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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1324272
審判番号 不服2015-18954  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-21 
確定日 2017-02-20 
事件の表示 特願2014- 33726「移動局位置推定のための現場アプリケーション」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-150536、請求項の数(25)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2010年(平成22年)10月1日(優先権主張 2009年(平成21年)10月1日 米国,2010年(平成22年)4月9日 米国,同年9月30日 米国)を国際出願日とする特願2012-532374号の一部を,平成26年2月25日に新たな特許出願としたものであって,同年11月14日付けで拒絶理由が通知され,平成27年2月25日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,同年6月18日付けで拒絶査定され,同年10月21日に拒絶査定不服審判を請求するのと同時に手続補正され,平成28年9月30日付けで拒絶理由を当審から通知し,平成29年1月4日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。


第2 当審拒絶理由及び本願発明

1.当審拒絶理由の概要
平成28年9月30日付けで,当審から通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

理 由
(明確性)
本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

本件出願の特許請求の範囲の記載は,平成27年10月21日付け手続補正書における特許請求の範囲の記載のとおりである。

○ 請求項13について
本請求項には,「前記移動局内の専用コンピューティングデバイスによって実行可能である機械可読命令を記憶する記憶媒体 を備える物品。」との記載がある。
当該記載によると,本請求項に係る発明は「物品」であると解される。
しかし,本件出願の明細書又は図面にも,当該「物品」に相当する事項が具体的に記載されているということはできない。
このことから,本請求項に係る発明の技術的特徴が,本請求項に記載された「機械可読命令」を記憶した「記憶媒体」にあると解される。
よって,請求項13に記載された発明は明確でない。

○ 請求項14及び15について
本請求項14及び15に記載された旗発明は,請求項13を引用するものである。
このことによって,本請求項14及び15についても,上記「○ 請求項13について」に述べた事項は該当する。
よって,請求項14及び15に記載された発明は明確でない。

○ 請求項19について
本請求項の記載を,本件出願の明細書又は図面の記載に照らすと,次のようにいうことができる。
本請求項記載の「少なくとも1つのロケーションベースのサービスを提供する際に、1つまたは複数の移動局によって使用されるように現場インフラストラクチャ情報を提供するための手段」は「現場サーバ(140,340)」に係るものであるということができ,また,
同じく「前記1つまたは複数の移動局における少なくとも1つでホストされる現場保護アプリケーションによって、収益化または会費モデルに従って前記現場インフラストラクチャ情報の一部を選択的に制限することで、前記現場保護アプリケーションから、前記1つまたは複数の移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するための手段」は「移動局」に係るものであるということができる。
しかし,本請求項記載のように「提供するための手段」と「制限するための手段」とを備える「装置」,つまり,「現場サーバ」と「移動局」とを備えた「装置」については,本件出願の明細書又は図面にも,具体的に記載されているということはできない。
よって,請求項19に記載された発明は明確でない。

○ まとめ
以上のとおり,請求項13から15,及び19に記載された発明は明確でない。
そして,請求項1から12,16から18,及び22から25に記載された発明については,現時点で拒絶の理由を発見しない。

<請求項13から15に係る補正等の示唆>
上記請求項13から15については,例えば次の[案]のように記載することによって,上記の拒絶の理由は解消する。
[案]
【請求項13】
移動局において現場サーバから受け取った現場インフラストラクチャ情報にアクセスし、
前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションを使用して、前記受け取られた現場インフラストラィチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限することであって、前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションは、前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限し、
前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、ための命令であって、
前記移動局内の専用コンピューティングデバイスによって実行可能である機械可読命令を記憶した記憶媒体。
【請求項14】
前記収益化または会費モデルは、所定のサービスのための料金の支払いを含む、請求項13に記載の記憶媒体。
【請求項15】
前記収益化または会費モデルは、使用に対する料金の支払いを含む、請求項13に記載の記憶媒体。

なお,上記案は,特許請求の範囲の補正の一例に過ぎない点に留意されたい。
以上。

2.当審拒絶理由に関する判断
平成29年1月4日付け手続補正(以下「本補正」という。)によって,特許請求の範囲における請求項の記載は次のとおりとなった。(下線は請求人が付与。)

【請求項1】
少なくとも1つのロケーションベースのサービスを提供する際に、1つまたは複数の移動局によって使用されるように現場インフラストラクチャ情報を提供するステップと、
前記1つまたは複数の移動局における少なくとも1つでホストされる現場保護アプリケーションを使用して、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するステップであって、前記現場保護アプリケーションは、収益化または会費モデルに従って前記1つまたは複数の移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限する、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記現場保護アプリケーションによる前記現場インフラストラクチャ情報の使用に少なくとも部分的に基づき前記移動局のユーザから料金を徴収するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収益化または会費モデルは、前記移動局上のディスプレイに広告をプッシュすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の移動局における前記少なくとも1つで前記現場保護アプリケーションのインストールを無料で許可するステップと、
前記1つまたは複数の移動局における前記少なくとも1つのディスプレイにおいて前記現場保護アプリケーションにプッシュされた広告についての料金を取得するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の移動局における前記少なくとも1つで前記現場保護アプリケーションのインストールを無料で許可するステップと、
ロケーションベースのサービスを提供する際に、前記現場インフラストラクチャ情報の使用に対してユーザに料金を請求するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
移動局上でホストされる第1のエンティティにおいて現場インフラストラクチャ情報を受け取るステップと、
前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションを使用して、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するステップであって、前記現場保護アプリケーションは、前記移動局でホストされる1つまたは複数の他のエンティティに、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広がることを選択的に制限する、ステップと
含み、
前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、方法。
【請求項7】
前記収益化または会費モデルは、所定のサービスのための料金の支払いを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記収益化または会費モデルは、使用に対する料金の支払いを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数の他のエンティティの少なくとも1つは、前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部に少なくとも部分的に基づいて、前記移動局の位置を推定することが可能な位置特定エンジンサービスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記現場インフラストラクチャ情報は、現場マップ情報または現場内の無線周波数(RF)ビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報の少なくとも一方を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部は、前記現場内のRFビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する前記情報を含み、前記現場マップ情報を含まず、
前記方法が、前記現場保護アプリケーションによって前記移動局の1つまたは複数の軌道を推定するステップをさらに含み、
前記現場保護アプリケーションは、前記現場インフラストラクチャ情報が広まることを制限する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記現場インフラストラクチャ情報は、RFビーコン送信機の前記少なくとも1つの位置を記述する前記情報を含み、前記方法が、
RFビーコン送信機の前記少なくとも1つの位置を記述する前記情報が、前記他のエンティティに広まることを防止するステップと、
現場保護アプリケーションにおいて、3つ以上の無線周波数ビーコン送信機からの距離の測定値を、位置特定エンジンサービスから受け取るステップであって、前記現場保護アプリケーションは前記現場インフラストラクチャ情報が広まることを制限する、ステップと、
前記現場保護アプリケーションにおいて、前記測定値とRFビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記移動局の前記位置を推定するステップと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
移動局において現場サーバから受け取った現場インフラストラクチャ情報にアクセスし、
前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションを使用して、前記受け取られた現場インフラストラィチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限することであって、前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションは、前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限し、
前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、ための命令であって、
前記移動局内の専用コンピューティングデバイスによって実行可能である機械可読命令を記憶する記憶媒体。
【請求項14】
前記収益化または会費モデルは、所定のサービスのための料金の支払いを含む、請求項13に記載の記憶媒体。
【請求項15】
前記収益化または会費モデルは、使用に対する料金の支払いを含む、請求項13に記載の記憶媒体。
【請求項16】
移動局であって、
通信ネットワークから信号を受信する受信機と、
第1のエンティティをホストするプロセッサであって、
前記受信機において現場サーバから受信した信号から獲得した現場インフラストラクチャ情報にアクセスし、
前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションを使用して、前記受信された現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限することであって、前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションは、前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記受信された現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限し、前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、プロセッサと
を備える移動局。
【請求項17】
前記収益化または会費モデルは、所定のサービスのための料金の支払いを含む、請求項16に記載の移動局。
【請求項18】
前記収益化または会費モデルは、使用に対する料金の支払いを含む、請求項16に記載の移動局。
【請求項19】
少なくとも1つのロケーションベースのサービスを提供する際に、1つまたは複数の移動局によって使用されるように現場インフラストラクチャ情報を提供するための手段と、
前記1つまたは複数の移動局における少なくとも1つでホストされる現場保護アプリケーションによって、収益化または会費モデルに従って前記現場インフラストラクチャ情報の一部を選択的に制限することで、前記現場保護アプリケーションから、前記1つまたは複数の移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するための手段と
を備えるシステム。
【請求項20】
移動局上でホストされる第1のエンティティにおいて現場インフラストラクチャ情報を受け取るための手段と、
前記移動局でホストされる現場保護アプリケーションによって、前記現場インフラストラクチャ情報の一部を選択的に制限することで、前記現場保護アプリケーションから、前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数の他のエンティティに、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するための手段であって、前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、手段と
を備える装置。
【請求項21】
移動局上でホストされる第1のエンティティにおいて現場インフラストラクチャ情報を受け取るステップと、
前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数の他のエンティティによって、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部にアクセスすることを選択的に可能にするステップであって、前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、ステップと
を含む方法であって、
前記現場インフラストラクチャ情報は、現場マップ情報または現場内の無線周波数(RF)ビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報の少なくとも一方を含み、
前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部は、前記現場内のRFビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報を含み、前記現場マップ情報を含まず、
前記方法が、現場保護アプリケーションによって前記移動局の1つまたは複数の軌道を推定するステップをさらに含み、
前記現場保護アプリケーションは、前記現場インフラストラクチャ情報が広まることを制限する、方法。
【請求項22】
移動局上でホストされる第1のエンティティにおいて現場インフラストラクチャ情報を受け取るステップと、
前記移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数の他のエンティティによって、前記受け取られた現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部にアクセスすることを選択的に可能にするステップであって、前記一部は、収益化または会費モデルの少なくとも一部に基づき決定される、ステップと
を含む方法であって、
前記現場インフラストラクチャ情報は、現場マップ情報または現場内の無線周波数(RF)ビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報の少なくとも一方を含み、
前記現場インフラストラクチャ情報は、前記RFビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報を含み、
前記方法が、
RFビーコン送信機の前記少なくとも1つの位置を記述する前記情報が、前記他のエンティティに広まることを防止するステップと、
現場保護アプリケーションにおいて、3つ以上の無線周波数ビーコン送信機からの距離の測定値を、位置特定エンジンサービスから受け取るステップであって、前記現場保護アプリケーションは前記現場インフラストラクチャ情報が広まることを制限する、ステップと、
前記現場保護アプリケーションにおいて、前記測定値とRFビーコン送信機の少なくとも1つの位置を記述する情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記移動局の前記位置を推定するステップと
をさらに含む方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の移動局に付与された特権レベルに基づいて広められるように前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部を決定するステップと、
前記特権レベルに基づいて前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部を受け取るように前記1つまたは複数のエンティティの少なくとも1つを選択するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ユーザ分類に少なくとも部分的に基づいて広められるように前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部を決定するステップであって、前記ユーザ分類は、前記1つまたは複数の移動局に関連している、ステップと、
前記ユーザ分類に基づいて前記現場インフラストラクチャ情報の前記一部を受け取るように前記1つまたは複数のエンティティの少なくとも1つを選択するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
さらに前記現場インフラストラクチャ情報は、
現場のデジタルマップと、
無線周波数(RF)ビーコン送信機の位置を記述する情報と、
実行可能/通行可能エリアのルーティング可能性グラフを記述する情報と
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。

本補正により,請求項13から15,及び19に記載された発明は明確となった。

3.本願発明
以上のとおりであるから,当審拒絶理由により,本願を拒絶することはできない。
したがって,本願の請求項1から25に係る発明は,本補正後の請求項1から25に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお,以下において,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明」から「本願第25発明」を併せて「本願発明」という。


第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要
理由A
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 1?25
補正後の請求項1には、「前記1つまたは複数の移動局における少なくとも1つでホストされる現場保護アプリケーションから、収益化または会費モデルに従って前記1つまたは複数の移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するステップ」という記載があるが、当該記載は、依然として不明確である。
すなわち、補正後の当該記載であっても、上記拒絶理由通知書にて示した理由A(1)にあるように、情報の一部を選択的に制限すること(どの情報を提供し、どの情報を提供しないとするのかを選択すること)を意味するのか、一部の情報を提供するエンティティを選択的に制限すること(どのエンティティに情報を提供し、どのエンティティに情報を提供しないのかを選択すること)を意味するのか、依然として明確でない。
請求項2?25についても同様である。
出願人は意見書にて、請求項の当該記載は「情報を提供するエンティティを選択的に制限している」ことを意味しているのが明確である、と、本願明細書の記載を根拠に主張しているが、当該主張は明細書の実施例に基づくものであって、請求項の記載に基づかない。
そして、補正後の請求項の記載を参照しても、「・・・現場保護アプリケーションから、・・・特定の1つまたは複数のエンティティに、前記現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限するステップ」との記載からは、依然として、現場保護アプリケーション」から「特定のエンティティ」に「情報の一部」を選択的に制限するとも解釈し得ることから、当該記載をもって「エンティティを選択的に制限していること」が明確とはいえない。
よって、請求項の記載は明確であるとする出願人の前記主張は採用できない。
したがって、本願請求項1?25に係る発明は、依然として、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定より特許を受けることができない。
よって、請求項1?25に係る発明は明確でない。

理由B
この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-271840号公報

2.原査定の理由に関する当審判断
(1) 理由A(36条6項2号)について
平成27年10月21日付け手続補正及び本補正により,原査定の理由Aは解消した。

(2) 理由B(29条2項)について
ア 引用文献及び記載事項
原査定の理由で「引用文献1」として引用された特開2002-271840号公報(平成14年9月20日公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア) 記載事項1
【0006】
【発明の実施の形態】図1に本発明を実現する位置測定システムの構成を示す。該システムは位置測定機能を備えた端末1と、伝搬遅延量を算出するための特定信号を発する信号源2と、端末と信号源に解読鍵を供給する鍵供給サーバ3と、測位に必要な情報を提供する測位情報サーバ4からなる。
【0007】図2に本発明の実施の形態である端末1の構成を示す。制御部11は通信部12を通して鍵供給サーバ3に接続し、該サーバより暗号解読に必要な解読鍵51の送信を受け、該解読鍵を記憶部13に格納する。遅延量推定部14は、複数の信号源2から到来する特定信号を受信し、その遅延量、あるいはいずれかの信号源からの特定信号を基準とした相対遅延量を測定し、測位部15に送る。該測位部の位置測定手段としては、例えば特開平7-181242に開示されているセルラ無線を使う方法がある。この場合信号源2はセルラ無線の基地局であり、特定信号は基地局識別のためのPilot信号となる。
【0008】測位情報サーバ4より送られた暗号化された測位情報52は通信部12を通じて解読部16に送られる。該解読部において、該解読鍵を用いて該暗号化された測位情報を復号化することで測位情報53を得る。該測位情報とは、基地局の配置、及びその送信タイミングなど、位置測定に必須の情報のことである。例えば位置測定手段が前述のセルラ無線を使う方法である場合、測位情報はセルラ無線の基地局のID,及びその周囲の基地局の送信タイミング、及び基地局の位置情報からなる。
【0009】測位部では測位情報と遅延量推定部から送られてきた測定結果を基に該端末の位置を算出し、結果を出力装置17に送る。該出力装置は例えばLED表示装置である。
【0010】測位情報に含まれる送信タイミングは大きく2つの要素に分類できる。第一にそのシステムが意図的に定めた送信タイミングで、基地局の識別に必要な情報となる。第二の要素はシステムが意図しない送信タイミングの誤差で、各基地局のアンテナの設置状態などに起因し、位置測定において測定精度を劣化させる要因となる。この2種類の送信タイミングの情報について、例えば測位情報のうち、第二の送信タイミングの情報のみを暗号化することで契約する位置測定サービスの違いによって測定精度に格差をつけることができる。このとき、精度の低い位置測定サービスを希望する端末には解読鍵を提供しないことで、第一の送信タイミングの情報だけを用いて位置測定を行うようにし、測定精度の低い位置測定サービスを提供する。より精度の高い位置測定サービスの契約をした端末には解読鍵を送信することで第二の送信タイミング情報も用いて測位可能とし、精度の高い位置測定サービスを提供するシステムも本発明の実施形態の1つである。
【0011】該端末において、暗号鍵供給サーバ3より送信された解読鍵51の不正転用などを防止するため、記憶部13、解読部16、及び測位部15がワンチップにある場合も本発明の範疇である。具体的な実施形態として、上記の部分を1つのLSIに構築する方法がある。
【0012】図3に本発明の実施の形態である信号源2の構成を示す。該信号源は、端末1が伝搬遅延量を算出するための特定信号を生成する特定信号生成部21と送信部22を持ち、作成した特定信号を送信する。
【0013】図4に本発明の実施の形態である鍵供給サーバ3の構成を示す。該サーバは暗号化の解読鍵を作成する鍵作成部31と、端末や測位情報サーバに対して作成した暗号の解読鍵51を送信する送信部32と、送信制御に関するデータベース33と、データベースの情報に基づいて送信部を制御する送信制御部34を備える。
【0014】該解読鍵が、例えば月毎のように一定期間ごとに更新される位置測定システムも本発明の実施例の一つである。位置測定端末利用者は一定期間ごとにサービス提供者と位置情報測定サービスの契約を交わす。暗号鍵供給サーバの送信制御部は該送信部を制御して契約を更新したことがデータベースに登録されている端末にのみ新しい解読鍵51の送信を行う。従って、本実施例により契約者にのみ位置情報サービスを提供することができる。またイベント期間中のみ位置情報を提供するなどの期間限定の位置情報サービスの提供も可能となる。
【0015】また、例えば端末1が入手した解読鍵51は1度の位置測定後に破棄されるように設定した場合,位置測定を行うたびに該端末は新しい解読鍵を入手するため鍵供給サーバにアクセスする必要が生じる。これより、データベースに該端末の鍵供給サーバ3へのアクセス回数を記録し、一定期間ごとに全ての鍵供給サーバのデータベース34の情報を集計することで、該端末による位置測定の回数に応じて該端末に課金するシステムも本発明の範疇である。

(イ) 記載事項2
図2として次の記載がある。

(ウ) 引用発明
上記(ア)及び(イ)によると,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

測位情報サーバ4より送られた暗号化された測位情報52は通信部12を通じて解読部16に送られ,該解読部において,該解読鍵を用いて該暗号化された測位情報を復号化することで測位情報53を得,該測位情報とは,基地局の配置,及びその送信タイミングなど,位置測定に必須の情報のことであり,例えば位置測定手段が前述のセルラ無線を使う方法である場合,測位情報はセルラ無線の基地局のID,及びその周囲の基地局の送信タイミング,及び基地局の位置情報からなり,
測位部では測位情報と遅延量推定部から送られてきた測定結果を基に該端末の位置を算出し,結果を出力装置17に送り,
測位情報に含まれる送信タイミングは大きく2つの要素に分類でき,第一にそのシステムが意図的に定めた送信タイミングで,基地局の識別に必要な情報となり,第二の要素はシステムが意図しない送信タイミングの誤差で,各基地局のアンテナの設置状態などに起因し,位置測定において測定精度を劣化させる要因となり,この2種類の送信タイミングの情報について,測位情報のうち,第二の送信タイミングの情報のみを暗号化することで契約する位置測定サービスの違いによって測定精度に格差をつけることができ,このとき,精度の低い位置測定サービスを希望する端末には解読鍵を提供しないことで,第一の送信タイミングの情報だけを用いて位置測定を行うようにし,測定精度の低い位置測定サービスを提供する。より精度の高い位置測定サービスの契約をした端末には解読鍵を送信することで第二の送信タイミング情報も用いて測位可能とし,精度の高い位置測定サービスを提供し,
該端末において,暗号鍵供給サーバ3より送信された解読鍵51の不正転用などを防止するため,記憶部13,解読部16,及び測位部15がワンチップにある場合もある
方法。

イ 対比
引用発明と本願第1発明を比較すると,少なくとも次の相違があるということができる。

相違点1
本願第1発明においては,移動局でホストされる「現場保護アプリケーション」を含むとの特定があるのに対して,引用発明にはそのような「現場保護アプリケーション」の特定がない点。
相違点2
本願第1発明において,移動局でホストされる「現場保護アプリケーション」は,1つまたは複数の移動局でホストされる複数のエンティティにおける特定の1つまたは複数のエンティティに,「現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限する」機能を有しているのに対して,引用発明には,そのような機能についての特定がない点。

ウ 検討
上記相違について検討するに,上記相違点1及び2のように,1つまたは複数のエンティティに対し,現場インフラストラクチャ情報の少なくとも一部が広まることを選択的に制限する現場保護アプリケーションを,引用発明における移動局でホストされるように備え,そして,本願第1発明のように構成することを,当業者が,容易になしえた若しくは適宜なしえたということができる理由を発見しない。

また,本願第6発明,本願第13発明,本願第16発明,及び本願第19発明から本願第22発明についても,同様である。
更に,本願第2発明から本願第5発明及び本願第23発明から本願第25発明については本願第1発明を引用する発明である点で,本願第7発明から本願第12発明については本願第6発明を直接的若しくは間接的に引用する発明である点で,本願第14発明及び本願第15発明については本願第13発明を引用する発明である点で,本願第17発明及び本願第18発明については本願第16発明を引用する発明である点で,同様である。

エ 理由Bについてのまとめ
したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3) 原査定の理由に関するまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。


第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,ほかに本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-07 
出願番号 特願2014-33726(P2014-33726)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 水野 恵雄
近藤 聡
発明の名称 移動局位置推定のための現場アプリケーション  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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