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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B61B
管理番号 1324174
審判番号 不服2016-3142  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-01 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2011-244184号「台車搬送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月23日出願公開、特開2013-99990号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月8日の出願であって、平成27年6月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年8月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月18日付けで拒絶査定がされ、平成28年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年3月1日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
平成28年3月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、次の補正事項を含んでいる。
なお、下線は補正箇所を明示するために当審が付したものである。
(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「 【請求項1】
走行軌道上を走行する台車を含み、
該走行軌道は、
環状に設定された循環軌道と、
分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道と、
該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され、
該台車は、
該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、
該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、
前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結し、前方の該外側ガイドユニットと前方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させ、後方の該外側ガイドユニットと後方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させる連結アームと、
で構成され、
少なくとも前方の前記内側ガイドユニットは、駆動源に連結された内側前方車輪を含む一方で、前方及び後方の前記外側ガイドユニットは、駆動源に連結された車輪を含まず、
該内側ガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一の内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、
を備え、
該外側ガイドユニットは、
該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、
該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、を備える台車搬送システム。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)。

(2)補正事項2
特許請求の範囲の請求項2及び3を、
「 【請求項2】
請求項1に記載された台車搬送システムであって、
前記内側首振支軸を介して、前記台車下面の軌道内周側の前方に前記内側前方車輪、後方に内側後方車輪が首振自在に設置された台車搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載された台車搬送システムであって、
前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪とのそれぞれが、駆動源によって駆動される台車搬送システム。」
とする補正(以下、「補正事項2」という。)。

(3)補正事項3
明細書の段落【0007】、【0008】及び【0009】を、
「 【0007】
請求項1の発明は、走行軌道上を走行する台車を含み、該走行軌道は、環状に設定された循環軌道と、分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道と、該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、で構成され、該台車は、該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結し、前方の該外側ガイドユニットと前方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させ、後方の該外側ガイドユニットと後方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させる連結アームと、で構成され、少なくとも前方の前記内側ガイドユニットは、駆動源に連結された内側前方車輪を含む一方で、前方及び後方の前記外側ガイドユニットは、駆動源に連結された車輪を含まず、該内側ガイドユニットは、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一の内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、該内側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、を備え、該外側ガイドユニットは、該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、を備える台車搬送システムである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載された台車搬送システムであって、前記内側首振支軸を介して、前記台車下面の軌道内周側の前方に前記内側前方車輪、後方に内側後方車輪が首振自在に設置された台車搬送システムである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載された台車搬送システムであって、前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪とのそれぞれが、駆動源によって駆動される台車搬送システムで
ある。」
とする補正(以下、「補正事項3」という。)。

2.補正の適否
(1)補正事項1について
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するための事項である「ガイドユニット」について、願書に最初に添付した明細書の段落【0033】、【0034】及び【0038】の記載を根拠に、「少なくとも前方の前記内側ガイドユニットは、駆動源に連結された内側前方車輪を含む一方で、前方及び後方の前記外側ガイドユニットは、駆動源に連結された車輪を含ま」ないとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するとこころはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
(ア)刊行物1の記載事項
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された、特開2010-247683号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図1?15とともに、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付加した。以下同様。
(1a)
「【0007】
前記従来の搬送車システムでは、左右の車輪の一方のみが駆動輪であるので、曲線部を走行させるにはガイドローラがガイドレールに当接することで案内させている。このようにガイドレールに大きな荷重が作用するので、ガイドレールの強度を高くする必要がある。
【0008】
本発明の課題は、ガイドレールにガイドローラが支持された搬送車を有する搬送車システムにおいて、ガイドレールの強度を低くできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る搬送車システムは、一対の走行レールと、ガイドレールと、搬送車と、モータと、制御装置とを備えている。一対の走行レールは、直線部および曲線部を有する。ガイドレールは、一対の走行レールに沿って設けられている。搬送車は、搬送車本体と、搬送車本体に設けられ一対の走行レール上に置かれた左右の駆動輪と、搬送車本体に設けられガイドレールにガイドされるガイドローラとを有する。モータは、左右の駆動輪にそれぞれ接続されている。制御装置は、左右の駆動輪に速度差を生じさせるようにモータを制御する。
このシステムでは、搬送車が曲線部を走行する際には、制御装置が左右の駆動輪に速度差をつけるようにモータを制御する。したがって、ガイドローラからガイドレールに作用する荷重が軽減され、ガイドレールの強度を下げることができる。この結果、コスト低減を実現できる。
さらに、ガイドローラからガイドレールに作用する荷重が軽減することで、騒音が減ったり、摩擦を原因とする粉塵が減ったりする。」
(1b)
「【0013】
本発明に係る搬送車システムでは、曲線部において左右の駆動輪に速度差をつけることで、ガイドレールへの荷重を小さくでき、その結果、ガイドレールの強度を低くできる。」
(1c)
「【0015】
(1)搬送車システム
図1?図4を用いて、本発明の一実施形態としての搬送車システムについて説明する。図1は、本発明の一実施形態における搬送車3の概略平面図である。図2は、搬送車3の概略平面図である。図3は、搬送車3の概略平面図である。図4は、搬送車3の概略側面図である。
【0016】
搬送車システム1は、軌道2と、軌道2上を走行する搬送車3と有している。この実施形態では、軌道2は天井から吊り下げられており、さらに、軌道2の周囲はクリーンルームになっている。
【0017】
軌道2は、図2に示すように、走行レール4とガイドレール6を有している。
走行レール4は、左右一対の第1走行レール4aおよび第2走行レール4bから構成されている。第1走行レール4aおよび第2走行レール4bは、平坦な走行面を有している。
【0018】
ガイドレール6は、第1ガイドレール6aおよび第2ガイドレール6bを有している。第1ガイドレール6aおよび第2ガイドレール6bは、第1走行レール4aおよび第2走行レール4bの外側端にそれぞれ設けられている。第1ガイドレール6aおよび第2ガイドレール6bは上方に延びている。
【0019】
また、第1走行レール4aおよび第2走行レール4bに沿って、図1に示すように、一対の第1給電線10aおよび第2給電線10bが設けられている。第1給電線10aおよび第2給電線10bの一端には、電力供給装置(図示せず)が設けられている。電力供給装置は、第1給電線10aおよび第2給電線10bに高周波電力を供給する。
【0020】
軌道2は、図7に示すように、直線部7、曲線部8,分岐部9および合流部(図示せず)を有している。
【0021】
図7を用いて、走行レール4に沿って設けられた複数種類の被検出部について説明する。被検出部は、反射テープ104と、鉄板105と、バーコード106とを含んでいる。反射テープ104は、曲線部8において搬送車3の位置を検出するための部材であり、図においては曲線部8において第1走行レール4aの内側に配置されている。鉄板105は、搬送車停止位置118、曲線部8の開始位置、分岐地点9a等を検出するための部材である。鉄板105は、図においては分岐部9の分岐地点9aの手前で第1走行レール4aの内側に配置されており、さらに搬送車停止位置118の手前で第1走行レール4aの内側に配置されている。バーコード106は、走行レール4の原点マークおよび複数の基準マークとして機能しており、図においては、第2走行レール4bの内側に複数配置されている。
【0022】
搬送車3は、載置部11と、走行部12と有している。
載置部11は、物品17を載置するための構造である。載置部11は、走行方向前後両端において左右両側に延びる一対の載置部材13と、一対の支持部材を連結するために走行方向前後に延びる複数の連結部材14とを有している。載置部材13は、左右方向に延び載置部13aと、載置部の左右方向両端から下方に延びる柱部13bと、柱部13bの下端同士を連結するために左右方向に延びる連結部13cとを有している。連結部材14は、載置部材13の連結部13c同士を連結している。連結部材14は、4本の部材からなり、それらは一対の左右方向外側部材14aと一対の左右方向内側部材14bとからなる。左右方向内側部材14bの前後両端間には、走行部12が取り付けられる第1取り付け部15および第2取り付け部16が設けられている。載置部11において、第1取り付け部15は走行方向前側に配置され、第2取り付け部16は走行方向後側に配置されている。
【0023】
走行部12は、駆動走行部18および従動走行部19を有している。駆動走行部18および従動走行部19は、第1取り付け部15および第2取り付け部16に対してそれぞれ回動自在に取り付けられるボギー台車である。」
(1d)
「【0024】
(2)駆動走行部
図5を用いて、駆動走行部18を説明する。図5は、駆動走行部18の平面図である。
【0025】
駆動走行部18は、主に、本体フレーム20と、第1駆動輪ユニット21と、第2駆動輪ユニット22と、固定ガイドローラ機構23と、分岐ガイドローラ機構24とを有している。
【0026】
(2-1)本体フレーム
本体フレーム20は、各部材を支持するための薄板状の部材である。本体フレーム20は左右方向に長く延びており、第1取り付け部15からの延びるシャフト(図示せず)を支持する軸受35が中心部分に設けられている。
【0027】
(2-2)第1駆動輪ユニット
第1駆動輪ユニット21は、本体フレーム20の右側端部に装着されており、第1駆動輪25と、第1モータ26と、第1減速機27と、第1エンコーダ96とを有している。第1駆動輪25は、第1走行レール4aの走行面の上に載っている。第1モータ26は、第1減速機27を介して第1駆動輪25に連結されている。第1エンコーダ96は、第1モータ26の回転を計測して、パルス信号を送信する。これにより、第1モータ26の回転速度や回転回数を得ることができる。
【0028】
(2-3)第2駆動輪ユニット
第2駆動輪ユニット22は、本体フレーム20の左側端部に装着されており、第2駆動輪28と、第2モータ29と、第2減速機30と、第2エンコーダ97とを有している。第2駆動輪28は、第2走行レール4bの走行面の上に載っている。第2モータ29は、第2減速機30を介して第2駆動輪28に連結されている。第2エンコーダ97は、第2モータ29の回転を計測して、パルス信号を送信する。これにより、第2モータ29の回転速度や回転回数を得ることができる。」
(1e)
「【0029】
(2-4)固定ガイドローラ機構
固定ガイドローラ機構23は、第1固定ガイドローラ31と、第2固定ガイドローラ32と、第3固定ガイドローラ33と、第4固定ガイドローラ34とを有している。
【0030】
第1固定ガイドローラ31および第2固定ガイドローラ32は、本体フレーム20の右側端部に走行方向前後に離れて配置されている。より具体的には、第1固定ガイドローラ31および第2固定ガイドローラ32は、第1駆動輪25の走行方向前後両側に離れて配置され、第1ガイドレール6aの内側に常に当接または近接している。第3固定ガイドローラ33および第4固定ガイドローラ34は、本体フレーム20の左側端部に走行方向前後に離れて配置されている。より具体的には、第3固定ガイドローラ33および第4固定ガイドローラ34は、第2駆動輪28の走行方向前後両側に離れて配置され、第2ガイドレール6bの内側に常に当接または近接している。
【0031】
(2-5)分岐ガイドローラ機構
分岐ガイドローラ機構24は、分岐部9において分岐動作を行うための機構であり、第1分岐ガイドローラ36と、第2分岐ガイドローラ37と、第3分岐ガイドローラ38と、第4分岐ガイドローラ39と、分岐ガイドローラ駆動機構40とを有している。
【0032】
第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37は、第1固定ガイドローラ31および第2固定ガイドローラ32に対応して配置されている。分岐ガイドローラ機構24は、さらに、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が回転自在に連結された第1部材101(後述)を有している。
【0033】
第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39は、第3固定ガイドローラ33および第4固定ガイドローラ34に対応して配置されている。分岐ガイドローラ機構24は、さらに、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が回転自在に連結された第2部材103(後述)を有している。
【0034】
分岐ガイドローラ駆動機構40は、第1分岐ガイドローラ36と、第2分岐ガイドローラ37と、第3分岐ガイドローラ38と、第4分岐ガイドローラ39の位置を変更するための機構である。分岐ガイドローラ駆動機構40は、第1シリンダ42と、第1シャフト43と、第2シャフト44と、連結シャフト45とを有している。
【0035】
第1シリンダ42は、電動シリンダであり、左右方向に推進力を発生するように配置されている。第1シリンダ42は、トラニオン方式で支持されている。
【0036】
第1シャフト43は、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37側に設けられている。第1シャフト43は、前後方向に延びており、本体フレーム20に回転自在に支持されている。また、第1シャフト43は、第1シリンダ42のロッドによって左右方向に移動可能である。
【0037】
第1部材101は、前後方向に延びる第1部分47と、第1部分47の両端から左右方向内側に延びる一対の第2部分48と、第2部分48の端部から上方に延びる一対の第3部分49とを有している。第1部分47の前後方向両端には、前述のように、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が回転自在に連結されている。
【0038】
第2部分48と第3部分49との連結部分は、回動中心部51となっている。回動中心部51は、本体フレーム20に対して前後方向に延びる軸中心に回動自在に支持されている。第3部分49の先端は、第1シャフト43に回動自在に連結されている。したがって、第1シャフト43は、第1シリンダ42によって左右方向に駆動されると、回動中心部51を中心に回動する。」
(1f)
「【0039】
以上の構造により、第1シャフト43が左右方向に移動すると、回動中心部51を中心に第1部材101が回動する。このとき、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が第1ガイドレール6aの外側に当接または近接するガイド位置と、第1ガイドレール6aから離れた非ガイド位置との間で移動する。
【0040】
第2シャフト44は、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39側に設けられている。第2シャフト44は、前後方向に延びており、本体フレーム20に回転自在に支持されている。また、第2シャフト44は左右方向に移動可能である。
【0041】
連結シャフト45は、左右方向に延びており、第1シャフト43と第2シャフト44を連結している。より詳細には、連結シャフト45は、端部が第1シャフト43および第2シャフト44に回動自在に連結されている。
【0042】
第2部材103は、前後方向に延びる第4部分52と、第4部分52の両端から左右方向内側に延びる一対の第5部分53と、第5部分53の端部から上方に延びる一対の第6部分54とを有している。第4部分52の前後方向両端には、前述のように、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が回転自在に連結されている。
【0043】
第4部分52と第5部分53との連結部分は、回動中心部55となっている。回動中心部55は、本体フレーム20に対して前後方向に延びる軸中心に回動自在に支持されている。第5部分53の先端は、第2シャフト44に回動自在に連結されている。したがって、第2シャフト44は、連結シャフト45によって左右方向に駆動されると、回動中心部55を中心に回動する。
【0044】
以上の構造により、第2シャフト44が左右方向に移動すると、回動中心部55を中心に第2部材103が回動する。このとき、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が第2ガイドレール6bの外側に当接または近接するガイド位置と、第2ガイドレール6bから離れた非ガイド位置との間で移動する。
【0045】
なお、このとき、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37と第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が対称的に位置を変更する。分岐ガイドローラ駆動機構40によって変更される第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37と第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39との位置関係は以下の3通りである。
【0046】
第1状態では、図11に示すように、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が第1ガイドレール6aから離れており(第1非ガイド位置にあり)、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が第2ガイドレール6bから離れている(第1非ガイド位置にある)。
第2状態では、図12に示すように、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が第1ガイドレール6aに当接または近接しており(ガイド位置にあり)、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が第2ガイドレール6bから離れている(第2非ガイド位置にある)。
第3状態では、図13に示すように、第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37が第1ガイドレール6aから離れており(第2非ガイド位置にあり)、第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39が第2ガイドレール6bに当接または近接している(ガイド位置にある)。」
(1g)
「(3)従動走行部
図6を用いて、従動走行部19を説明する。図6は、従動走行部19の平面図である。
【0048】
従動走行部19は、主に、本体フレーム57と、第1従動輪ユニット58と、第2従動輪ユニット59と、固定ガイドローラ機構60と、分岐ガイドローラ機構61とを有している。
【0049】
(3-1)本体フレーム
本体フレーム57は、各部材を支持するための薄板状の部材である。本体フレーム57は左右方向に長く延びており、第2取り付け部16からの延びるシャフト(図示せず)を支持する軸受74が中間部分に設けられている。
【0050】
(3-2)第1従動輪ユニット
第1従動輪ユニット58は、本体フレーム57の右側端部に装着されており、第1従動輪62を有している。第1従動輪62は、走行レール4の走行面の上に載っている。第1従動輪62は、本体フレーム57に固定されたシャフト98に回転自在に支持されている。
【0051】
(3-3)第2従動輪ユニット
第2従動輪ユニット59は、本体フレーム57の左側端部に装着されており、第2従動輪63を有している。第2従動輪63は、走行レール4の走行面の上に載っている。第2従動輪63は、本体フレーム57に固定されたシャフト99に回転自在に支持されている。」
(1h)
「【0052】
(3-4)固定ガイドローラ機構
固定ガイドローラ機構60は、第1固定ガイドローラ65と、第2固定ガイドローラ66と、第3固定ガイドローラ67と、第4固定ガイドローラ68とを有している。
なお、固定ガイドローラ機構60は固定ガイドローラ機構23と同様であるので、以下説明を省略する。
【0053】
(3-5)分岐ガイドローラ機構
分岐ガイドローラ機構61は、分岐部9において分岐動作を行うための機構であり、第1分岐ガイドローラ69と、第2分岐ガイドローラ70と、第3分岐ガイドローラ71と、第4分岐ガイドローラ72と、分岐ガイドローラ駆動機構73とを有している。
【0054】
分岐ガイドローラ駆動機構73は、第1分岐ガイドローラ69と、第2分岐ガイドローラ70と、第3分岐ガイドローラ71と、第4分岐ガイドローラ72の位置を変更するための機構である。分岐ガイドローラ駆動機構73は、第2シリンダ91と、第3シャフト92と、第4シャフト93と、第2連結シャフト94とを有している。
なお、分岐ガイドローラ機構61は、分岐ガイドローラ機構24と同様であるので、以下説明を省略する。」
(1i)
「【0055】
(4)分岐部
図7を用いて、分岐部9について説明する。図7は、本発明の一実施形態としての搬送車システム1の分岐部9および曲線部8の概略平面図である。
【0056】
軌道2は、直線部7と、分岐部9と、分岐部9から右側に曲がる曲線部8と、分岐部9からそのまま直線状に延びる第2部分7aとを有している。
【0057】
第1走行レール4aと第2走行レール4bは、曲線部8と分岐部9の両方に分かれて延びている。
【0058】
曲線部8において、第1ガイドレール6aは連続して形成されているが、第2ガイドレール6bは一部が途切れている。また、曲線部8には、第1走行レール4aに沿って複数の反射テープ104が設置されている。
第2部分7aにおいて、第2ガイドレール6bは連続して形成されているが、第1ガイドレール6aは一部が途切れている。
【0059】
なお、この実施形態では、分岐部9とは直線部7と曲線部8の一部を含む部分を全体をいい、その中でも分岐が開始される地点を分岐地点9aという。」
(1j)
「【0073】
ステップS6では、右側に分岐する場合は、図12に示すように、第1シリンダ42を駆動して第1分岐ガイドローラ36および第2分岐ガイドローラ37を下降させて、さらに第2シリンダ91を駆動して第1分岐ガイドローラ69と第2分岐ガイドローラ70を下降させる。左側に分岐する場合は、図13に示すように、第1シリンダ42を駆動して第3分岐ガイドローラ38および第4分岐ガイドローラ39を下降させて、さらに第2シリンダ91を駆動して第3分岐ガイドローラ71および第4分岐ガイドローラ72を下降させる。」
(1k)
「【0078】
ステップS14では、現在位置情報に基づいて、適切な左右速度差が生じるように走行制御部88を介して第1モータ26および第2モータ29を駆動する。」
(1l)
「【0080】
(9)駆動輪ユニットおよび従動輪ユニットの着脱構造および着脱動作
第1駆動輪ユニット21および第2駆動輪ユニット22の着脱構造および着脱動作を説明する。図14は、第1駆動輪ユニット21の概略平面図である。図15は、第1駆動輪ユニット21の概略縦断面図である。第1駆動輪ユニット21および第2駆動輪ユニット22の構造は同じであるので、以下、第1駆動輪ユニット21のみを説明する。
【0081】
第1駆動輪ユニット21は、前述のように、第1駆動輪25と、第1モータ26と、第1減速機27とを有しており、さらに、第1取付プレート110を有している。
【0082】
第1取付プレート110は、第1駆動輪ユニット21の他の部材を本体フレーム20に着脱自在に取り付けるための部材である。第1取付プレート110は、本体フレーム20の右側端部に取り付けられている。
【0083】
本体フレーム20の左右両側端部には、左右両側に開いた開口が形成されている。図14から明らかなように、第1モータ26および第1減速機27は本体フレーム20の端部より内側に配置されているが、第1駆動輪25は本体フレーム20の開口から外側に配置されている。
【0084】
第1取付プレート110は、第1部分111と、第2部分112とを有している。第1部分111は、本体フレーム20の右側端部上面に載置された平板である。第1部分111は、前後両側の固定部111aと、連結部111bとを有している。固定部111aには、複数のボルト貫通孔111cが形成されている。このボルト貫通孔111c内をボルト119が貫通して、本体フレーム20に形成されたねじ孔20aに螺合している。
【0085】
第2部分112は、第1部分111の固定部111aの端部111dから下方に延びる板状部分である。第2部分112は、第1部分111に溶接で固定されている。第2部分112には、第1駆動輪25を支持する部分(例えば、第1減速機27)が固定されている。
【0086】
以上から明らかなように、第1駆動輪ユニット21は、第1取付プレート110によって本体フレーム20に固定され、さらに第1取付プレート110は本体フレーム20から上方に取り外し可能である。これにより、第1駆動輪ユニット21は、車体をわずかにジャッキアップしてさらにボルト119を取り外すと、右側上方に(図15の矢印R方向に)引っ張り出すようにして、本体フレーム20から取り外すことができる。
【0087】
また、搬送車3では、載置部11としては載置部材13と複数の連結部材14があるだけの構造なので、第1駆動輪ユニット21を取り外すのが容易である。具体的には、図3に示すように、第1駆動輪ユニット21は、左右方向外側部材14aと左右方向内側部材14bとの間から上方に引き出すことができる。
【0088】
第1従動輪ユニット58は、前述のように、第1従動輪62と、シャフト98とを有しており、さらに、第2取付プレート115を有している。第1従動輪ユニット58および第2従動輪ユニット59の構造は同じであるので、以下、第1従動輪ユニット58のみを説明する
【0089】
第2取付プレート115は、第1従動輪ユニット58の他の部材を本体フレーム57に着脱自在に取り付けるための部材である。第2取付プレート115は、本体フレーム57の右側端部に取り付けられている。本体フレーム57の左右両側端部には、左右両側に開いた開口が形成されている。
【0090】
第2取付プレート115は、第3部分113と、第4部分114とを有している。第3部分113は、本体フレーム57の右側端部上面に載置された平板である。第3部分113は、前後両側の固定部113aと、連結部113bとを有している。固定部113aには、複数のボルト貫通孔113cが形成されている。このボルト貫通孔113c内をボルト(図示せず)が貫通して、本体フレーム57に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合している。
【0091】
第4部分114は、第3部分113の固定部113aの端部113dから下方に延びる板状部分である。第4部分114は第3部分113に溶接で固定されている。第4部分114には、シャフト98が固定されている。
【0092】
第1従動輪ユニット58の取り外し動作は、第1駆動輪ユニット21の取り外し動作と同じであるので、以下説明を省略する。」

(イ)刊行物1に記載された発明
(1m)
上記(ア)(1i)の段落【0055】、【0056】、【0059】及び図7から、「軌道2」は、「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aと、分岐部9から右側に曲がる曲線部8」を有しているといえる。
(1n)
図7において、搬送車3の進行方向に対して「分岐部9から右側に曲がる曲線部8」は、その「曲線部8」の右側が内側であり、左側が外側といえることから、軌道2全体及び搬送車3に関して、便宜上、搬送車3の進行方向の右側を内側と定義し、左側を外側と定義する。
(1o)
上記(1n)、上記(ア)(1i)の段落【0056】、【0058】、【0059】及び図7から、軌道2は、「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの内側に沿って一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aと、直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの外側に沿って連続して形成される第2ガイドレール6bと、分岐部9から右側に曲がる曲線部8の内側に沿って形成される湾曲した第1ガイドレール6a」を有しているといえる。
(1p)
上記(ア)(1c)の段落【0022】及び(1d)の段落【0026】並びに「駆動走行部18」の「本体フレーム20」及び「従動走行部19」の「本体フレーム57」と、図4並びに図14及び図15における「本体フレーム20」及び「軸受35」の位置とから、「駆動走行部18」及び「従動走行部19」は、「搬送車3」の下面に回動自在に取り付けられているといえる。
(1q)
上記(1m)?(1p)、上記(ア)(1a)?(1l)及び図1?15から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「軌道2上を走行する搬送車3を含み、
該軌道2は、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aと、 分岐部9から右側に曲がる曲線部8と、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの内側に沿って一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aと、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの外側に沿って連続して形成される第2ガイドレール6bと、
分岐部9から右側に曲がる曲線部8の内側に沿って形成される湾曲した第1ガイドレール6aと、
で構成され、
該搬送車3は、
該搬送車3の下面に取付け部15、16からそれぞれ延びるシャフトによって該搬送車3の軸受35に回動自在に取り付けられた駆動走行部18及び従動走行部19で構成され、
駆動走行部18は、右側に装着され第1モータ26に連結された第1駆動輪25と、左側に装着され第2モータ26に連結された第2駆動輪26とを備え、適切な左右速度差が生じるようになっており、
従動走行部19は、右側に装着された第1従動輪62と、左側に装着され第2従動輪63とを備え、
駆動走行部18は、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを内側と外側から挟むように対向配置され、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aの内側に位置する分岐ガイドローラ36、37と、外側に位置する固定ガイドローラ31,32と、該第2ガイドレール6bを内側と外側から挟むように対向配置され、該第2ガイドレール6bの外側に位置する分岐ガイドローラ38、39と、内側に位置する固定ガイドローラ33,34と、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aと接する高さの下降位置と、該第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ36、37を移動させ、該第2ガイドレール6bと接する高さの下降位置と、該第2ガイドレール6bを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ38、39を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構40と、
を備え、
従動走行部19は、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを内側と外側から挟むように対向配置され、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aの内側に位置する分岐ガイドローラ69、70と、外側に位置する固定ガイドローラ65,66と、該第2ガイドレール6bを内側と外側から挟むように対向配置され、該第2ガイドレール6bの外側に位置する分岐ガイドローラ71、72と、内側に位置する固定ガイドローラ67,68と、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aと接する高さの下降位置と、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ69、70を移動させ、該第2ガイドレール6bと接する高さの下降位置と、該第2ガイドレール6bを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ71、72を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構73と、を備える搬送車システム1。」

(ウ)刊行物2の記載事項
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された、特開2011-11654号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図1?2とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0006】
ところで、上述した片側案内式の軌道系交通システムにおいては、軌道の片側に敷設される外方規制ガイドレールと内方規制ガイドレールとが別体であるため、外方規制ガイドレールの敷設作業と内方規制ガイドレールの敷設作業とを別々に行う必要が生じ、敷設作業時間の長期化に繋がっていた。
【0007】
加えて、車両に支持される外方規制ガイドローラーと内方規制ガイドローラーとが上下二段に配置されているので、これに応じて、外方規制ガイドレールと内方規制ガイドレールとを上下二段に敷設する必要が生じる。このため、上下方向の寸法が大きくならざるを得ず、狭隘な空間しか残されていない軌道の側部と車両との間にガイドレールを敷設することが困難な場合もあり、コンパクト化が要請されていた。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、コストダウンとコンパクト化とを図った軌道系交通システムの車両案内装置を提供することにある。」
(2b)
「【0018】
ガイドローラー8は、上方から外方規制壁7aと内方規制壁7bとの間に挿入されて外方規制壁7aにのみ接する外方規制ガイドローラー8aと、上方から外方規制壁7aと内方規制壁7bとの間に挿入されると共に外方規制ガイドローラー8aよりも車幅方向内方に配置されて内方規制壁7bにのみ接する内方規制ガイドローラー8bとを有する。これら外方規制ガイドローラー8aと内方規制ガイドローラー8bとは、車両1の左右に支持されたレバー9に取り付けられている。
【0019】
これらレバー9は、図1に示すように、車幅方向左右に配置されていて、夫々、車両1の走行輪2を内包するように平面視略コ字状に形成されており、コ字の中央部近傍の部分が、車体4の下部フレーム(台枠)4aに、ピン等の枢支部材10により水平面内回動可能に支持されている。左右のレバー9には、夫々、走行輪2が回転可能に支持されている。」
(2c)
「【0023】
左右のレバー9は、連結ロッド12を介して連結されており、この連結ロッド12と左右のレバー9とにより、平行リンクの如きリンク機構が形成されている。すなわち、連結ロッド9の両端部がピン13を介して左右のレバー9に回転可能に連結されていて、一方のレバー9が枢支部材10を中心に回動すると、これに連動して、他方のレバー9も枢支部材10を中心に回動するようになっている。これにより、カーブ走行時等に、一方のレバー9に支持されたガイドローラー8がガイドレール(カーブ部分では屈曲されている)7から反力を受け、そのレバー9が回動してそのレバー9に支持された走行輪2が転舵されると、他方のレバー9も同方向に回動され、他方のレバー9に支持された走行輪2も同じ方向に転舵される。」

(エ)刊行物3の記載事項
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-107169号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図1?2とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0004】
【前記目的を達成するための手段】この発明は前記目的を達成するために以下の如き手段を採用した。この発明は、2本のガイドレールに沿って走行自在となされた走行車が、前後・左右の4つの、ガイドレールに載る車輪を有しており、前記車輪の1つが走行モーターによって駆動される駆動輪となされ、残りの車輪が従動輪となされており、駆動輪に対して斜め位置の従動輪がエンコーダーの連結された回転数検知用車輪となされているものである。」
(3b)
「【0006】
【実施例】以下にこの発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、この明細書において、前とは図1右側を、後とは同図左側をいい、左とは図1紙面裏側を、右とは同表側をいう。床面に敷設された左右一対のガイドレール1に沿って走行車4が走行自在となされている。この走行車4は、上面が荷台となされた車体本体5と、この車体本体5の前後左右に水平旋回自在に設けられたブラケット7と、このブラケット7に回転自在に設けられた、ガイドレール1に載る車輪13、8又は14と、前記ブラケット7の前後・左右に回転自在に設けられたガイドレール1を左右から挟持するローラー9とを有している。前記1つの車輪13が正逆回転自在な走行モーター11によって駆動される駆動輪(以下、駆動輪13という。)となされ、2つの車輪8が従動輪(以下、従動輪8という。)となされており、前記駆動輪13に対して平面から見て斜めに位置する車輪14がエンコーダー15の連結された回転数検知用の従動輪(以下、回転数検知用車輪14という。)となされている。前記駆動輪13の下端は従動輪8の下端よりやや下に突出するようになされている。このような構成によって、駆動輪13を常時確実にガイドレール1に当接させて、駆動輪13がスリップを起さないようになされている。また、回転数検知用車輪14の下端は従動輪8の下端よりやや下に突出するようになされている。このような構成によって、回転数検知用車輪14を常時確実にガイドレール1に当接させて、即ち、空回りを防止して車輪の回転数(走行距離)を確実に知ることが出来る。」

(オ)刊行物4の記載事項
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭49-85768号公報(以下、「刊行物4」という。)には、第1?5図とともに、以下の事項が記載されている。
(4a)
「図面において,(1)は台車(4)が走行する走行路,(2)は同走行路の両側に設けられた案内側壁,(3)は走行路(1)の第1図及び第3図に示される分岐又は合流地点のみ設けられ外側の案内側壁(2)に沿い敷設された案内レール,(5)は台車(4)の前輪で,ナックルアームを介してタイロッド(6)に連結され操舵可能となっている。(7)は台車(4)の車体フレームの下面に車幅のほぼ中央で前後方向に沿って配置され,前端が台車(4)のブラケット(4′)に,後端が上記前車輪(5)のタイロッド(6)にそれぞれ枢支された細長状の中央リンク,(8)は同中央リンクに沿い左右両側に対称的に配置されたL型の側部リンクで,前端が車体(4)のブラケット(4′)に枢支され,後端が台車(4)の走行時上記案内側壁(2)に沿い回転する主案内車輪(9)を枢支している。(10)はL型に形成された異形車軸で,中央部の基部(10′)が上記側部リンク(8)の後部側面に沿い2箇所の軸受(11)で軸支され,揺動車軸(10″)の端部には補助案内輪(12)が軸支され,駆動部(10′′′)の末端ではパワーシリンダ(13)のピストン部(13′)と枢着している。」(第2頁右上欄第6行?同頁左下欄第6行)
(4b)
「ついで,台車(4)が走行中第1図に示される分岐地点又は第3図に示される合流地点にさしかかった際,例えば右方へ分岐又は右方から合流する場合は第4図及び第5図に示されるように右側のパワーシリンダ(13)を作動させ異型車軸(10)の駆動部(10′′′)を動かすことにより右側補助案内輪(12)を案内レール(3)と案内側壁(2)との間に降ろし案内レール(3)に案内させる。したがって,走行路(1)の二又部分で左側の側壁(2)が途切れて無くなり左側の主案内輪(9)を案内しなくなっても,台車(4)は上記右側補助案内輪(12)と右側主案内輪(9)とにより案内されて進路を逸脱することなく安全に走行できる。すなわち,補助案内輪(12)は主案内輪(9)と共通して側部リンク(8)に支持されているので,上記右側補助案内輪(12)及び右側主案内輪(9)だけの案内の際にもこれらの左右方向の変位及び力は右側側部リンク(8),右側ばね内蔵連結リンク(14),中央リンク(7),タイロッド(6)を経て前車輪(5)に伝達されて操舵が行なわれる。なお,上記補助案内輪(12)による操舵力を補助するため,或はもしパワーシリンダ(13)の故障などにより補助案内輪(12)が案内しうる位置に設定されず,案内が不能になった場合でも台車(4)が安全に走行できるようにパワーシリンダ(15)により強制的に操舵させることができる。」(第3頁左上欄第3行?同頁右上欄第7行)

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)
引用発明の「軌道2」及び「搬送車3」は、それぞれ、補正発明1の「走行軌道」及び「台車」に相当する。
(イ)
引用発明の「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7a」は、「軌道2(走行軌道)」の一部を構成しているから、引用発明の「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7a」と、補正発明1の「分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道」とは、「軌道」の限りで共通しているといえる。
(ウ)
引用発明の「分岐部9から右側に曲がる曲線部8」は、「軌道2(走行軌道)」の一部を構成していること、及び、「旋回」は「曲線を描いて向きを変えること」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]から、引用発明の「分岐部9から右側に曲がる曲線部8」と、補正発明1の「分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道」とは、「分岐部で該軌道から分岐する補助旋回軌道」の限りで共通しているといえる。
(エ)
上記ア(ア)(1i)の段落【0056】、【0058】、【0059】及び図7から、引用発明の「一部が途切れて形成される第1ガイドレール6a」は、第1ガイドレール6aが分岐部9には存在していないことが明らかであるから、引用発明の「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの内側に沿って一部が途切れて形成される第1ガイドレール6a」と、補正発明1の「該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレール」とは、「該分岐部を除く該軌道の内側に、該軌道に沿って設置される内側ガイドレール」の限りで共通しているといえる。
(オ)
引用発明の内側の「第1ガイドレール6a」と外側の「第2ガイドレール6b」との両方が存在する部分は、「オーバーラップ部」といえること、及び、図7から、引用発明の「直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの外側に沿って連続して形成される第2ガイドレール6b」と、補正発明1の「オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレール」とは、「オーバーラップ部と該分岐部とにおける該軌道の外側に、該軌道に沿って設置される外側ガイドレール」の限りで共通しているといえる。
(カ)
引用発明の「湾曲した第1ガイドレール6a」は、分岐部9には存在していない「一部が途切れて形成される第1ガイドレール6a」と滑らかに連続するといえること(上記(エ)及び図7)、及び、上記(ウ)から、引用発明の「分岐部9から右側に曲がる曲線部8の内側に沿って形成される湾曲した第1ガイドレール6a」と、補正発明1の「該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレール」とは、「該補助旋回軌道の内側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレール」の限りで共通しているといえる。
(キ)
上記(ア)?(カ)から、
引用発明の
「軌道2上を走行する搬送車3を含み、
該軌道2は、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aと、 分岐部9から右側に曲がる曲線部8と、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの内側に沿って一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aと、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの外側に沿って連続して形成される第2ガイドレール6bと、
分岐部9から右側に曲がる曲線部8の内側に沿って形成される湾曲した第1ガイドレール6aと、
で構成され」ることと、
補正発明1の
「走行軌道上を走行する台車を含み、
該走行軌道は、
環状に設定された循環軌道と、
分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道と、
該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され」ることとは、
「走行軌道上を走行する台車を含み、
該走行軌道は、
軌道と、
分岐部で該軌道から分岐する補助旋回軌道と、
該分岐部を除く該軌道の内側に、該軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部とにおける該軌道の外側に、該軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され」ることの限りで共通しているといえる。
(ク)
搬送車3の前方に位置する(刊行物1の図4及び5参照)、引用発明の「駆動走行部18」と、補正発明1の「前方の内側ガイドユニット及び前方の外側ガイドユニット」とは、「前方のガイドユニット」の限りで共通しているといえる。
搬送車3の後方に位置する(刊行物1の図4及び6参照)、引用発明の「従動走行部19」と、補正発明1の「後方の内側ガイドユニット及び後方の外側ガイドユニット」とは、「後方のガイドユニット」の限りで共通しているといえる。
(ケ)
上記(ア)?(カ)及び(ク)から、
引用発明の
「該搬送車3は、
該搬送車3の下面に取付け部15、16からそれぞれ延びるシャフトによって該搬送車3の軸受35に回動自在に取り付けられた駆動走行部18及び従動走行部19で構成され、
駆動走行部18は、右側に装着され第1モータ26に連結された第1駆動輪25と、左側に装着され第2モータ26に連結された第2駆動輪26とを備え、適切な左右速度差が生じるようになっており、
従動走行部19は、右側に装着された第1従動輪62と、左側に装着され第2従動輪63とを備え、
駆動走行部18は、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを内側と外側から挟むように対向配置され、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aの内側に位置する分岐ガイドローラ36、37と、外側に位置する固定ガイドローラ31,32と、該第2ガイドレール6bを内側と外側から挟むように対向配置され、該第2ガイドレール6bの外側に位置する分岐ガイドローラ38、39と、内側に位置する固定ガイドローラ33,34と、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aと接する高さの下降位置と、該第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ36、37を移動させ、該第2ガイドレール6bと接する高さの下降位置と、該第2ガイドレール6bを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ38、39を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構40と、
を備え、
従動走行部19は、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを内側と外側から挟むように対向配置され、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aの内側に位置する分岐ガイドローラ69、70と、外側に位置する固定ガイドローラ65,66と、該第2ガイドレール6bを内側と外側から挟むように対向配置され、該第2ガイドレール6bの外側に位置する分岐ガイドローラ71、72と、内側に位置する固定ガイドローラ67,68と、
該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aと接する高さの下降位置と、該一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aまたは該湾曲した第1ガイドレール6aを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ69、70を移動させ、該第2ガイドレール6bと接する高さの下降位置と、該第2ガイドレール6bを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ71、72を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構73と、を備える」ことと、
補正発明1の
「該台車は、
該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、
該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、
前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結し、前方の該外側ガイドユニットと前方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させ、後方の該外側ガイドユニットと後方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させる連結アームと、
で構成され、
少なくとも前方の前記内側ガイドユニットは、駆動源に連結された内側前方車輪を含む一方で、前方及び後方の前記外側ガイドユニットは、駆動源に連結された車輪を含まず、
該内側ガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一の内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、
を備え、
該外側ガイドユニットは、
該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、
該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、を備える」こととは、
「台車は、
前方のガイドユニットと、後方のガイドユニットとで構成される」ことの限りで共通しているといえる。
(タ)
引用発明の「搬送車システム1」と、補正発明1の「台車搬送システム」とは、「台車搬送システム」の限りで共通しているといえる。

ウ 一致点及び相違点
以上より、補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「走行軌道上を走行する台車を含み、
該走行軌道は、
軌道と、
分岐部で該軌道から分岐する補助旋回軌道と、
該分岐部を除く該軌道の内側に、該軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部とにおける該軌道の外側に、該軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され、
該台車は、
前方のガイドユニットと、後方のガイドユニットとで構成される、
台車搬送システム。」
<相違点1>
「走行軌道」が、
補正発明1は、
「環状に設定された循環軌道と、
分岐部で該軌道から分岐、または合流部で該軌道に合流する補助旋回軌道と、
該分岐部と該合流部とを除く該軌道の内周側に、該軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該軌道の外周側に、該軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され」ているのに対して、
引用発明は、
「該軌道2は、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aと、 分岐部9から右側に曲がる曲線部8と、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの内側に沿って一部が途切れて形成される第1ガイドレール6aと、
直線部7、分岐部9及び当該分岐部から直線状に延びる第2部分7aの外側に沿って連続して形成される第2ガイドレール6bと、
分岐部9から右側に曲がる曲線部8の内側に沿って形成される湾曲した第1ガイドレール6aと、
で構成され」、「環状に設定された循環軌道」、「合流部」、「外周側」及び 「内周側」が、特定されていない点。
<相違点2>
「台車」は、
補正発明1では、
「該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、
該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、
前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結し、前方の該外側ガイドユニットと前方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させ、後方の該外側ガイドユニットと後方の該内側ガイドユニットを略同一の首振り角度で揺動させる連結アームと、
で構成され、
少なくとも前方の前記内側ガイドユニットは、駆動源に連結された内側前方車輪を含む一方で、前方及び後方の前記外側ガイドユニットは、駆動源に連結された車輪を含まず、
該内側ガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一の内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、
を備え、
該外側ガイドユニットは、
該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、
該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、を備える」の対して、
引用発明では、
「該台車の下面に取付け部15、16からそれぞれ延びるシャフトによって該台車の軸受35に回動自在に取り付けられた前方のガイドユニット及び後方のガイドユニットで構成され、
前方のガイドユニットは、右側に装着され第1モータ26に連結された第1駆動輪25と、左側に装着され第2モータ26に連結された第2駆動輪26とを備え、適切な左右速度差が生じるようになっており、
後方のガイドユニットは、右側に装着された第1従動輪62と、左側に装着され第2従動輪63とを備え、
前方のガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する分岐ガイドローラ36、37と、外側に位置する固定ガイドローラ31,32と、該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する分岐ガイドローラ38、39と、内側に位置する固定ガイドローラ33,34と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ36、37を移動させ、該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ38、39を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構40と、
を備え、
後方のガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する分岐ガイドローラ69、70と、外側に位置する固定ガイドローラ65,66と、該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する分岐ガイドローラ71、72と、内側に位置する固定ガイドローラ67,68と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ69、70を移動させ、該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該分岐ガイドローラ71、72を移動させる分岐ガイドローラ駆動機構73と、
を備える」点。

エ 判断
以下、事案に鑑みて、相違点2から検討する。
<相違点2について>
(ア)
補正発明1の課題ないし目的は、「軌道の分岐、合流が可能で、且つシステム全体が止まってしまうような故障が発生しない台車搬送システムを提供すること」であり、「故障した場合であっても、該当する台車のみを交換、修理することができるため、修理のためにシステム全体を止めてしまうことがない」(本願明細書の段落【0005】、【0006】及び【0010】)ものであるところ、引用発明の課題ないし目的は、「ガイドレールの強度を低くすること」(上記ア(ア)(1a)の段落【0008】)であり、両者の課題ないし目的は相違している。
そして、補正発明1の課題は、「分岐部と合流部で、外側前方昇降輪、内側前方昇降輪、外側後方昇降輪、内側後方昇降輪を選択的に昇降させる」構造を採用し、「該当する台車のみを交換、修理することができる」ようにすることで解決されるものであり(本願明細書の段落【0010】)、引用発明の課題は、「左右の駆動輪に速度差が生じるようにモータを制御する」(上記ア(ア)(1a)の段落【0009】)ことで解決されるものである。
(イ)
引用発明の「右側に装着された第1駆動輪25」は、右側が内側であり左側が外側であるから(上記ア(イ)(1n)参照)、補正発明1の「内側前方車輪」に対応するところ、引用発明では、「前方のガイドユニットは、右側に装着され第1モータ26に連結された第1駆動輪25(内側前方車輪)と、左側に装着され第2モータ26に連結された第2駆動輪26とを備え、適切な左右速度差が生じるようになって」いるから、これらの駆動輪25,26のうちの左側(外側)に装着され第2モータ26に連結された第2駆動輪26を、モータ(駆動源)に連結された車輪ではないようにする(すなわち、前方の外側で、駆動源に連結された車輪を含まないようにする)と、適切な左右速度差が生じないようになってしまい、引用発明の課題(上記(ア))は解決できなくなってしまう。
したがって、引用発明において、前方の外側の第2駆動輪26を、モータ(駆動源)に連結された車輪ではないようにすることには、阻害要因があるといえる。(以下、「阻害要因A」という。)
(ウ)
上記ア(ア)(1f)の段落【0045】及び【0046】並びに上記ア(ア)(1h)及び(1j)を参照すると、引用発明の分岐ガイドローラ駆動機構40(ガイド輪を昇降させるという限りで、補正発明1の「昇降機構」と同様の機能を備えているといえる。)は、「分岐ガイドローラ36、37」と「分岐ガイドローラ38、39」(昇降するガイド輪という限りで、補正発明1の「第一の内側ガイド輪」と「第一の外側ガイド輪」と同様の機能を備えているといえる。)とが対称的に位置を変更する構造であり、同様のことが、引用発明の「分岐ガイドローラ駆動機構73」、「分岐ガイドローラ69、70」及び「分岐ガイドローラ71、72」についてもいえる。
このように、引用発明の分岐ガイドローラ駆動機構40、73は、内側と外側との昇降動作が連動していて一体不可分であるから、当該分岐ガイドローラ駆動機構40、73を単に内側と外側に分離すれば機能しなくなること、及び、内側と外側で分岐ガイドローラ(ガイド輪)の昇降動作をそれぞれ独立して行うためには、連結機構45を取り除き駆動用の装置の数や配置を変更する等、昇降機構の構造を大幅に変更する必要が生じるといえることから、引用発明の分岐ガイドローラ駆動機構40、73を、前方内側、前方外側、後方内側及び後方外側のそれぞれで昇降動作ができるように分離することには、阻害要因があるといえる。(以下、「阻害要因B」という。)
(エ)
刊行物3(上記ア(エ)(3a)、(3b)及び第4?5図)には、車輪の1つが走行モーターによって駆動される駆動輪となされ、残りの車輪が従動輪となされている技術事項(以下、「技術事項A」という。)が記載されている。
(オ)
刊行物4(上記ア(オ)(4b)及び第4?5図)には、左右に独立した昇降機構を備える技術事項(以下、「技術事項B」という。)が記載されている。(ただし、前後左右の4箇所に、それぞれ独立したガイドユニットを採用し、それぞれに独立した昇降機構を備える技術事項が記載されているとまではいえない。)
(カ)
刊行物2(上記ア(ウ)(2a)?(2c)参照)には、補正発明1の用語を用いると(ただし、( )内の用語は、補正発明1の用語に対応する刊行物2の用語である。)、「コストダウンとコンパクト化のために、また、走行輪を転舵させるために、台車は、該台車下面に配置され、首振支軸(枢支部材10)によって該台車下面に首振自在に設置された左右のガイドユニット(左右のレバー9)と、該左右のガイドユニット(左右のレバー9)を、ヒンジ構造(ピン13)を介して連結し、該左右のガイドユニット(左右のレバー9)を略同一の首振り角度で揺動させる連結アーム(連結ロッド12)と、で構成され、該左右のガイドユニットのそれぞれ(左右のレバー9、9)は、車輪(走行輪2)を含み、ガイドレール(ガイドレール7)に案内されるガイド輪(ガイドローラ8)を備える」技術事項(以下、「技術事項C」という。)が記載されているといえる。
(キ)
上記技術事項A、Bを引用発明に適用することには、それぞれ、阻害要因A、Bが存在しているから、それらの技術事項を適用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
また、補正発明1の課題、及び、当該課題を解決するための手段(前後左右の4箇所に、それぞれ独立したガイドユニットを採用し、それぞれに独立した昇降機構を備えるようにすること)は、刊行物1?4に記載も示唆されていないから、引用発明において、前方及び後方のガイドユニットの機能を、前後左右の4つの独立したガイドユニットとして機能させるために、上記技術事項B及び技術事項Cを併せて適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
(ク)
以上のことを総合すると、引用発明に刊行物1?4に記載された技術事項を適用することで、上記相違点2に係る補正発明1の構成に至ることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ケ)
そして、補正発明1は、以下のような顕著な作用効果を奏する。
補正発明1は、昇降機構を前後左右のガイドユニットのそれぞれに設ける構成を採用することで、「昇降機構が故障した場合であっても、該当する台車のみを交換、修理することができるため、修理のために搬送システム全体を止めてしまうことがない」(本願の発明の詳細な説明の段落【0010】参照)という顕著な作用効果を奏する。。
さらに、補正発明1は、技術事項Aを採用することで、精度の高いモータ制御手段が不要になるだけに留まらず、循環軌道の外側ガイドレールの敷設区間が拡がらない旨(本願明細書の段落【0039】及び【0040】参照)という顕著な作用効果も奏する(補正発明1の「オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレール」は、循環軌道の全周に沿って外側ガイドレールが設置されるものに特定されているわけではない。)。

オ 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、補正発明1は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物1?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとはいえない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由もない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
本件補正の補正事項2は、請求項2に記載した発明を特定するための事項である「内側前方車輪」について、補正後の請求項1の「内側前方車輪」を引用して「前記内側前方車輪」とする限定を付加するものであり、また、請求項3に記載した発明を特定するための事項である「前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪との少なくともどちらか一方が、駆動源によって駆動される」ことについて、願書に最初に添付した明細書の段落【0033】、【0034】及び【0038】の記載を根拠に、「前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪とのそれぞれが、駆動源によって駆動される」こととの限定を付加するものであり、補正前の請求項2及び3に記載された発明と補正後の請求項2及び3に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が、対応するそれぞれの請求項について同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後の前記請求項2及び3に記載された発明(以下、「補正発明2及び3」という。)は、いずれも補正発明1を引用しているから、補正事項1の補正に伴い限定的減縮がなされており、かつ、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物1?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとはいえない(上記(1)参照。)。
また、ほかに特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由もない。
よって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(3)補正事項3について
本件補正の補正事項3は、明細書の段落【0007】、【0008】及び【0009】の記載を、補正事項1及び2に伴い補正された補正後の請求項1?3との整合を図るためのものであり、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明(補正発明1?3)は、上記第2の2.(1)及び(2)のとおり、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物1?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-02 
出願番号 特願2011-244184(P2011-244184)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
発明の名称 台車搬送システム  
代理人 三好 秀和  

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