。」

エ「【0031】実施例3
本例においては,実施例1のように中心電極4の先端に細径部41を設ける代わりに,図4に示すごとく,接地電極3の先端に細径部31を設けている。そして,接地電極3が陰極,中心電極4が陽極である。上記細径部31は,接地電極3を延設した突出部30と,該突出部30の先端に固着した貴金属チップ1とからなる。火花放電は,貴金属チップ1,19の間のギャップ5で発生する。そのほかは,実施例1と同様である。本例においても,実施例1と同様の効果を得ることができる。」

オ 内燃機関用スパークプラグが、内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火することは、当業者に広く知られていると認められる。

カ 細径部31の直径Dは0.9mmなので、細径部31の横断面積Sは約0.64mm^(2)である。

キ 上記ウ、エ及び図4によれば、接地電極3は、突出部30と、接地電極3から突出部30を除いた略L字形の部分とからなることが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容から、本件発明1に則って整理すると、刊行物1には、実施例3に関して、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火する内燃機関用スパークプラグ2であって、
前記燃焼室に突出し、前記電源の印加する前記放電電圧によって陽極の電位となる中心電極4と、
前記中心電極4の突出方向にて当該中心電極4と対向する接地電極3から突出部30を除いた略L字状の部分、及び当該略L字状の部分から前記中心電極4に向かって柱状に突出することにより当該中心電極4との間にて前記火花放電を生じさせるギャップ5を形成する細径部31を、有し、前記電源の印加する前記放電電圧によって陰極の電位となる接地電極3とを、備え、
前記細径部31は、Pt95%-Ir5%合金の貴金属チップ1とNi基耐熱合金の突出部30によって形成されており、
前記細径部31の直径Dは0.9mm、横断面積Sは約0.64mm^(2)、長さLは1.2mmであり、前記貴金属チップ1の厚さtは0.4mmである、内燃機関用スパークプラグ2。」

(2)刊行物2
刊行物2には、図面(特に【図1】、【図2】及び【図5】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0006】
【実施例】図1は、この発明にかかるスパークプラグを示し、先端部11に外側電極(接地電極)2が溶接された筒状主体金具1内に、軸穴31付き絶縁碍子3を嵌め込み、該軸穴31に中心電極4を封着してなる。中心電極4の絶縁碍子3から突出した先端面41と、外側電極2の発火面21との間は、火花放電間隙Gとなっている。
【0007】外側電極2は、耐熱Ni合金製で、矩形断面を有する棒状の母材20を略L字形に曲げて形成され、軸方向の基部22と中心電極方向に曲げられた先端部23とからなる。先端部23の前記中心電極先端面41との対向面が前記発火面21となっており、Pt合金製の円板状貴金属チップ5が溶接されている。
【0008】貴金属チップ5は、中心電極方向に突出した中央部51と、その外周の縁部52とからなり、中央部51の頂面53は周囲の外側電極2の母材の表面24より0.2mm?0.5mm程度中心電極方向に出っ張っており、縁部52は前記表面24と同一面上にあるか、又は前記表面24より0.1mm?0.2mm程度奥に引っ込んでいる。中央部51の先端はエッジEとなっている。外側電極2の材料として、Ni合金製の棒状母材にCuなど良熱伝導製芯を埋設した複合材、前記芯にさらに純Ni製あるいは純Fe製の中芯を埋設した3層合材を用いてもよい。」

イ「【0013】図5(イ)は、外径0.8mm、厚さ0.2mmの円板状貴金属チップ5を、幅2.8mm、厚さ1.0mmの矩形断面を呈する外側電極母材20に溶接し、火花放電間隙Gを1.1mmに設定したスパークプラグにおいて、外側電極母材20中に板状貴金属チップ5を面一的に溶接されたタイプAと、外周面が半分埋設されたタイプBと、この発明にかかるタイプCの火花放電電圧(要求電圧)を、ゲージ圧6Kgf/cm^(2)の加圧室内で測定したグラフである。この測定結果からタイプCの本願発明にかかるスパークプラグは、比較品に比べ、斜線の棒グラフで示す中心電極4がプラス特性(電源特性がプラス極性)において、顕著に要求電圧が低減できることが判る。
【0014】図5(ロ)は、上記タイプBとタイプCの外側電極を用いたスパークプラグを2000cc、6気筒のガソリン機関に装着し、700rpmのアイドリング運転を、空燃比を変えて行ったときにおける、排気中のHCスパイク(失火発生による)の頻度を測定した結果を示す。本発明品であるタイプCは、希薄燃料運転域において、失火の発生回数が少なく、着火性が優れることが証明されている。」

ウ ガソリン機関に装着されたスパークプラグが、ガソリン機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記ガソリン機関に形成される燃焼室内の混合気に点火することは、当業者に広く知られていると認められる。

エ 上記ア、ウ及び図1によれば、貴金属チップSの中央部51が、中心電極4の突出方向にて中心電極4と対向する外側電極2の母材から前記中心電極4に向かって柱状に突出することにより当該中心電極4との間にて火花放電間隙Gを形成することが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容から、本件発明1に則って整理すると、刊行物2には、スパークプラグに関して、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

[甲2発明]
「ガソリン機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記ガソリン機関に形成される燃焼室内の混合気に点火するスパークプラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極性となる中心電極4と、
前記中心電極4の突出方向にて当該中心電極4と対向する外側電極2の母材、及び前記外側電極2の母材から前記中心電極4に向かって柱状に突出することにより当該中心電極4との間にて前記火花放電を生じさせる火花放電隙間Gを形成する貴金属チップ5の中央部51を、有し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極性となる外側電極2とを、備え、
前記中央部51は、Pt合金によって形成されており、
前記中央部51の突出量Lは、0.2mm?0.5mm程度であるスパークプラグ。」

(3)刊行物3の記載
刊行物3には、図面(特に【図13】ないし【図16】及び【図19】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0021】
(参考実施形態1)
図1は、本発明の参考実施形態1に係るスパークプラグの要部構成を示す図である。図1において、10は取付金具であり、本例では、炭素鋼を用いて冷間鍛造や切削加工等を行うことにより筒状に形成されている。図1には、取付金具10の一端部側が示されており、取付金具10の外周面にはエンジンに取り付けるための取付ネジ部11が形成されている。
【0022】
取付金具10の内部には、アルミナ等の電気絶縁材料よりなる絶縁体(絶縁碍子)20を介して中心電極30が収納されており、この中心電極30は、取付金具10に対して電気的に絶縁されて保持されている。本例では、中心電極30はプラグの軸方向(取付金具10の軸方向)に延びる棒状をなし、その先端部は取付金具10の一端部から突出している。
【0023】
中心電極30の先端部は、ニッケル合金等よりなる基部31にイリジウム合金よりなるチップ(中心電極側チップ)32が溶接等により固定された構成となっている。本例では、基部31は、中心電極30の先端部に向かってテーパ状に細くなっており、中心電極側チップ32は、基部31からプラグの軸方向に延びる円柱状をなしている。
【0024】
また、中心電極30における中心電極側チップ32と対向するように、接地電極40が設けられている。本例では、接地電極40は、円柱状のイリジウム合金よりなるチップ(接地電極側チップ)42と、この接地電極側チップ42を保持するニッケル合金等よりなる支持部材41とにより構成されている。
【0025】
ここで、支持部材41は棒状をなし、一端部が取付金具10の一端部に固定されて途中部までが中心電極30の軸方向(プラグの軸方向)に延びるとともに他端部が中心電極30の先端部の端面に覆いかぶさるように途中部から折れ曲がっている。また、接地電極側チップ42は、支持部材41のうち中心電極30の先端部と対向する面にニッケル合金等よりなる台座43を介して溶接等により固定されている。なお、台座43は無くても良い。」

イ「【0078】
(第1実施形態)
図13に本発明の第1実施形態に係るスパークプラグを示し、図14にそのスパークプラグを用いた点火装置の要部構成を示す。
【0079】
本実施形態のスパークプラグは、その形状および材質は上記参考実施形態1のスパークプラグと同じである。但し、本実施形態の接地電極側チップ42は、仕事関数5eV以下の貴金属合金(例えば、イリジウム合金)よりなる。また、本実施形態の点火電源50は、点火放電時において中心電極30に負の電圧が加わるように構成されている。さらに、中心電極側チップ32と接地電極側チップ42は、同軸状に配置されている。
【0080】
本実施形態は、放電ギャップの中間点Pよりも接地電極40に近い側(すなわち、燃焼室の中央に近い側)で火炎核を発生させることにより、火炎核を燃焼室の中央に向かってスムーズに成長させるという着想に基づくもので、それを実現するために、図14に示すように、接地電極側チップ42の先端部に熱電子を放出させて、接地電極側チップ42の先端部表面付近の電界強度(電位の傾き)を大きくして、接地電極側チップ42の先端部表面付近の放電エネルギの分布を密にするものである。
【0081】
図15は、電極の材質の仕事関数と、グロー放電中にアーク放電へ移行する割合との関係を示すもので、アーク放電への移行は電極からの熱電子の放出に基づくものである。アーク放電への移行は、仕事関数5.4eVの白金では現れず、仕事関数5eV以下で現れ、仕事関数4.6eVのイリジウムやニッケルでは多数現れる。
【0082】
このことから、接地電極側チップ42を仕事関数5eV以下の貴金属合金製にすることにより、接地電極側チップ42の先端部に熱電子を放出させて、接地電極側チップ42の先端部表面付近の放電エネルギの分布を局所的に密にすることができる。
【0083】
次に、アイドリングないしは軽負荷運転時のように燃焼ガス温度が低い時でも、接地電極側チップ42の先端部の表面温度を熱電子放出が可能な温度以上にするための検討を行った。なお、仕事関数5eV以下の貴金属合金では、730℃以上で熱電子放出が活発になる。
【0084】
図16は、アイドリング運転時における接地電極側チップ42の先端部の表面温度を、円柱状の接地電極側チップ42の径Dおよび長さL3をパラメータとして計算により求め、その結果を示すものである。なお、この計算では、台座43の長さを0.3mm、台座43の径を接地電極側チップ42の径Dの1.5倍、アイドリング運転時の燃焼ガス温度を900℃、燃焼ガスと接地電極側チップ42との熱伝達率を4.5×10-4W/mm^(2)・℃とした。
【0085】
図16から明らかなように、接地電極側チップ42の径Dをφ1.1mm(断面積0.95mm^(2)に相当)以下にし、且つ接地電極側チップ42の長さL3を0.1mm以上にすれば、アイドリング運転時における接地電極側チップ42の先端部の表面温度を730℃以上にすることができる。
【0086】
換言すると、接地電極側チップ42の先端部から0.1mmの範囲の断面積、すなわち、距離R1の中間点Pからの距離R2が1/2×R1+0.1mm以下の領域に位置する接地電極側チップ42の部位の断面積を、0.95mm^(2)以下にすれば、アイドリング運転時における接地電極側チップ42の先端部の表面温度を730℃以上にすることができる。
【0087】
そして、接地電極側チップ42を仕事関数5eV以下の貴金属合金製とし、且つ、接地電極側チップ42の先端部から0.1mmの範囲の断面積を0.95mm^(2)以下にすることにより、燃焼ガス温度が最も低いアイドリング運転時でも、接地電極側チップ42の先端部の表面温度を熱電子放出が可能な温度以上に維持することができるため、全運転域で確実に高い着火性を確保することができる。」

ウ「【0093】
(第3実施形態)
図19に本発明の第3実施形態に係る点火装置の要部構成を示す。第1実施形態の点火電源50は、点火放電時において中心電極30に負の電圧が加わるように構成したが、本実施形態の点火電源50は、点火放電時において中心電極30に正の電圧が加わるように構成されている。
【0094】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、接地電極側チップ42の先端部に熱電子を放出させて、接地電極側チップ42の先端部表面付近の電界強度(電位の傾き)を大きくして、接地電極側チップ42の先端部表面付近の放電エネルギの分布を密にすることができる。
【0095】
また、図19に示すように、接地電極側チップ42の先端部表面付近が熱電子に覆われてその部位の電位が低下するため、放電ギャップ間の電位差が実質的に大きくなって、安定した放電を行うことができる。」

エ 内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、点火電源50が放電電圧をスパークプラグに印加することで火花放電を生じることは、当業者に広く知られていると認められる。

オ 上記アないしウ及び図13によれば、接地電極側チップ42及び台座43が、中心電極30の突出方向にて中心電極30と対向する略L字形の支持部材41から前記中心電極30に向かって突出することにより当該中心電極30との間にて放電ギャップを形成することが理解できる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容から、本件発明1に則って整理すると、刊行物3には、実施形態1を前提とした実施形態3のスパークプラグに関して、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている、

[甲3発明]
「内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、点火電源50から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に着火するスパークプラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記点火電源50の印加する前記放電電圧によって正の電圧となる中心電極30と、
前記中心電極30の突出方向にて当該中心電極30と対向する略L字形の支持部材41、及び前記略L字形の支持部材41から前記中心電極30に向かって円柱状に突出することにより当該中心電極30との間にて前記火花放電を生じさせる放電ギャップを形成する接地電極側チップ42及び台座43を、有し、前記点火電源50の印加する前記放電電圧によって負の電圧となる接地電極40とを、備え、
前記接地電極側チップ42は、仕事関数5eV以下の貴金属合金よりなるスパークプラグ。

5 本件発明1について
(1)甲1発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「内燃機関用スパークプラグ2」は、本件発明1の「点火プラグ」に相当し、以下同様に、「陽極」は「プラス極」に、「中心電極4」は「第一電極」に、「接地電極3より突出部30を除いた略L字状の部分」は「電極本体部」に、「ギャップ5」は「放電ギャップ」に、「細径部31」は「電極突起部」に、「陰極」は「マイナス極」に、「接地電極3」は「第二電極」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点1]
「内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火する点火プラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極の電位となる第一電極と、
前記第一電極の突出方向にて当該第一電極と対向する電極本体部、及び前記電極本体部から前記第一電極に向かって柱状に突出することにより当該第一電極との間にて前記火花放電を生じさせる放電ギャップを形成する電極突起部を、有し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極の電位となる第二電極とを、備える点火プラグ。」

[相違点1]
本件発明1の「電極突起部」は、「白金又は白金合金によって形成されており、」「前記電極突起部の横断面積Sと、前記電極本体部からの前記電極突起部の突出量Lとが下記式1を満たし、
0.2平方ミリメートル以上、且つ、1.0平方ミリメートル以下である前記電極突起部の横断面積Sに対して、前記電極突起部の突出量Lは、下記式2を満たし、さらに0.4ミリメートル以上、且つ、1.0ミリメートル以下に規定される
(式1) L(mm)≧S(mm^(2))×A+B
(式2) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.24」のに対し、甲1発明の「細径部31」は、「Pt95%-Ir5%合金の貴金属チップ1とNi基耐熱合金の突出部30によって形成されており、
前記細径部31の直径Dは0.9mm、横断面積Sは約0.64mm^(2)、長さLは1.2mmであり、前記貴金属チップ1の厚さtは0.4mmである」点。

イ 判断
次に、相違点1について検討する。

刊行物1の請求項1に「電極材料の先端には,該電極材料を延設した突出部と,該突出部の先端に固着した貴金属チップとからなる細径部を設けてなり,」と記載されるように、刊行物1においては、細径部31が貴金属チップ1とNi基耐熱合金の突出部30の両方で構成されることを前提としており、貴金属チップ1のみで細径部31を構成することは何ら示唆されていない。

甲1発明の細径部31の直径D:0.9mmに対応して、刊行物1の請求項1には「0.8mm≦D<1.0mmのとき;0.3L≦t≦0.8mm」という式が記載されている。この式に、甲1発明の細径部31の長さL:1.2mmを代入すると、貴金属チップ1の厚さtについての、0.36mm≦t≦0.8mmという式が得られる。この式と「長さL:1.2mm」とから、L>tの関係が把握できるので、甲1発明において、「細径部31」は、全てが「Pt95%-Ir5%合金の貴金属チップ1」とはならない。

これに対して、本件発明1の「電極突起部」は、「白金又は白金合金によって形成され」るので、Ni基耐熱合金の部分を有さないから、甲1発明の「細径部31」と、明らかに異なる。

したがって、上記相違点1は実質的なものであって、甲1発明は本件発明1と同一でない。

上記相違点1に係る本件発明1の「接地突起部」は、「白金又は白金合金によって形成され」る場合に、「0.2平方ミリメートル以上、且つ、1.0平方ミリメートル以下である前記電極突起部の横断面積Sに対して、前記電極突起部の突出量Lは、下記式2を満たし、さらに0.4ミリメートル以上、且つ、1.0ミリメートル以下に規定される
(式2) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.24」の数値限定により、「接地突起部」の「温度が高く維持される」ので「プラス放電による放電電圧は、マイナス放電による放電電圧よりも低くなる」(段落【0041,【0043】)という作用効果、「接地突起部」が「過度に昇温し」ないので「プラスイオンの衝突に起因して著しく消耗するおそれが」(段落【0042】,【0044】)ないという作用効果及び「γ作用の活性化及び電界集中による放電電圧の引き下げ効果は、プラスイオンの滞留による放電電圧の引き上げ効果を打ち消し得る」(段落【0048】)とういう作用効果を奏するものと認められる。

これに対して、刊行物1には、前述のとおり、貴金属チップ1のみで細径部31を構成することは何ら示唆されておらず、
刊行物2には、「貴金属チップ5の中央部51」について「Pt合金によって形成され」「前記中央部51の突出量Lは、0.2mm?0.5mm程度である」点が記載されているが、後述のとおり、貴金属チップ5の中央部51の直径や横断面積についての記載や示唆はなく、
刊行物3には「接地電極側チップ42」について、「仕事関数5eV以下の貴金属合金(例えば、イリジウム合金)よりなる」点が記載されており、後述のとおり、白金や白金合金からなることについての記載や示唆はない。
そうすると、刊行物1ないし3のいずれにも、本件発明1の上記数値限定及びそれによる作用効果について記載や示唆されていない。

したがって、本件発明1は、甲1発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

なお、異議申立人は、長さ0.8mmの貴金属チップ1のみで細径部31を構成する旨の主張をしているが、上記のとおりであるから、この主張は採用できない。

(2)甲2発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「ガソリン機関」は、本件発明1の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「スパークプラグ」は「点火プラグ」に、「プラス極性」は「プラス極の電位」に、「中心電極4」は「第一電極」に、「外側電極2の母材」は「電極本体部」に、「火花放電隙間G」は「放電ギャップ」に、「貴金属チップ5の中央部51」は「電極突起部」に、「マイナス極性」は「マイナス極の電位」に、「外側電極2」は「第二電極」に、「Pt合金」は「白金合金」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致し、相違する。

[一致点2]
「内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火する点火プラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極の電位となる第一電極と、
前記第一電極の突出方向にて当該第一電極と対向する電極本体部、及び前記電極本体部から前記第一電極に向かって柱状に突出することにより当該第一電極との間にて前記火花放電を生じさせる放電ギャップを形成する電極突起部を、有し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極の電位となる第二電極とを、備え、
前記電極突起部は、白金合金によって形成されている点火プラグ。」

[相違点2]
本件発明1の「電極突起部」は、「前記電極突起部の横断面積Sと、前記電極本体部からの前記電極突起部の突出量Lとが下記式1を満たし、
0.2平方ミリメートル以上、且つ、1.0平方ミリメートル以下である前記電極突起部の横断面積Sに対して、前記電極突起部の突出量Lは、下記式2を満たし、さらに0.4ミリメートル以上、且つ、1.0ミリメートル以下に規定される
(式1) L(mm)≧S(mm^(2))×A+B
(式2) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.24」のに対しのに対し、甲2発明の「貴金属チップ5の中央部51」の突出量Lは、0.2mm?0.5mm程度である」点。

イ 判断
次に、相違点2について検討する。

刊行物2には、貴金属チップ5の中央部51の直径や横断面積についての記載や示唆はない。
そして、刊行物2の段落【0013】及び図5(イ)に記載された加工前の円板状貴金属チップ5の厚さは0.2mm、外径は0.8mmであるが、この厚さや外径から、加工後の貴金属チップ5の中央部51の直径や横断面積を推測することはできない。

したがって、上記相違点2は実質的なものであって、甲2発明は本件発明1と同一でない。

そして、相違点2に係る本件発明1の構成は、上記(1)アの相違点1に係る本件発明1の上記数値限定と同じであるから、上記(1)イでの判断と同様に、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでない。

したがって、本件発明1は、甲2発明と同一でなく、甲2発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

なお、異議申立人は、刊行物2の段落【0013】及び段落【0008】の記載から、長さ0.5mm、直径0.8mm未満の中央部51が把握できる旨主張しているが、上記のとおりであるから、この主張は採用できない。

(3)甲3発明との対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「点火電源50」は、本件発明1の「電圧印加手段」に相当し、以下同様に、「着火」は「点火」に、「スパークプラグ」は「点火プラグ」に、「正の電圧となる」ことは「プラス極の電位となる」ことに、「中心電極30」は「第一電極」に、「略L字形の支持部材41」は「電極本体部」に、「接地電極側チップ42及び台座43」は「電極突起部」に、「負の電圧となる」ことは「マイナス極の電位となる」ことに、「接地電極」は「第二電極」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点3で一致し、相違点3で相違する。

[一致点3]
「内燃機関にて繰り返される燃焼サイクルにおいて、電圧印加手段から印加される放電電圧によって火花放電を生じさせることにより、前記内燃機関に形成される燃焼室内の混合気に点火する点火プラグであって、
前記燃焼室に突出し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極の電位となる第一電極と、
前記第一電極の突出方向にて当該第一電極と対向する電極本体部、及び前記電極本体部から前記第一電極に向かって柱状に突出することにより当該第一電極との間にて前記火花放電を生じさせる放電ギャップを形成する電極突起部を、有し、前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極の電位となる第二電極とを、備える点火プラグ。」

[相違点3]
本件発明1の「電極突起部」は、「白金又は白金合金によって形成されており、」「前記電極突起部の横断面積Sと、前記電極本体部からの前記電極突起部の突出量Lとが下記式1を満たし、
0.2平方ミリメートル以上、且つ、1.0平方ミリメートル以下である前記電極突起部の横断面積Sに対して、前記電極突起部の突出量Lは、下記式2を満たし、さらに0.4ミリメートル以上、且つ、1.0ミリメートル以下に規定される
(式1) L(mm)≧S(mm^(2))×A+B
(式2) L(mm)≧S(mm^(2))×0.39+0.24」のに対し、甲3発明の「接地電極側チップ42」は、「仕事関数5eV以下の貴金属合金よりなる」点。

イ 判断
次に、相違点3について検討する。

刊行物3には、「台座43は無くても良い」(段落【0025】)との記載はあるものの、「アーク放電への移行は、仕事関数5.4eVの白金では現れず、仕事関数5eV以下で現れ、仕事関数4.6eVのイリジウムやニッケルでは多数現れる。」(段落【0081】)と記載されており、この記載からみて白金の仕事関数は5.4eVであるから、甲3発明の「仕事関数5eV以下の貴金属合金」に白金は含まれない。また、刊行物3には、仕事関数が5eV以下である白金合金について記載されておらず、また、周知でもない。
したがって、上記相違点3は実質的なものであって、甲3発明は本件発明1と同一でない。

そして、相違点3に係る本件発明1の構成は、上記(1)アの相違点1に係る本件発明1の構成と同じであるから、上記(1)イでの判断と同様に、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲3発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでない。

したがって、本件発明1は、甲3発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

なお、異議申立人は、刊行物3の記載から仕事関数5eV以下の貴金属合金を白金合金とすることは容易である旨の主張をしているが、上記のとおりであるから、この主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明又は甲2発明と同一でなく、甲1発明、甲2発明、甲3発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

6 本件発明2ないし本件発明5
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし本件発明5は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記5(4)と同様に、甲1発明又は甲2発明と同一でなく、甲1発明、甲2発明、甲3発明及び刊行物1ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

7 記載不備について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「対象物(点火プラグ)を見ただけでは、第一電極がプラス極となるのか、第二電極がマイナス極となるのを当業者は理解できません。第一電極および第二電極の極性は、電圧印加手段に点火プラグを電気接続しなければ、第一電極および第二電極をプラス極・マイナス極のいずれにも特定できません。」と主張している。
しかしながら、請求項1には、「前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってプラス極の電位となる第一電極」「前記電圧印加手段の印加する前記放電電圧によってマイナス極の電位となる第二電極」と記載されているから、特許を受けようとする、点火プラグに係る発明が明確に把握できる。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。

8 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし本件発明5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし本件発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-12-12 
出願番号 特願2011-203890(P2011-203890)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H01T)
P 1 651・ 537- Y (H01T)
P 1 651・ 121- Y (H01T)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡崎 克彦  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
登録日 2016-02-26 
登録番号 特許第5887785号(P5887785)
権利者 株式会社デンソー
発明の名称 点火プラグ及び点火装置  
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