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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C01B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1324205
審判番号 不服2015-14565  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-03 
確定日 2017-01-26 
事件の表示 特願2013-545384「チタノシリコアルミノホスフェート」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月28日国際公開、WO2012/085150、平成26年 1月23日国内公表、特表2014-501691〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成23年12月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成22年12月22日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、原審にて、平成26年 6月 5日付けの拒絶理由が通知され、同年 9月 9日付けの手続補正がされたが、平成27年 3月30日付けの拒絶査定がされ、この査定を不服として同年 8月 3日付けの本件審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2.補正の却下の決定について

結 論:
平成27年 8月 3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

理 由:
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について次の補正事項を有する。

[補正前]
【請求項1】
四面体形に配位されCOに対する自由配位部位を有するチタンを含んだチタノシリコアルミノホスフェート。

[補正後](補正箇所に下線)
【請求項1】
四面体形に配位されCOに対する自由配位部位を有するチタンを含んだ炭化水素変換反応を含む酸触媒プロセスに使用するためのチタノシリコアルミノホスフェート。

2.補正の適否

本件補正後の請求項1には、「炭化水素変換反応を含む酸触媒プロセスに使用するための」との用途限定が記載されているが、本件補正前の請求項1には、チタノシリコアルミノホスフェートの用途に関する発明特定事項が記載されていない。
してみると、上記補正事項は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではないから、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものではない。また、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件

仮に、上記補正事項が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとした場合、補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。

(1)引用例の記載

本願の優先権の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、
特開昭60-260420号公報(以下、「引用例1」という。)
には、次の記載がある。

摘示1-1
「本発明のモレキュラーシーブは、TiO_(2)、AlO_(2)^(-)、PO_(2)^(+)及びSiO_(2)四面体酸化物単位の結晶骨格を指示するために頭字語「TiAPSO」と一般に呼称する。
・・・(中略)・・・
本発明は、TiO_(2)、AlO_(2)^(-)、PO_(2)^(+)及びSiO_(2)四面体単位の結晶構造を有する新クラスの三次元微孔質結晶性モレキュラーシーブに関する。」
(5頁右上欄20行?左下欄13行)

摘示1-2
「(e)TiAPSO-34(例24)の化学分析は次の如くであった。
成分 重量%
Al_(2)O_(3) 32.3
P_(2)O_(5) 37.9
TiO_(2) 0.4
SiO_(2) 8.2
炭素 9.8
窒素 1.6
LOI* 20.5
*LOI=強熱減量
上記の化学分析値は、酸化物モル比(無水基準)で0.01TiO_(2):0.32Al_(2)O_(3):0.27P_(2)O_(5):0.14SiO_(2)の全生成物組成及び無水基準で
0.103R(Ti_(0.01)Al_(0.48)P_(0.41)S_(0.11))O_(2)の式を与える。」
(13頁右上欄15行?左下欄14行)

摘示1-3
「例40
TiAPSO組成物の触媒活性を例示するために、例6、13及び24のTiAPSO生成物の焼成試料をn-ブタンの触媒活性について試験した。
反応器は、長さ254mmで内径10.3mmの円筒形石英管であった。各試験において、反応器には寸法が20?40メツシユ(米国基準)の試験TiAPSOの粒子を0.5?5gの量で充填したが、この量は、n-ブタンの転化率が試験条件下で少なくとも5%で且つ多くても90%となるように選定された。TiAPSO試料を空気中(TiAPSO-5は600℃で25時間、TiAPSO-11は600℃で15時間、そしてTiAPSO-34は500℃で2時間)で焼成して細孔系から有機物質を除去しそしてそれらを反応器内のその場所においてヘリウム流れ中にて500℃で1時間活性化した。供給原料は2モル%のn-ブタンを含有するヘリウム/n-ブタン混合物であり、そしてこれは500cc/分の速度で反応器を通された。供給原料及び反応器流出物の分析は、通常のガスクロマトグラフィー技術を使用して実施された。反応器流出物は、オンストリーム操作の10分後に分析された。疑似一次速度恒数(k_(A))を計算してTiAPSO組成物の相対的触媒活性を決定した。TiAPSO組成物について得られたk_(A)値(cm^(3)/g分)を以下の表XXVIに示す。
表 XXVI
TiAPSO k_(A )
TiAPSO-5 0.6
TiAPSO-11 0.5
TiAPSO-34 1.3
方法の用途
・・・(中略)・・・
また、本発明のTiAPSO組成物は、それらを多くの炭化水素転化及び酸化燃焼反応における触媒又は触媒基材として有用にしている新規な表面選択性を示す。これらは、斯界に周知の方法によって触媒活性金属を含浸され又は他の方法で組み込まれ、そしてシリカ又はアルミナ基材を有する触媒組成物を作るのに用いることができる。一群の中では、約4Åよりも大きい細孔を有するものが触媒用途に対して好ましい。
TiAPSO組成物によって触媒される炭化水素転化反応としては、分解、水素化分解、芳香族及びイソパラフィンの両方に対するアルキル化、キシレン異性化を含めた異性化、重合、リホーミング、水素化、脱水素、トランスアルキル化、脱アルキル、水素化環化及び脱水素環化が挙げられる。」
(22頁欄右上欄1行?右下欄20行)

(2)引用発明の認定

引用例1には、TiAPSO組成物に関し、「TiO_(2)、AlO_(2)^(-)、PO_(2)^(+)及びSiO_(2)四面体酸化物単位の結晶骨格」を有すること(摘示1-1)及び「TiAPSO組成物は、それらを多くの炭化水素転化…反応における触媒又は触媒基材として有用にしている新規な表面選択性を示す」こと(摘示1-3)が記載されている。
そして、例24で製造されたTiAPSO組成物であるTiAPSO-34(摘示1-2)は、n-ブタンの転化反応の触媒活性を有すること(摘示1-3)が記載されている。
してみると、引用例1には、本願補正発明の発明特定事項に則して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「TiO_(2)四面体の結晶骨格を構成するTiを含んだn-ブタンの転化反応の触媒又は触媒基材として有用なTiAPSO-34。」

(3)発明の対比

本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「TiO_(2)四面体の結晶骨格を構成するTi」、「n-ブタンの転化反応の触媒又は触媒基材として有用な」、「TiAPSO-34」は、本願補正発明の「四面体形に配位され(た)チタン」、「炭化水素変換反応を含む酸触媒プロセスに使用するための」、「チタノシリコアルミノホスフェート」にそれぞれ相当する。
してみると、本願補正発明は、引用発明と
「四面体形に配位され(た)チタンを含んだ炭化水素変換反応を含む酸触媒プロセスに使用するためのチタノシリコアルミノホスフェート。」の点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点:本願補正発明が「COに対する自由配位部位を有する」チタンを含むのに対し、引用発明は、チタンがCOに対する自由配位部位を有するか不明な点。

(4)相違点の判断

ここで相違点について検討するに、「チタンがCOに対する自由配位部位を有する」とは、本願明細書【0030】に、先行技術文献である「Natalia N. Trukhan,”FTIR Spectoroscopic Study of Titanium-Containing Mesoporous Silicate Materials”, Langmuir,2005,Volume 21, 第10545-10554頁」を引用し、CO吸着に際し五配位となるチタンであって、チタン原子が骨格内に挿入されて分離された四面体としては存在しない微細及び中径孔質チタノシリコ材料においてのみ発生すると説明されている。
してみれば、引用発明もまた、チタン原子が骨格内に挿入されていて分離された四面体としては存在しない微細孔質チタノシリコ材料である(摘示1-1)から、そのチタンはCOに対する自由配位部位を有するものと認められる。
したがって、上記相違点は実質的な差異ではなく、本願補正発明は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3項に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正が仮に限定的減縮に相当するとしても、特許法第17条の2第6項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.請求人の主張について

なお、請求人は、審判請求書にて、本願補正発明は、チタノシリコアルミノホスフェートの原料(ケイ素源やチタン源)に有機物を使用していないことによって、チタンが四面体形に配位されCOに対する自由配位部位を有する旨を主張している。
しかしながら、本願明細書【0064】には、チタン源として有機化合物も使用されることが記載されているのだから、上記主張は採用できない。
また、原料中のアルカリの有無による酸強度や熱水安定性の差異については、いずれの特性も本願補正発明の発明特定事項ではないから、仮に、追試により差異が立証できたとしても、本願補正発明の実施例と引用発明との作用効果上の差異を確認したにすぎず、本願補正発明の新規性の根拠とすることはできない。

第3.本願発明の認定

上述したように本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成26年 9月 9日付けで手続補正された特許請求の範囲において、請求項1に記載された事項(「第2.補正の却下の決定について1.補正の内容」の[補正前]参照)により特定されるとおりのものと認められる。

第4.原査定の理由について

原審でなされた拒絶査定の理由の一つは、
「本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
というものである。
そこで検討するに、「第2.補正の却下の決定について 2.補正の適否」で述べたように、本願発明に用途限定を付加し減縮したものに相当する本願補正発明が、「第2.補正の却下の決定について 3.独立特許要件」で述べたように、引用例1に記載された発明であるから、当該限定のない本願発明が、同様の理由により、引用例1に記載された発明であることは明らかである。

第5.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の理由について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-26 
結審通知日 2016-08-31 
審決日 2016-09-13 
出願番号 特願2013-545384(P2013-545384)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C01B)
P 1 8・ 113- Z (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 哲  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 後藤 政博
宮澤 尚之
発明の名称 チタノシリコアルミノホスフェート  
代理人 浜田 治雄  

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